(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105486
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】心房細動における局所興奮到達ドライバ分類マッピング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/361 20210101AFI20220707BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20220707BHJP
【FI】
A61B5/361
A61B5/287 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021214073
(22)【出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】63/133,723
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/537,929
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クン・シャ
(72)【発明者】
【氏名】ルイゼッタ・ヴァディモヴナ・ナヴラズニク
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG05
4C127GG13
4C127GG16
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】細動している心房にどの程度のリモデリングが存在するかを推定するための新規な戦略を開発すること。
【解決手段】心房細動を受けている心臓組織と接触している複数の電極から、それぞれの信号を取得することと、信号から、電極のペアの間の相互情報指標を計算することと、を含む方法。グラフは、電極をノードとし、選択された相互情報指標閾値を超えるエッジをその間の接続として、生成される。ノードの各々について、それぞれの局所効率指標が計算され、選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率を公式化するために、指標が平均化される。心房細動を分類するために、結果的局所効率および選択された相互情報指標閾値が分析される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
心房細動を受けている心臓組織と接触するように構成された複数の電極を有するプローブと、
プロセッサであって、
前記電極から信号を受信し、前記信号から、前記電極の複数のペア間の相互情報指標を計算し、
前記電極をノードとして、およびエッジを前記それぞれの相互情報指標が選択された相互情報指標閾値を超えるその間の接続として、グラフを生成し、
接続されたノード間の経路長に基づいて、前記ノードと前記ノードに接続された別のノードとの間の情報交換の効率を示す、各ノードのそれぞれの局所効率指標を計算し、
前記選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率を公式化するために、前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化し、
前記心房細動を分類するために、前記結果的局所効率および前記選択された相互情報指標閾値を分析する
ように構成されたプロセッサと
を備える装置。
【請求項2】
前記信号が、ユニポーラもしくはバイポーラ電圧または活動電位電圧対時間信号である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信号から計算することが、前記信号から局所興奮到達時間(LAT)を推定することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記心臓組織が心房の一部であり、前記心房細動を分類することが、前記心房のリモデリングのパーセンテージを推定することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記心房細動の分類を前記装置のユーザに対して提示するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の電極が、多数のスパインを有するカテーテル上に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の電極に含まれる最近傍電極が3mm未満だけ離れている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することが、所与のノードに直接接続されたノードの部分グラフを生成することと、前記部分グラフの各々について局所効率指標を計算することと、計算された前記局所効率指標を平均化することと、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記グラフを生成するステップと、結果的局所効率および相互情報閾値の順序対のセットを生成するように、前記選択された相互情報指標閾値をインクリメントしながら前記それぞれの局所効率指標を平均化するステップと、を繰り返すことを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記心房細動を分類するために前記順序対のセットを分析することを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記順序対のセットを分析することが、前記セットに多項式を適合させることと、前記多項式の一次導関数に応答して前記心房細動を分類することと、を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記信号から計算することが、前記信号から、前記電極の全てのペアの間のそれぞれの相互情報指標を計算することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
方法であって、
心房細動を受けている心臓組織と接触している複数の電極から、それぞれの信号を取得することと、
前記信号から、前記電極の複数のペア間のそれぞれの相互情報指標を計算することと、
前記電極をノードとして、およびエッジを前記それぞれの相互情報指標が選択された相互情報指標閾値を超えるその間の接続として、グラフを生成することと、
接続されたノード間の経路長に基づいて、前記ノードと前記ノードに接続された別のノードとの間の情報交換の効率を示す、各ノードのそれぞれの局所効率指標を計算することと、
前記選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率を公式化するために、前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することと、
前記心房細動を分類するために、前記結果的局所効率および前記選択された相互情報指標閾値を分析することと
を含む方法。
【請求項14】
前記信号が、ユニポーラもしくはバイポーラ電圧または活動電位電圧対時間信号である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記信号から計算することが、前記信号から局所興奮到達時間(LAT)を推定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記心臓組織が心房の一部であり、前記心房細動を分類することが、前記心房のリモデリングのパーセンテージを推定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記心房細動の分類を前記方法のユーザに対して提示することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の電極が、多数のスパインを有するカテーテル上に配置されている、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の電極に含まれる最近傍電極が3mm未満だけ離れている、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することが、所与のノードに直接接続されたノードの部分グラフを生成することと、前記部分グラフの各々について局所効率指標を計算することと、計算された前記局所効率指標を平均化することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記グラフを生成するステップと、結果的局所効率および相互情報閾値の順序対のセットを生成するように、前記選択された相互情報指標閾値をインクリメントしながら前記それぞれの局所効率指標を平均化するステップと、を繰り返すことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記心房細動を分類するために前記順序対のセットを分析することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記順序対のセットを分析することが、前記セットに多項式を適合させることと、前記多項式の一次導関数に応答して前記心房細動を分類することと、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記信号から計算することが、前記信号から、前記電極の全てのペアの間のそれぞれの相互情報指標を計算することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年1月4日に出願された米国仮特許出願第63/133,723号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して心臓学に関し、具体的には心不整脈に関する。
【背景技術】
【0003】
心房細動(AF)は、2050年までに米国で600~1200万人、2060年までにヨーロッパで1790万人に影響を及ぼすと予測される、最も一般的な不整脈である。高周波(RF)または不可逆電気穿孔(IRE)またはパルスフィールド(PF)アブレーションは、心臓内の電波の経路を変更するように作用するAFの治療選択肢である。しかしながら、アブレーションを効果的に適用するためには、AFのソースまたはドライバを位置特定することが重要であり、これを実施するための方法が知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、
心房細動を受けている心臓組織と接触している複数の電極から、それぞれの信号を取得することと、
信号から、電極の複数のペア間のそれぞれの相互情報指標を計算することと、
電極をノードとして、およびエッジをそれぞれの相互情報指標が選択された相互情報指標閾値を超えるその間の接続として、グラフを生成することと、
接続されたノード間の経路長に基づいて、ノードとノードに接続された別のノードとの間の情報交換の効率を示す、各ノードのそれぞれの局所効率指標を計算することと
選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率を公式化するために、ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することと、
心房細動を分類するために、結果的局所効率および選択された相互情報指標閾値を分析することと
からなる方法を提供する。
【0005】
信号は、ユニポーラもしくはバイポーラ電圧または活動電位電圧対時間信号であり得る。
【0006】
典型的には、信号から計算することは、信号から局所興奮到達時間(LAT)を推定することを含む。
【0007】
開示される実施形態では、心臓組織は心房の一部であり、心房細動を分類することは、心房のリモデリングのパーセンテージを推定することを含む。
【0008】
更に開示される実施形態では、方法は、心房細動の分類を方法のユーザに対して提示することを含む。
【0009】
複数の電極は、多数のスパインを有するカテーテル上に配置されてもよい。
【0010】
複数の電極に含まれる最近傍電極は、3mm未満だけ離れている。
【0011】
別の実施形態では、ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することは、所与のノードに直接接続されたノードの部分グラフを生成することと、部分グラフの各々について局所効率指標を計算することと、計算された局所効率指標を平均化することと、からなる。
【0012】
更に別の実施形態では、方法は、グラフを生成するステップと、結果的局所効率および相互情報閾値の順序対のセットを生成するように、選択された相互情報指標閾値をインクリメントしながらそれぞれの局所効率指標を平均化するステップと、を繰り返すことを含む。
【0013】
順序対のセットは、心房細動を分類するために分析され得る。典型的には、順序対のセットを分析することは、セットに多項式を適合させることと、多項式の一次導関数に応答して心房細動を分類することと、からなる。
【0014】
更に別の実施形態では、信号から計算することは、信号から、電極の全てのペアの間のそれぞれの相互情報指標を計算することを含む。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、装置であって、
心房細動を受けている心臓組織と接触するように構成された複数の電極を有するプローブと、
プロセッサであって、
電極から信号を受信し、信号から、電極の複数のペア間の相互情報指標を計算し、
電極をノードとして、およびエッジをそれぞれの相互情報指標が選択された相互情報指標閾値を超えるその間の接続として、グラフを生成し、
接続されたノード間の経路長に基づいて、ノードとノードに接続された別のノードとの間の情報交換の効率を示す、各ノードのそれぞれの局所効率指標を計算し
選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率を公式化するために、ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化し、
心房細動を分類するために、結果的局所効率および選択された相互情報指標閾値を分析する
ように構成されたプロセッサと
を含む装置も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【
図1】本発明の一実施形態による、心房細動分類システムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、システムのプロセッサによって実行されるアルゴリズムのステップのフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態による、2つのヒストグラムを示す。
【
図4】本発明の一実施形態による、例示的な概略的領域情報グラフである。
【
図5A】本発明の一実施形態による、部分グラフを示す概略図である。
【
図5B】本発明の一実施形態による、部分グラフを示す概略図である。
【
図6A】本発明の一実施形態による、結果的局所効率対相互情報閾値の概略グラフである。
【
図6B】本発明の一実施形態による、結果的局所効率対相互情報閾値の概略グラフである。
【
図7A】本発明の一実施形態による、結果的局所効率対相互情報閾値の更なる概略グラフである。
【
図7B】本発明の一実施形態による、結果的局所効率対相互情報閾値の更なる概略グラフである。
【
図7C】本発明の一実施形態による、結果的局所効率対相互情報閾値の更なる概略グラフである。
【
図8】本発明の一実施形態による、局所効率一次導関数対相互情報閾値の概略グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概要
心房細動(AF)について、AFのドライバを位置特定することが重要であるが、RF(高周波)またはIRE(不可逆電気穿孔)/パルスフィールド(PF)アブレーションの最適な戦略を識別するために心房細動を分類することもまた重要である。大幅なリモデリング、すなわち心房の電気生理学的および/または構造的変更を有する領域は、心房細動維持機構において重要であり得る。その結果、心房がリモデリングされたか否かを知ることは、マッピングおよびアブレーション戦略の改善につながる。
【0018】
本開示は、細動している心房にどの程度のリモデリングが存在するかを推定するための新規な戦略を開発する。
【0019】
本発明の一実施形態では、電極が心房細動を受けている心臓組織に接触するように、複数の電極を備えるプローブがヒト患者に挿入される。プロセッサは、電極から信号を取得し、プローブの電極の各ペア間の相互情報指標を計算する。電極の所与のペアについて、相互情報指標は、ペアの信号の相互依存性の数値を提供する。(例えば、信号が互いに独立している場合、指標はゼロに近い。)
【0020】
プロセッサは、電極をノードとし、選択された相互情報指標閾値を超えるエッジをノード間の接続として、グラフを生成する。一実施形態では、閾値は,電極の少なくとも50%が接続を有するように選択される。
【0021】
プロセッサは、ノードの各々について局所効率指標を計算し、所与のノードの局所効率指標は、所与のノードに接続されたノードがどれほど効率的に情報を交換するかの尺度である。次いで、プロセッサは、選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率指標を生成するために、グラフの局所効率指標を平均化する。
【0022】
プロセッサは、グラフを生成するステップと、結果的局所効率および相互情報閾値の順序対のセットを生成するように、選択された相互情報指標閾値をインクリメントしながらそれぞれの局所効率指標を平均化するステップとを繰り返す。次いで、プロセッサは、心房細動を分類するように、順序対のセットを分析する。
【0023】
分類は、典型的に、心臓組織のリモデリングのパーセンテージを推定することを含む。
【0024】
詳細な説明
以下の説明において、図面中の同様の要素は、同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別用の数字に文字を添えることにより、区別される。
【0025】
ここで、本発明の一実施形態による、心房細動(AF)分類システム20の概略描写図である、
図1を参照する。
図1は、患者28の心臓26の組織からユニポーラまたはバイポーラ心臓内ECG(心電計)信号を取得するために、本明細書ではプローブ24とも呼ばれるカテーテル24を使用している医師22を示す。カテーテル24は、その遠位端31に、機械的に可撓性であり得る複数のスパイン30を備え、スパインの各々には、2つ以上の電極32がある。電極32は、最近傍電極間の分離が3mm未満となるように、スパイン30上に配置される。
図1は5つのスパインを有するカテーテルを示すが、本発明の実施形態は、他の数のスパインを有するカテーテル、並びに複数の電極を有する他のカテーテルを備え、最近傍電極は3mm未満だけ分離している。
【0026】
電極32は、カテーテル24およびインターフェース34の導体を介して、プロセッサ36に結合されている。プロセッサ36は、処理ユニット42、典型的には中央処理ユニット(CPU)を備え、本明細書ではCPU42とも呼ばれ、これはメモリ46に結合されている。メモリ46は、ECGモジュール50、追跡モジュール58、およびAF分析モジュール54など、いくつかのモジュールを備える。これらのモジュールの機能は、以下に記載される。
【0027】
CPU42は、通常、本明細書に記載された機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアを用いる汎用プロセッサを含む。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でダウンロードされ得るか、またはソフトウェアは、代替的に、もしくは付加的に、磁気メモリ、光学メモリ、または電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上に提供および/または記憶され得る。
【0028】
医師22は、キーパッドまたはポインティングユニットの入力デバイス70、並びにスクリーン74を介してプロセッサ36と通信し、プロセッサ36は、プロセッサによって実行された処置の結果をスクリーン上に提示し得る。
【0029】
システム20において、CPU42は、追跡モジュール58を使用して電極32の位置を追跡し得る。一実施形態では、CPUおよびモジュールは、システム20内に高度現在位置(Advanced Current Location:ACL)システムを実装するように構成されている。ACLシステムは、米国特許第8,456,182号に記載されている。ACLシステムでは、プロセッサは、遠位電極32の各々と患者28の皮膚に結合された複数の表面電極66との間で測定されたインピーダンスまたは電流に基づいて、遠位電極のそれぞれの位置を推定する。説明を容易にするために、1つの表面電極66のみが
図1に示されている。プロセッサは、次いで、遠位電極32から受信された任意の電気生理学的信号を、信号が取得された位置と関連付け得る。
【0030】
代替的または追加的に、CPUおよびモジュール58は、カリフォルニア州アービンのBiosense Websterによって製造されたCarto(登録商標)システムで使用されるような、並びに米国特許第5,391,199号、同第5,433,489号、および同第6,198,963号に記載されるような、電磁追跡システムを使用して、電極32の位置を追跡するように構成されている。この場合、1つ以上の磁気センサ38、典型的には単軸、二軸、または三軸コイルが、遠位端31に取り付けられる。加えて、交番磁界放射体のセット60が、患者28の近傍に、典型的にはその下に配置される。セット60の磁場に応答して、センサ38内で生成された電流は、モジュール58によって記録され、モジュールおよびCPUは、遠位端の形状が既知であるかまたは推定され得るので、遠位端の位置、並びに電極32の位置を判定するために電流を分析する。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態による、医師22の全体的な制御下で、プロセッサ36によって実行されるアルゴリズムのステップのフローチャートである。フローチャートの最初のステップ100において、医師22は、患者が心房細動を有するときに、プローブ24を患者28に挿入する。プロセッサ36は、プローブの遠位端31を追跡するためにモジュール58を使用し、医師は、スクリーン74上でプローブの追跡を観察し、プローブの電極32が心臓26の、本明細書では左心房を含むと見なされる心房内の組織の所望の部位に接触するまで遠位端を操作する。
【0032】
典型的には、心房内の追跡は、スクリーン74上に提示された心房の事前取得されたマップ78にプローブのアイコンを重ねて、プロセッサ36によって医師に提示される。モジュール58によって提供される追跡の使用に加えて、医師は、電極32と患者28の皮膚に取り付けられた戻り電極80との間のインピーダンスを測定するためにプロセッサ36を使用し、インピーダンスから、電極と心房組織との接触を確認し得る。
【0033】
所定位置につくと、医師22は、各電極32について、ユニポーラ信号のセット、すなわち電極80に対して測定された電圧のセットを取得および記録するために、プローブ24を動作させる。典型的には、信号のセットは、およそ2分の期間、すなわちおよそ150の心拍数にわたって取得されるが、本発明の実施形態は、より短いかまたは長い期間にわたって信号を取得してもよい。典型的には、最低30秒のAFが記録されるべきである。CPU42は、取得された信号をメモリ46に記憶させ、各信号について、CPUは、局所興奮到達時間(LAT)を計算するために、ECGモジュール50を使用する。患者28は心房細動を有するため、洞調律の心臓とは異なり、心臓の固定位置にある1つの電極のLAT値は変化する値を有し、すなわち、150心拍について、150の異なるLAT値があり得ることが、理解されるだろう。
【0034】
第1の分析ステップ104において、CPU42は、各電極のLAT値のセットをヒストグラムのビンに整理するために、AF分析モジュール54を使用する。典型的には、以下に記載される計算を簡素化するために、ヒストグラムは等幅ビンを有する。本発明の実施形態は、LAT値の分布を表すためにヒストグラムを使用し得る。一実施形態では、ビンの数はおよそ
【0035】
【数1】
であり、ここでLはセット内のLAT値の数である。
【0036】
図3は、本明細書では電極XおよびYとも呼ばれる、電極32Xおよび32Yの、本発明の一実施形態による、2つの等幅ビンヒストグラムを示す。CPUによって実行される計算において、所与のビンの値の数は、ビンの平均LATの発生確率
【0037】
【0038】
図2のフローチャートのステップ104に戻ると、モジュール54は、式(1)にしたがって、電極32の複数のペアの相互情報指標を推定する。
【0039】
【数3】
ここで、Nはヒストグラムにおけるビンの数を表し、
Xは第1の所与の電極であり、
Yは第2の所与の電極であり、
【0040】
【数4】
およびx
iは電極Xのヒストグラムのi番目のビンにおけるLAT値の数であり、
【0041】
【数5】
およびy
iは電極Yのヒストグラムのi番目のビンにおけるLAT値の数であり、
Lは各ヒストグラムにおける値の総数であり、
【0042】
【0043】
以下の説明では、別途明記されている場合を除き、相互情報指標は、電極32の全てのペアについて、式(1)を使用して推定される。しかしながら、当業者は、例えば電極のうちのいくつかがプロセッサ36に結合されていない場合、必要な変更を加えて、電極32の全てのペアよりも少ないペアについて指標が推定される実施形態に説明を適合させることが可能であり、全てのこのような実施形態は、本発明の範囲に含まれると見なされる。
【0044】
相互情報指標は、当該技術分野で知られており、2つの信号間の依存性の尺度、すなわち、他方の観察に基づいて一方の信号に関して得られた情報の量である。したがって、一方の信号が他方の決定論的関数である場合、これらの相互情報は最大化される。しかし、2つの信号が互いに完全に独立している場合、これらの相互情報は0に近い。
【0045】
グラフ準備ステップ108において、CPU42は、電極ペアの設定パーセンテージがその値を上回る相互情報値を有するように相互情報閾値を設定するために、モジュール54を使用し、次いで、グラフのノードが電極32を表し、ノード間のエッジが閾値以上の接続を表す、本明細書では領域情報グラフとも呼ばれるグラフを準備する。典型的には、閾値は、電極ペアの50%を含むように最初に設定される。
【0046】
図4は、本発明の一実施形態による、CPU42によって準備される例示的な概略的領域情報グラフ82である。例として、グラフ82には、カテーテルの遠位端31の電極32の数に対応する、48個のノード84がある。エッジ86は、相互情報閾値以上の接続に対応するノードを接続する。
【0047】
部分グラフステップ112において、領域情報グラフの各所与のノードについて、モジュール54は、考慮されている所与のノードに接続されたノードのセットを備える、部分グラフを生成する。CPU42は、ペア間の接続の最小数として、セット内のノードの各ペア間の最短経路を計算し、計算のために、CPUは、あらゆる所与の接続が単位長さを有すると見なす。最短経路長は、メモリ46に記憶される。
【0048】
図5Aおよび
図5Bは、本発明の一実施形態による、ノード84Aの部分グラフ88およびノード84Bの部分グラフ90をそれぞれ示す、領域情報グラフ82の概略図である。
【0049】
図5Aに示されるように、ノード84Aは、それぞれノード84B、84C、84D、および84Eとの4つの接続またはエッジ86A、86B、86C、および86Dを有する。したがって、ノード84Aの部分グラフ88は、ノード84B、84C、84D、および84Eを備える。これらのノードのペア間の最短経路長は、
図5Aの検査から決定されてもよく、表Iに示される。
【0050】
【0051】
図5Bに示されるように、ノード84Hは、それぞれノード84J、84K、および84Lとの3つの接続またはエッジ86J、86K、および86Lを有する。したがって、ノード84Hの部分グラフ90は、ノード84J、84K、および84Lを備える。ノード84Aとは対照的に、ノード84Hの部分グラフのノード間には経路がない。
【0052】
ステップ112では、式(2)にしたがって、各ノードについて局所効率指標Elocalを計算するために、最短経路長の逆数が使用される。
【0053】
【数7】
ここで、N
Giは部分グラフGi内のノード数であり、
L
ijは部分グラフGi内のノードiとjとの間の最短経路長である。
【0054】
局所効率は、脳を評価する際に使用されてきた。これは、中央ノードが除去されたときに各部分グラフがどれほどうまく情報を交換するかを示す障害耐性を意味する。
【0055】
CPU42は、領域情報グラフ内の各ノードの局所効率指標を計算するために、式(2)を使用する。したがって、ノード84Aについて、表Iの経路長の値を使用すると、式(2)ではElocalが0.0972となる。
【0056】
ノード84Hでは、部分グラフのノード間に経路がないので、Elocalは0である。
【0057】
平均化ステップ116では、設定された相互情報閾値におけるグラフに結果的局所効率を提供するために、計算された局所効率が平均化される。CPU42は、結果的局所効率および対応する相互情報閾値を順序対としてメモリ46に記憶させる。
【0058】
決定ステップ120およびインクリメントステップ124に示されるように、CPU42は、指標の最大値、典型的にはおよそ95%に到達するまで、ステップ108、112、および116を繰り返し、各反復で相互情報指標閾値をインクリメントする。各反復で、CPUは、反復が終了したときにCPU42に利用可能な順序対のセットがあるように、結果的局所効率および対応する相互情報閾値を順序対として記憶する。
【0059】
結果ステップ128において、ステップ116で生成された順序対のセットから、CPU42は、結果的局所効率対相互情報閾値のグラフを生成する。
【0060】
図6Aおよび6Bは、本発明の一実施形態による、異なる電極間隔を有するカテーテルの結果的局所効率対相互情報閾値の概略グラフである。
図6Aにおいて、グラフ200は、1mmの電極の最小間隔を有するカテーテルによって取得された回転信号のシミュレーション結果を示す。
図6Bでは、グラフ204は、3mmの最小間隔を有するカテーテルによって取得された回転信号のシミュレーション結果を示す。
【0061】
グラフ200に示されるように、プラトーの両側の勾配と比較して、グラフの勾配が減少しているプラトー202がある。グラフ204には、このようなプラトーはない。グラフ200および204は、電極の間隔が3mm未満であるとき、信号が回転していればグラフにプラトー領域があることを示している。電極の間隔が3mm以上であるとき、このプラトーは存在しない。
【0062】
図7A、7B、および7Cは、本発明の一実施形態による、2mmの最小電極間隔を有するカテーテルの結果的局所効率対相互情報閾値の概略グラフである。グラフは、心臓26の組織のリモデリングの異なるパーセンテージについてのシミュレーション結果のものである。グラフ210は10%リモデリング、グラフ214は50%リモデリング、グラフ218は90%リモデリングである。グラフから明らかなように、10%リモデリングはプラトーを生成しないが、50%リモデリングおよび90%リモデリングはそれぞれプラトー216および220を生成する。
【0063】
プラトーの存在を頼明確に説明するために、ステップ128において、CPU42は、生成されたグラフに多項式、典型的には三次多項式を適合させ、多項式の一次導関数を計算し、一次導関数対情報閾値のグラフをプロットする。
【0064】
図8は、本発明の一実施形態による、グラフ210、214、および218から生成された、局所効率一次導関数対相互情報閾値の概略グラフを示す。
図8のグラフを作成するために、CPU42は、グラフ210、214、および218の各々に三次多項式を適合させる。次いで、処理ユニットは、適合された多項式の各々について局所効率の一次導関数を計算し、一次導関数対相互情報閾値をプロットする。
【0065】
グラフ224は、10%リモデリンググラフ210の一次導関数局所効率対相互情報閾値であり、
グラフ228は、50%リモデリンググラフ214の一次導関数局所効率対相互情報閾値であり、
グラフ232は、90%リモデリンググラフ218の一次導関数局所効率対相互情報閾値である。
【0066】
グラフに見られるように、グラフ内の最小値の存在は、大きい、または非常に大きいリモデリングを示すが、少量、例えば10%リモデリングでは、グラフに最小値はない。更に、最小値の「鋭さ」、例えば最小値での曲率半径は、リモデリングの程度を示し、本発明の実施形態は、モデリングの程度を評価するために、曲率半径、または鋭さの何らかの他の指標を測定し得る。
【0067】
ステップ128において、一次導関数グラフは、スクリーン74上で医師22に提示され得る。代替的または追加的に、CPU42は、一次導関数グラフに最小値があるか否かを判定してもよく、ある場合には、CPUはその鋭さを測定してもよい。判定から、CPUは、「有意なリモデリングなし」、「中程度のリモデリング」、または「高リモデリング」などの結論をスクリーン74上に提示し得る。
【0068】
ステップ128において、記載される全ての物理的なグラフをCPU42が生成する必要はないこと、並びにCPUはグラフのうちのいくつかに対応するデータを生成し得ることが、理解されるだろう。言い換えると、CPUは、ステップ116からの順序対を使用するだけでよく、順序対から、一次導関数グラフおよび/または上述の結論を提示し得る。
【0069】
上記の説明は、簡単にするために、電極によって取得された信号が、LATを形成するために使用されると仮定している。当業者は、必要な変更を加えて、LATではなく、信号の電圧、典型的にはユニポーラもしくはバイポーラ電圧、または活動電位電圧を使用して、説明を適合させることができるだろう。
【0070】
上に記載される実施形態は例として挙げたものであり、本発明は本明細書の上記で具体的に図示および説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書において上に記載される様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0071】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
心房細動を受けている心臓組織と接触している複数の電極から、それぞれの信号を取得することと、
前記信号から、前記電極の複数のペア間のそれぞれの相互情報指標を計算することと、
前記電極をノードとして、およびエッジを前記それぞれの相互情報指標が選択された相互情報指標閾値を超えるその間の接続として、グラフを生成することと、
接続されたノード間の経路長に基づいて、前記ノードと前記ノードに接続された別のノードとの間の情報交換の効率を示す、各ノードのそれぞれの局所効率指標を計算することと、
前記選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率を公式化するために、前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することと、
前記心房細動を分類するために、前記結果的局所効率および前記選択された相互情報指標閾値を分析することと
を含む方法。
(2) 前記信号が、ユニポーラもしくはバイポーラ電圧または活動電位電圧対時間信号である、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記信号から計算することが、前記信号から局所興奮到達時間(LAT)を推定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記心臓組織が心房の一部であり、前記心房細動を分類することが、前記心房のリモデリングのパーセンテージを推定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記心房細動の分類を前記方法のユーザに対して提示することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0072】
(6) 前記複数の電極が、多数のスパインを有するカテーテル上に配置されている、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記複数の電極に含まれる最近傍電極が3mm未満だけ離れている、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することが、所与のノードに直接接続されたノードの部分グラフを生成することと、前記部分グラフの各々について局所効率指標を計算することと、計算された前記局所効率指標を平均化することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記グラフを生成するステップと、結果的局所効率および相互情報閾値の順序対のセットを生成するように、前記選択された相互情報指標閾値をインクリメントしながら前記それぞれの局所効率指標を平均化するステップと、を繰り返すことを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記心房細動を分類するために前記順序対のセットを分析することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0073】
(11) 前記順序対のセットを分析することが、前記セットに多項式を適合させることと、前記多項式の一次導関数に応答して前記心房細動を分類することと、を含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記信号から計算することが、前記信号から、前記電極の全てのペアの間のそれぞれの相互情報指標を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 装置であって、
心房細動を受けている心臓組織と接触するように構成された複数の電極を有するプローブと、
プロセッサであって、
前記電極から信号を受信し、前記信号から、前記電極の複数のペア間の相互情報指標を計算し、
前記電極をノードとして、およびエッジを前記それぞれの相互情報指標が選択された相互情報指標閾値を超えるその間の接続として、グラフを生成し、
接続されたノード間の経路長に基づいて、前記ノードと前記ノードに接続された別のノードとの間の情報交換の効率を示す、各ノードのそれぞれの局所効率指標を計算し、
前記選択された相互情報指標閾値の結果的局所効率を公式化するために、前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化し、
前記心房細動を分類するために、前記結果的局所効率および前記選択された相互情報指標閾値を分析する
ように構成されたプロセッサと
を備える装置。
(14) 前記信号が、ユニポーラもしくはバイポーラ電圧または活動電位電圧対時間信号である、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記信号から計算することが、前記信号から局所興奮到達時間(LAT)を推定することを含む、実施態様13に記載の装置。
【0074】
(16) 前記心臓組織が心房の一部であり、前記心房細動を分類することが、前記心房のリモデリングのパーセンテージを推定することを含む、実施態様13に記載の装置。
(17) 前記プロセッサが、前記心房細動の分類を前記装置のユーザに対して提示するように構成されている、実施態様13に記載の装置。
(18) 前記複数の電極が、多数のスパインを有するカテーテル上に配置されている、実施態様13に記載の装置。
(19) 前記複数の電極に含まれる最近傍電極が3mm未満だけ離れている、実施態様13に記載の装置。
(20) 前記ノードのそれぞれの局所効率指標を平均化することが、所与のノードに直接接続されたノードの部分グラフを生成することと、前記部分グラフの各々について局所効率指標を計算することと、計算された前記局所効率指標を平均化することと、を含む、実施態様13に記載の装置。
【0075】
(21) 前記グラフを生成するステップと、結果的局所効率および相互情報閾値の順序対のセットを生成するように、前記選択された相互情報指標閾値をインクリメントしながら前記それぞれの局所効率指標を平均化するステップと、を繰り返すことを含む、実施態様13に記載の装置。
(22) 前記心房細動を分類するために前記順序対のセットを分析することを含む、実施態様21に記載の装置。
(23) 前記順序対のセットを分析することが、前記セットに多項式を適合させることと、前記多項式の一次導関数に応答して前記心房細動を分類することと、を含む、実施態様22に記載の装置。
(24) 前記信号から計算することが、前記信号から、前記電極の全てのペアの間のそれぞれの相互情報指標を計算することを含む、実施態様13に記載の装置。
【外国語明細書】