(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105539
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルカソード
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20220707BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220707BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220707BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220707BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220707BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20220707BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220707BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20220707BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220707BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220707BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220707BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20220707BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220707BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M4/134
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/40
H01M10/0566
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/1391
H01M4/525
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074050
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2018539234の分割
【原出願日】2016-10-14
(31)【優先権主張番号】62/241,475
(32)【優先日】2015-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】518132226
【氏名又は名称】ユーシカゴ アーゴン,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】マーク シー.ハーサム
(72)【発明者】
【氏名】レイラ ジェイバー アンサリ
(72)【発明者】
【氏名】カナン ピー.パンタンベカル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エム.サッカレー
(57)【要約】
【課題】グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルカソードを提供する。
【解決手段】高性能電池、Liイオン電池用のグラフェンコーティングされたリチウムマンガン酸化物スピネルカソード、及びそれを作製するための方法を本明細書に開示する。単層グラフェンコーティングは、明確に画定されている固体電解液相間層の形成を同時に促進しながら、カソードにおけるマンガン損失を著しく低減させることが示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜と、グラフェン膜とを含むカソードであって、前記グラフェン膜が、前記金属酸化物膜の表面に配置されている、前記カソード。
【請求項2】
前記金属酸化物スピネルが、LiMn2O4を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項3】
前記金属酸化物スピネルが、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む、請求項1に記載のカソード。
【請求項4】
前記金属酸化物スピネルが、LiMxMn2-xO4を含み、Mが、L、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ以上2以下の任意の実数である、請求項3に記載のカソード。
【請求項5】
前記金属酸化物スピネル膜が、100nm以上150nm以下の厚さを有する、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項6】
前記グラフェン膜が、実質的に単層のグラフェン膜を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項7】
前記グラフェン膜が、20%以下の二重層グラフェン島を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項8】
前記グラフェン膜が、空格子点欠陥を実質的に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項9】
前記グラフェン膜が、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項10】
マンガン原子が、前記グラフェン膜の空格子点欠陥で結合されている、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項11】
前記金属酸化物スピネル膜が、バルク酸化状態を有する複数のマンガン原子と、表面酸化状態を有する複数のマンガン原子とを含み、前記表面酸化状態が、前記バルク酸化状態よりも高い、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項12】
前記バルク酸化状態が+3である、請求項11に記載のカソード。
【請求項13】
前記表面酸化状態が+3よりも高い、請求項11または12に記載のカソード。
【請求項14】
前記表面酸化状態が+4である、請求項11~13のいずれかに記載のカソード。
【請求項15】
電解液と接触するときに、前記グラフェン膜に配置される固体電解液相間層を形成するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項16】
前記固体電解液相間層が、炭酸リチウムを含む、請求項15に記載のカソード。
【請求項17】
前記固体電解液相間膜が、100nm以下の厚さを有する、請求項15または16に記載のカソード。
【請求項18】
前記固体電解液相間膜が、1nm以上の厚さを有する、請求項15~17のいずれかに記載のカソード。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載のカソードと、アノードと、電解液とを含む電気化学セル。
【請求項20】
前記アノードがリチウムまたはグラファイトを含む、請求項19に記載の電気化学セル。
【請求項21】
前記電解液が、リチウム塩及び有機カーボネート溶媒を含む、請求項19~20のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項22】
前記電解液が、1:1のエチレンカーボネート:ジメチルカーボネートの溶液に1M LiClO4を含む、請求項19~21のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項23】
カソードを調製する方法であって:
(a)リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜を得ることと;
(b)グラフェン膜を得ることと;
(c)前記グラフェン膜を前記金属酸化物スピネル膜の表面上に転写することと
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記金属酸化物スピネル膜が、第1支持体上に調製され、前記グラフェン膜が、第2支持体上に調製される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記転写ステップ(c)が、前記グラフェン膜上に転写支持体を調製することと;前記第2支持体を除去することと;前記金属酸化物スピネル膜に前記グラフェン膜を配置することとを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記転写支持体を除去することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記金属酸化物スピネル膜が、スパッタリングによって調製される、請求項23~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記グラフェン膜が、化学蒸着によって調製される、請求項23~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記金属酸化物スピネル膜が、LiMn2O4を含む、請求項23~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記金属酸化物スピネルが、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む、請求項23~28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記金属酸化物スピネルが、LiMxMn2-xO4を含み、Mが、L、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ(0)以上二(2)以下の任意の実数である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記金属酸化物スピネル膜が、100nm以上150nm以下の厚さを有する、請求項23~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記グラフェン膜が、実質的に単層のグラフェン膜を含む、請求項23~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記グラフェン膜が、20%、15%、10%、または5%以下の二重層グラフェン島を含む、請求項23~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記グラフェン膜が、空格子点欠陥を実質的に含まない、請求項23~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記グラフェン膜が、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない、請求項23~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
マンガンが前記空格子点欠陥で結合されている、請求項23~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記カソードを、固体電解液相間層を形成するのに十分な条件下で電解液に曝露することをさらに含み、第2膜が第1膜と前記固体電解液相間層との間に退位している(deposed)、請求項23~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記固体電解液相間層を形成するのに十分な前記条件は、グラフェンコーティングが前記電解液と接触するとき、充電/放電サイクルの際に電流を印加することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記固体電解液相間層が、炭酸リチウムを含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記固体電解液相間層が、100nm以下の厚さを有する、請求項38~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記固体電解液相間層が、1nm以上の厚さを有する、請求項38~41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記電解液が、有機カーボネート溶媒中にリチウム塩を含む、請求項38~42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記電解液が、1:1のエチレンカーボネート:ジメチルカーボネートの溶液に1M LiClO4を含んでいる、請求項38~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記第1支持体が金属を含む、請求項24~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記金属が、スチールである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記転写支持体が金属を含む、請求項24~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記金属が、銅またはスチールである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記転写支持体が、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリジメチルシロキサンを含む、請求項24~48のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の利益の記述
この発明は、エネルギー省によって授与されたDE-AC02-06CH11357(アルゴンヌ国立研究所がノースウェスタン大学に下請けに出している;4F-32002)の下に政府支援を受けてなされたものである。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、電極を対象とする。特に、本発明は、グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルカソードを対象とする。
【背景技術】
【0003】
より高速充電の、より高容量の、より安価で、より信頼性のあるリチウムイオン電池を作製する競争が、かかる電池が1991年にSonyによって商品化されて以来継続している[1,2]。携帯用電子機器用の現代の市販のリチウムイオン電池はLiCoO2カソードを主に用いているが、酸化マンガンは、高荷重輸送用途、例えば全ての電気及びハイブリッド電気自動車にとってより魅力的である。なぜなら、これら酸化マンガンは、豊富であり、低コストでありかつ環境に優しい材料であるからである[1,3]。理想的なLiMn2O4(LMO)スピネル結晶構造では、マンガンイオンが最密酸素面間において3:1の比で交互に並び、リチウムイオン輸送のための相互接続された格子間サイトの三次元ネットワークを作り出している[4,5]。この構造は、高出力用途に必要とされる迅速なリチオ化/脱リチオ化(放電/充電)反応を可能にする。さらに、LMOは、特に、高度に脱リチオ化された状態において、LiCoO2と比較して改善された熱安定性を付与し、結果として、より安全な電池をもたらす[6]。
【0004】
しかし、LMOスピネルカソードの主な不利点は、不均化反応:2Mn3+→Mn4++Mn2+[7,8];の結果として充電/放電の際にカソードの表面から電解液中にMn2+が溶解することに起因して長期のサイクリング後に容量を損失することである。研究者らは、多くの変更によってMn3+溶解を軽減しようと試みてきた。変更の1つのタイプは、カチオン置換(例えば、LiMxMn2-xO4、M=Li、Co、Ni、Zn)[9-14]によって元のLMO電極の組成を変化させて、構造中のMn3+の量を低減させることである。代替の変更は、Al2O3
[15]、ZrO2
[16]、Y2O3
[17]、及びTiO2
[7]を含めた保護表面酸化物コーティングを付与することである。例えば、Juらは、ハイブリッドグラフェン/Y2O3/LiMn2O4ミクロスフェア、及びLiMn2O4コアを包囲したY2O3酸化物によるMn3+溶解の抑制を開示した[J.Alloy and Compounds 2014,584,454]。なお別の変更において、Zhuoらは、約3nm厚、すなわち、グラフェンよりもおよそ一桁厚い保護コーティングとして「グラフェン様」膜を調製するための液状ポリアクリロニトリル(LPAN)の使用を開示している[J.Power Sources 2014,247,721]。
【0005】
Mn3+溶解を軽減する試みにも関わらず、表面伝導率を損なわない薄くて均一な表面膜の実現が未解決課題のままである。
【発明の概要】
【0006】
スピネル結晶構造を有するリチウムマンガン酸化物(LMO)は、低コストかつ環境に優しいカソード材料である。しかし、LMO由来のマンガンは、電池使用の結果としてLiイオン電池の電解液に溶解する。本明細書において、マンガン溶解を抑制しかつLMOカソードの性能を向上させる材料及び方法を開示する。特に、単層グラフェンコーティングは、マンガン溶解を抑制することにより、LMOカソードの性能及び寿命を向上させる。コーティングされていないLMOカソードを有するリチウムセルと比較して、グラフェンコーティングされたLMOカソードを有するセルは、改善された容量保持及び向上したサイクル安定性を与える。
【0007】
本発明の一態様は、リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜と、グラフェン膜とを含むカソードであって、グラフェン膜が金属酸化物膜の表面に配置されている、上記カソードである。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネルは、LiMn2O4を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネルは、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む。特定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、LiMxMn2-xO4を含み、Mが、L、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ以上2以下の任意の実数である。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、100nm以上150nm以下の厚さを有していてよい。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、実質的に単層のグラフェン膜を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、20%以下の二重層グラフェン島を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、空格子点欠陥を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない。ある一定の実施形態において、マンガン原子は、グラフェン膜の空格子点欠陥で結合されている。
【0008】
ある一定の実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、バルク酸化状態を有する複数のマンガン原子と、表面酸化状態を有する複数のマンガン原子とを含み、表面酸化状態がバルク酸化状態よりも高い。ある一定の実施形態において、バルク酸化状態は+3である。ある一定の実施形態において、表面酸化状態は+3よりも高い。特定の実施形態において、表面酸化状態は+4である。いくつかの実施形態において、グラフェン膜と、金属酸化物スピネル膜の表面との結合は、金属酸化物スピネル膜の表面における金属イオンの酸化状態への変化を結果としてもたらす場合がある。いくつかの実施形態において、酸化状態の変化は、酸化状態を、よりプラスにすることである。ある一定の実施形態において、酸化状態の変化は、+3から+4までである。
【0009】
いくつかの実施形態において、カソードは、カソードが電解液と接触するとき、グラフェン膜上に配置される固体電解液相間層を形成するように構成されている。いくつかの実施形態において、固体電解液相間層は、炭酸リチウムを含む。いくつかの実施形態において、固体電解液相間膜は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、または10nm以下の厚さを有する。いくつかの実施形態において、固体電解液相間膜は、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nm以上の厚さを有する。ある一定の実施形態において、固体電解液相間膜は、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nm以上、かつ100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、または10nm以下の厚さを有する。
【0010】
本発明の第2態様は、上記のカソードのいずれかと、アノード及び、電解液を含む電気化学セルである。いくつかの実施形態において、アノードは、リチウムまたはグラファイトを含む。いくつかの実施形態において、電解液は、リチウム塩及び有機カーボネート溶媒を含む。いくつかの実施形態において、電解液は、1:1のエチレンカーボネート:ジメチルカーボネートの溶液に1M LiClO4を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、上記のカソードのいずれかを調製する方法であって:リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜を得ることと;グラフェン膜を得ることと;グラフェン膜を金属酸化物スピネル膜の表面上に転写することとを含む上記方法である。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜が、第1支持体上に調製され、グラフェン膜が、第2支持体上に調製される。いくつかの実施形態において、転写ステップは、グラフェン膜上に転写支持体を調製することと;第2支持体を除去することと;金属酸化物スピネル膜にグラフェン膜を配置することとを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記方法は、転写支持体を除去することをさらに含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、スパッタリングによって調製される。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、化学蒸着によって調製される。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、LiMn2O4を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネルは、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む。特定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、LiMxMn2-xO4を含み、Mが、L、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ以上2以下の任意の実数である。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、100nm以上150nm以下の厚さを有する。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、実質的に単層のグラフェン膜を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、20%、15%、10%、または5%以下の二重層グラフェン島を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、空格子点欠陥を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、マンガン原子は、空格子点欠陥で結合されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記方法は、カソードを、固体電解液相間層を形成するのに十分な条件下で電解液に曝露することをさらに含み、第2膜が第1膜と固体電解液相間層との間に退位している(deposed)。いくつかの実施形態において、固体電解液相間層を形成するのに十分な条件は、グラフェンコーティングが電解液と接触するとき、充電/放電サイクルの際に電流を印加することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、固体電解液相間層は、炭酸リチウムを含む。いくつかの実施形態において、固体電解液相間膜は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、または10nm以下の厚さを有する。いくつかの実施形態において、固体電解液相間膜は、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nm以上の厚さを有する。ある一定の実施形態において、固体電解液相間膜は、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nm以上、及び100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、または10nm以下の厚さを有する。いくつかの実施形態において、電解液は、有機カーボネート溶媒中にリチウム塩を含む。ある一定の実施形態において、電解液は、1:1のエチレンカーボネート:ジメチルカーボネートの溶液に1M LiClO4を含む。いくつかの実施形態において、固体電解液相間層を形成するのに十分な条件は、グラフェンコーティングが電解液と接触するとき、充電/放電サイクルの際に電流を印加することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1支持体は、金属を含む。ある一定の実施形態において、金属は、スチールである。いくつかの実施形態において、第2支持体は、金属を含む。ある一定の実施形態において、金属は、銅またはスチールである。いくつかの実施形態において、転写支持体は、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリジメチルシロキサンを含む。
【0016】
本発明の非限定的な実施形態を、模式的であり、スケール通りに描かれることは意図されていない添付の図を参照して例により説明する。図において、示されているそれぞれ同一または略同一の構成要素は、典型的には、単数で表されている。明確さの目的で、あらゆる構成要素があらゆる図において標識されているわけではなく、また、図示が本発明を当業者に理解させるために必要でない場合、本発明の各実施形態のあらゆる構成要素が示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】サンプル調製プロセスの模式図を示す。グラフェンは、化学蒸着(CVD)を使用して銅箔において成長され、次いで、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)転写方法を使用してスピネルLiMn
2O
4(LMO)薄膜の頂部に転写されてよい。薄膜LMOは、アモルファスLMOのRFスパッタリングとアニーリングとによって作製されてよい。
【
図2B】スピネル結晶構造を示すLMO薄膜の斜入射X線回折を示す。
【
図2C】LMO薄膜上に転写されたグラフェンのSEM画像を示し;グラフェンが矢印によって示されている。
【
図2D】514nmのラマンレーザー波長を使用して得られたグラフェンコーティングされたLMOのラマンスペクトルを示す。2D(2700cm
-1)ピークの形状及び2D対G(1580cm
-1)の強度比は、単層グラフェンの特徴である。約620cm
-1における高強度ピークは、Mn-O振動モードに起因する。このピークは、Mn
4+-O結合に関係している625cm
-1における強いピーク、及びMn
3+-O結合に関係している約590cm
-1におけるショルダーにデコンボリューションされ得る。約2500cm
-1における浅いピークは、グラフェンD+D”に起因し、約2400cm
-1における鋭い特徴は、周囲窒素によるものである。
【
図3A】100mA/cm
3における、リチウムハーフセルでの、LMO及びグラフェン-LMO薄膜の容量保持対LMO及びグラフェンコーティングされたLMOカソードのサイクル数を示す。
【
図3B】種々の電流率(100~500mA/cm
3)におけるグラファイト/LMOフルセルでのコーティングされていない及びグラフェンコーティングされたLMOカソードの容量保持対サイクル数を示す。
【
図4A】LMO薄膜対リチウムのサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
【
図4B】LMO薄膜対リチウムの電圧-容量曲線を示す。
【
図4C】グラフェンコーティングされたLMO薄膜対リチウムのサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
【
図4D】グラフェンコーティングされたLMO薄膜対リチウムの電圧-容量曲線を示す。
【
図4E】コーティングされていないLMO薄膜対グラファイトの電圧-容量曲線を示す。
【
図4F】グラフェンコーティングされたLMO薄膜対グラファイトの電圧-容量曲線を示す。
【
図4G】LMO及びグラフェンコーティングされたLMO膜対リチウムのボルタンメトリー容量を示す。
【
図4H】LMO及びグラフェンコーティングされたLMO膜対グラファイトのボルタンメトリー容量を示す。
【
図5A】750のリチオ化/脱リチオ化サイクル後の、グラフェンコーティングされたLMOカソードについてのMn2PピークのXPS深さプロファイリングを示す。
【
図5B】350のリチオ化/脱リチオ化サイクル後の、コーティングされていないLMOカソードについてのMn2PピークのXPS深さプロファイリングを示す。
【
図5C】750のリチオ化/脱リチオ化サイクル後の、グラフェンコーティングされたLMOについての正規化されたLi1Sピークを示す。
【
図5D】350のリチオ化/脱リチオ化サイクル後の、コーティングされていないLMOについての正規化されたLi1Sピークを示す。
【
図5E】それぞれ750及び350サイクルでのリチウムハーフセル(3.5~4.4V)におけるリチオ化/脱リチオ化後のグラフェンコーティングされたLMO及びコーティングされていないLMOについてのMn2P(3/2)ピーク強度対深さの変動を示す。
【
図5F】100サイクルでのグラファイト/LMOフルセル(2~4.4V)におけるリチオ化/脱リチオ化後のグラフェンコーティングされたLMO及びコーティングされていないLMOについてのMn2P(3/2)ピーク強度対深さの変動を示す。
【
図6A】サイクリング後のグラフェンコーティングされたLMOについてのO1SピークのXPS深さプロファイルによるLMOカソードのSEI形成に対するグラフェンの効果を示す。
【
図6B】サイクリング後のコーティングされていないLMOについてのO1SピークのXPS深さプロファイルによるLMOカソードのSEI形成に対するグラフェンの効果を示す。
【
図6C】サイクリング後のグラフェンコーティングされたLMOの明視野断面STEM画像を示す。
【
図6D】サイクリング後のコーティングされていないLMOの明視野断面STEM画像を示す。
【
図6E】サイクリング後のグラフェンコーティングされたLMOの断面HRTEM画像を示す。
【
図6F】サイクリング後のコーティングされていないLMOの断面HRTEM画像を示す。
【
図7A】サイクリング後のLMO膜及びグラフェンコーティングされたLMO膜の斜入射x線回折測定を示す。
【
図7B】350サイクル後のLMOカソードのSEM画像を示す。
【
図7C】750サイクル後のグラフェンコーティングされたLMOのラマンスペクトルを示す。2Dピーク(約2400cm
-1)の左方への鋭いピークは、周囲窒素によるものである。
【
図7D】750サイクル後のグラフェンコーティングされたLMOのSEM画像を示す。
【
図8A】グラフェンシートに近づくMnについてのグラフェンにおけるDV(5-8-5)による拡散エネルギー障壁を示す。挿入図は、グラフェンシート付近のMn(グラフェンから0.6Å離れている)による閉鎖構成でのDVの構造を示す。
【
図8B】DV内でのMnについてのMnポテンシャルエネルギープロファイルを示す。挿入図は、開放構成でのDVの構造を示す。挿入図は、Kekule156原子グラフェンフレークモデルのDV付近の切断である。参照のために、真空に関しての化学量論(001)LiMn
2O
4表面でのLi及びMnの算出された結合エネルギーは、それぞれ4.9及び8.9eVである。
【
図9A】表面に対して垂直(90°)に吸着したグラフェンパッチについての薄膜LMO電極におけるLMO(001)表面を示す。
【
図9B】表面に対して45°で吸着したグラフェンパッチについての薄膜LMO電極におけるLMO(001)表面を示す。
【
図9C】表面に対して平行(0°)に吸着したグラフェンパッチについての薄膜LMO電極におけるLMO(001)表面を示す。
【
図10A】DFT+U計算からの、LMO(001)に対する吸着したグラフェンパッチ(GP)の効果を示す。Mnの3dの射影状態密度(DOS)の主要スピンチャネルを:a)バルクλ-MnO
2(Mn
4+)、λ-MnO
2表面(Mn
4+)、LMOバルク(Mn
3+及びMn
4+)、ならびに(001)LMO表面(Mn
3+)及び表面下(Mn
4+);について示す。フェルミ準位はDOSプロットにおいてゼロと設定される。
【
図10B】(001)LMO表面(Mn
4+)及び表面下(Mn
3.x+,X~0.75)に結合した0/45/90°グラフェンの効果を示す。フェルミ準位はDOSプロットにおいてゼロと設定される。
【
図11A】(001)Li
16Mn
32O
64表面の「長い」スラブにおいて垂直に吸着したグラフェンパッチの化学構造を示す。
【
図11B】(001)Li
16Mn
32O
64表面の「幅広い」スラブにおいて垂直に吸着したグラフェンパッチの化学構造を示す。
【
図11C】90°GP/Li
16Mn
32O
64(001)表面及びMn表面下のMnの3dの射影状態密度(DOS)の主要スピンチャネルを示し、Mn原子の酸化状態が+4であることが分かる。
【
図12】Mn-O平均結合長さを示し:Mn
3+は、グラフェンシートが存在するとき、その価数をMn
4+に変化させ、z方向の平均Mn-O結合長さが減少する。比較すると、表面下のMn
4+原子は、その価数をMn
3.x+に変化させ、平均Mn-O結合長さは、Mn
4+から僅かに増加する。
【
図13】金属-グラフェン結合エネルギー(eV)対二重空格子点(Å)からのずれを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
リチウムイオン電池などの電気化学セルにおいて金属酸化物スピネルの容量低下を著しく低減させることができるグラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルカソードを開示する。驚くべきことに、金属酸化物スピネルカソードにおけるグラフェンコーティングは、Mn3+溶解を実質的に抑制する。また、グラフェンコーティングは、薄くかつ明確に画定されている固体電解液相間層(SEI)の形成において補佐的に、マンガンイオンに選択的な拡散障壁を付与し、また、表面でMn3+イオンと相互作用して酸化状態をMn4+に増加させる。
【0019】
グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネル
本明細書に記載されているカソードとして、リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜と、グラフェン膜とを含むカソードであって、グラフェン膜が金属酸化物膜の表面に配置されている、上記カソードが挙げられる。ある一定の実施形態において、カソードは、カソードが電解液と接触するとき、グラフェン膜に配置される固体電解液相間層を形成するように構成されている。本明細書に開示されているカソードは、リチウムイオン電池において使用される、リチウム、マンガン、及び酸素を含むカソードを含めた、多くの用途において使用されてよい。
【0020】
X線光電子分光法(XPS)深さプロファイリングによるカソードの調査は、グラフェンコーティングされたLMOカソードからのマンガン溶解が、コーティングされていないLMOカソードと比較して著しく低減されることを示している。さらに、断面透過電子顕微鏡法(TEM)は、グラフェンコーティングされたLMOカソードにおける明確に画定されているSEI層を示している。
【0021】
本明細書に記載されているカソードのインシリコモデリングは、単層グラフェンによるマンガン溶解の抑制の根拠となるメカニズムを理解する手掛かりとなる。具体的には、DFT計算は、一般的なグラフェン欠陥が、リチウムと比較してマンガンイオンに選択的な拡散障壁であることを示している。さらに、DFT計算は、グラフェンが、酸化状態をMn4+に増加させる方法でLMOの(001)表面においてMn3+イオンと相互作用することにより、マンガン溶解を阻止することを実証している。
【0022】
金属酸化物スピネル
金属酸化物スピネルは、電極としての使用に好適ないずれの金属酸化物スピネル材料であってもよい。ある一定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、リチウム、マンガン、及び酸素を含む。任意選択的に、金属酸化物スピネルは、リチウムマンガン酸化物(LMO)材料であってよい。ある一定の特定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、LiMn2O4を含んでいてよい。金属酸化物スピネルは、限定することなく、Co、Ni、Y、Ti、及びZnを含めた、Li、Mn、及びO以外の元素を含んでいてよい。ある一定の実施形態において、上記の金属酸化物スピネルは、LiMxMn2-xO4:式中、M=Li、Co、Ni、またはZnであり、Xは、ゼロ(0)以上2(2)以下の任意の実数である;を含んでいてよい。ある一定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、単結晶であってよい。他の実施形態において、金属酸化物スピネルは、多結晶であってよい。多結晶金属酸化物スピネルについて、金属酸化物スピネル材料は、結晶粒を一緒に結合させる追加の材料を実質的に含まなくてよい。
【0023】
金属酸化物スピネルは、膜として調製される。ある一定の実施形態において、上記膜は、実質的に平面状であってよい。上記膜は、100nm以上、110nm以上、120nm以上、130nm以上、または140nm以上の厚さ(「T」)を有していてよい。上記膜は、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、または110nm以下のTを有していてよい。ある一定の実施形態において、上記膜は、限定することなく、100nmと150nmとの間のあらゆる厚さを含めた100nm~150nmのTを有する。
【0024】
上記膜は、限定することなく円板または直方体を含めたいずれの形状で調製されてもよい。円板では、Tは、実質的に、直径(「D」)の長さ未満である。いくつかの実施形態において、Dは、1cm超であってよい。いくつかの実施形態において、Dは、2cm未満であってよい。ある一定の実施形態において、Dは、限定することなく1cmと2cmとの間のあらゆるDを含めて、1cmから2cmの間であってよい。直方体では、厚さは、実質的に、他の2つの寸法(「LI」及び「L2」)の長さ未満である。いくつかの実施形態において、L1及び/またはL2は、1cm超であってよい。いくつかの実施形態において、L1及び/またはL2は、2cm未満であってよい。ある一定の実施形態において、L1及び/またはL2は、限定することなく1cmと2cmとの間のあらゆるL1及び/またはL2を含めて、1cmから2cmの間であってよい。
【0025】
金属酸化物スピネルの表面にグラフェン膜を配置することにより、金属酸化物スピネルに構造的及び電子的変化を結果としてもたらす。金属酸化物スピネル膜は、バルク領域及び表面領域を含んでいてよい。バルク領域は、バルク金属酸化物スピネルとのその類似性を特徴とする。表面領域は、バルク領域とグラフェン膜との間にある。表面領域は、1以上、10以上、100以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、または900以上の原子層であってよい。表面領域は、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、500以下、400以下、300以下、200以下、100以下、10以下の原子層であってよい。ある一定の実施形態において、表面領域は、限定することなく1と1000との間のあらゆる原子層数を含めた1から1000の間の原子層である。
【0026】
グラフェン膜は、金属酸化物スピネル膜の表面に化学的に結合していてよい。グラフェン膜の化学結合は、金属酸化物スピネル膜における構造的及び電子的変化を結果としてもたらす場合がある。ある一定の実施形態において、グラフェン膜は、金属酸化物スピネル膜におけるように金属原子に結合する。グラフェン膜と金属酸化物スピネルの表面との結合は、金属酸化物スピネル膜の表面における金属イオンの酸化状態への変化を結果としてもたらす場合がある。ある一定の実施形態において、酸化状態の変化は、酸化状態を、よりプラスにすることである。ある一定の特定の実施形態において、グラフェン膜は、Mn原子をLMO膜の表面に結合させて、酸化状態を+3から+4に変化させるMn原子を結果としてもたらす場合がある。ある一定の実施形態において、グラフェン膜と表面との結合はまた、金属酸化物スピネル膜におけるヤーン-テラー歪みを抑制する場合もある。
【0027】
ある一定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、支持体に配置されていてよい。ある一定の実施形態において、支持体は、導電性であってよい。他の実施形態において、支持体は、非導電性であってよい。
【0028】
グラフェンコーティング
グラフェン膜またはコーティングは、金属酸化物スピネルの表面に配置されて、金属酸化物スピネルと電解液との間の障壁として機能する。ある一定の実施形態において、グラフェン膜は、実質的に単層のグラフェン膜を含む。ある一定の実施形態において、グラフェン膜は、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、または5%以下の二重層グラフェン島を含む。
【0029】
グラフェン膜は、損失している炭素原子から生ずる空格子点欠陥を有していてよい。ある一定の実施形態において、グラフェン膜は、空格子点欠陥を実質的に含まない。ある一定の実施形態において、グラフェン膜は、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない。ある一定の実施形態において、金属酸化物スピネルにおけるように金属が空格子点欠陥で結合されていてよい。
【0030】
大きな空格子点欠陥は、グラフェン膜が金属酸化物スピネルを保護することを妨げるため、大きな空格子点欠陥は、概して望ましくない。より小さい空格子点欠陥は、しかし、他のものに結合しながら、ある一定の原子の通行を可能にする選択的な障壁を与える場合がある。グラフェン膜における二重空格子点欠陥は、空格子点欠陥を通してのLiの通行に殆どまたは全く障壁を与えない場合があるが、同二重空格子点欠陥は、Mnの通行には実質的な障壁を与える場合があり、または金属とグラフェン膜との間の1以上のMn-C結合を形成することによってMn原子を結合する場合がある。
【0031】
固体電解液相間層
グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルは、電解液との接触の際に固体電解液相間(SEI)層を形成し得る。SEI層は、グラフェン膜と電解液との間の界面においてグラフェン膜に配置されている。
【0032】
本発明の驚くべきかつ有利な態様は、形成されるSEI層が、薄くかつ明確に画定されていることである。薄くかつ緻密なSEI層は、キャリアイオンに最小の拡散障壁を与えながらも、金属酸化物スピネルの表面への電解液のアクセスを制限する。グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルとは対照的に、覆われていない金属酸化物スピネルは、電解液と強く反応して、金属酸化物スピネルからの金属を枯渇させ、また、実質的により大きなSEI構築を引き起こす。結果として、グラフェン膜の表面に形成された薄くかつ緻密なSEI層は、拡散障壁を最小にしながらも、金属酸化物スピネルを金属溶解から保護する。
【0033】
ある一定の実施形態において、固体電解液相間膜は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、または10nm以下、及び/または1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nm以上の厚さを有する。
【0034】
電解液は、薄くかつ緻密なSEIを形成するのに好適ないずれの電解液であってもよい。いくつかの実施形態において、電解液は、Li含有塩である。ある一定の実施形態において、電解液は、LiClO4である。ある一定の実施形態において、電解液は、1以上の有機カーボネートを含む溶液中にある。ある一定の実施形態において、1以上の有機カーボネートは、エチレンカーボネート及び/またはジメチルカーボネートである。ある一定の実施形態において、電解液は、電解液として使用されている、体積基準で1:1のエチレンカーボネート及びジメチルカーボネート中の1M LiClO4の溶液である。
【0035】
SEIを形成するのに十分な条件は、グラフェンコーティングが電解液と接触するとき、充電/放電サイクルの際に電流を印加することを含む。充電/放電サイクルの際、電解液は、電極の表面において反応して、SEIを作り出す。グラフェンは、表面における薄くかつ緻密なSEIを促進するのを助ける、なぜなら、その化学的特性が、均一なSEI形成を可能にするからである。Li含有塩、例えばLiClO4と、1以上の有機カーボネートと含む電解液溶液では、サイクリングの際、電解液が表面において反応して、炭酸リチウムを作り出すことによるSEI形成を促進することができる。ジメチルカーボネートは、サイクリングの際にグラファイトにおけるSEI形成を促進することが示されているが、グラフェンコーティングされた電極に形成される薄くかつ緻密なSEIがマンガン溶解を抑制しながらも良好な電気的特性を有することは驚くべきことであった。
【0036】
電気化学セル
本発明の別の態様は、グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルを電極として使用する電気化学セルである。電気化学セルは、電極としてのグラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルと、対電極と、電解液とを含む。ある一定の実施形態において、グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルはカソードであり、対電極はアノードである。電気化学セルは、ハーフセルの幾何形状またはフルセルの幾何形状を有していてよい。ある一定の実施形態において、電気化学セルは、Liイオン電池である。
【0037】
ハーフセルの幾何形状を有する実施形態では、対電極が、リチウム箔アノードであってよい。リチウム箔は、いずれの好適な純度、厚さ及び/または表面積を有していてもよい。ある一定の実施形態において、ハーフセルの幾何形状のためのアノード材料は、99.9%純度で、1.5mmの厚さ及び1.92cm2の面積を有するリチウム箔である。フルセルの幾何形状を有する実施形態では、対電子が、グラファイトアノードであってよい。グラファイトアノードは、いずれの好適な純度、厚さ及び/または表面積を有していてもよい。グラファイトアノードでは、アノードをリチオ化する必要がある場合がある。例えば、一旦リチウムアノードによって0.02Vにリチオ化されかつ2Vに脱リチオ化されて安定なSEIを形成し、次いで0.2Vに部分的にリチオ化された、1cm2の面積を有する好適なグラファイトアノード(例えば、Conoco Phillips CGPA12、6.06mg cm-2)を調製することが可能である場合がある。
【0038】
電解液は、電気化学セル用のいずれの好適な電解液であってもよい。ある一定の実施形態において、電解液は、上記のように厚くかつ緻密なSEIを形成することが可能である電解液であってよい。ある一定の実施形態において、電解液は、体積基準で1:1のエチレンカーボネート及びジメチルカーボネートにおいて1M LiClO4である。
【0039】
グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルを形成する方法
ある一定の実施形態において、グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネル電極は、金属酸化物スピネル膜を調製することと、グラフェン膜を調製することと、グラフェン膜を金属酸化物スピネル膜の表面上に転写することとによって調製される。
【0040】
金属酸化物スピネルの取得
金属酸化物スピネルは、いずれの好適な調製方法によって得られてもよい。一実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、ターゲットの金属酸化物スピネルの成分を、第1支持体上に、当該支持体上に成分を堆積させるのに好適な条件下でスパッタリングすることと、これらの成分を、スピネル結晶または結晶子を形成するのに好適な条件下でアニーリングすることとによって調製される。支持体は、いずれの好適な材料であってもよいが、ある一定の実施形態において、支持体は金属である。ある一定の実施形態において、第1支持体は、スチールまたはステンレススチールである。
【0041】
グラフェンの取得
グラフェン膜は、いずれの好適な方法によって得られてもよい。一実施形態において、グラフェン膜は、第2支持体への化学蒸着(CVD)によって調製される。ある一定の実施形態において、上記条件は、空格子点欠陥または粒界を実質的に含まない単層グラフェン及び/またはグラフェンを実質的に調製するのに好適である。第2支持体は、金属であってよい。ある一定の実施形態において、第2支持体は、銅またはスチール支持体である。
【0042】
金属酸化物スピネル上へのグラフェン膜の転写
グラフェン膜は、いずれの好適な方法によって金属酸化物スピネル上に転写されてもよい。一実施形態において、転写ステップは、グラフェンファイル(file)において転写支持体を調製することと、第2支持体を除去することと、金属酸化物スピネルにグラフェン膜を配置することとを含む。ある一定の実施形態において、転写支持体は、グラフェン膜上にスピンコーティングされていてよい。転写支持体は、いずれの好適な材料であってもよい。ある一定の実施形態において、転写支持体は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)またはポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0043】
転写支持体は、いずれの好適な方法によって除去されてもよい。PMMAを用いる実施形態では、転写支持体が、グラフェンコーティングされた金属酸化物スピネルをアセトン蒸気浴上で懸濁させて、金属酸化物スピネル基材のグラフェンを剥離することなくPMMAを除去することによって除去されてよい。
【0044】
雑則
本明細書に記載されている全ての方法が、本明細書において別途示されない限りまたは他の場合には文脈によって明らかに矛盾しない限り、いずれの好適な順序で実施されてもよい。本明細書に提供されている、任意及び全ての例の使用、または例示的な語(例えば、「例えば(such as)」)は、単に本発明をより良好に明らかにすることが意図されており、別途特許請求の範囲に記載されていない限り本発明の範囲に対する限定を提示するものではない。本明細書におけるいずれの語も、本発明の実用に必須であるとして、任意の、特許請求の範囲に記載されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0045】
この発明の好ましい態様は、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含めて、本明細書に記載されている。これらの好ましい態様の変更は、上記の記載を読む際に当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がかかる変更を必要に応じて用いることを期待しており、また、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されている以外に実用されることを意図している。したがって、この発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付されている特許請求の範囲に列挙されている主題の全ての変更及び等価物を含む。また、全ての可能な変更における上記の要素のいずれの組み合わせも、本明細書において別途示されない限りまたは他の場合に文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【実施例0046】
リチウムマンガン酸化物膜の調製
アモルファスLMOの125nmの薄膜を、ステンレススチール集電体へのスパッタリングによって堆積し
[27]、アニーリングしてスピネル結晶子を形成した(
図1)。
図1は、サンプル調製プロセスの模式図を示す。グラフェンを、化学蒸着(CVD)を使用して銅箔において成長させ、次いで、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)転写方法を使用してスピネルLiMn
2O
4(LMO)薄膜の頂部に転写してよい。薄膜LMOを、アモルファスLMOのRFスパッタリングとアニーリングとによって作製してよい。
【0047】
図2Aは、典型的なLMO薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。SEM画像は、LMO結晶子が、高出力及び長寿命用途について以前に研究されている
[28]切頂八面体となっていることを示している。スピネル構造はまた、斜入射(GI)X線回折(XRD)によっても確認される(
図2B)。スパッタリングされたLMO生成物の正確な格子パラメータaは8.29±0.04Åであり、これは純粋なLiMn
2O
4(8.25Å)
[29]の実験誤差の範囲内である。僅かにより大きい値は、アニーリングの際にステンレススチール基材から構造内に拡散する少量の鉄
[30]に部分的に起因し得る。
【0048】
LMO薄膜を、AJA Orionスパッタシステムを使用してRFスパッタリングによってステンレススチールコインセルスペーサ(MTI Corporation)に堆積した。LiMn2O4ターゲットもまた、AJA International Incから購入した。スパッタリングを、5mTorrにおいて6sccmのO2及び20sccmのArによって室温で7時間、150Wで実施した。その後、20sccmのO2を流すことによって圧力を10Torrに増大させ、温度を25℃/分で670±20℃まで増大させて、サンプルをこの温度で1時間アニーリングした。サンプルを、次いで、同O2雰囲気において室温まで30分で冷却した。ステンレススチールの背面を研磨して酸化物を除去した後、サンプルをさらなる特性決定に使用した。
【0049】
グラフェンコーティングの調製
単層グラフェン(<15%の二重層グラフェン島)膜を化学蒸着(CVD)によって電解研磨銅箔において成長させた。銅上のCVDグラフェンを最適化して、均一な欠陥(例えば、粒界、空格子点など)分布を有する単層グラフェンを主として得た[31]。
【0050】
グラフェン膜(約80%単層)を、化学蒸着(CVD)を使用してCu箔において成長させた。最初に、80μm厚のCu箔をアセトン及びイソプロパノールによって洗浄した。Cu箔を、次いで、2.0Vの印加電圧で30分間、体積基準で3:1のH3PO4(85%)及びポリ(エチレングリコール)の混合物中で電解研磨した。電解研磨後、Cu箔における残存酸を、1%アンモニア水溶液を使用して中和し、脱イオン水で濯いだ。Cu箔を、次いでCVD管状炉に置き、約30~50mTorrにポンピングした。Ar:H2(4:1)ガス混合物を使用して系をフラッシングし、合計圧力を100mTorrまで上昇させた。温度を次いで1000℃まで1時間で線形的に増加させた。1000℃において、10sccmのメタンを添加し、圧力を300mTorrに増加させた。サンプルをこの状態で30分間維持し、この間にグラフェン成長が生じた。成長ステップ後、反応器を15分で800℃まで冷却し、メタン流を中断させた。系を、次いで、室温まで迅速に冷却させた。
【0051】
グラフェンコーティングの転写
CVDグラフェンを、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)転写方法を使用してLMO薄膜上に転写させた[32]。グラフェン/LMOサンプルをSEM及びラマン分光法によって特性決定し、グラフェン被覆率の程度を求めた(>90%の被覆率を低倍率SEM画像によって推定した)。CVD成長後、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)をCu箔/グラフェンの頂部に2000rpmでスピンコーティングした。PMMAを室温で少なくとも6時間、サンプルにおいて放置して乾燥した。Cuを続いてマーブル試薬(8g CuSO4、50mL H2O、50mL HCl)において約4時間エッチングした。一旦Cuの全てを膜からエッチングしたら、PMMA/グラフェンを、脱イオン水浴を使用して3回濯ぎ、あらゆるマーブル試薬を除去した。PMMA/グラフェン膜を、次いで、LMO/スチール基材上に転写させた。サンプルを空気乾燥し、次いで、真空オーブンに一晩置いて転写からの残存水を除去し、基材へのグラフェン付着を改善した。サンプルを続いてアセトン蒸気浴上で約3時間懸濁させて、基材からグラフェンを剥離することなくPMMAを穏やかに除去した。サンプルを次いでアセトン浴に10分間浸漬し、イソプロパノールで濯ぎ、空気乾燥した。
【0052】
複数のスポットを各サンプルにおいてランダムに選択し、ラマンによって測定して、グラフェン2Dピークを使用してグラフェン被覆率を検証した。グラフェンコーティングされたLMO表面のSEM画像及びラマンスペクトルを
図2C、Dに示す(グラフェンを矢印によって示す)。
【0053】
電気化学サイクル
LMO薄膜をハーフセル及びフルセルの両方の幾何形状におけるLiイオンコインセルにおいて電気化学的に評価した(
図3~4)。コインセルをハーフセルの幾何形状a~d(対リチウム)及びフルセルの幾何形状e~f(対グラファイト)で作製した。EC/DMC(1/1)中の1M LiClO
4を電解液として使用した。サイクリックボルタンメトリーの走査速度は0.2mV/sであり、定電流充電の印加電流は100mA/cm
3であった。
【0054】
意義深いことに、グラフェンコーティングされたLMOカソードは、コーティングされていないLMOカソードと比較して、ハーフセル試験において優れた容量保持を示す(
図3A)。ハーフセルの幾何形状においてサイクリングしたLMOカソードは、約300サイクル後に約25%の容量低下を示し、約350サイクル後に完全に機能しなくなったが、グラフェンコーティングされたLMOカソードは、約90%の容量保持で750サイクル超を完了させた。コーティングされていないLMOカソードの機能停止は、以下に考察されているように著しいマンガン枯渇と関連している。
【0055】
Arグローブボックスにおいて製作したコインセルセットアップにおいてカソードを電気化学的にサイクリングした。サイクリングを、対電極としてのリチウム金属またはグラファイト、ならびにCelgard 2320及びWhatmanガラスファイバセパレータを使用したHohsen Corporationステンレススチールコインセルにおいて実施した。電解液は、体積基準で1:1のエチレンカーボネート及びジメチルカーボネート(DMC)(Novolyte、SigmaAldrich)中の1M LiClO4(Novolyte)であった。全てのコインセルを、Arbin BT2143電池試験器を使用してサイクリングした。グラファイトアノード(Conoco Phillips CGP-A12、6.06mg/cm2)をリチウムアノードによって一旦0.02Vにリチオ化しかつ2Vに脱リチオ化して安定なSEIを形成し、次いで0.2Vに部分的にリチオ化した。0.2Vへのリチオ化を、アノードがより小さいとLMO膜の不均一なリチオ化を結果としてもたらしたため2つの電極の同じ表面積を維持しながら実施して、バルクアノードと薄膜カソードとの間の容量ギャップを低減させた。
【0056】
サイクリング後、コインセルを、<1ppm酸素及び水分を含むAr充填グローブボックスにおいて開放し、カソードを抜き出した。カソードの表面をDMC、次いでイソプロパノールで穏やかに濯いで残存電解液を除去し、カソードサンプルをキムワイプに逆さまに置くことによって穏やかに乾燥した。サンプルを瓶に密封し、次いで、酸素フリーのXPS特性決定用にグローブボックスから除去した。瓶をXPSアンティチャンバに接続されたグローブバッグに置き、次いで開放して、グローブバッグ及びチャンバをポンピングしかつArで3回フラッシングした後にサンプルを取り出した。
【0057】
薄膜体積を、サンプル厚さ及び表面積を使用することによって推定した。厚さをスパッタリング条件によって制御し、SEM及びTEM断面画像によって検証した。サンプルの面積は、基材面積(ステンレススチール2032コインセルスペーサ、約1.96cm2)に等しいと仮定する。
【0058】
しかし、金属リチウムアノードもまた、長期のサイクリング及び結果としてのセルの内部短絡の後に樹状突起を形成する傾向にあるため、故障を引き起こす可能性もあることに注意すべきである。そのため、フルセルの幾何形状におけるコーティングされていない及びグラフェンコーティングされたLMO電極の電気化学的評価に着手して、この問題を回避した。グラファイトアノードを有するフルセルの幾何形状においてサイクリングされるときのコーティングされていない及びグラフェンコーティングされたLMO薄膜の電圧-容量曲線は、同様の傾向を示す(
図4E、F)。グラファイトアノードのSEIに対するMn汚染の影響を最小にするために、アノードを、リチウムハーフセルを使用した2のリチオ化/脱リチオ化サイクル
[7,8]によるフルセルのアセンブリングの前に前処理した。具体的には、薄膜を、ハーフセルの幾何形状(3.5~4.4V)とは対照的にフルセルの幾何形状においてより広範囲の電圧(2~4.4V)でサイクリングし、これにより、単位面積あたりのより大容量の利用を結果としてもたらした(
図4)。
【0059】
リチウムハーフセル及びフルセル(
図4E、F)の電圧プロファイルは、約3VでのLMOスピネル構造へのリチウム挿入に相応しており、そのプロファイルはスパッタリングされたLMO膜の組成、特にLi:Mn及びMn:O比、ならびにスピネル構造内の原子の位置及び配置に依存している
[33,34]。3V未満でのMn
4+からMn
3+への還元は、LMOカソードでのマンガン溶解を悪化させることが予期される。しかし、2.0~4.4Vでのサイクリングのとき、グラフェンコーティングされたLMOカソードは、マンガン損失が増強されることなく容量が増加する(3Vでのさらなるリチオ化)という利点を有する。そのため、カソードが2.0~4.4V(
図4H)でサイクリングされるとき、3.5~4.4V(
図4G)でサイクリングされるカソードと比較してより高い容量が観察された。加えて、グラフェンは、
図4G、Hに示されているより高いボルタンメトリー容量を寄与する場合もある導電性経路を与えることによって、カソード、例えばLiMn
2O
4
[26]及びLiFePO
4
[24]の容量を改善することが示されている。
図3bは、より大きな電圧の範囲(2.0~4.4V)を超えてサイクリングされるときの、コーティングされていない及びグラフェンコーティングされたLMO対グラファイトのサイクリング性能を示す。この図もまた、これらの電極の容量に対する印加電流の変動の効果を示す。コーティングされていないLMO膜と比較してグラフェンコーティングされたLMO膜によって送達される優れた容量は、電気化学性能、特にLMOカソードの充電/放電速度
[26]を改善する際、電気化学性能に対するグラフェンコーティングの著しい影響を際だたせている。
【0060】
特性決定及びデータ分析:XPS深さプロファイリング
電気化学サイクリング後のLMO薄膜におけるマンガン損失の程度を測定するために、XPS深さプロファイリングを実施した。XPSサンプルを酸素欠乏条件下で取り扱って、SEI層を保った。
図5Aは、サイクリングされたグラフェンコーティングされたLMO薄膜を通してのスパッタリング深さの関数としてのMn2pピークの強度を示す。750回サイクリングしたグラフェンコーティングされたLMO電極(
図5A)は、350回しかサイクリングしていないコーティングされていないLMO電極(
図5B)よりもマンガンの枯渇が著しく少なかった。Li1sピークもまた、表面からサンプルのバルクへの結合エネルギーを低下させるようにシフトする(
図5C、D)。このシフトは、LMO構造におけるMn
xO
y
-δ枠の電気陰性度の変化を引き起こすマンガンの損失に起因している
[35]。
図5E、Fは、それぞれハーフセル(3.5~4.4V)及びフルセル(2.0~4.4V)においてサイクリングされたカソードについての表面深さの関数としてのMn2pピーク強度の変動を示す。これらの結果は、マンガンの枯渇が、より大きな電圧ウィンドウにわたってフルセル(対グラファイトアノード)においてサイクリングされるとき、コーティングされていないカソードにおいて著しく大きくなることを実証している(
図5F)。
【0061】
XPSのO1sピークは、電極-電解液相互作用に対するグラフェンコーティングの効果を精査することを可能にする(
図6A、B)。約529eVにおけるピークはLMOスピネル構造における金属-酸素結合に起因するが、約532eVにおけるピークは、電解液との表面反応の結果としてのSEI層における炭素-酸素結合に起因する。グラフェンコーティングされたLMOカソードでは、532eVにおけるピークは約10nmの深さで飽和状態となるが、一方で、コーティングされていないLMO膜においては、このピークが大きさを増加させることに寄与する。本発明者らは、これにより、LMOサンプルのバルクに影響することなく起こる、グラフェンコーティングされたLMOカソードでの安定な薄いSEI層の形成を結果としてもたらすと考えている。一方で、コーティングされていないLMO表面は、特により高い電位において電解液と強く反応し、これにより、より大きなマンガン枯渇及びSEI構築を結果としてもたらす。
【0062】
XPS測定を、Thermo Scientific ESCALAB 250Xiシステムを使用して、上記で説明されているように酸素フリーで行った。500μmのスポットサイズを有するAlKα放射線を測定に使用した。Ar+クラスタイオンガンを、3keVにおける30秒のエッチング時間での深さプロファイリングに使用した。強度を基材におけるLi1sピークの強度で正規化して、グラフェンコーティングされたサンプルとコーティングされていないサンプルとの間の差を強調させた。
【0063】
特性決定及びデータ分析:XRD
GI-XRDを、18kWの銅X線回転アノード源を使用したRigakuATX-G薄膜回折システムによって測定した。格子パラメータを計算するために、線形バックグラウンドを個々のピークからJadeソフトウェアを使用して減算した。確実に、実験がグラフェンの効果のみを際だたせて、不純物分によって影響されないようにするために、本発明者らは、同じスパッタリング/アニーリングからのサンプルを使用して、グラフェン転写の前後の電気化学的特性決定を比較した。本発明者らはまた、XRDを使用して各サンプルの格子パラメータも検証した。LMOに転写したグラフェンはLMO基材と化学的に反応せず、また、主として単または二層であるため、グラフェンコーティングされたLMOのXRDスペクトルは出発LMO基材と同じである。
【0064】
特性決定及びデータ分析:ラマン
グラフェン/LMOサンプルをSEM及びラマン分光法によって特性決定し、グラフェン被覆率の程度を求めた(>90%の被覆率を低倍率SEM画像によって推定した)。複数のスポットを各サンプルにおいてランダムに選択し、ラマンによって測定して、グラフェン2Dピークを使用してグラフェン被覆率を検証した。グラフェンコーティングされたLMO表面のSEM画像及びラマンスペクトルを
図2C、Dに示す(グラフェンを矢印によって示す)。
【0065】
エキソサイチュでのラマン測定を、Renishaw inVia共焦点ラマンマイクロスコープを使用して実施した。514nm、13.8mWのレーザーを、最大で60秒の蓄積時間による50xの倍率(レーザースポットサイズ:直径約2~3μm)での測定に使用して、低強度ピークを解像した。
【0066】
特性決定及びデータ分析:走査透過電子顕微鏡法
SEI層の性質は、LMO表面を保護し、電解液へのマンガン溶解を最小にするのに重要である。特に、薄くかつ緻密なSEI層が理想的である、なぜなら、該層は、リチウムイオン輸送のための拡散障壁を同時に最小にしながらLMO表面への電解液のアクセスを制限し、これにより、マンガン溶解を防止することを助けるためである[36]。
【0067】
全てのサンプルを、グラファイトアノードを用いたフルセル(2~4.4V)において100サイクル充電/放電した。断面STEM及びHRTEMサンプルを集束イオンビーム(FIB)ミリングによって調製した(約100nmのニッケルをサンプルに配置した後にFIBによりSEI層を保護した)。
【0068】
ここで、SEI層は、これらのサンプルの断面走査透過電子顕微鏡法(STEM)画像(
図6C、D)において観察することができる。グラフェンコーティングされたLMO薄膜は緻密なままであり、その元の厚さを保持している(
図6C)。一方で、コーティングされていないLMO薄膜は、より厚いSEI層を有している(
図6D)。グラフェンコーティングされたLMO上の超薄SEI層は、STEM画像において容易に観察されないが、高解像度透過電子顕微鏡法(HRTEM)によって観察され得(
図6E)、ここで、LMO結晶子の格子面は可視である(選択位置を矢印及び破線によって際だたせている)。対照的に、サイクリングされ、コーティングされていないLMOのHRTEM画像は、斜入射X線回折(GI-XRD)(
図7A)によって確認されるアモルファスの性質を示している(
図6F)。
図7は、サイクリングされグラフェンコーティングされたLMOカソードのSEM画像及びラマン分光分析データをさらに示しており、ここで、グラフェンは、750サイクル後にも依然として検出及び同定することができる(
図7)。リチオ化はグラフェンに欠陥を導入することが知られているため
[20]、ラマンDバンドの強度が、サイクリングの後に初期の状態のグラフェン(2d)と比較して増加することは驚くべきことではない。にもかかわらず、単層グラフェンが、750の充電/放電サイクル後、大部分が無傷のままであるという事実は、電池のカソード用途のためのグラフェンコーティングの堅牢性及び完全性を立証している。薄膜サンプルは、グラフェンコーティングされたLMOがその元来の色を保持しながら、350サイクル後のコーティングされていないLMOの変色を示す。
【0069】
サンプルの明視野走査透過電子顕微鏡(STEM)イメージングを、<0.23nmの空間分解能を有する、200kVで操作されるSTEM(Hitachi HD-2300A)を使用して実施した。高解像度透過電子顕微鏡(HRTEM)イメージング及び電子線回折を200kVにおけるJEOL-2100F FasTEMによって行った。STEM及びHRTEMのための断面サンプルを、Omniprobe200マイクロマニピュレータを備えたFEI Helios Nanolab600デュアルビームFIB/SEM機器によりインサイチュでの取り出しによって調製した。対象の領域を、エキソサイチュで電子ビーム蒸着を介して、続いて、インサイチュで白金堆積及び30keVガリウムイオンビームによる荒削りによって堆積した、約100nmのニッケルによって保護した。ビームによる損傷を最小にするために、イオンビームエネルギーを、TEM薄板の最終の細線化及び洗浄のためにそれぞれ5keV及び2keVに低下させた。
【0070】
カソードのインシリコモデリング
2つのメカニズムは、グラフェン表面修飾によるマンガン損失の軽減を根拠とする。第1に、グラフェン層と、明確に画定されている薄いSEI層との組み合わせは、迅速なリチオ化/脱リチオ化を同時に可能にしながら、電解液内へのマンガンイオン移動及び溶解の障壁として作用する。第2に、グラフェンコーティングとLMO表面との間の相互作用は、2Mn3+→Mn4++Mn2+不均化反応及びその後の電解液内への溶解Mn2+イオンの放出を抑制する。理論計算を実施して、以下に記載のようにこれら2つのメカニズムをさらに調査した。
【0071】
本発明者らは、第1に、Liを拡散させながらMn拡散への物理的障壁として作用するグラフェンの仮説を調査する。本発明者らは、証拠となる情報セクションにおいて説明しているように二重空格子点(DV)のグラフェン欠陥を通してのLiの拡散とMnの拡散との間の比較に主に焦点を当てる。特に、グラフェンDV欠陥を通過するLi及びMn原子のDFT研究を行った。主たる結果によると、Li原子は、見かけの障壁が無く(すなわち、エネルギーが真空状態より低い)DVを通過することができるが、一方で、Mn原子は、大きなエネルギー障壁に遭遇する。>3Åの距離から、グラフェンシートにおいてDVに近づくMn原子のポテンシャルエネルギープロファイルを8aに示す。この場合、DVは、原子がDVに近づくにつれて、Mnから遠ざかる8員閉環構成を有している。また、本発明者らは、欠陥において4個の最接近炭素原子と化学結合を形成する結合状態を見出した(
図8B)。結合状態によって形成されるウェルを免れるには、C-Mn結合が破壊されなければならない。Mn結合状態において、DVは、欠陥にありながらMn原子を収容するような開放構成(環からの2つのC-C結合が2.50Åに延びている)である。本発明者らは、遷移状態を位置付けて結合状態にMnを移動させることはできなかったが(開放DV構成の懸垂結合に起因して必要とされるスピン状態の変化のため)、MnはLiよりもDVを横断してより高いエネルギー障壁を経ることが明らかである。対照的に、LiはC-C結合破壊を誘発せず、欠陥の平面において結合されていない。
【0072】
上記の計算は、グラフェンとLMO基材との間の相互作用を考慮していない。さらに、より大きなグラフェン欠陥は、MnまたはLiのいずれも遮蔽せず、このことは、なぜ溶解速度がゼロでないかを説明している。しかし、LMO表面とグラフェンとの反応は、本発明者らが密度汎関数理論(DFT)+U計算を実施することによってここで調査している、著しい構造的及び電子的変化を結果として生じ得る。
【0073】
先のDFT+U計算は、LMOの最低エネルギー表面の中で(001)
[37-39]及び再構成された(111)
[40]を示した。(001)表面におけるMn原子は、よりMn溶解の傾向がある、なぜなら、再構成された(111)表面が、表面Mnをバルク層に移動させるからである
[40]。本発明者らの計算は、(001)表面におけるMnの酸化状態が先に報告されているように+3であるということ
[37,39]を示しており、これは、Mn不均化反応が(001)表面からさらに開始しやすいという考えを支持している。本発明者らは、反応性のエッジを有する(すなわち、不飽和結合によるC原子を有する)グラフェンパッチ(GP)がLMOの(001)表面上に置かれているとき、表面Mn原子の頂部に吸着することをエネルギー的に好み(表2)、GPは、(001)LMO表面(
図9)と共に作る配向または角度にかかわらず、化学吸着状態になること(表2)を見出している。
【表1】
【表2】
【0074】
図10Aにおいて、本発明者らは、3+及び4+の酸化状態における種々のバルク及び表面Mn酸化物;すなわち、バルクλ-MnO
2(Mn
4+)、λ-MnO
2(001)表面(Mn
4+)、バルクLiMn
2O
4(Mn
3+及びMn
4+)、ならびに(001)LMO表面(Mn
3+)及び表面下Mn(Mn
4+);の電子状態密度(DOS)を示す。バルクλ-MnO
2、λ-MnO
2(001)表面、及びバルクLMOにおけるMnのいくらかにおけるMnイオンは、3つの価電子またはMn
4+の特徴に一致する、半充填t
2g及び空のe
gバンドを有する。バルクLMOにおける及び(001)LMO表面におけるMnでは、本発明者らは、d
z2バンドがt
2g状態と併せてここで占領されており、これがMn
3+酸化状態を示していると理解する。これらの場合には、e
gバンドが、バルクLMO(Mn
3+)のヤーン-テラー歪みに起因して、また、ヤーン-テラー歪みと、(001)表面Mn
3+での表面対称性の破れとの組み合わせに起因して、分裂する。(001)表面の下の表面下Mnは、一方で、+4の酸化状態を有する。
【0075】
本発明者らのDOS結果は、本発明者らが、覆われていないLMO表面においてMn
3+及びMn
4+を区別することができること、したがって、本発明者らが、(001)表面Mnの電子構造ならびに表面下Mn原子に対する、化学的に結合したGPの効果を次いで検査することができることを示している(
図10B)。全ての表面Mn原子が、
図10Aにおいて、GPによらずに+3の酸化状態を有しているが、本発明者らは、グラフェンに化学的に結合している(001)Mn原子が、任意のGP/LMO配向について空のe
gバンドによる明らかな+4の性質を有する電子構成を採用していることを
図10Bにおいて一貫して見出している。(001)表面におけるMn原子がGPと反応して、その酸化状態を+4に変化させるにつれ、表面下Mn
4+原子の平均酸化状態が僅かに低下して充電バランスを保つ(LMO膜厚さの効果に関する
図11を参照されたい)。(001)LMO表面Mn-O結合距離を分析して、本発明者らは、ヤーン-テラー歪みもまた、表面Mnの酸化状態がGPの存在下にMn
4+にシフトするにつれて抑制されていることを見出している(
図12)。そのため、グラフェンと(001)表面におけるLMOとの化学結合は、LMO(001)表面を電子的かつ構造的に修飾し、続いて、これらの表面を、表面Mn
3+をMn
4+に変換することによってMn
3+解離及びヤーン-テラー歪みに対して安定化させるメカニズムを与える。
【0076】
欠陥モデルを、緩和された、初期の状態のKekule158原子グラフェンフレークの中心に作り出された二重空格子点の幾何形状の最適化によって構築した。128個のC及び28個のHからなる得られた156原子有限モデル
[41]を、末端水素原子を固定することによって拘束して、グラフェン結晶格子定数を保った。また、グラフェンシート全体が、近づく金属原子から逸れることを防止するために、金属に最も近いDVにおける4個の炭素原子が拘束されて、固定された末端水素原子によって画定されている、グラフェンの平面に留まった。本発明者らの欠陥モデルを、C、Li、及びH原子について設定した汎用の(5d,7f)6-31G*基準、ならびにMn原子について設定したLANL2DZ有効コア電位及び基準によるB3LYPハイブリッド汎関数
[43,44]を使用してGaussian09パッケージ
[42]によって実施したDFT計算について調査した。全ての積分を極細グリッドにおいて計算した。各幾何形状の最適化を実施した後、波動関数を不安定性(安定=任意選択)についてチェックして必要に応じて再最適化した。DFT計算をPBE
[45]汎関数及び参照として設定した同じ基準を使用して実施し、これにより、非常に類似する結果を与えた(
図13を参照されたい。計算をLi-グラフェン及びLi
+-グラフェン系についてそれぞれ二重項及び一重項スピン状態において実施した。Mn-グラフェンについてのスピン状態を六重項(S=5/2)であると決定した。より低いスピン状態はエネルギー的に好ましくなかった。
【0077】
グラフェンパッチ(GP)によるLMO表面の計算では、構造緩和及び電子構造計算を、Viennaアブイニシオシミュレーションパッケージ(VASP)において実行される投影増強波(PAW)法[47]による一般化勾配近似(GGA)のPerdew-Burke-Ernzerhof(PBE)[45,46]公式化を使用して実施した[48,49]。Dudarevら[50]によって導入されたDFT+U汎関数を使用してMnについてのU=4.5eVによるGGA+U計算を実施した。平面波基準での運動エネルギー遮断は520eVであった。3×3×3k点セットによるMonkhorst-Pack[51]スキームをλ-MnO2及びLiMn2O4バルクの計算に使用し、3×3×1k点セットを表面計算に使用した。Blochl補正[52]によるテトラへドロン法及びより緻密なk点メッシュを状態密度(DOS)の計算に使用した。全ての計算をスピン偏極し、[110]方向に沿った反強磁性秩序をLMOについて考慮した。(001)LMO/GPスーパーセルスラブをさらに修飾して、種々の表面部位でのグラフェンエッジの位置を変動させることによって構造安定性及びDOSに対するGPの配向の効果を調査した。全ての上記計算で、GPのエッジ炭素原子を、吸着部位を除いて水素原子によって不動態化した[53,54]。
【0078】
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【0079】
本明細書において列挙されている公開公報、特許出願及び特許を含めた全ての参照文献は、あたかも、各参照文献が、参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、また、全体が本明細書に記載されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の一態様は、リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜と、グラフェン膜とを含むカソードであって、グラフェン膜が金属酸化物膜の表面に配置されている、上記カソードである。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネルは、LiMn2O4を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネルは、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む。特定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、LiMxMn2-xO4を含み、Mが、Li、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ以上2以下の任意の実数である。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、100nm以上150nm以下の厚さを有していてよい。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、実質的に単層のグラフェン膜を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、20%以下の二重層グラフェン島を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、空格子点欠陥を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない。ある一定の実施形態において、マンガン原子は、グラフェン膜の空格子点欠陥で結合されている。
いくつかの実施形態において、上記方法は、転写支持体を除去することをさらに含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、スパッタリングによって調製される。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、化学蒸着によって調製される。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、LiMn2O4を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネルは、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む。特定の実施形態において、金属酸化物スピネルは、LiMxMn2-xO4を含み、Mが、Li、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ以上2以下の任意の実数である。いくつかの実施形態において、金属酸化物スピネル膜は、100nm以上150nm以下の厚さを有する。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、実質的に単層のグラフェン膜を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、20%、15%、10%、または5%以下の二重層グラフェン島を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、空格子点欠陥を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、グラフェン膜は、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、マンガン原子は、空格子点欠陥で結合されている。
本明細書において列挙されている公開公報、特許出願及び特許を含めた全ての参照文献は、あたかも、各参照文献が、参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、また、全体が本明細書に記載されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
以下、本願発明に関連する発明の実施形態について例示する。
[実施形態1]
リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜と、グラフェン膜とを含むカソードであって、前記グラフェン膜が、前記金属酸化物膜の表面に配置されている、前記カソード。
[実施形態2]
前記金属酸化物スピネルが、LiMn
2
O
4
を含む、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態3]
前記金属酸化物スピネルが、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む、実施形態1に記載のカソード。
[実施形態4]
前記金属酸化物スピネルが、LiM
x
Mn
2-x
O
4
を含み、Mが、L、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ以上2以下の任意の実数である、実施形態3に記載のカソード。
[実施形態5]
前記金属酸化物スピネル膜が、100nm以上150nm以下の厚さを有する、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態6]
前記グラフェン膜が、実質的に単層のグラフェン膜を含む、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態7]
前記グラフェン膜が、20%以下の二重層グラフェン島を含む、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態8]
前記グラフェン膜が、空格子点欠陥を実質的に含まない、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態9]
前記グラフェン膜が、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態10]
マンガン原子が、前記グラフェン膜の空格子点欠陥で結合されている、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態11]
前記金属酸化物スピネル膜が、バルク酸化状態を有する複数のマンガン原子と、表面酸化状態を有する複数のマンガン原子とを含み、前記表面酸化状態が、前記バルク酸化状態よりも高い、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態12]
前記バルク酸化状態が+3である、実施形態11に記載のカソード。
[実施形態13]
前記表面酸化状態が+3よりも高い、実施形態11または12に記載のカソード。
[実施形態14]
前記表面酸化状態が+4である、実施形態11~13のいずれかに記載のカソード。
[実施形態15]
電解液と接触するときに、前記グラフェン膜に配置される固体電解液相間層を形成するように構成されている、先行実施形態のいずれか一項に記載のカソード。
[実施形態16]
前記固体電解液相間層が、炭酸リチウムを含む、実施形態15に記載のカソード。
[実施形態17]
前記固体電解液相間膜が、100nm以下の厚さを有する、実施形態15または16に記載のカソード。
[実施形態18]
前記固体電解液相間膜が、1nm以上の厚さを有する、実施形態15~17のいずれかに記載のカソード。
[実施形態19]
実施形態1~18のいずれかに記載のカソードと、アノードと、電解液とを含む電気化学セル。
[実施形態20]
前記アノードがリチウムまたはグラファイトを含む、実施形態19に記載の電気化学セル。
[実施形態21]
前記電解液が、リチウム塩及び有機カーボネート溶媒を含む、実施形態19~20のいずれかに記載の電気化学セル。
[実施形態22]
前記電解液が、1:1のエチレンカーボネート:ジメチルカーボネートの溶液に1M LiClO
4
を含む、実施形態19~21のいずれかに記載の電気化学セル。
[実施形態23]
カソードを調製する方法であって:
(a)リチウム、マンガン、及び酸素を含む金属酸化物スピネル膜を得ることと;
(b)グラフェン膜を得ることと;
(c)前記グラフェン膜を前記金属酸化物スピネル膜の表面上に転写することと
を含む、前記方法。
[実施形態24]
前記金属酸化物スピネル膜が、第1支持体上に調製され、前記グラフェン膜が、第2支持体上に調製される、実施形態23に記載の方法。
[実施形態25]
前記転写ステップ(c)が、前記グラフェン膜上に転写支持体を調製することと;前記第2支持体を除去することと;前記金属酸化物スピネル膜に前記グラフェン膜を配置することとを含む、実施形態24に記載の方法。
[実施形態26]
前記転写支持体を除去することをさらに含む、実施形態25に記載の方法。
[実施形態27]
前記金属酸化物スピネル膜が、スパッタリングによって調製される、実施形態23~26のいずれかに記載の方法。
[実施形態28]
前記グラフェン膜が、化学蒸着によって調製される、実施形態23~27のいずれかに記載の方法。
[実施形態29]
前記金属酸化物スピネル膜が、LiMn
2
O
4
を含む、実施形態23~28のいずれかに記載の方法。
[実施形態30]
前記金属酸化物スピネルが、Co、Ni、Y、Ti、またはZnをさらに含む、実施形態23~28のいずれかに記載の方法。
[実施形態31]
前記金属酸化物スピネルが、LiM
x
Mn
2-x
O
4
を含み、Mが、L、Co、Ni、及びZnを含む群から選択され、Xが、ゼロ(0)以上二(2)以下の任意の実数である、実施形態30に記載の方法。
[実施形態32]
前記金属酸化物スピネル膜が、100nm以上150nm以下の厚さを有する、実施形態23~31のいずれかに記載の方法。
[実施形態33]
前記グラフェン膜が、実質的に単層のグラフェン膜を含む、実施形態23~32のいずれかに記載の方法。
[実施形態34]
前記グラフェン膜が、20%、15%、10%、または5%以下の二重層グラフェン島を含む、実施形態23~33のいずれかに記載の方法。
[実施形態35]
前記グラフェン膜が、空格子点欠陥を実質的に含まない、実施形態23~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態36]
前記グラフェン膜が、3個以上の空の炭素原子を有する空格子点欠陥を実質的に含まない、実施形態23~35のいずれかに記載の方法。
[実施形態37]
マンガンが前記空格子点欠陥で結合されている、実施形態23~36のいずれかに記載の方法。
[実施形態38]
前記カソードを、固体電解液相間層を形成するのに十分な条件下で電解液に曝露することをさらに含み、第2膜が第1膜と前記固体電解液相間層との間に退位している(deposed)、実施形態23~37のいずれかに記載の方法。
[実施形態39]
前記固体電解液相間層を形成するのに十分な前記条件は、グラフェンコーティングが前記電解液と接触するとき、充電/放電サイクルの際に電流を印加することを含む、実施形態38に記載の方法。
[実施形態40]
前記固体電解液相間層が、炭酸リチウムを含む、実施形態38または39に記載の方法。
[実施形態41]
前記固体電解液相間層が、100nm以下の厚さを有する、実施形態38~40のいずれかに記載の方法。
[実施形態42]
前記固体電解液相間層が、1nm以上の厚さを有する、実施形態38~41のいずれかに記載の方法。
[実施形態43]
前記電解液が、有機カーボネート溶媒中にリチウム塩を含む、実施形態38~42のいずれかに記載の方法。
[実施形態44]
前記電解液が、1:1のエチレンカーボネート:ジメチルカーボネートの溶液に1M LiClO
4
を含んでいる、実施形態38~43のいずれかに記載の方法。
[実施形態45]
前記第1支持体が金属を含む、実施形態24~44のいずれかに記載の方法。
[実施形態46]
前記金属が、スチールである、実施形態45に記載の方法。
[実施形態47]
前記転写支持体が金属を含む、実施形態24~46のいずれかに記載の方法。
[実施形態48]
前記金属が、銅またはスチールである、実施形態47に記載の方法。
[実施形態49]
前記転写支持体が、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリジメチルシロキサンを含む、実施形態24~48のいずれかに記載の方法。
前記金属酸化物スピネル膜が、バルク酸化状態を有する複数のマンガン原子と、表面酸化状態を有する複数のマンガン原子とを含み、前記表面酸化状態が、前記バルク酸化状態よりも高い、請求項1~5のいずれか一項に記載のカソード。