(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105589
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】レンズユニット及び画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220707BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20220707BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G03B17/55
G03B21/14 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078963
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2018094753の分割
【原出願日】2018-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】小田島 豪
(72)【発明者】
【氏名】須永 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】安達 啓
(72)【発明者】
【氏名】臼井 彬寿
(72)【発明者】
【氏名】金澤 大輔
(57)【要約】
【課題】鏡筒の温度を調整可能なレンズユニットの提供。
【解決手段】レンズを支持するとともに前記レンズを光軸方向に移動させ得る鏡筒と、前記鏡筒の温度を調整するための熱伝導性の高い温度制御部と、一方の端部が前記鏡筒に接続され、他方の端部が前記温度制御部へと接続され、前記鏡筒が前記移動を行うときには、当該熱伝導路の少なくとも一部が前記温度制御部と前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動する熱伝導路と、を有することを特徴とするレンズユニット200。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを支持するとともに前記レンズを光軸方向に移動させ得る鏡筒と、
前記鏡筒の温度を調整するための熱伝導性の高い温度制御部と、
一方の端部が前記鏡筒に接続され、他方の端部が前記温度制御部へと接続され、前記鏡筒が前記移動を行うときには、当該熱伝導路の少なくとも一部が前記温度制御部と前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動する熱伝導路と、を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズユニットにおいて、
前記熱伝導路は、金属製であることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズユニットにおいて、
前記熱伝導路または前記温度制御部の何れか一方を、前記熱伝導路または前記温度制御部の何れか他方へと向けて付勢する付勢部材を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズユニットにおいて、
前記温度制御部は前記鏡筒の周囲に配置され、
前記付勢部材が前記熱伝導路または前記温度制御部を付勢することで前記温度制御部と前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動することを特徴とするレンズユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載のレンズユニットにおいて、
前記熱伝導路は、少なくとも一部が前記鏡筒に従動する摺動部を有し、
前記摺動部と当該熱伝導路の他の一部とが摺動することで、前記温度制御部と前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動することを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載のレンズユニットを有する画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニット及び画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやプロジェクタに代表される、レンズユニットを使用した画像投影装置などの光学装置においては、レンズの大口径化及び高照度化が進み、特に画像投影装置の光源からの熱によるレンズの精度の低下が問題となっている。
このような問題を解決する手段として、例えば冷却用のヒートシンク等を鏡筒に設ける方法が知られている(例えば特許文献1、2等参照)。
ヒートシンクを設ける場合には、熱伝導の効率からは、鏡筒に直接ヒートシンク等を取り付けることが望ましいが、設置するための十分なスペースの確保が難しい。
他方、鏡筒とは別体にヒートシンク等を設けるときには、スペースの確保は比較的容易になるが、フォーカスの調整や収差の補正等を目的として、鏡筒自体が動作することも多いため、かかる動作に追従しつつも、熱伝導の効率を落とさないような機構が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、鏡筒が動作する場合にも温度調整可能なレンズユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するため、本発明にかかるレンズユニットは、レンズを支持するとともに前記レンズを光軸方向に移動させ得る鏡筒と、前記鏡筒の温度を調整するための熱伝導性の高い温度制御部と、一方の端部が前記鏡筒に接続され、他方の端部が前記温度制御部へと接続され、前記鏡筒が前記移動を行うときには、当該熱伝導路の少なくとも一部が前記温度制御部と前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動する熱伝導路と、を有する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、レンズの鏡筒部分の温度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態における画像投影装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるレンズユニットの構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明における温度調整部の第1の実施形態を示す図である。
【
図5】本発明における温度調整部の第2の実施形態を示す図である。
【
図6】
図4に示した構成の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態として、画像投影装置の構成の一例を
図1に示す。
画像投影装置100は、光束を射出する光源101と、投射すべき画像を表示して、透過する光束に画像情報を付与する空間光変調素子102と、を有している。
画像投影装置100はまた、画像を投影面104に投影するための投影光学系たるレンズユニット200と、投影面104に投影するべき画像を表示するために空間光変調素子102を制御する制御部109と、を有している。
【0008】
光源101は、光線を出射する発光源たるハロゲンランプを用いて、白色光を略並行に出射する。ここで光源としてはメタルハライドランプや高圧水銀ランプ、LEDを用いても良い。
光源101は白色光源であるが、R、G、B等の基本色に対応するレーザー光源のような単色光源を複数用いたものであっても良い。
【0009】
空間光変調素子102は、入射した光束を透過して空間的な変調を付与して出射することで画像情報を与える画像表示手段たる液晶パネルである。なお、空間光変調素子102は、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)のような反射型の空間光変調素子であっても良い。
【0010】
レンズユニット200の構成について説明する。
ここで、後述する正姿勢状態においてレンズユニット200への入射光の光軸すなわちレンズ光軸をZ軸、Z軸に垂直な方向のうち、
図2における紙面上下方向に平行な軸をY軸と定め、Z軸およびY軸にそれぞれ垂直な軸をX軸と定める。なお、X軸、Y軸、Z軸それぞれの方向について、
図2に示す矢印の方向をそれぞれ正方向と定める。
【0011】
レンズユニット200は、
図2に示すように、Z軸上に配置されて投射光学系を構成する少なくとも1つのレンズ15と、画像投影装置100に取り付けられて当該レンズユニット200の不動部材となる筐体20と、を有している。
レンズユニット200は、筐体20に取り付けられて、レンズ15を支持する鏡筒10と、鏡筒10の温度を調整するための温度調整部としてのヒートシンク30と、ヒートシンク30と鏡筒10とを結ぶ熱伝導路としての伝達部材40と、を有している。ヒートシンク30は伝熱が目的であるため、画像投影装置100を構成する部材(例えば筐体20等)の一部であっても良い。
【0012】
鏡筒10は、
図2にA方向で示したように、光軸方向たるZ方向に移動可能なズーム機能を有するレンズ鏡筒である。
すなわち鏡筒10の少なくとも一部は、焦点調整のため、光軸方向に動くことがある。
【0013】
ヒートシンク30は、鏡筒10の温度を調整するために熱伝導性の高い、例えば真鍮やアルミなどの金属材料で形成される。
ヒートシンク30は、本実施形態では、筐体20の一部となる金属部材であり、鏡筒10の外側に設置された空冷式のヒートシンクとしての機能を有する温度調整部である。
【0014】
伝達部材40は、本実施形態では
図3に示すように、分割された2つの半円形部材B1、B2からなる台形筒状の部材である。
伝達部材40は、+Z方向側にあるフランジ状の底面部41と、底面部41から傾斜して延びた斜面部42とを有している。
伝達部材40は、
図2、
図3において示したように、鏡筒10の入射側において最も細くなった部分の周囲を囲繞するように配置されるため、半円形部材B1、B2を組み合わせた筒状部材としているが、かかる構成に限定されるものではない。
本実施形態では、伝達部材40の底面部41の+Z方向側の面41aと内周面44とが鏡筒10に当接し、反対側の-Z方向側の面41bが筐体20の一部であるヒートシンク30に当接している。かかる構成により、『伝達部材40の一方の端部が鏡筒10に接続され、他方の端部がヒートシンク30へと接続されている』。
【0015】
また、本実施形態では、伝達部材40と鏡筒10との間には波型ワッシャ43が配置され、伝達部材40を-Z方向に向けて付勢している。
かかる構成により、鏡筒10がZ方向に移動したときにも、波型ワッシャ43が付勢部材としてはたらくから、ヒートシンク30と伝達部材40とが離間することなく、安定して熱を伝達することができる。
【0016】
かかる鏡筒10が、Z方向に変位した時にも、伝達部材40は鏡筒10の周囲を囲繞するように取り付けられているため、伝達部材40の内周面44と鏡筒10の外周面において摺動する。
その一方で、伝達部材40と、ヒートシンク30との間の接触面は、波型ワッシャ43によりヒートシンク30へと付勢されていることから、底面部41の-Z方向側の面41bが離れることなく、安定して伝達部材40がヒートシンク30と接触し続けることとなる。
【0017】
このように、本実施形態では、レンズ15を支持するとともにレンズ15を光軸方向に移動させ得る鏡筒10と、鏡筒10の温度を調整するための熱伝導性の高いヒートシンク30と、一方の端部41aが鏡筒10に接続され、他方の端部41bがヒートシンク30へと接続され、鏡筒10がZ方向に移動を行うときには、少なくとも一部がヒートシンク30と鏡筒10との接続を維持した状態で摺動する伝達部材40と、を有している。
かかる構成により、鏡筒10がZ軸方向に動作するような鏡筒10においても、鏡筒10の排熱を十分に行うことができて、レンズの鏡筒部分の温度を調整することができる。
また、本実施形態では、画像投影装置100の大口径化、高照度化によって生じる発熱量の増加に着目したため、ヒートシンク30を用いて排熱する方法について特に説明を行ったが、かかる構成以外にも、例えばヒートシンク30をヒーター等で加熱することとすれば、所謂暖機運転や温度上昇のためにも用いることができる。
【0018】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の付番をして説明を適宜省略する。
図5に示すように、本実施形態では、ヒートシンク30が筐体20に取り付けられており、基部31と、基部31から直交してY軸方向に延びたフィン32と、を有している。
本実施形態では、フィン32は基部31の鏡筒10とは反対方向に、言い換えれば-Y方向に、複数形成されており、かかるフィン32の間を空気等の冷媒が通過することで、ヒートシンク30が冷却される空冷式の温度調整部として機能する。
【0019】
ヒートシンク30と鏡筒10との間には、金属製のヒートパイプ50が形成されている。かかるヒートパイプ50が本実施形態における伝達部材としての機能を有している。
ヒートパイプ50は、一方の端部50aが鏡筒10に接続され、他方の端部50bがヒートシンク30へと接続されている。
【0020】
ヒートパイプ50は、
図6(a)、(b)に示すように、鏡筒10にヒートパイプ50を接続するための固定ピン51と、固定ピン51によって支持され、鏡筒10のZ方向の移動に追従して動作可能な摺動部52と、筐体20に固定された不動部53と、を有している。
不動部53の-Y方向側の面には、ヒートシンク30が接続されている。
【0021】
鏡筒10がZ方向前後に動作した場合のヒートパイプ50の動作について説明する。
ヒートパイプ50は、鏡筒10がZ軸方向に移動すると、固定ピン51と摺動部52とが鏡筒10に従属する形で移動する。その結果、不動部53は筐体20に対して不動すなわち鏡筒10の移動に対しても不動であるから摺動部52と不動部53との間の接触面52aが、摺動部52と不動部53との接続を維持した状態で
図6(b)に示すように摺動する。
かかる構成により、熱伝導効率を落とすことなく、レンズの鏡筒部分の温度を調整することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、摺動部52が鏡筒10に従動する形で摺動する構成としたが、かかる構成に限定されるものではなく、その他、ヒートパイプ50の一部が摺動可能になっている構成であれば良い。
【0023】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0024】
例えば、画像投影装置は、1つの液晶パネルでカラーの画像情報を与える1板式のカラープロジェクタとしたが、これに限らず、3板式のカラープロジェクタであっても良いし、モノクロの画像投影装置であってもよい。
【0025】
本実施形態では、付勢部材として波形ワッシャを用いたが、その他の弾性体を用いても良い。
【0026】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
10 鏡筒
20 筐体
30 温度調整部(ヒートシンク)
40 伝達部材
41a 一方の端部
41b 他方の端部
43 付勢部材(波形ワッシャ)
50 伝達部材(ヒートパイプ)
52 摺動部
100 画像投影装置
200 レンズユニット
Z 光軸方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2008-058661号公報
【特許文献2】WO2016/084603
【手続補正書】
【提出日】2022-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
上述した課題を解決するため、本発明にかかるレンズユニットは、レンズを支持するとともに前記レンズを光軸方向に移動させ得る鏡筒と、熱伝導性の高い材料で形成された温度制御部と、前記鏡筒の周囲を囲むように配置される熱伝導路と、を有し、前記熱伝導路は、一方の端部が前記鏡筒に接続され、他方の端部が前記温度制御部へと接続され、前記鏡筒が前記移動を行うときには、当該熱伝導路のうち前記鏡筒の周囲を囲む部分が前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを支持するとともに前記レンズを光軸方向に移動させ得る鏡筒と、
熱伝導性の高い材料で形成された温度制御部と、
前記鏡筒の周囲を囲むように配置される熱伝導路と、を有し、
前記熱伝導路は、一方の端部が前記鏡筒に接続され、他方の端部が前記温度制御部へと接続され、前記鏡筒が前記移動を行うときには、当該熱伝導路のうち前記鏡筒の周囲を囲む部分が前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動することを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズユニットにおいて、
前記熱伝導路または前記温度制御部の何れか一方を、前記熱伝導路または前記温度制御部の何れか他方へと向けて付勢する付勢部材と、を更に有し、
前記熱伝導路は、前記付勢部材により付勢される底面部を有し、前記底面部において前記温度制御部と当接していることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズユニットにおいて、
前記熱伝導路は、金属製であることを特徴とするレンズユニット。
【請求項4】
請求項2または3に記載のレンズユニットにおいて、
前記熱伝導路は、台形筒状の部材であって前記鏡筒の入射側において最も細くなった部分の周囲を囲繞するように配置されるとともに、前記底面部は前記鏡筒の前記移動の方向及び前記付勢部材によって付勢される方向に対して垂直に伸びたフランジ状であり、
前記付勢部材が前記底面部を付勢することで前記温度制御部と前記鏡筒との当接を維持した状態で摺動することを特徴とするレンズユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載のレンズユニットにおいて、
前記熱伝導路は、少なくとも一部が前記鏡筒に従動する摺動部を有し、
前記摺動部と当該熱伝導路の他の一部とが摺動することで、前記温度制御部と前記鏡筒との接続を維持した状態で摺動することを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載のレンズユニットを有する画像投影装置。