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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105596
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】乗員保護システム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/02 20060101AFI20220707BHJP
   B60N 2/12 20060101ALI20220707BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20220707BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20220707BHJP
   B60N 2/838 20180101ALI20220707BHJP
   B60R 21/015 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
B60N2/02
B60N2/12
B60N2/14
B60N2/20
B60N2/838
B60R21/015 312
B60R21/015 320
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079880
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2017064787の分割
【原出願日】2017-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(57)【要約】
【課題】シートを自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際における乗員の安全性を確保することが可能な乗員保護システムを提供することを目的とする。
【解決手段】乗員保護システムが、車両Vの自動運転と手動運転とを切り替える運転制御部1と、車両Vに設けられたシート10と、を備えており、シート10は、当該シート1に着座する乗員の保護を必要とする状況において乗員を保護する保護手段と、当該保護手段の動作を制御する保護手段制御部と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動運転と手動運転とを切り替える運転制御部と、
前記車両に設けられたシートと、を備えており、
前記シートは、
当該シートに着座する乗員の保護を必要とする状況において前記乗員を保護する保護手段と、
当該保護手段の動作を制御する保護手段制御部と、
前記保護手段のうち、シートクッションにおけるサイドサポート及びシートバックにおけるサイドサポートの角度をそれぞれ変更する可動機構と、を有し、
前記保護手段制御部は、自動運転時には、前記サイドサポートを座面から左右端部に向け、そのまま延出されているフラットな状態にすることを特徴とする乗員保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における乗員保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両が周囲の状況を把握しながら、走行中の車線を維持又は変更したり、障害物を回避したり、状況に応じて停止又は走行するような自動運転に係る技術が開発されている。このような自動運転に係る技術としては種々のものが提案されており、例えば、自動運転時に運転者が着座するシートが車両進行方向と逆向き(後向き)になって、車両後側のシートの乗員と運転者とが対面着座状態となるシートアレンジが可能なものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-039468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転が可能な車両においては、状況に応じて、自動運転から運転者に運転を切り替える場面が発生することが考えられる。この時、運転者が着座するシートは、自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す必要がある。
ところで、自動運転から手動運転への切り替えは、運転手の意思に基づいて行われる場合の他に、例えば車両の衝突時や、障害物があった場合の急な回避行動等、緊急性の高い状況に陥った場合にも行われるため、自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際における乗員の安全性の確保が望まれていた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シートを自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際における乗員の安全性を確保することが可能な乗員保護システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
車両の自動運転と手動運転とを切り替える運転制御部と、
前記車両に設けられたシートと、を備えており、
前記シートは、
当該シートに着座する乗員の保護を必要とする状況において前記乗員を保護する保護手段と、
当該保護手段の動作を制御する保護手段制御部と、
前記保護手段のうち、シートクッションにおけるサイドサポート及びシートバックにおけるサイドサポートの角度をそれぞれ変更する可動機構と、を有し、
前記保護手段制御部は、自動運転時には、前記サイドサポートを座面から左右端部に向け、そのまま延出されているフラットな状態にすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗員保護システムにおいて、
前記保護手段制御部は、前記車両が前記運転制御部によって自動運転から手動運転に切り替わる際に、前記保護手段の動作を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の乗員保護システムにおいて、
前記保護手段制御部は、前記運転制御部が自動運転に係るシステムの異常を検知した場合に、前記保護手段の動作を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の乗員保護システムにおいて、
運転者の状態を検知する運転者状態検知部を備えており、
前記保護手段制御部は、前記運転者状態検知部による運転者の状態の検知結果に応じて、前記保護手段の動作を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の乗員保護システムにおいて、
前記保護手段制御部は、自動運転中の前記車両が障害物等に衝突する際に、前記保護手段の動作を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗員保護システムにおいて、
前記保護手段制御部は、自動運転中の前記車両が障害物等を回避する行動をする際に、前記保護手段の動作を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の乗員保護システムにおいて、
前記車両の周辺状況を検知する周辺状況検知部を備えており、当該周辺状況検知部によって前記障害物等の存否を検知することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の乗員保護システムにおいて、
前記保護手段は、前記シートに着座する乗員を包囲するようにして保護する包囲手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の乗員保護システムにおいて、
前記包囲手段には、乗員の保護を必要とする状況に応じて保護の度合いが異なる複数のパターンがあることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の乗員保護システムにおいて、
前記保護手段は、外部から前記車両に加わる衝撃荷重の方向に合わせて前記シートを回転させるシート回転手段を備えることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載の乗員保護システムにおいて、
前記シートは、
乗員の腎部を保持するシートクッションと、
下端部が当該シートクッションに支持されたシートバックと、
前記シートバックの上端部に設けられて乗員の頭部を支持するヘッドレス卜と、
前記シートクッションの前端部に設けられて乗員の足部を支持するフットレス卜と、を備え、
前記シートクッション及び前記シートバックは、骨組みとなるフレームをそれぞれ有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、シートは、当該シートに着座する乗員の保護を必要とする状況において乗員を保護する保護手段と、当該保護手段の動作を制御する保護手段制御部と、を有するので、シートに着座する乗員の保護を必要とする状況になった場合に、保護手段制御部によって保護手段の動作を制御し、乗員を保護することができる。そのため、シートを自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際における乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、緊急性の高い状況に陥った場合かどうかに関わらず、保護手段によって、シートを自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際における乗員の安全性を常に確保することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、自動運転に係るシステムに異常が発生した場合であって、かつシートを自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際に、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、運転者状態検知部による運転者の状態の検知結果に応じて、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、自動運転中の車両が障害物等に衝突する際に、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、自動運転中の車両が障害物等を回避する行動をする際に、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、周辺状況検知部によって車両の周辺状況における障害物等の存否を検知したら、保護手段によって乗員をいち早く保護することができるので、乗員の安全性確保に貢献できる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、保護手段が備える包囲手段によって乗員を包囲するようにして保護できるので、乗員を包囲しない場合の保護手段に比して、乗員の安全性を確保しやすい。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、包囲手段には、乗員の保護を必要とする状況に応じて保護の度合いが異なる複数のパターンがあるので、乗員の保護を必要とする状況ごとに相応しい状態で乗員を保護することができ、乗員の安全性確保に貢献できる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、保護手段は、外部から車両に加わる衝撃荷重の方向に合わせてシートを回転させるシート回転手段を備えるので、衝撃荷重に耐えやすい方向にシートを回転させて乗員を保護することができる。
請求項11に記載の発明によれば、シートバックを、傾いた状態から、フラットな状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】自動運転から手動運転に切り替える際のフローチャートである。
図3】シートの形態を変更する例を説明する図である。
図4】シートの形態を変更する例を説明する図である。
図5】乗員保護システムの概要を説明する図である。
図6】乗員保護システムの概要を説明する図である。
図7】乗員保護システムの概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0028】
図1は、車両制御システムの概略構成を示している。
本実施形態の車両制御システムは、車両Vの自動運転と手動運転とを切り替える運転制御部1と、自動運転中と手動運転中とでそれぞれ異なる形態に変更可能なシート10と、形態を変更する際のシート10の動作を制御するシート制御部2と、シート制御部2の制御に基づいてシート10の形態を変更するシート形態変更部20と、運転者状態検知部30と、保護手段40と、を備えており、各々が車内ネットワークに接続されている。なお、車両Vには複数のシート10が設けられている。
【0029】
[運転制御部について]
運転制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を含むマイクロコンピュータで構成されている。また、運転制御部1には、制動灯、補助機器(例えば、方向指示灯や、前照灯、ワイパ装置等)、及びアクチュエータ等の各種機器が接続されている。
運転制御部1は、ROMに予め記憶されたプログラムをRAMに展開してCPUで実行して、各種機器等の動作を制御することで自動運転を制御する。なお、運転制御部1は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0030】
運転制御部1は、具体的には、車両Vの周辺状況、及び車両Vの状況を判断して車両Vの制御を行う自動運転と、乗員による手動運転との切り替えを制御する。自動運転の際には、運転制御部1は、車両Vを自立走行させるために、各種センサーや周辺撮影カメラ等の周辺状況検知部3から得られる情報に基づいて自車両及びその周辺状況を判断する。そして、判断結果に応じて、アクセル量、ブレーキ量及び操舵角等を駆動するアクチュエータを制御する自動運転制御処理を行う。自動運転制御処理では、車両Vの周辺状況と地図情報とに基づいて予め設定された目標ルートに沿った走行計画を生成し、生成した走行計画に従って車両Vが自立走行するよう運転を制御する。
【0031】
例えば、運転制御部1は、乗員の手動運転中に、車両Vの挙動や周囲の状況に応じて自動的に自動運転制御処理を開始して乗員による車両Vの運転を支援することができる。この場合、運転制御部1は、自動運転制御処理の開始を示す情報を出力する。また、乗員の指示によって乗員の手動運転から自動運転制御処理による自動運転へ切り替えるケースでは、運転制御部1は、運転の主権の移行が行われることを示す情報、つまり自動運転制御処理の開始を示す情報である所定情報を出力する。
【0032】
また、運転制御部1は、自動運転制御処理の実行中に、車両Vの挙動や周囲の状況に応じて自動的に自動運転制御処理を終了(解除)して乗員による車両Vの手動運転を促す処理を行うことができる。この場合、運転制御部1は、乗員に車両Vの手動運転を促すために、自動運転制御処理の終了を示す情報を出力する。また、乗員の指示によって自動運転制御処理による自動運転から乗員の手動運転に切り替えるケースでは、運転制御部1は、運転の主権の移行が行われることを示す情報、つまり自動運転制御処理の終了を示す情報である所定情報を出力する。
【0033】
なお、運転制御部1は、車両Vと該車両Vの外部との間で周辺状況等の情報を授受する通信器を備えることができる。通信器の一例には、DSRC(Dedicated Short Range Communications)の狭域通信による無線通信器等の路車間通信により道路の状況を受信する通信器が挙げられる。
また、周辺状況である路車間通信により受信する道路の状況を示す情報には、走行車線の曲率、路面カント等の車線や道路の形状及び状態、車線に対する車両Vの位置関係、並びに走行中の他の車両の位置関係及び周辺の交通量等を示す情報が挙げられる。また、運転制御部1は、周辺状況を得るための機器の一例として、ナビゲーションシステムを含むことができる。
【0034】
周辺状況検知部3は、複数種類のセンサーや周辺撮影カメラ等を有し、運転制御部1による自動運転を行うために、車両Vの周辺状況を検出する。周辺状況検知部3は、例えば、周辺撮影カメラの撮像情報や、レーダーの障害物情報、ライダー(LIDER:Laser Imaging Detection and Ranging)の障害物情報等を車両Vの周辺状況として検出する。周辺状況は、例えば、車両Vに対する走行車線の白線の位置や、車線中心の位置、道路幅、道路形状、車両Vの周辺の障害物の状況等を含む。なお、道路形状としては、例えば、走行車線の曲率、センサーの見通し推定に有効な路面の勾配変化、うねり等がある。また、車両Vの周辺の障害物の状況としては、例えば、固定障害物と移動障害物を区別する情報、車両Vに対する障害物の位置、車両Vに対する障害物の移動方向、車両Vに対する障害物の相対速度等がある。
【0035】
[シート制御部及びシートについて]
シート制御部2は、車両Vに設けられたシート10の、車両Vに対する位置・向き・姿勢(すなわち、形態。)を変更するためのものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を含むマイクロコンピュータで構成されている。本実施形態の車両制御システムは、運転制御部1及びシート制御部2の他にも、各種の情報やプログラムを記憶する記憶手段や、乗員の意思をシステムに伝達するための入力手段、各種の情報を乗員に伝達するための出力手段等、シート10の形態を変更するために必要な各種手段を有するものとする。
また、シート制御部2は、運転制御部1と接続されており、運転制御部1による車両Vの運転に係る制御と連動してシート10の形態を制御することができる。ただし、これに限られるものではなく、運転制御部1とシート制御部2は、統合された一つの制御部であってもよい。
【0036】
シート10は、図3(a)に示すように、乗員の臀部を保持するシートクッション11と、下端部が当該シートクッション11に支持されたシートバック12と、シートバック12の上端部に設けられて乗員の頭部を支持するヘッドレスト13と、シートクッション11の前端部に設けられて乗員の足部を支持するフットレスト14と、を備える。
シートクッション11及びシートバック12は、図示はしないが、当該シートクッション11及び当該シートバック12の骨組みとなるフレームを有する。また、シートクッション11及びシートバック12のそれぞれは、左右端部において斜めに膨出して設けられて乗員を保持するサイドサポート11a,12aを有する。
シートクッション11は、上記したフレームが、図示しない支持機構によって車体の床面に支持されている。
ヘッドレスト13は、図3に示すように、シートバック12のフレームに組み付けられたピラー13aを有する。
フットレスト14は、図示はしないが、当該フットレスト14の骨組みとなるフレームを有する。
【0037】
シート形態変更部20は、車両Vに対するシート10の形態を変更するための支持機構やアクチュエータ等を含み、このシート形態変更部20によってシート10のシートアレンジを変更することが可能とされている。なお、本実施形態では、車幅方向及び車両前後方向の各々に2列ずつシート10が配列され、各シート10の形態を、シート制御部2及びシート形態変更部20によって変更することができる。
これら複数のシート10は、それぞれが複数の形態に変更可能な構成となっており、シート制御部2及びシート形態変更部20に基づいて複数の形態に変更されるようになっている。
【0038】
シート10における複数の形態には、手動運転に適した形態と、手動運転に適さない形態とが含まれている。
本実施形態では、運転制御部1が自動運転から手動運転に切り替えるタイミングで、シート制御部2が、手動運転用シートアレンジ(手動運転に適した形態)に変更するようにシート形態変更部20を制御する。一方、運転制御部1が手動運転から自動運転に切り替えるタイミングで、シート制御部2が、自動運転用シートアレンジ(手動運転に適さない形態)に変更するようにシート形態変更部20を制御する。すなわち、手動運転に適さない形態とは、車両Vが運転制御部1によって手動運転から自動運転に切り替えられた際に、シート制御部2の制御に基づいてシート形態変更部20が動作して変更されるシート10の形態である。
なお、手動運転に適した形態に変更されたシート10は、乗員の手動操作によって調整が可能となっている。すなわち、乗員の身体的特徴に応じて乗員自身が微調整できるようになっている。
【0039】
手動運転に適さないシート10の形態には複数のパターンがあり、シート10は、これら複数のパターンのうち乗員によって選択されたパターンの形態となるようにシート制御部2によって動作が制御される。つまり、図示はしないが、例えば、上記したナビゲーションシステム用のディスプレイに、自動運転中におけるシート10の複数の形態(複数のパターン)を表示して、乗員が選択できるようにしてもよいし、車両Vの内装に、複数の形態を選択できるボタンを設置してもよい。換言すれば、車両制御システムには、複数の選択肢(複数のパターン)が予め記憶されているとともに、シート10の形態を選択する選択手段(入力手段)が組み込まれており、乗員は、複数の選択肢(複数のパターン)の中から任意のパターンの、シート10の形態を選択できるようになっている。
そして、シート制御部2は、乗員が選択手段を利用して行った選択に従ってシート10の形態を変更するように、シート形態変更部20を動作させる。
以上のような形態の変更を可能とするために、シート10は、第1角度変更部21と、第2角度変更部22と、第3角度変更部23と、第4角度変更部24と、第5角度変更部25と、シート回転部26と、シートスライド部27と、シート姿勢検出部28と、を有する(図1参照)。
【0040】
第1角度変更部21は、シート制御部2によって制御可能とされてシートクッション11の角度を変更するものであり、上記した支持機構に組み込まれている。すなわち、シートクッション11を支持する支持機構は、シートクッション11の角度を変更可能に構成されている。
シートクッション11は、第1角度変更部21によって、手動運転に適した角度からフラットな状態になるまで角度が変更可能となっている。すなわち、シートクッション11は、図3(a)に示すような、前端部が後端部よりも上方に位置する状態から、図3(b)に示すようなフラットな状態にすることができる。
【0041】
第2角度変更部22は、シート制御部2によって制御可能とされてシートバック12の角度を変更するものであり、シートバック12が有する上記のフレームと、シートバック12をシートクッション11に対して回転可能とする回転軸22aと、回転軸22aを回転させるために駆動するアクチュエータ(図示せず。)と、を備える。
シートバック12は、第2角度変更部22によって、手動運転に適した角度からフラットな状態になるまで角度が変更可能となっている。すなわち、シートバック12は、図3(a)に示すような傾いた状態から、図3(b)に示すようなフラットな状態にすることができる。
【0042】
第3角度変更部23は、シート制御部2によって制御可能とされてシートクッション11及びシートバック12におけるサイドサポート11a,12aの角度を変更するものであり、サイドサポート11a,12aを構成するクッション材を左右に開く可動機構を備える。すなわち、当該可動機構は、シートクッション11及びシートバック12に内蔵されている。
サイドサポート11a,12aは、第3角度変更部23によって、手動運転に適した角度からフラットな状態になるまで角度が変更可能となっている。すなわち、シートクッション11及びシートバック12は、図4(a),(b)の実線で示すような、サイドサポート11a,12aが斜めに膨出した状態から、図4(a),(b)の二点鎖線で示すような、サイドサポート11a,12aフラットな状態にすることができる。
【0043】
第4角度変更部24は、シート制御部2によって制御可能とされてヘッドレスト13の角度を変更するものであり、ヘッドレスト13が有する上記のピラー13aと、ヘッドレスト13をシートバック12に対して回転可能とする回転軸24aと、回転軸24aを回転させるために駆動するアクチュエータ(図示せず。)と、を備える。
ヘッドレスト13は、第3角度変更部24によって、シートバック12がフラットな状態である場合に、フラットな状態になるまで角度が変更可能となっている。すなわち、ヘッドレスト13は、図3(a)に示すような乗員の頭部を支持するのに適した角度から、図3(b)に示すようなフラットな状態にすることができる。
【0044】
第5角度変更部25は、シート制御部2によって制御可能とされてフットレスト14の角度を変更するものであり、フットレスト14が有する上記のフレームと、フットレスト14をシートクッション11に対して回転可能とする回転軸25aと、回転軸25aを回転させるために駆動するアクチュエータ(図示せず。)と、を備える。
フットレスト14は、第5角度変更部25によって、手動運転に適した角度からフラットな状態になるまで角度が変更可能となっている。すなわち、フットレスト14は、図3(a)に示すような、シートクッション11の前端部に格納された状態から、図3(b)に示すようなフラットな状態にすることができる。
【0045】
シート回転部26は、シート制御部2によって制御可能とされてシートクッション11(延いては、シート10全体)を回転させるものであり、上記した支持機構に組み込まれている。すなわち、シートクッション11を支持する支持機構は、シートクッション11の角度を変更可能に構成されている。
シートクッション11は、シート回転部26によって、手動運転に適した位置から完全に後方を向く位置まで回転可能となっている。
【0046】
シートスライド部27は、シート制御部2によって制御可能とされてシートクッション11(延いては、シート10全体)を前後方向及び左右方向にスライドさせるものであり、上記した支持機構に組み込まれている。すなわち、シートクッション11を支持する支持機構は、シートクッション11の前後方向及び左右方向の位置を変更可能に構成されている。
シートクッション11は、シートスライド部27によって、手動運転に適した位置から手動運転に適さない位置までスライド可能となっている。
【0047】
第1~第5角度変更部21~25、シート回転部26、シートスライド部27は、シート制御部2によって別々に制御可能であるのはもちろんのこと、第1~第5角度変更部21~25、シート回転部26、シートスライド部27は、シート制御部2によって同時に制御可能となっている。
【0048】
シート姿勢検出部28は、シート10の各部の位置を検知する複数のセンサー(図示せず。)を備えており、シート制御部2は、複数のセンサーによる検知信号に基づいてシート10の姿勢・位置・向きを演算して導き出すことができる。すなわち、シート10の形態が変更された後に、シート姿勢検出部28によって、シート10がどのような状態になっているかを把握することができる。
【0049】
なお、運転制御部1は、図3(a)に示すように、車両Vを運転操作するためのハンドルHを上下移動させることができる。車両Vは、ハンドルHを上下移動させるための可動機構であるハンドル移動部4を備えている(図1参照。)。ハンドルHを上下に移動させることで、ハンドルHの位置調整だけでなく、自動運転中において車内スペースを広げることができる。
【0050】
[手動運転から自動運転に切り替える場合について]
運転制御部1は、自動運転と手動運転とを強制的に切り替える強制切替モードと、自動運転と手動運転とを運転者の選択によって切り替える自主切替モードと、に基づいて制御を行っている。すなわち、手動運転から自動運転への切り替えは、強制的に行われる場合と、自主的に行われる場合とがある。
なお、強制的に切り替えが行われる場合は、例えば乗員の健康状態に異常が発生した場合や、事前に手動運転から自動運転に切り替えるタイミングを予約していた場合等が挙げられる。
【0051】
車両Vを手動運転から自動運転に自主的に切り替える場合は、乗員が、上記した選択手段によって、任意のシート10の形態を選択する。シート制御部2は、乗員の選択に従ってシート10の形態を変更するようにシート形態変更部20の動作を制御する。
乗員が選択した形態となるように、シート形態変更部20における第1~第5角度変更部21~25及びシート回転部26の各部が適宜動作する。
【0052】
乗員が選択できる選択肢(パターン)は特に限定されるものではなく、図3(b)に示すようなシート10がフラットになる形態を始め、様々なパターンが予め設定されているものとする。
その他の選択肢としては、例えば、睡眠をとるのに適した睡眠パターンや、ディスプレイに表示された動画等を鑑賞するのに適した鑑賞パターン、仕事や執筆に適したデスクワークパターン等、様々なものが挙げられる。
【0053】
上記の睡眠パターンでは、図3(b)に示すようなフラットな状態よりも若干上方にシートバック12が傾斜した状態となる。
また、鑑賞パターンでは、シート10全体がディスプレイ側に向きを変えるとともに、シートクッション11及びシートバック12の角度が変更された状態となる。
【0054】
また、デスクワークパターンでは、サイドサポート11a,12aが開いた状態となり、着座してのデスクワークに好ましい角度に変更される。さらに、図示はしないが、シート10に着座して仕事をしやすくするために、テーブルが、乗員の前方に配置された状態となる。
なお、テーブルは、シート10に着座した乗員の作業を補助する補助機能部として設けられたものであり、本実施形態においては、シート10近傍の内装に組み込まれている。また、テーブルは、テーブルを移動させるための可動機構であるテーブル移動部5によって移動可能とされている。
テーブルは、本実施形態においては、シート10近傍の内装に組み込まれているものとしたが、これに限られるものではなく、シート10自体に形成された収納部(図示せず。)に組み込まれてもよい。
【0055】
上記したテーブルのような補助機能部は、乗員の作業を補助するための機能を有するものであればよい。その他には、例えば、ドリンクホルダーが補助機能部として設けられ、鑑賞パターンにおいて当該ドリンクホルダーが乗員の手の届きやすい位置に移動する等の例が挙げられる。
【0056】
なお、シート10が、乗員が選択した形態に変更された後は、シートクッション11やシートバック12等の各部の角度や、シート10の向き等を微調整できるようになっているものとする。
【0057】
[自動運転から手動運転に切り替える場合について]
上述のように、運転制御部1は、自動運転と手動運転とを強制的に切り替える強制切替モードと、自動運転と手動運転とを運転者の選択によって切り替える自主切替モードと、に基づいて制御を行っている。
なお、車両Vを自動運転から手動運転に自主的に切り替える場合は、乗員の任意で行われる。すなわち、乗員が、手動運転が必要と判断した時に、乗員によって手動運転から自動運転に切り替えられる。
【0058】
強制的に行われる場合は、例えば高速道路から一般道路へと車両Vを移す際や、複雑な形状の道路に差し掛かった際等が挙げられる。ところが、強制的に自動運転から手動運転に切り替えられる時に、例えば、運転者がシート10に着座していなかったり、運転者の健康状態に異常が発生していたりすると、強制的に手動運転に切り替えられるのは好ましくない。
そのため、シート10が自動運転中の形態である場合に、運転制御部1は、車両Vの自動運転から手動運転への切り替えを行わないように制御することが可能となっている。
【0059】
本実施形態の車両制御システムは、運転者の状態を検知するための運転者状態検知部30を備える。そして、運転制御部1は、運転者状態検知部30による運転者の状態の検知結果に応じて、車両Vの自動運転から手動運転への切り替えを行わないように制御可能となっている。
【0060】
より詳細に説明すると、運転者状態検知部30は、図1に示すように、運転者がシート10に着座しているか否かを検知する着座状態検知部31を有する。
着座状態検知部31は、少なくとも運転席のシート10に組み込まれ、乗員の着座を検知するセンサーであり、例えば圧力センサーが採用されている。
運転制御部1は、着座状態検知部31によって乗員の着座が確認できた場合に、車両Vの自動運転から手動運転への切り替えを行うことができ、確認できなかった場合には、車両Vの自動運転から手動運転への切り替えを行わずに自動運転を継続する。
なお、本実施形態においては、着座状態検知部31として圧力センサーが採用されているが、これに限られるものではなく、カメラ撮影によって乗員の着座状態を確認してもよいものとする。
【0061】
さらに、運転者状態検知部30は、図1に示すように、運転者の健康状態を検知する健康状態検知部32を有する。
健康状態検知部32としては、少なくとも運転席のシート10に組み込まれ、乗員の健康状態を検知するセンサーが採用されている。このようなセンサーとしては、例えば血圧センサーや脈拍センサーをはじめとする生体センサーを採用することができる。
運転制御部1は、健康状態検知部32によって乗員の健康状態が問題ないことが確認できた場合に、車両Vの自動運転から手動運転への切り替えを行うことができ、問題がある場合には、車両Vの自動運転から手動運転への切り替えを行わずに自動運転を継続する。
【0062】
なお、本実施形態においては、健康状態検知部32として生体センサーが採用されているが、これに限られるものではなく、カメラ撮影によって乗員の健康状態を確認してもよいものとする。例えば、瞳孔を確認したり、手がハンドルHに置かれていない状態を確認したりする。
また、センサーとカメラを併用すれば、乗員が単に居眠りしているだけかどうかも判別することができる。すなわち、健康状態に問題がないが、目を開けていない状態は、居眠りであると判断する。
【0063】
また、運転者の声を集音するマイクを採用し、生体センサーとマイクを併用して、運転者の意識の有無を確認できるようにしてもよい。すなわち、運転者に対して発話を促し、運転者の声が検知されない場合は、意識が無いと判断する。
さらに、アルコールセンサーを採用してもよい。アルコールセンサーによって運転者の呼気からアルコールが検知された場合は、自動運転から手動運転への切り替えは行われない。場合によっては、駐車可能な場所に車両Vを駐車し、アルコールが呼気から検出されなくなるまで、発進できないようにする制御を行ってもよい。この場合、運転者を、アルコールの検知されない乗員に変更することで発信できるようにしてもよいものとする。
【0064】
図2は、自動運転から手動運転に切り替える際のフローチャートである。
このようなフローチャートに示すように、自動運転から手動運転に切り替える際は、まず、着座状態検知部31によって、運転席用シート10における乗員の着座状態を検知する(ステップS1)。
【0065】
ステップS2において乗員の着座が確認できなかった場合、運転制御部1は、ステップS3において車内にいる乗員に対して報知を行い、シート10への着座を促す。
ステップS2において乗員の着座が確認できた場合、運転制御部1は、健康状態検知部32によって乗員の健康状態を検知する(ステップS4)。
【0066】
ステップS5において乗員の健康状態が問題ないことが確認できた場合、シート制御部2によって、後述する保護手段を作動させ、乗員の保護を図る(ステップS6)。
続いて、運転制御部1によって、車両Vを自動運転から手動運転へと切り替える(ステップS7)。この時点で車両Vの運転操作は、運転席のシート10に着座した乗員によって行われる。以降は、手動運転が継続される(ステップS8)。
【0067】
ステップS5において乗員の健康状態に問題が確認された場合、運転制御部1によって自動運転を継続する(ステップS9)。
自動運転が継続された場合は、安全のため、車両Vを駐停車できる場所を周辺状況検知部3によって検出する(ステップS10)。そして、駐停車可能な場所が見つからない場合には、自動運転を継続する。一方、駐停車可能な場所が見つかった場合には、当該場所に車両Vを停車または駐車する(ステップS11)。
自動運転から手動運転に切り替える際は、以上のような流れで行われる。
【0068】
車両Vは、上記のように複数のシート10を備える。そして、車両Vが運転制御部1によって自動運転から手動運転に切り替わる際に、シート制御部2は、運転者用のシート10と共に他のシート10も、自動運転中の形態から手動運転中の形態に変更するように動作を制御可能である。
車内のすべてのシート10を一斉に動作させてしまうと、車内スペースの都合上、好ましくない場合があるため、シート制御部2は、複数のシート10のうち運転者用のシート10の動作を優先して制御する。
【0069】
また、自動運転中に乗員がリラックスした状態となっており、シート10も乗員のリラックス状態に適した形態になっていると、手動運転を開始すべきタイミングまでにシート10を手動運転に適した位置に戻せないことも考えられる。
そのため、シート10が自動運転中の形態である場合であって、かつ、手動運転を開始すべきタイミングまでにシート10を手動運転に適した位置に戻せない場合も、運転制御部1は、車両Vの自動運転から手動運転への切り替えを行わないように制御することが可能となっている。
【0070】
また、手動運転を開始すべきタイミングまでにシート10を手動運転に適した位置に戻せないことを防ぐために、シート制御部2は、手動運転中の形態から自動運転中の形態に変更する際のシート10の動作における移動量を制御している。
すなわち、手動運転から自動運転に切り替えようとする時に、例えば、シート10が真後ろに向いて、かつフラットな状態であると、手動運転に適した位置に戻すのに時間がかかり、手動運転を開始すべきタイミングに間に合わないことも考えられる。そこで、もともと、手動運転中の形態から自動運転中の形態に変更する際に、シート10の移動量を制限しておけば、手動運転を開始すべきタイミングに間に合わない事態を防ぐことが可能となる。
【0071】
また、シート制御部2は、シート10の形態を変更する際の動作速度を制御している。すなわち、シート制御部2の制御によって、自動運転中の形態から手動運転中の形態に変更する際のシート10の動作速度と、手動運転中の形態から自動運転中の形態に変更する際のシート10の動作速度を、早くしたり、遅くしたりすることができる。
このようにすることで、手動運転から自動運転に切り替えようとする時に、シート10の形態の変更が、手動運転を開始すべきタイミングに間に合わない事態を防ぐことが可能となる。また、手動運転から自動運転に切り替えようとする時だけに限られず、その他の場面でも、シート10の形態を変更する際の動作速度を変えることができる。
【0072】
また、シート制御部2は、自動運転中の形態から手動運転中の形態に変更する際のシート10の動作における速度を制御して、所要時間を延長している。すなわち、シート制御部2の制御によって、シート10の動作を遅らせて、リラックス状態にあった乗員が手動運転に臨むまでの時間を確保している。
このようにすることで、形態を変更する際のシート10の動作を遅らせて、自動運転から手動運転に切り替えるタイミングに合わせることができ、乗員が心の余裕を持って手動運転に臨むことができる。
【0073】
また、上述のように、運転制御部1は、自動運転と手動運転とを強制的に切り替える強制切替モードと、自動運転と手動運転とを運転者の選択によって切り替える自主切替モードと、に基づいて制御を行っており、シート制御部2は、強制切替モードと自主切替モードとで別々にシート10の動作における速度を制御している。
このようにすることで、手動運転から自動運転に切り替えようとする時に、シート10の形態の変更が、手動運転を開始すべきタイミングに間に合わない事態を防ぐことが可能となる。さらに、それぞれのモードに適した速度でシート10を動作させることができる。
【0074】
以上のようにして、シート10を、自動運転中の形態から手動運転中の形態に変更し、車両Vを自動運転から手動運転に切り替えることができる。
自動運転から手動運転に切り替えるタイミングは、言うなれば、コンピュータから人間へと車両Vの運転の主権が移行されるタイミングであるため、乗員の安全を確保することが望まれている。また、自動運転から手動運転に切り替えるタイミングだけでなく、自動運転中の乗員の安全を確保しなければならないことは言うまでもない。以下では、乗員の安全を確保するための乗員保護システムについて説明する。
【0075】
[乗員保護システムについて]
シート10は、図1図5図7に示すように、当該シート10に着座する乗員の保護を必要とする状況において乗員を保護する保護手段と、当該保護手段の動作を制御する保護手段制御部と、を有する。
なお、保護手段制御部は、シート10に組み込まれた保護手段の動作を制御するものであるため、上記したシート制御部2が兼ねるものとする。
【0076】
保護手段は、図5及び図6に示すように、シート10に着座する乗員を包囲するようにして保護する包囲手段23,41,42,43を備える。
包囲手段23,41,42,43には、乗員の保護を必要とする状況に応じて保護の度合いが異なる複数のパターンがある。本実施形態においては、保護手段が、第1包囲手段23と、第2包囲手段41と、第3包囲手段42と、第4包囲手段43と、を備えるものとする。
【0077】
第1包囲手段23は、シートバック12におけるサイドサポート12aの角度を変更する上記の第3角度変更部23であり、図5(a)に示すように、サイドサポート12aを内側に向かって角度変更し、乗員の身体を包囲する構成となっている。
すなわち、第1包囲手段23は、サイドサポート12aを構成するクッション材を動作させる可動機構を備え、当該可動機構の動作が、シート制御部2によって制御された状態となっている。
このような第1包囲手段23によれば、シートバック12におけるサイドサポート12aによって乗員の身体を包囲することができるので、乗員を保持することができ、乗員を保護することができる。
なお、本実施形態においては、シートバック12におけるサイドサポート12aによって乗員の身体を包囲するものとしたが、これに合わせて、シートクッション11におけるサイドサポート11aによって乗員の臀部を包囲するようにしてもよい。
【0078】
第2包囲手段41は、ヘッドレスト13における左右の側端部13bの角度を変更するものであり、図5(b)に示すように、両側端部13bを内側に向かって角度変更し、乗員の頭部を包囲する構成となっている。
すなわち、第2包囲手段41は、ヘッドレスト13における両側端部13bを構成するクッション材を動作させる可動機構を備え、当該可動機構の動作が、シート制御部2によって制御された状態となっている。
このような第2包囲手段41によれば、ヘッドレスト13における両側端部13bによって乗員の頭部を包囲することができるので、乗員を保護することができる。
なお、本実施形態においては、第2包囲手段41が、ヘッドレスト13における両側端部13bを内側に向かって角度変更し、乗員の頭部を包囲する構成であるとしたが、これに限られるものではない。例えば、ヘッドレスト13の両側端部に、視界を遮らない範囲で前方に突出(又は膨出)するサイドサポート部材を設けて、これを第2包囲手段41としてもよい。
【0079】
第3包囲手段42は、図1及び図6に示すように、シートバック12におけるサイドサポート12aに設けられ、作動時に、乗員の身体を前方側まで包囲するエアバッグ42aと、シート制御部2の制御に応じてエアバッグ42aを作動させるエアバッグ作動部42bと、を備える。
この第3包囲手段42は、保護の度合いとしては、同じくサイドサポート12aを利用した第1包囲手段23よりも強く、車両Vの衝突時又は衝突が予想される場合に作動する。
エアバッグ42aは、シートバック12におけるサイドサポート12aから、乗員の身体における前面まで覆うように湾曲形成されている。
このような第3包囲手段42によれば、車両Vの衝突時又は衝突が予想される場合に作動するエアバッグ42aによって乗員の身体を広い範囲で包囲することができるので、より確実に乗員を保護することができる。
【0080】
第4包囲手段43は、ヘッドレスト13における側端部13bに設けられ、作動時に、乗員の頭部を包囲するエアバッグ43aと、シート制御部2の制御に応じて当該エアバッグを作動させるエアバッグ作動部43bと、を備える。
この第4包囲手段43は、保護の度合いとしては、同じくヘッドレスト13を利用した第2包囲手段41よりも強く、車両Vの衝突時又は衝突が予想される場合に作動する。
エアバッグ43aは、ヘッドレスト13の両側端部から前方に向かって突出するように形成されている。
このような第4包囲手段43によれば、車両Vの衝突時又は衝突が予想される場合に作動するエアバッグ43aによって乗員の頭部を広い範囲で包囲することができるので、より確実に乗員を保護することができる。
【0081】
図7は、その他の保護手段の例を示すものであり、図7における保護手段は、外部から車両Vに加わる衝撃荷重の方向に合わせてシート10を回転させるシート回転手段を備える。シート回転手段は、上記したシート回転部26によって構成されている。
本実施形態におけるシート10に限らず、シートクッション及びシートバックを備える車両用のシートは、正面からの衝突荷重に対して踏ん張りが利く状態で着座できる。したがって、シート回転手段であるシート回転部26によってシート10を回転させ、外部から車両Vに加わる衝撃荷重の方向に合わせることで、シート10に着座する乗員が踏ん張りの利く状態となるので、衝撃荷重に対して強く対抗できる。
なお、乗客の保護を考慮した場合、シート10は、衝撃荷重の方向に対して完全に一致するように回転することが望ましいが、時間的な余裕がない場合には、少しでも回転させるようにする。
【0082】
本実施形態においては、シート回転手段として、シート回転部26のみを挙げたが、車内スペースや他のシート10との位置関係を考慮して、シート10をスライドさせる必要がある場合には、上記のシートスライド部27を用いてもよいものとする。
【0083】
図5図7に示す保護手段は、保護手段制御部であるシート制御部2によって動作が制御される。乗員の保護を必要とする状況としては、以下で説明するような様々なものが挙げられる。
【0084】
保護手段制御部であるシート制御部2は、車両Vが運転制御部1によって自動運転から手動運転に切り替わる際に、上記した各種の保護手段のうち少なくとも一つの保護手段の動作を制御する。
自動運転から手動運転に切り替わる際は、上記したように、コンピュータから人間へと車両Vの運転の主権が移行されるタイミングであるため、乗員の保護を必要とする状況として挙げられる。
なお、このような自動運転から手動運転に切り替わる際の保護手段は、乗員の手動運転を阻害しないように、図5に示すような保護手段(第1包囲手段23、第2包囲手段41)が好ましい。
【0085】
保護手段制御部であるシート制御部2は、運転制御部1が自動運転に係るシステムの異常を検知した場合に、上記した各種の保護手段のうち少なくとも一つの保護手段の動作を制御する。
自動運転に係るシステムの異常を検知した場合は、検知された異常がどのようなものであるかによって、車両Vがどのように走行するかが異なるため、検知された異常に応じて相応しい保護手段が選択される。
例えば、自動運転に係るシステムの異常が、自動運転から手動運転に切り替わるものであれば、図5に示すような保護手段(第1包囲手段23、第2包囲手段41)が選択される。また、自動運転に係るシステムの異常が、車両Vの操作が不能になるようなものであれば、図6に示すような保護手段(第3包囲手段42、第4包囲手段43)が選択される。つまり、包囲手段には、乗員の保護を必要とする状況に応じて保護の度合いが異なる複数のパターンがあるため、その状況に応じた包囲手段が選択されることとなる。
【0086】
保護手段制御部であるシート制御部2は、運転者状態検知部30のうち健康状態検知部32による運転者の状態の検知結果に応じて、上記した各種の保護手段のうち少なくとも一つの保護手段の動作を制御する。
健康状態検知部32は、上記したように運転者の健康状態を検知するものであり、運転者の健康状態に応じて相応しい保護手段が選択される。特に、運転者の意識の有無に応じて保護手段を選択したり、いくつかの保護手段を併用したりすることが望ましい。
【0087】
保護手段制御部であるシート制御部2は、自動運転中の車両Vが障害物S等に衝突する際に、上記した各種の保護手段のうち少なくとも一つの保護手段の動作を制御する。
車両Vが障害物S等に衝突する際は、外部から車両Vに対して衝撃荷重が加わるため、乗員の保護を必要とする状況として挙げられる。
このような車両Vが障害物S等に衝突する際の保護手段としては、図6に示す保護手段(第3包囲手段42、第4包囲手段43)か、図7に示す保護手段(シート回転部26)が選択される。若しくは、その両方が選択されてもよい。
【0088】
保護手段制御部であるシート制御部2は、自動運転中の車両Vが障害物S等を回避する行動をする際に、上記した各種の保護手段のうち少なくとも一つの保護手段の動作を制御する。
車両Vが障害物S等を回避する行動をする際は、例えば車両Vが急カーブしたり、急ブレーキしたりするため、乗員の保護を必要とする状況として挙げられる。
このような車両Vが障害物S等を回避する行動をする際の保護手段としては、図5に示すような保護手段(第1包囲手段23、第2包囲手段41)が選択されて、急カーブ時の遠心力に対抗したり、図6に示すような保護手段(第3包囲手段42)が選択されて乗員の前方への移動を抑制したりすることが好ましい。
【0089】
なお、乗員保護システム(車両制御システム)は、上記したように車両Vの周辺状況を検知する周辺状況検知部3を備えており、当該周辺状況検知部3によって障害物S等の存否を検知することができる。したがって、上記した各種の保護手段は、周辺状況検知部3から得られる情報に基づいて選択される。
【0090】
車両Vには、以上のように構成された乗員保護システムが組み込まれており、シート10に着座する乗員の保護を必要とする状況において乗員を保護することができる。
【0091】
以上のような本実施の形態によれば、シート10は、当該シート10に着座する乗員の保護を必要とする状況において乗員を保護する保護手段と、当該保護手段の動作を制御する保護手段制御部(シート制御部2)と、を有するので、シート10に着座する乗員の保護を必要とする状況になった場合に、保護手段制御部によって保護手段の動作を制御し、乗員を保護することができる。そのため、シート10を自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際における乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0092】
また、緊急性の高い状況に陥った場合かどうかに関わらず、保護手段によって、シート10を自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際における乗員の安全性を常に確保することが可能となる。
【0093】
また、自動運転に係るシステムに異常が発生した場合であって、かつシート10を自動運転中の形態から手動運転に適した形態に戻す際に、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0094】
また、運転者状態検知部30による運転者の状態の検知結果に応じて、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0095】
また、自動運転中の車両Vが障害物S等に衝突する際に、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0096】
また、自動運転中の車両Vが障害物等を回避する行動をする際に、保護手段によって乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0097】
また、周辺状況検知部3によって車両Vの周辺状況における障害物S等の存否を検知したら、保護手段によって乗員をいち早く保護することができるので、乗員の安全性を確保することに貢献できる。
【0098】
また、保護手段が備える包囲手段23,41,42,43によって乗員を包囲するようにして保護できるので、乗員を包囲しない場合の保護手段に比して、乗員の安全性を確保しやすい。
【0099】
また、包囲手段23,41,42,43には、乗員の保護を必要とする状況に応じて保護の度合いが異なる複数のパターンがあるので、乗員の保護を必要とする状況ごとに相応しい状態で乗員を保護することができ、乗員の安全性確保に貢献できる。
【0100】
また、保護手段は、外部から車両Vに加わる衝撃荷重の方向に合わせてシート10を回転させるシート回転ぶ26を備えるので、衝撃荷重に耐えやすい方向にシート10を回転させて乗員を保護することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 運転制御部
2 シート制御部(保護手段制御部)
3 周辺状況検知部
10 シート
11 シートクッション
11a サイドサポート
12 シートバック
12a サイドサポート
13 ヘッドレスト
13a 側端部
14 フットレスト
20 シート形態変更部
21 第1角度変更部
22 第2角度変更部
22a 回転軸
23 第3角度変更部
24 第4角度変更部
24a 回転軸
25 第5角度変更部
25a 回転軸
26 シート回転部
27 シートスライド部
28 シート姿勢検出部
30 運転者状態検知部
31 着座状態検知部
32 健康状態検知部
40 保護手段
41 第2包囲手段
42 第3包囲手段
42a エアバッグ
42b エアバッグ作動部
43 第4包囲手段
43a エアバッグ
43b エアバッグ作動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7