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特開2022-105598有機顔料組成物の製造方法、塗膜の製造方法及び塗膜の輝度の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105598
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】有機顔料組成物の製造方法、塗膜の製造方法及び塗膜の輝度の評価方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20220707BHJP
   C09B 67/04 20060101ALI20220707BHJP
   C09B 67/08 20060101ALI20220707BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20220707BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C09B67/20 A
C09B67/20 B
C09B67/04
C09B67/08 C
C09B57/00 Z
G02B5/20 101
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080055
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2018544004の分割
【原出願日】2017-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2016199273
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
(72)【発明者】
【氏名】本田 大介
(57)【要約】
【課題】カラーフィルターにおける輝度を向上させる目的で、拡散反射率を制御された有機顔料微粒子を少なくとも含む有機顔料組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも有機顔料微粒子を含む有機顔料組成物の製造方法であり、カラーフィルターにおける輝度を向上させる目的で上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することを特徴とする有機顔料組成物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機顔料微粒子を含む有機顔料組成物の製造方法であり、
カラーフィルターにおける輝度を向上させる目的で上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することを特徴とする有機顔料組成物の製造方法。
【請求項2】
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率を高く制御することで、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することを特徴とする請求項1に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項3】
上記有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を酸化物で覆うことにより、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することを特徴とする請求項1または2に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項4】
上記酸化物が非晶質を含む酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項5】
上記酸化物がケイ素酸化物であることを特徴とする請求項3または4に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項6】
上記拡散反射スペクトルを、上記有機顔料微粒子の粉末を用いて測定することを特徴とする請求項2~5の何れかに記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項7】
上記有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子であり、上記目的とする波長の範囲が620~750nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が71%以上であることを特徴とする請求項2~6の何れかに記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項8】
上記有機顔料微粒子が青色顔料微粒子であり、上記目的とする波長の範囲が450~495nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が30%以上であることを特徴とする請求項2~6の何れかに記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項9】
上記有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子であり、上記目的とする波長の範囲が495~570nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が51%以上であることを特徴とする請求項2~6の何れかに記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項10】
上記有機顔料組成物が有機顔料微粒子分散体であり、
下記工程(I)~(III)を有する、請求項1~9の何れかに記載の有機顔料組成物の製造方法。
工程(I)少なくとも1種類の有機顔料微粒子を得る工程
工程(II)上記有機顔料微粒子の拡散反射率を測定する工程
工程(III)上記有機顔料微粒子を溶媒に分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得る工程
【請求項11】
請求項10に記載の有機顔料組成物の製造方法により得られた有機顔料微粒子分散体を用いて塗膜を作製し、上記塗膜の輝度を制御する、塗膜の製造方法。
【請求項12】
上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することによって、上記塗膜の輝度を制御する、請求項11に記載の塗膜の製造方法。
【請求項13】
有機顔料微粒子の粉末の拡散反射率を測定し、工程(I)~(IV)により求めた関係を用いて塗膜の輝度を評価する、有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜の輝度の評価方法。
工程(I)少なくとも1種類の有機顔料微粒子を得る工程
工程(II)上記有機顔料微粒子の粉末の、波長380~780nmの範囲における拡散反射率を測定する工程
工程(III)上記有機顔料微粒子を溶媒に分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得る工程
工程(IV)上記有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜の輝度を測定し、塗膜の輝度と、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率との関係を求める工程
【請求項14】
請求項11又は12に記載の塗膜の製造方法において、上記塗膜をカラーフィルター用の基板上に形成する工程を含み、上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することによって輝度が制御されたカラーフィルターを得ることを特徴とする、カラーフィルターの製造方法。
【請求項15】
カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
上記有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が620~750nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が71%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子。
【請求項16】
カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
上記有機顔料微粒子が青色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が450~495nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が30%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子。
【請求項17】
カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
上記有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が495~570nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が51%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子。
【請求項18】
上記有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されている、請求項15~17の何れかに記載のカラーフィルター用の有機顔料微粒子。
【請求項19】
上記ケイ素酸化物が非晶質を含むものであることを特徴とする請求項18に記載のカラーフィルター用の有機顔料微粒子。
【請求項20】
請求項15~19の何れかに記載のカラーフィルター用の有機顔料微粒子を備えたカラーフィルター。
【請求項21】
請求項15~19の何れかに記載のカラーフィルター用の有機顔料微粒子と、当該有機顔料微粒子の色とは異なる色の有機顔料微粒子とを含むカラーフィルター。
【請求項22】
上記カラーフィルターは、ビーズミル品有機顔料微粒子によるカラーフィルターに比して、拡散反射率と輝度との双方が高いものであることを特徴とする請求項20又は21に記載のカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料組成物の製造方法、塗膜の製造方法及び塗膜の輝度の評価方法並びにカラーフィルターの製造方法に関する。また、本発明は、カラーフィルター用の有機顔料微粒子及びカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
有機顔料は、一般的に、染料に比べて耐久性が高く、無機顔料に比べて着色力が高いことから、色材として広く利用されており、様々な製造方法が知られている。
【0003】
そのような有機顔料の用途の一つとして、カラーフィルターを示すことができる。液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の液晶表示装置、並びにデジタルカメラやカラーコピー機等の入力デバイスとして使用される撮像素子には、カラーフィルターが用いられている。カラーフィルターは、感光性樹脂組成物と顔料分散体との混合物を用いたフォトリソグラフィー法や、着色インキをインクジェットプリンターを用いてマスクを介さずに直接基板上に塗布するインクジェット法などに代表される方法で、各色をパターンニングして製造される。
【0004】
より鮮やかな色再現のため、カラーフィルターは、高コントラスト、高輝度、透明性が強く求められており、特に有機顔料を用いたカラーフィルターにあってはその傾向が強い。有機顔料はその粒子径を微小化、球形化することで、高コントラスト及び透明性の向上を達成できることが知られている。そのため、例えば、特許文献1には、有機顔料を有機溶媒や強酸等の良溶媒に溶解し、貧溶媒に連続的に投入し晶析することにより、球形でかつ微小な有機顔料の粒子を得ることが出来ることが記載されている。また、上記の微小粒子である有機顔料は分散状態によってもコントラストの高さや透明性に影響を与える。分散を効率良く実施するためには、有機顔料の微小粒子の分散剤や分散媒への湿潤化技術を要し、その分散状態を制御することによってもカラーフィルターにおける高コントラスト化、透明化を達成出来る(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、カラーフィルターにおける高コントラスト化と透明性は実現出来たとしても、高輝度化が問題として顕在化している。有機顔料を球形化、微小粒子化し、また分散媒への分散状態を高めたとしても、それらは輝度とは連係しない。にも関わらず、カラーフィルターにおける高輝度化に対しては、実際に、球形化、微小粒子化した有機顔料を溶媒に分散した分散液をガラス等に塗布してベーク(熱処理)することで塗膜化し、その塗膜の輝度を測定して判断するしか方法がなかった。
【0006】
カラーフィルターにおける高輝度化については、顔料と染料とを混合して用いた顔料組成物を用いる方法や、特定の異種顔料種を含む顔料の微細粒子の分散安定性を向上させた顔料組成物を用いることで輝度を向上させる方法が提案されているが(特許文献3、特許文献4)、ベークして塗膜化したものの輝度を測定しており、有機顔料自身の色彩的特性には注目されていなかった。調製された分散液並びにそれを用いて作製した塗膜の評価によって輝度が評価されるために、塗膜に含まれる樹脂や分散剤、その他副組成物との相性などによって、有機顔料微粒子そのものの特性が輝度に与える影響を正しく評価出来ず、カラーフィルターの輝度を制御するための根本的な要因を特定出来ていなかった。このように有機顔料微粒子そのものの輝度を制御できてはいなかったため、カラーフィルターにおける高輝度化を根本的に制御することが出来ず、カラーフィルターにおける高輝度化に関して、制御方法の確立が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/096401号パンフレット
【特許文献2】特開2014-126585号公報
【特許文献3】特開2008-268486号公報
【特許文献4】特開2016-61979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、このような事情に照らし、カラーフィルターにおける輝度を向上させる目的で、拡散反射率を制御された有機顔料微粒子を少なくとも含む有機顔料組成物の製造方法を提供することを課題とする。本願発明者は、有機顔料微粒子の拡散反射率と、当該有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜のカラーフィルターにおける輝度との関連性を見出し、有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することでカラーフィルターにおける高輝度化を実現できることを見出して本発明を完成させた。
また、本発明では、上記の事情に照らし、有機顔料組成物として有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜の製造方法、塗膜の輝度の評価方法、塗膜をカラーフィルター用の基板上に形成する工程を含むカラーフィルターの製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明では、上記の事情に照らし、カラーフィルター用の有機顔料微粒子及びカラーフィルター用の有機顔料微粒子を備えたカラーフィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、少なくとも有機顔料微粒子を含む有機顔料組成物の製造方法であり、カラーフィルターにおける輝度を向上する目的で上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することを特徴とする有機顔料組成物の製造方法を提供する。
【0010】
また本発明は、上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率を高く制御することで、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することが好ましい。また本発明は、上記有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を酸化物で覆うことにより、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することが好ましく、上記酸化物が非晶質を含む酸化物であることが好ましい。また本発明は、上記酸化物がケイ素酸化物であることが好ましい。また本発明は、上記拡散反射スペクトルを、上記有機顔料微粒子の粉末を用いて測定することが好ましい。
【0011】
また本発明は、上記有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子である場合には、上記目的とする波長の範囲が620~750nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が71%以上であることが好ましく、上記有機顔料微粒子が青色顔料微粒子である場合には、上記目的とする波長の範囲が450~495nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が30%以上であることが好ましく、上記有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子である場合には、上記目的とする波長の範囲が495~570nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が51%以上であることが好ましい。
【0012】
また本発明は、上記有機顔料組成物が有機顔料微粒子分散体であり、下記工程(I)~(III)を有する、有機顔料組成物の製造方法として実施することができる。
工程(I)少なくとも1種類の有機顔料微粒子を得る工程
工程(II)上記有機顔料微粒子の拡散反射率を測定する工程
工程(III)上記有機顔料微粒子を溶媒に分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得る工程。
また本発明は、上記工程(I)~(III)を有する有機顔料組成物の製造方法により得られた有機顔料微粒子分散体を用いて塗膜を作製し、上記塗膜の輝度を制御する、塗膜の製造方法として実施することができ、上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することによって、上記塗膜の輝度を制御することが好ましい。
【0013】
また本発明は、有機顔料微粒子の粉末の拡散反射率を測定し、工程(I)~(IV)により求めた関係を用いて塗膜の輝度を評価する、有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜の輝度の評価方法を提供する。
工程(I)少なくとも1種類の有機顔料微粒子を得る工程
工程(II)上記有機顔料微粒子の粉末の、波長380~780nmの範囲における拡散反射率を測定する工程
工程(III)上記有機顔料微粒子を溶媒に分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得る工程
工程(IV)上記有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜の輝度を測定し、塗膜の輝度と、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率との関係を求める工程
【0014】
また本発明は少なくとも有機顔料微粒子を含む有機顔料組成物であり、上記有機顔料微粒子が、カラーフィルターにおける輝度を制御する目的で拡散反射率が制御されたことを特徴とする有機顔料組成物を提供する。
【0015】
また本発明は、上記の塗膜の製造方法において、上記塗膜をカラーフィルター用の基板上に形成する工程を含み、上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することによって輝度が制御されたカラーフィルターを得ることをカラーフィルターの製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、上記有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が620~750nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が71%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子を提供する。
また、本発明は、カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、上記有機顔料微粒子が青色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が450~495nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が30%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子を提供する。
また、本発明は、カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、上記有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が495~570nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が51%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子を提供する。
また、本発明は、上記有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されていることが好ましく、上記ケイ素酸化物が非晶質を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明は、上記のカラーフィルター用の有機顔料微粒子を備えたカラーフィルターを提供する。
また、本発明は、上記のカラーフィルター用の有機顔料微粒子と当該有機顔料微粒子の色とは異なる色の有機顔料微粒子とを備えたカラーフィルターを提供する。本発明において、当該有機顔料微粒子の色とは異なる有機顔料微粒子とは、上記カラーフィルター用の有機顔料微粒子の色とは異なる色の有機顔料微粒子であればよく、例えば、補色となる色の有機顔料微粒子を言う。
上記カラーフィルターは、ビーズミル品有機顔料微粒子によるカラーフィルターに比して、拡散反射率と輝度との双方が高いものとすることができる。ここで、ビーズミル品有機顔料微粒子とは、カラーフィルター用の有機顔料微粒子作製にあたり原料として用いた有機顔料を、ビーズミルにより粉砕し微粒子化した有機顔料微粒子を言う。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、カラーフィルターにおける輝度を制御された有機顔料組成物を得ることが可能であり、当該有機顔料組成物を用いて高輝度化されたカラーフィルターを製造することが可能である。従来のように有機顔料微粒子のカラーフィルターとしての輝度を評価するために、対象となる全ての顔料微粒子について実際の塗膜化と評価を行う必要がなく、カラーフィルターの開発を簡略化することが可能となっただけでなく、評価のための塗膜化を行わないことによる時間やコストの削減が可能となった。
また本発明は、有機顔料組成物を用いて作製された塗膜の新たな製造方法、及び、塗膜の輝度の有効な評価方法を提供することができたものである。
また本発明は、有機顔料微粒子の拡散反射率とカラーフィルターにおける輝度との関係に関する新たな知見を活用したカラーフィルターの製造方法を提供することができたものである。
さらにまた、本発明は、上記の知見を活用したカラーフィルター用の有機顔料微粒子及びカラーフィルター用の有機顔料微粒子を備えたカラーフィルターを提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1、2、3並びに実施例7で得られたPR254微粒子粉末の拡散反射スペクトル測定結果である。
図2】本発明の実施例1~10、実施例F-1、実施例F-2で得られたPR254微粒子粉末又はケイ素酸化物被覆PR254微粒子粉末の対象波長領域における拡散反射率の面積比率(DiR)[%]に対するカラーフィルター特性評価における輝度のグラフである。
図3】本発明の実施例11、実施例14で得られた銅フタロシアニン微粒子粉末又はケイ素酸化物被覆銅フタロシアニン微粒子粉末の拡散反射スペクトル測定結果である。
図4】本発明の実施例11~15で得られた銅フタロシアニン微粒子粉末又はケイ素酸化物被覆銅フタロシアニン微粒子粉末の対象波長領域における拡散反射率の面積比率(DiR)[%]に対するカラーフィルター特性評価における輝度のグラフである。
図5】本発明の実施例17、実施例20で得られたPG58微粒子粉末又はケイ素酸化物被覆PG58微粒子粉末の拡散反射スペクトル測定結果である。
図6】本発明の実施例16~20で得られたPG58微粒子粉末又はケイ素酸化物被覆PG58微粒子粉末の対象波長領域における拡散反射率の面積比率(DiR)[%]に対するカラーフィルター特性評価における輝度のグラフである。
図7】本発明の実施例10で得られたケイ素酸化物被覆PR254微粒子のIR測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態の一例を取り上げて説明する。なお、本発明の態様は以下に記載の実施形態にのみ限定するものではない。
【0021】
(微粒子)
本発明において、微粒子とは、一次粒子径が500nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは30nm以下の微小な粒子を言う。上記粒子あるいは微粒子の形状は特に限定されないが、例えば、略円柱状、略球状、略円盤状、略三角柱状、略四角柱状、略多面体状、楕円球状などの形態の粒体またはその集合体などであってもよい。
【0022】
(有機顔料)
本発明における有機顔料としては、特に限定されない。一例を挙げると、The Society of Dyers and Coloristsに登録されている全ての有機顔料等が挙げられる。その中でも例えば、緑色を構成する有機顔料にあってはC.I.Pigment Greenに分類される有機顔料、青色を構成する有機顔料にあってはC.I.Pigment Blueに分類される有機顔料、白色を構成する有機顔料にあってはC.I.Pigment Whiteに分類される有機顔料、黄色を構成する有機顔料にあってはC.I.Pigment Yellowに分類される有機顔料、赤色を構成する有機顔料にあっては、カラーインデックスにおいてC.I.Pigment Redに分類される有機顔料、C.I.Pigment VioletやC.I.Pigment Orangeに分類される有機顔料等が挙げられる。より具体的には、C.I.Pgment Red 122やC.I.Pgment Violet 19のようなキナリドン系有機顔料、C.I.Pgment Red 254やC.I.Pigment Orange73のようなジケトピロロピロール系有機顔料、C.I.Pigment Red 150やC.I.Pigment Red 170のようなナフトール系有機顔料、C.I.Pigment Red 123やC.I.Pigment Red179のようなペリレン系有機顔料、C.I.Pigment Red 144のようなアゾ系有機顔料や、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Green 58のようなフタロシアニン系有機顔料等が挙げられる。また新規に合成した有機顔料を用いて本発明の製造方法を実施することも出来る。上記の有機顔料は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
本発明においては、貧溶媒法やアシッドペースト法、アルカリペースト法などの反応を用い、目的とする有機顔料微粒子の原料である、有機顔料を良溶媒に溶解させた有機顔料溶液と、有機顔料溶液から有機顔料微粒子を析出させるための貧溶媒などの析出溶媒とを混合して、有機顔料微粒子を析出させて有機物微粒子を得ることが望ましい。ビーズミルなどの粉砕法により有機顔料を粉砕して有機顔料微粒子を作製してもよい。
なお、上記有機顔料微粒子は、有機顔料微粒子の原料として用いられる上記の有機顔料と顔料種が同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、有機顔料微粒子の原料がC.I.Pgment Red 254(以下、PR254ともいう。)であって、PR254を良溶媒に溶解したPR254溶液と析出溶媒との混合によって析出される有機顔料微粒子がPR254の微粒子であってもよく、有機顔料微粒子の原料が異なる2種以上の有機顔料であって、それらを良溶媒に溶解した有機顔料溶液と析出溶媒との混合によって析出される有機顔料微粒子が上記異なる2種以上の有機顔料の固溶体の微粒子であってもよい。
【0024】
(有機顔料溶液または析出溶媒)
上記有機顔料を溶解するための良溶媒または有機顔料溶液と混合して上記有機顔料溶液から有機顔料微粒子を析出させるための貧溶媒などの析出溶媒としては、上記有機顔料を溶解または分子分散可能な溶媒、または有機顔料溶液と混合して上記有機顔料溶液から有機顔料微粒子を析出させることが可能な溶媒であれば特に限定されない。例えば水や有機溶媒、またはそれらの複数からなる混合溶媒が挙げられる。上記水としては、水道水やイオン交換水、純水や超純水、RO水などが挙げられ、有機溶媒としては、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物などが挙げられる。上記の溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、または複数以上を混合して使用しても良い。ここで、良溶媒とは、有機顔料に対して良溶媒となりうる溶媒をいい、貧溶媒とは、良溶媒と比べて有機顔料に対する溶解度が低い、有機顔料に対して貧溶媒となりうる溶媒をいう。
【0025】
また、上記有機顔料溶液または析出溶媒に、塩基性物質または酸性物質を混合または溶解しても実施できる。塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドやベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウム水酸化物、さらにトリエチルアミンや2-ジエチルアミノエタノール、ジエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの有機酸が挙げられる。これらの塩基性物質または酸性物質は、上記の通り各種溶媒と混合しても実施できるし、それぞれ単独でも使用できる。
【0026】
本発明の有機顔料組成物の製造方法は、有機顔料微粒子の拡散反射率を制御し、当該有機顔料微粒子を少なくとも含む有機顔料組成物を用いて得られるカラーフィルターの特性の一つである輝度を制御する。
【0027】
本発明における有機顔料組成物は、有機顔料微粒子の粉末、並びに液状の分散媒である溶媒に有機顔料微粒子を分散させた分散体や、ガラスや樹脂等の固体に有機顔料微粒子を分散させた分散体など少なくとも有機顔料微粒子を含む。本発明における、カラーフィルター用の有機顔料微粒子においては、一次粒子径が200nm以下の有機顔料微粒子であることが好ましく、一次粒子径が100nm以下の有機顔料微粒子であることがより好ましい。
【0028】
有機顔料組成物が液状の分散媒である溶媒に有機顔料微粒子を分散させた有機顔料微粒子分散体である場合は、分散媒として液状の分散媒を用いる。液状の分散媒としては、有機溶媒であることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール系溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒等を挙げることができる。有機顔料微粒子の分散性の観点から、エステル系溶媒が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
有機顔料組成物が有機顔料微粒子分散体である場合、有機顔料組成物中の有機顔料微粒子の含有量は、カラーフィルター用の分散液とするための観点から、1.0~30.0wt%が好ましく、5.0~20.0wt%がより好ましい。
有機顔料組成物中の液状の分散媒の含有量は、カラーフィルター用の分散液とするための観点から、70.0~99.0wt%が好ましく、80.0~95.0wt%がより好ましい。
【0030】
本発明においては、有機顔料組成物が有機顔料微粒子分散体である場合、有機顔料微粒子を液状の分散媒に投入し、分散処理することによって有機顔料微粒子分散体を得ることができる。分散処理の方法や用いる分散機は、特に限定されないが、本発明における各種溶液、溶媒の調製に用いた装置と同様の装置を用いて分散処理をすることができる。
【0031】
また、必要に応じて、有機顔料組成物に分散剤を添加してもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、樹脂型分散剤、界面活性剤型分散剤等が挙げられる。これらの中でも、カラーフィルター特性を評価するための有機顔料組成物を調製するために、顔料分散効果や顔料再凝集抑制効果などを十分に発揮させるという観点から、樹脂型分散剤が好ましい。樹脂型分散剤としては特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、不飽和ポリアミド、燐酸エステル、ポリカルボン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、ポリカルボン酸エステル、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、変性ポリアクリレート等の油性樹脂型分散剤、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム等の水溶性高分子化合物;スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-メタクリル酸樹脂、スチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-マレイン酸エステル樹脂、メタクリル酸-メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸-アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン-マレイン酸樹脂、ビニル-エステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のエチレン性二重結合含有樹脂;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のアミン系樹脂;等の水性樹脂型分散剤等が挙げられる。
【0032】
樹脂型分散剤は種々のものが市販されており、市販品の具体例としては、例えば、「ソルスパース」3000、9000、13240、17000、20000、24000、26000、28000、32000、32500、41000(いずれも商品名、日本ルーブリゾール製)、「Disperbyk-」108、110、112、140、142、145、161、162、163、164、166、167、182、2000、2001、2050、2070、2150、「BYK LPN-」6919、21116(いずれも商品名、ビックケミー・ジャパン製)、「EFKA-」4401、4403、4406、4010、4015、4046、4047、4050、4055、4060、4080、5064、5207、5244(いずれも商品名、EFKA Additive社製)、「アジスパー」PB821(F)、PB822、PB880(いずれも商品名、味の素ファインテクノ製)、ヒノアクトT-8000(商品名、川研ファインケミカル製)、ディスパロンPW-36、「ディスバロンDA-」325、375、7301(いずれも商品名、楠本化成製)等が挙げられる。樹脂型分散剤の中でも、重量平均分子量1000~30000程度のものが好ましい。
【0033】
界面活性剤型分散剤としては特に限定されないが、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル等のアニオン活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン活性剤等が挙げられる。界面活性剤型分散剤も種々のものが市販されており、その具体例としては、例えば、「デモール」N、RN、MS、SN-B、「エマルゲン」120、430、「アセタミン」24、86、コータミン24P(いずれも商品名、花王製)、「プライサーフ」AL、A208F(いずれも商品名、第一工業製薬製)、「アーカード」C-50、T-28、T-50(いずれも商品名、ライオン製)等が挙げられる。
顔料分散剤は、1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、有機顔料組成物中の有機顔料微粒子に対する分散剤の含有量は、カラーフィルター特性の観点から、有機顔料微粒子100重量部に対し、1~25重量部が好ましく、3~20重量部がより好ましい。
【0034】
図1に本発明の実施例1、2、3並びに実施例7として、各実施例の条件で作製した赤色系のジケトピロロピロール系顔料である、C.I.Pigmet Red254の微粒子の粉末を用いて測定した波長380nm~780nmの拡散反射スペクトルを示す。
【0035】
本発明においては、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長領域における拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])を制御することで、当該有機顔料微粒子を用いて作製するカラーフィルターにおける輝度を制御することができる。より詳しくは、本発明においては、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長領域における拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])が高いほど、当該有機顔料微粒子を用いて作製されるカラーフィルターにおける輝度が高くなるよう制御するものである。ここで、拡散反射率の面積とは、波長380nm~780nmの拡散反射率を測定し、測定波長全域又は目的とする波長領域における拡散反射率の積分値を言う。
【0036】
例えば、PR254をカラーフィルターに用いる赤色顔料として想定した場合には、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、赤色カラーフィルターにおいて重要となる波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率を制御することによって、当該有機顔料微粒子を用いて作製するカラーフィルターにおける輝度を制御することが可能となる。
【0037】
図1に示した各実施例で得られたPR254微粒子の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、波長620~780nmにおける拡散反射率の面積は、実施例1が75.94%、実施例2が75.27%、実施例3が74.94%であり、実施例7が70.01%であり、実施例7の輝度を基準の100とした場合に、実施例1の輝度が128.00、実施例2の輝度が127.80、実施例3の輝度が127.33であった。即ち測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、赤色カラーフィルターにおいて重要となる波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率が高くなるように制御する程に、カラーフィルターにおける輝度を高く制御出来ることを示すものである。また、後述する他の実施例も含め、各実施例における条件で作製したPR254微粒子の波長380nm~780nmの拡散反射スペクトルの測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])に対する輝度のグラフを図2に示した。図2からわかるように、測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、赤色カラーフィルターにおいて重要となる波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率が高くなるように制御する程に、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することが出来る。
【0038】
このように、カラーフィルターに用いる顔料が赤色顔料である場合には、目的とする波長領域が波長620~750nmであり、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、赤色カラーフィルターにおいて重要となる波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率を制御することによって、当該有機顔料微粒子を用いて作製するカラーフィルターにおける輝度を制御することが可能となる。同様に、カラーフィルターに用いる顔料が青色顔料である場合には、目的とする波長領域が波長450~495nmであり、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、青色カラーフィルターにおいて重要となる波長450~495nmにおける拡散反射率の面積の比率を制御することによって、当該有機顔料微粒子を用いて作製するカラーフィルターにおける輝度を制御することが可能となり、カラーフィルターに用いる顔料が緑色顔料である場合には、目的とする波長領域が波長495~570nmであり、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、緑色カラーフィルターにおいて重要となる波長495~570nmにおける拡散反射率の面積の比率を制御することによって、当該有機顔料微粒子を用いて作製するカラーフィルターにおける輝度を制御することが可能となる。
【0039】
また、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長領域における拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])は、有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子である場合には、67%以上であることが好ましく、71%以上であることがより好ましく、76%以上であることがさらに好ましい。有機顔料微粒子が青色顔料微粒子である場合には、26%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、32%以上であることがさらに好ましい。有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子である場合には、46%以上であることが好ましく、51%以上であることがより好ましく、52%以上であることがさらに好ましい。
各色の有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長領域における拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])が、赤色にあっては71%、青色にあっては30%、緑色にあっては51%をそれぞれ下回ると、次に述べる理由により、カラーフィルターにおける輝度が低下するおそれがあるため、高輝度のカラーフィルターを求める場合には、それぞれ上記の数値以上の値であることが好ましい。
なお、今日知られているカラーフィルターに関する技術では、赤色、青色及び緑色の各色のカラーフィルターにあっても、目的とする各色のカラーフィルターの主たる色を有する有機顔料微粒子のみならず、それとは異なる色(例えば補色)の有機顔料微粒子が併用される場合がある。この技術は本発明にあっても適用することができ、主たる色の有機顔料微粒子に加えて異なる色の有機顔料微粒子を用いて、カラーフィルターを製造することもできる。なお、異なる色の有機顔料微粒子の量は一般に主たる色の有機顔料微粒子の量よりも少ないものとすることが適当である。
【0040】
本発明における拡散反射率とは、特定の波長の入射光に対して散乱光として拡散反射した光の割合であり、反射した光のうち、鏡面反射した成分を除いた光である。そのため拡散反射率は、視覚や検出器が実際に検出する色に影響を及ぼすパラメータであると考えることが出来る。カラーフィルターにおいては、有機顔料組成物の塗膜を、目的とする波長の光が透過することで発色を示すため、従来は有機顔料組成物としての塗膜または分散液の透過スペクトルについて論じられることが多かった。しかしながら、透過スペクトルの測定によって得られた透過率は、特定波長の入射光量が塗膜をどれだけ透過するかを示すのみであったため、カラーフィルターの特性評価の指標としては不十分であった。有機顔料微粒子の拡散反射率と当該有機顔料微粒子の分散体を用いて作製された塗膜のカラーフィルターにおける輝度とが関連性を有していることについては、詳細は定かでは無いが、例えば液晶表示装置に用いるカラーフィルターにおいては、バックライトがカラーフィルターを通過する際に、塗膜に含まれる有機顔料組成物によって、特定の色のみを透過させることに加えて、特定の色における顔料そのものによる拡散反射は、カラーフィルターとしての明るさを示す指標である輝度を制御する要因であると本願発明者は考えている。しかしながら、目的とする波長の光以外、即ち目的とする色以外についての拡散反射を示す場合には、カラーフィルターにおいて他の色が混ざり込んで知覚される問題となるため好ましくない。例えば、赤色を目的とする場合、目的とする波長620~750nm以外の光について拡散反射を示す場合には、赤色以外の光についても発色を知覚することとなるため、色味の変化等が原因となり、結果として輝度を低下させることになる。本発明においては、拡散反射率において、有機顔料微粒子粉体の測定波長全域において、目標とする色の波長領域が占める割合を制御すること、すなわち有機顔料微粒子粉体の測定波長全域(波長380nm~780nm)における拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長領域における拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])を制御することで、輝度を制御出来たものと考えている。
拡散反射率の測定方法は、有機顔料微粒子について拡散反射スペクトルを測定できる方法であれば、特に限定されない。測定装置として一例を挙げると、紫外可視近赤外分光光度計V-750、V-770、V-7080、V-7090(以上、日本分光製)、UV-3600、Solid-Spec3700(以上、島津製作所製)などが挙げられる。また本発明においては、有機顔料組成物に含まれる分散剤や分散媒などの影響を排除する目的や、最も簡単な方法のため、有機顔料微粒子の粉末の拡散反射スペクトルを測定する方法が好ましい。有機顔料微粒子の拡散反射率と、当該有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜のカラーフィルターにおける輝度との関連性を見出し、有機顔料の拡散反射率を制御することでカラーフィルターにおける高輝度化を実現できることを見出して本発明を完成させた。
【0041】
本発明における上記有機顔料の微粒子は、その表面の少なくとも一部を酸化物で被覆しても良い。例えば、ケイ素酸化物などの酸化物で有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を被覆することによって、本発明における拡散反射率並びにカラーフィルターにおける輝度を向上出来る利点がある。ケイ素酸化物などの酸化物で有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する場合、拡散反射率並びにカラーフィルター特性における輝度の観点から、ケイ素酸化物などの酸化物は非晶質を含むことが好ましい。有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を結晶性の酸化物で被覆した場合、屈折率への影響等より、目的とする波長以外の光線の反射率が高くなる可能性があるためである。しかし、本発明における有機顔料微粒子の拡散反射率の制御方法は特に限定されない。有機顔料溶液を含む流体と析出溶媒を含む流体とを混合して有機顔料微粒子を析出させる際のpH調整、上記有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物などの酸化物や、高分子、樹脂などで被覆する方法などによる有機顔料微粒子の表面処理による拡散反射率の制御、または有機顔料微粒子の結晶型や結晶化度、粒子径や粒度分布などの変更による拡散反射率の制御によって、上記有機顔料微粒子の目的とする色特性における拡散反射率を制御することができる。
有機顔料微粒子を析出させる際のpH調整は、本発明における各種溶液、溶媒の少なくとも1つにpH調整剤を含むことによって調整してもよいし、有機顔料溶液を含む流体と析出溶媒を含む流体とを混合する際の流量を変化させることによって調整してもよい。有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物などの酸化物で覆う場合、有機顔料溶液を含む流体と析出溶媒を含む流体とを混合する際の流量や、両者の混合流体と後述する酸化物の原料から酸化物を生成させる処理物質を含む流体とを混合する際の流量を変化させることによって調整してもよい。pH調整剤は、上述の塩基性物質又は酸性物質を用いることができ、酸性物質又は塩基性物質の塩を用いてもよい。
特に、ケイ素酸化物で被覆した有機顔料微粒子を析出させる場合にあっては、析出時の混合後の流体のpHを5.0~12、好ましくは6.5~10、更に好ましくは6.5~8の範囲とすることが、拡散反射率を上げる観点から有利である。pHが5.0未満であると、ケイ素酸化物の析出が困難となるため、ケイ素酸化物による有機顔料微粒子への被覆が不十分となるおそれがある。またpHが12を超えると、析出したケイ素酸化物が再溶解する可能性が生じるため、有機顔料微粒子への被覆が不十分となるおそれがある。
【0042】
有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を被覆するケイ素酸化物などの酸化物としては、ケイ素酸化物のほか、アルミナ(Al)等のアルミニウム酸化物、ジルコニア(ZrO)等のジルコニウム酸化物、オルガノポリシロキサンなどの有機の酸化物が挙げられる。有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する高分子や樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウムや、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサタンガム、カラーギナン、プルラン、並びにゼラチンなどの水性高分子化合物が挙げられる。
【0043】
有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する酸化物が無機酸化物である場合、有機顔料微粒子の表面と酸化物との間にカップリング剤を介在させてもよい。両者の親和性を向上させる上で、両者の間にカップリング剤を介在させることが好ましい。酸化物としてケイ素酸化物を用いる場合には、カップリング剤にシランカップリング剤を用いる。シランカップリング剤としては、分子中に2個以上の異なった反応基を持つものであれば特に限定されないが、一例を挙げると、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン等が挙げられる。酸化物としてアルミニウム酸化物を用いる場合には、カップリング剤としてアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムアセチルアセトナート等を用いることができ、酸化物としてジルコニウム酸化物を用いる場合には、カップリング剤としてジルコニウムアセチルアセトナート、ステアリン酸ジルコニウム等を用いることができる。カップリング剤と有機顔料微粒子との結合は親油基の親和性に由来するものだけでなく、有機顔料微粒子とカップリング剤とが反応することによって直接結合を形成しても良い。カップリング剤と酸化物とは、ゾル-ゲル法の脱水縮重合により結合するものである。
【0044】
液相法において有機顔料微粒子の表面の一部を酸化物で覆う場合、上述の有機顔料溶液、析出溶媒、有機顔料溶液とも析出溶媒とも異なるその他の流体のうちの少なくとも何れかに、酸化物の原料や酸化物の原料から酸化物を生成させる処理物質、カップリング剤などを含むことができる。酸化物の原料としては、酸化物がケイ素酸化物である場合には、酸化物の原料としては、ケイ素の酸化物や水酸化物、塩化物や塩などの無機化合物並びにそれらの水和物など、またはケイ素のアルコキシドやアセチルアセトナート化合物などの有機化合物並びにそれらの水和物などが挙げられる。特に限定されないが、一例を挙げると、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリフルオロプロピル-トリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、およびTEOSのオリゴマ縮合物、例えば、エチルシリケート40、テトライソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラブトキシシラン、および同様の物質が挙げられる。さらにその他のシロキサン化合物、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,9-ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ジエトキシジクロロシラン、トリエトキシクロロシラン等を用いても構わない。酸化物がアルミナである場合には、その原料物質として、アルミニウムの酸化物や水酸化物、塩化物や塩などの無機化合物並びにそれらの水和物など、またはアルミニウムのアルコキシドやアセチルアセトナート化合物などの有機化合物並びにそれらの水和物などが挙げられる。特に限定されないが、一例を挙げると、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシドなどのアルミニウム化合物を例示できる。また酸化物がジルコニアである場合には、その原料物質としては、ジルコニウムの酸化物や水酸化物、塩化物や塩などの無機化合物並びにそれらの水和物など、またはジルコニウムのアルコキシドやアセチルアセトナート化合物などの有機化合物並びにそれらの水和物などが挙げられる。特に限定されないが、一例を挙げると、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシドなどのジルコニウム化合物などが挙げられる。また、酸化物の原料から酸化物を生成させる処理物質としては、塩基性物質が好ましく、特に限定されないが、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの金属炭酸塩、さらにトリエチルアミンや2-ジエチルアミノエタノール、ジエチルアミンなどのアミン系化合物、アンモニアが挙げられる。テトラブチルアンモニウムヒドロキシドやベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。有機顔料溶液とも析出溶媒とも異なるその他の流体には、上述の水や有機溶媒、またはそれらの複数からなる混合溶媒を含んでいてもよい。
【0045】
なお、本出願人の先願であるPCT/JP2016/77378においても、表面の一部が酸化物で覆われた有機顔料微粒子に係る発明を提案しているが、本発明の実施に用いる有機顔料微粒子は、酸化物被膜の有無を問わないことは前述のとおりである。言い換えれば、同先願の発明に係る有機顔料微粒子のみを用いて本発明を実施することもできるし、あるいは他の有機顔料微粒子と併用して本発明を実施することもできるし、他の有機顔料微粒子のみを用いて本発明を実施することもできる。また、同先願の発明に係る有機顔料微粒子の酸化物被膜については結晶構造について特に限定されていないところ、本発明の実施に際しては、酸化物被膜についての結晶性は種々のものを用いて実施することができ、結晶性の高いものや、非晶質のものや、これらが混在しているものを用いて実施することもできる。本発明は、有機顔料微粒子の拡散反射率と、これにより得られるカラーフィルターの輝度との関係に関する新たな知見に基づき完成されたものであり、この関係に関する新たな知見は有機顔料微粒子の構造自体には関わり無く適用することができる。
【0046】
有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆するにあたり、被覆された有機顔料微粒子は、制御された拡散反射率を有するものであればよく、複数個の有機顔料微粒子が凝集していない、1個の有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆した有機顔料微粒子であることが好ましいが、複数個の有機顔料微粒子が凝集した凝集体の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆した有機顔料微粒子であっても構わない。
被覆後の有機顔料微粒子が1個の有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆した有機顔料微粒子である場合、有機顔料微粒子の一次粒子径に対する被覆後の有機顔料微粒子の一次粒子径が、100.5%以上190%以下であることが好ましい。有機顔料微粒子に対する酸化物の被覆が薄すぎると、被覆後の有機顔料微粒子が有する拡散反射率の制御に関する効果を発揮し得なくなる恐れがあることから、被覆後の有機顔料微粒子の一次粒子径が、被覆前の有機顔料微粒子の一次粒子径の100.5%以上であることが好ましく、被覆後の有機顔料微粒子が有する拡散反射率の制御に関する効果を発揮し得なくなる恐れがあることから、被覆後の有機顔料微粒子の一次粒子径が、被覆前の有機顔料微粒子の一次粒子径の190%以下であることが好ましい。
また、一定の大きさを超えた上記凝集体の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆した有機顔料微粒子は、1個の有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆した有機顔料微粒子に比べて拡散反射率の制御の効果が得にくいことから好ましくなく、上記凝集体の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆した、被覆後の有機顔料微粒子の粒子径が、上記凝集体の径の190%以下であることが好ましい。ここで、一定の大きさを超えた上記凝集体とは、例えば、その大きさが500nmを超えるものを言う。また、有機顔料微粒子に対するケイ素酸化物等の酸化物の被覆が薄すぎると、被覆後の有機顔料微粒子が有する拡散反射率の制御に関する効果を発揮し得なくなる恐れがあることから、被覆後の有機顔料微粒子の粒子径が、上記凝集体の径の100.5%以上であることが好ましい。なお、上記凝集体の径とは、複数個の有機顔料微粒子からなる凝集体の最大外周間の距離とする。
有機顔料微粒子の被覆に際し、有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する酸化物がケイ素酸化物である場合、ケイ素酸化物で被覆された有機顔料微粒子について、赤外吸収スペクトル(FT-IR)測定とX線回折(XRD)測定を行い、FT-IR測定においてケイ素酸化物に由来するピークを確認するとともに、XRD測定においてはケイ素酸化物に由来するピークを確認しないことをもって、酸化物が非晶質であることを確認した。併せて、被覆された有機顔料微粒子について、走査透過型電子顕微鏡(以下、STEMという)観察を行い、ケイ素酸化物由来の結晶格子を確認しないことをもって、酸化物が非晶質であることを確認した。
また、有機顔料微粒子の被覆の状態は、透過型電子顕微鏡(以下、TEMともいう)やSTEMなどの電子顕微鏡で確認することができる。
【0047】
本発明においては、拡散反射率が制御された有機顔料微粒子については、特許文献1に流体処理装置として開示されている、強制薄膜型のマイクロリアクターを用いて製造することができるが、それに限定されるものではない。例えば、他のタイプのマイクロリアクターを用いて有機顔料微粒子を作製する方法や、希薄系での反応をバッチ容器内で行うなどの方法で有機顔料微粒子を作製するなどの方法、またビーズミルなどの粉砕法で有機顔料を粉砕して有機顔料微粒子を作製する方法などが挙げられる。有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆する場合には、例えば、第1のマイクロリアクターを用いて有機顔料微粒子を作製し、これに続く第2のマイクロリアクターによって有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆する方法や、希薄系での反応をバッチ容器内で行うなどの方法で有機顔料微粒子を作製し、引き続き希薄系での反応によって先述した有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で被覆するなどの方法、ビーズミルなどの粉砕法で有機顔料微粒子を作製し、その後に反応容器内で有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物等の酸化物で覆う方法などが挙げられる。また本願出願人よって提案された特開2009-112892号公報にて記載されたような装置並びに方法を用いても良い。もちろん、上述の強制薄膜型のマイクロリアクターを用いた有機顔料微粒子の製造方法を用いてもよい。なお、本発明においては、ビーズミル等を用いて粉砕して作製した有機顔料微粒子よりも、上述の貧溶媒法等の反応を用いて作製した有機顔料微粒子、並びに表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆された有機顔料微粒子の方が、微粒子の結晶性に歪等が発生しにくいため、拡散反射率並びにカラーフィルターにおける輝度を向上する上で好適である。
【0048】
本発明に係る有機顔料組成物を配合し得る着色組成物は、カラーフィルターに用いられるものであり、少なくとも有機顔料組成物と感光性モノマーと光重合開始剤とを含むものである。また、着色組成物には、バインダー樹脂やアルカリ可溶性樹脂を含むことができる。
感光性モノマーとしては、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールなどの単官能モノマーやエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、多価アルコールの水酸基の複数をアクリル酸でエステル化して得られる化合物等)、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステルなどの多官能モノマーを例示することができ、光重合剤としては芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類等が挙げられる。光重合開始剤としては、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン]、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノンなどを例示することができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂などを例示することができ、アルカリ可溶性樹脂としては、顔料の硬化膜中での分散を維持し、コントラスト比を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体が好ましく挙げられ、(メタ)アクリル酸ベンジルと(メタ)アクリル酸との共重合体を例示することができる。
着色組成物には、更に、増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、分散剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0049】
有機顔料組成物を用いて作製される塗膜には、着色組成物を用いて作製された塗膜も含む。当該塗膜は、公知の方法により着色組成物をカラーフィルター用の基板上に塗布、光硬化、現像を行うことによって得ることができるが、有機顔料組成物を公知の方法により基板上に塗布することによっても得ることができる。当該塗膜はプレベーク並びにポスベークなどのベークされたものであってもよい。カラーフィルターは、着色組成物を基板上に塗布、光硬化、現像を行い、塗膜を得ることによって作製することができる。
【0050】
得られた塗膜の輝度の測定方法は、特に限定されない。分光光度計や分光測色計などの測定装置を用いることができる。測定装置として一例を挙げると、分光測色計(商品名:CM-3700d、コニカミノルタ製)などが挙げられる。
【0051】
このように、拡散反射率を制御された有機顔料微粒子を含む有機顔料組成物を用いて塗膜を作製することによって、塗膜の輝度を制御することができるとともに、カラーフィルターの輝度を制御することができる。特に本発明に係る有機顔料微粒子を用いて作製されたカラーフィルターは、ビーズミル品有機顔料微粒子によるカラーフィルターに比して、拡散反射率と輝度との双方が高いものを得ることができる。ここで、ビーズミル品有機顔料微粒子とは、カラーフィルター用の有機顔料微粒子作製にあたり原料として用いた有機顔料を、ビーズミルにより粉砕し微粒子化した有機顔料微粒子を言う。
【0052】
本発明の有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜の輝度の評価方法は、有機顔料微粒子の粉末の拡散反射率を測定し、工程(I)~(IV)により求めた関係を用いて塗膜の輝度を評価するものであり、工程(I)~(IV)は下記に示すものである。
工程(I)少なくとも1種類の有機顔料微粒子を得る工程
工程(II)上記有機顔料微粒子の粉末の、波長380~780nmの範囲における拡散反射率を測定する工程
工程(III)上記有機顔料微粒子を溶媒に分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得る工程
工程(IV)上記有機顔料微粒子分散体を用いて作製された塗膜の輝度を測定し、塗膜の輝度と、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率との関係を求める工程
工程(I)~(III)の詳細は既に上述したものであり、工程(IV)については、測定された塗膜の輝度を、工程(II)において測定された有機顔料微粒子粉末の拡散反射率から算出された、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])に対してプロットし近似することによって、塗膜の輝度と対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%]との関係を求めるものである。本発明によれば、有機顔料微粒子粉体の拡散反射率を測定することにより、有機顔料組成物を用いて作製した塗膜の輝度を評価することができる。ここで、目的とする波長の範囲とは、有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子である場合には620~750nmであり、有機顔料微粒子が青色顔料微粒子である場合には450~495nmであり、有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子である場合には495~570nmである。
また、評価する塗膜の輝度とは、基準となる塗膜の輝度を100とした場合の相対値であってもよい。
【実施例0053】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1~6)
高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM-2.2S、エム・テクニック製)を用いて、有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液を調製した。具体的には、表1に示す有機顔料溶液の処方に基づいて、有機顔料溶液の各成分を秤量し、クレアミックスを用いて調製温度45℃、ローター回転数20000rpmにて30分間撹拌する事により均質に混合し、有機顔料溶液を調製した。また、表1に示す貧溶媒の処方に基づいて、有機顔料溶液から有機顔料微粒子を析出させるための貧溶媒の各成分を秤量し、クレアミックスを用いて、調製温度35℃、ローター回転数15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、貧溶媒を調製した。なお、表1に記載の化学物質(化学式や略記号で示された物質を含む)については、PR254はイルガジンレッド L3670HD(BASF製)、MeOHはメタノール(ゴードー製)、DMSOはジメチルスルホキシド(関東化学製、純度99.5%)、NaOMeはナトリウムメトシキド(関東化学製)、酢酸は酢酸(純度>99.7%、関東化学製)を使用した。また、純水はpH5.89(29.3℃)、導電率が0.79μS/cmのものを使用した。
【0054】
次に、調製した有機顔料溶液と貧溶媒とを本願出願人による特許文献1に記載の流体処理装置を用いて混合した。ここで、特許文献1に記載の流体処理装置とは、同公報の図1に示す流体処理装置であって、第2導入部の開口部d20がリング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であるものである。具体的にはA液として貧溶媒を第1導入部d1から処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転させて運転しながら、B液として有機顔料溶液を第2導入部d2から処理用面1,2間に導入し、薄膜流体中において有機顔料溶液と貧溶媒とを混合し、処理用面間1、2間においてPR254微粒子を析出させた。処理用面間1、2間において析出させたPR254微粒子を含む流体(以下、PR254微粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させ、吐出させたPR254微粒子分散液を容器に回収した。表2に流体処理装置の運転条件を示す。表2に示した回転数は、処理用部10の回転数であり、A液、B液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1と第2導入d2)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度である。また吐出液のpHをpHの測定温度(温度[℃])と共に表2に示す。吐出液のpH測定には、HORIBA製の型番D-51のpHメーターを用いた。有機顔料溶液と貧溶媒との混合直後の混合流体のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、容器に回収したPR254微粒子分散液のpHを室温にて測定した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
流体処理装置から吐出させ、容器に回収したPR254微粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。作製方法は、この種の処理の常法に従い行ったもので、PR254微粒子分散液中のPR254微粒子を沈降させて上澄み液を除去し、その後、純水100重量部での洗浄と有機顔料微粒子の沈降とを繰り返し5回行うことでPR254微粒子を洗浄し、最終的に得られたPR254微粒子のウェットケーキの一部を25℃、19時間乾燥させて乾燥粉体とし、残りをウェットケーキサンプルとした。
【0058】
(実施例7)
実施例7として、上記実施例1~6において、PR254微粒子を作製する際のPR254原料(イルガジンレッド L3670HD(BASF製))を、ビーズミルを用いて実施例1~6と同様の粒子径となるまで粉砕処理してPR254微粒子を作製した。
【0059】
実施例1~6で得られた洗浄処理後のPR254微粒子のウェットケーキサンプルの一部を界面活性剤であるネオゲンRK(第一工業製薬製)を0.05wt%溶解した水溶液に分散させ、コロジオン膜に滴下して乾燥させたものをTEM(透過型電子顕微鏡)観察用試料とし、透過型電子顕微鏡、JEM-2100(JEOL製)を用いたTEM観察によりPR254微粒子の一次粒子径を測定した。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を1万倍以上とした。なお、表2に記載した粒子径(D)は一次粒子径であり、粒子の最大外周間の距離(後述する、酸化物で有機顔料微粒子の表面の少なくとも一部を被覆した実施例にあっては、被覆層を含めた粒子の最大外周間の距離)より求め、100個の粒子について測定した結果の平均値を示した。また、実施例7で得られたPR254微粒子を界面活性剤であるネオゲンRK(第一工業製薬製)を0.05wt%溶解した水溶液に分散させ、コロジオン膜に滴下して乾燥させたものをTEM(透過型電子顕微鏡)観察用試料とし、実施例1~6と同様、TEM観察によりPR254微粒子の一次粒子径を測定し、粒子径(D)を算出した。
【0060】
(拡散反射スペクトル)
拡散反射スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(製品名:SolidSpec-3700、島津製作所製)を使用した。測定範囲は380~780nmとし、サンプリングレートを2.0nm、測定速度を中速、測定方式はダブルビーム測光方式として測定し、鏡面反射を除く拡散反射測定を行った。また粉末を測定する際のバックグラウンド測定(ベースライン設定)には、標準白板(製品名:Spectralon(商標)、Labsphere製)を使用した。各実施例で得られた有機顔料微粒子の乾燥粉体を用いて拡散反射スペクトルを測定した。
【0061】
(輝度測定のための試料作製)
カラーフィルターとしての輝度を測定するために、実施例1~7で得られたPR254微粒子を用いて有機顔料微粒子分散体並びに硬化膜を作製した。具体的には、実施例1~7で得られたPR254微粒子の乾燥粉体20重量部、樹脂型分散剤として「BYK-LNP-6919」(固形分濃度60.9重量%、ビックケミー社製)を25.92重量部、樹脂型分散剤としてビニルエステル樹脂「リポキシSPC-2000」(固形分濃度35重量%、昭和電工製)を33.75重量部、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)110.53重量部をクレアミックスダブルモーション(CLM-2.2/3.7W、エム・テクニック製)でローターを20000rpm、スクリーンを18000rpmにて1時間分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得た。得られた有機顔料微粒子分散体をガラス基板上にスピンコーターで塗布した後、乾燥機内で90℃、2分30秒間、加熱乾燥(プレベーク)して塗膜を得た。さらに得られた塗膜を乾燥機内で、230℃、30分間加熱乾燥(ポストベーク)し、冷却して着色ガラス板(カラーフィルタ)を得た。
【0062】
上記で得られた実施例1~7の着色ガラス基板の輝度を次のようにして測定した。着色ガラス基板を分光測色計(商品名:CM-3700d、コニカミノルタ製)にセットし、C光源2°におけるXYZ座標軸での透過色度を測定した。この際のY値を輝度として採用した。
【0063】
図1に、実施例1、2、3並びに実施例7で作製したPR254微粒子の粉末を用いて測定した波長380nm~780nmの拡散反射スペクトルを示す。図1に示した測定結果より、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])を算出し、着色ガラス基板の輝度と共に表2に示した。表2における実施例1~7の着色ガラス基板の輝度は、実施例7の着色ガラス板の輝度を基準(100)とした場合の相対値を示した。また実施例4~6で得られたPR254微粒子についても同様の測定を行った。
【0064】
(実施例8~10)
実施例8~10として、本願出願人による特許文献1に記載の流体処理装置を用いてPR254微粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆した例について示す。
クレアミックス(製品名:CLM-0.8S、エム・テクニック製)を用いて、第1流体(A液ともいう。)、並びに第2流体(B液ともいう。)を調製した。具体的には表3に示すA液の処方に基づいてA液の各成分を秤量し、調製温度25℃、クレアミックスを用いてローターの回転数10000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、A液を調製した。また、表3に示すB液の処方に基づいてB液の各成分を秤量し、調製温度40℃、クレアミックスを用いてローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、B液を調製した。また、表3に示す第3流体(C液ともいう。)は調製せずそのまま用いた。実施例8~10においては、第1流体が有機顔料を析出させるための貧溶媒、第2流体が有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液、第3流体が酸化物の原料から酸化物を生成させる処理物質を含む流体である。
【0065】
なお、表3記載の化学物質(化学式や略記号で示された物質を含む)については、酢酸は酢酸(純度>99.7%、関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、PR254はイルガジンレッド L3670HD(BASF製)、3-アミノプロピルジエトキシメチルシランは3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン(純度>97.0%、東京化成工業製)、40%BTMAメタノール液はベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、40%メタノール液(東京化成工業製)、DMSOはジメチルスルホキシド(キシダ化学製)、28%アンモニア水はアンモニア(キシダ化学製)を使用した。また、純水はpH5.89(29.3℃)、導電率が0.79μS/cmのものを使用した。
【0066】
【表3】
【0067】
次に、調製した第1流体と第2流体、並びに第3流体を特許文献1に記載の流体処理装置を用いて混合した。ここで、特許文献1に記載の流体処理装置とは、同公報の図1に示す流体処理装置において、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部を備え(同公報の段落0082)、第2導入部d2の開口部d20は第3導入部d3の開口部よりも上流側に設けられ、第2導入部の開口部d20と第3導入部の開口部とが共にリング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であるものである。具体的には、第1流体としてA液を第1導入部d1から処理用面1、2間に導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、第2流体としてB液を第2導入部d2から処理用面1、2間に導入してA液とB液とを薄膜流体中で混合し、処理用面間においてPR254微粒子を析出させた。次に、第3流体としてC液を第3導入部から処理用面1、2間に導入し、薄膜流体中おいて先に析出させたPR254微粒子を含む流体とC液とを混合した。薄膜流体中で、先に析出させたPR254微粒子の表面にケイ素酸化物が析出し、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子を含む流体(以下、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子分散液という。)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させ、容器に回収した。表4に流体処理装置の運転条件を示す。第1流体~第3流体の導入圧力と導入温度、吐出液のpHは、実施例1~6と同様の方法で測定した。PR254微粒子を含む流体と第3流体である酸化物の原料から酸化物を生成させる処理物質を含む流体との混合直後のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、容器に回収したケイ素酸化物被覆PR254粒子分散液のpHを室温にて測定した。
【0068】
実施例8~10で作製されたケイ素酸化物被覆PR254微粒子について、FT-IR測定、XRD測定、STEM観察を行ったところ、FT-IR測定において1100cm-1付近にケイ素酸化物に由来するピークが確認されたが、XRD測定においてはケイ素酸化物に由来するピークが確認できなかった。図7に実施例10で得られたケイ素酸化物被覆PR254微粒子のIR測定結果を、非晶質のケイ素酸化物(二酸化ケイ素(沈降製,非晶質),3N 純度99.9% 関東化学製)並びに原料に用いたPR254(イルガジンレッド L3670HD(BASF製))(図7には「原末」と表示する)のIR測定結果と共に示す。また、STEM観察では、ケイ素酸化物由来の結晶格子が確認されなかった。以上の結果から、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子のケイ素酸化物が非晶質であることを確認した。なお、IR測定には、フーリエ変換赤外分光光度計、FT/IR-4100(日本分光製)を用い、測定条件は、ATR法を用い、分解能4.0cm-1、積算回数1024回とした。また、X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 EMPYREAN(スペクトリス株式会社PANalytical事業部製)を用い、測定条件は、測定範囲:10~100[°2Theta]、Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度0.3°/minとした。
また、実施例8~10で作製されたケイ素酸化物被覆PR254微粒子について、STEMを用いた元素のマッピング及び定量を行ってケイ素酸化物のPR254微粒子への被覆状態を確認した。上述のSTEM観察、並びに、STEM-EDS分析による、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子中に含まれる元素のマッピング及び定量には、エネルギー分散型X線分析装置、Centurio(JEOL製)を備えた、原子分解能分析電子顕微鏡、JEM-ARM200F(JEOL製)を用いて、直径0.2nmのビーム径を用いて分析した。
暗視野像(HADDF像)にて観察された1個の粒子に対して、ケイ素(Si)、酸素(O)については、粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、PR254由来の窒素(N)については、ケイ素(Si)、酸素(O)が分布している領域よりも狭い範囲に分布している様子が観察された。このことから、実施例8~10で得られたケイ素酸化物被覆PR254微粒子については、PR254微粒子の表面の全体がケイ素酸化物で覆われた状態であると考えられる。
【0069】
ケイ素酸化物被覆PR254微粒子の洗浄、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子の一次粒子径の測定及び粒子径(D)の算出、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子の拡散反射率の測定及び対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%]の算出、有機顔料微粒子分散体の作製、塗膜の作製並びに着色ガラス基板の輝度の測定と評価については、実施例1~6又は7と同様の方法で行った。結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
(実施例F-1、F-2)
実施例F-1については、特開2009-112892号公報に記載の装置並びにA液、B液の混合・反応方法を用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施してPR254微粒子を作製した。ここで、特開2009-112892号公報の装置とは、同公報の図1に記載の装置であって、撹拌槽の内径が420mm、攪拌具の外端と攪拌槽の内周面と間隙が1mm、攪拌羽根の回転数は実施例1で用いた流体処理装置の処理用部10の回転数と同じ(1000rpm)とした。また、撹拌槽にA液を導入し、攪拌槽の内周面に圧着されたA液からなる薄膜中にB液を加えて混合し反応させた。表5に装置の運転条件を示す。
また、実施例F-2については、特開2009-112892号公報に記載の装置並びにA液、B液、C液の混合・反応方法を用いた以外は、実施例8と同じ条件で実施してケイ素酸化物被覆PR254微粒子を作製した。ここで、特開2009-112892号公報の装置とは、同公報の図4に記載の装置であって、攪拌槽の内径が均一であるものを用い、撹拌槽の内径が420mm、攪拌具の外端と攪拌槽の内周面と間隙が1mm、攪拌羽根の回転数は実施例8で用いた流体処理装置の処理用部10の回転数と同じ(1130rpm)とした。また、撹拌槽にA液を導入し、攪拌槽の内周面に圧着されたA液からなる薄膜中にB液を加えて混合し反応させ、攪拌槽の内周面に圧着されたA液とB液の混合液からなる薄膜中にC液を加えて混合し反応させた。表6に装置の運転条件を示す。
【0072】
ケイ素酸化物被覆PR254微粒子の洗浄、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子の一次粒子径の測定及び粒子径(D)の算出、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子の拡散反射率の測定及び対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%]の算出、有機顔料微粒子分散体の作製、塗膜の作製並びに着色ガラス基板の輝度の測定と評価については、実施例1~6又は7と同様の方法で行った。結果を表5、6に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
実施例F-2で作製されたケイ素酸化物被覆PR254微粒子について、実施例8~10と同様の方法で、FT-IR測定、XRD測定、STEM観察を行ったところ、FTIR測定において1100cm-1付近にケイ素酸化物に由来するピークが確認されたが、XRD測定においてはケイ素酸化物に由来するピークが確認できなかった。また、STEM観察では、ケイ素酸化物由来の結晶格子が確認されなかった。以上の結果から、ケイ素酸化物被覆PR254微粒子のケイ素酸化物が非晶質であることを確認した。
実施例F-2で作製したケイ素酸化物被覆PR254微粒子について、実施例8~10と同様の方法で、STEM(走査透過型電子顕微鏡)を用いた元素のマッピング及び定量を行ったところ、暗視野像(HADDF像)にて観察された1個の粒子に対して、ケイ素(Si)、酸素(O)については、粒子の一部分にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、PR254由来の窒素(N)については、ケイ素(Si)、酸素(O)が分布している領域よりも狭い範囲に分布している様子が観察された。このことから、実施例F-2で得られたケイ素酸化物被覆PR254微粒子については、PR254微粒子の表面の一部分がケイ素酸化物で覆われた状態であると考えられる。
【0076】
実施例1~7と同様に、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])並びに着色ガラス基板の輝度を表5,6に示した。実施例1~10、F-1、F-2のDiRに対する輝度のグラフを図2に示す。実施例1~10においては、表2、4-6並びに図2に見られるように、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、赤色カラーフィルターにおいて重要となる波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])が高い程、カラーフィルターにおける輝度が高いことがわかり、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、赤色カラーフィルターにおいて重要となる波長620~750nmにおける拡散反射率の面積の比率を高く制御する程に、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することが出来た。さらに、実施例1~6、F-1で作製したケイ素酸化物で被覆されていないPR254微粒子に比べて、実施例8~10、F-2で作製したケイ素酸化物で表面の少なくとも一部を被覆したPR254微粒子の方が、DiR並びにカラーフィルターにおける輝度を高く制御出来ることがわかった。
【0077】
(実施例11~13、実施例14)
有機顔料として銅フタロシアニン(以下、CuPc)を用いた。実施例11~13にあっては、A液~C液の各処方を表7とし、流体処理装置の運転条件を表8とした以外は、実施例8~10と同様に実施して、ケイ素酸化物被覆CuPc微粒子のウェットケーキサンプルと乾燥粉体を得た。また、実施例14にあっては、A液、B液の各処方を表9とし、流体処理装置の運転条件を表10とし、処理用部10を回転数1130rpmで運転した以外は、実施例1~6と同様に実施して、CuPc微粒子のウェットケーキサンプルと乾燥粉体を得た。
【0078】
なお、表7,9に記載の化学物質(化学式や略記号で示された物質を含む)については、酢酸は酢酸(純度>99.7%、関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、3-アミノプロピルジエトキシメチルシランは3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン(純度>97.0%、東京化成工業製)、CuPcはPV FAST BLUE BG(クラリアント製)、97%HSOは97%濃硫酸(キシダ化学製)、28%アンモニア水はアンモニア(キシダ化学製)を使用した。また、純水はpH5.89(29.3℃)、導電率が0.79μS/cmのものを使用した。
【0079】
有機顔料微粒子(ケイ素酸化物被覆CuPc微粒子又はCuPc微粒子)の洗浄、有機顔料微粒子の一次粒子径の測定及び粒子径(D)の算出、有機顔料微粒子の拡散反射率の測定については、実施例1~6と同様の方法で行った。結果を表8、10に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
実施例11~13で作製されたケイ素酸化物被覆CuPc微粒子について、実施例8~10と同様の方法で、FT-IR測定、XRD測定、STEM観察を行ったところ、FT-IR測定において1100cm-1付近にケイ素酸化物に由来するピークが確認されたが、XRD測定においてはケイ素酸化物に由来するピークが確認できなかった。また、STEM観察では、ケイ素酸化物由来の結晶格子が確認されなかった。以上の結果から、ケイ素酸化物被覆CuPc微粒子のケイ素酸化物が非晶質であることを確認した。
また、実施例11~13で作製したケイ素酸化物被覆CuPc微粒子について、実施例8~10と同様の方法で、STEM(走査透過型電子顕微鏡)を用いた元素のマッピング及び定量を行ったところ、暗視野像(HADDF像)にて観察された1個の粒子に対して、ケイ素(Si)、酸素(O)については粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、銅フタロシアニン由来の銅(Cu)が、ケイ素(Si)、酸素(O)が分布している領域よりも狭い範囲に分布している様子が観察された。このことから、実施例11~13で得られたケイ素酸化物被覆CuPc微粒子については、CuPc微粒子の表面の全体がケイ素酸化物で覆われた状態であると考えられる。
【0085】
(実施例15)
実施例15として、上記実施例11~14において、ケイ素酸化物被覆CuPc微粒子又はCuPc微粒子を作製する際のCuPc原料(PV FAST BLUE BG(クラリアント製))を、ビーズミルを用いて実施例11~14と同様の粒子径となるまで粉砕処理してCuPc微粒子を作製した。得られたCuPc微粒子の一次粒子径の測定及び粒子径(D)の算出、得られたCuPc微粒子の拡散反射率の測定については、実施例7と同様の方法で行った。結果を表8、10に示す。
【0086】
カラーフィルターとしての輝度を測定するために、実施例11~15で得られたケイ素酸化物被覆CuPc微粒子又はCuPc微粒子を用いて有機顔料微粒子分散体並びに硬化膜(塗膜)を作製した。具体的には、実施例11~15で得られたケイ素酸化物被覆CuPc微粒子又はCuPc微粒子の乾燥粉体24.32重量部、樹脂型分散剤として「BYK-LNP-21116」(固形分濃度40.0重量%、ビックケミー社製)を28.80重量部、樹脂型分散剤としてビニルエステル樹脂「リポキシSPC-2000」(固形分濃度35重量%、昭和電工製)25.60重量部、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)80.00重量部をクレアミックスダブルモーション(CLM-2.2/3.7W、エム・テクニック製)でローターを20000rpm、スクリーンを18000rpmにて1時間分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得た。得られた有機顔料微粒子分散体60重量部に、感光性モノマー(商品名:A-DPH、新中村化学製)を10重量部、光重合開始剤(4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、和光純薬工業製)を1.5重量部、樹脂型分散剤(リポキシSPC-2000)を32重量部、PGMEAを45重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を30重量部添加し、レジスト組成物としてスピンコート液を調製した。
【0087】
得られた各スピンコート液を、厚さ1mm、100mm角のガラス基板に、目的とする色度(y=0.120)が得られる膜厚となるようにスピンコーター「スピンコーターMS-150A」(ミカサ製)で塗布し、乾燥機内で90℃、2分30秒間乾燥(プレベーク)し、さらに乾燥機内で230℃、30分間加熱乾燥(ポストベーク)し、冷却して実施例11~15の各着色ガラス基板(カラーフィルタ)を得た。着色ガラス基板の輝度の測定は、実施例1~7と同様の方法で行った。
【0088】
図3に実施例11の条件で作製したケイ素酸化物被覆CuPc微粒子、並びに実施例14の条件で作製したCuPc微粒子の粉末を用いて測定した波長380nm~780nmの拡散反射スペクトルを示す。図3に示した測定結果より、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、波長450~495nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])を算出し、着色ガラス基板の輝度と共に表8、10に示した。また実施例12~13、15で得られたケイ素酸化物被覆CuPc微粒子又はCuPc微粒子についても同様の測定と算出とを行い、その結果を表8、10に示す。表8、10における実施例11~14の輝度は、実施例15の着色ガラス板の輝度を基準(100)とした場合の相対値として示した。実施例11~15のDiRに対する輝度のグラフを図4に示す。
【0089】
表8、10並びに図4に見られるように、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、青色カラーフィルターにおいて重要となる波長450~495nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])が高い程、カラーフィルターにおける輝度が高いことがわかり、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、青色カラーフィルターにおいて重要となる波長450~495nmにおける拡散反射率の面積の比率を高く制御する程に、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することが出来た。また、実施例14で作製したケイ素酸化物で被覆されていないCuPc微粒子に比べて実施例11~13で作製したケイ素酸化物で表面の少なくとも一部を被覆したCuPc微粒子の方がDiR並びにカラーフィルターにおける輝度を高く制御出来ることがわかった。なお、有機顔料微粒子の原料としてCuPcを用いた場合についても、実施例8~10と同様に、特開2009-112892号公報に記載の装置を用いてCuPc微粒子やケイ素酸化物で表面の少なくとも一部を被覆したCuPc微粒子を作製しても構わない。この場合でも、ケイ素酸化物で表面の少なくとも一部を被覆したCuPc微粒子の方が、ケイ素酸化物で表面を被覆していないCuPc微粒子に比してDiR並びに輝度を高く制御出来る。
【0090】
(実施例16~18、実施例19)
有機顔料として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン(C.I.Pigmet Green58、PG58)を用いた。実施例16~18にあっては、A液~C液の各処方を表11とし、流体処理装置の運転条件を表12とした以外は、実施例8~10と同様に実施して、ケイ素酸化物被覆PG58微粒子のウェットケーキサンプルと乾燥粉体を得た。また、実施例19にあっては、A液、B液の各処方を表13とし、流体処理装置の運転条件を表14とし、処理用部10を回転数1130rpmで運転した以外は、実施例1~6と同様に実施して、PG58微粒子のウェットケーキサンプルと乾燥粉体を得た。
【0091】
なお、表11,13に記載の化学物質(化学式や略記号で示された物質を含む)については、酢酸は酢酸(純度>99.7%、関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、3-アミノプロピルジエトキシメチルシランは3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン(純度>97.0%、東京化成工業製)、97%HSOは97%濃硫酸(キシダ化学製)、30wt%SO 発煙硫酸は、30%発煙硫酸(関東化学製)、クロロ硫酸はクロロ酢酸(関東化学製)、28%アンモニア水はアンモニア(キシダ化学製)を使用した。また、純水はpH5.89(29.3℃)、導電率が0.79μS/cmのものを使用した。
【0092】
有機顔料微粒子(ケイ素酸化物被覆PG58微粒子又はPG58微粒子)の洗浄、有機顔料微粒子の一次粒子径の測定及び粒子径(D)の算出、有機顔料微粒子の拡散反射率の測定については、実施例1~6と同様の方法で行った。結果を表12、14に示す。
【0093】
【表11】
【0094】
【表12】
【0095】
【表13】
【0096】
【表14】
【0097】
実施例16~18で作製されたケイ素酸化物被覆PG58微粒子について、実施例8~10と同様の方法で、FT-IR測定、XRD測定、STEM観察を行ったところ、FT-IR測定において1100cm-1付近にケイ素酸化物に由来するピークが確認されたが、XRD測定においてはケイ素酸化物に由来するピークが確認できなかった。また、STEM観察では、ケイ素酸化物由来の結晶格子が確認されなかった。以上の結果から、ケイ素酸化物被覆PG58微粒子のケイ素酸化物が非晶質であることを確認した。
実施例16~18で作製したケイ素酸化物被覆PG58微粒子について、実施例8~10と同様の方法で、STEM(走査透過型電子顕微鏡)を用いた元素のマッピング及び定量を行ったところ、暗視野像(HADDF像)にて観察された1個の粒子に対して、ケイ素(Si)、酸素(O)については粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン由来の亜鉛(Zn)が、ケイ素(Si)、酸素(O)が分布している領域よりも狭い範囲に分布している様子が観察された。このことから、実施例16~18で得られたケイ素酸化物被覆PG58微粒子については、PG58微粒子の表面の全体がケイ素酸化物で覆われた状態であると考えられる。
【0098】
(実施例20)
実施例20として、上記実施例16~19において、ケイ素酸化物被覆PG58微粒子又はPG58微粒子を作製する際のPG58原料を、ビーズミルを用いて実施例16~19と同様の粒子径となるまで粉砕処理したPG58微粒子を作製した。得られたPG58微粒子の一次粒子径の測定及び粒子径(D)の算出、得られたPG58微粒子の拡散反射率の測定については、実施例7と同様の方法で行った。結果を表12、14に示す。
【0099】
カラーフィルターとしての輝度を測定するために、実施例16~20で得られたケイ素酸化物被覆PG58微粒子又はPG58微粒子を用いて有機顔料微粒子分散体並びに硬化膜(塗膜)を作製した。具体的には、実施例16~20で得られたケイ素酸化物被覆PG58微粒子又はPG58微粒子の乾燥粉体30.40重量部、樹脂型分散剤として「BYK-LNP-6919」(固形分濃度60.9重量%、ビックケミー社製)を21.02重量部、樹脂型分散剤としてビニルエステル樹脂「リポキシSPC-2000」(固形分濃度35重量%、昭和電工製)27.43重量部、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)79.55重量部をクレアミックスダブルモーション(CLM-2.2/3.7W、エム・テクニック製)でローターを20000rpm、スクリーンを18000rpmにて1時間分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得た。得られた有機顔料微粒子分散体60重量部に、感光性モノマー「A-DPH」(新中村化学製)を10重量部、光重合開始剤(4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、和光純薬工業製)を1.5重量部、樹脂型分散剤(リポキシSPC-2000)を32重量部、PGMEAを45重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を30重量部を添加し、レジスト組成物としてスピンコート液を調製した。
【0100】
得られた各スピンコート液を、厚さ1mm、100mm角のガラス板に、目的とする色度(y=0.500)が得られる膜厚となるようにスピンコーター「スピンコーターMS-150A」(ミカサ製)で塗布し、乾燥機内で90℃、2分30秒間乾燥(プレベーク)し、さらに乾燥機内で230℃、30分間加熱乾燥(ポストベーク)し、冷却して実施例16~20の各着色ガラス板(カラーフィルタ)を得た。着色ガラス基板の輝度の測定は、実施例1~7と同様の方法で行った。
【0101】
図5に実施例17の条件で作製したケイ素酸化物被覆PG58微粒子の粉末、並びに実施例20の条件で作製したPG58微粒子の粉末を用いて測定した波長380nm~780nmの拡散反射スペクトルを示す。図5に示した測定結果より、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、波長495~570nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])を算出し、着色ガラス基板の輝度と共に表12、14に示した。また実施例16、18~19で得られたケイ素酸化物被覆PG58微粒子又はPG58微粒子についても同様の測定を行い、その結果を表10、12に示す。表12、14における実施例16~19の輝度は、実施例20の着色ガラス板の輝度を基準(100)とした場合の相対値として示した。実施例16~20のDiRに対する輝度のグラフを図6に示す。
【0102】
表12、14並びに図6に見られるように、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、緑色カラーフィルターにおいて重要となる波長495~570nmにおける拡散反射率の面積の比率(対象波長領域における拡散反射率の面積比率:DiR[%])が高い程、カラーフィルターにおける輝度が高いことがわかり、測定波長全域における拡散反射率の全面積に対する、緑色カラーフィルターにおいて重要となる波長495~570nmにおける拡散反射率の面積の比率を高く制御する程に、カラーフィルターにおける輝度を高く制御することが出来た。また、実施例19で作製したケイ素酸化物で被覆されていないPG58微粒子に比べて実施例16~18で作製したケイ素酸化物で表面の少なくとも一部を被覆したPG58微粒子の方がDiR並びにカラーフィルターにおける輝度が高く制御出来ることがわかった。なお、有機顔料微粒子の原料としてPG58を用いた場合についても、実施例8~10と同様に、特開2009-112892号公報に記載の装置を用いてPG58微粒子やケイ素酸化物で表面の少なくとも一部を被覆したPG58微粒子を作製しても構わない。この場合でも、ケイ素酸化物で表面の少なくとも一部を被覆したPG58微粒子の方が、ケイ素酸化物で表面を被覆していないPG58微粒子に比してDiR並びに輝度を高く制御出来る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
上記有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が620~750nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が71%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子(ただし、表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されている有機顔料微粒子を除く)
【請求項2】
カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
上記有機顔料微粒子が青色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が450~495nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が30%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子(ただし、表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されている有機顔料微粒子を除く)
【請求項3】
カラーフィルター用の有機顔料微粒子であり、
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
上記有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子であり、目的とする波長の範囲が495~570nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が51%以上である、カラーフィルター用の有機顔料微粒子(ただし、表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されている有機顔料微粒子を除く)
【請求項4】
請求項1~の何れかに記載のカラーフィルター用の有機顔料微粒子を備えたカラーフィルター。
【請求項5】
請求項1~の何れかに記載のカラーフィルター用の有機顔料微粒子と、当該有機顔料微粒子の色とは異なる色の有機顔料微粒子とを含むカラーフィルター。
【請求項6】
上記カラーフィルターは、ビーズミル品有機顔料微粒子によるカラーフィルターに比して、拡散反射率と輝度との双方が高いものであることを特徴とする請求項又はに記載のカラーフィルター。
【請求項7】
請求項1~3の何れかに記載の有機顔料微粒子を含む有機顔料組成物の製造方法であり、
カラーフィルターにおける輝度を向上させる目的で上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することを特徴と
上記有機顔料微粒子の波長380~780nmの範囲における拡散反射スペクトルにおいて、
測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率を高く制御することで、カラーフィルターにおける輝度を高く制御す有機顔料組成物の製造方法。
【請求項8】
上記拡散反射スペクトルを、上記有機顔料微粒子の粉末を用いて測定することを特徴とする請求項に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項9】
上記有機顔料微粒子が赤色顔料微粒子であり、上記目的とする波長の範囲が620~750nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が71%以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項10】
上記有機顔料微粒子が青色顔料微粒子であり、上記目的とする波長の範囲が450~495nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が30%以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項11】
上記有機顔料微粒子が緑色顔料微粒子であり、上記目的とする波長の範囲が495~570nmであり、測定波長領域全域の拡散反射率の全面積に対する、目的とする波長の範囲における拡散反射率の面積の比率が51%以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機顔料組成物の製造方法。
【請求項12】
上記有機顔料組成物が有機顔料微粒子分散体であり、
下記工程(I)~(III)を有する、請求項11の何れかに記載の有機顔料組成物の製造方法。
工程(I)少なくとも1種類の有機顔料微粒子を得る工程
工程(II)上記有機顔料微粒子の拡散反射率を測定する工程
工程(III)上記有機顔料微粒子を溶媒に分散処理し、有機顔料微粒子分散体を得る工程
【請求項13】
請求項12に記載の有機顔料組成物の製造方法により得られた有機顔料微粒子分散体を用いて塗膜を作製し、上記塗膜の輝度を制御する、塗膜の製造方法。
【請求項14】
上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することによって、上記塗膜の輝度を制御する、請求項13に記載の塗膜の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の塗膜の製造方法において、上記塗膜をカラーフィルター用の基板上に形成する工程を含み、上記有機顔料微粒子の拡散反射率を制御することによって輝度が制御されたカラーフィルターを得ることを特徴とする、カラーフィルターの製造方法。