(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105658
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】包装用容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 43/08 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
B65D43/08 210
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084950
(22)【出願日】2022-05-25
(62)【分割の表示】P 2020092000の分割
【原出願日】2020-05-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り A.製品カタログの頒布による公開 令和2年2月12日、シーピー化成株式会社(発行者)、2020 NEW DESIGN COLLECTION、21~22ページ B.製品カタログの寄託による公開 令和2年2月12日、シーピー化成株式会社(発行者)、2020 NEW DESIGN COLLECTION、21~22ページ、一般社団法人日本デザイン保護協会(公開者) C.ウェブサイトへの掲載による公開 令和2年2月17日、シーピー化成株式会社、http://www.cpkasei.co.jp/(自社ホームページ) D.展示会への出品による公開(1) 令和2年2月12日、デリカテッセン・トレードショー2020、一般社団法人全国スーパーマーケット協会(主催者)、幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1) E.展示会への出品による公開(2) 令和2年2月18日、2020シーピー化成展示会 大阪会場、シーピー化成株式会社(自社主催)、ハービスホール(大阪市北区梅田2-5-25 ハービス OSAKA B2F)
(71)【出願人】
【識別番号】390041058
【氏名又は名称】シーピー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】込山 和馬
(57)【要約】
【課題】どの角度からも収容物の視認性が阻害されず、全体的に優れた透明感を有する包装用容器の蓋体を提供する。
【解決手段】収容物を収容する容器本体に嵌合し、熱可塑性樹脂製のシート材を成形して成る蓋体であって、少なくとも一対の対辺間領域を平面で構成した平面視多角形状の天板部と、該天板部の周囲に連設される一定高さの側壁部とを備え、前記天板部と前記側壁部、及び周方向に隣接する側壁部同士は、それぞれ水平方向及び高さ方向に線状の稜線を形成する角張った横出角部及び縦出角部によって連設した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物を収容する容器本体に嵌合し、熱可塑性樹脂製のシート材を成形して成り、透明又は前記収容物を視認可能な半透明の蓋体であって、
全面が平面で構成された平面視多角形状の天板部と、
該天板部の周囲に連設される一定高さの側壁部とを備え、
前記天板部と前記側壁部、及び周方向に隣接する側壁部同士は、それぞれ水平方向及び高さ方向に線状の稜線を形成する角張った横出角部及び縦出角部によって連設されると共に、
前記天板部と前記隣接する二面の側壁部の三面がなす頂点は、水平方向の稜線と高さ方向の稜線との交点と先端が一致するピン角形状によって構成される、
ことを特徴とする包装用容器の蓋体。
【請求項2】
前記側壁部は、上下二段構成とし、このうち少なくとも上段側は全面を平面で構成した請求項1に記載の包装用容器の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製のシート材を成形してなる包装用容器の透明な蓋体に係り、収容物の視認性を高める構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで陳列販売されている弁当や寿司、惣菜等の包装用容器として、容器本体と蓋体とを熱可塑性樹脂製のシート材によって成形し、これらを嵌合して閉蓋する構造とすると共に、蓋体を透明として、収容物である食品等の視認性を確保した包装用容器は周知である。
【0003】
この種の包装用容器は、視覚に訴えて購買意欲を喚起することが重要であるところ、特許文献1の蓋体では、天板部の隅部に設けたズレ防止用突起の存在によって、ここを通る角度からの視認性が失われ、特許文献2の蓋体においても、コーナー部に設けた凹部によって、収容物が歪んで見えるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-14370号公報
【特許文献2】特開2018-135111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓋体において収容物を保護する部分が天板部と側壁部とで構成される場合、これら部分が収容物の視認性に大きく影響することから、天板部と側壁部のそれぞれを凹凸がない平滑な面で構成すれば、商品を真上から見たときは天板部を通じて、商品を真横から見たときは側壁部を通じて、面単位での視認性は良好となる。
【0006】
これに対して、消費者が商品を選ぶときは、真上や真横から見るよりも、むしろ斜め上から見ることで収容物を立体的に観察することが多い。これに応じて店舗側も、消費者の目線が斜め上となるように商品を陳列することがある。何れにしても消費者が商品を見る角度は一定ではない。したがって、どの角度からも収容物をありのままに視認できることが理想である。
【0007】
しかしながら、従来の蓋体では、面の方向が切り替わる天板部・側壁部間のコーナー部や、隣接する側壁部間のコーナー部が、往々にしてアール形状に形成されている。言い換えれば、各コーナー部はそれ自体が細幅でありながら、一種の曲面を構成している。このため、いくら天板部や側壁部を平滑な面で構成したとしても、商品を斜め上から見たときは、各コーナー部で収容物が歪んだりぼやっと見えるなど視認性が阻害され、全体として蓋体の透明感に欠けるという課題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、どの角度からも収容物の視認性が阻害されず、全体的に優れた透明感を有する包装用容器の蓋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、収容物を収容する容器本体に嵌合し、熱可塑性樹脂製のシート材を成形して成り、透明又は前記収容物を視認可能な半透明の蓋体であって、全面が平面で構成された平面視多角形状の天板部と、該天板部の周囲に連設される一定高さの側壁部とを備え、前記天板部と前記側壁部、及び周方向に隣接する側壁部同士は、それぞれ水平方向及び高さ方向に線状の稜線を形成する角張った横出角部及び縦出角部によって連設されると共に、前記天板部と前記隣接する二面の側壁部の三面がなす頂点は、水平方向の稜線と高さ方向の稜線との交点と先端が一致するピン角形状によって構成されるという手段を用いた。
【0010】
上記手段によれば、蓋体は、天板部が平面を有し、天板部と側壁部との連設部及び側壁部同士の連設部が角張った横出角部及び縦出角部によって構成されているため、斜め上から観察した場合でも、連設部である横出角部や縦出角部において収容物の視認性が阻害されず、ガラス張りのように透明感に優れた蓋体とすることができる。
【0011】
また、前記天板部と前記隣接する二面の側壁部の三面がなす頂点は、水平方向の稜線と高さ方向の稜線との交点と先端が一致するピン角形状によって構成されるという手段では、天板部の隅角(天板部が平面視四角形であれば四隅)においても収容物の視認性が阻害されず、全体の透明感が一層高まる。
【0012】
さらに、前記側壁部は、上下二段構成とし、このうち少なくとも上段側は全面を平面で構成することで、斜め上からも、収容物を歪みがない状態で鮮明に見ることができる。なお、蓋体は透明が好ましい。しかし、語義上の完全な透明体のみならず、本発明の視認性の向上という目的を達成できる範囲であれば半透明も含む。
【0013】
さらに、本発明の課題を解決する手段として以下を付記する。
(付記1A)
シート成形によって形成される蓋体と容器本体からなり、前記蓋体に前記容器本体を積載することで複数個を積み重ね可能な包装用容器であって、
前記蓋体は、
全面が平面で構成される天板部と、
該天板部の周囲に直線状の連設部を介して下向きに連設され、少なくとも前記連設部と連続する部分を平面で構成した側壁部とを備え、
前記連設部の表面側の曲率半径は0.6mm以下であり、
前記容器本体は、
底板部と、
該底板部の周囲から下向きに突出する脚部とを備え、
前記底板部と前記脚部とで、前記蓋体に対して、下面が開口した断面凹状の積載用凹状部を形成した
ことを特徴とする包装用容器。
(付記2A)
積載用凹状部において底板部と脚部とがなす内角部の曲率半径は0.6mm以下である包装用容器。
(付記3A)
積載用凹状部の深さを規定する脚部の突出長は5mm以下である包装用容器。
(付記4A)
積載用凹状部は、底板部の周囲のうち隅部を避けた位置に、複数の脚部を形成することにより、前記底板部の隅部に対応する角部が開放されている包装用容器。
(付記5A)
容器本体は、さらに、底板部の外周側で上方に立ち上がる本体周壁部と、該本体周壁部から外向きに延びる本体フランジ部と、該本体フランジ部から下向きに延出するスカート部とを備え、前記スカート部は、その下端縁が前記底板部と前記本体周壁部との間に形成される脚部の下端部と同じレベル位置か、それよりも下方まで延出されている包装用容器。
(付記6A)
底板部は、上げ底部と、該上げ底部の周囲に段差部を介して一段低く形成される基底部とからなり、前記上げ底部の前記段差部の近傍には、前記段差部の高さ以下の突出長を有して前記上げ底部から下向きに突出するリブを設けた包装用容器。
(付記7A)
リブは、上げ底部の隅部を隅切状に横断して、両端を基底部の隣合う二辺に連結した平面視直線状である包装用容器。
(付記1B)
熱可塑性樹脂製のシート材を成型してなる包装用容器の蓋体において、
平面視が多角形である天板部と、
該天板部の周囲に連設される一定高さの側壁部とを備え、
前記天板部は、平面で構成され、
前記側壁部は、前記天板部及び隣合う側壁部と直線状の連設部を介して連設する平面部を有し、
前記天板部と前記側壁部とがなす二面角θはθ>90°であり、
前記連設部における表面側の曲率半径RはR≦0.6mmである
ことを特徴とした包装用容器の蓋体。
(付記2B)
天板部と側壁部とがなす二面角θは90°<θ≦105°である包装用容器の蓋体。
(付記3B)
シート材は、PET樹脂製であり、
前記PET樹脂のIV値(JIS K7367-1に準拠)は0.70~0.85であり、
前記シート材の水分率(JIS K0113に準拠したカールフィッシャー電量滴定法)が1500PPM未満であり、
前記シート材の厚みが0.10~0.80mmである包装用容器の蓋体。
(付記4B)
シート材の厚みは0.20~0.50mmである包装用容器の蓋体。
(付記5B)
包装用容器の蓋体の成型方法であって、
シート材を雄型側に真空引きする真空成型法である包装用容器の蓋体の成型方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓋体を構成する天板部と側壁部の各面が大きく変化する連設部が、線状の稜線で示される角張った出角部で構成されているため、容器本体に収容される収容物の視認性を、視線の方向を問わず妨げない。また、天板部の隅角がピン角形状によって構成されたものは、斜視方向の視線によっても当該隅角における視認性を妨げない。したがって、本発明の蓋体は、従来にない透明感を発揮し、収容物の審美性をより際だたせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装用容器の斜視図
【
図10】同、包装用容器を積み重ねた際の蓋体と容器本体の関係を示す説明図
【
図11】同、位置ズレを起こして容器本体が傾いた状態を示す説明図
【
図12】同、傾いた容器本体を元の位置に修正する手順を示した説明図
【
図15】同、傾いた容器本体を元の位置に修正する手順を示した説明図
【
図17】実施形態を変形した実施例1に係る蓋体の斜視図
【
図27】本発明の蓋体の成型に係る蓋体の説明斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る包装用容器の斜視図であり、蓋体10と容器本体20を分離して示したものであり、以降、蓋体10、容器本体20の順に、それぞれの構成を詳述する。
【0017】
まず蓋体10の構成を詳説すると、当該蓋体10は透明である。そして、
図2・3は、蓋体10のみを示した平面図と側面図であり、容器本体20の開口縁部に外側から装着するフランジ部11を有し、さらに、フランジ部11の側面には本体嵌合部21に嵌合する凹状の蓋体嵌合部12を有する。そして、容器本体20に収容した収容物を保護する部分を、天板部1と、その周囲に連設される一定高さの側壁部2とで構成している。
【0018】
天板部1は全面が平面で構成される平面視長方形である。そして、当該天板部1の四辺それぞれには、連設部3を介して側壁部2が連設している。連設部3それぞれは天板部1の四辺に沿った水平方向に直線的な稜線を形成する角張った横出角部で構成されており、全体的に見れば、天板部1と同じ平面視長方形をなす。なお、この実施形態では、天板部1として平面視形状が長方形を例示し、その全面を平面として説明するが、天板部1が他の平面視多角形状である場合は、平面で構成される天板部1の面積割合が、平面で構成されない天板部1の面積割合よりも高いものであれば、少なくとも一対の対辺間領域を平面とすることで、視認性に関する本発明の目的を達成することができる。
【0019】
側壁部2は、この実施形態の場合、
図3によく示されるように、上段平面部4と下段平面部5を境界部6を介した二段構成としている。このうち上段平面部4は、上述した水平方向の連設部3を介して天板部1に連設されつつ、左右に隣合う上段平面部4同士は上下方向に直線状をなす連設部7で連設されている。つまり、この連設部7は、高さ方向に線状の稜線を形成する角張った縦出角部によって構成されている。一方、下段平面部5は境界部6を介して上段平面部4と連設しつつ、左右に隣合う下段平面部5同士は三角形状の面取り部8を介して連設している。ここで、上段平面部4と下段平面部5は、フランジ部11側から天板部1側に向かう立ち上がり角度が同一であって、いわゆる面一であるから、実際には図示のように直線状の境界部6は存在しないのであるが、隣合う同士の連設構成が、上段平面部4では直線状の連設部7、下段平面部5では三角形状の面取り部8という違いがあるため、説明の便宜上、境界部6とした。したがって、面取り部8の頂角に向かう斜辺についても、連設部7と同様に、高さ方向に線状の稜線を形成する角張った縦出角部によって構成されている。
【0020】
なお、側壁部2には、下段平面部5とフランジ部11にまたがって、容器外側に膨出するスタック用突部9を形成している。これによって蓋体10同士を重ね合わせたときに、蓋体同士が完全に嵌り込んでしまうことを防止し、収容物(食材等)を収容した容器本体20への閉蓋作業時に、蓋体10を一つずつ取り出しやすくしている。このスタック用突部9を除けば、側壁部2は天板部1と同様に全面を平面で構成しているといえ、本発明の特徴的構成の一つである。
【0021】
上記蓋体10のさらなる特徴的構成を、
図4・5にしたがって説明すると、まず、天板部1と側壁部2(上段平面部4)とがなす二面角は、剛性を確保するための好ましい例として、蓋体10の長辺側、短辺側とも90°超、105°以下に設定している。具体的には、長辺側の二面角θ1は、
図4に示すように、97.0°に設定しており、短辺側については図示を省略するが、やはり90°超、105°以下に設定している。また、蓋体10のコーナー部における天板部1と連設部7とのなす角θ2は、
図5に示すように、100.0°に設定している。なお、長辺側と短辺側の二組の二面角は、上述した範囲であれば、異なる角度に設定することができる。このように角度を異にすることで、収容物を収容した容器を陳列した際に、角度が同一のものより陳列の見栄えに変化を持たせることができ、顧客吸引性を高めることができる。
【0022】
さらに、天板部1と側壁部2(上段平面部4)との連設部3、及び側壁部2(上段平面部4)同士の連設部7において、その表面側の曲率半径Rは全て0.4mmに設定している。この数値も一例であり、より小さく設定することが好ましいが、0.6mm以下であれば、本発明の目的は達成することができる。要するに本発明で重要なことは、連設部3・7を水平方向及び高さ方向に線状の稜線を形成する角張った横出角部及び縦出角部によって構成することである。
【0023】
天板部1と側壁部2とを上述した構成とすることで、剛性を保持しつつ、視認性が良好な蓋体10となる。つまり、剛性については、天板部1を側壁部2によってほぼ垂直に支持するため、耐荷重が高まり、連設部3・7を曲率半径が極めて小さい角張った形状に形成することで、曲げや捻りに対する耐力が高まる。
【0024】
視認性については、天板部1は全面が平面であり、側壁部2も、上段平面部4が全面的に平面であって、下段平面部5ではスタック用突部9を除けば平面で構成されており、しかも、連設部3・7が水平方向及び高さ方向に線状の稜線を形成する角張った横出角部及び縦出角部によって構成されているため、真上や真横からはもちろん、斜め上からも、収容物を歪みがない状態で鮮明に見ることができる。さらに、この実施形態では、天板部1と隣接する二面の側壁部2の三面がなす頂点、即ち天板部1の四隅Fが、連設部3・7の交点と先端が一致するピン角形状(稜角)によって構成されているため、天板部1の四隅Fのうちの一の隅Fに向かって斜視したときでも、その部分での視認性が妨げられず、蓋体10全体の透明感が高まる。
【0025】
なお、蓋体10は、無色透明であることが、最も視認性を高めることができるが、色彩や透明度について限定するものではない。また、成型素材、即ちシート材については、従来公知の熱可塑性樹脂から選択することができるが、PBT樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PETG樹脂、SPG樹脂などの熱可塑性ポリエステル系樹脂が好適である。とりわけ、作業性、成型性、コストに優れたPET樹脂を選択することが好ましい。
【0026】
さらに、PET樹脂製のシート材を素材として蓋体10を成型する場合は、IV値(JIS K7367-1に準拠)が0.70~0.85のPET樹脂により、水分率(JIS K0113に準拠したカールフィッシャー電量滴定法)が1500PPM未満で、厚みが0.10~0.80mmのシート材を用いることが好ましい。なお、シート厚は0.20~0.50mmの範囲であれば、上述した剛性と視認性をより高度な次元で両立することができる。
【0027】
次に、上記蓋体10の成型方法を、
図6にしたがって説明する。同図の(a)~(e)は、蓋体10の成型工程を示す概念図であり、まず、上述した熱可塑性樹脂製のシート材30を両面ヒータ31により加熱して軟化させる(
図6(a))。そして、軟化状態にあるシート材30を金型(雄型)32とプラグ33の間に搬送し(
図6(b))、金型32を上昇させて、その成型面をシート材30に押し当てる(
図6(c))。この状態で、シート材30を金型32との間で密封するようにプラグ33を作動させ、金型32に貫通して設けた多数の吸引孔32aを通じて真空引きを行う(
図6(d))。そして、金型32とプラグ33を元の位置に戻して離型し(
図6(e))、その後、余剰部をカットし、トリミングを行うことで蓋体10を得ることができる。
【0028】
ここでは、蓋体10の成型方法として真空成型法を説明したが、軟化したシート材を圧縮空気によって金型に密着させる圧空成型法を採用してもよく、これら真空成型法と圧空成型法を同時に採用することも可能である。なお、真空成型法によって上述した角張った横出角部及び縦出角部によって連設部3・7を有する蓋体10を成型することができるのであるが、天板部1をより平滑に、且つ透明度を維持して成型するための吸引孔32aの配置については最後尾にて詳説する。
【0029】
続いて、容器本体20の構成を詳説する。この実施形態における容器本体20は、
図1と共に
図7・8に示すように、底板部22と、その外周側で上方に立ち上がる本体周壁部23と、該本体周壁部23から外向きに延びる本体フランジ部24と、該本体フランジ部24から上述した本体嵌合部21を介して下向きに延出するスカート部25を備えている。底板部22は蓋体10の天板部1とほぼ同じ面積を有する平面視長方形である。そして、底板部22に食材等の収容物を載置した後、蓋体10を被せ、両者の蓋体嵌合部12と本体嵌合部21とを嵌合することで閉蓋作業が完了する。このように閉蓋した包装用容器における剛性と視認性については既に詳述したとおりである。
【0030】
なお、この実施形態では、底板部22を上げ底状としている。即ち、底板部22は、内方側を上げ底部22aとして、その周囲を取り巻いて段差部22bを介し一段低い基底部22cを形成している。このうち上げ底部22aは収容物を載置する主要部であり、その回りの基底部22cは食材等から染み出たドリップや余分な油を受けると共に、必要に応じて添付される醤油やわさび等の小物を添え置く部分としても機能する。
【0031】
そして、底板部22(基底部22c)の外周であって、本体周壁部23の内側には、複数の脚部26を間欠的に設けている。この実施形態の場合、脚部26は、容器本体20の長辺部分と短辺部分それぞれに二つずつ、合計8箇所に平面視直線状のものを設けている。ここで、各脚部26を意図的に底板部22の隅部22dを避けて設けていることも本実施形態の特徴の一つである。なお、この脚部26は、必ずしも文字通りに容器本体20(包装用容器)を支持する部分ではなく、上述したスカート部25の延出長が十分長い場合は、当該スカート部25が実質的に容器本体20の脚として機能する場合もある。
【0032】
そして、脚部26は、
図9に示すように、底板部22から下向きに突出して形成しており、当該脚部26の内側には底板部22とによって、下面が開口した断面凹状の積載用凹状部27を構成している。この実施形態では、脚部26を間欠的に設けている結果、積載用凹状部27は、厳密には、当該脚部26を通る断面のみが凹状となるが、後述するように、蓋体10を嵌め込む機能は達成される。また、底板部22が上げ底状であることに対応して、積載用凹状部27の天面部分は二段構成となるが、この実施形態では、基底部22cを基準面として天面を構成している。そのうえで、脚部26と基底部22cとで形成される積載用凹状部27の内角部27aの曲率半径R1を、蓋体10の連設部3の表面側の曲率半径Rに対応して、0.6mm以下に設定している。なお、前記内角部27aの角度は限定しないが、蓋体10における天板部1と側壁部2(上段平面部4)とがなす二面角に対応させることが、嵌め込みやすさと水平方向のズレを防止する点で有効である。
【0033】
そして、上述した容器本体20を備えた収容物入りの包装用容器を何段か平積みの状態で積み重ねるときは、
図10に示すように、下段容器の蓋体10に積載用凹状部27を嵌め込むようにして上段容器の容器本体20を積載する。このように積み重ねた場合、本発明では、蓋体10の嵌め込まれる上部と、容器本体20の積載用凹状部27の内面の立体形状がほぼ一致しており、特に、蓋体10における連設部3の表面側の曲率範囲Rと、容器本体20における積載用凹状部27の内角部の曲率半径R1とが一致、若しくは近似した対応関係にあるため、堅固に積み重ね状態を保持することができる。
【0034】
なお、脚部26の突出長によって積載用凹状部27の深さが決定され、当該深さが深ければ深いほど嵌め込み状態の保持力が高まるが、本発明では、上述したように、蓋体10については天板部1と側壁部2を平面で構成したこと、及び、蓋体10における連設部3の表面側の曲率範囲Rと、容器本体20における積載用凹状部27の内角部27aの曲率半径R1を一致、若しくは近似させた対応関係とすることによって、堅固に積み重ね状態を保持することができるため、積載用凹状部26の深さを極限まで小さくすることができる。具体的には、基底部22cを基準として脚部26の突出長は5mmあれば十分であり、より短くすることで、容器本体20の成形性を良好にして、生産性の向上に寄与する。
【0035】
また、この実施形態では、脚部26について、上述したように、底板部22の隅部22dへの配置を回避し、意図的に積載用凹状部27は角部(コーナー部)が開放された態様(角部がない態様)としている。当該態様によって、蓋体10の設計自由度が高まり、視認性を優先した構成とすることができるので、より好ましい構成である。これに対して、底板部22の隅部22dに沿って例えばL字状の脚部26を設け、積載用凹状部の角部を形成した場合は、蓋体10の天板部1も積載用凹状部の前記角部に正確に合う形状としなければならず、蓋体10の成形性に制約が生じる。ただし、本発明において、このような構成を完全に排除することまでは予定しておらず、任意に採用すればよい。
【0036】
このように、本発明では、平積みした包装用容器に横からの外力や多少の振動が加わっても堅固に積み重ね状態(積載用凹状部への嵌め込み状態)を保持するのであるが、例えば、消費者が容器を手に取った後などは、正規の状態から位置ズレを起こし、積載用凹状部27の嵌め込みが外れたまま、上段容器の容器本体20が下段容器の蓋体10に斜めの状態となることがある。
図11は、何らかの原因で、積載用凹状部27の嵌め込みが外れて、上段容器の容器本体20が下段容器の蓋体10に斜めの状態となったところを示している。このように上段容器が傾くと、従来の構成では歯止めが効かず、そのまま上段容器が雪崩れてしまうおそれがあった。しかし、本発明によれば、容器本体20のスカート部25の延出長を十分長くとっているため、容器本体20が傾いても、スカート部25の下端縁25aが下段容器の蓋体10の上角部(側壁部2)に引っ掛かり、上段容器が崩落することを防止することができる。特に、蓋体1の連設部3・7を曲率半径が極めて小さい角張った形状に形成しているので、この部分も含めてスカート部4の下端縁25aが引っ掛かりやすくなっている。この場合のスカート部25の延出長は、蓋体10の大きさ等にもよるが、少なくとも脚部26の下端部26aと同じレベル位置とし、より好ましくは、脚部26の下端部26aよりも下方に飛び出る延出長とする。
【0037】
一方、上述のように傾いた上段容器を元に戻すには、
図12に示すように、容器本体20を傾きを解消する方向に少しずつスライドさせればよい(同図(a)・(b))。しかし、容器本体20の収容物の重さ等によっては、途中で下段容器の蓋体10の上角部(連設部3に相当)に上段容器の段差部22bが引っ掛かってしまい、それ以上、上段容器をスライドさせることが難しくなることがある。
【0038】
この点を改良した容器本体40の別実施形態を
図13・14にしたがって説明すると、当該容器本体40においても、底板部41について、内方側を上げ底部42とし、その周囲に段差部43を介して一段低い基底部44を形成した構成は上記実施形態と同じであるが、ここでは、段差部43の近傍に、前記上げ底部42から下向きに突出する、平面視矩形状のリブ45を設けている。より具体的には、リブ45は、上げ底部42の四隅に位置して設けており(
図13)、その突出長H1は段差部43の高さH0とほぼ同じ長さに設定している。
【0039】
このようなリブ45を設けた容器本体40によれば、上段容器が傾いたとしても、下段容器の蓋体10の上角部にリブ45が乗り上げ(
図15(a))、上段容器を傾きが解消する方向にスライドさせる間も、リブ45がガイドとなって下段容器の蓋体10の天板部1を摺接し(
図15(b))、その外側に位置する段差部43が一度も蓋体10の上角部に引っ掛かることなく、上段容器を元の位置にスムーズに戻すことができる(
図15(c))。
【0040】
なお、このリブ45は、上述したガイド機能の他、底板部41を補強する機能も発揮するが、その突出長H1をあまり大きくすると、元ある段差部43とは別に、下段容器の蓋体10の上角部が引っ掛かってしまうような新たな段差部が生じるうえ、容器本体40の成形性にも影響する。このため、本発明では、リブ45は、その突出長H1を段差部43の高さH0以下に設定することとした。
【0041】
この点、
図16に示す変形例では、リブ50について、上げ底部51の隅部52を隅切状に横切り、しかも、その両端を段差部53を介して隣合う長辺側の基底部53aと短辺側の基底部53bそれぞれに連結した平面視直線状に形成している。したがって、当該リブ50を比較的小さい突出長としながらも、上げ底部51の撓みや捻れをより確実に防止する補強機能を発揮する。もちろんリブ50は上述したガイド機能によって、崩れかかった上段容器をスムーズに元の位置に戻すことができるのである。
【0042】
続いて、上記実施形態に係る蓋体10について、高い視認性と透明感を担保しつつ、構成を変更した実施例1~10を
図17~
図26に基づいて説明する。なお、上記実施形態の蓋体10と同じ構成部分については同一の符号を付している。また、実施例同士についても、同一構成部分は同一符号にて説明する。
【実施例0043】
図17は、実施例1に係る蓋体100の斜視図である。この実施例1では、側壁部2同士の連設部7を構成する縦出角部に関して、上記実施形態と同様に、連設部7の下側に平面状の面取り部8を形成すると共に、追加的に、連設部7の上側にも逆三角形からなる平面状の面取り部101を形成している。言い換えれば、この実施例1では、上記実施形態において天板部1の四隅のピン角形状(稜角)を逆三角形に隅切りして面取り部101を形成したものである。したがって、収容物の視認性と全体の透明感について、上記実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0044】
また、この実施例1では、連設部7は上下の面取り部101・8の頂角間に形成されている。言い換えれば、上下の面取り部101・8は、連設部7の高さ方向の長さ分、上下に離間している。したがって、面取り部101・8を側壁部2の四隅に集約することで、蓋体100の強度の向上を図っている。