(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105759
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】冷凍フレンチトースト様食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 15/02 20060101AFI20220707BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20220707BHJP
A23L 3/36 20060101ALN20220707BHJP
【FI】
A21D15/02
A23L27/00 D
A23L3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022087353
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内山 朋子
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は冷凍フレンチトースト様食品の簡便な製造方法を提供することにある。
【解決手段】ベーカリー製品に対し、低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である調味液を含浸させた後、冷凍することにより、冷凍状態でも喫食可能な硬さを有し、かつ、喫食時の調味液の溶け出しが抑制された冷凍フレンチトースト様食品を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である調味液にベーカリー製品を含浸させて冷凍する、冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
【請求項2】
低分子化澱粉が、酸化澱粉及び酸処理澱粉から選ばれる一以上である、請求項1記載の冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
【請求項3】
含浸させる調味液の粘度が1000mPa・s以下である、請求項1記載の冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
【請求項4】
冷凍又は半解凍の状態で喫食される、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
【請求項5】
ベーカリー製品を含浸させて冷凍するための調味液であって、低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である、冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
【請求項6】
低分子化澱粉が、酸化澱粉及び酸処理澱粉から選ばれる一以上である、請求項5記載の冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
【請求項7】
粘度が1000mPa・s以下である、請求項5記載の冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
【請求項8】
冷凍又は半解凍の状態で喫食される、請求項5~7のいずれか一項に記載の冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
【請求項9】
ベーカリー製品に対し、低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である調味液を含浸させて冷凍してなる、冷凍フレンチトースト様食品。
【請求項10】
低分子化澱粉が、酸化澱粉及び酸処理澱粉から選ばれる一以上である、請求項9記載の冷凍フレンチトースト様食品。
【請求項11】
含浸させる調味液の粘度が1000mPa・s以下である、請求項9記載の冷凍フレンチトースト様食品。
【請求項12】
冷凍又は半解凍の状態で喫食される、請求項9~11のいずれか一項に記載の冷凍フレンチトースト様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍状態で喫食可能なフレンチトースト様食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍状態で喫食するベーカリー製品が注目を集めている。一般的に、ベーカリー製品を冷凍した状態でそのまま喫食しようとすると、硬すぎて噛むことができない。そのため、ベーカリー製品に含まれる水分を減らしたり、生地に特定の原料を配合したり、生地の構造を工夫することで凍りにくくすることにより、噛むことができる硬さにする方法がこれまでに提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パン製造時に対粉15質量%以上の油脂を添加し、パンの内相の平均細孔径を1~6mm以下に調整することで、冷凍したままでもさっくりと食べやすいパンを得る方法が開示されている。その他にも、オリゴ糖やワキシー種澱粉に含まれるアミロペクチンを配合した冷凍サンドイッチ用食パン(特許文献2)、中強力粉及び熱凝固性蛋白を配合した冷凍菓子用スポンジケーキ(特許文献3)、ブドウ糖及び大豆蛋白を含有する冷凍喫食用焼成食品(特許文献4)などの冷凍状態で喫食可能なベーカリー製品が提案されている。
【0004】
しかし、これらの冷凍ベーカリー製品は、特定の原料を配合する等により改良した生地を焼成後に冷凍したものであって、フレンチトーストのようにベーカリー製品を調味液に含浸させて冷凍したものではない。そして、そのように調味液を含浸させ高含水とした後に冷凍しても、冷凍状態で喫食できるベーカリー製品はこれまでに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-125750号公報
【特許文献2】特開昭61―293334号公報
【特許文献3】特開平5-219880号公報
【特許文献4】特開2005―87145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷凍フレンチトースト様食品の簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討したところ、ベーカリー製品に対し、低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である調味液を含浸させておくことにより、冷凍しても喫食できるフレンチトースト様食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[12]から構成される。
[1]低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である調味液にベーカリー製品を含浸させて冷凍する、冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
[2]低分子化澱粉が、酸化澱粉及び酸処理澱粉から選ばれる一以上である、上記[1]記載の冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
[3]含浸させる調味液の粘度が1000mPa・s以下である、上記[1]又は[2]記載の冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
[4] 冷凍又は半解凍の状態で喫食される、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の冷凍フレンチトースト様食品の製造方法。
[5]ベーカリー製品を含浸させて冷凍するための調味液であって、低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である、冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
[6]低分子化澱粉が、酸化澱粉及び酸処理澱粉から選ばれる一以上である、上記[5]記載の冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
[7]粘度が1000mPa・s以下である、上記[5]又は[6]記載の冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
[8]冷凍又は半解凍の状態で喫食される、上記[5]~[7]のいずれか一項に記載の冷凍フレンチトースト様食品を製造するための調味液。
[9]ベーカリー製品に対し、低分子化澱粉を含み、かつ、ブリックスが30以上である調味液を含浸させて冷凍してなる、冷凍フレンチトースト様食品。
[10]低分子化澱粉が、酸化澱粉及び酸処理澱粉から選ばれる一以上である、上記[9]記載の冷凍フレンチトースト様食品。
[11]含浸させる調味液の粘度が1000mPa・s以下である、上記[9]又は[10]記載の冷凍フレンチトースト様食品。
[12]冷凍又は半解凍の状態で喫食される、上記[9]~[11]のいずれか一項に記載の冷凍フレンチトースト様食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷凍状態でも喫食可能な硬さを有し、かつ、喫食時の調味液の溶け出しが抑制されたフレンチトースト様食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】各冷凍フレンチトースト様食品の「溶け出し」の評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にいう「フレンチトースト様食品」は、ベーカリー製品に調味液を含浸させた食品をいう。一般的に、フレンチトーストとは、加熱により凝固する卵の特性を利用し、パン全体に卵類、牛乳、糖類を含む調味液を含浸させた後に加熱調理したものである。一方、本発明の「フレンチトースト様食品」は、パンに限らずケーキなどを含むベーカリー製品一般に対して調味液を含浸させたものを指し、その調味液に用いられる材料に限定はなく、調味液含浸後の加熱調理の有無も問わない。
【0012】
本発明で使用する調味液は、Brix(以下、「ブリックス」ともいう。)が30以上であることが好ましく、さらに好ましくは30~50である。ブリックスは、ブリックス糖度計(アタゴ社製)による測定値であり、本発明においては、低分子化澱粉を含むすべての調味液原料を混合し、溶解して得た調味液の測定値である。
【0013】
本発明の調味液は、低分子化澱粉を必須成分として含む。低分子化澱粉とは、澱粉を低分子化したものであり、その低分子化の方法については特に制限はなく、例えば、酸処理、酸化処理、酸分解といった化学的処理のほか酵素処理、加熱処理、粉砕処理、押出処理といった物理的処理が挙げられる。また、これらの処理に加え、さらにα化処理を施してもよい。これらの中での好ましい低分子化の方法は、酸処理又は酸化処理である。
【0014】
酸処理が施された澱粉とは、すなわち酸処理澱粉であり、例えば、原料澱粉を硫酸や塩酸等の無機酸又は有機酸を用いて調製した酸性水溶液中に糊化しない温度で浸漬し、中和、水洗、乾燥して得られる。一方、酸化処理が施された澱粉とは、すなわち酸化澱粉であり、例えば、酸化剤を定法により作用させた酸化型加工澱粉をいう。具体的には、澱粉が糊化しない温度帯、かつ、アルカリ性(pH7~12)下において、澱粉懸濁液に次亜塩素酸ナトリウムを作用させた後、中和、水洗、乾燥して得られる。
【0015】
本発明の調味液における、低分子化澱粉の使用量は特に限定されないが、例えば、調味液100質量部に対して1~30質量部、好ましくは2~25質量部、さらに好ましくは3~20質量部として使用すればよい。
【0016】
本発明の調味液の粘度は、ベーカリー製品に調味液が含浸され得る粘度であれば特に制限されないが、例えば、1000mPa・s以下であればよく、好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは300mPa・s以下であればよい。なお、ここでいう粘度は、BM型粘度計(東機産業社製)、ローターNo.2、10rpm、60秒で測定したときの値をいう。
【0017】
本発明の調味液には、上記の低分子化澱粉のほか、砂糖、水あめなどの糖類、卵類、牛乳、乳製品、バターやマーガリンなどの加工油脂、食塩、醤油などの調味料を含ませてもよい。さらに、乳化剤、安定剤、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、スパイス、酸味料、着色料、着香料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、増粘多糖類等などを含むこともできる。卵類や牛乳を配合すれば、いわゆるフレンチトーストの風味とできるし、また、果汁やカカオ製品等の呈味成分により風味付けをするなど、多様なアレンジが可能である。
【0018】
本発明において、調味液を含浸させる対象となるベーカリー製品については、特に制限されないが、例えば、食パン、バラエティブレッド、菓子パン、フランスパン、イギリスパン、ライ麦パン、デニッシュ・ペストリー、イングリッシュマフィン、グリッシーニ、ブリオッシュ、シュトーレン、パネトーネ、クロワッサン、イーストパイ、ピタ、ナン、蒸しパン、イーストドーナツ、ワッフル、パイ等のパン類や、カステラ、バターケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、パウンドケーキ、サンドケーキ等のケーキ類、その他にも、どら焼き、たい焼き、人形焼、バームクーヘン、ホットケーキ、マフィン、マドレーヌ、クッキー等が挙げられる。
【0019】
本発明の冷凍フレンチトースト様食品及び調味液の構成は、以上のとおりであるが、その製造方法の詳細について、以下に述べる。
【0020】
本発明の調味液は、水に低分子化澱粉とその他の原料を加えて混合し、加熱溶解することによって得られる。加熱の方法は特に制限されず、直火等の加熱のほか、殺菌工程を兼ねた加熱等でもよい。なお、α化処理が施された低分子化澱粉を用いる場合は、加熱せずとも調味液を得ることができる。また、調味液の構成成分によって乳化等が必要な場合は、調味液をバブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により3000~12000rpmで1~5分程度、均質化してもよい。
【0021】
調味液をベーカリー製品に含浸させる工程は、特に限定されず、浸漬、塗布、スプレー等いずれの方法を使用してもよい。例えば、浸漬の場合は、調味液を入れた容器にベーカリー製品を沈めて静置し、含浸させる方法が挙げられる。その際、含浸時間の短縮又は均一に含浸させるため、ベーカリー製品を含浸の途中で反転させるなどしてもよい。
【0022】
ベーカリー製品に含浸させる調味液の量は、少なくともベーカリー製品が浸漬する量を用いればよいが、目的とする食感を得るためにはベーカリー製品に一定量以上の調味液を含浸させることが必要であるため、ベーカリー製品100質量部に対し、100~400質量部、より好ましくは150~380質量部、さらに好ましくは200~350質量部が含まれるように含浸させる。100質量部以下では、調味液がベーカリー製品全体に十分に含浸せず、冷凍状態の喫食が容易でなくなる。
【0023】
調味液をベーカリー製品に含浸させる際の温度については、特に限定されないが、0~100℃の範囲であればよく、好ましくは10~90℃、より好ましくは20~80℃である。また、含浸に必要な時間については特に限定されないが、ベーカリー製品が含浸液に溶け出したり型崩れしない程度の時間、すなわち、1分~24時間程度浸漬すればよい。含浸に必要な時間は、ベーカリー製品の内相の細孔径の大きさ等によって変化するため、ベーカリー製品の種類によって適宜調整され、例えば、一般的な食パンであれば、5分~1時間、フランスパンであれば、5分~24時間、スポンジケーキであれば、5~30分が適当である。
【0024】
上記調味液を含浸させたベーカリー製品は、冷凍されることにより冷凍で喫食できるフレンチトースト様食品となる。冷凍の温度は、0℃以下であれば特に限定されないが、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下である。冷却時間は特に限定されないが、1時間以上であればよく、好ましくは2時間以上である。
【0025】
このようにして得られる本発明の冷凍フレンチトースト様食品は、冷凍庫から取り出した直後より容易に噛み切ることができ、喫食することが可能である。冷凍状態でそのまま喫食することにより、冷菓のような冷涼感と独特の食感を楽しむことができる。また、本発明の冷凍フレンチトースト様食品は、冷凍庫から取り出してしばらくしても調味液が急激に溶解して滴り落ちることがないので、常温や冷蔵庫でしばらく解凍し、半解凍状態としても楽しむことができる。半解凍状態とは、食品表面の一部が溶けはじめ、中心部分が凍っている状態をいう。
【0026】
さらに本発明のフレンチトースト様食品の付加的な利用方法として、加熱して喫食することも可能である。例えば、電子レンジ等で加熱することにより、調味液は適度に溶けるものの、ベーカリー製品内部における保持力が高いため、ジューシーなフレンチトースト様食品として楽しむことができる。
【0027】
以下、実施例を提示して本発明を詳細かつ具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を表す。
【実施例0028】
<試験1:冷凍状態で喫食可能な硬さの検討>
糖類(砂糖、水あめ)、牛乳、マーガリン、加糖卵黄、乳化剤(松谷化学工業(株)製のオクテニルコハク酸澱粉「エマルスターKF」)、バニラエッセンス、ソルビン酸カリウム、クチナシ色素(池田糖化工業社製のナチュラルイエローM-FT-6B)、水を混合し、95℃まで加熱後、ホモジナイザー(プライミクス社製のホモミクサーMARKII)を用いて12000rpmで3分間均質化を行い、調味液を作製した。この際、糖類の配合量を調整することでブリックスの値を調整し、ブリックスが26、31、38、44.5、48.5、50.5の6種類の調味液を得た。これらの調味液をバットに100g入れ、厚さ2cmの3cm角の食パン5切れ(合計約30g)をその中に静置し15分間含浸させた。その後、得られたフレンチトースト様食品を-23℃で24時間冷凍し、冷凍フレンチトースト様食品とした。冷凍フレンチトースト様食品を冷凍庫から取り出した直後の硬さを下記の基準により5段階で評価した。
【0029】
「硬すぎる」 :噛めない硬さ
「硬い」 :噛むことはできるが硬い
「良好」 :噛むことができる好ましい硬さ
「柔らかい」 :硬さがなく柔らかい
「柔らかすぎる」:凝固していない状態の柔らかさ
【0030】
その結果、調味液のブリックスが26の場合は「硬すぎる」一方、ブリックスが31の場合は「硬い」、ブリックスが38、44.5、48.5の場合は「良好」、ブリックスが50.5の場合は「柔らかい」という評価であった。すなわち、ブリックスが30以上の調味液で調製した冷凍フレンチトースト様食品は、冷凍状態でそのまま喫食できることが分かった。
【0031】
ブリックスが30以上の調味液で調製した冷凍フレンチトースト様食品は、冷凍状態でそのまま喫食可能ではあるが、喫食の際、冷凍庫から取り出した直後にあっても調味液の溶け出しが生じるという問題があることがわかったため、調味液に澱粉を添加することを検討することとした。
【0032】
<試験2:調味液の粘度の検討>
ワキシーコーンを原料とするヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(松谷化学工業(株)製「パインエース1」)を水に1%、2%、3%、3.5%又は4%となるように懸濁し、各濃度の澱粉懸濁液を得た(懸濁液1~5)。当該懸濁液をバットに100g入れ、厚さ2cmの3cm角の食パン5切れ(合計約30g)をその中に静置し、30℃で含浸させた。1時間後、澱粉懸濁液の食パンへの含浸の程度を目視により評価した。また、各懸濁液の粘度はBM型粘度計により、30℃、ローターNo.2、10rpm、60秒で測定した。
【0033】
【0034】
懸濁液1~4では食パン全体への十分な含浸がみられた。一方、懸濁液5では、澱粉懸濁液は食パン全体に含浸していない状態であった。
【0035】
<試験3:調味液の溶け出しの検証>
[表2]の各澱粉を含む調味液を含浸させた冷凍フレンチトースト様食品を作製し、解凍したときの調味液の溶け出しを検証することとした。[表2]の各澱粉は、澱粉1(試作品)を除き、すべて松谷化学工業株式会社の製品であり、澱粉1(試作品)は、以下の手順で調製したものである:コーンスターチ500gを600mLの工業用水に懸濁し、攪拌しながら45℃まで加温した後、10%硫酸溶液でpHを1.2に調整した。その後45℃で19時間反応を行い、3%苛性溶液により中和(pH5.5)して反応を終了させた。反応終了後、脱水及び水洗を行い、50℃で乾燥させ、「試作品」を得た。
【0036】
【0037】
<冷凍フレンチトースト様食品の作製>
下の[表3]の調味液の配合に従い、以下の手順に沿って冷凍フレンチトースト様食品を作製した。まず、原料を混合し、95℃まで加熱後、ホモジナイザー(プライミクス社製のホモミクサーMARKII)を用いて12000rpmで3分間均質化を行い、調味液を調製した。次に、調味液をバットに100g入れ、厚さ2cmの3cm角の食パン5切れ(合計約30g)をその中に静置し、1時間含浸させた。試験2の結果から、含浸させる際の調味液の粘度が300mPa・s以下となるように、澱粉の配合量及び含浸時の温度を調整した。澱粉の配合量は下の[表4]に示す。含浸時の温度は30℃とし、30℃における粘度が300mPa・s以下にならなかった澱粉3~5のみ、70℃とした。含浸終了後、得られたフレンチトースト様食品を-23℃で24時間冷凍した。得られた冷凍フレンチトースト様食品を冷凍庫から取り出し、室温(25℃)で1分間静置した後の調味液の溶け出しの有無を目視にて評価した。溶け出しの有無については、
図1に示す評価基準に基づいて評価した。また、調味液の粘度は、食パンに調味液を含浸させた時の温度で試験2と同様の方法により測定した。調味液のブリックスはブリックス糖度計(アタゴ社製)を用いて測定した。
【0038】
【0039】
【0040】
[表4]より、調味液に低分子化澱粉を添加した冷凍フレンチトースト様食品(実施例1~3)は、室温に置いた1分後の調味液の溶け出しがみられず、喫食に適した状態であった。一方、調味液に澱粉を添加しなかった冷凍フレンチトースト様食品(対照)及び調味液に低分子化澱粉以外の澱粉を添加した冷凍フレンチトースト様食品(比較例1~4)は、室温に置いた1分後には調味液の溶け出しが確認され、喫食に適した状態ではなかった。なお、いずれも冷凍状態でそのまま喫食可能である良好な硬さであった。
【0041】
<試験4:低分子化澱粉の配合量の検討>
低分子化澱粉の配合量を検討するために、澱粉1~3を下の[表5]のとおり配合し、試験3と同様の方法で冷凍フレンチトースト様食品を作製して調味液の溶け出しの有無を評価した(実施例4~7)。なお、本試験では、含浸させる際の調味液の粘度が300mPa・s以下となるように含浸時の温度又は調味液の配合を調製することとし、実施例7では、30℃での調味液の粘度が300mPa・s以下にならなかっため、70℃で調味液を含浸させた。また、実施例6では、加熱しても調味液の粘度が300mPa・s以下とならなかったため、調味液中の砂糖の配合量を[表3]記載の12質量部から0質量部へと変更した。
【0042】
【0043】
低分子化澱粉を調味液に対して3~20%添加することにより、冷凍フレンチトースト様食品を室温に置いた1分後の調味液の溶け出しが抑制されていた(実施例1~7)。また、いずれも冷凍状態でそのまま喫食可能である良好な硬さであった。
【0044】
[表6]の配合を用いて試験3と同様の方法で冷凍フレンチトースト様食品を作製したところ、チョコレート風味及びオレンジ風味の冷凍フレンチトースト様食品が得られた。これらはいずれも、冷凍状態でそのまま喫食可能である良好な硬さを有し、かつ喫食時の調味液の溶け出し防止効果が認められた。このように、本発明のフレンチトースト様食品は、調味液を適宜変更することにより様々な風味へのアレンジが可能である。
【0045】