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  • 特開-座席クッションおよびその製法 図1
  • 特開-座席クッションおよびその製法 図2
  • 特開-座席クッションおよびその製法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105788
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】座席クッションおよびその製法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
A47C27/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000325
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】辻井 信也
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB02
3B096AB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高価な裏地材料の使用を減らしながらも、深い窪みを有するクッションを提供する。
【解決手段】表面生地11と背面生地13の間にスポンジ12が内蔵されており、ところどころで窪み3が形成されている座席クッション1の製法である。(a)前記スポンジの上下面に前記表面生地と前記背面生地を貼り合わせる工程、(b)前記背面生地の上から前記窪み形成位置に小片の補強シートを貼り付ける工程、(c)綴じ糸2で前記表面生地、前記スポンジ、前記背面生地、前記補強シートのすべてを閉じ合わせ、閉じ合わせ位置において前記表面生地側に前記窪みを形成させる工程、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面生地(11)と背面生地(13)の間にスポンジ(12)が内蔵されており、ところどころで窪み(3)が形成されている座席クッション(1)の製法であって、
(a)前記スポンジ(12)の上下面に前記表面生地(11)と前記背面生地(13)を貼り合わせる工程、
(b)前記背面生地(13)の上から前記窪み(3)形成位置に小片の補強シート(14)を貼り付ける工程、
(c)綴じ糸(2)で前記表面生地(11)、前記スポンジ(12)、前記背面生地(13)、前記補強シート(14)のすべてを閉じ合わせ、その閉じ合わせ位置において前記表面生地(11)側に前記窪み(3)を形成させる工程、
を有することを特徴とする座席クッションの製法。
【請求項2】
前記表面生地(11)と前記スポンジ(12)の間、及び、前記背面生地(13)と前記スポンジ(12)の間及び前記補強シート(14)と前記背面生地(13)の間、が前記綴じ糸(2)で綴じ合わされる前に接着されて一体化している請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記補強シート(14)と前記背面生地(13)の間がホットメルト材を介して接着される請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ホットメルト材との接着力を高めるために、前記補強シート(14)に前記ホットメルト材との接着能力の高い樹脂をラミネートする請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの方法により形成される座席クッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具や乗物の座席クッションに関し、特にスポンジが内蔵されており、ところどころで窪みが形成されている座席クッションとその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
座席クッションには、弾力性を持たせるためにスポンジを内蔵させたものが多い。その中には、ところどころでクッション表裏の生地をクルミボタンや綴じ糸でしっかりと結び付けてすり鉢状の窪みを形成しているものがある。スポンジの位置がずれるのを防止するとともに、クッションの厚みを印象付けたり、模様を形成したりして、高級感を醸し出すためである。
【0003】
この窪みを形成する方法として特開昭58-19207では、この出願発明1種類とそれ以前の従来技術2種類、合計3種類の方法を紹介している。
【0004】
第1は、特開昭58-19207の図1に示されている従来技術で、表裏からミシン縫いしただけのものである。表裏から綴じ糸で均等に引っ張られるので、窪みの深さはクッション全体の厚みの約半分となる。
【0005】
第2は、特開昭58-19207の図3に示されている従来技術で、裏側に硬い材料の合成樹脂板の裏地を接合したうえでミシン縫いしている。窪みの深さはクッションの厚みの8~9割くらいに達しているように見受けられる。
【0006】
第3は、特開昭58-19207の図2に示されているもので、この出願における発明である。裏側に硬い材料の合成樹脂板の裏地をしないで、それでもなお、深い窪みを有するとしている。具体的には、裏側に接着剤を塗布、又は散布し、熱プレスすることにより、接着剤含侵層を形成している。いわば、接着剤含侵層を合成樹脂板の代用品としているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58-19207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記第1の方法は、浅い窪みのものしか得られない。上記第2の方法は、上記公報が指摘しているように、高価な材料を多く使用するのでコスト高になる。さらに特に乗物では重量を重くする原因となり、敬遠される。上記第3の方法は、実物を見たことはないが、接着剤含侵層の強度不足のために、おそらく第2の方法ほどには深い窪みが得られないであろう。
【0009】
本発明は、上記第2の方法の改良である。すなわち、高価な裏地材料をできるだけ少なく使用し、それでもなお、硬い裏地を使用したときと同じように深い窪みが得られる座席クッションを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の方法は、表面生地と背面生地の間にスポンジが内蔵されており、ところどころで窪みが形成されている座席クッションの製法であって、
(a)前記スポンジの上下面に前記表面生地と前記背面生地を貼り合わせる工程、
(b)前記背面生地の上から前記窪み形成位置に小片の補強シートを貼り付ける工程、
(c)綴じ糸で前記表面生地、前記スポンジ、前記背面生地、前記補強シートのすべてを閉じ合わせ、閉じ合わせ位置において前記表面生地側に前記窪みを形成させる工程、
を有することを特徴とする。上記(a)と(b)の順番は逆転してもよい。
【0011】
好ましくは、前記表面生地と前記スポンジの間、及び、前記背面生地と前記スポンジの間及び補強シートと背面生地の間、が前記綴じ糸で綴じ合わされる前に接着されて一体化している。
【0012】
好ましくは、前記補強シートと前記背面生地の間はホットメルト材を介して接着される。
【0013】
好ましくは、前記ホットメルト材との接着力を高めるために、前記補強シートに前記ホットメルト材との接着能力の高い樹脂をラミネートすることができる。
【0014】
本発明の座席クッションは、上記方法によって得られるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、深い窪みを有する座席クッションが得られる。しかも、その目的で使用する補強シートは小片でよいため、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明の1実施例に係る座席クッションの、(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図である。
図2】同実施例の窪み1か所の、(a)平面図、(b)B-B断面図である。
図3】(a)~(d)は、同実施例の製造過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面に基づき、本発明の1実施例を説明する。
【0018】
図1に示すクッション1は表面(a)を見れば、従来の綴じ糸を使用するタイプとものとほぼ同じ外観であり、図2(a)の拡大図のように十字状に綴じ糸2が配置されて、すり鉢状の窪み3(図2(b))を形成している。背面(b)は、円板状の補強シート14が窪み3の背後に設定されている。
【0019】
図2(b)に示すように、このクッション1は、表面生地11と背面生地13の間にスポンジ12が内蔵されている。したがって、綴じ糸2は、表面生地11、スポンジ12、背面生地13、補強シート14のすべてを閉じ合わせている。
【0020】
硬い補強シート14のために、裏側は綴じ糸2で引っ張られにくいので、窪み3は深く形成される。
【0021】
表面生地11は堅牢であればどのようなものでもよいが、一番目につきやすい部分であるので、天然皮革、合成皮革、合成樹脂、織物、編物などの見栄えのよい高級生地が好ましい。表面生地11とスポンジ12の間は熱溶着によるラミネートが好ましい。
【0022】
スポンジ12としては、例えば、ポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジ、クロロプレンラバー等を用いることができる。スポンジ12の厚みは5~20mm程度が適当である。
【0023】
裏面生地13も堅牢であればどのようなものでもよい。人目に触れにくい部分であるので、通常の合成樹脂、織物、編物が使用可能である。
【0024】
補強シート14は硬く曲げにくいものであればどのようなものでも使用可能である。天然皮革、合成皮革、合成樹脂が使用可能であるが、人目に触れにくい部分であるので、丈夫な合成樹脂が好ましい。形状は円形のほか、楕円形、四角形、多角形、不定形でもよい。大きさはスポンジ12の厚みが大きくなればそれだけ大きいものが必要となるが、円板の場合、直径30~50mmあれば通常の用途に足りる。
【0025】
綴じ糸2は刺繍糸が好ましい。刺繍糸としては、例えば、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸等の合成樹脂糸を使用することができる。
【0026】
このクッションの製造過程は次のとおりである。
【0027】
(a)板状のスポンジ12の上下面に表面生地11と背面生地13を貼り合わせる。
(b)背面生地13の上から窪み形成位置に補強シート14を貼り付ける。このとき、ホットメルト材を介在させることが好ましい。ホットメルト材は補強シートをさらに補強することになるとともに、背面生地13と補強シート14の接着力を高めることができる。必要があれば、補強シート14にホットメルト材と相性のよい樹脂をラミネートすることができる。
(c)綴じ糸2で表面生地11、スポンジ12、背面生地13、補強シート14のすべてを閉じ合わせる。このとき、閉じ合わせる材料に小さな穴をあけ、ジグのピンにセットして縫い合わせることにより、縫製のずれを軽減することができる。
(d)このようにして、クッション1の表面に深い窪み3が形成される。
上記(a)と(b)の順番は逆転してもよい。
【実施例0028】
表面生地11としてポリエステル織物、スポンジ12としてポリウレタンスポンジ、背面生地13としてポリエステルスパンボンド織物、補強シート14としてポリエチレン樹脂板にポリエチレンテレフタレート(PET)をラミネートしたもの、綴じ糸2としてポリエステル樹脂の刺繍糸を使用した。
【0029】
表面生地11とスポンジ12の間、及び、背面生地13とスポンジ12の間は熱溶着によりラミネート加工して付着させた。補強シート14のPETラミネート面と背面生地13はポリウレタン系ホットメルトで熱接着した。補強シートにPETでラミネートした理由は、ポリウレタン系ホットメルトと背面生地14のポリエステルは付着力が弱いので、PETをバインダーとしたのである。
【0030】
綴じ糸2で、表面生地11、スポンジ12、背面生地13、補強シート14のすべてを閉じ合わせたところ、図3(d)で示すような深いすり鉢状の窪み3を有するクッション1が得られた。
【符号の説明】
【0031】
1 クッション
11 表面生地
12 スポンジ
13 背面生地
14 補強シート
2 綴じ糸
3 窪み
図1
図2
図3