(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105789
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】酸性液状調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20220708BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20220708BHJP
A23L 27/50 20160101ALN20220708BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L27/60 A
A23L27/50 E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000327
(22)【出願日】2021-01-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 麻未
(72)【発明者】
【氏名】高馬 綾子
【テーマコード(参考)】
4B039
4B047
【Fターム(参考)】
4B039LB14
4B047LB09
4B047LE01
4B047LG03
4B047LG15
4B047LG21
4B047LG24
4B047LG60
4B047LG62
4B047LP14
(57)【要約】
【課題】本発明は、食用油脂含有量が低い酸性液状調味料において、酢カドを低減し後味に問題のない酸性液状調味料に関する。
【解決手段】本発明は、食用油脂含有量が3質量%未満の酸性液状調味料であって、
酢酸とオリゴ糖を含有し、
前記オリゴ糖は、糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%以上であり、
前記3~5糖のオリゴ糖の酢酸1質量部に対する含有量が、0.1質量部以上6質量部以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂含有量が3質量%未満の酸性液状調味料であって、
酢酸とオリゴ糖を含有し、
前記オリゴ糖は、糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%以上であり、
前記3~5糖のオリゴ糖の酢酸1質量部に対する含有量が、0.1質量部以上6質量部以下であることを特徴とする、
酸性液状調味料。
【請求項2】
酸性液状調味料全体に対する前記オリゴ糖の3糖の含有量が0.15質量%以上であることを特徴とする、
請求項1記載の酸性液状調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油脂含有量が低い酸性液状調味料において、酢カドを低減し後味に問題のない酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりから、ドレッシング等の酸性液状調味料において、食用油脂含有量を低減した製品が求められている。
【0003】
一方で、食用油脂含有量が少ない酸性液状調味料は、食用油脂含有量が多い酸性液状調味料に比べて、刺激的な酸味として感じる「酢カド」を感じやすいという問題があった。さらに酢カドを感じやすいことと合わせて後味が悪くなるという問題があった。
【0004】
上記のような酸性液状調味料の課題に関連して、砂糖やだし汁を加えて酢カドをとることが昔から行われている。近年においても、鰹節抽出物を添加する方法(特許文献1)や、高甘味度甘味料を添加する方法(特許文献2)が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記のような方法では、別の味を加えることによって添加した食品の味がでてしまうことや、本来の食品の味のバランスが崩れるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-278790
【特許文献2】特開平10-215793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、食用油脂含有量が低い酸性液状調味料において、酢カドを低減し後味に問題のない酸性液状調味料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、食用油脂含有量が3質量%未満の酸性液状調味料であって、酢酸とオリゴ糖を含有し、前記オリゴ糖は、糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%以上であり、前記3~5糖のオリゴ糖の酢酸1質量部に対する含有量が、0.1質量部以上6質量部以下であることによって、意外にも、食用油脂含有量が3質量%未満の酸性液状調味料においても、酢カドを低減し後味に問題のない酸性液状調味料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)食用油脂含有量が3質量%未満の酸性液状調味料であって、
酢酸とオリゴ糖を含有し、
前記オリゴ糖は、糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%以上であり、
前記3~5糖のオリゴ糖の酢酸1質量部に対する含有量が、0.1質量部以上6質量部以下であることを特徴とする、
酸性液状調味料、
(2)酸性液状調味料全体に対する前記オリゴ糖の3糖の含有量が0.15質量%以上であることを特徴とする、
(1)記載の酸性液状調味料、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食用油脂含有量が低い酸性液状調味料において、酢カドを低減し後味に問題のない酸性液状調味料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において特に規定しない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
<本発明の特徴>
本発明は、食用油脂含有量が3%未満の酸性液状調味料であって、酢酸とオリゴ糖を含有し、前記オリゴ糖は、糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%以上であり、前記3~5糖のオリゴ糖の酢酸1部に対する含有量が、0.1部以上6部以下であることによって、食用油脂含有量が3%未満の酸性液状調味料においても、酢カドを低減し後味に問題のない酸性液状調味料を提供することに特徴を有する。
本発明の酸性液状調味料は、食用油脂含有量が3%未満であるため、食用油脂を多く含有する酸性液状調味料や乳化状の酸性液状調味料に比べて酢カドを強く感じやすく後味が悪くなるという課題を有しやすい。そこで、特定のオリゴ糖を酢酸に対して特定量含有させることによって、酢カドを低減し後味を改善することができる。
【0013】
<酸性液状調味料>
本発明の酸性液状調味料は、食用油脂含有量が3%未満である酸性の液状調味料である。このような酸性液状調味料としては、ドレッシング、ソース、たれ等が挙げられる。本発明の酸性液状調味料は、pHを4.6以下、好ましくは2.5以上、4.3以下とすることができる。また、本発明の酸性液状調味料は液状であるため、粘度を10Pa・s以下とすることができる。粘度の測定方法は、BH形粘度計を使用し、品温25℃、回転数10rpmの条件で、粘度が0.7Pa・s未満のとき:ローターNo.1、0.7Pa・s以上2.8Pa・s未満のとき:ローターNo.2、2.8Pa・s以上7Pa・s未満のとき:ローターNo.3、7Pa・s以上のとき:ローターNo.4を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0014】
<食用油脂>
本発明の酸性液状調味料は食用油脂の含有量が3%未満である。本発明の酸性液状調味料に用いる食用油脂としては、例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油等の植物油の精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド等の化学的若しくは酵素的処理を施したもの等を使用することができ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酢カドを強く感じやすく後味が悪くなるという課題を奏しやすい観点から、食用油脂の含有量の上限値を、好ましくは2%以下、1%以下、とすることができる。また、本発明の酸性液状調味料は、ドレッシング類の表示に関する公正競争規約に認められている「ノンオイルドレッシング」とすることができる。
【0015】
<酢酸>
本発明の酸性液状調味料は、酢酸を含有する。酢酸を含有させる方法は、特に限定されないが、アルコール酢、米酢や黒酢等の穀物酢、果実酢等の一般的な食酢や、酢酸及び酢酸を希釈したもの等を用いることができる。酢カドを強く感じやすく後味が悪くなるという課題を奏しやすい観点から、本発明の酸性液状調味料における酢酸の含有量は0.5%以上、また2%以下とすることができる。さらに下限値を0.6%以上、上限値を1.2%以下とすることができる。
【0016】
<オリゴ糖>
本発明の酸性液状調味料は、オリゴ糖を含有する。本発明において、「オリゴ糖」とは、ブドウ糖、果糖等の単糖類の分子が直鎖状あるいは分岐状に10個以下結合した、少糖類と称される糖類である。なお、本発明のオリゴ糖には、還元型オリゴ糖である糖アルコールは含まれない。
【0017】
本発明の酸性液状調味料に用いるオリゴ糖は、糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%以上である。糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%未満であるオリゴ糖を用いて酸性液状調味料を製すると、酢カドを十分に低減し後味を改善することができないので好ましくない。さらに酢カドを低減し後味を改善することができる観点から、本発明の酸性液状調味料に用いるオリゴ糖は、糖組成において3~5糖のオリゴ糖の含有量を好ましくは45%以上、48%以上とすることができる。
【0018】
<3~5糖のオリゴ糖>
本発明の酸性液状調味料に用いるオリゴ糖に含有される3~5糖のオリゴ糖は、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース等のマルトオリゴ糖や、1-ケストース、ニストース、1-フラクトフラノシルニストース等のフラクトオリゴ糖や、ラクトスクロースが挙げられる。これらのオリゴ糖を上述の糖組成になるように調製すればいずれのものを組み合わせて用いても良いが、酢カドを低減し後味を改善することができる観点から、3糖のオリゴ糖を酸性液状調味料全体の0.15%以上含有することが好ましい。さらに3糖のオリゴ糖の酸性液状調味料全体における含有量は、下限値を好ましくは0.3%以上、0.5%以上、上限値を好ましくは6%以下、5%以下、4%以下、3%以下とすることができる。
【0019】
<3糖のオリゴ糖>
本発明の酸性液状調味料に含有される3糖のオリゴ糖としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、1-ケストース、ラクトスクロース等が挙げられるが、酢カドを低減し後味を改善することができる観点から、ラクトスクロースまたは1-ケストースを少なくとも含有することが好ましい。さらに好ましくは、ラクトスクロースの含有量を本発明の酸性液状調味料全体の0.1%以上、0.3%以上、また6%以下、5%以下、4%以下とすることができる。
【0020】
<3~5糖のオリゴ糖における3糖の割合>
本発明の酸性液状調味料に含有されるオリゴ糖は、酢カドを低減し後味を改善することができる観点から、糖組成において3~5糖のオリゴ糖の内3糖の割合が50%以上であることが好ましい。また、同様の理由で、糖組成において3~5糖のオリゴ糖の内ラクトスクロースの割合が50%以上であることが好ましい。さらに3~5糖のオリゴ糖の内のラクトスクロースの割合を60%以上、70%以上、80%以上とすることができる。
【0021】
<3~5糖のオリゴ糖の酢酸1部に対する含有量>
本発明の酸性液状調味料において、3~5糖のオリゴ糖の酢酸1部に対する含有量は、0.1部以上6部以下である。3~5糖のオリゴ糖の酢酸1部に対する含有量が前記範囲内であることによって、酢カドを低減し後味を改善することができる。さらに下限値を好ましくは0.3%以上、0.5%以上、上限値を好ましくは5%以下、4%以下、3%以下とすることができる。
【0022】
<3~5糖のオリゴ糖の食塩1部に対する含有量>
本発明の酸性液状調味料において、3~5糖のオリゴ糖の食塩1部に対する含有量は、0.1部以上4.5部以下とすることができる。3~5糖のオリゴ糖の食塩1部に対する含有量を前記範囲内とすることによって、酢カドと合わせて塩カドを低減することができるので好適である。さらに3~5糖のオリゴ糖の食塩1部に対する含有量の下限値を0.2部以上、上限値を4部以下、3部以下、2部以下とすることができる。
【0023】
<3~5糖のオリゴ糖の含有量>
本発明の酸性液状調味料全体における3~5糖のオリゴ糖の含有量は、酢カドを低減し後味を改善することができる観点から、0.1%以上7%以下とすることができる。また、下限値を0.2%以上、0.3%以上、上限値を6%以下、5%以下、4%以下とすることができる。
【0024】
<他の原料>
本発明の酸性液状調味料には、本発明の効果を損なわない範囲で種々の原料を適宜選択し、配合することができる。具体的には、例えば、醤油、砂糖、食塩、核酸系旨味調味料、柑橘果汁、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、各種ペプチド、胡椒、山椒等の香辛料、香料、色素などが挙げられる。
【0025】
<酸性液状調味料の製造方法>
次に、本発明の酸性液状調味料の代表的な製造方法について下記に記載するが、これらは本発明を特に限定するものではない。
具体的には、撹拌タンクに、酢酸、オリゴ糖、清水等を投入して均一に混合することにより本発明の酸性液状調味料を得ることができる。
【0026】
以下、本発明について、実施例、比較例、及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例0027】
[実施例1~8、比較例1~3]
表1に記載の配合に基づき、実施例1~8、比較例1~3の酸性液状調味料を調製した。具体的には、まず、撹拌羽付きタンクに、水、食酢(酸度4%)、醤油、食塩、砂糖、オリゴ糖、キサンタンガム、グルタミン酸ナトリウムを投入し、均一に混合することによって本発明の酸性液状調味料を調製した。
各酸性液状調味料の調味料全体に対する、3糖のオリゴ糖の割合、ラクトスクロースの割合、3~5糖のオリゴ糖の割合、酢酸の割合、3~5糖のオリゴ糖の酢酸1部に対する含有量、3~5糖のオリゴ糖の食塩1部に対する含有量も表1に示した。実施例1~8の酸性液状調味料のpHは全て2.5以上4.3以下、粘度は全て10Pa・s以下であった。
なお、使用したオリゴ糖の固形分及び糖組成については表2に示す通りであった。
【0028】
【0029】
【0030】
[試験例]
実施例1~8及び比較例1~3の酸性液状調味料について風味試験を行った。風味試験は下記の評価基準にしたがって複数の訓練されたパネルによって行った。評価が3点以上であれば、良好な結果であると言える。評価結果を表3に示した。
【0031】
<評価基準>(酢カドと後味)
5:酢カドが低減されている、後味にも問題がない
4:わずかに酢カドを感じるが問題ない程度に低減されている、後味にも問題がない
3:やや酢カドを感じるが問題ない程度に低減されている、後味にも問題がない
2:酢カドが低減されていない又は後味に問題がある
1:著しく酢カド又は酸味を感じる、又は後味に酢カドを感じ問題がある
<評価基準>(塩カドと後味)
5:塩カドが低減されている、後味にも問題がない
4:わずかに塩カドを感じるが問題ない程度に低減されている、後味にも問題がない
3:やや塩カドを感じるが問題ない程度に低減されている、後味にも問題がない
2:塩カドが低減されていない又は後味に問題がある
1:著しく塩カド又は塩味を感じる、又は後味に塩カドを感じ問題がある
【0032】
【0033】
表3の結果より、糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%以上であるオリゴ糖(オリゴ糖A、B、C)を含有し、3~5糖のオリゴ糖の酢酸1部に対する含有量が、0.1部以上6部以下である実施例1~8の酸性液状調味料は、酢カドが低減され後味にも問題が無かった。また、塩カドについても低減されており好ましい結果となった。一方、オリゴ糖を含有していない比較例1の酸性液状調味料は著しく酸味を感じ、酸味に影響され塩味も強く感じ、好ましいものではなかった。糖組成において3~5糖のオリゴ糖が40%未満であるオリゴ糖(オリゴ糖D)を用いた比較例2の酸性液状調味料は、後味に酢カドや塩カドを感じ、好ましいものではなかった。3~5糖のオリゴ糖の酢酸1部に対する含有量が6部を超える比較例3の酸性液状調味料は、先味から後味にかけて全体に甘みが強く好ましいものではなかった。