(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105796
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000340
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】301032735
【氏名又は名称】プラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 安宏
(57)【要約】
【課題】転写層の開始位置の位置ズレが生じ難い転写テープの転写具を提供する。
【解決手段】転写具1は、未使用の転写テープTが巻装される供給ボビン53と、使用済みの転写テープTが巻装される巻取ボビン54と、転写テープTの転写層を被転写面に転写する転写部31と、供給ボビン53の送り方向の回転又は巻取ボビン54の巻取方向の回転のうち、何れか一方の回転規制が可能な回転規制装置100と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未使用の転写テープが巻装される供給ボビンと、
使用済みの前記転写テープが巻装される巻取ボビンと、
前記転写テープの転写層を被転写面に転写する転写部と、
前記供給ボビンの送り方向の回転又は前記巻取ボビンの巻取方向の回転のうち、何れか一方の回転規制が可能な回転規制装置と、
を有することを特徴とする転写具。
【請求項2】
前記回転規制装置は、ギヤの係合により前記回転規制を行うことを特徴とする請求項1に記載の転写具。
【請求項3】
前記供給ボビン、前記巻取ボビン、前記転写部及び前記回転規制装置を収容する上ケースと、
前記被転写面が載置される被転写部を備える下ケースと、
を有し、
前記上ケースと前記下ケースは、回動自在に連結されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転写具。
【請求項4】
前記回転規制装置は、前記転写部を、前記上ケースと前記下ケースの接近・離間に伴って前記被転写部に接近・離間させる転写部材と、前記転写部材に形成される係合爪と、前記供給ボビンに設けられて前記係合爪と係合可能に形成されるギヤと、を有し、
前記供給ボビンは、前記転写部材に隣接して配置されることを特徴とする請求項3に記載の転写具。
【請求項5】
前記転写部材は、付勢部材により前記上ケースに対して前記転写部と反対方向に付勢され、前記上ケースは、前記転写部材と当接可能な転写部材当接部を有することを特徴とする請求項4に記載の転写具。
【請求項6】
さらに、前記上ケースと前記下ケースとが離間するときには前記巻取ボビンに設けられた巻取ギヤに係合して前記巻取ボビンを駆動して使用済みの前記転写テープを巻き取る駆動ギヤを有することを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れかに記載の転写具。
【請求項7】
さらに、
前記駆動ギヤを所定範囲にガイドするガイド部と、
前記上ケースに設けられ、前記駆動ギヤと係合するラックギヤと、
を有することを特徴とする請求項6に記載の転写具。
【請求項8】
前記巻取ボビンは、前記転写部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写テープを供給する転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、供給ボビンと巻取ボビンを備えて、転写ヘッドに転写テープを供給して転写作業を行うことができる転写具が開示されている。例えば、特許文献1に開示される転写具は、糊剤を転写テープの転写層に備え、スタンプのようにも使用することができる粘着転写具である。この粘着転写具は、供給ボビンと巻取ボビンを有し、供給ボビンの回転力を巻取ボビンに伝達する巻取機構を有する。スタンプとして使用される場合には、作動プレートの押し板部を被転写面に当接させて後方に移動することで、作動プレートに設けられるラチェット爪で供給ボビンが回転し、転写ヘッドが被転写面に当接し、スタンプのように粘着剤を転写することができる。ライン状に転写操作を行う場合には、被転写面に押し板部が当接して後方に移動した状態で転写ヘッドを被転写面に当接させて転写ヘッドを移動させることにより、行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粘着転写具では、転写ヘッドを被転写面から離間させる際に、被転写面に転写された粘着剤が転写テープを僅かに引っ張ってしまうことがある。すると、次に使用する場合に、転写テープにおいて粘着剤が塗布される転写開始位置が転写ヘッドよりも巻取ボビン側に位置してしまうことがあり、粘着剤が転写テープに残存し、次に使用するときに転写層の開始位置がズレてしまうことがある。
【0005】
本発明は、転写層の開始位置の位置ズレが生じ難い転写具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る転写具は、未使用の転写テープが巻装される供給ボビンと、使用済みの前記転写テープが巻装される巻取ボビンと、前記転写テープの転写層を被転写面に転写する転写部と、前記供給ボビンの送り方向の回転又は前記巻取ボビンの巻取方向の回転のうち、何れか一方の回転規制が可能な回転規制装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転写層の開始位置の位置ズレが生じ難い転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る転写具の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る転写具を左前側から見た分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る転写具を右前側から見た分解斜視図であり、前ケースのみ右半分を切断した断面斜視図としている。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る転写具のリフィールケースを示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は右半分を切断した断面斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る転写具のリフィールにおける左側板を省略した状態を左側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る転写具のリフィールにおける左側板を省略し、転写部材を分離して示して右側から見た斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る転写具の定常状態を示す、左半分を切断した断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る転写具の転写操作における上ケースの下降途中の状態を示す、左半分を切断した断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る転写具の転写時の状態を示す、左半分を切断した断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る転写具の転写操作における上ケースの上昇途中の状態を示す、左半分を切断した断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る転写具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を
図1~
図10に基づいて説明する。
図1に示す転写具1は、粘着剤からなる転写層を備える転写テープを備えて、口開き状に開いている側の被転写部23に被転写面を備える紙等を載置してステープラのように操作することで、スタンプ形式で転写層を被転写面に転写することができる。なお、以下の説明では、口開き状に開いている側(被転写部23側)を前、その反対側を後、後から前を見たときの左側を左、右側を右、
図1の上側を上、下側を下とする。ここで
図1は、
図7と同様の定常状態(初期状態)の転写具1を示す。
【0010】
転写具1は、略シェル状の上ケース10と、下ケース20とを有する。上ケース10は、左右方向の幅寸法に比して上下方向の高さ寸法が大きく、前後方向は長尺状に形成される。
図2及び
図3にも示すように、上ケース10は、上ケース10の前部に設けられる前ケース11を有する。上ケース10の後側(前ケース11の後側)は、左ケース12と右ケース13が組み合わされて形成される。
【0011】
前ケース11は、左右の側板11aと、前板11bと、を有して後方及び下方を開放して形成される。前ケース11は、左右の側板11aから後方に向けて延設される被ガイド板11dを有する。被ガイド板11dは、平面を左右方向に向けて板状に設けられる。被ガイド板11dの上下の縁部は、左ケース12及び右ケース13の内面にリブ状に設けられる上下一組のガイド部12g,13gにより前後方向に案内される。転写具1は、前ケース11を前後方向に移動させることで、後述の転写部材当接部11cと当接受部37の非当接・当接を切り替えて、転写操作のロック・アンロック(転写操作の不使用・使用)の切り替えを行うことができる。
【0012】
前ケース11は、
図3に示すように、前板11bの内面側から後方に向けて平板状に転写部材当接部11cが設けられる。転写部材当接部11cの左右の縁部には、補強のためのリブ11c1が上方に立設する。転写部材当接部11c及び左右のリブ11c1は、後側から見て、開口を上側にした略コ字状に形成される。前板11bの下端は、内側に突出する鉤状の被係止突起11b1が設けられる。
【0013】
図2及び
図3に示すように、左ケース12は、左側板12aと、上板12bとを有する。左ケース12の後下の内面には、回動ピン12cが右方に向けて立設する。また、左ケース12の左側板12aの内面の後方のやや上側及び略中央の上側には、組立用のピン12dが右方に向けて立設する。左ケース12の左側板12aの内面下方側には、略円弧状であって、歯を後方に向けたラックギヤ12eが設けられる。
【0014】
右ケース13は、右側板13aと、上板13bとを有する。右ケース13の右側板13aの後下の内面には、略円筒状の回動軸13cが左方に向けて立設する。左ケース12の回動ピン12cは、回動軸13cよりも十分に短く形成されて、回動軸13cの円筒状における開口部に挿入される。これにより、上ケース10は、回動軸13cを回動軸として一体的に回動する。
【0015】
また、右ケース13の内面上方には、2本のボス13dが左方に向けて立設する。ボス13dには、左ケース12のピン12dが挿入され、上ケース10が組み立てられる。また、右ケース13の上板13bの内面には、ばね受面13b1が設けられる。ばね受面13b1は、付勢部材であるコイルバネ14の受け面とされる。コイルバネ14は、後述のリフィール50の受面部51a1と上ケース10(ばね受面13b1)との間に設けられ、両者を離間する方向に付勢する。
【0016】
下ケース20は、下ケース本体21と、リフィールケース22とを有する。下ケース本体21は、前後方向に長く左右方向の幅は上ケース10と略同一とされる底板21aと、底板21aの左側縁及び右側縁から立設する左側板21b及び右側板21cとを有する。左側板21b及び右側板21cは、前端縁部21b1,21c1が底板21aの前端よりも後方に位置して、底板21aとは鋭角状に接続している。換言すれば、左側板21b、右側板21cの前端縁部21b1,21c1は、上方から下方に亘って後方に向かって傾斜する。この傾斜により、前端縁部21b1,21c1は、被転写部23に差し込まれた被転写面を有する紙等をガイドしたり、後方への移動規制をしたりすることができる。なお、底板21aの前端の左右にそれぞれ設けられる突起部21a1も、被転写面を有する紙等をガイドしたり、前方への移動を規制したりすることができる。
【0017】
底板21aの前端側の上面上には、被転写部23が設けられる。被転写部23は、シリコンゴムの板状の弾性部材により形成される。これにより、転写具1を空打ち(紙等を載置しないで転写操作を行うこと)した場合であっても、被転写部23に転写テープの転写層(粘着剤)が貼りついてしまうことを防止できる。また、左側板21b及び右側板21cの前端縁部21b1,21c1の近傍の後方側には、後述のリフィールケース22の係合突起22aと係合する切欠部21b2,21c2が形成される。左側板21bの後端部近傍の内面からは、略円筒状の回動軸21b3が右方に向けて立設する。
図3に示すように、右側板21cの後部は、回動軸21b3の先端部が露出するように切り欠かれている。回動軸21b3には、上ケース10(右ケース13)の回動軸13cが挿入される。また、回動軸21b3は、後述のリフィールケース22の回動軸22gに挿入される。回動軸13cの基部に設けられる4つのリブ13c1は、組み合わされた回動軸21b3,22gの端面と摺接する。
【0018】
リフィールケース22は、左側板22b、右側板22c、前板22d、後板22eを有する。リフィールケース22は、上側が開口されて、該開口からリフィール50が挿入され配置される。前板22dの上端には、前方に鉤状に突出する係止突起22d1が左右方向にやや長く形成される。左側板22b、右側板22cの前後方向略中央の上側には孔部22b1,22c1が設けられ、後述のリフィール50の左右の側面に設けられる突起50aが挿入され係合される。
【0019】
図4(b)に示すように、左側板22b及び右側板22c間の下方には、左側板22b及び右側板22cに亘って、屈曲する板状にガイド板22fが設けられる。リフィールケース22の底部は、ガイド板22fの前側及び後側が大きく開口されている。ガイド板22fの前側のガイド前板22f1は、前板22dの下側の屈曲した屈曲前板部22d2と共に、両者間の寸法が下方に向けて小さくなるように傾斜して開口部22hが形成される。
【0020】
図4(a)、
図4(b)に示すように、リフィールケース22の後方下部には、円筒状の回動軸22gが設けられる。回動軸22gには、下ケース本体21の回動軸21b3が挿入される(
図3参照)。左側板22bの後方上側には、上側が開放されるように略半円状の切欠部22b2が設けられる。切欠部22b2には、リフィールケース22に載置されるリフィール50の巻取ギヤ55(
図2参照)が配置される。
【0021】
切欠部22b2の前下方側の左側板22bには、長孔状のガイド部22b3が設けられる。ガイド部22b3は、前下側から後上側に向けて傾斜して形成される。ガイド部22b3には、駆動ギヤ24が設けられる。駆動ギヤ24は、軸部24aの中央がすり割りされて、軸部24aの端部に設けられる2つの係止突起24a1が左側板22bの内面と係合して駆動ギヤ24は、ガイド部22b3から抜け止めされる。従って、ガイド部22b3は、駆動ギヤ24を所定範囲でガイドする。なお、左側板22bの外面におけるガイド部22b3の外周に環状のリブ24b4を設けて、左側板22bの外面と駆動ギヤ24とが摺接する領域を小さくしつつ、適切に駆動ギヤ24をガイドすることができる。
【0022】
図2、
図3に示すように、リフィール50は、平面を左右方向に向けた略板状であって、互いに対向して配置される左側板51、右側板52を有する。左側板51には、左側板51の外周縁から右方に向けて、略C環状板状の外周板51aが立設する。外周板51aは、平板状の上下の板部と、後側で上下の板部を接続する湾曲部を有する。外周板51aの上側の面には、コイルバネ14の下側を受ける受面部51a1が設けられる。受面部51a1は、法線方向が前上方向とされる傾斜面状に形成される。外周板51aの下側の面には、先端部に下向きであって断面円弧状の突起部を有する板バネ51a2が設けられる。板バネ51a2は、外周板51a(左側板51)と一体的に設けられる。
【0023】
左側板51を省略して示す
図5のリフィール50に示すように、右側板52には、右側板52の内面から左方に向けて立設する前側の軸部52aに回転自在に供給ボビン53が設けられ、同様に立設する後側の軸部52bには回転自在に巻取ボビン54が設けられる。供給ボビン53には、未使用の転写テープTが巻装される。巻取ボビン54には、使用済みの転写テープTが巻装される。供給ボビン53の左右の鍔部の外周には、それぞれ環状にラチェットギヤ53a,53bが形成される。なお、左右のラチェットギヤ53a,53bは逆向きに形成され、右側のラチェットギヤ53bは図示しないラチェット爪と係合して逆転防止構造を形成する。また、ラチェットギヤ53aは、他の形式の歯車の歯としてもよい。
【0024】
巻取ボビン54の左側面の軸心部には、平歯車とされる巻取ギヤ55が突出して形成される。一方、巻取ボビン54の右側面の軸芯部周りには、
図6に示すように、内歯のラチェットギヤ54aが設けられる。右側板52には、先端部にラチェット爪を備える円弧状の板バネであるラチェット部52cが形成される。ラチェット部52cのラチェット爪はラチェットギヤ54aに係合し、巻取ボビン54の逆転防止機構を形成する。
【0025】
図5に示すように、右側板52の内面の略中央の上側及び下側にそれぞれ左方に向けて立設する2本のボス52hは、左側板51の組付け時に、図示しない左側板51の内面から右方に向けて立設するピンが挿入され嵌合する。
【0026】
図5及び
図6に示すように、右側板52における供給ボビン53の前方には、転写部材30が設けられる。転写部材30は、外形が略四角柱状に形成される。転写部材30の上端部は、上面にて転写部材当接部11cが当接する当接受部37とされる。転写部材30は、下端に転写部31を有する。転写部31は、ウレタンゴム等の板状の弾性部材により形成される。なお、転写部31は、弾性部材ではなく、硬質樹脂材料等とすることもできる。転写部材30の上方は、前後方向に矩形に貫通する貫通孔32が形成される。
【0027】
貫通孔32の下方は、受板33を介して、左右方向に貫通する貫通孔34が形成される。
図6に示すように、受板33は、右側から切欠部33aが形成される。また、
図5に示すように、転写部材30の後側には、突起状に爪部35(係合爪)が形成される。具体的には、爪部35は、貫通孔34の中央よりもやや上方に対応する、左側面と後面とが交わる角部に形成される。
【0028】
右側板52には、転写部材30の前側及び後側にFガイド板52dとBガイド板52eが設けられる。Fガイド板52d及びBガイド板52eは、それぞれ前後方向に平面部を配置するように右側板52から左方に向けて立設する。Fガイド板52dは、Bガイド板52eに比べて上下方向が十分に長く形成される。転写部材30は、主に貫通孔34に対応する前面及び後面がFガイド板52d及びBガイド板52eと摺接し、上下方向にガイドされる。
【0029】
また、右側板52におけるFガイド板52dとBガイド板52eの間には、受板52fが設けられる。受板52fは、平面部を上下方向に向けて配置するように右側板52から左方に向けて立設する。受板52fの上面には、支持棒52f1が立設する。支持棒52f1には、上端から右方に突出するように鉤状部52f2が形成される。受板52fの上面と鉤状部52f2との間には、コイルバネ56が設けられる。コイルバネ56は、自然長又はやや圧縮された状態で配置される。
【0030】
受板52f、支持棒52f1(鉤状部52f2)、コイルバネ56は、転写部材30の貫通孔34に挿入され配置される。ここで、受板33の切欠部33aは、鉤状部52f2を含む支持棒52f1が挿通可能に形成される。従って、転写部材30が下方に移動する際には、コイルバネ56は、上端を受板33の下面に当接して支持される。なお、コイルバネ56の下端は受板52fの上面で支持される。このようにして、転写部材30は、付勢部材であるコイルバネ56により上方に付勢される。
【0031】
また、転写部材30の貫通孔34近傍における左側面及び右側面には、ガイド突起36a,36bが形成される。左側のガイド突起36aは、
図2に示すように、左側板51の上下に長いスリット状のガイド溝51bに案内され、右側のガイド突起36bは、
図3、
図6に示すように、右側板52の上下に長い長矩形孔状のガイド孔52gに案内される。
【0032】
供給ボビン53の上側から繰り出される転写テープTは、貫通孔32に挿通されて、Fガイド板52dの前面側を通過して、転写部31の下面側に配置される。使用済みの転写テープTは、転写部31の下側から供給ボビン53の下方を通って巻取ボビン54の下側から巻取ボビン54に巻装される。
【0033】
このように形成されるリフィール50は、
図7~
図10に示すように、リフィールケース22に収納される。このとき、
図2及び
図3に示すリフィール50の左右の突起50aがリフィールケース22の孔部22b1,22c1に係合する。また、リフィール50をリフィールケース22に収納したときには、リフィール50の板バネ51a2はリフィールケース22の下方から突出する。また、上ケース10の回動軸13c周りに同軸に回動軸21b3及び回動軸22gが配置されて、上ケース10と下ケース20(リフィールケース22及び下ケース本体21)が同軸に回動自在に連結される。そして、後述する回転規制装置100は、転写部材当接部11c、係合爪である爪部35及び転写部31を含む転写部材30、付勢部材としてのコイルバネ56及び受板52f、ラチェットギヤ53aを含む。
【0034】
転写具1の使用時の動作について、
図7~
図10を用いて説明する。
図7に示す定常状態においては、上ケース10と下ケース20(リフィール50及びリフィールケース22、及び下ケース本体21)は、コイルバネ14により、回動軸13c周りに、上ケース10と下ケース20の口開き状の端部が離間する方向に付勢される。上ケース10と下ケース20の口開き状の端部が離間する方向への移動は、上ケース10(前ケース11)の被係止突起11b1と、リフィールケース22の前板22dの係止突起22d1とが係止することで規制される。
【0035】
また、リフィールケース22と下ケース本体21は、板バネ51a2の先端が下ケース本体21の底板21aの上面に当接することで、互いを離間する方向に付勢される。リフィールケース22と下ケース本体21が離間する方向への移動はリフィールケース22の係合突起22aが下ケース本体21の切欠部21b2,21c2(
図1~
図3参照)の係合により規制される。
【0036】
転写部材30は、コイルバネ56により、リフィール50に対して上方に付勢されている。転写部材30におけるリフィール50に対する上方への移動は、ガイド突起36a,36bがガイド溝51b、ガイド孔52g(
図1~
図3参照)の上端と当接することにより規制される。
【0037】
また、
図7の定常状態においては、爪部35は、供給ボビン53のラチェットギヤ53aと係合する。従って、定常状態においては、供給ボビン53は、少なくとも転写テープTの繰り出し方向(
図7において反時計回り方向)について回転規制される。また、駆動ギヤ24は、上ケース10の上方への付勢に伴ってラックギヤ12eによりガイド部22b3の上端に位置しつつ、巻取ギヤ55と歯合している。また、駆動ギヤ24は、ラックギヤ12eの下方側のラック歯と歯合している。
【0038】
次に、被転写部23に、転写面を有する紙等を載置して、上ケース10と下ケース20とを、ホッチキスを操作する要領で、コイルバネ14及び板バネ51a2の付勢力に抗して、口開きを閉じるように上ケース10と下ケース20とが回動軸13c周りに回動して両者が接近するようにして転写操作する。
【0039】
ここで、板バネ51a2(第2付勢部材)は、コイルバネ14(第1付勢部材)よりもばね定数が小さく設定される。従って、上ケース10と下ケース20とを閉じるように操作すると、当初は上ケース10はリフィールケース22(リフィール50)に対しては移動せず、上ケース10(リフィール50及びリフィールケース22)と下ケース本体21が板バネ51a2の付勢力に抗して接近するように移動する。上ケース10と下ケース本体21とが接近する方向の移動は、リフィールケース22の開口部22hが被転写部23と当接するまで行われる。なおこのとき、開口部22hは、転写面を備える紙等を被転写部23との間で挟持する。
【0040】
開口部22hの被転写部23への当接後、さらに上ケース10と下ケース20とを閉じるように操作すると、
図8に示すように、上ケース10はコイルバネ14の付勢力に抗してリフィールケース22(リフィール50)に対して下方に移動する。上ケース10の下方への移動に伴って、ラックギヤ12eも下方に移動する。すると、ラックギヤ12eと歯合する駆動ギヤ24が、回転することなくガイド部22b3に沿って軸部24aが滑るように下方に移動する。すると、駆動ギヤ24(軸部24a)は、ガイド部22b3の下端に位置する。このとき、駆動ギヤ24は、巻取ギヤ55との歯合が解除されている。
【0041】
図8の状態から、さらにコイルバネ14の付勢力に抗して上ケース10と下ケース20とを閉じるように操作すると、
図9に示すように、転写部材当接部11cが当接受部37の上面に当接して、コイルバネ56の付勢力に抗して転写部材30が下方に移動する。転写部材30が下方に移動するとき、爪部35とラチェットギヤ53aとの係合が解除され、供給ボビン53は回転自在となる。ここで、巻取ボビン54は逆転防止機構を備えるので、巻取方向と逆方向は回転規制される。従って、転写部材30の下降に伴って、転写部31により、転写部31の下面側に配置される転写テープTが引っ張られて、未使用の転写テープTが供給ボビン53から繰り出される。転写部材30の転写部31が、転写テープTと被転写面を備える紙等を挟むようにして被転写部23と当接すると、転写テープTの転写層が被転写面に転写される。
【0042】
また、
図8の状態からさらに上ケース10と下ケース20を閉じるように操作すると、駆動ギヤ24は、上ケース10の下降に伴って下方に移動するラックギヤ12eにより、空回りすることとなる。転写部31と被転写部23が当接したとき、駆動ギヤ24はラックギヤ12eの上側のラック歯と歯合している。
【0043】
図9の状態(転写状態)から上ケース10と下ケース20とを把持する手を緩めると、当初は下ケース本体21はリフィールケース22(リフィール50)に対して移動せず、上ケース10がリフィールケース22(リフィール50)に対して上方に移動する。すると、転写部材当接部11cの上昇に伴って転写部材30がコイルバネ56の付勢力によりリフィールケース22(リフィール50)に対して上方に移動する。転写部材30がリフィールケース22(リフィール50)に対して上方に移動すると、
図10に示すように、爪部35はラチェットギヤ53aと歯合する。
【0044】
また、
図9の状態から上ケース10と下ケース20とを把持する手を緩めると、ラックギヤ12eも上ケース10の上方への移動に応じて上方に移動する。すると、駆動ギヤ24は回転することなくガイド部22b3に沿って上方に移動し、
図10に示すように、駆動ギヤ24が巻取ギヤ55と歯合する。このように、爪部35がラチェットギヤ53aと歯合するタイミングとほぼ同時に駆動ギヤ24は巻取ギヤ55と歯合する。
【0045】
なお、
図9の状態から
図10の状態となる迄の間は、転写面を有する紙等はリフィールケース22の開口部22hにて被転写部23との間で挟持して固定される。転写部31の下側の転写テープTは、転写面に転写された転写層と共に転写面上に配置されている。
【0046】
図10の状態からさらに上ケース10が上方に移動すると、上ケース10の移動に応じてラックギヤ12eも上方に移動する。ここで、駆動ギヤ24は巻取ギヤ55と歯合しているので、ラックギヤ12eにより駆動ギヤ24が駆動して回転(
図10において時計回り)し、巻取ギヤ55も巻取方向(
図10において反時計回り)に回転する。このようにして、転写部材30の上昇により転写部31と離間した下方に位置する使用済みの転写テープTが巻取ボビン54により巻き取られる。巻取ボビン54による転写テープTの巻取の完了後、転写具1は
図7の定常状態に復帰する。
【0047】
巻取が開始される時点においては、供給ボビン53は、少なくとも送り方向(
図10の反時計回り)への回転は規制される。従って、巻取ボビン54による巻取の際に、過剰に未使用の転写テープTが送り出されたりすることなく、転写テープTの転写層が使用された分だけ巻取ボビン54で転写テープTを巻き取ることができる。よって、次に転写操作を行っても、使用済みの転写テープTに転写層が残存することなく、転写面への転写を精密に行うことができる。
【0048】
このようにして、本実施形態の転写具1によれば、ステープラを操作するようにして、スタンプ形式で転写操作を行うことができる。そして、転写具1の回転規制装置100は、転写部31に隣接して配置される供給ボビン53の転写テープTの送り方向の回転規制をすることができる。また、回転規制装置100は、少なくとも、転写部31が被転写部23(すなわち転写面)に当接している期間は供給ボビン53の回転規制を解除している。さらに、回転規制装置100は、少なくとも、巻取ボビン54で転写テープTを巻き取っている期間は、供給ボビン53の回転規制をしている。
【0049】
転写具1によれば、転写部31における転写テープTが被転写面から離間するとき(すなわち巻取ボビン54により使用済みの転写テープTを巻き取るとき)には供給ボビン53の回転が規制され、使用済みの転写テープTは巻取ボビン54により巻き取られるので、被転写面に転写された転写層により転写テープTが引っ張られて供給ボビン53が送り方向に回転することなく、転写層の開始位置の位置ズレも生じ難い。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図11に基づいて説明する。転写テープTが備える転写層を連続的に被転写面に転写することができる、塗膜転写具としての転写具1Aである。転写具1Aは、ケース70を有し、ケース70には、巻取ボビン71及び供給ボビン72が回転自在に設けられる。なお、
図11においては、ケース70の半分側(紙面の手前側)を省略して示している。
【0051】
ケース70は、巻取ボビン71の一部が露出するように開口部73が形成される。そして、巻取ボビン71が開口部73から露出される部分は、転写部74とされる。すなわち、転写具1Aでは、開口部73から露出される巻取ボビン71の一部とされる転写部74を被転写面に押圧して、転写具1Aを前方(
図11の左方)に移動させることにより、転写操作が行われる。なお、供給ボビン72から繰り出される転写テープTは、供給ボビン72の一方側(
図11の右側)から繰り出され、巻取ボビン71の他方側(
図11の左側)から転写部74を介して巻取ボビン71に巻き取られる。
【0052】
また、転写具1Aは、回転規制装置100Aを有する。回転規制装置100Aは、転写部74が被転写面に転写テープTの転写層を転写しているときには供給ボビン72の回転を解除する期間を備え、転写部74が被転写面に転写テープTの転写層を転写していないときには供給ボビン72の回転を規制する期間を備える。
【0053】
具体的には、回転規制装置100Aは、先端に爪部101aが形成されるロッド部材101と、供給ボビン72に固定して設けられるギヤ102とを有する。そして、回転規制装置100Aは、詳細は図示しないが、巻取ボビン71(転写部74)が転写テープTを介して被転写面に当接している間は爪部101aとギヤ102の歯との歯合を解除し、巻取ボビン71(転写部74)が被転写面と離間した時には爪部101abとギヤ102との歯を歯合させる構造を有する。従って、巻取ボビン71は、支持軸がケース70に対して支持軸の軸方向と垂直な方向に移動可能に形成する等されている。
【0054】
このように形成される転写具1Aは、巻取ボビン71(転写部74)が被転写面から離間すると、供給ボビン72の回転が規制されるので、転写後に転写部74を離間する際に被転写面に転写した転写層により転写テープTが引っ張られて供給ボビン72が回転してしまうことが無く、よって、次に転写操作をする際に、前回の転写操作における転写終わりから転写テープTを使用することができる。
【0055】
そして、転写具1Aでは、巻取ボビン71と供給ボビン72との間に、駆動力を伝達する、ギヤ等からなる動力伝達機構が設けられていないので、巻取ボビン71と供給ボビン72の回転のみにより転写操作がされ、よって軽い操作感覚を得ることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態によって限定されることは無く、種々の変更を加えて実施することができる。例えば、本実施形態においては粘着剤からなる転写層を備える転写テープTを用いたが、修正テープ等の他の転写テープとすることもできる。
【0057】
また、本実施形態においては、回転規制装置100,100Aが規制する対象は、供給ボビン53,72であったが、巻取ボビンの巻取方向の回転を規制・解除するよう構成してもよい。この場合、供給ボビン53又は巻取ボビン54のうち、転写部31に隣接して配置される側の供給ボビン53又は巻取ボビン54とすることで、回転規制装置の構成を簡単なものとすることができる。
【0058】
そして、上ケース10に供給ボビン53、巻取ボビン54、回転規制装置100の転写部材30等を備えるリフィール50を収納し、被転写部23を備える下ケース20と回動自在に連結することで、ホッチキスのように操作することでスタンプ形式の転写操作を行うことができる転写具1を提供することができる。
【0059】
また、上記の実施形態においては、爪部35とラチェットギヤ53aの係合や爪部101bとギヤ102とのギヤ係合により回転規制を行ったが、クラッチ機構等他の構成とすることもできるが、ギヤ係合であれば構造簡単に、確実に回転規制を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 転写具 1A 転写具
10 上ケース 10b 爪部
11 前ケース 11a 側板
11b 前板 11b1 被係止突起
11c 転写部材当接部 11c1 リブ
11d 被ガイド板 12 左ケース
12a 左側板 12b 上板
12c 回動ピン 12d ピン
12e ラックギヤ 12g ガイド部
13 右ケース 13a 右側板
13b 上板 13b1 ばね受面
13c 回動軸 13c1 リブ
13d ボス 13g ガイド部
14 コイルバネ 20 下ケース
21 下ケース本体 21a 底板
21a1 突起部 21b 左側板
21b1 前端縁部 21b2 切欠部
21b3 回動軸 21c 右側板
21c1 前端縁部 21c2 切欠部
22 リフィールケース 22a 係合突起
22b 左側板 22b1 孔部
22b2 切欠部 22b3 ガイド部
22c 右側板 22c1 孔部
22d 前板 22d1 係止突起
22d2 屈曲前板部 22e 後板
22f ガイド板 22f1 ガイド前板
22g 回動軸 22h 開口部
23 被転写部 24 駆動ギヤ
24a 軸部 24a1 係止突起
24b4 リブ 30 転写部材
31 転写部 32 貫通孔
33 受板 33a 切欠部
34 貫通孔 35 爪部
36a ガイド突起 36b ガイド突起
37 当接受部 50 リフィール
50a 突起 51 左側板
51a 外周板 51a1 受面部
51a2 板バネ 51b ガイド溝
52 右側板 52a 軸部
52b 軸部 52c ラチェット部
52d Fガイド板 52e Bガイド板
52f 受板 52f1 支持棒
52f2 鉤状部 52g ガイド孔
52h ボス 53 供給ボビン
53a ラチェットギヤ 53b ラチェットギヤ
54 巻取ボビン 54a ラチェットギヤ
55 巻取ギヤ 56 コイルバネ
70 ケース 71 巻取ボビン
72 供給ボビン 73 開口部
74 転写部 100 回転規制装置
100A 回転規制装置 101 ロッド部材
101a 爪部 102 ギヤ
T 転写テープ