(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105816
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】剪断機構
(51)【国際特許分類】
A01D 34/30 20060101AFI20220708BHJP
B26D 1/06 20060101ALI20220708BHJP
A01D 34/13 20060101ALI20220708BHJP
A01G 3/04 20060101ALI20220708BHJP
A01G 3/053 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
A01D34/30 G
B26D1/06 B
A01D34/13 C
A01G3/04 501C
A01G3/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000387
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦夫
【テーマコード(参考)】
2B382
【Fターム(参考)】
2B382GA02
2B382HC03
2B382HC40
2B382HH04
2B382HH12
2B382HH24
2B382HH25
2B382HH26
2B382HH50
(57)【要約】 (修正有)
【書類名】要約書
【課題】上下の揺動剪断刃の速度変化が小さくなり、機械部品への負荷が低減され、切断効率が高い切断機構を提供する。
【解決手段】一対の刃ユニット2と、運動機構3とを備え、一対の刃ユニット2は、剪断刃21、22をそれぞれ備える。運動機構3は、一対の刃ユニット2の相対的な姿勢を維持しつつ、且つ、一対の刃ユニット2のうちの少なくとも一方を速度が0にならないように所定軌道に沿って運動させる。一対の刃ユニット2が運動の最中に互いの剪断刃21、22が重なることで、対象物を切断するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断機構であって、
一対の刃ユニットと、運動機構とを備え、
前記一対の刃ユニットは、剪断刃をそれぞれ備え、
前記一対の刃ユニットの相対的な姿勢を維持しつつ、且つ、前記一対の刃ユニットのうちの少なくとも一方を速度が0にならないように所定軌道に沿って運動させ、
前記一対の刃ユニットが前記運動の最中に互いの前記剪断刃が重なることで、対象物を切断するように構成される、
もの。
【請求項2】
請求項1に記載の剪断機構において、
前記所定軌道は、円軌道であり、前記運動は、円運動である、
もの。
【請求項3】
請求項2に記載の剪断機構において、
前記運動機構は、前記一対の刃ユニットと係合部を介して係合し、前記係合部の一方を中心として前記係合部の他方が相対的に前記円運動をする、
もの。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の剪断機構において、
前記円運動は、等速円運動であり、
前記一対の刃ユニットが前記運動の最中に互いの前記剪断刃が周期的に重なることで、前記対象物を切断するように構成される、
もの。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の剪断機構において、
前記運動機構は、複数の偏芯カムを備え、
前記偏芯カムは、異なる2つの回転軸を備え、前記回転軸のうちの一方に前記一対の刃ユニットの一方が係合され、前記回転軸のうちの他方に前記一対の刃ユニットの他方が係合される、
もの。
【請求項6】
請求項5に記載の剪断機構において、
前記回転軸は、モーターの動力をダイレクトに受け付けるように構成される、
もの。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の剪断機構において、
前記刃ユニットの少なくとも一方に係る前記剪断刃は、前記剪断刃の先端に押出面を備え、
前記押出面は、前記運動中に、前記押出面に接触した異物を押出し可能に構成される、
もの。
【請求項8】
請求項7に記載の剪断機構において、
前記押出面は、前記剪断刃が重なっていない状態において、前記異物を押出し可能に構成される、
もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断機構に関する。
【背景技術】
【0002】
芝刈り機で使用される刈払機などのロータリー刃は、石などの硬いもの(異物)を回転中に飛散させるため安全上の懸念がある。
【0003】
特許文献1には、芝刈り機でバリカンの刃のように2枚の刃を左右に往復させて、飛散物が少ない刃の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されている技術では、上下の刃で剪定するため、石などの硬いもの(異物)を噛み込むことで、刃の欠けや変形が生じる。さらに、往復運動のため機械部品の負荷が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、剪断機構が提供される。この剪断機構は、一対の刃ユニットと、運動機構とを備える。一対の刃ユニットは、剪断刃をそれぞれ備える。一対の刃ユニットの相対的な姿勢を維持しつつ、且つ、一対の刃ユニットのうちの少なくとも一方を速度が0にならないように所定軌道に沿って運動させる。一対の刃ユニットが運動の最中に互いの剪断刃が重なることで、対象物を切断するように構成される。
【0007】
このような態様によれば、剪断刃の速度変化が小さいため機械部品への負荷が低減される。また、振動騒音が発生しにくい。さらに、運動エネルギーがゼロにならないため切断効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】剪断機構1の刃ユニット2と運動機構3の構成を表す概略の斜視図である。
【
図3】剪断機構1の運動機構3、係合部4、ベース6及びモーター7の構成を表す概略の斜視図である。
【
図4】剪断機構1が切断対象となる対象物Wが剪断している状態を表す図である。
【
図5】剪断機構1の刃ユニット2の各剪断刃が有する押出面5を表す概略図である。
【
図6】刃ユニット2が対象物Wを切断する状態を表す概略図である。
【
図7】剪断機構1の偏芯カム31の構造を表す概略の斜視図である。
【
図8】第2剪断刃22に対する第1剪断刃21の円運動を表す概略図である。
【
図9】複数の偏芯カム31を逆方向に回転させる運動機構3の構成を表す概略の斜視図である。
【
図10】刃ユニット2が上下に移動しながら相対的に往復運動している状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
1.全体構成
第1章では、本実施形態に係るについて剪断機構について説明する。
図1は、剪断機構を表す概略の斜視図である。
【0011】
1.1 剪断機構1
剪断機構1は、一対の刃ユニット2と、運動機構3とを備え、物体内部の任意の面に関して面に平行方向に力を作用させて、物体を切断する機構である。
図1に表すように、剪断機構1は、一対の刃ユニット2と、運動機構3と、係合部4と、押出面5と、ベース6と、モーター7とを含む。
図2は、剪断機構1の刃ユニット2と運動機構3の構成を表す概略の斜視図である。
図3は、剪断機構1の運動機構3、係合部4、ベース6及びモーター7の構成を表す概略の斜視図である。
【0012】
1.2 刃ユニット2
一対の刃ユニット2は、剪断刃をそれぞれ備え、具体的には、第1剪断刃21と第2剪断刃22とを備える。第1剪断刃21及び第2剪断刃22は、櫛歯状で少なくとも1以上の凹部を有する。第1剪断刃21及び第2剪断刃22は、重合されて面接触し、その状態を保って互いに摺動するように構成されている。
図4は、剪断機構1が切断対象となる対象物Wが剪断している状態を表す図である。
図4に表すように、第1剪断刃21の凹部21aと第2剪断刃22の凹部22aの間に挟まった対象物Wは、第1剪断刃21と第2剪断刃22が摺動することで、平行方向に剪断力を受けて切断される。具体的には、第1剪断刃21の有する刃部21bと第2剪断刃22の有する刃部22bが、対象物Wの軸方向に対して水平に剪断力を与えることによって、対象物Wが切断される。そのため、刃部21bと刃部22bの先端部分の面積は、小さくして、単位面積あたりの圧力を高くして剪断力を高める構造となっている。即ち、刃部21bと刃部22bの切断面は、鋭利な刃の形状を有している。刃部21bと刃部22bの有する刃角度や断面形状は、剪断機構1を備える機械や対象物Wによって決まるため、限定されない。
【0013】
第1剪断刃21と第2剪断刃22は、それぞれ櫛歯状となっており、櫛歯の両側に刃部21bと刃部22bを有している。これは、第1剪断刃21と第2剪断刃22が互いに円運動をして摺動するため、切断効率を高めるためである。そのためこのような構造にすることが好ましい。
【0014】
図1、
図2及び
図3では、第1剪断刃21と第2剪断刃22は、長手方向の両側に切断面である刃部21b及び刃部22bを備えているが、片側のみに切断面を備えてもよい。また、第1剪断刃21と第2剪断刃22の材質は、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、工具鋼、粉末冶金鋼、複合鋼、チタン合金等の金属でもよいが、カーボンファイバー、プラスチックでもよい。対象物Wを切断できるものであれば、材質は、限定されない。第1剪断刃21と第2剪断刃22は、凹部21aと凹部22aをそれぞれ有し、櫛歯状となっているが、櫛歯の数、凹部の深さ及び幅等の仕様は、限定されない。また、第1剪断刃21と第2剪断刃22の厚さも限定されない。
【0015】
1.3 運動機構3
運動機構3は、一対の刃ユニット2の相対的な姿勢を維持しつつ、且つ、一対の刃ユニットのうちの少なくとも一方を速度が0にならないように所定軌道に沿って運動させる。このような運動機構3を剪断機構1が有することで、一対の刃ユニット2が運動の最中に互いの剪断刃である第1剪断刃21と第2剪断刃22が重なることで、対象物Wを切断するように構成される。ここで好ましくは、所定軌道は、円軌道であり、運動は、円運動である。また好ましくは、運動機構3は、一対の刃ユニットのうちの両方を速度が0にならないように、それぞれの所定軌道に沿って運動させる。
【0016】
運動機構3が、刃ユニット2の互いの剪断刃である第1剪断刃21と第2剪断刃22の相対的な姿勢を維持し、相対速度が0とならないことで、剪断機構1を構成する機械部品への負荷が低減される。また、振動騒音の発生を抑制することができる。さらに、運動エネルギーがゼロにならないため、運動機構3は、切断効率を高めることができる。
【0017】
好ましくは、運動機構3は、一対の刃ユニット2と係合部4を介して係合し、係合部4の一方を中心として係合部4の他方が相対的に円運動をする。換言すると、運動機構3は、係合部4を中心に、第1剪断刃21と第2剪断刃22の回転軸を互いに偏芯させることで相対的に円運動を生成する。そのための機構として、運動機構3は、後述する複数の偏芯カム31を備える。偏芯カム31は、一例であり、平行クランク機構(不図示)であってもよい。また、運動機構3は、それぞれ独立に第1剪断刃21と第2剪断刃22を制御し動作させ、相対的に円運動させてもよい。以下、実施例では、運動機構3は偏芯カム31として説明する。
【0018】
運動機構3が偏芯カム31である場合、
図2に表されたように、運動機構3は、2つの偏芯カム31を備える。それぞれの偏芯カム31は、回転軸に対して2つの偏芯した軸を備える。2つの偏芯した軸の一方は、第1剪断刃21と係合部41を介して係合され、他方は、第2剪断刃22と係合部42を介して係合される。また、2つの偏芯カム31のうち一方の回転軸は、後述するモーター7と接合される。
即ち、モーター7と接合された偏芯カム31は、原動軸であり、他方の偏芯カム31は、それに倣って回転する従動軸である。このような運動機構3によって、前述した所定軌道が実現される。
【0019】
1. 4 係合部4
第1剪断刃21と第2剪断刃22は、複数の係合部4である貫通穴を有する。係合部4となる貫通穴の位置は、第1剪断刃21及び第2剪断刃22の内部あればよく、限定されない。これらの貫通穴を介して、第1剪断刃21は、係合部41で偏芯カム31と係合され、第2剪断刃22は、係合部42で偏芯カム31と係合されている。
図2に表されているように、偏芯カム31は2つあるため、係合された一対の刃ユニット2の第1剪断刃21と第2剪断刃22は、相互に接触しながら拘束運動をする。その結果、2つの剪断刃は、互いに相対的な姿勢を維持することができる。
【0020】
1.5 押出面5
図5は、剪断機構1の刃ユニット2の各剪断刃が有する押出面5を表す概略図である。剪断機構1は、例えば、芝や草木を切断する芝刈り機に搭載される。そのため、屋外での切断作業となるため、切断中に石、金属片等の異物Aが剪断刃の凹部21aと凹部22aの間入り込むことがある。その結果、異物Aは、第1剪断刃21及び第2剪断刃22の損傷を引き起こすことになる。このように異物Aが凹部21aと凹部22aに極力入り込まないように、刃ユニット2の少なくとも一方に係る剪断刃は、剪断刃の先端に押出面5を備える。即ち、第1剪断刃21は、押出面51を備え、第2剪断刃22は、押出面52を備えてもよいし、一方のみが押出面5を備えてもよい。このように異物Aが凹部21aと凹部22aに極力入り込まないように、第1剪断刃21及び第2剪断刃22の先端で異物Aが押し出されるように、剪断刃の先端部分に所定の角度を持たせている。そのため押出面5は、剪断刃が重なっていない状態において、異物Aを押出し可能に構成される。押出面5については次章で詳述する。
【0021】
1.6 ベース6
ベース6は、
図3に表したように、偏芯カム31の上面に取り付けられ、偏芯カム31が自由に回転できるように複数の貫通穴を有し、偏芯カム31と係合する。複数の貫通穴の一つは、偏芯カム31の回転軸を後述するモーター7の回転軸を接合させるように構成される。
【0022】
図6は、刃ユニット2が対象物Wを切断する状態を表す概略図である。剪断機構1は、刃ユニット2の互いの剪断刃である第1剪断刃21と第2剪断刃22は、互いに相対的な姿勢を維持しつつ、円運動させる。そのため、芝や草木を切断中に、剪断機構1は、地面に根付いている芝や草木から水平方向に抵抗力Pを受ける。このような抵抗力Pを受けることで、第1剪断刃21と第2剪断刃22は、互いに相対的な姿勢を維持することができなくなる。そのため、第1剪断刃21と第2剪断刃22を係合している複数の係合部4をベース6によって固定させる必要がある。剪断機構1は、ベース6有することで、外力である芝や草木からの抵抗力Pと、ベース6の反力Rが釣り合い、第1剪断刃21と第2剪断刃22は、互いに相対的な姿勢を維持することができる。
【0023】
1.7 モーター7
モーター7は、運動機構3を駆動させるように構成される。好ましくは、第1剪断刃21又は第2剪断刃22が係合する偏芯カム31の回転軸は、モーター7の動力をダイレクトに受け付けるように構成される。即ち、剪断機構1は、ダイレクトドライブモーターで駆動される。減速機構を使用せずダイレクトドライブを採用することで、減速機等の摩耗によるロスが低減でき、切断効率が高い。また、減速機等との接触がないことで、振動を引き起こす部品が少なく、剪断機構1の機械騒音を低減することができる。さらに、減速機等がないことで、剪断機構1を備える機械の小型化に貢献することができる。
【0024】
2.対象物W及び異物A
第2章では、剪断機構1が切断する対象物Wと切断を回避する異物Aについて説明する。剪断機構1は、例えば、芝や草木を切断する芝刈り機に搭載される。芝刈り機で切断する対象物Wは、芝、雑草、木片等の芝生の土地に存在するものが対象である。また、剪断機構1が搭載される機械によっては、対象物Wは紙や毛髪であってもよい。刃ユニット2の備える剪断刃で切断できるものであれば、対象物Wの材質は限定されない。
【0025】
異物Aは、剪断機構1が芝刈り機に搭載される場合、小石や金属片である。このような異物Aは、公園やゴルフ場のような芝刈り対象の場所であっても存在する。剪断機構1がバリカンのように剪断刃が一方向で往復運動する機構であると、剪断刃は、一方向からのみ異物Aから力を受けるため、剪断刃に掛かる負荷が大きい。そのため、剪断刃は、損傷されやすい。剪断機構1の押出面5は、このような異物を押出し、極力切断しない構造となっている。そのため剪断機構1は、対象物Wである芝や草木を積極的に切断し、異物Aである石や金属片を積極的に切断回避する。特に芝刈り機がロボット型の自走式である場合、人が異物Aを検知して、剪断刃の駆動を制御することができないため、このような機構が望まれる。
【0026】
3.剪断機構1の機能
第3章では、第1章及び第2章で説明した剪断機構1、切断対象の対象物W及び切断回避の異物Aについて各機能別に分けて説明する。
【0027】
3.1 剪断機構1の回転運動について
図7は、剪断機構1の偏芯カム31の構造を表す概略の斜視図である。剪断機構1の備える運動機構3は、一対の刃ユニット2である第1剪断刃21と第2剪断刃22を所定軌道に沿って運動させる。所定軌道は、円軌道であり、運動は、円運動である。好ましくは、運動機構3は偏芯カム31である。偏芯カム31は、異なる2つの回転軸を備え、回転軸のうちの一方に一対の刃ユニット2の一方が係合され、回転軸のうちの他方に一対の刃ユニット2の他方が係合される。具体的に説明すると、
図7に表されているように、偏芯カム31は、剪断機構1の動作を司る運動回転軸ASと、第1剪断刃21の貫通穴(係合部41)と係合している第1回転軸A1と、第2剪断刃22の貫通穴(係合部42)と係合している第2回転軸A2を備える。
【0028】
運動回転軸ASから第1回転軸A1までの距離は、第1偏芯半径R1であり、運動回転軸ASから第2回転軸A2までの距離は第2偏芯半径R2である。運動回転軸ASが、モーター7等によって回転すると、第1回転軸A1と第2回転軸A2も運動回転軸ASを中心に回転する。このような回転運動により第1回転軸A1と第2回転軸A2は、互いの座標系で、回転運動をすることになる。
図7には、第2回転軸A2の座標系で、第1剪断刃21の有する第1回転軸A1の軌跡が表されている。このように、運動回転軸ASが回転することで、第1回転軸A1は、第1偏芯半径R1と第2偏芯半径R2を加えた半径で回転する。このような機構であれば、容易に円運動を実現することができる。また、汎用的な偏芯カム31を利用することで、容易に安価に円運動を実現することができる。
【0029】
運動回転軸ASは、モーター7の軸に接合されているため、モーター7の回転運動が伝達されて回転する。モーター7が等速で回転する限り、一対の刃ユニット2を構成する第1剪断刃21と第2剪断刃22の円運動は、等速円運動である。このように剪断刃が等速で動くため、バリカンのような往復運動と比べて、速度0の思案点が発生しない。そのため、回転運動を効率よく切断運動に変えることができる。
【0030】
図8は、第2剪断刃22に対する第1剪断刃21の円運動を表す概略図である。
図8に表された円運動は、一対の刃ユニット2が運動の最中に互いの剪断刃が周期的に重なることで、対象物Wを切断するように構成される。このように、第1剪断刃21に対して、第2剪断刃22が円運動しながら切断する方法は、バリカンのように一方向から力を加えて切断する方法と比べて、低負荷で対象物Wを切断できる。即ち、対象物Wを切断する部位が、剪断刃の点ではなく剪断刃の線であるため、そのような低負荷の切断を実現できる。例えば、料理において、包丁に上から下へ力を加えて材料を切るよりも、包丁を横に移動させて上から下へ力を加えて材料を切る方が、負荷が少ない。即ち、単位時間当たりの剪断刃に接触させると対象物Wの面積が大きくなるため、より多く効率よく切断できる。
【0031】
図8に表されたように、第1剪断刃21は第2剪断刃22に対して、円運動をしているため、両剪断刃は周期的に対象物Wに接触して切断している。このため、継続して対象物Wに接触している剪断刃の一点に負荷が掛かっていないため、剪断刃への負荷が小さい。そのため摺動音の発生も低減できる。このような切断方法は、対象物Wに対して垂直方向と水平方向に力を与えているため、ユーザーは、切断速度を決めるモーター7の回転速度を制御することで、対象物Wに応じて切断効率を変更することができる。また、剪断刃の対象物Wの切込み量は、第1剪断刃21と第2剪断刃22の円運動の半径で決まる。そのため、ユーザーは、第1偏芯半径R1と第2偏芯半径R2を変更することで、切込み量を自由に変更することができる。
【0032】
ここで、回転軸は、第1偏芯半径R1と第2偏芯半径R2を決める第1回転軸A1と第2回転軸A2であるが、どちらかの回転軸を運動回転軸ASと同軸にしてもよい。また、第1偏芯半径R1と第2偏芯半径R2の比率を1とすることで、運動回転軸ASから第1回転軸A1までの距離と運動回転軸ASから第2回転軸A2までの距離が等しくなり、力のモーメントが等しくなる。このように半径の比率を1とすると、剪断機構1を構成する部品にとって負荷が少ないため好ましい。しかし、第1剪断刃21と第2剪断刃22の形状、材質により重心の位置が異なるため、第1偏芯半径R1と第2偏芯半径R2の比率を変更してもよい。
【0033】
ここで、(第1偏芯半径R1/第2偏芯半径R2)又は(第2偏芯半径R2/第1偏芯半径R1)の値は、0以上で1以下である。(第1偏芯半径R1/第2偏芯半径R2)又は(第2偏芯半径R2/第1偏芯半径R1)の値は、具体的には、0,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19,0.2,0.21,0.22,0.23,0.24,0.25,0.26,0.27,0.28,0.29,0.3,0.31,0.32,0.33,0.34,0.35,0.36,0.37,0.38,0.39,0.4,0.41,0.42,0.43,0.44,0.45,0.46,0.47,0.48,0.49,0.5,0.51,0.52,0.53,0.54,0.55,0.56,0.57,0.58,0.59,0.6,0.61,0.62,0.63,0.64,0.65,0.66,0.67,0.68,0.69,0.7,0.71,0.72,0.73,0.74,0.75,0.76,0.77,0.78,0.79,0.8,0.81,0.82,0.83,0.84,0.85,0.86,0.87,0.88,0.89,0.9,0.91,0.92,0.93,0.94,0.95,0.96,0.97,0.98,0.99,1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
3.2 押出面5の押出し機構について
前述したように、刃ユニット2を構成する第1剪断刃21又は第2剪断刃22の少なくとも一方に係る剪断刃は、剪断刃の先端に押出面5を備える。押出面5は、運動中に、押出面5に接触した異物Aを押出し可能に構成される。即ち、押出面5の機能は、対象物Wを切断中に、異物Aを刃ユニット2の剪断刃の凹部21a又は凹部22aに取り込ませないことである。この機能によって、第1剪断刃21と第2剪断刃22は、石や金属片等の硬い異物Aの噛み込みを防止することができる。その結果、剪断刃の損傷が低減され、ひいては剪断機構1を構成する部品への負担を軽減することができる。
【0035】
押出面5は、剪断刃である第1剪断刃21と第2剪断刃22が重なっていない状態において、異物Aを押出し可能に構成される。ここでは、第1剪断刃21の押出面5について説明するが、第2剪断刃22も同じ形状を有する。
図5に表されているように、第1剪断刃21の凹部下端部21cに対する剪断刃角度θ1は、第1剪断刃21に直角に近づけば、外から異物Aが凹部21aに入り込みやすい。そのため、第1剪断刃21は、第1剪断刃21の先端部21eから押出下部21dまで切り込みを入れて、第1剪断刃21の先端に押出角度θ2を設けている。この押出角度θ2は、剪断刃角度θ1より小さく設定され、異物Aが第1剪断刃21と第2剪断刃22が重なっていない状態において、異物Aを外に押し出す。
【0036】
剪断機構1は、このような押出面5を備えるため、剪断刃が重なっていない状態であれば、特に剪断刃に対する負担を軽減することができる。押出面5は、剪断刃が重なっている状態であっても、押出面5が異物Aと接触することで、第1剪断刃21と第2剪断刃22の切断面の保護が図られる。
【0037】
押出角度θ2は、剪断刃角度θ1より小さく、かつ90°以内が好ましい。即ち、第1剪断刃21の回転方向に対して異物Aを押し出す角度が設定される。そのため(押出角度θ2/剪断刃角度θ1)は、0より大きく1より小さい。(押出角度θ2/剪断刃角度θ1)の値は、具体的には、0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19,0.2,0.21,0.22,0.23,0.24,0.25,0.26,0.27,0.28,0.29,0.3,0.31,0.32,0.33,0.34,0.35,0.36,0.37,0.38,0.39,0.4,0.41,0.42,0.43,0.44,0.45,0.46,0.47,0.48,0.49,0.5,0.51,0.52,0.53,0.54,0.55,0.56,0.57,0.58,0.59,0.6,0.61,0.62,0.63,0.64,0.65,0.66,0.67,0.68,0.69,0.7,0.71,0.72,0.73,0.74,0.75,0.76,0.77,0.78,0.79,0.8,0.81,0.82,0.83,0.84,0.85,0.86,0.87,0.88,0.89,0.9,0.91,0.92,0.93,0.94,0.95,0.96,0.97,0.98,0.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
凹部下端部21cから押出下部21dまでの距離と、凹部下端部21cから先端部21eまでの距離は、剪断機構1を使用する場所での異物Aの形状、大きさ等の特徴、及び第1剪断刃21と第2剪断刃22の形状、凹部21aの幅等の設計値を考慮して決定される。そのため(凹部下端部21cから押出下部21d/凹部下端部21cから先端部21eまでの距離)は、0より大きく1より小さい。(凹部下端部21cから押出下部21d/凹部下端部21cから先端部21eまでの距離)の値は、具体的には、は、0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19,0.2,0.21,0.22,0.23,0.24,0.25,0.26,0.27,0.28,0.29,0.3,0.31,0.32,0.33,0.34,0.35,0.36,0.37,0.38,0.39,0.4,0.41,0.42,0.43,0.44,0.45,0.46,0.47,0.48,0.49,0.5,0.51,0.52,0.53,0.54,0.55,0.56,0.57,0.58,0.59,0.6,0.61,0.62,0.63,0.64,0.65,0.66,0.67,0.68,0.69,0.7,0.71,0.72,0.73,0.74,0.75,0.76,0.77,0.78,0.79,0.8,0.81,0.82,0.83,0.84,0.85,0.86,0.87,0.88,0.89,0.9,0.91,0.92,0.93,0.94,0.95,0.96,0.97,0.98,0.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい
【0039】
4.その他
下記のような態様によって前述の実施形態を実施してもよい。
(1)剪断機構1の備える運動機構3は、平行クランク機構を備え、平行クランク機構の固定節の両端に一対の刃ユニット2が係合され、平行クランク機構の中間節の両端に一対の刃ユニット2の他方が係合されてもよい。固定節を第1剪断刃21とし、中間節を第2剪断刃22とすることで、剪断機構1の構造が簡略化できる。また、平行クランク機構の原動節を回転させるようにモーター7を取り付けてもよい。
(2)係合部4は、転がり軸受を備えてもよい。偏芯カム31の運動回転軸AS、第1回転軸A1及び第2回転軸A2がより円滑に等速円運動することで、第1剪断刃21及び第2剪断刃22の切断負荷を低減することができる。
(3)第1剪断刃21又は第2剪断刃22の刃が鋸の刃のように凹凸を設けられてもよい。切断面積が増えることで対象物Wをより効率良く切断できる。
(4)
図9は、複数の偏芯カム31を互いに逆方向に回転させる運動機構3の構成を表す概略の斜視図である。偏芯カム31は側面にギヤ31aを備え、複数の偏芯カム31を互いに逆方向に回転させることで、一対の刃ユニット2の相対的な姿勢を維持しつつ円運動させながら、刃ユニットの長手方向に対して双方を往復運動させる。
図10は、刃ユニット2が上下に移動しながら相対的に往復運動している状態を表す概略図である。このような運動機構3であるため、剪断機構1は、剪断刃の速度が0にならない有用性を有している。それに加えて、第1剪断刃21の凹部21aと第2剪断刃22の凹部22aの高さ、すなわち刃部21b,22bの長さ全体にわたって芝や草木を刈ることができるため、偏芯カム31が同一方向に回転する場合より、刃丈(刃部の長さ)を短くでき、刃ユニット2を軽量化することができる。さらに第1剪断刃21と第2剪断刃22の長手方向の中心が一致した状態で動くため第1剪断刃21及び第2剪断刃22のピッチに合わせた偏芯カム31の偏心量(
図10において、第1剪断刃21の左右方向へ動く量)を変えることができ、刃のピッチが異なる様々な種類の剪断刃に対応できる。
【0040】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記剪断機構において、前記所定軌道は、円軌道であり、前記運動は、円運動である、もの。
前記剪断機構において、前記運動機構は、前記一対の刃ユニットと係合部を介して係合し、前記係合部の一方を中心として前記係合部の他方が相対的に前記円運動をする、もの。
前記剪断機構において、前記円運動は、等速円運動であり、前記一対の刃ユニットが前記運動の最中に互いの前記剪断刃が周期的に重なることで、前記対象物を切断するように構成される、もの。
前記剪断機構において、前記運動機構は、複数の偏芯カムを備え、前記偏芯カムは、異なる2つの回転軸を備え、前記回転軸のうちの一方に前記一対の刃ユニットの一方が係合され、前記回転軸のうちの他方に前記一対の刃ユニットの他方が係合される、もの。
前記剪断機構において、前記回転軸は、モーターの動力をダイレクトに受け付けるように構成される、もの。
前記剪断機構において、前記刃ユニットの少なくとも一方に係る前記剪断刃は、前記剪断刃の先端に押出面を備え、前記押出面は、前記運動中に、前記押出面に接触した異物を押出し可能に構成される、もの。
前記剪断機構において、前記押出面は、前記剪断刃が重なっていない状態において、前記異物を押出し可能に構成される、もの。
もちろん、この限りではない。
【0041】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 :剪断機構
2 :刃ユニット
21 :第1剪断刃
21a :凹部
21b :刃部
21c :凹部下端部
21d :押出下部
21e :先端部
22 :第2剪断刃
22a :凹部
22b :刃部
3 :運動機構
31 :偏芯カム
31a :ギヤ
4 :係合部
41 :係合部
42 :係合部
5 :押出面
51 :押出面
52 :押出面
6 :ベース
7 :モーター
A :異物
A1 :第1回転軸
A2 :第2回転軸
AS :運動回転軸
P :抵抗力
R :反力
R1 :第1偏芯半径
R2 :第2偏芯半径
W :対象物
θ1 :剪断刃角度
θ2 :押出角度
【手続補正書】
【提出日】2021-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断機構であって、
一対の刃ユニットと、運動機構とを備え、
前記一対の刃ユニットは、剪断刃をそれぞれ備え、
前記運動機構は、前記一対の刃ユニットの相対的な姿勢を維持しつつ、且つ、前記一対の刃ユニットのうちの少なくとも一方を速度が0にならないように所定軌道に沿って運動させ、
前記一対の刃ユニットが前記運動の最中に互いの前記剪断刃が重なることで、対象物を切断するように構成される、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の剪断機構において、
前記所定軌道は、円軌道であり、前記運動は、円運動である、もの。
【請求項3】
請求項2に記載の剪断機構において、
前記運動機構は、前記一対の刃ユニットと係合部を介して係合し、前記係合部の一方を中心として前記係合部の他方が相対的に前記円運動をする、もの。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の剪断機構において、
前記円運動は、等速円運動であり、
前記一対の刃ユニットが前記運動の最中に互いの前記剪断刃が周期的に重なることで、前記対象物を切断するように構成される、もの。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の剪断機構において、
前記運動機構は、複数の偏芯カムを備え、
前記偏芯カムは、異なる2つの回転軸を備え、前記回転軸のうちの一方に前記一対の刃ユニットの一方が係合され、前記回転軸のうちの他方に前記一対の刃ユニットの他方が係合される、もの。
【請求項6】
請求項5に記載の剪断機構において、
前記回転軸は、モーターの動力をダイレクトに受け付けるように構成される、もの。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の剪断機構において、
前記刃ユニットの少なくとも一方に係る前記剪断刃は、前記剪断刃の先端に押出面を備え、
前記押出面は、前記運動中に、前記押出面に接触した異物を押出し可能に構成される、もの。
【請求項8】
請求項7に記載の剪断機構において、
前記押出面は、前記剪断刃が重なっていない状態において、前記異物を押出し可能に構成される、もの。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様によれば、剪断機構が提供される。この剪断機構は、一対の刃ユニットと、運動機構とを備える。一対の刃ユニットは、剪断刃をそれぞれ備える。運動機構は、一対の刃ユニットの相対的な姿勢を維持しつつ、且つ、一対の刃ユニットのうちの少なくとも一方を速度が0にならないように所定軌道に沿って運動させる。一対の刃ユニットが運動の最中に互いの剪断刃が重なることで、対象物を切断するように構成される。