(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105817
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
E03D9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000388
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾田 颯太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江美
(72)【発明者】
【氏名】八島 一哉
(72)【発明者】
【氏名】深川 雅史
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038JB08
2D038JC01
2D038JF00
2D038ZA06
(57)【要約】
【課題】簡素化を図ることができる便器装置を提供する。
【解決手段】便器装置1は、前ベースプレート40(ベースプレート)、送水ホース50、位置決め部60、及び規制部70を備える。前ベースプレート40は、便鉢部11を有する便器本体10の後部上面に配置される。送水ホース50は、便鉢部11内に吐出するバキュームケース21Aの溢水を流通させて前ベースプレート40上に吐水する。位置決め部60は、送水ホース50を前ベースプレート40に対して位置決めする。規制部70は、前ベースプレート40の上面から上方に突出して設けられ、送水ホース50の下方への移動を規制する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部を有する便器本体の後部上面に配置されるベースプレートと、
前記便鉢部内に吐出する水を流通させて前記ベースプレート上に吐水する送水ホースと、
前記送水ホースを前記ベースプレートに対して位置決めする位置決め部と、
前記ベースプレートの上面から上方に突出して設けられ、前記送水ホースの下方への移動を規制する規制部と、
を備える便器装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記送水ホースの端部と接触することで前記送水ホースの下方への移動を規制する請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記規制部は複数設けられている請求項1から請求項2のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項4】
前記規制部は、前記送水ホースの位置ずれの生じる方向に延びている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項5】
前記規制部は、前記送水ホースから前記ベースプレート上に吐水された前記水を前記便鉢部に吐出するための排出口の方向に案内する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項6】
前記位置決め部は、前記ベースプレートに取り付けられる他の部材に設けられている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器装置を開示している。この便器装置は、便器装置において生じた余剰水等の捨て水を便器本体内に排水する捨水構造を備えている。便器装置は、本体ケース、捨水ホース、及び吐出口継手を有している。本体ケースは、便器に設置される衛生洗浄装置のケースである。捨水ホースは、便器装置において生じた余剰水等の捨て水を本体ケース上に排出する。排出された捨て水は、本体ケース上を流通して便器本体内に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の便器装置において、捨て水構造は構成が簡単であるとは言い難く、更なる簡素化が望まれていた。
【0005】
本開示は、簡素化を図ることができる便器装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る便器装置は、便鉢部を有する便器本体の後部上面に配置されるベースプレートと、前記便鉢部内に吐出する水を流通させて前記ベースプレート上に吐水する送水ホースと、前記送水ホースを前記ベースプレートに対して位置決めする位置決め部と、前記ベースプレートの上面から上方に突出して設けられ、前記送水ホースの下方への移動を規制する規制部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る便器装置を示す斜視図であって、内部構造を一部省略して示す。
【
図2】実施形態1に係る便器装置における後部を拡大した平面図であって、内部構造を一部省略して示す。
【
図3】実施形態1に係るベースプレートを示す斜視図である。
【
図4】実施形態1に係る位置決め部を示す斜視図である。
【
図5】実施形態1に係るベースプレートにおける規制部の周辺を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示の便器装置を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、便器装置1として、便器本体10及び機能部20を備える形態を例示する。以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向とは、設置状態の便器装置1における便座(図示せず)に着座した状態で使用する使用者から見た前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。各図においては、図中Fが前側、図中Rが右側、図中Uが上側をそれぞれ示す。
【0009】
図1に示すように、便器本体10は、便鉢部11、リム部12、及び周壁部13を有している。便鉢部11、リム部12、及び周壁部13は、陶器製であり、一体に形成されている。便鉢部11は、便器本体10の前部において上面から下方に鉢状に窪んで形成されている。便鉢部11の右側部には洗浄水を吐出する吐水口11Aが形成されている。便鉢部11は、下端において図示しない排水路に接続されている。便鉢部11は、機能部20を構成する便器洗浄ユニットから供給される洗浄水によって洗浄される。
【0010】
リム部12は、便鉢部11の上端に連続して設けられている。周壁部13は、便鉢部11を前側から左右両側にわたって覆っている。周壁部13は、便鉢部11の下方に配された排水管等を内部に収容している。周壁部13は、リム部12の外周縁部から垂下して、便器本体10の外観を構成する。便器本体10は、周壁部13の後端に連続して、サイドカバー14が取り付けられている。サイドカバー14は、合成樹脂製であり、便器本体10とは別体に形成されている。サイドカバー14は、便器本体10の後方において、図示しない排水管、機能部20を構成する機能部品等を覆っている。
【0011】
図1及び
図2に示すように、機能部20は、後ベースプレート30、前ベースプレート40、送水ホース50、位置決め部60、及び規制部70を有している。前ベースプレート40は、本開示に係るベースプレートの例示である。送水ホース50は、機能部20において生じる便鉢部11内に吐出すべき水を前ベースプレート40上に吐水する。以下の説明において、送水ホース50から前ベースプレート40上に吐水される水を捨て水と表記する。本実施形態の場合、送水ホース50は、後ベースプレート30及び前ベースプレート40に跨って配置される。送水ホース50は、後ベースプレート30側において生じる捨て水を前ベースプレート40側に吐水する。位置決め部60及び規制部70は前ベースプレート40に設けられる。位置決め部60は、送水ホース50を前ベースプレート40に対して位置決めする。規制部70は、送水ホース50の下方への移動を規制する。
【0012】
機能部20は、後ベースプレート30、前ベースプレート40、送水ホース50、位置決め部60、及び規制部70に加えて、便器洗浄ユニット、昇降ユニット、便座及び便蓋の電動開閉ユニット、局部洗浄ユニット、温風乾燥ユニット、脱臭ユニット、各ユニットの制御用の回路基板、各種配管等の図示しない各種機能部品を有する。機能部20は、これらの機能部品を後ベースプレート30及び前ベースプレート40に対して取り付けて構成されている。
【0013】
図1及び
図2に示すように、後ベースプレート30及び前ベースプレート40は、それぞれ便器本体10の後部上面に配置される。具体的には、後ベースプレート30は便器本体10の後端部に配置され、前ベースプレート40は後ベースプレート30の前方に配置される。後ベースプレート30及び前ベースプレート40は、
図2に示す平面視において、それぞれ左右方向に長い長方形状をなしている。後ベースプレート30は、便器本体10に対して固定的に配置される。前ベースプレート40は、便器本体10の清掃等の利便性を図るため、便器本体10に対して昇降自在に設けられている。具体的には、前ベースプレート40は、図示しない昇降ユニットによって、後ベースプレート30に対して昇降自在に設けられている。
【0014】
後ベースプレート30には、便器洗浄ユニット、昇降ユニットの機構部等が取り付けられる。各図においては、便器洗浄ユニットのバルブケース21以外の要素を省略して示している。バルブケース21は、後ベースプレート30における左右方向の中心よりも右寄りの位置に設けられている。バルブケース21は便器洗浄ユニットを構成する。便器洗浄ユニットは、バルブケース21内部の開閉弁を駆動することによって、図示しない給水配管から供給される洗浄水を便鉢部11内に流出させて便鉢部11内を洗浄する。バルブケース21内には、開閉弁の他、定流量弁、逆止弁、バキュームブレーカ等の図示しない各種弁機構が設けられている。
【0015】
バルブケース21の上端部にはバキュームケース21Aが設けられている。バキュームケース21Aはバキュームブレーカを構成し、内部に空気室を形成する。バキュームブレーカは、便器本体10側からバルブケース21へのサイフォン作用による洗浄水の逆流を防止する。バキュームケース21Aには送水ホース50の一方の端部51が接続されている。送水ホース50は、バキュームケース21A内に生じた溢水を流通させ、もう一方の端部52から前ベースプレート40上に捨て水として吐水する。
【0016】
本実施形態の場合、バルブケース21内には2系統の洗浄水流路が設けられている。一方の流路は吐水口11Aに連通する流路であり、もう一方の流路は便鉢部11下端の排水路に吐水する図示しないジェット吐水口に連通する流路である。バキュームブレーカを含む上記各種弁機構は、それぞれの流路に設けられている。
図1から
図3に示すバキュームケース21Aは、吐水口11A側バキュームブレーカ用のものであり、バキュームケース21Bは、ジェット吐水口側流路用のものである。バキュームケース21Bは、連通管21Cによってバキュームケース21Aに連通されている。したがって、バキュームケース21B内の溢水も、バキュームケース21Aを介して送水ホース50から送出される。
【0017】
前ベースプレート40には、便座及び便蓋の電動開閉ユニット、局部洗浄ユニット、温風乾燥ユニット、脱臭ユニット、回路基板等が取り付けられる。各図においては、局部洗浄ユニットのポンプ80以外の要素を省略して示している。
図2及び
図3に示すように、前ベースプレート40の上面には、各種機能部品を取り付けるための複数のボスBが設けられている。前ベースプレート40は、上述した各ユニットの配置等に応じて、左右方向において複数の領域に区画されている。各領域は仕切壁Wによって仕切られている。
【0018】
図2及び
図3に示すように、前ベースプレート40は、平面視長方形状の底板41と、底板41の四方の周囲から立ち上がる側板42を有している。底板41は、前部41Aと、前部41Aの上面よりも高い上面を有する後部41Bと、前部41A及び後部41Bとをなだらかに接続する傾斜面を形成する接続部41Cとを有している。前ベースプレート40は排出口40Aを有している。送水ホース50から吐水される捨て水は、排出口40Aから便鉢部11内に吐出される。排出口40Aは、前部41Aにおける領域Rの前端部に設けられている。排出口40Aは、前ベースプレート40が便器本体10の後部上面に配置された状態において、便鉢部11の後部上方に開口する。本実施形態の場合、排出口40Aは、左右方向に複数(図中3つ)に分割されている(
図5参照)。
【0019】
前ベースプレート40における複数の領域のうち、左右方向中央の領域Rにはポンプ80を有する図示しない局部洗浄ユニットが配置される。
図2及び
図3に示すように、ポンプ80は、領域Rの後部右寄りに配置されている。ポンプ80は、局部洗浄ユニットの洗浄ノズルに供給する洗浄水を送出する。ポンプ80は、領域Rと、この領域Rの右側に隣接する領域とを仕切る仕切壁Wの上方に配置されている。ポンプ80は、ポンプ本体81、ポンプカバー82及びホースガイド83を備えている。ポンプ本体81は、円柱状のモータと直方体状のケーシングとを前後方向に接続している。
【0020】
ポンプカバー82は、
図3及び
図4に示すように、ポンプカバー本体82A、固定部82B、及びボス部82Cを有している。ポンプカバー本体82Aは前後方向に貫通する円筒状をなしている。ポンプカバー本体82Aはポンプ本体81前部のモータが挿入される。固定部82Bは、ポンプカバー本体82Aの下端部から前方に突出している。固定部82Bは、上下方向を厚さ方向とする板状をなしている。固定部82Bは、前ベースプレート40のボスBにビス固定するためのビス孔を形成している。ボス部82Cは、ポンプカバー本体82Aの上端部から上方に円筒状に突出している。ボス部82Cにはホースガイド83がビス止めされる。
【0021】
ホースガイド83は送水ホース50をガイドする。ホースガイド83は、送水ホース50を下流側に向けて緩やかに下降させて保持している。
図2及び
図3に示すように、ホースガイド83は、上方が開放された溝状に形成されている。送水ホース50は、ホースガイド83の溝内に挿入されて固定される。ホースガイド83は押さえ部83Aを有している。押さえ部83Aは、ホースガイド83の上端部において、溝の上端を幅方向に接続する板状をなしている。押さえ部83Aは、前ベースプレート40の昇降時等において送水ホース50が溝から外れるのを防止する。
【0022】
図2に示すように、ホースガイド83は、バキュームケース21Aの左方において前後方向に延びて配置されている。
図3に示すように、ホースガイド83は、バキュームケース21Aよりも下方に配置されている。ホースガイド83は、後端から前端に向かって下方に傾斜している。これによって、送水ホース50は、端部51側から端部52側まで、緩やかな下り勾配で配置される。
【0023】
送水ホース50は、例えばシリコーン樹脂等の弾性を有する柔軟な樹脂製であり、屈曲自在である。送水ホース50は、バキュームケース21A内に生じた溢水を前ベースプレート40上に吐水する。送水ホース50は、上流端に相当する端部51をバキュームケース21Aに接続している。送水ホース50は、下流端に相当する端部52を底板41の上面に向けて配置される。端部52は、位置決め部60によって位置決めされつつ、前ベースプレート40上の規制部70の上方に配置される。端部52の開口は規制部70側を向いて下向きに配置される。
【0024】
図2及び
図3に示すように、送水ホース50は、長さ方向中間部よりも下流側の部分においてホースガイド83に固定される。送水ホース50は、ホースガイド83に固定された部分においては屈曲や移動が規制される。送水ホース50は、ホースガイド83に固定された部分の上端からバキュームケース21Aに接続されている部分までの間においては、ガイド部材や支持部材等による支持はされていない。このため、送水ホース50は、ホースガイド83からバキュームケース21Aまでの間において屈曲自在である。これによって、送水ホース50の端部51側の部分は、前ベースプレート40の昇降時において、後ベースプレート30と相対移動に追従して自由に屈曲できる。送水ホース50の下流側(端部52側)は自由端とされる。
【0025】
位置決め部60及び規制部70は、前ベースプレート40における領域Rに設けられている。詳細には、
図5に示すように、位置決め部60及び規制部70は、領域Rにおける排出口40Aの右斜め後方に設けられている。この位置において、送水ホース50の下流側の端部52は、位置決め部60によって水平方向に位置決めされ、規制部70によって下方への移動を規制される。
図4に示すように、位置決め部60は、ポンプカバー82に一体に形成されている。位置決め部60は、ポンプカバー82における固定部82Bの前方に連なって設けられている。位置決め部60は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。位置決め部60は、底板41の上面から上方に離れて配置される。
【0026】
位置決め部60は上下に貫通する貫通孔60Aを形成している。貫通孔60Aは平面視円形状をなしている。位置決め部60は、貫通孔60Aに送水ホース50を貫通させ、貫通孔60Aの内周面を送水ホース50の外周面に対向させる。これによって、位置決め部60は、送水ホース50の下流側の端部52を水平方向において位置決めする。
図5に示すように、平面視における貫通孔60Aの中心Cは、底板41における後部41B上に位置している。これによって、送水ホース50の下流側の端部52は、平面視において底板41の後部41B上に位置決めされる。
【0027】
位置決め部60における貫通孔60Aの内寸は、送水ホース50の外径よりも僅かに大きく設定されている。このため、送水ホース50は、貫通孔60Aの内周面に対して所定の隙間をもって貫通孔60Aに挿入される。本実施形態の場合、位置決め部60は、右斜め前方において一部が切り欠かれている。これは、前ベースプレート40に取り付けられる他の部材との干渉を回避するためである。本開示においては、位置決め部にこのような切欠きを設けることは必須でなく、貫通孔の内周縁が切れ目のない環状に形成されていてもよい。
【0028】
規制部70は、前ベースプレート40の上面から上方に突出して形成されている。規制部70は、送水ホース50の下方への移動を規制する。これによって、規制部70は、送水ホース50の端部52が底板41上面に接触して出口開口が塞がれるのを防止する。
図3及び
図5に示すように、規制部70は、複数(図中3つ)のリブ71,72,73によって構成されている。各リブ71,72,73はそれぞれ薄板状をなし、前ベースプレート40の上面から立ち上がっている。各リブ71,72,73の上端縁の高さは同等である。各リブ71,72,73の上端縁の高さは、位置決め部60の右側に隣接する仕切壁Wの高さよりも低く設定されている。
【0029】
図5に示すように、各リブ71,72,73は、平面視において、位置決め部60における貫通孔60Aの内周縁を内外方向に跨いで放射状に延びている。リブ71は、他のリブ71,72と比較して、貫通孔60Aの中心Cから最も離れた位置まで延びている。具体的には、リブ71は、
図5に示す平面視において、貫通孔60Aの中心Cの左斜め前方から外側方向に直線状に延びている。この方向は、送水ホース50の端部52の位置ずれが生じる可能性のある方向である。これによって、送水ホース50の端部52の位置ずれが生じた場合でも、端部52の下方への移動を確実に規制できるようにしている。
【0030】
上述のように、位置決め部60の貫通孔60Aは、送水ホース50の外径よりも大きな内径で形成されている。このため、送水ホース50は、位置決め部60においては、上下方向には比較的自由に移動可能である。
図2及び
図3に示すように、送水ホース50は、位置決め部60の右斜め後方においてホースガイド83の前端に固定されており、この位置から屈曲しつつ、位置決め部60に挿入されている。したがって、送水ホース50には、位置決め部60の右斜め後方とは反対方向、すなわち位置決め部60の左斜め前方に向けて伸びようとする弾性反発力が作用する。このため、送水ホース50を位置決め部60に挿入する際には、送水ホース50の端部52は位置決め部60から左斜め前方に位置ずれする可能性がある。このため、リブ71を位置決め部60から左斜め前方に延伸させて形成することによって、送水ホース50の端部52に位置ずれが生じた場合でも端部52をリブ71に確実に接触させることができるようにしている。
【0031】
リブ72は、
図5に示す平面視において、位置決め部60の後方のボスB1から前方に向かって貫通孔60Aの内側方向に延びるとともに、貫通孔60Aの内周縁の内側において左方向にL字状に屈曲して貫通孔60Aの外側方向に延びている。
図5におけるボスB1は、ポンプカバー82の固定部82Bが固定される。
【0032】
リブ73は、
図5に示す平面視において、位置決め部60の右側の仕切壁Wから左斜め後方に向かって貫通孔60Aの内側方向に延びるとともに、貫通孔60Aの内周縁の内側において左斜め前方にL字状に屈曲して延びている。リブ71及びリブ72は、それぞれ底板41における後部41Bの上面から接続部41Cの傾斜面に渡って延びている。
【0033】
本実施形態において、規制部70は、
図5に示すように、2つのリブ72,73におけるL字の頂点に相当する部分の間の部分を幅狭部70Aに設定している。幅狭部70Aは、各リブ71,72,73間の間隔の最も幅狭な部分である。幅狭部70Aの間隔は、送水ホース50の外径の半分程度である。これによって、送水ホース50下端面を確実に受けることができるようにしている。
【0034】
送水ホース50から吐水された捨て水は、各リブ71,72,73の間を流通する。各リブ71,72,73は、送水ホース50から吐水される捨て水を排出口40Aの方向に案内する。リブ71,72,73によって形成される捨て水の流路は、位置決め部60における貫通孔60Aの中心Cから左斜め前方に延びるとともに、下流側に向かうにつれて拡開している。
【0035】
図5に示すように、規制部70の後方には規制壁74,75が設けられている。規制壁74,75は、送水ホース50から吐水された捨て水が後方へ流れるのを防止する。規制壁74,75は、規制部70後方のボスB1から左右側方にそれぞれ延びている。ボスB1の右側に位置する規制壁75は、ボスB1右側に隣接する仕切壁Wに接続されている。規制壁74,75の上端縁の高さは、規制部70におけるリブ71,72,73の上端縁よりも高く、仕切壁Wの上端縁の高さと同等である。
【0036】
上記構成の便器装置1の作用及び効果について説明する。便器装置1は、バキュームケース21Aにおいて溢水が生じた場合、その溢水を便鉢部11内に吐出する。溢水は送水ホース50によってバキュームケース21Aから送出される。送水ホース50は、一方の端部51側からバキュームケース21A内の溢水を導入し、もう一方の端部52側から前ベースプレート40上に吐水する。送水ホース50は、上流側の端部51から下流側の端部52まで、下り勾配で配置されている。このため、送水ホース50は、端部51側から端部52側まで、バキュームケース21Aからの溢水を好適に流通させることができる。
【0037】
送水ホース50は、下流側の部分においてホースガイド83によってガイドされて固定されている。送水ホース50は、ホースガイド83によって固定されている部分よりも上流側の部分においては、前ベースプレート40の昇降時に自由に屈曲可能である。これによって、送水ホース50は、前ベースプレート40の昇降による前ベースプレート40と後ベースプレート30との相対移動に追従して屈曲することができる。
【0038】
送水ホース50の下流側の端部52は、位置決め部60の貫通孔60Aに挿入されている。貫通孔60Aは、上下方向に貫通して形成されている。送水ホース50の端部52は、外周面を貫通孔60Aの内周面に対向させて貫通孔60Aに挿入された状態となる。このようにして、送水ホース50は、位置決め部60によって、前ベースプレート40に対して位置決めされている。このため、送水ホース50の下流側の端部52は、前ベースプレート40上の捨て水の吐水位置の上方に好適に位置決めされる。
【0039】
位置決め部60によって位置決めされた状態において、端部52の開口は前ベースプレート40の上面を向いて下向きに配置される。位置決め部60の下方には、規制部70が設けられている。規制部70は、送水ホース50の下方への移動を規制する。このため、送水ホース50の端部52の端面開口が前ベースプレート40の上面と接触して塞がれるのを防止でき、送水ホース50から捨て水を好適に吐水することができる。
【0040】
例えば、送水ホース50の端部52が前ベースプレート40の上面に接触して端面開口が塞がれてしまうと、捨て水の吐水が阻害される。便器装置1は、規制部70によって送水ホース50の下方への移動を規制するため、端面開口が塞がれてしまうことがない。
【0041】
規制部70は、前ベースプレート40の上面から上方に立ち上がる複数のリブ71,72,73を有している。端部52の開口は、規制部70の上端に対向して配置される。このため、仮に送水ホース50の端部52が下方に移動しようとしたとしても、複数のリブ71,72,73の少なくともいずれかの上端に接触し、端部52のそれ以上の下方への移動が規制される。これによって、送水ホース50の端部52の開口と前ベースプレート40の上面との間の隙間を確保することができ、送水ホース50の端部52から捨て水を確実に吐水することができる。
【0042】
規制部70におけるリブ71は、送水ホース50の端部52の位置ずれが生じ得る方向に延伸して形成されている。具体的には、リブ71の延びる方向は、貫通孔60Aの中心Cの左斜め前方から外側方向に向かう方向である。このように、リブ71を位置決め部60から左斜め前方に延伸させて形成することによって、送水ホース50の端部52に位置ずれが生じた場合でも端部52をリブ71に確実に接触させることができる。その結果、送水ホース50の前ベースプレート40の上面との接触を確実に防止できる。
【0043】
規制部70は、各リブ71,72,73によって、前ベースプレート40上に吐水された捨て水を排出口40Aの方向に案内する。このため、送水ホース50から前ベースプレート40上の捨て水の排出口40Aへの流通を促進することができる。すなわち、規制部70は、各リブ71,72,73を板状に形成するとともに、捨て水の流通方向に延伸させて設けていることによって、前ベースプレート40上における捨て水の排出口40Aの方向への流通を促すことができる。
【0044】
規制部70は、各リブ71,72,73間の間隔の最も幅狭な部分である幅狭部70Aを設定している。幅狭部70Aの間隔は、送水ホース50の外径の半分程度に設定している。このため、送水ホース50の前ベースプレート40の上面との接触を確実に防止できる。
【0045】
規制部70は、各リブ71,72,73を貫通孔60Aの中心Cから外側方向に向けて拡開して形成している。このため、送水ホース50からの捨て水の吐水を促進することができる。
【0046】
以上のように、実施形態1に係る便器装置1は、ベースプレートとしての前ベースプレート40、送水ホース50、位置決め部60、及び規制部70を備えている。前ベースプレート40は、便鉢部11を有する便器本体10の後部上面に配置される。送水ホース50は、便鉢部11内に吐出する水としてのバキュームケース21Aの溢水を流通させて前ベースプレート40上に吐水する。位置決め部60は、送水ホース50を前ベースプレート40に対して位置決めする。規制部70は、前ベースプレート40の上面から上方に突出して設けられ、送水ホース50の下方への移動を規制する。
【0047】
このような構成によって、便器装置1は、前ベースプレート40上への安定的な吐水を、簡易な構成によって実現できる。
【0048】
便器装置1において、規制部70は複数設けられている。すなわち、規制部70は、複数のリブ71,72,73を有して構成されている。このため、送水ホース50の下方への移動を確実に規制することができる。
【0049】
便器装置1において、規制部70は、送水ホース50の位置ずれの生じる方向に延びている。このため、送水ホース50の位置ずれが生じた場合でも、送水ホース50の下方への移動を確実に規制することができる。
【0050】
便器装置1において、規制部70は、送水ホース50から前ベースプレート40上に吐水された捨て水を便鉢部11に吐出するための排出口40Aの方向に案内する。このため、前ベースプレート40上での捨て水の流通を促進することができる。
【0051】
便器装置1において、位置決め部60は、前ベースプレート40に取り付けられる他の部材としてのポンプカバー82に設けられている。このため、位置決め部を独立させて設ける場合と比較して、組付け作業性及びスペース効率の向上を図ることができる。
【0052】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)ベースプレートの構成は、上記実施形態の構成に限定されない。ベースプレートは、例えば、前後に分割されることなく一体に設けられていてもよいし、3つ以上に分割されていてもよい。
【0054】
(2)本開示に係る送水ホースから吐水される水は、上記実施形態において例示したバキュームケースの溢水に限定されない。本開示に係る送水ホースから吐水される水は、例えば、局部洗浄ユニットの洗浄水の余剰水等、便器装置において生じる他の捨て水であってもよい。本開示に係る送水ホースから吐水される水は、捨て水に限らず、例えば、洗浄水、冷却水等、吐出された後に目的をもって用いられる水であってもよい。
【0055】
(3)位置決め部の構成は、上記実施形態の構成に限定されない。位置決め部がベースプレートに取り付けられる他の部材に設けられる場合、他の部材としては、例えば、便器洗浄ユニット、昇降ユニット、便座及び便蓋の電動開閉ユニット、局部洗浄ユニット、温風乾燥ユニット、脱臭ユニット等のベースプレートに取り付けられる各種ユニットを構成する部材のいずれかであることができる。位置決め部は、他の部材に設けられず、独立して設けられていてもよい。
【0056】
(4)規制部の構成は上記実施形態の構成に限定されない。規制部が複数設けられている場合、その数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0057】
(5)送水ホースは、規制部に予め接触した状態で配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…便器装置、10…便器本体、11…便鉢部、40…前ベースプレート(ベースプレート)、40A…排出口、50…送水ホース、60…位置決め部、70…規制部