(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105827
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】画像処理装置、及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20220708BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20220708BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H01J37/22 502E
H01J37/22 502F
H01J37/28 B
H01J37/28 C
H01J37/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000405
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】久原 健一
【テーマコード(参考)】
5C033
【Fターム(参考)】
5C033NN01
5C033NN02
5C033NN03
5C033SS07
5C033UU04
5C033UU05
(57)【要約】
【課題】事前に調整用のデータを用意することなく、自動で電子顕微鏡像の輝度やコントラストを調整することが可能な画像処理装置等を提供すること。
【解決手段】画像処理装置は、検出器のゲインを段階的に大きくし、その度に、電子顕微鏡像の輝度分布幅を取得して、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部に記憶させる輝度分布幅取得部と、記憶部に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅に基づいて、ゲイン値と輝度分布幅との関係式を導出する関係式導出部と、導出された関係式に基づき算出したゲイン値を調整後のゲインとして設定するゲイン設定部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線で試料を走査する電子顕微鏡の検出器のゲイン及びオフセットを調整することで電子顕微鏡像の輝度及びコントラストを調整する画像処理装置であって、
前記ゲインを段階的に大きくし、その度に、電子顕微鏡像の輝度分布幅を取得して、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部に記憶させる輝度分布幅取得部と、
前記記憶部に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅に基づいて、ゲイン値と輝度分布幅との関係式を導出する関係式導出部と、
前記関係式に基づき算出したゲイン値を調整後の前記ゲインとして設定するゲイン設定部とを含む、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記関係式は、2次関数の関係式である、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記オフセットを段階的に大きくし、その度に、電子顕微鏡像の輝度分布を取得し、取得した輝度分布の下端が予め指定された値以上になったときのオフセット値を調整後の前記オフセットとして設定するオフセット設定部を更に含む、画像処理装置。
【請求項4】
電子線で試料を走査する電子顕微鏡の検出器のゲイン及びオフセットを調整することで電子顕微鏡像の輝度及びコントラストを調整する画像処理方法であって、
前記ゲインを段階的に大きくし、その度に、電子顕微鏡像の輝度分布幅を取得して、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部に記憶させる輝度分布幅取得ステップと、
前記記憶部に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅に基づいて、ゲイン値と輝度分布幅との関係式を導出する関係式導出ステップと、
前記関係式に基づき算出したゲイン値を調整後の前記ゲインとして設定するゲイン設定ステップとを含む、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査透過電子顕微鏡(STEM)の検出器から取り込んだSTEM像はコンピュータの電顕本体制御ソフトウェアで処理され、表示デバイスに表示される。ユーザ(オペレータ)は、表示されたSTEM像を観察する際に見栄えを良くするために、電顕本体制御ソフトウェアにて検出器のゲインとオフセットを調整することで、STEM像の輝度及びコントラストを調整する。自動でゲインとオフセットを調整するオートゲインオフセットの手法としては、基準ヒストグラムを用いた手法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手法では、事前に基準ヒストグラムやテーブル等のデータを用意しておく必要があり、使い勝手が悪かった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、事前に調整用のデータを用意することなく、自動で電子顕微鏡像の輝度やコントラストを調整することが可能な、画像処理装置、及び画像処理方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る画像処理装置は、電子線で試料を走査する電子顕微鏡の検出器のゲイン及びオフセットを調整することで電子顕微鏡像の輝度及びコントラストを調整する画像処理装置であって、前記ゲインを段階的に大きくし、その度に、電子顕微鏡像の輝度分布幅を取得して、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部に記憶させる輝度分布幅取得部と、前記記憶部に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅に基づいて、ゲイン値と輝度分布幅との関係式を導出する関係式導出部と、前記関係式に基づき算出したゲイン値を調整後の前記ゲインとして設定するゲイン設定部とを含む。
【0007】
また、本発明に係る画像処理方法は、電子線で試料を走査する電子顕微鏡の検出器のゲイン及びオフセットを調整することで電子顕微鏡像の輝度及びコントラストを調整する画像処理方法であって、前記ゲインを段階的に大きくし、その度に、電子顕微鏡像の輝度分布幅を取得して、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部に記憶させる輝度分布幅取得ステップと、前記記憶部に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅に基づいて、ゲイン値と輝度分布幅との関係式を導出する関係式導出ステップと、前記関係式に基づき算出したゲイン値を調整後の前記ゲインとして設定するゲイン設定ステップとを含む。
【0008】
本発明によれば、検出器のゲインを段階的に大きくする度に電子顕微鏡像の輝度分布幅を取得し、取得したゲイン値毎の輝度分布幅に基づいてゲイン値と輝度分布幅との関係式を導出し、当該関係式に基づきゲイン値を算出することで、基準ヒストグラムやテーブル等の調整用データを事前に用意することなく、自動で電子顕微鏡像の輝度やコントラスト
を調整することができる。
【0009】
(2)本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法では、前記関係式は、2次関数の関係式であってもよい。
【0010】
(3)本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法では、前記オフセットを段階的に大きくし、その度に、電子顕微鏡像の輝度分布を取得し、取得した輝度分布の下端が予め指定された値以上になったときのオフセット値を調整後の前記オフセットとして設定するオフセット設定部(オフセット設定ステップ)を更に含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図の一例を示す図。
【
図3】ゲイン及びオフセットを0にしたときのSTEM像の輝度分布の一例を示す図。
【
図4】オフセットを大きくしたときのSTEM像の輝度分布の一例を示す図。
【
図5】ゲインを大きくしたときのSTEM像の輝度分布の一例を示す図。
【
図7】
図6に示すパターンAのデータをプロットしたグラフを示す図。
【
図9】本実施形態の画像処理装置の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
1.構成
図1に、本実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図の一例を示す。ここでは、電子線で試料を走査する電子顕微鏡が、走査透過電子顕微鏡(STEM)である場合について説明するが、当該電子顕微鏡は、走査電子顕微鏡(SEM)であってもよい。なお本実施形態の画像処理装置は
図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0014】
画像処理装置1は、走査透過電子顕微鏡100に備わる検出器101(透過電子検出器)のゲイン及びオフセットを調整することで、検出器101からの検出信号に基づくSTEM像(検出信号を走査信号に同期させて画像化した電子顕微鏡像)の輝度及びコントラストを調整する装置である。画像処理装置1は、処理部10、表示部20、記憶部30を含む。
【0015】
表示部20は、処理部10によって生成された画像(STEM像)を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。
【0016】
記憶部30は、処理部10の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部10のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、RAMなどにより実現できる。
【0017】
処理部10(コンピュータ)は、走査透過電子顕微鏡100を制御する処理や、検出器101からの検出信号に基づきSTEM像を生成して表示部20に表示させる処理等を行う。処理部10の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部10は、検出器101に制御信号を出力して検出器
101のオフセット及びゲインを調整する処理を行う。検出器101に備わるオフセット調整回路は、処理部10からの制御信号で指定されたオフセットを検出信号に与え(加え)、検出器101に備わるゲイン調整回路は、処理部10からの制御信号で指定されたゲインで検出信号を増幅する。処理部10は、オフセット設定部11、輝度分布幅取得部12、関係式導出部13、ゲイン設定部14を含む。
【0018】
オフセット設定部11は、検出器101のオフセットを段階的に大きくし、その度に、STEM像の輝度分布(輝度値ヒストグラム)を取得し、取得した輝度分布の下端が予め指定された値(輝度分布有効範囲の下端)以上になったときのオフセット値を調整後(調整済み)のオフセットとして設定する。
【0019】
輝度分布幅取得部12は、検出器101のゲインを段階的に大きくし、その度に、STEM像の輝度分布幅(輝度分布の上端の輝度値と下端の輝度値との差)を取得して、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部30に記憶させる。
【0020】
関係式導出部13は、記憶部30に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅に基づいて、ゲイン値と輝度分布幅との関係式(2次関数の関係式)を導出する。
【0021】
ゲイン設定部14は、関係式導出部13で導出された関係式に基づき算出したゲイン値を調整後(調整済み)のゲインとして設定し、当該ゲイン値を指定する制御信号を検出器101に出力する。
【0022】
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について図面を用いて説明する。
【0023】
図2は、STEM像の輝度分布の一例を示す図である。図中横軸は輝度を示し、縦軸は度数(画素数)を示す。STEM像の輝度分布の上端DUと下端DLとの差が、STEM像の輝度分布幅となる。なお、輝度分布の上端DU、下端DLは、輝度分布の外れ値を除いた上端、下端とする。ユーザは、輝度分布有効範囲の上端EUと下端ELを予め指定しておく。輝度分布有効範囲の上端EUは最大輝度値MB以下の任意の値であり、下端ELは最小輝度値(0)以上の任意の値である。STEM像の輝度分布が輝度分布有効範囲に広がりつつ飽和しないように収まれば、STEM像の輝度及びコントラストの調整が理想的に行われたことになる。
【0024】
STEM像の輝度及びコントラストの調整では、まず、初期処理として、ユーザの操作に基づいて輝度分布有効範囲の上端EUと下端ELを設定し、検出器101のゲインとオフセットをそれぞれ0にする。この初期処理により、
図3に示すように、STEM像の輝度分布はほぼ輝度「0」のみになる。なお、ゲイン及びオフセットの初期値は必ずしも0にする必要はなく、条件によっては0以外でも問題ない場合もある。この場合、以降の処理のループ数を減らすことができ、STEM像の輝度/コントラスト調整にかかる処理時間を短くすることができる。
【0025】
次に、検出器101のオフセットを段階的に多くする。
図4に示すように、検出器101のオフセットを大きくすると、STEM像の輝度分布は輝度が高くなる方向に移動する(STEM像の輝度が高くなる)。そして、STEM像の輝度分布の下端DLが輝度分布有効範囲の下端EL以上になるまでオフセットを大きくし、輝度分布の下端DLが輝度分布有効範囲の下端EL以上になったときのオフセット値を調整後のオフセットとして設定する。
【0026】
次に、検出器101のゲインを段階的に大きくし、その度にSTEM像の輝度分布幅(
上端DU、下端DL)を取得し、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部30に記憶しておく。
図5に示すように、検出器101のゲインを大きくすると、STEM像の輝度分布幅が大きくなる(STEM像のコントラストが高くなる)。ゲインは、輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EUを超えるまで大きくする。
【0027】
ここで、ゲインを段階的に大きくする際の適切なゲインの増加量は、装置の状態や試料などに依存する。ゲイン値毎の輝度分布幅のデータ数は、以降の処理で2次近似する際に一定数必要になる。ゲインの増加量を小さく設定すれば、2次近似の精度は上がるが、輝度/コントラスト調整にかかる時間は増大してしまう。この段階ではどのくらいゲインを大きくすれば必要な輝度分布幅になるのかが分からない。そこで、ゲインの増加量の初期値を決めておき、ゲインを初期値の増加量ずつ大きくして輝度分布幅を取得していき、輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EUを超えた際に、それまでに取得したゲイン値毎の輝度分布幅のデータ数が必要数に足りない場合には、ゲインの増加量の初期値を半分にするなどして再度やり直すようにする。例えば、ゲインの増加量の初期値が10000で、且つ必要データ数が3の場合、初期値では2つしかデータが取れなかったとする。この場合、ゲインの増加量の初期値を半分の5000にしてやり直し、以降、取得データ数が必要データ数に達するまで繰り返す。
【0028】
図6は、記憶部30に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅の一例を示す図である。
図6では、データの取得パターンとして3つのパターン(パターンA、パターンB、パターンC)を示している。パターンAでは、ゲインを1000ずつ大きくする度に輝度分布幅を取得し、ゲインが43000になるまで19個のデータを取得している。パターンBでは、取得データ数を削減するために、ゲインの増加量に係数「2」を乗算しながら増加量を1000、2000、4000・・・としてゲインを大きくする度に輝度分布幅を取得し、5個のデータを取得している。このようにゲインの増加量が段々増えていくと、後半のデータ数が少なくなることで2次近似の精度が下がる場合がある。また、STEM像によっては2次近似した際に上に凸の2次関数になる場合(ゲインがある一定以上になるとゲインを大きくしても輝度分布幅が大きくならなくなる場合)がある。この場合、後半のデータ数が足らないことで、上に凸の2次関数であるのか下に凸の2次関数であるのか適切に判定できなくなる可能性がある。そこで、輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EUを超えた際に、一旦直前のゲインに設定し直し、そこからゲインの増加量を初期値に戻してデータを取得し直し、輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EUを超えるまで繰り返す。この際に、データ数を増やすために、ゲインの増加量に係数を乗算しないようにする。パターンCでは、ゲインが40000になるまではパターンBと同様であるが、次のゲインが56000になり、輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EUを超えるため、一旦ゲインを40000まで戻し、以降はゲインの増加量を1000に固定し、ゲインを41000、42000・・・として輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EUを超えるまでデータを取得している。パターンCでは、8個のデータを取得している。
【0029】
次に、記憶部30に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅に基づいて、ゲイン値と輝度分布幅との関係式(2次関数の近似式)を導出する。すなわち、ゲイン値をG、輝度分布幅をw(G)としたとき、2次関数w(G)=aG
2+bG+cに、ゲイン値と輝度分布幅をフィッティングして当該2次関数の係数a、b、cを求める。
図7は、
図6に示すパターンAのデータをプロットしたグラフを示す図であり、図中破線は、当該データから導出された2次関数の近似曲線を示す。
【0030】
次に、導出した2次関数と、最適な(目標とする)輝度分布幅woとに基づいて、最適なゲイン値Goを求める。
図8に示すように、最適な輝度分布幅woは、輝度分布有効範囲の上端EUと輝度分布の下端DL(オフセット調整後の輝度分布の下端DL)との差で
ある。よって、w(G)=woのときのゲイン値Gが最適なゲイン値Goとなり、このゲイン値Goを調整後のゲイン値として設定する。wo=aG
2+bG+cを解くと解が2つ求められるが、ゲインを増やすほど輝度分布幅は大きくなるため、下に凸の2次関数になる。従って、大きい方の解をゲイン値Goとする。
【0031】
このように本実施形態によれば、STEM像の輝度分布の下端DLが輝度分布有効範囲の下端EL以上になるように検出器101のオフセットを調整した後、検出器101のゲインを段階的に大きくする度にSTEM像の輝度分布幅を取得し、取得したゲイン値毎の輝度分布幅に基づいてゲイン値と輝度分布幅との関係式を導出し、導出した関係式に最適な輝度分布幅woを代入して求めたゲイン値Goを調整後のゲインとして設定することで、基準ヒストグラムやテーブル等の調整用データを事前に用意することなく、自動でSTEM像の輝度やコントラストを調整することができる。特に本実施形態では、検出器101のゲイン値とSTEM像の輝度分布幅の関係が2次関数に近似することに着目して関係式を導出することで、検出器101のゲイン調整によるSTEM像のコントラスト調整を適切に行うことができる。
【0032】
3.処理
次に、本実施形態の画像処理装置の処理の一例について
図9のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
まず、処理部10は、ユーザによって指定された輝度分布有効範囲(上端EU、下端EL)を設定する(ステップS10)。次に、処理部10は、検出器101に制御信号を出力して検出器101のゲイン及びオフセットを0にする(ステップS11)。
【0034】
次に、オフセット設定部11は、検出器101からの検出信号に基づくSTEM像の輝度分布を取得し(ステップS12)、取得した輝度分布の下端DLが輝度分布有効範囲の下端EL以上であるか否かを判断する(ステップS13)。輝度分布の下端DLが輝度分布有効範囲の下端EL未満である場合(ステップS13のN)には、オフセット設定部11は、検出器101に制御信号を出力して検出器101のオフセットを所定量だけ増加させ(ステップS14)、ステップS12に移行する。輝度分布の下端DLが輝度分布有効範囲の下端EL以上である場合(ステップS13のY)には、そのときの検出器101のオフセット値が調整後のオフセット値となり、ステップS15に移行する。
【0035】
次に、輝度分布幅取得部12は、検出器101に制御信号を出力して検出器101のゲインを所定量だけ増加させ(ステップS15)、検出器101からの検出信号に基づくSTEM像の輝度分布幅(輝度分布の上端DU、下端DL)を取得し、取得した輝度分布幅をそのときのゲイン値に対応付けて記憶部30に記憶させる(ステップS16)。次に、輝度分布幅取得部12は、取得した輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EU以上であるか否かを判断し(ステップS17)、輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EU未満である場合(ステップS17のN)には、ステップS15に移行する。
【0036】
取得した輝度分布の上端DUが輝度分布有効範囲の上端EU以上である場合(ステップS17のY)には、関係式導出部13は、記憶部30に記憶されたゲイン値毎の輝度分布幅を2次近似して、ゲイン値と輝度分布幅との関係式(2次近似式)を導出する(ステップS18)。次に、ゲイン設定部14は、導出された関係式と最適な輝度分布幅woに基づきゲイン値Goを算出し、算出したゲイン値Goを調整後のゲイン値として設定し、当該ゲイン値を指定する制御信号を検出器101に出力する(ステップS19)。
【0037】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及
び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0038】
1…画像処理装置、10…処理部、11…オフセット設定部、12…輝度分布幅取得部、13…関係式導出部、14…ゲイン設定部、20…表示部、30…記憶部、100…走査透過電子顕微鏡、101…検出器