(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105871
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】浮遊物除去装置及び液浄化システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
C02F1/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000469
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】501141769
【氏名又は名称】株式会社industria
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】中村 順一
【テーマコード(参考)】
4D051
【Fターム(参考)】
4D051DA04
4D051DA08
4D051DA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構造で、効率よく、液体の液面に存在する浮遊物を除去することが可能な浮遊物除去装置、及び液浄化システムを提供する。
【解決手段】除去ベルト40は、互いに平行に配列した複数のワイヤと、複数のワイヤの両端を保持する一対の可撓性枠体と、を含み、一対の可撓性枠体により屈曲可能な構成であり、除去ベルト40は、駆動ローラ30と支持ローラ20により回転し、複数のワイヤに、液体の液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に接するように配置された支持ローラと、
液体に接しないように配置された駆動ローラと、
前記支持ローラと前記駆動ローラに掛け渡された除去ベルトと、を含み、
前記除去ベルトは、
互いに平行に配列した複数のワイヤと、
前記複数のワイヤの両端を保持する一対の可撓性枠体と、を含み、
前記一対の可撓性枠体により屈曲可能な構成であり、
前記除去ベルトは、前記駆動ローラと前記支持ローラにより回転し、
前記複数のワイヤに、液体の液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成であることを特徴とする浮遊物除去装置。
【請求項2】
かき落とし部材を備え、
前記かき落とし部材は、
前記複数のワイヤに付着する浮遊物をかき落として除去する構成であることを特徴とする請求項1に記載の浮遊物除去装置。
【請求項3】
浮遊物を回収する樋部材を備え、
前記樋部材は、前記除去ベルトにより除去された浮遊物を受けて回収する構成であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浮遊物除去装置。
【請求項4】
装置に供給する液体を貯留する供給タンクと、
液体を前記供給タンクから前記装置に供給し、この装置で用いた液体を前記供給タンクへ送り循環させて供給する循環供給経路と、を備え、
前記供給タンクに
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の微細物除去装置を配置し、液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成であることを特徴とする液浄化システム。
【請求項5】
前記環供給経路に遠心分離装置を配置し、
前記遠心分離装置は、
前記供給タンクから供給される液体から微細物を遠心力により分離し、この微細物を分離した液体を前記装置に供給し、分離された微細物を沈降させる構成であることを特徴とする請求項4に記載の液浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体の液面に存在する浮遊物を除去する浮遊物除去装置及び液浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、機械加工装置では、供給タンクから切削液を供給しながら切削加工が行なわれ、切削液には微粉末状の切削クズが含まれる。この微粉末状の切削クズが含まれる切削液をフィルタ装置に供給し、このフィルタ装置で切削クズを除去して切削液を供給タンクに戻している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、切削クズを除去して切削液を供給タンクに戻しているが、供給タンクに貯留された切削液の液面に浮遊物が浮かび、この浮遊物には、泡や切削クズが混入しており、切削液の浄化の妨げとなる。
【0005】
また、例えばフィルタ膜によって切削クズを除去したり、沈殿によって切削クズを除去するものがあるが、切削液の液面に浮遊物を除去しないと、切削液の循環においてフィルタ膜が目詰まりを起こすことがあり、詰まってしまった場合まずフィルタ装置の分解作業をし、そのフィルタ膜を洗浄しなければならない。この洗浄作業や使用不能になると交換作業が発生する。
【0006】
例えば、回転盤やベルトを用い、液面に浮かぶ浮遊物を回転盤やベルトの表面に付着させて除去することが考えられるが、回転盤やベルトの表面に効率よく浮遊物を付着させることが困難であり、浮遊物を除去する効率が悪かった。
【0007】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、効率よく、液体の液面に存在する浮遊物を除去することが可能な浮遊物除去装置及び液浄化システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0009】
請求項1に記載の発明は、液体に接するように配置された支持ローラと、
液体に接しないように配置された駆動ローラと、
前記支持ローラと前記駆動ローラに掛け渡された除去ベルトと、を含み、
前記除去ベルトは、
互いに平行に配列した複数のワイヤと、
前記複数のワイヤの両端を保持する一対の可撓性枠体と、を含み、
前記一対の可撓性枠体により屈曲可能な構成であり、
前記除去ベルトは、前記駆動ローラと前記支持ローラにより回転し、
前記複数のワイヤに、液体の液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成であることを特徴とする浮遊物除去装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、かき落とし部材を備え、
前記かき落とし部材は、
前記複数のワイヤに付着する浮遊物をかき落として除去する構成であることを特徴とする請求項1に記載の浮遊物除去装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、浮遊物を回収する樋部材を備え、
前記樋部材は、前記除去ベルトにより除去された浮遊物を受けて回収する構成であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浮遊物除去装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、装置に供給する液体を貯留する供給タンクと、
液体を前記供給タンクから前記装置に供給し、この装置で用いた液体を前記供給タンクへ送り循環させて供給する循環供給経路と、を備え、
前記供給タンクに
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の微細物除去装置を配置し、液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成であることを特徴とする液浄化システムである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記環供給経路に遠心分離装置を配置し、
前記遠心分離装置は、
前記供給タンクから供給される液体から微細物を遠心力により分離し、この微細物を分離した液体を前記装置に供給し、分離された微細物を沈降させる構成であることを特徴とする請求項4に記載の液浄化システムである。
【発明の効果】
【0014】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0015】
請求項1乃至請求項5に記載の発明では、除去ベルトは、互いに平行に配列した複数のワイヤと、複数のワイヤの両端を保持する一対の可撓性枠体と、を含み、一対の可撓性枠体により屈曲可能な構成であり、除去ベルトは、駆動ローラと支持ローラにより回転し、複数のワイヤに、液体の液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成であることで、浮遊物が付着する面積が拡大し、簡単な構造で、効率よく、液体の液面に存在する浮遊物を除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図7】循環供給経路に微細物除去装置を配置した液浄化システムの実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の浮遊物除去装置及び液浄化システムの実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0018】
この発明の浮遊物除去装置及び液浄化システムは、製薬、化学、食品、飲料の原料他の微細物の除去に、また自動車工業、工作機、工作機械、工作機器などによる加工業の切削粉等の微細物の除去に、また各工場、水処理等の循環水、排水から半導体、バイオ等の不純物等の微細物の除去に、また洗浄水、溶剤等の異物である微細物の除去等に使用され、液体に含まれる微細物を分離除去するものに広く使用される。
【0019】
(微細物除去装置)
この実施の形態の微細物除去装置を、
図1乃至
図6に基づいて説明する。
図1は微細物除去装置の側面図、
図2は駆動機構を示す図、
図3は除去ベルトを示す図、
図4はワイヤの配置を示す図、
図5はワイヤの縦方向の配置を示す図、
図6はかき落とし部材を示す図である。
【0020】
この実施の形態の微細物除去装置10は、装置に供給する液体を貯留する供給タンク100に備えられ、液体に含まれる微細物を分離除去するものに使用される。この微細物除去装置10は、液体に接するように配置された支持ローラ20と、液体に接しないように配置された駆動ローラ30と、支持ローラ20と駆動ローラ30に掛け渡された除去ベルト40と、を含む構成である。
【0021】
供給タンク100には、本体ケース50が設けられ、この本体ケース50に支持バー51が高さを調節可能に設けられている。支持バー51には、支持ローラ20が回転可能に支持され、本体ケース50には、駆動ローラ30が回転可能に支持される。支持ローラ20は、液体に接するように配置され、駆動ローラ30は、液体に接しないように配置されている。
【0022】
支持ローラ20は、両側にガイドフランジ21を有し、ガイドフランジ21の内側には、スプライン溝によって滑り止め部22が形成されている。駆動ローラ30も支持ローラ20と同様に、両側にガイドフランジ31を有し、ガイドフランジ31の内側には、スプライン溝によって滑り止め部32が形成されている。
【0023】
駆動ローラ30には、駆動モータ60が接続されている。この駆動モータ60の駆動によって、駆動ローラ30が回転し、支持ローラ20と駆動ローラ30に掛け渡された除去ベルト40が回転する構成である。
【0024】
除去ベルト40は、互いに平行に配列した複数のワイヤ41と、複数のワイヤ41の両端を保持する一対の可撓性枠体42と、を含み、一対の可撓性枠体42により屈曲可能な構成である。
【0025】
このワイヤ41は、例えば、断面円形状のワイヤであり、金属材あるいは樹脂材で成形される。このワイヤ41は、液体の液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な径であり、各ワイヤ41の間隙Lの大きさは付着した浮遊物を保持可能な大きさであり、例えば、0.1mm程度が好ましいが、これに限定されることなく浮遊物に応じて設定でき、設定できる最小間隙は20ミクロン程度まで可能である。
【0026】
ワイヤ41は、
図4(c)及び
図5(c)に示すように、断面楔状のワイヤを用いてもよいし、
図4(d)及び
図5(d)に示すように、断面半円形状のワイヤを用いてもよく、さらにこれらに限定されない。
【0027】
一対の可撓性枠体42は、ゴム材または樹脂材で成形される。ゴム材は、例えば液体に対する耐薬品性を有するとともに、伸縮性を有する材料、例えば、耐薬品性ゴム、フッ素系ゴム、耐薬品性エラストマーなどを好適に採用することができる。
【0028】
樹脂材は、可撓性を有する樹脂であれば特に限定されないが、洗浄操作に耐え得る機械的強靱性、屈曲部に対する追従性、及び化学的耐性が要求される観点から、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリオレフィン複合フィラメント(芯ポリプロピレン、鞘ポリエチレン)等が好ましい。
【0029】
一対の可撓性枠体42は、支持ローラ20の滑り止め部22と、駆動ローラ30の滑り止め部32に位置するように掛け渡されており、支持ローラ20のガイドフランジ21と、駆動ローラ30のガイドフランジ31に案内されて円滑に回転する。
【0030】
このように、除去ベルト40は、駆動ローラ30と支持ローラ20により回転し、複数のワイヤ41に、液体の液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成であり、複数のワイヤ41によって浮遊物が付着する面積が広くなり、しかも複数のワイヤ41の間に形成された隙間Lに浮遊物が溜まり、効率よく液体の液面に存在する浮遊物を除去することができる。
【0031】
この微細物除去装置10は、かき落とし部材70、71と、浮遊物を回収する樋部材80を備える。かき落とし部材70、71は、複数のワイヤ41に付着する浮遊物をかき落として除去する構成であり、かき落とし部材70は、除去ベルト40の内側位置に配置され、かき落とし部材71は、除去ベルト40の外側位置に配置されている。
【0032】
かき落とし部材70は、支持プレート70a、かき落としバー70b、取り付け部材70cから構成され、支持プレート70aによって本体ケース50に設けられる。かき落とし部材71は、かき落とし部材70と同様に、支持プレート71a、かき落としバー71b、取り付け部材71cから構成され、支持プレート71aによって本体ケース50に設けられる。かき落とし部材70のかき落としバー70bが、除去ベルト40の内側から複数のワイヤ41の内側に付着する浮遊物を欠き落とし、かき落とし部材71のかき落としバー71bが、除去ベルト40の外側から複数のワイヤ41の外側に付着する浮遊物をかき落とす。
【0033】
樋部材80は、除去ベルト40により除去された浮遊物を受けて回収する構成であり、かき落とし部材70のかき落としバー70b及びかき落とし部材71のかき落としバー71bの下方位置に配置される。かき落とし部材70及びかき落とし部材71によって、複数のワイヤ41に付着する浮遊物をかき落とすと、樋部材80の上に落下し、浮遊物は樋部材80上を流れて回収される。
【0034】
(液浄化システム)
この実施の形態の液浄化システムを、
図7に基づいて説明する。
図7は循環供給経路に微細物除去装置を配置した液浄化システムの実施の形態を示す図である。
【0035】
図7(a)の実施の形態の液浄化システム200は、装置201に供給する液体を貯留する供給タンク203と、液体を供給タンク203から装置201に供給し、この装置201で用いた液体を供給タンク203へ送り循環させて供給する循環供給経路204と、を備える。
【0036】
装置201は、例えば、金属加工を行う加工装置であり、液体は、加工時に冷却して熱による損傷を防止する加工液である。循環供給経路204には、供給ポンプ205が配置され、この供給ポンプ205の駆動により供給タンク203に貯留する加工液を、循環供給経路204を介して装置201に供給する。
【0037】
この供給タンク203に、微細物除去装置10を備え、この微細物除去装置10は、
図1乃至
図6に示すように構成され、供給タンク203の液面に存在する浮遊物が付着して除去可能な構成である。
【0038】
図7(b)の実施の形態の液浄化システム200は、
図7(a)の実施の形態と同様に構成されるが、この形態では、循環供給経路204に遠心分離装置210を配置している。
【0039】
この遠心分離装置210は、供給タンク203から供給される液体から微細物を遠心力により分離し、この微細物を分離した液体を装置201に供給し、分離された微細物を沈降させる構成であり、下部に沈殿カップ211が接続されている。この沈殿カップ211は、着脱可能になっており、取り外すことで沈殿した微細物を一度に排出することができる。また、沈殿カップ211に沈殿した微細物を排出する排出口を設け、排出バルブの手動操作で排出口から沈殿した微細物を排出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、液体の液面に存在する浮遊物を除去する浮遊物除去装置及び液浄化システムに適用可能であり、簡単な構造で、効率よく、液体の液面に存在する浮遊物を除去することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 微細物除去装置
20 支持ローラ
21 ガイドフランジ
22 滑り止め部
30駆動ローラ
31 ガイドフランジ
32 滑り止め部
40 除去ベルト
41 ワイヤ
42 可撓性枠体
50 本体ケース
51 支持バー
70,71 かき落とし部材
80 樋部材
100,203 供給タンク
200 液浄化システム
201 装置
204 循環供給経路
205 供給ポンプ
210 遠心分離装置