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特開2022-105872有機無機ハイブリッド材料及び複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105872
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】有機無機ハイブリッド材料及び複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220708BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220708BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000470
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000198477
【氏名又は名称】石塚硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹也
(72)【発明者】
【氏名】新妻 貴明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP051
4J002CP061
4J002CP141
4J002CP161
4J002DG010
4J002DG020
4J002DG060
4J002DH000
4J002FD200
4J002GH01
4J002GJ02
4J002GK00
4J002GP01
(57)【要約】
【課題】QDの凝集を抑制できる有機無機ハイブリッド材料及び複合材料を提供すること。
【解決手段】平均組成式である式(1)により表される有機無機ハイブリッド材料。式(1):SiR (OX)(O1/2(Rは不飽和炭素結合を含み、芳香環を含まない有機官能基である。Rは芳香環を含み、芳香環以外では不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。Rは不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。aは0.04以上0.26以下である。bは0.13以上である。cは0.09以上である。dは0以上である。eは0以上である。a、b、及びcの和は1.04以上1.49以下である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均組成式である式(1)により表される有機無機ハイブリッド材料。
式(1) SiR (OX)(O1/2
(式(1)におけるRは不飽和炭素結合を含み、芳香環を含まない有機官能基である。式(1)におけるRは芳香環を含み、芳香環以外では不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。式(1)におけるRは不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。式(1)におけるXは水素又はアルキル基である。式(1)におけるO1/2は架橋酸素である。式(1)におけるaは0.04以上0.26以下の数値である。式(1)におけるbは0.13以上の数値である。式(1)におけるcは0.09以上の数値である。式(1)におけるdは0以上の数値である。式(1)におけるeは0以上の数値である。a、b、及びcの和は1.04以上1.49以下である。a、b、c、d、及びeの和は4である。)
【請求項2】
請求項1に記載の有機無機ハイブリッド材料であって、
前記Rは、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びアリル基から成る群から選択される1以上であり、
前記Rは、フェニル基、4-メトキシフェニル基、及びベンジル基から成る群から選択される1以上であり、
前記Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、及びオクタデシル基から成る群から選択される1以上である、
有機無機ハイブリッド材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機無機ハイブリッド材料であって、
数平均分子量が200以上3000以下であり、
液体である、
有機無機ハイブリッド材料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の有機無機ハイブリッド材料であって、
硬化物である、
有機無機ハイブリッド材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料と、
前記有機無機ハイブリッド材料の中で分散している量子ドットと、
を含む複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は有機無機ハイブリッド材料及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子複合化樹脂の製造方法が特許文献1に開示されている。この製造方法では、無機粒子の表面を、表面修飾剤により修飾する。次に、無機粒子を樹脂の中に分散させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-210385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、量子ドット(QD)を利用する技術が注目されている。QDを利用した材料として、マトリックスとなる組成物と、その組成物の中で分散しているQDと、を含む複合材料が考えられる。しかしながら、QDは組成物の中で凝集し易い。
【0005】
本開示の1つの局面では、QDの凝集を抑制できる有機無機ハイブリッド材料及び複合材料を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面は、平均組成式である式(1)により表される有機無機ハイブリッド材料である。
式(1) SiR (OX)(O1/2
(式(1)におけるRは不飽和炭素結合を含み、芳香環を含まない有機官能基である。式(1)におけるRは芳香環を含み、芳香環以外では不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。式(1)におけるRは不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。式(1)におけるXは水素又はアルキル基である。式(1)におけるO1/2は架橋酸素である。式(1)におけるaは0.04以上0.26以下の数値である。式(1)におけるbは0.13以上の数値である。式(1)におけるcは0.09以上の数値である。式(1)におけるdは0以上の数値である。式(1)におけるeは0以上の数値である。a、b、及びcの和は1.04以上1.49以下である。a、b、c、d、及びeの和は4である。)
本開示の1つの局面である有機無機ハイブリッド材料を用いて、例えば、複合材料を製造することができる。複合材料は、有機無機ハイブリッド材料と、その有機無機ハイブリッド材料の中で分散しているQDとを含む。複合材料において、QDは凝集し難い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の例示的な実施形態について説明する。
1.有機無機ハイブリッド材料
本開示の有機無機ハイブリッド材料は、平均組成式である式(1)により表される。
【0008】
式(1) SiR (OX)(O1/2
a、b、c、d、及びeの和は4である。式(1)におけるO1/2は架橋酸素である。式(1)におけるeは0以上の数値である。eは、例えば、0より大きい数値である。本開示の有機無機ハイブリッド材料は、例えば、有機シラン化合物が重合して成るポリマーである。ポリマーの主鎖は、SiO結合により結合している。
【0009】
式(1)におけるRは不飽和炭素結合を含み、芳香環を含まない有機官能基である。芳香環として、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。Rは、付加重合により柔軟な有機結合を増やす機能を有する。Rの一部又は全部は、付加重合をした状態であってもよい。本開示の有機無機ハイブリッド材料は、Rを含むことにより、クラックが発生し難い。
【0010】
式(1)におけるaは0.04以上0.26以下の数値である。aが0.04以上であることにより、有機無機ハイブリッド材料にクラックが一層発生し難い。aが0.26以下であることにより、本開示の有機無機ハイブリッド材料を用いて複合材料を製造した場合に、QDの凝集を一層抑制することができる。QDの凝集を一層抑制できる理由は、以下のように推測できる。aが0.26以下であると、有機無機ハイブリッド材料において架橋密度が過度に高くならない。その結果、有機無機ハイブリッド材料の中でのQDの分散性が向上する。
【0011】
として、例えば、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びアリル基から成る群から選択される1以上が挙げられる。
式(1)におけるRは芳香環を含み、芳香環以外では不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。芳香環として、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。式(1)におけるbは0.13以上の数値である。bが0.13以上であることにより、本開示の有機無機ハイブリッド材料を用いて複合材料を製造した場合に、QDの凝集を一層抑制することができる。QDの凝集を一層抑制できる理由は、以下のように推測できる。bが0.13以上であると、QDの表面の有機鎖と有機無機ハイブリッド材料との相溶性が良くなる。その結果、QDの分散性が向上する。
【0012】
として、例えば、フェニル基、4-メトキシフェニル基、及びベンジル基から成る群から選択される1以上が挙げられる。
式(1)におけるRは不飽和炭素結合を含まない有機官能基である。Rは、例えば、アルキル基のみから成る。Rは、例えば、芳香環を含まない。式(1)におけるcは0.09以上の数値である。cが0.09以上であることにより、有機無機ハイブリッド材料の反応性が高くなり、有機無機ハイブリッド材料が硬化し易くなる。
【0013】
として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、及びオクタデシル基から成る群から選択される1以上が挙げられる。
【0014】
式(1)におけるXは水素又はアルキル基である。アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基等から成る群から選択される1以上が挙げられる。式(1)は、(OX)を含む。式(1)におけるdは0以上の数値である。本開示の有機無機ハイブリッド材料は、(OX)を含む有機シラン化合物等の原料を用い、ゾルーゲル法等により容易に合成することができる。
【0015】
a、b、及びcの和(以下ではabcの和とする)は1.04以上1.49以下である。abcの和が1.04以上であることにより、本開示の有機無機ハイブリッド材料を用いて複合材料を製造した場合に、QDの凝集を一層抑制することができる。QDの凝集を一層抑制できる理由は、以下のように推測できる。abcの和が1.04以上であると、QDの表面の有機鎖と有機無機ハイブリッド材料との相溶性が良くなる。その結果、QDの分散性が向上する。
【0016】
abcの和が1.04以上であることにより、有機無機ハイブリッド材料にクラックが発生し難い。クラックが発生し難い理由は以下のように推測できる。abcの和が1.04以上であると、有機無機ハイブリッド材料においてSiOの骨格が過度に多くならず、有機無機ハイブリッド材料の柔軟性が高い。その結果、有機無機ハイブリッド材料にクラックが発生し難くなる。
【0017】
abcの和が1.49以下であることにより、有機無機ハイブリッド材料においてSiOの骨格が過度に少なくならない。その結果、有機無機ハイブリッド材料が硬化し易くなる。
【0018】
本開示の有機無機ハイブリッド材料の数平均分子量は、例えば、300以上3000以下である。本開示の有機無機ハイブリッド材料の形態は、例えば、液体である。
本開示の有機無機ハイブリッド材料の形態は、例えば、硬化物である。硬化物とは、物体と有機無機ハイブリッド材料とが接触したとき、有機無機ハイブリッド材料の一部である液体が物体の表面に付着することがない形態を意味する。
【0019】
本開示の有機無機ハイブリッド材料を構成するポリマーの主鎖は、SiO結合により結合している。そのため、本開示の有機無機ハイブリッド材料は、透明性、耐熱性、及び耐光性に優れる。耐熱性とは、熱を加えても透明性が低下し難い性質を意味する。耐光性とは、光を照射しても透明性が低下し難い性質を意味する。
【0020】
本開示の有機無機ハイブリッド材料は、R、R、Rのうちの1以上を適宜選択することで、複合材料を硬化させる際の硬化性、QDの分散性、クラック発生率等の特性を制御できる。
本開示の有機無機ハイブリッド材料は、例えば、以下の方法で製造できる。溶媒と、有機シラン化合物とを混合し、第1の温度で加熱してゾル溶液とする。このとき、有機シラン化合物は加水分解脱水縮合により重合する。
【0021】
第1の温度は、例えば、70℃程度の温度である。製造に用いる有機シラン化合物は、単量体であってもよいし、オリゴマーであってもよい。
第1の温度は、60℃より高いことが好ましい。第1の温度が60℃より高い場合、有機無機ハイブリッド材料の粘度が適度に高くなるため、有機無機ハイブリッド材料を扱い易い。第1の温度が60℃より高い場合、有機無機ハイブリッド材料の数平均分子量は、例えば、300以上である。
【0022】
第1の温度は、80℃未満であることが好ましい。第1の温度が80℃未満である場合、有機無機ハイブリッド材料の粘度が適度に低くなるため、有機無機ハイブリッド材料を扱い易い。第1の温度が80℃未満である場合、有機無機ハイブリッド材料の数平均分子量は、例えば、3000未満である。
【0023】
次に、ゾル溶液を第1の温度で真空加熱し、溶媒を気化させることで、粘性液体を得る。粘性液体は、本開示の有機無機ハイブリッド材料に該当する。例えば、粘性液体を第2の温度でさらに加熱し、硬化物とすることができる。硬化物も、本開示の有機無機ハイブリッド材料に該当する。第2の温度は、例えば、100℃程度の温度である。
【0024】
2.複合材料
本開示の複合材料は、本開示の有機無機ハイブリッド材料と、その有機無機ハイブリッド材料の中で分散しているQDと、を含む。有機無機ハイブリッド材料は、例えば、マトリックスである。
【0025】
QDとして、例えば、InP/ZnSコア・シェル型量子ドット、CdSe/CdSコアシェル型量子ドット、CdSe/ZnSコア・シェル型量子ドット、CdS/ZnSコア・シェル型量子ドット、ペロブスカイト量子ドット、炭素系量子ドット、WS2及びMoS2量子ドット、CdTeコア型量子ドット、PdSコア型量子ドット等が挙げられる。
【0026】
QDは、例えば、蛍光材料である。本開示の複合材料は、例えば、100質量部の有機無機ハイブリッド材料に対し、0.1質量部以上100質量部以下のQDを含む。
【0027】
本開示の複合材料は、例えば、LEDの封止材、レンズ、シート、ファイバー、インク等の材料とすることができる。
本開示の複合材料は、例えば、以下の方法で製造できる。まず、上述した方法で、粘性液体の形態である有機無機ハイブリッド材料を製造する。次に、粘性液体の形態である有機無機ハイブリッド材料と、QDとを混合することで複合材料を得る。次に、第2の温度で加熱し、硬化させることで、複合材料の硬化物を得る。
【0028】
3.実施例
(1)複合材料の製造
実施例1~8及び比較例1~6の複合材料を、それぞれ、以下の方法で製造した。実施例1~8の場合は、表1に示す原料を混合し、70℃で3時間加熱することで、ゾル溶液を得た。比較例1~6の場合は、表2に示す原料を混合し、70℃で3時間加熱することで、ゾル溶液を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1及び表2において、VTESは、ビニルトリエトキシシランである。PhTESは、フェニルトリエトキシシランである。DMDPhSは、ジメトキシジフェニルシランである。MTESは、メチルトリエトキシシランである。DMDMSは、ジメトキシジメチルシランである。VTES、PhTES、DMDPhS、MTES、及びDMDMSは、それぞれ、有機シラン化合物に対応する。H2O、EtOH、及びCH3COOHは溶媒に対応する。
【0032】
表1及び表2における「加熱温度(℃)」の行の数値は、原料を混合し、加熱するときの温度と、後述するようにゾル溶液を真空加熱するときの温度を表す。
次に、実施例1~8及び比較例1~6のそれぞれについて、ゾル溶液を70℃で10分間真空加熱し、溶媒を気化させることで、粘性液体を得た。粘性液体は、本開示の有機無機ハイブリッド材料に該当する。粘性液体は、有機シラン化合物が重合して成るポリマーである。
【0033】
原料としてVTESを含む場合、有機無機ハイブリッド材料は、Rとして、VTESに由来するビニル基を含む。また、有機無機ハイブリッド材料は、式(1)におけるOXとして、VTESに由来するエトキシ基を含む。有機無機ハイブリッド材料における、VTESに由来するビニル基及びエトキシ基の量は、原料に含まれるVTESの量に比例する。
【0034】
原料としてPhTESを含む場合、有機無機ハイブリッド材料は、Rとして、PhTESに由来するフェニル基を含む。また、有機無機ハイブリッド材料は、式(1)におけるOXとして、PhTESに由来するエトキシ基を含む。有機無機ハイブリッド材料における、PhTESに由来するフェニル基及びエトキシ基の量は、原料に含まれるPhTESの量に比例する。
【0035】
原料としてDMDPhSを含む場合、有機無機ハイブリッド材料は、Rとして、DMDPhSに由来するフェニル基を含む。また、有機無機ハイブリッド材料は、式(1)におけるOXとして、DMDPhSに由来するメトキシ基を含む。有機無機ハイブリッド材料における、DMDPhSに由来するフェニル基及びメトキシ基の量は、原料に含まれるDMDPhSの量に比例する。
【0036】
原料としてMTESを含む場合、有機無機ハイブリッド材料は、Rとして、MTESに由来するメチル基を含む。また、有機無機ハイブリッド材料は、式(1)におけるOXとして、MTESに由来するエトキシ基を含む。有機無機ハイブリッド材料における、MTESに由来するメチル基及びエトキシ基の量は、原料に含まれるMTESの量に比例する。
【0037】
原料としてDMDMSを含む場合、有機無機ハイブリッド材料は、Rとして、DMDMSに由来するメチル基を含む。また、有機無機ハイブリッド材料は、式(1)におけるOXとして、DMDMSに由来するメトキシ基を含む。有機無機ハイブリッド材料における、DMDMSに由来するメチル基及びメトキシ基の量は、原料に含まれるDMDMSの量に比例する。
【0038】
次に、実施例1~8及び比較例1~6のそれぞれについて、粘性液体の粘度及び数平均分子量を測定した。粘度の測定方法は以下のとおりであった。測定装置は、東機産業社製の「VISCOMETER TVE-25H」であった。ローターは、「1°34'×R24」であった。測定時の温度は25℃であった。測定時におけるローターの回転数は5rpmであった。ローターの回転開始時点から2分間が経過したときの粘度を測定した。
【0039】
数平均分子量の測定方法は以下のとおりであった。測定装置は、島津製作所社製の「Prominence-i LC-2030C LT」であった。カラムは、昭和電工社の「Shodex KF-804L」であった。溶媒は、テトラヒドロフランであった。測定時のサンプルの流速は1ml/minであった。測定時の温度は40℃であった。粘度及び数平均分子量の測定結果を表1及び表2に示す。
【0040】
次に、実施例1~8及び比較例1~6のそれぞれについて、0.01gの粘性液体に666μlのQD溶液を添加し、混合することで、複合材料を製造した。複合材料において、QDは均一に分散していた。QD溶液は、ペロブスカイト型(シグマアルドリッチ社、品番:905062)であった。
【0041】
次に、実施例1~8及び比較例1~6のそれぞれについて、40μlの複合材料を、ガラス板の表面のうち、1cm角の部分に塗布した。次に、100℃で1時間加熱することで、複合材料を硬化させる処理(以下では硬化処理とする)を行った。硬化処理において、有機無機ハイブリッド材料の架橋がさらに進行した。架橋が進行すると、式(1)におけるdが減少し、eが増加する。
【0042】
以上の工程により、硬化処理後の複合材料が得られた。硬化処理後の複合材料におけるa、b、c、及びa+b+cを表1及び表2に示す。a+b+cは、abcの和を意味する。
(2)複合材料の評価
実施例1~8及び比較例1~6のそれぞれについて、硬化処理後の複合材料に対し、以下の評価を行った。
【0043】
(2-1)硬化性の評価
硬化処理後の複合材料に対し、スパーテルを接触させた。液体がスパーテルに付着しなかった場合は、硬化性が良好であると判断した。液体がスパーテルに付着した場合は、硬化性が不良であると判断した。評価結果を表1及び表2における「QD添加硬化」の行に示す。「○」は硬化性が良好であることを意味する。「×」は硬化性が不良であることを意味する。硬化性が良好である場合、硬化処理後の複合材料は硬化物に該当する。
【0044】
(2-2)分散性の評価
キーエンス社の蛍光顕微鏡BZ-X800と、フィルター「TRITC」とを用いて、複合材料を観察した。570~640nmの波長の蛍光が見られなかった場合は、分散性が良好であったと評価した。570~640nmの波長の蛍光が見られた場合は、分散性が不良であったと評価した。評価結果を表1及び表2における「分散性」の行に示す。「○」は分散性が良好であることを意味する。「×」は分散性が不良であることを意味する。
【0045】
なお、複合材料に含まれるQDは、495~565nmの波長で蛍光を示す。QDが凝集すると蛍光の波長が長波長側にシフトする。そのため、570~640nmの波長で蛍光が見られた場合は、QDが凝集し、分散性が不良である。
【0046】
(2-3)クラックの評価
顕微鏡を用いて複合材料を観察し、200μm角の中にあるクラックの本数を数えた。クラックの本数が0~4本の場合は、クラックが少ないと判断した。クラックの本数が5本以上である場合は、クラックが多いと判断した。判断結果を表1及び表2における「クラック発生」の行に示す。「○」はクラックが少ないことを意味する。「×」はクラックが多いことを意味する。
【0047】
(2-4)その他の特性
実施例1~8の有機無機ハイブリッド材料は、透明性、耐熱性、及び耐光性に優れる。実施例1~8の有機無機ハイブリッド材料は、熱硬化性の有機無機ハイブリッド材料である。そのため、実施例1~8の有機無機ハイブリッド材料は、扱い易く、成形性を有する。
4.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0048】
(1)有機無機ハイブリッド材料は、UV硬化するものであってもよい。
(2)有機無機ハイブリッド材料を、QDと混合することなく硬化させてもよい。
(3)複合材料は、有機無機ハイブリッド材料、QDに加えて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0049】
(4)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0050】
(5)上述した有機無機ハイブリッド材料の他、当該有機無機ハイブリッド材料を構成要素とする製品、有機無機ハイブリッド材料の製造方法、複合材料の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。