(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105906
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20220708BHJP
B23B 27/04 20060101ALI20220708BHJP
B23B 29/00 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B23B27/16 B
B23B27/04
B23B29/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000529
(22)【出願日】2021-01-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 駿輔
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA00
3C046EE14
3C046KK01
3C046KK05
(57)【要約】
【課題】とくに板状体の突き出し量が大きい溝入れ・突切り加工の際の加工条件の向上や加工面品位の改善を実現する。
【解決手段】切削工具1に用いられるブレード10は、複数のインサートポケット11と、該インサートポケット11のそれぞれに対応して一部を切り欠くことにより形成されたヌスミ部12と、を有し、多角状の形状をなす板状体からなる。ホルダ20は、ホルダ本体部28と、ブレード10に形成されたヌスミ部12の一部が当接するサポート部22と、を有し、該サポート部22にヌスミ部12の一部が当接しうる状態でブレード10が取り付け可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具に用いられる板状体であって、
複数のインサートポケットと、該インサートポケットのそれぞれに対応して一部を切り欠くことにより形成されたヌスミ部と、を有し、多角状の形状をなす、板状体。
【請求項2】
突っ切り加工および/または溝入れ加工用として用いられる、請求項1に記載の板状体。
【請求項3】
請求項2に記載の板状体と、該板状体の前記インサートポケットに保持されるインサートと、を有する、切削工具。
【請求項4】
請求項3に記載の板状体とインサートを保持するホルダであって、
ホルダ本体部と、前記板状体に形成された前記ヌスミ部の一部が当接するサポート部と、を有し、
該サポート部に前記ヌスミ部の一部が当接しうる状態で前記板状体が取り付け可能に構成されている、ホルダ。
【請求項5】
前記サポート部は、加工時に前記板状体に作用する力の一部を受ける位置に形成されている、請求項4に記載のホルダ。
【請求項6】
前記サポート部は、当該ホルダの端部に形成されている、請求項5に記載のホルダ。
【請求項7】
当該ホルダに取り付けられる際の前記板状体の位置を決める位置決め用突起を有する、請求項4から6のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項8】
前記板状体が取り付けられる部分の一部に、当該板状体の厚み方向に凹む逃げ部が形成されている、請求項4から7のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項9】
前記逃げ部は、加工の影響により厚み方向に所定量たわんだ前記板状体の当該たわみ部分が当接しない所定の深さに形成されている、請求項8に記載のホルダ。
【請求項10】
当該ホルダが取り付けられる旋盤装置の一部に当接し、当該ホルダの長手方向の動きを規制する拘束面を備える、請求項4から9のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項11】
前記拘束面またはその近傍に形成されたリブをさらに備える、請求項10に記載のホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に用いられる板状体、ホルダおよび切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溝入れ加工や突切り加工用として、ホルダ交換のコストを抑えるために、複数の切削インサートを保持できるようにツールブロックを備えたいわばツールブロックタイプの工具や(たとえば特許文献1参照)、切削インサートを保持するブレードをシャンクで支える構造のいわばシャンクタイプの工具(たとえば特許文献2,3参照)が提案されている。たとえば突切り加工用のブレードとしては、従来、インサートポケットが1つないし2つである長方形板状ブレードが存在するほか、より経済性に優れる、3つ以上のインサートポケットを有するブレードが提案されてもいる(たとえば特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-104225号公報
【特許文献2】特開平11-010411号公報
【特許文献3】特開2019-526459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こういった複数ポケットを有するブレードとツールブロックを組み合わせる工具には、工具剛性が低下してしまうという問題があった。すなわち、たとえば従来の突切り加工において突切り加工径が大きくなるとそれにつれてブレードの突き出し量も増えることとなり、これに伴って工具剛性が低下する。工具剛性の低下を原因とする加工面不良、突切り真直性の悪化などの背景にはこういった事情があり、これが、場合によっては加工条件を上げることが出来ないことの理由となっている。それ故、突き出し量が大きい溝入れ・突切り加工においては、加工条件の向上や加工面品位の改善が望まれているというのが現状である。以上の問題は、ブレードをシャンクで支える構造のシャンクタイプの工具においても同様に露呈しうる。
【0005】
そこで、本発明は、とくにブレードの突き出し量が大きい溝入れ・突切り加工の際の加工条件の向上や加工面品位の改善を実現しうる、切削工具に用いられる板状体、ホルダおよび切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、切削工具に用いられる板状体であって、
複数のインサートポケットと、該インサートポケットのそれぞれに対応して一部を切り欠くことにより形成されたヌスミ部と、を有し、多角状の形状をなす、板状体である。
【0007】
本発明の別の態様は、突っ切り加工および/または溝入れ加工用として用いられる、板状体である。
【0008】
本発明の別の態様は、上記のごとき板状体と、該板状体のインサートポケットに保持されるインサートと、を有する、切削工具である。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、上記の板状体とインサートを保持するホルダであって、
ホルダ本体部と、板状体に形成されたヌスミ部の一部が当接するサポート部と、を有し、
該サポート部にヌスミ部の一部が当接しうる状態で板状体が取り付け可能に構成されている、ホルダである。
【0010】
かかるホルダないしはこれを備えた切削工具においては、板状体(以下、ブレードともいう)に設けられたヌスミ部の一部がホルダのサポート部に当接することにより、板状体が当該ホルダにおいて拘束される。このような構成は、板状体をその先端付近までホルダと当接させることを可能とする。こうすることで、板状体のたわみの発生やびびり振動の発生を抑制することができる。
【0011】
上記のごときホルダにおけるサポート部は、加工時に板状体に作用する力の一部を受ける位置に形成されていてもよい。
【0012】
上記のごときホルダにおけるサポート部は、当該ホルダの端部に形成されていてもよい。
【0013】
上記のごときホルダは、当該ホルダに取り付けられる際の板状体の位置を決める位置決め用突起を有していてもよい。
【0014】
上記のごときホルダにおいて、板状体が取り付けられる部分の一部に、当該板状体の厚み方向に凹む逃げ部が形成されていてもよい。
【0015】
上記のごときホルダにおける逃げ部は、加工の影響により厚み方向に所定量たわんだ板状体の当該たわみ部分が当接しない所定の深さに形成されていてもよい。
【0016】
上記のごときホルダにおける逃げ部は、当該ホルダが取り付けられる旋盤装置の一部に当接し、当該ホルダの長手方向の動きを規制する拘束面を備えていてもよい。
【0017】
上記のごときホルダは、拘束面またはその近傍に形成されたリブをさらに備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】切削工具に用いられるブレード(板状体)および該ブレードが取り付けられたホルダの一例を示す、ブレードの表面(ホルダへの取付け面とは反対の面)側から見た図である。
【
図2】ブレードが取り付けられたホルダの一例を示す、ブレードの表面が見える角度から見た斜視図である。
【
図4】ブレードが取り付けられたホルダの一例を示す、ブレードの裏面が見える角度から見た斜視図である。
【
図5】切削工具に用いられるブレードの一例を示す、(A)表面から見た図と、(B)~(E)側面を4方向から見た図である。
【
図6】ブレードおよびホルダの別の形態例を示す斜視図である。
【
図7】ブレード付きのホルダが取り付けられたタレット旋盤の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示したタレット旋盤の逆側(ブレードの裏面側)からみた斜視図である。
【
図9】タレット旋盤の別の形態例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明にかかる切削工具1およびこの切削工具1が取り付けられる旋盤装置の概略は以下のとおりである。切削工具1は、インサート30と、該インサート30を保持するブレード(板状体)10と、該ブレード10を保持するホルダ20とから構成される。溝入れ・突切りなどの切削加工に用いられるインサート30は、ブレード10のインサートポケット11に保持される(
図1等参照)。ブレード10は、ホルダ20の所定の位置、たとえば当該ホルダ20の長手方向Xの先端付近であってかつ幅方向Yに沿った側面部に取り付けられる(
図3等参照)。切削工具1は、旋盤装置たとえばタレット旋盤100の所定の位置に取り付けられる(
図7等参照)。
【0021】
<ブレード>
本実施形態のブレード10は、ホルダ20の所定の位置に取り付けられる板状体で構成されている。ブレード10は、複数たとえば本実施形態であれば3つのインサートポケット11と、該インサートポケット11のそれぞれに対応して一部を切り欠くことにより形成された3箇所のヌスミ部12と、ピン孔13と、ボルト孔14と、を有する(
図1、
図5等参照)。
【0022】
インサートポケット11は、設置されるインサート30の形状と大きさに合わせて溝状に形成されている(
図1、
図2等参照)。本実施形態では、略三角状のブレード10に対して3つのインサートポケット11を周方向等間隔となるように120°ごとに配置しており、当該ブレード10を120回転させればいずれのインサートポケット11においてもインサート30を同様に保持することができるようにしている(
図1等参照)。したがって、当該ブレード10のたとえばインサートポケット11の周辺部分が損傷した場合にも、ブレード10を回転させ、別のインサートポケット11を使用することできるといったように、1枚のブレード10で複数のポケットが使用可能である。
【0023】
ヌスミ部12は、多角形形状(本実施形態の場合、略三角形状)のブレード10の一部が切り欠かれた部分である。本実施形態では、切り欠く前の状態で略三角状である(ただし、3つの角部はR形状となっている)ブレード10のうち、3つの頂角部の一部をそれぞれ所定の形に切り欠いた形状としてヌスミ部12を形成している(
図5等参照。
図5では、切り欠く前の状態の板状体を基準にしたヌスミ部12の範囲を二点鎖線で示している。なお、通常は切削等によって除去する量を最小にするので、例えば
図5(A)中において破線で示す範囲のみを除去することになると考えられるが、本明細書では二点鎖線で示す部分をそのまま一例として説明を続ける)。また、ヌスミ部12には、ホルダ20のサポート部22と当接する部分(以下、「被サポート部」といい、符号12Sで表す)が形成される(
図5等参照)。なお、インサートポケット11の外側を構成する部分(本明細書では「インサート押え部分」といい、符号12Tで表す)は、ヌスミ部12のぶん削られ、寸法hがそのぶん狭小とならざるを得ない(
図5参照)。ヌスミ部12の大きさや形状、また、インサート押え部分12Tの大きさや形状は、加工時に当該インサート押え部分12Tに作用する力の大きさなどをふまえて形成されている(
図3等参照)。
【0024】
ピン孔13は、ブレード10の中央に設けられている。ブレード10をホルダ20のブレード取付部21に取り付ける際、ホルダ20のサイドスラストピン(位置決め用突起)23がこのピン孔13に嵌まり込むことによって当該ブレード10が位置決めされる。なお、たとえば後述する別の実施形態(
図6参照)のブレード10のごとくピン孔13は中央に配置されなくてもよい。この実施形態では、ボルト孔14(の一部)がピン孔13を兼用できる。
【0025】
ボルト孔14は、キャップボルト(締結部材)40を通すためブレード10に設けられた孔で構成されている(
図2等参照)。本実施形態では、ブレード10に複数(たとえば6個)のボルト孔14を設けておき、ブレード10を120度回転させた場合にも、これらのうちの所定数(本実施形態では3個)のボルト孔14に所定数(本実施形態では3本)のキャップボルト40を通してホルダ20のボルト締結孔26に締結できるようにしている(
図3等参照)。
【0026】
<ホルダ>
本実施形態のホルダ20は、ブレード取付部21、サポート部22、サイドスラストピン23、逃げ部24、拘束面25、ボルト締結孔26、凹部27、シャンク(ホルダ本体部)28、リブ29などを備える。
【0027】
ブレード取付部21は、ブレード10を取り付ける部位として形成されている部分である。本実施形態では、上記のごとくホルダ20の長手方向Xの先端付近であってかつ幅方向Yに沿った側面部に凹部27を設け、該凹部27にブレード10の一部を収容させ、ブレード取付部21として機能させている(
図3等参照)。ブレード10は、その裏面10Bをこの凹部27に向けた状態でホルダ20に取り付けられ、裏面10Bの一部をブレード10の凹部27の面(以下、「当接面」ともいう)27Aに当接させた状態で保持される。
【0028】
サポート部22は、当該切削工具1を用いての切削加工時、ブレード10に作用する力の一部を受ける位置に形成されている部位である。たとえば本実施形態では、ホルダ20の長手方向Xの先端付近であって、高さ方向Z(
図3参照)における中間部付近に、凹部27よりも幅方向Yに突出する段部を設け、この段部を、ブレード10の被サポート部12Sと接触するサポート部22として機能させている。なお、
図3等に示すような構成の切削工具1においては、切削加工時、インサート30から高さ方向Z(
図3参照)に大きな外力が作用する。本実施形態では、この点を考慮し、インサート30、ブレード10を介して高さ方向Zに作用する外力を十分に受け止めるようにサポート部22を形成している。このようなサポート部22は、切削加工中のインサート30の刃先に対し高さ方向Zに沿って後方に位置していることが望ましい(
図1参照)。また、サポート部22は、高さ方向Zに対して垂直な平面(ないしはこれに近似した曲面、など)で形成されていることが望ましい(
図1、
図3等参照)。
【0029】
また、上記のようにホルダ20の端部またはその近傍(より詳細には、ホルダ20の長手方向Xにおける先端あるいはその付近)にサポート部22を形成したことに伴い、本実施形態のホルダ20においては、凹部27の当接面(凹部27のうち、ブレード10の裏面と当接する面)をこのサポート部22の近傍まで連なるように構成することが可能となっている。このようなホルダ20によれば、上記の当接面27Aにより、ブレード10の裏面10Bをサポート部22の近傍まで当接させることができるため、加工時におけるブレード10の厚み方向のたわみ(主として、インサート押え部分12Tの一部がホルダ20の幅方向Yへまがる現象)やびびり振動を抑制しやすい。以上は、とくに高送り時における加工の安定化を図りやすくなるといった面で有利だといえる。
【0030】
サイドスラストピン23は、ブレード10のピン孔13に嵌入し、ホルダ20のブレード取付部21に取り付けられるときのブレード10の中心位置を位置決めする(
図3等参照)。サイドスラストピン23の一部ないし全部が先細るようにテーパ状に形成されていてもよい。
【0031】
逃げ部24は、ホルダ20のうちブレード10が取り付けられる凹部27の当接面27Aの一部に形成されている。本実施形態の逃げ部24は、ブレード10の厚み方向に凹む(別言すれば、ホルダ20の幅方向Yに沿って凹む)ように当接面27Aの一部(たとえば2箇所)を1段下げて形成された凹部からなる(
図3等参照)。また、逃げ部24は、加工の影響によって仮にブレード10の一部(主として想定されるのは、インサート押え部分12T)が厚み方向に所定量たわんだとしても、ブレード10の当該たわみ部分が当接しない程度の所定の深さに形成されている。したがって、本実施形態のホルダ20によれば、幅方向にたわんで一部が曲がった状態のブレード10を、当該たわんだ部分が逃げ部24に収まるようにしてガタつきを生じさせることなく凹部27に取り付けることが可能である。また、逃げ部24を形成することには、上記のように加工の影響で一部が曲がったブレード10の取付けを可能とする以外にも、たとえばインサート押え部分12Tへ切りくず擦過による溶着が起き、その溶着がブレード板厚を超える場合であっても、ある程度の溶着であれば取付け可能にとする、という利点がある。なお、ブレード10のたわみ発生箇所として主として想定されるのがインサート押え部分12Tであることから、本実施形態では、3つのインサート押え部分12Tのうち、加工に供されていない2つのインサート押え部分12Tのそれぞれに対応した位置に逃げ部24を設けている(
図3等参照)。
【0032】
拘束面25は、当該ホルダ20が取り付けられるタレット旋盤100の一部に当接し、当該ホルダ20の長手方向Xへ動きを規制するように形成されている。一例として、本実施形態では、タレット旋盤100のホルダ取付溝102に差し込まれる、長手方向Xに沿って伸びる取付部たるシャンク(ホルダ本体部)28に、長手方向Xに対して垂直な方向(たとえばホルダ20の高さ方向Z)に突出する鉤部28Lを設け(
図4等参照)、当該鉤部28Lに拘束面25を設けている(
図8等参照)。ホルダ20のシャンク28をタレット旋盤100のホルダ取付溝102に差し込むと、拘束面25がタレット旋盤100の外周の拘束面105に当接してホルダ20の長手方向X(別言すれば、タレット旋盤100の径方向)の動きが拘束され、所定の位置にホルダ20が位置決めされる。ホルダ20は、締結治具たとえばボルト200(
図8に示しているボルトは形状・個数ともに単なる一例にすぎない)でタレット旋盤100に取り付けられる(
図8、
図9等参照)。
【0033】
リブ29は、拘束面25またはその近傍に形成され、ホルダ20の強度を向上させる補強材として機能する。本実施形態では、ブラケット状のリブ29をシャンク28と鉤部28Lとを繋ぐように設けている(
図4等参照)。このリブ29は、当該ホルダ20の幅方向Yの一側寄り(たとえば、凹部27が形成される側)に設けられており、タレット旋盤100に取り付けられる際のホルダ20のガイドとしても機能しうる(
図9等参照)。
【0034】
<使用例>
ブレード10は、突切り・溝入れ用のブレードとしてホルダ20に取り付けられ使用される。ブレード10が取り付けられたホルダ20は、通常の旋削バイトと同様に治具(たとえばボルト200)を用いてタレット旋盤100に固定され、短手方向(ホルダ20の高さ方向Z)への動きが拘束され、かつ、上記した拘束面25によって長手方向Xへの動きも拘束される。
【0035】
上記のごとく、インサートポケット11のそれぞれに対応して一部を切り欠いて形成したヌスミ部12を有する多角状のブレード10を採用した本実施形態の切削工具1によれば、とくにブレード10の突き出し量が大きい溝入れ・突切り加工の際の加工条件の向上や加工面品位の改善を実現することができる。このように加工条件の向上や加工面品位の改善を実現することができることの原理を説明すれば以下のとおりである。
【0036】
<原理>
切削工具1のたわみ量δは、工具突き出し量Lと断面二次モーメントに起因する。特に、溝入れ・突切り用の切削工具1については、加工径の制約上、工具突き出し量Lが制限されてしまう。断面二次モーメントの増加を狙うため、工具高さhの寸法を増加させ、また、ホルダ突き出し部をブレード厚みより厚くすることで、当該切削工具1のたわみを減少できる。
【数1】
δ:工具たわみ量[mm]
F:切削抵抗[N]
L:工具突き出し量[mm]
E:ヤング率[MPa]
b:工具厚み[mm]
h:工具高さ[mm]
【0037】
上記のごとき本実施形態の切削工具1によれば、ブレード10のヌスミ部12とホルダ20のサポート部22が接触することで、当該ホルダ20に対するブレード10の位置(とくに高さ方向Zと長手方向Xの位置、さらにはサイドスラストピン23を中心とした軸回り位置)が拘束される。また、刃物台(本実施形態では、タレット旋盤100が該当)の端面からホルダ先端までの突き出し量がブレード幅より大きくなるように形成されたホルダ20でブレード10を拘束することが可能である。上記のごとき形態のホルダ20でブレード10を保持し拘束することで、工具厚みbが厚くてより剛性の高いホルダ20で拘束させることができ、工具の底面側への(高さ方向Zへの)たわみ量を低減することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態の切削工具1によれば、タレット旋盤100に対してホルダ20が長手方向Xにおいて面拘束され、大きな切削抵抗が作用した場合でも受けきることが可能であるため、従来の加工条件よりも厳しく設定されたより高い条件下での加工が可能になる。このことは、前述の工具たわみ量の低減と合わせ、加工条件を高くした加工において加工面品位、突切り真直性を大きく改善することを可能とする。しかも、この切削工具1は、ブレード10に複数のインサートポケット11を有していることから、従来の突切りブレードの2ポケットと比較して経済性にも優れるものである。
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。たとえば、上述した実施形態では突っ切り・溝入れ加工にとくに適した切削工具1に用いられるブレード10およびホルダ20について説明したが、これらの加工用としてのほか、たとえばサイドカッター等の転削工具用としても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、突っ切り・溝入れなどの加工用の切削工具1と当該切削工具1に用いられるブレード10、ホルダ20などに適用して好適である。
【符号の説明】
【0041】
1…切削工具
10…ブレード(板状体)
10A…ブレードの表面
10B…ブレードの裏面
11…インサートポケット
12…ヌスミ部
12S…被サポート部
12T…インサート押え部分
13…ピン孔
14…ボルト孔
20…ホルダ
21…ブレード取付部
22…サポート部
23…サイドスラストピン(位置決め用突起)
24…逃げ部
25…拘束面
27…凹部
27A…(凹部27のうちブレード10の裏面との)当接面
28…シャンク(ホルダ本体部)
28L…鉤部
29…リブ
30…インサート
40…キャップボルト(締結部材)
100…タレット旋盤(旋盤装置)
102…ホルダ取付溝
105…拘束面
200…ボルト
h…インサート押え部分12Tの高さ方向の寸法
X…ホルダの長手方向
Y…ホルダの幅方向
Z…ホルダの高さ方向
【手続補正書】
【提出日】2021-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工に用いられる板状体とインサートを保持するホルダであって、
前記板状体は、前記インサートを保持する複数のインサートポケットと、該インサートポケットのそれぞれに対応して一部を切り欠くことにより形成されたヌスミ部とを有し、多角状の形状をなす、突っ切り加工および/または溝入れ加工用として用いられるものであり、
当該ホルダは、ホルダ本体部と、前記板状体に形成された前記ヌスミ部の一部が当接するサポート部と、を有し、
該サポート部に前記ヌスミ部の一部が当接しうる状態で前記板状体が取り付け可能に構成されている、ホルダ。
【請求項2】
前記サポート部は、加工時に前記板状体に作用する力の一部を受ける位置に形成されている、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記サポート部は、当該ホルダの端部に形成されている、請求項2に記載のホルダ。
【請求項4】
当該ホルダに取り付けられる際の前記板状体の位置を決める位置決め用突起を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項5】
前記板状体が取り付けられる部分の一部に、当該板状体の厚み方向に凹む逃げ部が形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項6】
前記逃げ部は、加工の影響により厚み方向に所定量たわんだ前記板状体の当該たわみ部分が当接しない所定の深さに形成されている、請求項5に記載のホルダ。
【請求項7】
当該ホルダが取り付けられる旋盤装置の一部に当接し、当該ホルダの長手方向の動きを規制する拘束面を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のホルダ。
【請求項8】
前記拘束面またはその近傍に形成されたリブをさらに備える、請求項7に記載のホルダ。