(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105920
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】燃料電池用のセパレータ及び燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20220708BHJP
H01M 8/0276 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/028 20160101ALI20220708BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0276
H01M8/0267
H01M8/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000557
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390035909
【氏名又は名称】興国インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】森川 洋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】野田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】平山 宏司
(72)【発明者】
【氏名】森 啓将
(72)【発明者】
【氏名】本間 弘俊
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA11
5H126AA13
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE04
5H126EE05
5H126EE06
5H126EE07
5H126EE11
5H126EE22
5H126EE45
5H126GG18
(57)【要約】
【課題】流体流路と流体連通孔との間のシール性を良好に確保しつつ、トンネル部内の連通路に流体を良好に流通させる。
【解決手段】燃料電池スタック16のセパレータ10の流体流路Fは、酸化剤ガス、燃料ガス、冷却媒体の何れかである流体をセパレータ面方向に流通させる。流体を積層方向に流通させる流体連通孔Hと、流体流路Fとの間はゴムシール部材Rによりシールされる。トンネル部Tは、ゴムシール部材Rと交差部78で交差し、流体流路Fと流体連通孔Hとを連通させる。ゴムシール部材Rは、トンネル部Tとは別部材からなり、第1部分72が平面部76から積層方向に突出し、第2部分74がトンネル部Tの突出端面Taから積層方向に突出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜・電極構造体に積層されて積層方向に圧縮荷重が付加される燃料電池用のセパレータであって、
酸化剤ガス、燃料ガス、冷却媒体の何れかである流体をセパレータ面方向に流通させる流体流路と、
前記セパレータ面方向で前記流体流路の外側に配置された外側領域を前記積層方向に貫通し、前記流体を前記積層方向に流通させる流体連通孔と、
前記流体流路と前記流体連通孔との間をシールするゴムシール部材と、
前記外側領域に設けられた平面部から前記積層方向に突出する中空状であり、前記ゴムシール部材と交差部で交差して延在し、前記流体流路と前記流体連通孔とを連通する連通路を内側に形成するトンネル部と、
を備え、
前記ゴムシール部材は、前記トンネル部とは別部材からなり、且つ互いに連続的に延在する第1部分及び第2部分を有し、
前記第1部分は、前記平面部から前記積層方向に突出し、
前記第2部分は、前記交差部に配置された前記トンネル部の突出端面から前記積層方向に突出する、燃料電池用のセパレータ。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池用のセパレータにおいて、
前記平面部に対する前記第1部分の突出高さと、前記平面部に対する前記第2部分の突出高さとは、前記ゴムシール部材の延在方向に一定である、燃料電池用のセパレータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池用のセパレータにおいて、
前記ゴムシール部材は、前記セパレータ面方向に並列する複数本を一組として設けられる、燃料電池用のセパレータ。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の燃料電池用のセパレータにおいて、
前記交差部では、前記トンネル部の幅方向両側の側面が前記ゴムシール部材に当接している、燃料電池用のセパレータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の燃料電池用のセパレータと、前記電解質膜・電極構造体とのそれぞれを前記積層方向に複数積層した燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池スタックにおいて、
前記積層方向に複数積層された前記セパレータのそれぞれに設けられた前記ゴムシール部材は、前記積層方向に並んで配置され、
前記積層方向に隣接する前記ゴムシール部材は、該ゴムシール部材の延在方向に直交する幅が互いに異なる、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路と流体連通孔とをトンネルを介して連通させる燃料電池用のセパレータ及び燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料電池は、発電セル(単位燃料電池)を複数積層したセル積層体と、該セル積層体の積層方向の両端側に配設したエンドプレート等とを備える燃料電池スタックの形態で用いられる。発電セルは、電解質膜・電極構造体を一組のセパレータで挟んで構成される。また、発電セルには、エンドプレート等を介して積層方向に圧縮荷重(締付荷重)が付加される。
【0003】
この種の燃料電池用のセパレータには、電解質膜・電極構造体に供給する反応ガス(酸化剤ガス又は燃料ガス)を流通させるための流体流路、又は発電セルの冷却等に用いられる冷却媒体を流通させるための流体流路が形成されている。セパレータの面方向で流体流路の外側に配置された外側領域には、発電セルの積層方向に、上記の酸化剤ガス、燃料ガス、冷却媒体を個別に流通させるための流体連通孔がそれぞれ貫通形成されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されるように、流体流路と各流体連通孔との間をシールして、流体の漏洩や混入を防止するためのビードシール部が設けられたセパレータが知られている。このセパレータでは、例えば、酸化剤ガスの流体流路が形成されている場合、該流体流路と、酸化剤ガスの流体連通孔との間をシールするビードシール部に交差部で交差するトンネル部が設けられている。トンネル部によって、酸化剤ガスの流体流路と酸化剤ガスの流体連通孔とを連通させることで、互いの間に酸化剤ガスのみを流通させることが可能になっている。燃料ガスの流体流路と燃料ガスの流体連通孔の間、冷却媒体の流体流路と冷却媒体の流体連通孔との間のそれぞれにも、ビードシール部及びトンネル部の交差部が同様に設けられている。
【0005】
上記のビードシール部及びトンネル部は、何れも金属製のセパレータに対して、プレス成形等によって凸形状を設けることで構成されている。発電セルにおいて、ビードシール部の突出端面は、隣接する電解質膜・電極構造体等の当接対象部に当接する。このため、ビードシール部は、上記の圧縮荷重が加えられることで、当接対象部に押圧されて弾性変形する。これにより、ビードシール部による良好なシール性が確保される。トンネル部は、その凸形状の内側に形成される空間が流体を流通させる連通路となり、該連通路を介して、互いに対応する流体流路及び流体連通孔を連通させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のセパレータでは、ビードシール部による流体流路と流体連通孔との間のシール性を良好に確保するためには、ビードシール部が圧縮荷重により十分に弾性変形可能であることが好ましい。一方、互いに対応する流体流路と流体連通孔との間に流体を良好に流通させるためには、トンネル部は、圧縮荷重が加えられても弾性変形することが抑制され、内側の連通路の断面積を十分な大きさに維持できることが好ましい。
【0008】
しかしながら、上記のビードシール部及びトンネル部はともに、セパレータの一部を変形させることで形成される。このため、ビードシール部とトンネル部との交差部は、ビードシール部及びトンネル部が連続的に形成された一体凸形状となる。このようなビードシール部では、交差部やその近傍において、トンネル部と交差していない他部分に比べて、剛性が高くなり、弾性変形し難くなる懸念がある。ひいては、流体流路と流体連通孔との間のシール性が低下する懸念がある。一方、トンネル部では、交差部及びその近傍において、ビードシール部と交差していない他部分に比べて、内側の連通路の断面積が小さくなる方向に弾性変形し易くなる懸念がある。ひいては、トンネル部内に流体を良好に流通させることが困難になる懸念がある。
【0009】
本発明は、流体流路と流体連通孔との間のシール性を良好に確保できるとともに、トンネル部内の連通路に流体を良好に流通させることが可能な燃料電池用のセパレータ及び燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、電解質膜・電極構造体に積層されて積層方向に圧縮荷重が付加される燃料電池用のセパレータであって、酸化剤ガス、燃料ガス、冷却媒体の何れかである流体をセパレータ面方向に流通させる流体流路と、前記セパレータ面方向で前記流体流路の外側に配置された外側領域を前記積層方向に貫通し、前記流体を前記積層方向に流通させる流体連通孔と、前記流体流路と前記流体連通孔との間をシールするゴムシール部材と、前記外側領域に設けられた平面部から前記積層方向に突出する中空状であり、前記ゴムシール部材と交差部で交差して延在し、前記流体流路と前記流体連通孔とを連通する連通路を内側に形成するトンネル部と、を備え、前記ゴムシール部材は、前記トンネル部とは別部材からなり、且つ互いに連続的に延在する第1部分及び第2部分を有し、前記第1部分は、前記平面部から前記積層方向に突出し、前記第2部分は、前記交差部に配置された前記トンネル部の突出端面から前記積層方向に突出する。
【0011】
本発明の別の一態様は、前記燃料電池用のセパレータと、前記電解質膜・電極構造体とのそれぞれを前記積層方向に複数配設した燃料電池スタックである。
【発明の効果】
【0012】
この燃料電池用のセパレータでは、流体流路及び流体連通孔の間をシールするゴムシール部材と、流体流路及び流体連通孔を連通する連通路を形成するトンネル部とが別部材からなる。このため、圧縮荷重が付加された交差部では、例えば、ゴムシール部材及びトンネル部が同一部材から連続的に形成されている場合に比べて、ゴムシール部材及びトンネル部が一体に弾性変形することを抑制できる。
【0013】
つまり、ゴムシール部材においては、圧縮荷重により十分に弾性変形させて、流体流路と流体連通孔との間のシール性を良好に確保することができる。一方、トンネル部においては、圧縮荷重が加えられても、内側に十分な断面積の連通路が形成される形状を維持して、流体流路と流体連通孔との間に流体を良好に流通させることができる。
【0014】
以上から、本発明の燃料電池用のセパレータ及び該セパレータを備える燃料電池スタックによれば、流体流路と流体連通孔との間のシール性を良好に確保できるとともに、トンネル部内の連通路に流体を良好に流通させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1のII-II線矢視の部分断面図である。
【
図4】第1バイポーラプレートのMEA側面の概略正面図である。
【
図5】第2バイポーラプレートのMEA側面の燃料ガス入口連通孔周辺の拡大図である。
【
図6】
図5のVI-VI線断面を含むセパレータの斜視説明図である。
【
図7】
図7Aは、
図5のVIIA-VIIA線矢視の部分断面図であり、
図7Bは、
図5のVIIB-VIIB線矢視の部分断面図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII線矢視の部分断面図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bのそれぞれは、変形例に係るゴムシール部材を説明するための
図1のII-II線矢視におけるセル積層体の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る燃料電池用のセパレータ及び燃料電池スタックについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素に対しては同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0017】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る燃料電池用のセパレータ10は、発電セル12(単位燃料電池)を構成する。
図1及び
図2に示すように、発電セル12は、水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に複数積層されたセル積層体14の形態で燃料電池スタック16に備えられる。燃料電池スタック16は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車等の燃料電池車両に好適に適用することができるが、特にこれには限定されず、定置型等であってもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すように、セル積層体14の積層方向一端(矢印A1側端)には、ターミナルプレート18a(
図2)、インシュレータ20a及びエンドプレート22aが外方に向かって、順次、配設される。セル積層体14の積層方向他端(矢印A2側端)には、ターミナルプレート18b(
図2)、インシュレータ20b及びエンドプレート22bが外方に向かって、順次、配設される。
【0019】
ターミナルプレート18a、18bは、電気導電性を有する材料から形成される。ターミナルプレート18a、18bの材料の一例としては、銅、アルミニウム又はステンレススチール等の金属が挙げられる。
図1に示すように、ターミナルプレート18a、18bのそれぞれの略中央には、積層方向外方に延在する端子部24が設けられる。端子部24は、インシュレータ20a、20b及びエンドプレート22a、22bのそれぞれに設けられた不図示の貫通孔に挿通されてエンドプレート22a、22bの積層方向の外側に突出する。
【0020】
インシュレータ20a、20bは、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等の絶縁性材料から形成される。なお、インシュレータ20a、20bのそれぞれは、積層方向に重ね合わされた複数枚(例えば、2枚)から構成されてもよい。本実施形態では、
図2に示すように、インシュレータ20a、20bの各々のセル積層体14に臨む面に、セル積層体14から離間する側に陥没する凹部が形成され、該凹部内にターミナルプレート18a、18bがそれぞれ配設されている。
【0021】
図1に示すように、エンドプレート22a、22bは、矢印C方向を短辺とし、矢印B方向を長辺とする長方形状となっている。なお、エンドプレート22a、22bは、矢印B方向を短辺とし、矢印C方向を長辺とする長方形状であってもよい。エンドプレート22a、22bの各辺同士の間には、積層方向(矢印A方向)に延在する連結バー26が配置される。各連結バー26の両端は、エンドプレート22a、22bの内面にボルトを介して固定される。
【0022】
これにより、エンドプレート22a、22bの間に挟まれた複数の発電セル12には、その積層方向に所定の大きさの圧縮荷重(以下、単に「圧縮荷重」ともいう)が付加される。なお、燃料電池スタック16では、エンドプレート22a、22bを端板とする不図示の筐体を備え、該筐体内にセル積層体14を収容するように構成してもよい。
【0023】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、各発電セル12は、樹脂枠付きMEA28と、該樹脂枠付きMEA28を挟持する一組のセパレータ10とを有する。樹脂枠付きMEA28は、電解質膜・電極構造体(MEA)30と、電解質膜・電極構造体30の外周を周回する樹脂枠部材32とを備える。
図2に示すように、電解質膜・電極構造体30は、電解質膜34と、電解質膜34の一方の面(矢印A2側の面)に設けられたアノード電極36と、電解質膜34の他方の面(矢印A1側の面)に設けられたカソード電極38とを有する。
【0024】
電解質膜34は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜等の固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)であり、アノード電極36及びカソード電極38に挟持される。なお、電解質膜34は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することもできる。
【0025】
カソード電極38は、電解質膜34の矢印A1側の面に接合されるカソード電極触媒層38aと、該カソード電極触媒層38aに積層されるカソードガス拡散層38bとを有する。アノード電極36は、電解質膜34の矢印A2側の面に接合されるアノード電極触媒層36aと、該アノード電極触媒層36aに積層されるアノードガス拡散層36bとを有する。本実施形態では、カソードガス拡散層38b及びアノードガス拡散層36bが電解質膜34よりも大きい平面寸法(外形寸法)を有することとするが、特にこれには限定されない。
【0026】
カソード電極触媒層38aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともにカソードガス拡散層38bの表面に一様に塗布されて形成される。アノード電極触媒層36aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともにアノードガス拡散層36bの表面に一様に塗布されて形成される。
【0027】
カソードガス拡散層38b及びアノードガス拡散層36bは、カーボンペーパ又はカーボンクロス等の導電性多孔質シートから形成される。カソード電極触媒層38aとカソードガス拡散層38bとの間、及びアノード電極触媒層36aとアノードガス拡散層36bとの間の少なくとも一方には、不図示の導電性多孔質層を設けてもよい。
【0028】
樹脂枠部材32は、額縁状であり、例えば、その内周端縁部が、電解質膜・電極構造体30の外周縁部に接合されている。このように電解質膜・電極構造体30の外周に樹脂枠部材32を設けることで、比較的高額な電解質膜34について、1枚の発電セル12を構成するために必要とされる分の面積を小さくできる。
【0029】
樹脂枠部材32と電解質膜・電極構造体30との接合構造は特に限定されるものではないが、例えば、カソードガス拡散層38bの外周端縁部とアノードガス拡散層36bの外周端縁部との間に樹脂枠部材32の内周端縁部が挟持されることとしてもよい。この場合、樹脂枠部材32の内周端面は、電解質膜34の外周端面に近接してもよいし、当接してもよいし、重なってもよい。
【0030】
上記の接合構造に代えて、電解質膜34の外周縁部をカソードガス拡散層38b及びアノードガス拡散層36bよりも外方に突出させ、該電解質膜34の外周縁部の両側に枠形状のフィルムを設けることで樹脂枠部材32を構成してもよい。すなわち、樹脂枠部材32は、積層された複数枚の枠状のフィルムが接着剤等により接合されることで構成されてもよい。なお、電解質膜34を外方に突出させる場合、発電セル12は、樹脂枠部材32を備えていなくてもよい。
【0031】
図1に示すように、発電セル12、エンドプレート22a及びインシュレータ20a、20bの長辺方向の一端側(矢印B1側)の縁部には、1つの酸化剤ガス入口連通孔40a、2つの冷却媒体入口連通孔42a及び2つの燃料ガス出口連通孔44bが設けられる。発電セル12、エンドプレート22a及びインシュレータ20a、20bの長辺方向の他端側(矢印B2側)の縁部には、1つの燃料ガス入口連通孔44a、2つの冷却媒体出口連通孔42b及び2つの酸化剤ガス出口連通孔40bが設けられる。
【0032】
燃料ガス出口連通孔44bからは、例えば、水素含有ガス等の燃料ガスが排出される。酸化剤ガス入口連通孔40aには、例えば、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。冷却媒体入口連通孔42aには、例えば、純水、エチレングリコール、オイル等の少なくとも何れかが冷却媒体として供給される。燃料ガス入口連通孔44aには、燃料ガスが供給される。冷却媒体出口連通孔42bからは、冷却媒体が排出される。酸化剤ガス出口連通孔40bからは、酸化剤ガスが排出される。
【0033】
これらの酸化剤ガス入口連通孔40a、冷却媒体入口連通孔42a、燃料ガス出口連通孔44b、燃料ガス入口連通孔44a、冷却媒体出口連通孔42b、酸化剤ガス出口連通孔40b(以下、これらを総称して「流体連通孔H」ともいう)は、それぞれ、燃料電池スタック16のターミナルプレート18a、18b(
図2)、エンドプレート22bを除く構成を、積層方向に貫通している。
【0034】
なお、燃料ガス入口連通孔44a及び燃料ガス出口連通孔44bを総称して「燃料ガス連通孔44a、44b」ともいい、酸化剤ガス入口連通孔40a及び酸化剤ガス出口連通孔40bを総称して「酸化剤ガス連通孔40a、40b」ともいう。また、冷却媒体入口連通孔42a及び冷却媒体出口連通孔42bを総称して「冷却媒体連通孔42a、42b」ともいう。
【0035】
これらの流体連通孔Hは、上下方向(矢印C1、C2方向)に配列して設けられる。具体的には、
図3に示すように、発電セル12の長辺方向の一端側(矢印B1側)の縁部では、上下方向に互いに離間して配置された2つの燃料ガス出口連通孔44bの間に、2つの冷却媒体入口連通孔42aが上下方向に互いに離間して配置され、これらの冷却媒体入口連通孔42aの間に酸化剤ガス入口連通孔40aが配置されている。
【0036】
発電セル12の長辺方向の他端側(矢印B2側)の縁部では、上下方向に互いに離間して配置された2つの酸化剤ガス出口連通孔40bの間に、2つの冷却媒体出口連通孔42bが上下方向に離間して配置され、これらの冷却媒体出口連通孔42bの間に燃料ガス入口連通孔44aが配置されている。
【0037】
なお、流体連通孔Hは、上記の配置や個数に限定されず、要求される仕様に応じた配置や個数となるように、適宜設定可能である。例えば、本実施形態では、燃料ガス出口連通孔44b、酸化剤ガス出口連通孔40b、冷却媒体入口連通孔42a、冷却媒体出口連通孔42bのそれぞれを2個ずつ設けたが、それぞれを1個ずつ設けてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、例えば、
図4や
図5等に示すように、各流体連通孔Hの積層方向(矢印A方向)視の形状は、六角形状であるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、各流体連通孔Hの積層方向視の形状は、六角形状以外の多角形状であってもよいし、その角丸形状や、円形状等であってもよい。この際、各流体連通孔Hでは、積層方向視においてセパレータ10の外縁に臨む辺を、該セパレータ10の外縁に沿った直線状とすることが好ましい。この場合、例えば、各流体連通孔Hの上記の辺が、セパレータ10の外縁に対して折れ曲がったり、湾曲したりする場合に比して、各流体連通孔Hの上記の辺の全体を、セパレータ10の外縁に近接させて配置することができる。これによって、各流体連通孔Hとセパレータ10の外縁との間に余分なスペースが形成されることを回避できる。ひいては、各流体連通孔Hの面積を維持しつつ、セパレータ10の小型化を図ること等が可能になる。
【0039】
図3に示すように、セパレータ10は、積層した第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50の外周を溶接、ろう付け、かしめ等により一体に接合することで形成されている。第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50の各々は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板等の金属材料、あるいはその金属材料の表面に防食用の表面処理を施した薄板からなり、該薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。なお、セパレータ10は、上記の第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50を接合して構成されるものに限定されず、1枚の金属プレート(バイポーラプレート)から構成されてもよい。
【0040】
第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50のそれぞれは、セパレータ10としてセル積層体14に組み込まれた際、樹脂枠付きMEA28に向かうMEA側面48a、50aと、その裏面である冷媒側面48b、50bとを有する。
【0041】
図4に示すように、第1バイポーラプレート48のMEA側面48aには、矢印B方向に直線状に延在する複数本の突条部が設けられ、これらの突条部同士の間の溝内に酸化剤ガス流路52が設けられている。なお、突状部は、波状であってもよい。酸化剤ガス流路52は、後述する酸化剤ガストンネル部54を介して1つの酸化剤ガス入口連通孔40a及び2つの酸化剤ガス出口連通孔40bのそれぞれに流体的に連通する。これにより、酸化剤ガス流路52は、セパレータ面方向(矢印B方向、矢印C方向)に酸化剤ガスを流通させる。
【0042】
図3に示すように、第2バイポーラプレート50のMEA側面50aには、矢印B方向に直線状に延在する複数本の突条部が設けられ、これらの突条部同士の間の溝内に燃料ガス流路56が設けられている。なお、突状部は、波状であってもよい。燃料ガス流路56は、後述する燃料ガストンネル部58を介して1つの燃料ガス入口連通孔44a及び2つの燃料ガス出口連通孔44bのそれぞれに流体的に連通する。これにより、燃料ガス流路56は、セパレータ面方向に燃料ガスを流通させる。
【0043】
セパレータ10において、第1バイポーラプレート48の冷媒側面48b及び第2バイポーラプレート50の冷媒側面50bは、互いに対向する。これらの冷媒側面48b、50b同士の間には、第1バイポーラプレート48のMEA側面48aの裏面形状と、第2バイポーラプレート50のMEA側面50aの裏面形状とが重なり合うことで冷却媒体流路60が形成されている。冷却媒体流路60は、後述する冷却媒体トンネル部62を介して2つの冷却媒体入口連通孔42a及び2つの冷却媒体出口連通孔42bのそれぞれに流体的に連通する。これにより、冷却媒体流路60は、セパレータ面方向に冷却媒体を流通させる。
【0044】
以下では、酸化剤ガス流路52、燃料ガス流路56、冷却媒体流路60を総称して流体流路Fともいう。また、酸化剤ガストンネル部54、燃料ガストンネル部58、冷却媒体トンネル部62を総称してトンネル部Tともいう。
【0045】
図4に示すように、セパレータ面方向で、第1バイポーラプレート48の酸化剤ガス流路52及び冷却媒体流路60の外側には、外側領域64が設けられている。また、
図3に示すように、セパレータ面方向で、第2バイポーラプレート50の燃料ガス流路56及び冷却媒体流路60の外側には、外側領域64が設けられている。これらの外側領域64は、第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50がセパレータ10として発電セル12を構成した際に、積層方向視で、樹脂枠付きMEA28のアノード電極36及びカソード電極38よりも外側の部分に対向する。
【0046】
流体連通孔Hは、外側領域64に設けられている。各セパレータ10では、第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50の積層方向に対向する流体連通孔Hの周囲(トンネル部Tを除く)同士が、溶接、ろう付け等によってそれぞれ接合されている。
【0047】
図2及び
図3に示すように、第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50のそれぞれには、MEA側面48a、50aから、樹脂枠付きMEA28に向かって積層方向に突出する連通孔ゴムシール部材66(
図3)、反応ガスゴムシール部材68、外周シール70(
図3)が設けられている。なお、連通孔ゴムシール部材66及び反応ガスゴムシール部材68を総称してゴムシール部材Rともいう。
【0048】
また、第1バイポーラプレート48に設けられたゴムシール部材Rを第1ゴムシール部材R1ともいい、第2バイポーラプレート50に設けられたゴムシール部材Rを第2ゴムシール部材R2ともいう。第1ゴムシール部材R1及び第2ゴムシール部材R2を互いに区別しない場合等には、これらを総称してゴムシール部材Rともいう。本実施形態では、第1ゴムシール部材R1と第2ゴムシール部材R2とは、互いの形状や大きさが同じ又は略同じに設定されている。すなわち、本実施形態では、第1ゴムシール部材R1の延在方向に直交する幅と、第2ゴムシール部材R2の延在方向に直交する幅とは、同じ又は略同じに設定されている。
【0049】
図2に示すように、第1バイポーラプレート48に設けられた第1ゴムシール部材R1及び外周シール70(
図3)は、該第1バイポーラプレート48とともにセパレータ10を構成する第2バイポーラプレート50とは反対側に向かって突出する。第2バイポーラプレート50に設けられた第2ゴムシール部材R2及び外周シール70(
図3)は、該第2バイポーラプレート50とともにセパレータ10を構成する第1バイポーラプレート48とは反対側に向かって突出する。
【0050】
第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50を接合したセパレータ10では、第1ゴムシール部材R1及び第2ゴムシール部材R2の積層方向視の位置が互いに重なるように設定されている。第1バイポーラプレート48の外周シール70及び第2バイポーラプレート50の外周シール70も同様に積層方向視の位置が重なるように設定されている。
【0051】
このため、本実施形態では、第1バイポーラプレート48の第1ゴムシール部材R1の突出方向の先端側は、隣接する他のセパレータ10を構成する第2バイポーラプレート50の第2ゴムシール部材R2の突出方向の先端側と、樹脂枠部材32を挟んで当接する。第1バイポーラプレート48の外周シール70(
図3)の突出方向の先端側も、隣接する他のセパレータ10を構成する第2バイポーラプレート50の外周シール70の突出方向の先端側と、樹脂枠部材32を挟んで当接する。
【0052】
図3及び
図4に示すように、ゴムシール部材Rは、流体流路Fと流体連通孔Hとの間をシールするものであり、ゴム弾性を有する材料から形成される。ゴム弾性を有する材料の一例としては、種々の樹脂系エラストマ(例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム)や、加硫ゴム等が挙げられる。連通孔ゴムシール部材66は、流体連通孔Hの周囲をそれぞれ個別に周回する。反応ガスゴムシール部材68は、流体流路F、酸化剤ガス連通孔40a、40b、燃料ガス連通孔44a、44bを一体に囲む。
【0053】
図2、
図5~
図7A、
図7Bに示すように、本実施形態では、連通孔ゴムシール部材66及び反応ガスゴムシール部材68のそれぞれは、セパレータ面方向に並列する2本を一組(ダブルリップ)として設けられる。なお、
図3及び
図4では、図示の都合上、ゴムシール部材Rを1本で示している。
【0054】
本実施形態では、セパレータ面方向に並列して一組となる2本のゴムシール部材Rは、互いに同形状である。
図7A及び
図7Bに示すように、燃料電池スタック16を組み立てる前の状態(圧縮荷重が付加されていない状態)では、各ゴムシール部材Rの突出方向の先端面Raは、先端側に向かって突出する円弧状である。また、ゴムシール部材Rの延在方向に直交する幅は、突出方向の基端側から先端側に向かって小さくなっている。なお、
図7A及び
図7Bを除く図面に示されるゴムシール部材Rは、圧縮荷重を受けて弾性変形した状態のものである。
【0055】
ゴムシール部材Rの形状は、上記に限定されるものではなく、例えば、各ゴムシール部材Rの突出方向の先端面Raは、圧縮荷重が付加されていない状態で平坦であってもよい。また、セパレータ面方向に並列して一組となる2本のゴムシール部材Rは、互いに異なる形状であってもよい。
【0056】
図4~
図7A、
図7Bに示すように、連通孔ゴムシール部材66及び反応ガスゴムシール部材68のそれぞれは、第1部分72及び第2部分74を有している。第1部分72及び第2部分74の詳細については後述する。
【0057】
図3に示すように、外周シール70は、セパレータ10の外周縁部を周回する。また、外周シール70は、ゴムシール部材Rと同じゴム弾性を有する材料から形成されてもよいし、プレス成形等により形成されたビードシールであってもよい。外周シール70がゴム弾性を有する材料から形成される場合、外周シール70もゴムシール部材Rと同様に、セパレータ面方向に並列する2本を一組として設けられてもよいし、3本以上を一組として設けられてもよいし、1本から構成されてもよい。また、外周シール70は設けられていなくてもよい。
【0058】
図4~
図7A、
図7Bに示すように、セパレータ10の外側領域64には平面部76が設けられている。この平面部76にトンネル部Tが設けられている。トンネル部Tは、ゴムシール部材Rと交差部78で交差して延在する。具体的には、トンネル部Tは、
図4の第1バイポーラプレート48の平面部76及び
図5の第2バイポーラプレート50の平面部76のそれぞれに設けられている。
【0059】
第1バイポーラプレート48の平面部76に設けられたトンネル部Tは、該第1バイポーラプレート48がプレス成形により一体に膨出成形されること等によって形成される。第2バイポーラプレート50の平面部76に設けられたトンネル部Tは、該第2バイポーラプレート50がプレス成形により一体に膨出成形されること等によって形成される。つまり、ゴム弾性を有する材料からなるゴムシール部材Rと、セパレータ10の一部から形成されるトンネル部Tとは、互いに別部材からなる。また、
図6、
図7B、
図8に示すように、トンネル部Tは、平面部76のMEA側面48a、50aから、ゴムシール部材Rの突出方向と同方向に突出する中空状である。
【0060】
セパレータ10では、第1バイポーラプレート48に設けられたトンネル部Tと、第2バイポーラプレート50に設けられたトンネル部Tとの積層方向の位置が重なる。すなわち、第1バイポーラプレート48に設けられたトンネル部Tの内側の中空部と、第2バイポーラプレート50に設けられたトンネル部Tの内側の中空部とは互いに連通している。
【0061】
図4に示すように、酸化剤ガストンネル部54は、セパレータ厚さ方向(積層方向、矢印A方向)視で、酸化剤ガス連通孔40a、40bと流体流路Fとの間に延在し、酸化剤ガス連通孔40a、40bを囲む連通孔ゴムシール部材66と交差部78で交差する。また、酸化剤ガストンネル部54の延在方向で、酸化剤ガス連通孔40a、40b側の端部には、該酸化剤ガス連通孔40a、40bに向かって開口する連通孔側開口80が設けられている。
【0062】
一方、第1バイポーラプレート48に設けられた酸化剤ガストンネル部54の延在方向で、酸化剤ガス流路52側の端部には、該酸化剤ガス流路52に向かって開口する流路側開口82が設けられている。また、第2バイポーラプレート50に設けられた酸化剤ガストンネル部54の延在方向で、燃料ガス流路56側の端部は閉塞されている。さらに、第1バイポーラプレート48の冷媒側面48b及び第2バイポーラプレート50の冷媒側面50bでは、酸化剤ガストンネル部54の周辺の平面部76が溶接、ろう付け等によって接合されている。
【0063】
これらにより、酸化剤ガストンネル部54の内側には、酸化剤ガス連通孔40a、40bと酸化剤ガス流路52とを連通させる連通路が形成される。この連通路は、酸化剤ガス連通孔40a、40bに対して、酸化剤ガス流路52を除く流体流路F(燃料ガス流路56及び冷却媒体流路60)は連通させない。
【0064】
本実施形態では、1つの酸化剤ガス連通孔40a、40bに対して3本の酸化剤ガストンネル部54がそれぞれ配置されていることとする。しかしながら、1つの酸化剤ガス連通孔40a、40bに対して配置される酸化剤ガストンネル部54の本数は、特に限定されるものではなく、1本であってもよいし、3本以外の複数本であってもよい。
【0065】
図3及び
図5に示すように、燃料ガストンネル部58は、セパレータ厚さ方向視で、燃料ガス連通孔44a、44bと流体流路Fとの間に延在し、燃料ガス連通孔44a、44bを囲む連通孔ゴムシール部材66と交差部78(
図5)で交差する。また、燃料ガストンネル部58の延在方向で、燃料ガス連通孔44a、44b側の端部には、該燃料ガス連通孔44a、44bに向かって開口する連通孔側開口80(
図5)が設けられている。
【0066】
一方、第2バイポーラプレート50に設けられた燃料ガストンネル部58の延在方向で、燃料ガス流路56側の端部には、該燃料ガス流路56に向かって開口する流路側開口82(
図5)が設けられている。また、第1バイポーラプレート48に設けられた燃料ガストンネル部58の延在方向で、酸化剤ガス流路52側の端部は閉塞されている。さらに、第1バイポーラプレート48の冷媒側面48b及び第2バイポーラプレート50の冷媒側面50bでは、燃料ガストンネル部58の周辺の平面部76が溶接、ろう付け等によって接合されている。
【0067】
これらにより、燃料ガストンネル部58の内側には、燃料ガス連通孔44a、44bと燃料ガス流路56とを連通させる連通路が形成される。この連通路は、燃料ガス連通孔44a、44bに対して、燃料ガス流路56を除く流体流路F(酸化剤ガス流路52及び冷却媒体流路60)は連通させない。
【0068】
本実施形態では、1つの燃料ガス連通孔44a、44bに対して3本の燃料ガストンネル部58がそれぞれ配置されていることとする。しかしながら、1つの燃料ガス連通孔44a、44bに対して配置される燃料ガストンネル部58の本数は、特に限定されるものではなく、1本であってもよいし、3本以外の複数本であってもよい。
【0069】
図3に示すように、冷却媒体トンネル部62は、セパレータ厚さ方向視で、冷却媒体連通孔42a、42bと流体流路Fとの間に延在し、冷却媒体連通孔42a、42bを囲む連通孔ゴムシール部材66と、反応ガスゴムシール部材68とのそれぞれと交差部78で交差する。また、冷却媒体トンネル部62の延在方向で、冷却媒体連通孔42a、42b側の端部には、該冷却媒体連通孔42a、42bに向かって開口する連通孔側開口80(
図4)が設けられている。
【0070】
一方、
図4に示すように、第1バイポーラプレート48に設けられた冷却媒体トンネル部62の延在方向で、酸化剤ガス流路52側の端部は閉塞されている。また、
図3の第2バイポーラプレート50に設けられた冷却媒体トンネル部62の延在方向で、燃料ガス流路56側の端部は閉塞されている。さらに、第1バイポーラプレート48の冷媒側面48b及び第2バイポーラプレート50の冷媒側面50bにおける冷却媒体トンネル部62の冷却媒体流路60側の端部は、第1バイポーラプレート48及び第2バイポーラプレート50の冷媒側面48b、50b同士の間に形成される隙間(不図示)を介して冷却媒体流路60に連通している。
【0071】
これらにより、冷却媒体トンネル部62の内側には、冷却媒体連通孔42a、42bと冷却媒体流路60とを連通させる連通路が形成される。この連通路は、冷却媒体連通孔42a、42bに対して、冷却媒体流路60を除く流体流路F(酸化剤ガス流路52及び燃料ガス流路56)は連通させない。
【0072】
本実施形態では、1つの冷却媒体連通孔42a、42bに対して3本の冷却媒体トンネル部62がそれぞれ配置されていることとする。しかしながら、1つの冷却媒体連通孔42a、42bに対して配置される冷却媒体トンネル部62の本数は、特に限定されるものではなく、1本であってもよいし、3本以外の複数本であってもよい。
【0073】
図6~
図8に示すように、ゴムシール部材Rの第1部分72は、平面部76から上記の突出方向に突出して設けられている。ゴムシール部材Rの第2部分74は、交差部78に配置されたトンネル部Tの突出端面Taから上記の突出方向に突出して設けられている。
図6及び
図8に示すように、第1部分72及び第2部分74は、ゴムシール部材Rの延在方向に沿って連続的に延在している。
【0074】
また、
図7A、
図7B、
図8に示すように、平面部76に対する第1部分72の突出高さH1と、平面部76に対する第2部分74の突出高さH2とは、ゴムシール部材Rの延在方向に一定となっている。つまり、平面部76に対する第1部分72の突出高さH1は、平面部76に対するトンネル部Tの突出高さH3と、トンネル部Tの突出端面Taに対する第2部分74の突出高さH4との和と同じ又は略同じになっている。
【0075】
図8に示すように、交差部78では、トンネル部Tの幅方向両側の側面Tbがゴムシール部材Rに当接している。本実施形態では、トンネル部Tの幅方向両側の側面Tbは、突出方向の先端側に向かうほど、互いに近接する方向に傾斜している。このため、トンネル部Tは、セパレータ厚さ方向に沿った断面形状が台形状となっている。なお、トンネル部Tの幅方向両側の側面Tbは、セパレータ厚さ方向に沿っていてもよい。すなわち、トンネル部Tは、セパレータ厚さ方向に沿った断面形状が正方形状又は長方形状であってもよい。さらに、トンネル部Tの幅方向両側の側面Tbは、湾曲していてもよい。
【0076】
基本的には、上記のように構成される燃料電池スタック16(
図1)の動作について、簡単に説明する。
図1に示すように、燃料電池スタック16で発電を行う場合、燃料ガス入口連通孔44aに燃料ガスが供給され、酸化剤ガス入口連通孔40aに酸化剤ガスが供給され、冷却媒体入口連通孔42aに冷却媒体が供給される。
【0077】
酸化剤ガスは、
図4に示すように、酸化剤ガス入口連通孔40aから酸化剤ガストンネル部54内の連通路を介して酸化剤ガス流路52に導入される。この酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路52に沿って矢印B方向に移動しつつ、樹脂枠付きMEA28のカソード電極38に供給される。一方、燃料ガスは、
図5に示すように、燃料ガス入口連通孔44aから燃料ガストンネル部58内の連通路を介して燃料ガス流路56に導入される。この燃料ガスは、燃料ガス流路56に沿って矢印B方向に移動しつつ、樹脂枠付きMEA28のアノード電極36に供給される。
【0078】
従って、各樹脂枠付きMEA28では、カソード電極38に供給される酸化剤ガスと、アノード電極36に供給される燃料ガスとが、カソード電極触媒層38a及びアノード電極触媒層36a内で電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
【0079】
電気化学反応で消費されなかった酸化剤ガス(酸化剤排ガス)は、酸化剤ガス流路52から酸化剤ガストンネル部54内の連通路を介して酸化剤ガス出口連通孔40bへと流入し、酸化剤ガス出口連通孔40bを矢印A方向に流れて燃料電池スタック16から排出される。同様に、電気化学反応で消費されなかった燃料ガス(燃料排ガス)は、燃料ガス流路56から燃料ガストンネル部58内の連通路を介して燃料ガス出口連通孔44bへと流入し、燃料ガス出口連通孔44bを矢印A方向に流れて燃料電池スタック16から排出される。
【0080】
冷却媒体は、
図3に示すように、冷却媒体入口連通孔42aから冷却媒体トンネル部62内の連通路を介して冷却媒体流路60に導入され、該冷却媒体流路60に沿って矢印B方向に移動しつつ、樹脂枠付きMEA28と熱交換する。熱交換後の冷却媒体は、冷却媒体トンネル部62内の連通路を介して冷却媒体出口連通孔42bへと流入し、冷却媒体出口連通孔42bを矢印A方向に流れて燃料電池スタック16から排出される。
【0081】
本実施形態に係る燃料電池用のセパレータ10では、上記の通り、流体流路F及び流体連通孔Hの間をシールするゴムシール部材Rと、流体流路F及び流体連通孔Hを連通する連通路を形成するトンネル部Tとが別部材からなる。このため、圧縮荷重が付加された交差部78では、例えば、ゴムシール部材R及びトンネル部Tが同一部材から連続的に形成されている場合に比べて、ゴムシール部材Rとトンネル部Tとが一体に弾性変形することを抑制できる。
【0082】
つまり、ゴムシール部材Rにおいては、圧縮荷重により十分に弾性変形させて、流体流路Fと流体連通孔Hとの間のシール性を良好に確保することができる。一方、トンネル部Tにおいては、圧縮荷重が加えられても、内側に十分な断面積の連通路が形成される形状を維持して、流体流路Fと流体連通孔Hとの間に流体を良好に流通させることができる。
【0083】
以上から、本実施形態に係るセパレータ10及び該セパレータ10を備える燃料電池スタック16によれば、流体流路Fと流体連通孔Hとの間のシール性を良好に確保できるとともに、トンネル部T内の連通路に流体を良好に流通させることが可能である。
【0084】
上記の実施形態に係る燃料電池用のセパレータ10では、平面部76に対する第1部分72の突出高さH1と、平面部76に対する第2部分74の突出高さH2とは、ゴムシール部材Rの延在方向に一定であることとした。
【0085】
この場合、圧縮荷重によりゴムシール部材Rの先端面Raに付加される線圧を、該ゴムシール部材Rの延在方向に均一化することができる。これによって、ゴムシール部材Rの全体に過不足なく線圧を付加し易くなり、ゴムシール部材Rによるシール性を一層良好に確保することが可能になる。ここでの線圧は、上記の圧縮荷重によりゴムシール部材Rの先端面Raに付加される面圧の、ゴムシール部材Rの延在方向における単位長さ当たりの平均値である。
【0086】
なお、平面部76に対する第1部分72の突出高さH1と、平面部76に対する第2部分74の突出高さH2とは互いに異なっていてもよい。例えば、平面部76に対する第1部分72の突出高さH1よりも、平面部76に対する第2部分74の突出高さH2が高くなっていてもよい。
【0087】
上記の実施形態に係る燃料電池用のセパレータ10では、ゴムシール部材Rは、セパレータ面方向に並列する複数本(2本)を一組として設けられることとした。
【0088】
この場合、例えば、燃料電池スタック16において、発電セル12同士の相対位置がセパレータ面方向にずれたとしても、複数本のゴムシール部材Rの何れかが、隣接するセパレータ10の複数本のゴムシール部材Rの何れかと積層方向に並んで配置された状態を維持し易い。これによって、ゴムシール部材Rによる流体流路Fと流体連通孔Hとのシール性を一層良好に確保することが可能になる。また、複数本を一組とすることで、ゴムシール部材Rの1本当たりに付加される線圧が大きくなりすぎることを抑制できる。これによって、例えば、ゴムシール部材Rの耐久性を高めること等ができ、ひいては、流体流路Fと流体連通孔Hとのシール性の確保を容易にすることが可能になる。
【0089】
なお、上記の実施形態では、セパレータ面方向に並列する2本を一組(ダブルリップ)として設けられるゴムシール部材Rの例について説明したが、ゴムシール部材Rは、セパレータ面方向に並列する3本以上を一組として設けられてもよいし、
図9Aに示すように、1本(シングルリップ)から構成されてもよい。
【0090】
上記の実施形態に係る燃料電池用のセパレータ10の交差部78では、トンネル部Tの幅方向両側で平面部76から立ち上がる側面Tbがゴムシール部材Rに当接していることとした。
【0091】
上記の圧縮荷重は、積層方向、すなわち、トンネル部Tの突出方向に加えられる。このため、上記の圧縮荷重が加えられたトンネル部Tには、突出端面Taが積層方向に沿って連通路の内側に向かうとともに、側面Tbが連通路の幅方向外側に向かう方向に応力が生じ易い。しかしながら、トンネル部Tの側面Tbには、ゴムシール部材Rが当接しているため、上記の応力が生じても、トンネル部Tが変形することが抑制される。ひいては、トンネル部T内の連通路の断面積を維持して、該連通路に流体を良好に流通させることが可能になる。
【0092】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0093】
例えば、上記の実施形態に係る燃料電池スタック16では、第1ゴムシール部材R1と第2ゴムシール部材R2とが、互いの形状や大きさが同じ又は略同じに設定されていることとしたが、特にこれには限定されない。例えば、
図9Bに示すように、第1ゴムシール部材R1の幅は、第2ゴムシール部材R2の幅よりも大きく設定されていてもよい。
【0094】
なお、
図9Bには、1本(シングルリップ)からそれぞれ構成された第1ゴムシール部材R1及び第2ゴムシール部材R2の幅が互いに異なる例が示されている。しかしながら、2本(ダブルリップ)又は3本以上からそれぞれ構成された第1ゴムシール部材R1及び第2ゴムシール部材R2の幅が互いに異なっていてもよい。また、不図示ではあるが、第1ゴムシール部材R1の幅は、第2ゴムシール部材R2の幅よりも小さく設定されていてもよい。
【0095】
さらに、例えば、1枚のセパレータ10において、第1ゴムシール部材R1の幅と第2ゴムシール部材R2の幅とを同じにした場合においても、積層方向に隣接するセパレータ10同士でゴムシール部材Rの幅が異なるようにしてもよい。
【0096】
すなわち、燃料電池スタック16では、積層方向に複数積層されたセパレータ10のそれぞれに設けられたゴムシール部材Rは、積層方向に並んで配置され、積層方向に隣接するゴムシール部材Rは、該ゴムシール部材Rの延在方向に直交する幅が互いに異なっていてもよい。
【0097】
この場合、例えば、燃料電池スタック16において、発電セル12同士の相対位置がセパレータ面方向にずれたとしても、隣接するセパレータ10のゴムシール部材Rが樹脂枠部材32を挟んで互いに当接した状態を維持し易くすることができる。これによって、各々のゴムシール部材Rの先端面Raに適切な線圧が付加された状態を容易に維持することが可能になる。その結果、ゴムシール部材Rによる流体流路Fと流体連通孔Hとのシール性を一層良好に確保することが可能になる。
【符号の説明】
【0098】
10…セパレータ 16…燃料電池スタック
30…電解質膜・電極構造体 64…外側領域
72…第1部分 74…第2部分
76…平面部 78…交差部
F…流体流路 H…流体連通孔
H1、H2…突出高さ R…ゴムシール部材
T…トンネル部 Ta…突出端面
Tb…側面