(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105941
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】触覚刺激を与える身体装着具
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220708BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/16 650
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000585
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】391021684
【氏名又は名称】菱洋エレクトロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 直登
(72)【発明者】
【氏名】水庭 理沙
(72)【発明者】
【氏名】根本 美由樹
(72)【発明者】
【氏名】平原 誠
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA46
5E555AA57
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC01
5E555BE04
5E555CA41
5E555CA42
5E555CA47
5E555CB23
5E555CB64
5E555CB79
5E555DA24
5E555DD08
5E555EA04
5E555EA23
5E555FA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を聴覚又は視覚以外の手段によりユーザに知らせることが可能な身体装着具を提供する。
【解決手段】少なくとも一部がユーザの身体に接触する部位を含む身体装着具10は、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を検知するセンサ14と、身体装着具10に一体化された触覚刺激モジュールと12を有する。触覚刺激モジュール12は、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に反応し、ユーザの身体に接触する部位に対し触覚刺激を与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部がユーザの身体に接触する部位を含む身体装着具であって、
ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を検知するセンサと、前記身体装着具に一体化された触覚刺激モジュールとを有し、
前記触覚刺激モジュールは、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に反応し、ユーザの身体に接触する部位に対し触覚刺激を与える、
身体装着具。
【請求項2】
前記触覚刺激は、ユーザの聴覚又は視覚が妨げられた状態において与えられる、請求項1に記載の身体装着具。
【請求項3】
前記触覚刺激モジュールは、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の内容に応じて触覚効果パターンを決定する制御手段と、前記触覚効果パターンに基づいて触覚刺激を与える触覚発生手段を含む、請求項1又は2に記載の身体装着具。
【請求項4】
前記触覚刺激モジュールは、さらに前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の重要度を判定する判定手段を含み、
前記触覚効果パターンは、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の重要度に基づいて生成される、請求項3に記載の身体装着具。
【請求項5】
前記センサが前記身体装着具に設置されたマイクロフォンであり、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起は、予め登録された音声情報に基づき判定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の身体装着具。
【請求項6】
前記触覚刺激モジュールは、前記身体装着具の異なる部位に2つ以上設置されており、前記触覚刺激は、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の方位に対応する部位にある前記触覚刺激モジュールにより与えられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の身体装着具。
【請求項7】
さらに、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を記録する記録手段を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の身体装着具。
【請求項8】
頭部装着具である、請求項1~7のいずれか1項に記載の身体装着具。
【請求項9】
ヘッドホンである、請求項8に記載の身体装着具。
【請求項10】
ヘルメットである、請求項8に記載の身体装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚刺激を与える身体装着具に関する。とりわけ、本発明は、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に反応して、ユーザの身体に接触する部位に対し触覚刺激を与えることが可能な身体装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルなどの感圧入力装置は直感的な操作が可能になるという利点により、使用者が機器を操作する際のインターフェースとして幅広い分野に採用されている。また、従来、物理的なボタンやキーボードが用いられていた機器にも、タッチパネルへ置き換える動きが広がっている。
【0003】
タッチパネルを搭載した電子機器は、人体に触覚フィードバック(ハプティク・フィードバック)を付与するハプティク・アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」と称することもある。)をタッチパネルと組み合わせて搭載することがある。ユーザの身体の部位(例えば、手指)若しくはユーザが操作する物体が電子機器の入力部に触れたとき、あるいはシステムが特定のイベントを生成したとき、ハプティク・アクチュエータは、電子機器の筐体やタッチスクリーンなどの構成部品に運動を発生させる。ユーザは、電子機器に接触した身体の部位で振動を知覚したり、音として知覚したりすることで、直感的かつ容易に電子機器を操作し、又は情報を受け取ることができる。
【0004】
ハプティク・アクチュエータは、一般的に駆動源に電力を使用しており、運動の性質から衝撃駆動型と振動駆動型に大別することができる。衝撃駆動型は代表例として、形状記憶合金を利用するSIA(Shape memory alloy Impact Actuator)やピエゾ素子を利用した圧電アクチュエータを挙げることできる。衝撃駆動型アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、電子機器のタッチスクリーンや筐体に対し、動作部品が打撃し、又は連動させることで一過性の衝撃を与える。振動駆動型アクチュエータは代表例として偏心モータを利用するERM(Eccentric Rotating Mass)型アクチュエータ、磁界中のコイルに交流電流を流して可動子を振動させるリニア共振型アクチュエータ(LRA:Linear Resonant Actuator)などを挙げることができる。振動駆動型は振動体に必要な時間だけ一定の振幅の振動を与える。
【0005】
例えば、特許文献1(国際公開第2012/023605号)には、ワイヤー状形態を有する形状記憶合金の長さ方向の伸縮変化を利用して水平方向(または平面方向)または上下方向(前後方向または厚み方向)の衝撃的な動き(衝撃動作)、および当該衝撃動作の繰り返しに基づく回転動作または直進動作を可能にする衝撃駆動型アクチュエータが開示されている。当該衝撃駆動型アクチュエータによれば、所定の配線状態で配置されるワイヤー状形状記憶合金に対して各種形状の絶縁性熱伝導体を可能な限り有効に接触させるように設け、この絶縁性熱伝導体によってワイヤー状形状記憶合金でパルス的通電時に生じた熱を迅速に放散させて逃がすようにしたため、ワイヤー状形状記憶合金の低温化を迅速に行うことができ、比較的に短い時間で繰り返すことが可能な瞬間的動作を実現することができ、実用性の高い衝撃駆動型アクチュエータを実現することができる。
【0006】
また、ユーザのタッチパネルにおける操作やタッチパネルの表示内容などに応じて、多種多様な触覚フィードバックパターンを提供できるように、触覚フィードバック発生機構を複数搭載することがある。例えば、特許文献2(特開2012-203895号公報)には、スマートフォンのガラス基板の下に、当該スマートフォンの上部及び下部にそれぞれ圧電振動素子を搭載したタッチパネル装置が開示されている。圧電振動素子を2ヶ所に設けたので、各々に入力される信号の振幅や位相を制御することにより、保護パネル22の面内の特定の場所に強い振幅を誘起することができ、指などが触れている部分を選択的に振動させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/023605号
【特許文献2】特開2012-203895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来では、ユーザによる電子機器の操作をより直感的にフィードバックする、あるいは、電子機器からユーザへの情報をより直感的に伝えるという観点から、触覚フィードバックを付与する機能が電子機器に搭載されてきた。しかし、ユーザが電子機器の使用に没頭する場合、あるいは、ユーザの聴覚や視覚が電子機器の使用などにより妨げられる場合、ユーザは、自分への呼びかけ又は注意喚起に反応できず、不便又は危険をもたらす可能性があり、そのような可能性を軽減する観点からは触覚フィードバックの利用が検討されていない。
【0009】
例えば、ユーザがヘッドホンを装着して音楽を再生するとき、音楽の音及びヘッドホンの遮音効果により、パトカーや救急車のサイレンが聞こえない可能性がある。また、ユーザがヘルメットを装着して騒音の大きい工事現場にいるとき、他人からの呼びかけ又は注意喚起が聞こえにくい場合がある。そのようなウェアラブル機器は、スマートフォンなどの情報端末と異なり、ユーザへの情報の出力やユーザからの情報入力よりも、特定の集約された機能(例えば、ヘッドホンの場合は音楽再生、ヘルメットの場合は頭部の保護。)のみを有するので、従来の観点から、触覚フィードバックシステムを設けることは検討されていなかった。しかし、これらのウェアラブル機器は、それ自体がユーザの聴覚を妨げるか、ユーザの聴覚や視覚が妨げられる環境において使用されるので、ユーザの聴覚又は視覚を補う手段をウェアラブル機器に設けることが望ましい。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み完成されたものであり、一実施形態において、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を聴覚又は視覚以外の手段によりユーザに知らせることが可能な身体装着具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、従来と異なる視点で触覚フィードバックの利点を活用することに着目し、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に反応する触覚刺激モジュールを身体装着具に設置することで、ユーザの聴覚や視覚が妨げられている状態でもユーザへの呼びかけ又は注意喚起をユーザに知らせることが可能な構成を見出し、本発明の完成に至った。以下、本発明の一部の実施形態を例示する。
[1]
少なくとも一部がユーザの身体に接触する部位を含む身体装着具であって、
ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を検知するセンサと、前記身体装着具に一体化された触覚刺激モジュールとを有し、
前記触覚刺激モジュールは、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に反応し、ユーザの身体に接触する部位に対し触覚刺激を与える、
身体装着具。
[2]
前記触覚刺激は、ユーザの聴覚又は視覚が妨げられた状態において与えられる、[1]に記載の身体装着具。
[3]
前記触覚刺激モジュールは、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の内容に応じて触覚効果パターンを決定する制御手段と、前記触覚効果パターンに基づいて触覚刺激を与える触覚発生手段を含む、[1]又は[2]に記載の身体装着具。
[4]
前記触覚刺激モジュールは、さらに前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の重要度を判定する判定手段を含み、
前記触覚効果パターンは、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の重要度に基づいて生成される、[3]に記載の身体装着具。
[5]
前記センサが前記身体装着具に設置されたマイクロフォンであり、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起は、予め登録された音声情報に基づき判定される、[1]~[4]のいずれか1項に記載の身体装着具。
[6]
前記触覚刺激モジュールは、前記身体装着具の異なる部位に2つ以上設置されており、前記触覚刺激は、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の方位に対応する部位にある前記触覚刺激モジュールにより与えられる、[1]~[5]のいずれか1項に記載の身体装着具。
[7]
さらに、前記ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を記録する記録手段を有する、[1]~[6]のいずれか1項に記載の身体装着具。
[8]
頭部装着具である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の身体装着具。
[9]
ヘッドホンである、[8]に記載の身体装着具。
[10]
ヘルメットである、[8]に記載の身体装着具。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を聴覚又は視覚以外の手段によりユーザに知らせることが可能な身体装着具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における身体装着具10の構造概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態における身体装着具の作動方法を示すブロック図である。
【
図3】音声識別ユニットの作動方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態において、音声認識の詳細内容の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態において、ヘッドホンである身体装着具の構成を示す概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態において、ヘッドホンである身体装着具の触覚刺激モジュール12の作動方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1.身体装着具)
図1は、本発明の一実施形態における身体装着具10の構造概略図である。実線部分で示される身体装着具10の外殻の内部に、触覚刺激モジュール12が一体化された状態で設けられており、身体装着具10の外殻の外側には、触覚刺激モジュール12に近接して、センサ14が設けられている。触覚刺激モジュール12及びセンサ14は点線で囲まれており、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に反応して、触覚刺激を与えるために必要の最小構成を示している。
【0016】
身体装着具は、少なくとも一部がユーザの身体に接触するものであれば、装着部位は特に限定されず、身体装着具の本来の機能に応じて、ユーザの頭部、躯幹、四肢などに装着することができる。例えば、身体装着具がヘッドホン、ヘルメット、又は潜水用若しくは遊泳用ゴーグルなどである場合、ユーザの頭部に装着されることが想定される。本発明の一実施形態において、ユーザの聴覚や視覚が妨げられる状態において身体装着具が使用されることが想定されるので、身体装着具が頭部装着具である。
【0017】
(2.センサ)
センサは、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を検知する。ユーザへの呼びかけ又は注意喚起は、ユーザ個人に対する呼びかけ又は注意喚起でもよく、ユーザを含む不特定多数の人に対する呼びかけ又は注意喚起であってもよい。例えば、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起は、本発明の一実施形態において、ユーザの名前の呼びかけであり、別の一実施形態において、救急車、消防車、又はパトカーのサイレンであり、別の一実施形態において、公共交通機関のアナウンスである。
【0018】
センサの種類は、身体装着具が使用される環境に応じて適宜決定でき、特に限定されないが、典型的には、音情報を取得するマイクロフォン、距離情報を取得する測距センサ、画像情報を取得するカメラ等である。センサとしては、1種類のみを使用してもよく、複数の種類のセンサを組み合わせて使用してもよい。
【0019】
センサがマイクロフォンである場合、マイクロフォンが取得した音から不要な音を取り除き、人の声や特定のパターンの音(サイレンなど)を抽出することができるノイズフィルタを設けることが好ましい。
【0020】
(3.触覚刺激モジュール)
触覚刺激モジュールは、身体装着具に一体化されており、具体的には、身体装着具の外殻の内部に設置され、又は身体装着具の外殻に固定される。触覚刺激モジュールは、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に反応し、身体装着具がユーザの身体に接触する部位に対し、触覚刺激を与える。
【0021】
ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を検知するセンサとしてマイクロフォンを設置した場合、マイクロフォンが取得した音がユーザへの呼びかけ又は注意喚起であるか否かを判定するためには、予め所定の音声情報を触覚刺激モジュールに登録しておくことが好ましい。例えば、ユーザへの呼びかけについては、当該ユーザの名前、通称名などを登録することができるほか、人を呼びかける際に通常発する言葉(「ねえ」、「あのう」など)も登録することができ、ユーザへの注意喚起について、救急車、消防車、又はパトカーのサイレンの音、公共交通機関のアナウンスの典型的な用語(「ご案内」、「繰り返し」、「ご迷惑」)などを登録することができる。さらには、公共交通機関のアナウンスのうち、一部についてユーザの反応が不要な場合、一定の条件を満たすアナウンスのみをユーザに知らせることができる。例えば、同じフレーズが繰り返し放送される場合、外国語によるアナウンスが放送されない場合、緊急性の高いものと判断して、これらのアナウンスのみ、触覚刺激を通じてユーザに知らせることができる。
【0022】
あるいは、特定人物の声を登録したうえ、当該人物の音声を声紋認識などにより検知したとき、内容にかかわらず触覚刺激を与えるように、触覚刺激モジュールを構成することができる。以上のような所定の音声情報は、触覚刺激モジュールの内部、又は触覚刺激モジュールとは独立に設けられた、ハードディスク(HD)やROM、RAMなどで構成される記憶装置に記録されることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、触覚刺激モジュールは、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起に応答して触覚効果パターンを決定する制御手段と、触覚効果パターンに基づいて触覚刺激を与える触覚発生手段を含む。
【0024】
制御手段は、センサが検知したユーザへの呼びかけ又は注意喚起に応答して、所定の触覚効果パターンを決定して、それに対応して、触覚発生手段を駆動するパルス電圧などの信号を発生し、これを触覚発生手段に送信する。一実施形態において、制御手段は、駆動信号を生成するように構成された増幅器、又はより一般的には駆動回路を含み得る。一実施形態では、制御手段は、1つ又は複数のプロセッサ又はプロセッサコア、プログラマブルロジックアレイ(PLA)又はプログラマブルロジック回路(PLC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、又は任意の他の制御回路を含み得る。コントローラがプロセッサを含む場合、プロセッサは、携帯電話又は他のエンドユーザデバイス上の汎用プロセッサなどの汎用プロセッサであってもよく、あるいは、触覚効果の生成専用のプロセッサであってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、制御手段は、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の内容に応じて、様々な触覚効果パターン(強さ、持続時間、振動波形など)を決定することが可能である。これらの触覚効果パターンは、所定のアルゴリズムに基づいて、その都度算出されてもよく、ハードディスク(HD)やROM、RAMなどで構成される記憶装置にあらかじめ定義されたものであってもよい。一実施形態において、触覚効果パターンは、身体装着具に設けられた入力手段、又は身体装着具に連動されたソフトウェアにより、ユーザが任意に設定又は変更することができる。
【0026】
ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の内容としては、人の声かそれ以外の音か、ユーザ個人に対するものか不特定多数人に対するものか、特定のキーワード(「緊急」、「地震」、「火災」など)が含まれるか否か、いくつかの種類に分類することが可能であり、それぞれに対応する触覚効果パターンを事前に登録しておくことが可能である。呼びかけ又は注意喚起の内容に対応する触覚効果パターンを与えることで、ユーザは呼びかけ又は注意喚起の内容を一定程度予測することができ、実際に呼びかけ又は注意喚起の内容を聞く前に、即時かつ適切に反応することが可能である。
【0027】
本発明の一実施形態において、触覚刺激モジュールは、さらにユーザへの呼びかけ又は注意喚起の重要度を判定する判定手段を含む。判定手段は、上記制御手段と同一の構成部品により実現されてもよく、制御手段とは独立の構成部品であってもよい。
【0028】
呼びかけ又は注意喚起の重要度を判定する基準として、ユーザに対して呼びかけ又は注意喚起する人又は物体とユーザの距離、呼びかけ又は注意喚起の音量の大きさなどが考えられる。例えば、身体装着具に設置されるマイクロフォンが救急車のサイレンを検知したとき、身体装着具に別に設置されるカメラや測距センサは救急車を捕捉し、ユーザと救急車の距離を検出する。ユーザと救急車の距離が一定基準以内である場合、判定手段は当該サイレンの重要度が高いと判定し、判定結果を制御手段に送信する。
【0029】
あるいは、身体装着具に設置されるマイクロフォンが救急車のサイレンを検知したとき、判定手段は、サイレンの音の特徴(通常の周波数より高いか低いか、音量が大きくなっているか小さくなっているか)から、救急車がユーザに近づいているか、それとも遠ざかっているかを判定することが考えられる。救急車がユーザに近づいている場合、判定手段は当該サイレンの重要度が高いと判定し、判定結果を制御手段に送信する。
【0030】
制御手段は、判定手段から判定結果を受信すると、重要度の高いサイレンに対応する触覚効果パターンを決定する。例えば、サイレンに対応する触覚効果パターンが予め登録されている場合、重要度が高いことをユーザに示すために、当該触覚効果パターンを通常より強く駆動する、あるいは、通常より多くの回数で繰り返すことが考えられる。これにより、ユーザは感知された触覚効果パターンにより、実際に呼びかけ又は注意喚起の内容を聞く前に、即時かつ適切に反応することが可能である。
【0031】
あるいは、身体装着具に設置されるマイクロフォンがユーザの名前の呼びかけを検知すると、判定手段は、当該呼びかけの声の特徴(トーンが高いか低いか、音の振幅の大きさが通常より大きいか小さいか)から、当該呼びかけの重要度を判定することが考えられる。例えば、声のトーンが高く、かつ通常より大きい場合、判定手段は当該呼びかけの重要度が高いと判定し、判定結果を制御手段に送信する。
【0032】
制御手段は、判定手段から判定結果を受信すると、重要度の高い呼びかけに対応する触覚効果パターンを決定する。例えば、ユーザの名前の呼びかけに対応する触覚効果パターンが予め登録されている場合、重要度が高いことをユーザに示すために、当該触覚効果パターンを通常より強く駆動する、あるいは、通常より多くの回数で繰り返すことが考えられる。これにより、ユーザは感知された触覚効果パターンにより、実際に呼びかけの内容を聞く前に、即時かつ適切に反応することが可能である。
【0033】
前述のように、本発明は、ユーザの聴覚又は視覚が妨げられる状態において、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を聴覚又は視覚以外の手段によりユーザに知らせることが可能であるので、触覚刺激は、ユーザの聴覚又は視覚が妨げられる状態において与えられることが好ましい。例えば、身体装着具がヘッドホンである場合、ユーザが音楽を再生している間に制御手段が作動し、音楽再生が停止している間には制御手段は作動せず、ユーザに触覚刺激を与えないとすることができる。また、身体装着具がヘルメットである場合、周囲の騒音が一定レベルを超える間には制御手段が作動し、そうでない場合には制御手段が作動せず、ユーザに触覚刺激を与えないとすることもできる。
【0034】
本発明の一実施形態において、触覚刺激モジュールは、身体装着具の異なる部位に2つ以上設置されており、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の方位を知らせるために、当該方位に対応する部位にある触覚刺激モジュールが触覚刺激を与えるように構成される。例えば、身体装着具がヘッドホンである場合、左側のイヤーパッドと右側のイヤーパッドにそれぞれ1つのマイクロフォン及び1つの触覚刺激モジュールを搭載することができ、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起があった場合、制御手段は、2つのマイクロフォンが取得した音の時間差により、当該呼びかけ又は注意喚起はユーザの左側寄りなのか、右側寄りなのかを判断し、判断結果に応じて、左側の触覚発生手段又は右側の触覚発生手段のみを駆動し、これにより、ユーザに呼びかけ又は注意喚起の方位を知らせることが可能である。
【0035】
触覚発生手段は、さまざまな触覚効果パターンを実際に生成する、任意のアクチュエータを備えることができる。衝撃駆動型のアクチュエータや、振動駆動型のアクチュエータのいずれも、本発明のために用いることができる。衝撃駆動型は代表例として、形状記憶合金を利用するSIA(Shape memory alloy Impact Actuator)やピエゾ素子を利用した圧電アクチュエータを挙げることができる。衝撃駆動型アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、電子機器のタッチスクリーンや筐体に対し、動作部品が打撃し、又は連動させることで一過性の衝撃を与える。振動駆動型アクチュエータは代表例として偏心モータを利用するERM(Eccentric Rotating Mass)型アクチュエータ、磁界中のコイルに交流電流を流して可動子を振動させるリニア共振型アクチュエータ(LRA:Linear Resonant Actuator)などを挙げることができる。振動駆動型は振動体に必要な時間だけ一定の振幅の振動を与える。一実施形態においては、さまざまな触覚効果パターンを生成するために、複数のアクチュエータを用いることができ、衝撃駆動型及び振動駆動型をそれぞれ1つ以上併用することもできる。
【0036】
例えば、本発明の一実施形態における触覚発生手段のアクチュエータは、コイル、動作部品(例えば金属芯材)及びバネから作られている。コイルは金属の回りに巻きつけられ、(ここで、コイルと金属の部品の両者は「ソレノイド」と称してよい)かつ、コイルが磁界を生成するとき(例えば、電流がコイル端子間を流れる時)金属は移動する。当該金属の移動は電子機器に衝撃をもたらし得る。バネは次いで、電流がコイルから除去されるとき移動金属又は他の芯材を静止位置に戻すように用いてよい。
【0037】
あるいは、別の実施形態における衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、このワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー状形状記憶合金で生じた熱を逃がす円盤状絶縁性熱伝導体(動作部品)と、を備えるように構成される。駆動回路により、当該ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電を行い、ワイヤー状形状記憶合金を瞬間的に収縮させると、それに接触する円盤状絶縁性熱伝導体が瞬間的に押圧されて変位する。当該円盤状絶縁性熱伝導体の変位は電子機器に衝撃をもたらし得る。そして、円盤状絶縁性熱伝導体による熱伝導作用によってワイヤー状形状記憶合金で生じた熱が急速に放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。このようなアクチュエータの詳細は国際公開第2012/023605号に開示されている。
【0038】
(4.記録手段)
さらに、本発明の一実施形態において、身体装着具は、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を記録する記録手段を有することが好ましい。本発明の上記構成によれば、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起があった場合、ユーザに対して触覚刺激を与えることで当該呼びかけ又は注意喚起にユーザの注意を促すことができるが、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の発生と、ユーザの反応との間に時間差が存在することにより、ユーザが重要な情報を聞き流す場合がある。そこで、ユーザが自分への呼びかけ又は注意喚起を聞き直すことができるように、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を録音するレコーダーを身体装着具に設置することが好ましい。
【0039】
具体的には、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起を検知するセンサとしてマイクロフォンを設置した場合、マイクロフォンが取得したすべての音、又はノイズを除去した後の音を録音し、ユーザの操作に応じて録音を再生することが考えられる。録音データは、蓄積して保存してもよく、記憶媒体の容量の制限などがある場合には、直近の一定程度の期間(例えば、10秒)のみ保存され、呼びかけ又は注意喚起が検知されなかった場合、定期的に録音を削除することが考えられる。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態における身体装着具の作動方法を示すブロック図である。マイクロフォンは、身体装着具の外部環境から音を取得し、ノイズフィルタは、マイクロフォンが取得した音から不要な音を取り除き、人の声や特定のパターンの音(サイレンなど)を抽出する。抽出された音について、判断手段である音声識別ユニットは、当該音がユーザに向けられた音であるか否か、さらには当該音の重要度などを識別して、制御手段に送信する。制御手段は、位置特定機能、調整機能、通知機能を備えている。位置特定機能は、マイクロフォンや測距センサにより、ユーザに対する呼びかけ又は注意喚起の方位又は距離を推定する機能である。調整機能は、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の内容に応じて触覚効果パターンを決定する機能である。通知機能は、決定された触覚効果パターンが発生するように、触覚発生手段を駆動するパルス電圧などの信号を発生する機能である。制御手段から発生される駆動信号により、触覚発生手段であるアクチュエータが駆動し、所定の触覚効果パターンを発生し、ユーザに触覚刺激を与える。
【0041】
図3は、音声識別ユニットの作動方法の一例を示すフローチャートである。身体装着具の外部からの音などの情報は、センサによって検知され、そのうち呼びかけ又は注意喚起と無関係のノイズが除去される。抽出された音が、所定の閾値より大きい場合、当該音がユーザに向けられた音であるか否か、さらには当該音の重要度などを識別する。識別された音に対応して、触覚効果モジュールは、所定の触覚効果パターン(刺激)を発生する。
【0042】
図4は、音声認識の詳細内容の一例を示す図である。音声識別ユニットは、ノイズが除去された音を分析して、どのような音が含まれるかを識別する。救急車のサイレンの音が含まれる場合、当該音が通常より高いか、それとも通常より低いかを判断する。サイレンの音が通常より高い場合(すなわち、救急車が近づいている場合)、触覚効果モジュールは、より大きい振動を発生する。サイレンの音が通常より低い場合(すなわち、救急車が遠ざかっている場合)、触覚効果モジュールは、より小さい振動を発生する。車内アナウンスが含まれる場合、触覚効果モジュールは振動を発生する。ユーザへの呼びかけが含まれる場合、当該呼びかけの音声の音量が一定基準より大きいかを判断し、当該基準を上回る音量である場合、触覚効果モジュールは、より大きい振動を発生し、当該基準以下の音量である場合、触覚効果モジュールは、より小さい振動を発生する。
【0043】
(5.例示的な実施形態)
図5は、本発明の一実施形態において、ヘッドホンである身体装着具の構成を示す概略図である。当該ヘッドホンにおいて、左側のイヤーパッドと右側のイヤーパッドにそれぞれ1つのマイクロフォン14及び1つの触覚刺激モジュール12が設置されており、触覚刺激モジュール12の一部として、アクチュエータ121が図示されている。アクチュエータ121の振動をユーザに良好に伝達するために、2つのアクチュエータ121は、ユーザのこめかみ近傍に対応するヘッドホンの部位に設置される(
図5A)。ヘッドホンの後方には、2つのマイクロフォン14及び2つの測距センサ16が設置されており、これにより、ユーザへの呼びかけ又は注意喚起の方位や距離を検出することが可能である(
図5B)。
【0044】
図6は、本発明の一実施形態において、ヘッドホンである身体装着具の触覚刺激モジュール12の作動方法の一例を示す図である。ヘッドホンの構成は、
図5の実施形態と同様である。ユーザは、ヘッドホンを装着して音楽を再生している間、左側にいる他人から「ねえねえ」と呼びかけられる(
図6A)。ヘッドホンに設置されるマイクロフォン14がこの呼びかけを検知すると、触覚刺激モジュール12は、呼びかけが左側から来たものと判断した上に作動し、左側のアクチュエータ121において、所定の触覚効果パターンを発生させてユーザに知らせる(
図6B)。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本明細書において開示される各実施形態の各具体的な特徴は互いに独立するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜組み合わせることができることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0046】
10 身体装着具
12 触覚刺激モジュール
121 アクチュエータ
14 センサ(マイクロフォン)
16 測距センサ