(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105964
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】静電容量型センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20220708BHJP
G01L 5/165 20200101ALI20220708BHJP
【FI】
G01L1/16 C
G01L5/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000621
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508282568
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 隆介
(72)【発明者】
【氏名】ミルザ サキーブ サーウォー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン ディー ダブリュー マッデン
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB06
2F051BA07
2F051DA02
(57)【要約】
【課題】第1電極側配線と第2電極との間の静電容量等の外乱静電容量を低減でき、第1電極と第2電極との間の静電容量の計測精度を高めることを可能とする静電容量型センサを提供する。
【解決手段】誘電体から成る基材2に第1電極3(1)~3(4)と第2電極4とが配置された静電容量型センサ1Aは、接地された静電遮蔽部材(5(1)~5(6))を備える。静電遮蔽部材5は、例えば、第1電極3(1),3(2),3(4)に接続された第1配線部分6(1)in,6(2)in,6(4)inと第2電極4との間の箇所、第2電極4に接続された第2配線部分6(5)と第1電極3(4)との間の箇所、第2配線部分6(5)inと第1配線部分6(4)inとの間の箇所に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体から成る弾性変形可能な基材と、
前記基材に接した状態で配置された少なくとも1つの第1電極と、
前記基材に接し、且つ、前記第1電極との間に前記基材を介在させた状態で該第1電極と該基材の厚み方向に離隔して配置されると共に、該第1電極との間隔方向で見たとき、該第1電極と重なる部分を有するように配置された少なくとも1つの第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とに各々接続された第1電極側配線及び第2電極側配線とを備えており、
前記第1電極側配線のうち、前記基材の弾性変形に伴い前記第1電極と共に前記第2電極に対して相対移動する部分である第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2電極側配線のうち、前記基材の弾性変形に伴い前記第2電極と共に前記第1電極に対して相対移動する部分である第2配線部分と前記第1配線部分との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の箇所とのうちの少なくとも1つ以上の箇所に、接地された静電遮蔽部材が配置されていることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項2】
請求項1記載の静電容量型センサにおいて、
前記静電遮蔽部材は、前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1配線部分との間の箇所と、前記前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の箇所とのうち、前記第1配線部分と前記第2電極との間の静電容量と、前記第2配線部分と前記第1配線部分との間の静電容量と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の静電容量とのそれぞれの静電容量を所定値以下の容量値に収め得る箇所に配置されていることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の静電容量型センサにおいて、
前記静電遮蔽部材は、前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1配線部分との間の箇所と、前記前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の箇所とのうちの複数の箇所にまたがるように配置されていることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の静電容量型センサにおいて、
前記静電遮蔽部材は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向で見たとき、該第1電極と該第2電極とが重なり合う箇所に存在しないように配置されていることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の静電容量型センサにおいて、
前記静電遮蔽部材は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向における前記第1電極寄りの位置で、前記基材の弾性変形に伴い該第1電極と共に前記第2電極に対して相対移動するように配置されていると共に、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向で見たとき、該第1電極の周囲を囲み、且つ、該第1電極と重なる部分をもたないように配置されていることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の静電容量型センサにおいて、
前記静電遮蔽部材は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向における前記第2電極寄りの位置で、前記基材の弾性変形に伴い該第2電極と共に前記第1電極に対して相対移動するように配置されていると共に、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向で見たとき、該第2電極の周囲を囲み、且つ、該第2電極と重なる部分をもたないように配置されていることを特徴とする静電容量型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に見られるように、コンデンサを構成する第1電極と第2電極との間に弾性変形可能な誘電体を介在させた構造の静電容量型センサが知られている。特許文献1に見られるセンサでは、第1基板に装着された複数の第1電極と、第2基板に装着された複数の第2電極とを有し、センサに垂直抗力やせん断力が作用することで、誘電体が変形し、ひいては、第1電極と第2電極との間の相対変位が生じることによって、第1電極と第2電極との間の静電容量の変化が生じるようになっている。そして、当該センサでは、静電容量の変化に基づいてセンサに作用する垂直抗力とせん断力とを検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に見られる如き静電容量型センサでは、第1電極と第2電極との間の静電容量を計測するために、第1電極及び第2電極のそれぞれに配線が接続される。そして、第1電極に接続された配線である第1電極側配線と、第2電極との間の静電容量、あるいは、第2電極に接続された配線である第2電極側配線と第1電極との間の静電容量、あるいは、第1電極側配線と第2電極側配線との間の静電容量、あるいは、これらの合成の静電容量が、計測対象の静電容量である第1電極と第2電極との間の静電容量に比して無視できない程度の容量値になる場合がある。
【0005】
さらに、第1電極側配線と第2電極と間の静電容量、あるいは、第2電極側配線と第1電極との間の静電容量、あるいは、第1電極側配線と第2電極側配線との間の静電容量、あるいは、ごれらの合成の静電容量(以降、これらの静電容量を総称的に外乱静電容量ということがある)は、一般には一定の容量値ではなく、第1電極と第2電極との間の誘電体の弾性変形に応じて変化し得る。このため、上記外乱静電容量は、第1電極と第2電極との間の静電容量の計測精度を向上させる妨げとなる。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、第1電極側配線と第2電極との間の静電容量等の外乱静電容量を低減でき、第1電極と第2電極との間の静電容量の計測精度を高めることを可能とする静電容量型センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電容量型センサは、上記の目的を達成するために、誘電体から成る弾性変形可能な基材と、
前記基材に接した状態で配置された少なくとも1つの第1電極と、
前記基材に接し、且つ、前記第1電極との間に前記基材を介在させた状態で該第1電極と該基材の厚み方向に離隔して配置されると共に、該第1電極との間隔方向で見たとき、該第1電極と重なる部分を有するように配置された少なくとも1つの第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とに各々接続された第1電極側配線及び第2電極側配線とを備えており、
前記第1電極側配線のうち、前記基材の弾性変形に伴い前記第1電極と共に前記第2電極に対して相対移動する部分である第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2電極側配線のうち、前記基材の弾性変形に伴い前記第2電極と共に前記第1電極に対して相対移動する部分である第2配線部分と前記第1配線部分との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の箇所とのうちの少なくとも1つ以上の箇所に、接地された静電遮蔽部材が配置されていることを特徴とする(第1発明)。
【0008】
かかる本発明の静電容量型センサで、接地された静電遮蔽部材は、上記の如く配置されているので、第1電極側配線の第1配線部分と第2電極との間の静電容量と、第2電極側配線部分の第2配線部分と第1配線部分との間の静電容量と、第2配線部分と第1電極との間の静電容量とのうちの少なくとも1つ以上の静電容量(外乱静電容量)を、第1電極及び第2電極の間の静電容量に比して十分に微小な容量値に低減できる。
【0009】
このため、第1電極及び第2電極の間の静電容量を、第1電極側配線と第2電極側配線とを介して計測するとき、その計測精度を、静電遮蔽部材を備えない場合に比して向上させることが可能となる。
【0010】
上記第1発明では、前記静電遮蔽部材は、前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1配線部分との間の箇所と、前記前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の箇所とのうち、前記第1配線部分と前記第2電極との間の静電容量と、前記第2配線部分と前記第1配線部分との間の静電容量と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の静電容量とのそれぞれの静電容量を所定値以下の容量値に収め得る箇所に配置されていることが好ましい(第2発明)。
これによれば、外乱静電容量の全体を微小な容量値に低減させることができるので、第1電極及び第2電極の間の静電容量の計測精度を好適に高めることが可能となる。
【0011】
上記第1発明又は第2発明では、前記静電遮蔽部材は、前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1配線部分との間の箇所と、前記前記第1配線部分と前記第2電極との間の箇所と、前記第2配線部分と前記第1電極との間の箇所とのうちの複数の箇所にまたがるように配置され得る(第3発明)。
これによれば、静電容量型センサに備える静電遮蔽部材の個数を低減できる。
【0012】
上記第1~第3発明では、前記静電遮蔽部材は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向で見たとき、該第1電極と該第2電極とが重なり合う箇所に存在しないように配置されていることが好ましい(第4発明)。
これによれば、静電遮蔽部材が第1電極及び第2電極の間の静電容量に影響を及ぼしてしまうのを防止できる。
【0013】
上記第1~第4発明では、前記静電遮蔽部材は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向における前記第1電極寄りの位置で、前記基材の弾性変形に伴い該第1電極と共に前記第2電極に対して相対移動するように配置されていると共に、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向で見たとき、該第1電極の周囲を囲み、且つ、該第1電極と重なる部分をもたないように配置されているという態様を採用し得る(第5発明)。
【0014】
あるいは、前記静電遮蔽部材は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向における前記第2電極寄りの位置で、前記基材の弾性変形に伴い該第2電極と共に前記第1電極に対して相対移動するように配置されていると共に、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔方向で見たとき、該第2電極の周囲を囲み、且つ、該第2電極と重なる部分をもたないように配置されているという態様を採用し得る(第6発明)。
【0015】
これらの第5発明及び第6発明によれば、外乱静電容量の全体を微小な容量値に低減させることと、静電遮蔽部材が第1電極及び第2電極の間の静電容量に影響を及ぼさないようにすることとを適切に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の静電容量型センサの平面図及び該静電容量型センサに接続される測定部とを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を
図1~
図3を参照して以下に説明する。本実施形態の静電容量型センサ1A(以降、単にセンサ1Aということがある)は、基材2、第1電極3(3(1),3(2),3(3),3(4))、第2電極4、静電遮蔽部材5(5(1),5(2),5(4),5(5),5(6))、及び配線6(6(1),6(2),6(3),6(4),6(5))を備える。なお、
図1では、基材2の一部を点描部で示し、残部の外形を二点鎖線で示している。
【0018】
基材2は、センサ1Aの基体を構成するものであり、弾性変形可能な誘電体により構成されている。例えば、基材2は、ポリ塩化ビニル(PVC)のゲル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいは、これらの複合材料等から成る柔軟な誘電体により弾性変形可能に構成され得る。
【0019】
本実施形態では、基材2は、ほぼ一定の厚みを有する形状、例えば、直方体形状に形成されている。そして、
図2及び
図3に示すように、基材2の厚み方向の両面2a,2bのうちの一方の面2b(以降、基材2の裏面2bという)が、任意の取付対象物体Wの表面に固着される。
【0020】
例えば、センサ1Aを接触力等を検知するための触覚センサとして使用する場合、基材2の裏面2bは、ロボットハンド等の取付対象物体Wの表面に固着され得る。この場合、基材2の厚み方向の他方の面2a(以降、基材2の表面2aという)は、外界物との接触面となる。
【0021】
第1電極3、第2電極4、及び静電遮蔽部材5は、いずれも導体により構成される。例えば、第1電極3、第2電極4、及び静電遮蔽部材5のそれぞれは、炭素、銀、金、液体金属等の金属、チオフェン系導電性高分子、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等の導電性樹脂、あるいは、これらの複合材料から成る導体により構成され得る。
【0022】
センサ1Aは、第1電極3及び第2電極4をそれぞれ1つ以上備える。本実施形態では、センサ1Aは、例えば、4つの第1電極3(1),3(2),3(3),3(4)と、1つの第2電極4とを備える。
【0023】
第2電極4は、少なくとも一部が基材2に接した状態で配置されている。具体的には、本実施形態では、第2電極4は、例えば方形板状に形成されている。そして、第2電極4は、
図2及び
図3に示すように、基材2の厚み方向における裏面2b寄りの位置で、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢で基材2の内部に埋設されている。従って、第2電極4は、その外表面のほぼ全体が基材2に接した状態で配置されている。ただし、例えば、第2電極4の厚み方向の両面のうち、基材2の裏面2b側の面の全体もしくは一部が、基材2の外方に露出されていてもよい。
【0024】
以降の説明では、便宜上、
図1~
図3に示すように、基材2の厚み方向をZ軸方向とする3軸直交座標系(XYZ座標系)Csを想定し、基材2の厚み方向をZ軸方向と称する場合がある。また、当該座標系CsのX軸方向及びY軸方向については、Z軸方向で見た第2電極4の4つの辺のうち、互いに平行な2つの辺の延在方向(
図1では紙面の左右方向)をX軸方向、他の2つの辺の延在方向(
図1では紙面の上下方向)をY軸方向と定義する。
【0025】
4つの第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、いずれも、少なくとも一部が基材2に接し、且つ、第2電極4との間に基材2を介在させた状態で該第2電極4からZ軸方向(基材2の厚み方向)に離隔して配置されていると共に、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれの一部が第2電極4と重なるように配置されている。
【0026】
具体的には、本実施形態では、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、例えば、第2電極4よりも面積が小さい所定サイズの方形板状に形成されている。そして、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、基材2の表面2a寄りのZ軸方向位置で、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢(Z軸方向に直交する姿勢)で基材2の内部に埋設されている。これにより、各第1電極3(1)~3(4)は、そのほぼ全体が基材2に接し、且つ、第2電極4との間に基材2を介在させた状態で該第2電極4からZ軸方向に離隔して配置されている。従って、Z軸方向は、換言すれば、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の間隔方向である。
【0027】
この場合、第1電極3(1)~3(4)は、第2電極4とZ軸方向に一定の間隔を有し、且つ、基材2の表面2a側からZ軸方向で見たとき、第2電極4の4つの辺のそれぞれの中央部上に各々位置するように配置されている。また、各第1電極3(1)~3(4)は、基材2の表面2a側からZ軸方向で見たとき、その4つの辺のうちの互いに平行な2つの辺がX軸方向及びY軸方向の一方の軸方向に延在し、他の2つの辺が他方の軸方向に延在するように配置されている。そして、各第1電極3(1)~3(4)は、基材2の表面2a側からZ軸方向で見たとき、その一部が第2電極4に重なり、残部が第2電極4の外方に張り出すように配置されている。
【0028】
なお、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれは、本実施形態では、基材2に埋設されているので、各第1電極3(1)~3(4)のほぼ全体が基材2に接している。ただし、例えば、各第1電極3(1)~3(4)の厚み方向の両面のうち、基材2の表面2a側の面の全体もしくは一部が基材2の外方に露出されていてもよい。
【0029】
上記のように第1電極3(1)~3(4)と第2電極4とが基材2に配置されているので、各第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との重なり部分(Z軸方向で見たときの重なり部分)は、該重なり部分の間に誘電体である基材2を有するコンデンサを構成する。この場合、各第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との重なり部分に構成されるコンデンサは、その重なり部分の面積と、間隔(Z軸方向の間隔)とに応じた静電容量を有する。
【0030】
そして、基材2にX軸方向のせん断力が作用すると、そのせん断力の大きさに応じて、第1電極3(1)~3(4)が第2電極4に対して相対的にX軸方向に変位するように基材2が弾性変形する。このため、第1電極3(1)~3(4)のうち、X軸方向に並ぶ2つの第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積が変化し、ひいては、該第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量が変化する。このとき、Y軸方向に並ぶ2つの第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積は変化しないので、該第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量はほぼ一定に保たれる。
【0031】
また、基材2にY軸方向のせん断力が作用すると、そのせん断力の大きさに応じて、第1電極3(1)~3(4)が第2電極4に対して相対的にY軸方向に変位するように基材2が弾性変形する。このため、第1電極3(1)~3(4)のうち、Y軸方向に並ぶ2つの第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積が変化し、ひいては、該第1電極3(2),3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量が変化する。このとき、X軸方向に並ぶ2つの第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の面積は変化しないので、該第1電極3(1),3(3)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量はほぼ一定に保たれる。
【0032】
また、基材2にZ軸方向の荷重(圧縮力又は引っ張り力)が作用すると、その荷重の大きさに応じて、第1電極3(1)~3(4)が第2電極4に対して相対的にZ軸方向に変位するように基材2が弾性変形する。このため、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分のZ軸方向の間隔が変化し、ひいては、該第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量が変化する。
【0033】
以上のように第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との重なり部分の静電容量が、X軸方向及びY軸方向の2軸方向のせん断力、あるいは、Z軸方向の荷重により基材2に発生する弾性変形に応じて変化する。このため、それらの静電容量を計測することで、該静電容量の計測値から、基材2の弾性変形量(応力ひずみ)や、基材2に作用した2軸方向(X軸方向及びY軸方向)のせん断力、もしくはZ軸方向の荷重を計測することが可能となる。
【0034】
このような計測を行うために、センサ1Aが備える配線6は、第1電極3(1)~3(4)に、各々、電気的に導通するよう接続された配線6(1)~6(4)と、第2電極4に電気的に導通するように接続された配線6(5)とを含む。これらの配線6(1)~6(5)は、それぞれ、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれと同様の導体により構成され、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれから適宜の配線パターンで基材2の内部を通って該基材2の外部に引き出されている。
【0035】
この場合、配線6(1)~6(5)の、基材2の内部の部分は、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の箇所を通らないように配設される。また、配線6(1)~6(5)の材質は、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれと同一材質、あるいは、異なる材質のいずれであってもよい。また、配線6(1)~6(5)のそれぞれは、基材2の内部の部分と外部の部分とが異なる材質の導体で構成されていてもよい。また、配線6(1)~6(5)のそれぞれの、基材2の外部の部分の全体もしくは一部は、例えば、回路基板に形成された配線であってもよい。以降の説明では、配線6(1)~6(5)のそれぞれのうち、基材2の内部の部分を内部配線6(1)in~6(5)inと称し、基材2の外部の部分を外部配線6(1)out~6(5) outと称する。
【0036】
ここで、配線6(1)~6(4)のそれぞれの内部配線6(1)in~6(4)inは、基材2の弾性変形が発生したときに、それぞれが接続された第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと共に第2電極4に対して相対移動する部分である。また、配線6(5)の内部配線6(5)inは、基材2の弾性変形が発生したときに、第2電極4と共に第1電極3(1)~3(4)のそれぞれに対して相対移動する部分である。
【0037】
なお、本実施形態では、第1電極3(1)~3(4)に各々接続された内部配線6(1)in~6(4)inは、第1電極3(1)~3(4)のZ軸方向位置とほぼ同じZ軸方向位置で配設され、第2電極4に接続された内部配線6(5)inは、第2電極4のZ軸方向の位置とほぼ同じZ軸方向位置で配設されている。ただし、内部配線6(1)in~6(5)inのそれぞれは、Z軸方向位置が変化するように配設されていてもよい。
【0038】
補足すると、本実施形態では、第1電極3(1)~3(4)に、各々接続された配線6(1)~6(4)は、本発明における第1電極側配線に相当し、該配線6(1)~6(4)のそれぞれの内部配線6(1)in~6(4)inが、本発明における第1配線部分に相当する。また、第2電極4に接続された配線6(5)は、本発明における第2電極側配線に相当し、該配線6(5)の内部配線6(5)inが、本発明における第2配線部分に相当する。
【0039】
基材2の外部に引き出された外部配線6(1)out~6(5)outは、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量を計測可能な測定部10に接続される。該測定部10は、図示しない電源回路、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路等を含む。そして、測定部10は、静電容量を計測するための任意の公知の手法により、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間に計測用の電圧を印加することと、該電圧の印加時に、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量に応じた検出信号の生成とを行い、該検出信号から静電容量を計測し得るように構成されている。さらに測定部10は、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量の計測値から、基材2に生じた弾性変形量(応力ひずみ)や、基材2に作用した外力(せん断力及びZ軸方向の荷重)を推定する処理を行うことも可能である。このような測定部10の構成は、公知のものでよい。
【0040】
静電遮蔽部材5は、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれと同様の導体により構成されている。この場合、静電遮蔽部材5の材質は、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれと同一材質、あるいは、異なる材質のいずれであってもよい。
【0041】
そして、静電遮蔽部材5は、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量の計測精度を高めるために、第1電極3(1)~3(4)に各々接続された配線6(1)~6(4)の内部配線6(1)in~6(4)inのそれぞれと第2電極4との間の静電容量と、該内部配線6(1)in~6(4)inのそれぞれと第2電極4に接続された配線6(5)の内部配線6(5)inとの間の静電容量と、該内部配線6(5)inと第1電極3(1)~3(4)のそれぞれとの間の静電容量との各外乱静電容量を、所定の閾値以下の十分に小さな容量値(≒0)に保ち得るように基材2に配置されていると共に、基材2の外部の接地箇所に接地されている。上記所定の閾値は、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の静電容量よりも十分に小さな容量値である。
【0042】
本実施形態では、配線6(1)~6(5)の内部配線6(1)in~6(5)inは、例えば
図1に示す如き配線パターンで配設されている。この場合、特に、第2電極4の一辺に垂直な方向で該一辺に対向すると共に該一辺とほぼ同方向に延在する部分を有する内部配線6(1)in,6(2)in,6(4)inのそれぞれと第2電極4との間の静電容量と、第1電極3(4)の一辺に垂直な方向で該一辺に対向すると共に、該一辺とほぼ同方向に延在する部分を有する内部配線6(5)inと第1電極3(4)との間の静電容量と、互いに対向してほぼ平行に延在する部分を有する内部配線6(4)inと内部配線6(5)inとの間の静電容量が上記閾値を超える容量値になる虞がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、センサ1Aに備えた静電遮蔽部材5は、内部配線6(1)in,6(2)in,6(4)inのそれぞれと第2電極4との間の電気力線を各々遮蔽するための3つの静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)と、内部配線6(5)inと第1電極3(4)との間の電気力線を遮蔽するための静電遮蔽部材5(5)と、内部配線6(4)inと内部配線6(5)inとの間の電気力線を遮蔽するための静電遮蔽部材5(6)とを含む。
【0044】
具体的には、本実施形態では、上記静電遮蔽部材5(1)~5(6)は、それぞれ、例えば方形板状に形成されている。そして、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)のそれぞれは、内部配線6(1)in,6(2)in,6(4)inのそれぞれと第2電極4との間の箇所に、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢で配置されている。また、静電遮蔽部材5(5)は、内部配線6(5)inと第1電極3(4)との間の箇所に、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢で配置されている。また、静電遮蔽部材5(6)は、内部配線6(4)inと内部配線6(5)inとの間の箇所に、基材2の表裏面2a,2bと平行な姿勢で配置されている。
【0045】
さらに詳細には、例えば、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)のそれぞれは、それぞれのZ軸方向位置を、内部配線6(1)in,6(2)in、6(4)inのそれぞれのZ軸方向位置に近接させて、内部配線6(1)in,6(2)in、6(4)inのそれぞれと第2電極4との間の電気力線の経路を遮るように基材2の内部に配置されている。また、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)のそれぞれは、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4とが重なり合う箇所には存在しないように配置されている。そして、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)のそれぞれは、それぞれに電気的に導通するように接続された接地用配線7(1),7(2),7(4)のそれぞれを介して基材2の外部の接地箇所に接地されている。
【0046】
この場合、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)のそれぞれのZ軸方向位置が内部配線6(1)in,6(2)in、6(4)inのそれぞれのZ軸方向位置に近接しているため、基材2がせん断力等の外力により弾性変形しても、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)のそれぞれは、それぞれに対応する内部配線6(1)in,6(2)in、6(4)inとほぼ一体的に第2電極4に対して相対移動する。このため、外力による基材2の弾性変形によらずに、内部配線6(1)in,6(2)in、6(4)inのそれぞれと第2電極4との間の静電遮蔽を適切に実現できる。
【0047】
また、静電遮蔽部材5(4),5(5)のそれぞれは、それぞれのZ軸方向の位置を、内部配線6(5)のZ軸方向位置に近接させて、内部配線6(5)と第1電極3(4)及び内部配線6(4)inのそれぞれとの間の電気力線の経路を遮るように基材2の内部に配置されている。また、静電遮蔽部材5(5),5(6)のそれぞれは、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4とが重なり合う箇所には存在しないように配置されている。そして、静電遮蔽部材5(5),5(6)のそれぞれは、それぞれに電気的に導通するように接続された接地用配線7(5),7(6)のそれぞれを介して基材2の外部の接地箇所に接地されている。
【0048】
この場合、静電遮蔽部材5(4),5(5)のそれぞれのZ軸方向位置が内部配線6(5)のZ軸方向位置に近接しているため、基材2がせん断力等の外力により弾性変形しても、静電遮蔽部材5(4),5(5)のそれぞれは、内部配線6(5)とほぼ一体的に第1電極3(4)及び内部配線6(4)inに対して相対移動する。このため、外力による基材2の弾性変形によらずに、内部配線6(5)と第1電極3(4)及び内部配線6(4)inのそれぞとの間の静電遮蔽を適切に実現できる。
【0049】
上記静電遮蔽部材5(1)~5(6)にそれぞれ接続された接地用配線7(1)~7(6)は、基材2の内部を通って基材2の外部に引き出され、基材2の外部の接地箇所に接続されている。この場合、接地用配線7(1)~7(5)の、基材2の内部の部分は、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の箇所を通らないように配設される。また、接地用配線7(1)~7(5)の材質は、第1電極3(1)~3(4)及び第2電極4のそれぞれと同一材質、あるいは、異なる材質のいずれであってもよい。また、接地用配線7(1)~7(5)のそれぞれは、基材2の内部の部分と外部の部分とが異なる材質の導体で構成されていてもよい。また、接地用配線7(1)~7(5)のそれぞれの、基材2の外部の部分の全体もしくは一部は、例えば、回路基板に形成された配線であってもよい。
【0050】
本実施形態のセンサ1Aは、以上説明した如く構成されている。かかる構成のセンサ1Aの作成手法としては、例えば、基材2と同一材質の複数のシートを積層する手法を採用し得る。この場合、第1電極3(1)~3(4)、第2電極4、及び静電遮蔽部材5(1)~5(6)が各々配置される層のシートには、第1電極3(1)~3(4)、第2電極4、及び静電遮蔽部材5(1)~5(6)のそれぞれと、これに接続される配線(配線6(1)~6(5)又は接地用配線7(1)~7(6))とが印刷等により装着され得る。
【0051】
本実施形態のセンサ1Aによれば、静電遮蔽部材5(1)~5(6)が前記した如く配置されているので、第1電極3(1),3(2),3(4)にそれぞれ接続されている内部配線6(1)in,6(2)in,6(4)inのそれぞれと第2電極4との間の静電容量と、第2電極4に接続されている内部配線6(5)inと第1電極3(4)との間の静電容量と、第1電極3(4)に接続されている内部配線6(4)inと第2電極4に接続されている内部配線6(5)inとの間の静電容量とを、それぞれ、基材2の弾性変形によらず、静電遮蔽部材5(1)~5(6)のそれぞれにより、前記所定の閾値よりも小さい十分に微小な容量値(≒0)に保つことができる。
【0052】
また、静電遮蔽部材5(1)~5(6)のそれぞれは、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4とが重なり合う箇所には存在しないように配置されているので、静電遮蔽部材5(1)~5(6)が、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量に影響を及ぼすのが防止される。
【0053】
また、第1電極3(3)に接続されている内部配線6(3)inと第2電極4との間の静電容電と、第2電極4に接続されている内部配線6(5)inと第1電極3(1),3(2),3(3)のそれぞれとの間の静電容量と、第1電極3(1),3(2),3(3)のそれぞれに接続されている内部配線6(1)in,6(2)in,6(3)inと第2電極4に接続されている内部配線6(5)inとの間の静電容量とは、元々、それぞれに対応する静電遮蔽部材を備えずとも、前記所定の閾値よりも小さい十分に微小な容量値(≒0)に保たれる。
【0054】
従って、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の静電容量を測定部10により精度よく計測することができる。ひいては、該静電容量の計測値から、基材2に作用する外力(せん断力、Z軸方向の荷重)による基材2の弾性変形量や、該外力を精度よく計測することが可能となる。
【0055】
なお、以上説明したセンサ1Aでは、静電遮蔽部材5(1)~5(6)のうち、互いに近接するもの同士を一体化してもよい。例えば、静電遮蔽部材5(5),5(6)を一体化してもよい。このようにした場合には、静電遮蔽部材5(5),5(6)を一体化した静電遮蔽部材は、内部配線6(5)inと第1電極3(4)との間の箇所と、内部配線6(5)inと内部配線6(4)inとの間の箇所とにまたがって配置されることになる。
【0056】
また、センサ1Aでは、内部配線6(3)inと第2電極4との間の静電遮蔽部材と、内部配線6(5)inと第1電極3(1),3(2),3(3)のそれぞれとの間の静電遮蔽部材と、内部配線6(1)in,6(2)in,6(3)inのそれぞれと内部配線6(5)inとの間の静電遮蔽部材とを備えていないが、これらの静電遮蔽部材を備えてもよい。
【0057】
この場合、例えば、内部配線6(5)inと第1電極3(4)との間の静電遮蔽部材5(5)、又は、内部配線6(5)inと内部配線6(4)との間の静電遮蔽部材5を、内部配線6(5)inと、第1電極3(1),3(2),3(3)のうちの1つ以上の第1電極のそれぞれとの間の静電遮蔽、又は、内部配線6(5)inと、内部配線6(1)in,6(2)in,6(3)(in)のうちの1つ以上の配線のそれぞれとの間の静電遮蔽を兼ねるように配置することも可能である。
【0058】
また、センサ1Aでは、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)を、内部配線6(1)in,6(2)in、6(4)inのそれぞれのZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置に配置したが、静電遮蔽部材5(1),5(2),5(4)のそれぞれ、又はいずれかを、第2電極4のZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置に配置してもよい。
【0059】
また、センサ1Aでは、静電遮蔽部材5(5),5(6)を、内部配線6(5)inのZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置に配置したが、例えば、静電遮蔽部材5(5)を、第1電極3(4)のZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置に配置してもよい。また、静電遮蔽部材5(6)を内部配線6(4)inのZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置に配置してもよい。
【0060】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図4及び
図5を参照して説明する。本実施形態の静電容量型センサ1B(以降、単にセンサ1Bということがある)は、基材2、第1電極3(3(1),3(2),3(3),3(4))、第2電極4、静電遮蔽部材5B、及び配線6(6(1),6(2),6(3),6(4),6(5))を備える。基材2、第1電極3、第2電極4、及び配線6は、第1実施形態のセンサ1Aと同じである。また、配線6は、第1実施形態と同様に測定部10(図示省略)に接続される。このため、これらの構成の説明は省略する。なお、
図4では静電遮蔽部材5Bを、便宜上、グレー色で示している。
【0061】
静電遮蔽部材5Bは、本実施形態では、第1電極3及び第2電極4と同様の導体から成る単一の部材として構成されている。該静電遮蔽部材5Bの材質は、第1電極3及び第2電極4と同一材質又は異なる材質のいずれであってもよい。
【0062】
この静電遮蔽部材5Bは、本実施形態では、その中央部に厚み方向に貫通する開口穴5Baを有する枠形の板状、例えば、方形枠形の板状に形成されている。そして、静電遮蔽部材5Bは、
図5に示す如く、第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との間の、第1電極3(1)~3(4)及び内部配線6(1)in~6(4)inのZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置で、基材2の表裏面2a,2bに平行な姿勢(Z軸方向に直交する姿勢)で基材2の内部に配置されている。さらに、静電遮蔽部材5Bは、接地用配線7Bを介して基材2の外部の接地箇所に接地されている。
【0063】
静電遮蔽部材5Bは、さらに詳細には、Z軸方向で見たとき、その開口穴5Baの内側に、第1電極3(1)~3(4)の全体が収まるように配置されている。このため、静電遮蔽部材5Bは、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)の全体の周囲を囲み、且つ、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと重なる部分をもたないように配置されている。
【0064】
より具体的には、該開口穴5Baは、例えば、Z軸方向で見たとき、ほぼ方形状に形成されている。そして、静電遮蔽部材5Bは、Z軸方向で見たとき、その開口穴5Baの4つの辺のうちの互いに平行な2つの辺と、他の2つの辺とが、各々、X軸方向、Y軸方向に延在し、且つ、該開口穴5BaのX軸方向に延在する2つの辺の間の間隔内に、Y軸方向に並ぶ第1電極3(2),3(4)が位置し、該開口穴5BaのY軸方向に延在する2つの辺の間の間隔内に、X軸方向に並ぶ第1電極3(1),3(3)が位置するように配置されている。
【0065】
また、静電遮蔽部材5Bの開口穴5Baのサイズは、Z軸方向で見たとき、該開口穴5Baの内側に第1電極3(1)~3(4)の全体が収まるように設定されていることに加えて、上記のように静電遮蔽部材5Bを配置した状態で、X軸方向に延在する2つの辺のうちの第1電極3(2)側の辺が該第1電極3(2)の一辺(
図3では上側の一辺)に近接すると共に、第1電極3(4)側の辺が該第1電極3(4)の一辺(
図3では下側の一辺)に近接し、且つ、Y軸方向に延在する2つの辺のうちの第1電極3(1)側の辺が該第1電極3(1)の一辺(
図3では左側の一辺)に近接すると共に、第1電極3(3)側の辺が該第1電極3(3)の一辺(
図3では右側の一辺)に近接するように設定されている。
【0066】
また、静電遮蔽部材5Bの開口穴5Baの周囲の部分(方形枠形の板状部分)は、Z軸方向で見たとき、
図4に示すように、第1電極3(1)~3(4)に各々接続されている内部配線6(1)in~6(4)inのほぼ全体と重なるように配置されている。
【0067】
さらに、本実施形態では、静電遮蔽部材5Bは、第1電極3(4)と、第2極4に接続された内部配線6(5)との間の静電遮蔽のための突起部5Bbを一体に備えている。該突起部5Bbは、開口穴5Baの内周(該開口穴5Baの4辺のうちの第1電極3(4)に近接する辺)から、第1電極3(4)と内部配線6(5)との間の箇所に向かってY軸方向に突設されていると共に、Z軸方向で見たとき、第1電極3(4)の内部配線6(5)に対向する辺(
図3では左側の辺)に近接するように配置されている。
【0068】
ここで、静電遮蔽部材5B(突起部5Bbを含む)は、第1電極3(1)~3(4)及び内部配線6(1)in~6(4)inのZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置に配置されているため、基材2がせん断力等の外力により弾性変形しても、静電遮蔽部材5Bは、第1電極3(1)~3(4)及び内部配線6(1)in~6(4)inとほぼ一体的に第2電極4及びこれに接続された内部配線6(5)inに対して相対移動する。
【0069】
このため、外力による基材2の弾性変形によらずに、内部配線6(1)in~6(4)inのそれぞれと、第2電極4及び内部配線6(5)inのそれぞれとの間の静電遮蔽を静電遮蔽部材5Bにより適切に実現できる。また、静電遮蔽部材5Bの突起部5Bbにより、内部配線6(5)inと、第1電極3(4)との間の静電遮蔽を適切に実現できる。
【0070】
上記静電遮蔽部材5Bに接続された接地用配線7Bは、第1実施形態の接地用配線7(7(1)~7(6))と同様の形態で導体により構成される。そして、接地用配線7Bは、静電遮蔽部材5Bの外周から基材2の内部(静電遮蔽部材5Bの周囲の内部)を通って基材2の外部に引き出され、基材2の外部の接地箇所に接続されている。
【0071】
なお、静電遮蔽部材5Bは、例えば、その外周の全体もしくは一部が基材2の外部に露出するように配置されていてもよい。そして、接地用配線7Bは、静電遮蔽部材5Bの、基材2の外部に露出した部分から、基材2の内部を経由することなく延設されていてもよい。
【0072】
本実施形態のセンサ1Bは、以上説明した如く構成されている。かかる構成のセンサ1Bは、例えば、第1実施形態のセンサ1Aに関して説明した作成手法と同様の手法により作成し得る。
【0073】
そして、本実施形態のセンサ1Bによれば、静電遮蔽部材5Bが前記した如く配置されているので、第1電極3(1)~3(4)にそれぞれ接続されている内部配線6(1)in~6(4)inのそれぞれと第2電極4及びこれに接続されている内部配線6(5)のそれぞれとの間の静電容量と、第2電極4に接続されている内部配線6(5)inと第1電極3(4)との間の静電容量とを、それぞれ、基材2の弾性変形によらず、静電遮蔽部材5Bにより、前記所定の閾値よりも小さい十分に微小な容量値(≒0)に保つことができる。
【0074】
また、静電遮蔽部材5Bは、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4とが重なり合う箇所には存在しないように配置されているので、静電遮蔽部材5Bが、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量に影響を及ぼすのが防止される。
【0075】
また、第1電極3(1),3(2),3(3)のそれぞれに接続されている内部配線6(1)in,6(2)in,6(3)inと第2電極4に接続されている内部配線6(5)inとの間の静電容量とは、第1実施形態のセンサ1Aと同様に、それぞれに対応する静電遮蔽部材を備えずとも、前記所定の閾値よりも小さい十分に微小な容量値(≒0)に保たれる。
【0076】
従って、センサ1Bによれば、第1実施形態のセンサ1Aと同様に、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の静電容量を測定部10により精度よく計測することができる。ひいては、該静電容量の計測値から、基材2に作用する外力(せん断力、Z軸方向の荷重)による基材2の弾性変形量や、該外力を精度よく計測することが可能となる。
【0077】
なお、以上説明したセンサ1Bでは、第1電極3(3)に接続されている内部配線6(3)inと、第2電極4及びこれに接続されている内部配線6(5)のそれぞれとの間の静電容量は十分に微小(≒0)であるので、静電遮蔽部材5Bは、例えば、第1電極3(3)に近接してY軸方向に延在する部分を備えない構造の部材であってもよい。また、静電遮蔽部材5Bは、例えば、複数の部分に分割されていてもよい。
【0078】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を
図6及び
図7を参照して説明する。本実施形態の静電容量型センサ1C(以降、単にセンサ1Cということがある)は、基材2、第1電極3(3(1),3(2),3(3),3(4))、第2電極4、静電遮蔽部材5C、及び配線6(6(1),6(2),6(3),6(4),6(5))を備える。基材2、第1電極3、第2電極4、及び配線6は、第1実施形態のセンサ1Aと同じである。また、配線6は、第1実施形態と同様に測定部10(図示省略)に接続される。このため、これらの構成の説明は省略する。なお、
図6では静電遮蔽部材5Cを、便宜上、グレー色で示している。
【0079】
静電遮蔽部材5Cは、本実施形態では、第1電極3及び第2電極4と同様の導体から成る単一の部材として構成されている。該静電遮蔽部材5Bの材質は、第1電極3及び第2電極4と同一材質又は異なる材質のいずれであってもよい。
【0080】
この静電遮蔽部材5Cは、本実施形態では、その中央部に厚み方向に貫通する開口穴5Caを有する枠形の板状、例えば、方形枠形の板状に形成されている。そして、静電遮蔽部材5Cは、
図7に示す如く、第1電極3(1)~3(4)と第2電極4との間の、第2電極4及び内部配線6(5)inのZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置で、基材2の表裏面2a,2bに平行な姿勢(Z軸方向に直交する姿勢)で基材2の内部に配置されている。さらに、静電遮蔽部材5Cは、接地用配線7Cを介して基材2の外部の接地箇所に接地されている。
【0081】
静電遮蔽部材5Cは、さらに詳細には、Z軸方向で見たとき、その開口穴5Caの内側に、第2電極4の全体が収まるように配置されている。このため、静電遮蔽部材5Cは、Z軸方向で見たとき、第2電極4の周囲を囲み、且つ、第2電極4と重なる部分をもたないように配置されている。さらに、静電遮蔽部材5Cは、その開口穴5Caの周囲の部分が第1電極3(1)~3(4)のそれぞれの一部分(第2電極4の外方に張り出した部分)と重なるように配置されている。
【0082】
より具体的には、該開口穴5Caは、例えば、Z軸方向で見たとき、第2電極4と相似する方形状に形成されている。そして、静電遮蔽部材5Cは、Z軸方向で見たとき、その開口穴5Caの4つの辺のうちの互いに平行な2つの辺と、他の2つの辺とが、各々、X軸方向、Y軸方向に延在し、且つ、該開口穴5Caの内側に第2電極4の全体が位置するように配置されている。
【0083】
また、静電遮蔽部材5Bの開口穴5Baのサイズは、Z軸方向で見たとき、該開口穴5Caの内側に第2電極4の全体が収まるように設定されていることに加えて、上記のように静電遮蔽部材5Cを配置した状態で、該開口穴5Caの4つの辺のそれぞれが第2電極4の4つの辺のそれぞれに近接するように設定されている。すなわち、静電遮蔽部材5Bの開口穴5Caは、第2電極4のよりも若干大きいサイズの方形状に形成されている。
【0084】
また、静電遮蔽部材5Cの開口穴5Caの周囲の部分(方形枠形の板状部分)は、Z軸方向で見たとき、
図6に示すように、第1電極3(1)~3(4)に各々接続されている内部配線6(1)in~6(4)inと、第2電極4に接続されている内部配線6(5)inとのほぼ全体と重なるように配置されている。
【0085】
ここで、静電遮蔽部材5Cは、第2電極4及び内部配線6(5)inのZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置に配置されているため、基材2がせん断力等の外力により弾性変形しても、静電遮蔽部材5Cは、第2電極4及び内部配線6(5)inとほぼ一体的に第1電極3(1)~3(4)及び内部配線6(1)in~6(4)inに対して相対移動する。このため、外力による基材2の弾性変形によらずに、内部配線6(1)in~6(4)inのそれぞれと、第2電極4及び内部配線6(5)のそれぞれとの間の静電遮蔽、並びに、内部配線6(5)と第1電極3(1)~3(4)のそれぞれとの間の静電遮蔽を、静電遮蔽部材5Cにより適切に実現できる。
【0086】
上記静電遮蔽部材5Cに接続された接地用配線7Cは、第1実施形態の接地用配線7(7(1)~7(6))と同様の形態で導体により構成される。そして、接地用配線7Cは、静電遮蔽部材5Cの外周から基材2の内部(静電遮蔽部材5Cの周囲の内部)を通って基材2の外部に引き出され、基材2の外部の接地箇所に接続されている。
【0087】
なお、静電遮蔽部材5Cは、例えば、その外周の全体もしくは一部が基材2の外部に露出するように配置されていてもよい。そして、接地用配線7Cは、静電遮蔽部材5Cの、基材2の外部に露出した部分から、基材2の内部を経由することなく延設されていてもよい。
【0088】
本実施形態のセンサ1Cは、以上説明した如く構成されている。かかる構成のセンサ1Cは、例えば、第1実施形態のセンサ1Aに関して説明した作成手法と同様の手法により作成し得る。
【0089】
そして、本実施形態のセンサ1Cによれば、静電遮蔽部材5Cが前記した如く配置されているので、第1電極3(1)~3(4)にそれぞれ接続されている内部配線6(1)in~6(4)inのそれぞれと第2電極4及びこれに接続されている内部配線6(5)のそれぞれとの間の静電容量と、第2電極4に接続されている内部配線6(5)inと第1電極3(1)~3(4)のそれぞれとの間の静電容量とを、それぞれ、基材2の弾性変形によらず、静電遮蔽部材5Cにより、前記所定の閾値よりも小さい十分に微小な容量値(≒0)に保つことができる。
【0090】
また、静電遮蔽部材5Cは、Z軸方向で見たとき、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4とが重なり合う箇所には存在しないように配置されているので、静電遮蔽部材5Cが、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと第2電極4との間の静電容量に影響を及ぼすのが防止される。
【0091】
従って、センサ1Cによれば、第1実施形態のセンサ1Aと同様に、第1電極3(1)~3(4)のそれぞれと、第2電極4との間の静電容量を測定部10により精度よく計測することができる。ひいては、該静電容量の計測値から、基材2に作用する外力(せん断力、Z軸方向の荷重)による基材2の弾性変形量や、該外力を精度よく計測することが可能となる。
【0092】
なお、以上説明した第3実施形態のセンサ1Cでは、第1電極3(3)に接続されている内部配線6(3)inと、第2電極4及びこれに接続されている内部配線6(5)のそれぞれとの間の静電容量は十分に微小(≒0)であるので、静電遮蔽部材5Cは、例えば、第1電極3(3)に近接してY軸方向に延在する部分を備えない構造の部材であってもよい。
【0093】
また、静電遮蔽部材5Cは、例えば、複数の部分に分割されていてもよい。また、静電遮蔽部材5Cは、例えば、基材2の外部において、適宜の絶縁体を介して第2電極4に固定されていてもよい。このようにした場合には、静電遮蔽部材5CのZ軸方向位置は、第2電極4及び内部配線6(5)inのZ軸方向位置に近接していなくてよく、例えば、第1電極3(1)~3(4)と第2電極4の間の中央位置、第1電極3(1)~3(4)寄りのZ軸方向位置等であってもよい。
【0094】
[他の実施形態]
本発明は、以上説明した第1~第3実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。例えば、前記第1~第3実施形態のセンサ1A,1B,1Cでは、第2電極4は単一の電極であるが、該第2電極4は、複数の電極に分割されていてもよい。
【0095】
また、前記第1~第3実施形態のセンサ1A,1B,1Cでは、第1電極3を4つの電極により構成すると共に、第2電極4を単一の電極により構成したが、例えば、これと逆に、第1電極を単一の電極により構成し、第2電極を4つの電極により構成してもよい。
【0096】
また、前記第1~第3実施形態のセンサ1A,1B,1Cでは、第1電極3(3(1)~3(4)を基材2の表面2a側、第2電極4を基材2の裏面2b側に配置したが、これと逆に、第1電極3(3(1)~3(4)を基材2の裏面2b側、第1電極4を基材2の表面2a側に配置してもよい。
【0097】
また、前記第1~第3実施形態のセンサ1A,1B,1Cでは、X軸方向及びY軸方向の2軸方向のせん断力と、Z軸方向の荷重とを計測し得るようにセンサ1A~1Cを構成したが、例えば1軸方向のせん断力と、Z軸方向の荷重とを計測し得るようにセンサが構成されていてもよい。あるいは、例えばZ軸方向の荷重だけを計測し得るようにセンサが構成されていてもよい。
【0098】
例えば、前記センサ1A~1Cから、Y軸方向に並ぶ第1電極3(2),3(4)とこれらに接続された配線6(2),6(4)を除去することで、X軸方向のせん断力と、Z軸方向の荷重とを計測し得るセンサを構成できる。この場合、静電遮蔽部材は、例えば、センサ1Aの静電遮蔽部材5(1)、あるいは、センサ1Bの静電遮蔽部材5B、あるいは、センサ1Cの静電遮蔽部材5C、あるいは、静電遮蔽部材5Bもしくは5Cのうち、第1電極3(1)に近接してY軸方向に延在する部分により構成され得る。
【0099】
また、例えば、第2電極4よりも小さい面積を有する板状の第1電極を第2電極4の中央部にZ軸方向で対向させて配置することで、Z軸方向の荷重だけを計測し得るセンサを構成できる。この場合、静電遮蔽部材は、例えば、第1電極に接続された配線(基材2の内部の配線のZ軸方向位置に近接したZ軸方向位置で、該配線に沿って配置され得る。
【符号の説明】
【0100】
1A,1B,1C…静電容量型センサ、2…基材、3(3(1)~3(4))…第1電極、4…第2電極、6(1)~6(4)…配線(第1電極側配線)、6(5)…第2電極側配線、6(1)in~6(4)in…内部配線(第1配線部分)、6(5)in…内部配線(第2配線部分)、7(7(1),7(2),7(4),7(5),7(6)),7B,7C…静電遮蔽部材。