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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105967
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】病原微生物の捕集方法及び捕集装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20220708BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C12M1/26
C12N1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001759
(22)【出願日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2021000609
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB01
4B029CC01
4B029HA10
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA95X
4B065BA22
4B065BD14
(57)【要約】
【課題】簡易な構造によって、気体中の多量の病原微生物を効率良く捕集でき、且つ捕集時に病原微生物を不活化させることなく捕集可能とする手段を提供する。
【解決手段】外部から対象気体を容器内に取り込み充満させる工程と、上記対象気体中の病原微生物を担持体に吸着乃至付着させる工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から対象気体を容器内に取り込み充満させる工程と、
上記対象気体中の病原微生物を担持体に吸着乃至付着させる工程と、を含むことを特徴とする病原微生物の捕集方法。
【請求項2】
前記病原微生物を吸着乃至付着させている前記担持体を溶解液に浸漬させる工程を有することを特徴とする請求項1記載の病原微生物の捕集方法。
【請求項3】
前記担持体は、無機塩類、有機塩類、水溶性蛋白質、糖類、アミノ酸、核酸塩基類、界面活性剤、分散剤の内、何れか一種以上を含むものであることを特徴とする請求項1又は2記載の病原微生物の捕集方法。
【請求項4】
無機塩類は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩酸塩、硫酸塩、亜硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩等の内、何れか一種以上を含み、
有機塩類は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩の内、何れか一種以上を含み、
水溶性蛋白質は、カゼイン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲンそれらの変性物等の内、何れか一種以上を含み、
糖類は、ショ糖、麦芽糖、セルロース、グリコーゲン、乳糖、コーンスターチ、グルコース、果糖、砂糖、キシロース、トレハロース、澱粉分解物、糖アルコール類、オリゴ糖類等の内、何れか一種以上を含み、
アミノ酸は、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、アミノ酸のアルカリ金属塩、アミノ酸誘導体等の内、何れか一種以上を含み、
核酸塩基類は、ヒポキサンチン、シトシン等の内、何れか一種以上を含み、
界面活性剤は、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等の内、何れか一種以上を含み、
分散剤は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、アルキルイミダゾリン系化合物、スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リグニンスルホン酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、フミン酸、タンニン酸、ドデシル硫酸等の内、何れか一種以上を含むことを特徴とする請求項3記載の病原微生物の捕集方法。
【請求項5】
前記担持体は、水溶性の材料、粉粒体、ゲル状体、多孔質体、結晶体の何れかであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の病原微生物の捕集方法。
【請求項6】
担持体を収容し得る容器と、
外部から対象気体を上記容器内に取り込み充満させる手段と、を具え、
上記対象気体中の病原微生物を上記担持体に吸着乃至付着させ得るように構成されることを特徴とする捕集装置。
【請求項7】
前記病原微生物を吸着乃至付着させている前記担持体を溶解液に浸漬させる手段を具えることを特徴とする請求項6記載の捕集装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の病原微生物を効率よく捕集する捕集方法及び捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中に含まれる浮遊物(菌類、細菌類、真菌等を含む微生物又はウイルス等)を、液体を用いて捕集する捕集装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような捕集装置は、筐体に予め液体流入部から液体を流入させておき、空気導入部から空気を筐体内に導入し、内部にサイクロン流を生じさせる。結果、空気中の浮遊物が、サイクロン流の遠心力によって液体に捕集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-146528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の捕集装置では、サイクロン流で空気と液体とを混合させても、液体と気体とが完全に混合し得ないため、結果、一部の浮遊物しか捕集できない。即ち、サイクロン流により気体の全体積を液体の全体積に同居させることはできない。特に、サイクロン流を用いると比重の重い液体は容器の半径方向外側に、比重の軽い気体及び浮遊物は半径方向内側に分布するため、液体と浮遊物とで分離してしまい、空気中の浮遊物の内の一部しか捕集できない。また、このような捕集装置では、捕集できる浮遊物の量は、取り込んだ気体中の浮遊物の総量に対し、10パーセント程度しか得られないという問題がある。
また、この種の捕集装置では、サイクロン流や高速気流によって含有されるウイルス等が摩擦や衝突、攪拌等によって損傷を受け、不活化されてしまう虞がある。この場合には捕集装置による不活化効果を除くことが出来なくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、気体中の多量の病原微生物を効率良く捕集でき、且つ捕集時に病原微生物を不活化させることなく捕集可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の病原微生物の捕集方法は、外部から対象気体を容器内に取り込み充満させる工程と、上記対象気体中の病原微生物を担持体に吸着乃至付着させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の病原微生物の捕集方法は、前記病原微生物を吸着乃至付着させている前記担持体を溶解液に浸漬させる工程を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の病原微生物の捕集方法は、前記担持体が無機塩類、有機塩類、水溶性蛋白質、糖類、アミノ酸、核酸塩基類、界面活性剤、分散剤の内、一種以上を含むものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の病原微生物の捕集方法は、無機塩類がアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩酸塩、硫酸塩、亜硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩等の内、一種以上を含み、有機塩類がアルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩を一種以上含み、水溶性蛋白質がカゼイン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲンそれらの変性物等の内、一種以上を含み、糖類がショ糖、麦芽糖、セルロース、グリコーゲン、乳糖、コーンスターチ、グルコース、果糖、砂糖、キシロース、トレハロース、澱粉分解物、糖アルコール類、オリゴ糖類等の内、一種以上を含み、アミノ酸が塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、アミノ酸のアルカリ金属塩、アミノ酸誘導体等の内、一種以上を含み、核酸塩基類がヒポキサンチン、シトシン等の内、一種以上を含み、界面活性剤がモノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等の内、一種以上を含み、分散剤がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、アルキルイミダゾリン系化合物、スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リグニンスルホン酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、フミン酸、タンニン酸、ドデシル硫酸等の内、一種以上を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の病原微生物の捕集方法は、前記担持体が水溶性の材料、粉粒体、ゲル状体、多孔質体、結晶体の何れかであることを特徴とする。
【0011】
本発明の捕集装置は、担持体を収容し得る容器と、外部から対象気体を上記容器内に取り込み充満させる手段と、を具え、上記対象気体中の病原微生物を上記担持体に吸着乃至付着させ得るように構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の捕集装置は、前記病原微生物を吸着乃至付着させている前記担持体を溶解液に浸漬させる手段を具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造によって、気体中の病原微生物を効率よく捕集することができる。また、捕集対象の病原微生物を不活化させること無く捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一の実施形態の捕集装置を示す図である。
図2】吸引ポンプを具えた捕集装置を示す概略構成図である。
図3】捕集装置を示し、(a)は空間内の病原微生物を捕集する場合における設置例を示す図、(b)はネブライザから噴霧される病原微生物を捕集する場合における設置例を示す図である。
図4】ピストンを有する容器を具える捕集装置を示す図である。
図5】ピストンの変位を示す図である。
図6】第二の実施形態の捕集装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の捕集装置の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は第一の実施形態の捕集装置を示す概略図である。捕集装置1は、担持体(後述する)を収容し得る容器2と、外部から対象気体を容器2内に充填させる手段としての気体充填部4と、を具え、気体充填部4によって容器2内に移される対象気体中の病原微生物を担持体に吸着乃至付着させるものである。
【0016】
容器2は、可撓性容器、非可撓性容器の何れであってもよく、少なくとも担持体を収容でき、且つ気体を充填して収容し得る構造を有するものであればよい。気体充填部4は、容器2内に対象空気を送出し得るものであればよい。従って、気体充填部4は、単に容器2の内部に対象気体を圧縮して送出するブロワー等であってもよい。
【0017】
次に、図2を参照し、気体充填部としての吸引ポンプを具えた捕集装置1について説明する。内部の気圧が外気圧と同程度である容器2に上記のようなブロワーで対象気体を容器2内に送出するよりも、気体を効率良く充填するために気体充填部を吸引ポンプ4aとしてもよい。
具体的には、捕集装置1は、容器2と、吸引ポンプ4a(気体充填部)と、バルブ6、8を具えて成る。容器2は、吸気孔20と排気孔22を有し、吸気孔20には、外部から捕集対象となる病原微生物を含んだ気体を取り込むための流入路10が接続される。排気孔22には、吸引ポンプ4aと接続している排気路12の一端が接続される。
【0018】
また、容器2は、内部空間に担持体を予め収容し、その内部空間に流入路10を介して外部から流入されてきた気体を収容し得る。なお、担持体の収容量は、適宜設定し得るが、例えば担持体の総表面積が容器2の内表面積よりも大きくなるように、好ましくは著しく大きくなるように担持体の量を設定することができる。
【0019】
また容器2は、吸気孔20又は排気孔22から担持体が漏出するのを防止するための逆止弁やフィルタ等の漏出防止部を配する。ここでは、排気孔22にフィルタ14を配する。勿論、吸気孔20に不図示の漏出防止部を配してもよいことは言うまでもない。
【0020】
吸引ポンプ4aは、排気路12を介して容器2内を排気するポンプであり、容器2を気密にして容器2内を排気することで、内部の圧力を低下させる。バルブ6は流入路10に、バルブ8は排気路12にそれぞれ配され、不図示のバルブ制御部によって開閉が制御される。
【0021】
流入路10は、一端部が容器2の吸気孔20に接続され、他端部が外部から気体が流入し得るように開口した流入口となっている。排気路12は、一端部が容器2の排気孔22に接続され、他端部が吸引ポンプ4aに接続される。従って、吸引ポンプ4aの駆動によって排気路12を介した容器2内を排気し得る。
【0022】
フィルタ14は、容器2の排気孔22を塞ぐ位置に配設され、担持体の通過を防ぎ得るものを用いることができる。勿論、フィルタ14は、高性能エアフィルタ(HEPAフィルタ)のような容器2内の排気で、病原微生物の排気路12側への移動を抑止し得るものであってもよい。
【0023】
容器2に蓄積される担持体は、病原微生物が付着し得るものであれば、粉粒体、ゲル状体、多孔質体、結晶体形状のものを選択し得る。特に粉粒体や多孔質体或いは多孔質状の粉粒体を選択すれば、これらは表面積が著しく大きく、対象とする病原微生物をより効果的に捕集可能となって好ましい。また、担持体は、無機塩類、有機塩類、水溶性蛋白質、糖類、アミノ酸塩、核酸塩基類、界面活性剤、分散剤等の水溶性の材料の内、一種以上を含む材料を選択し得る。
【0024】
無機塩類としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩酸塩、硫酸塩、亜硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩等が挙げられる。例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
有機塩類としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩等が挙げられ、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、コハク酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
水溶性蛋白質としては、カゼイン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲンそれらの変性物等が挙げられる。 糖類としては、ショ糖、麦芽糖、セルロース、グリコーゲン、乳糖、コーンスターチ、グルコース、果糖、砂糖、キシロース、トレハロースの他、澱粉分解物(デキストリン等)、糖アルコール類(例えば、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール等)、オリゴ糖類(例えば、セロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等)の等が挙げられる。
【0027】
アミノ酸としては、塩基性アミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン等)、酸性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等)、アミノ酸のアルカリ金属塩(例えば、グルタミン酸モノナトリウム塩、アスパラギン酸モノカリウム塩等)、アミノ酸誘導体(例えば、2-メチルグルタミン酸、3-ヒドロキシアスパラギン酸、N-メチルタウリン等)等が挙げられる。核酸塩基類としては、ヒポキサンチン、シトシンやこれらの塩類等が挙げられる。
【0028】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、及びノニオンのいずれも使用することができる。アニオン界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0029】
分散剤としては、カルボン酸系分散剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、これらの塩等)、複素環系分散剤(例えば、アルキルイミダゾリン系化合物等)、スルホン酸系分散剤(例えば、スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リグニンスルホン酸、これらの塩等)、オルトケイ酸、メタケイ酸、フミン酸、タンニン酸、ドデシル硫酸等が挙げられる。
【0030】
担持体は、粒径が小さい程、容器2内で密集し得て、流入路10を介した気体の流入を制限してしまう。従って、担持体は、病原微生物がより多く付着し得る大きな表面積を有するものが望ましい。
【0031】
そのような、担持体としては、例えば多糖類(ブドウ糖、デキストリン、澱粉、スルトース等)があり得る。また、フリーズドライ製法等によって多孔質形を成し、結果、表面積を拡大化させた結晶質を成す担持体を作出してもよい。
【0032】
担持体の大きさを設定する一例としては、容器2内の担持体の総表面積が容器2の内側の表面積(内表面積)を十分に超えるように、担持体の大きさを設定するという方法がある。具体的に先ず、担持体を容器2内に最密充填構造のように、充填させたものとみなし、充填率を、π/√18(約0.74)と設定する。従って、容器2の容積Vに対して容器2内の担持体の総体積V´は、V´=V×(π/√18)となる。
【0033】
また、担持体の球換算平均粒径をrとしたとき、容器2に充填された担持体の総数Nは、
【数1】
と表すことができる。また、担持体の球状総表面積Sは、
【数2】
と表すことができる。この球状総表面積Sが容器2の内表面積よりも大きくなるように、容器2の容積Vに対する、担持体の平均粒径rを設定する。より、好ましくは平均粒径rの担持体の総表面積がこの球状総表面積Sよりも大きくなるように、担持体の構造を設定する。これは即ち、担持体の表面が凹凸状を成すこと及び/又は多孔質状を成すことを意味し、より大きな表面積を有することを意味する。
【0034】
次に、捕集装置1による病原微生物の捕集手順について説明する。ここでは容器2内に担持体を充填している。ここで容器2内に病原微生物を含んだ気体を収容する。例えば、流入路10のバルブ6を閉じ、排出路12のバルブ8を開いた状態にして吸引ポンプ4aを駆動させる。
【0035】
容器2内が十分に減圧されたときに、バルブ8を閉じて吸引ポンプ4aの駆動を停止し、バルブ6を開く。結果、流入路10の他端から容器2内に気体が流れ込み、バルブ6を閉じることで、容器2に気体が充満する。
【0036】
これによって、容器2内の病原微生物を担持体に担持させることができる。即ち、担持体が収容された空間に気体を充満させ、気体中の病原微生物を担持体に付着させており、結果、病原微生物が担持体に担持される。
【0037】
そして、容器2内の担持体を取り出して、担持体を溶解させ得る液体に浸漬させることで、担持体が担持していた病原微生物が液体に残留し、病原微生物の捕集が完了する。担持体を液体に浸漬させる方法としては、例えば、容器に液体を注入したり、液体が入った容器に容器から取り出した担持体を移したりする等があり得る。また、例えば、容器2の底部を開放可能な構造とし、容器2の下方に液体の入った容器を配しておき、容器2の底部を開放したときに病原微生物を担持させた担持体を容器内に落下させて担持体を液体に浸漬するようにしてもよい。
【0038】
以上、説明したように、担持体を収容させている容器内に病原微生物を含んだ気体を充満させて病原微生物を担持体に付着させるので、気体中の病原微生物を効率よく捕集することができる。また、容器内の病原微生物を不活化させてしまうことなく、捕集することができる。
【0039】
なお、容器2が可撓性を有するものとした場合、減圧に応じて容器2の容積が減少するように圧縮状態となり、流入路10から容器2内に気体が流れ込んだときに、容積が増加するように膨張状態となるようにすることができる。従って、容器2内を減圧するに連れて容積も漸次減少するようにすれば、減圧の進行度合いの確認を容易に行うことができる。また、減圧後に流入路10を介して気体を引き込んだときには、容器2を膨張させるので、その膨張の度合いから流入した気体量の確認を容易に行うことができる。
【0040】
なお、流入路10の他端部の接続先は、適宜設定し得る。例えば、図3(a)に示すように室内等の閉じられた空間100と接続、即ち、空間100内に流入路10の他端部を設置してもよく、その場合、吸引ポンプ102で空間100内の空気を吸引して流入路10側に送り出すことができる。このようにして空間100内の空気中の病原微生物を捕集することができる。
【0041】
また、図3(b)に示すネブライザ112に接続し、噴霧された病原微生物を捕集することも可能である。即ち、コンプレッサ110にネブライザ112を接続し、ネブライザ112で噴霧した病原微生物を、コンプレッサ110からの圧縮空気によって流入路10側に送出してもよい。勿論、予め容器2内を減圧しておき、バルブ6を開くと共に圧縮空気を送出すれば、効率よく容器2に気体を充満させることができる。
【0042】
なお、容器2内に気体を充満させる方法は、上述した方法に限定されるものではなく、適宜設定し得る。例えば流入路10に吸引ポンプを設け、該ポンプの駆動によって外部から気体を吸込み、容器2内に取り込むようにしてもよい。
【0043】
また、容器は、可撓性を有する構造以外の構造で容積可変構造を成すものであってもよい。例えば、内部にピストンを具えて内部空間の体積を圧縮し得る構造であってもよい。ここで、図4はピストン32を有する容器30を具える捕集装置1を示す図である。容器30は、所定方向に往復移動し得るピストン32を収容し、ピストン32の変位によって容器2内の気体の体積を圧縮可能とする。従って、図5(a)に示す容器30内の空間が最も拡がるように、ピストン32を退避させた状態で、担持体が収容されていない空間が存していても、図5(b)に示すようにピストン32を押し込んだ際に、容器30内で担持体が収容されていない空間がほぼ無くなるように、担持体の量を設定する。
【0044】
このようなピストン32を具える容器2は、ピストンを圧縮方向に変位させることで、担持体が存していない空いた空間を徐々に小さくでき、病原微生物を担持体に付着乃至吸着し易くすることができる。また、ピストンでの圧縮が完了した時、容器2内が殆ど担持体で埋め尽くされている状態にすれば、気体中の病原微生物がほぼ全て担持体表面や内表面に付着乃至内部に入り込むことになる。従って、容器2内に収容する担持体の量を少なくしても、病原微生物を効率よく捕集することができる。
このように、容器2内の容積を縮小させて容器2内の空間を小さくすることで、病原微生物を担持体に付着又は吸着させやすい環境を作出してもよいが、容器2を振ることで内部で担持体が舞い、結果担持体に病原微生物を接触させて付着させるようにしてもよい。なおピストン32を具える容器2としては、ピストン32の前進方向の端部に吸気口と排気口の双方を設けたものであってもよく、或いは、ピストン32の前進方向の端部に吸気口を、ピストン32に排気口を設けたものであってもよい。
【0045】
次に図6を参照して第二の実施形態の捕集装置1について説明する。なお、上記第一の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。第二の実施形態の捕集装置1は、被検装置50から排出された気体中の病原微生物を捕集する。
【0046】
そのため、捕集装置1は、被検装置50、エアタンク52を更に配設する。被検装置50は、例えばエアコンや空気清浄器等のような、外気を吸込み、空気清浄等の処理を行って排気する装置や、外気を取込んで紫外線を照射している内部空間を通過させることで、気体中の病原微生物を不活化させて排出する装置等があり得る。
【0047】
エアタンク52は、可撓性を有する材料によって形成され、被検装置50から排出された気体或いは空気を貯留する。なお、エアタンク52は、気体貯留の有無に応じた形状が設定される。即ち、気体を貯留していないとき圧縮状態となり、気体を貯留しているとき膨張状態となり、これによりエアタンク52の外形から気体貯留の有無を容易に判断し得る。
【0048】
被検装置50とエアタンク52は、互いに導路54を介して連結する。即ち、導路54の一端部を被検装置50の排気口に接続し、導路54の他端部をエアタンク52に接続する。これによって被検装置50から排出された気体が、導路54を介してエアタンク52に送出される。また、導路54には、バルブ56が配設され、不図示のバルブ制御部によって開閉が制御される。
【0049】
次に、被検装置50から排出された気体中の病原微生物を捕集する手順について説明する。ここでは予めピストン32を、最も後退させた位置、即ち、容器30の内部空間が最も拡がる位置(初期位置)に配する。また、バルブ6を閉じた状態、バルブ8を開いた状態とする。
【0050】
先ず、被検装置50から排出される気体をエアタンク52に貯留する。具体的には、バルブ56を開き、流入路10のバルブ6を閉じた状態にして被検装置50を動作させる。従って被検装置50から排出された気体が導路54を通ってエアタンク52に送出される。エアタンク52は、気体の流入に伴って徐々に膨張する。エアタンク52が所要量まで膨張した状態となったとき、バルブ56を閉めて被検装置50の動作を停止する。
【0051】
また、容器30内を減圧乃至略真空状態とする。具体的には排気路12のバルブ8を開き、吸引ポンプ4aを駆動させる。そして、容器30内を十分に減圧し、低圧乃至略真空状態となったとき、排気路12のバルブ6を閉じて吸引ポンプ4aの駆動を停止する。
【0052】
容器30内が低圧乃至略真空状態であり、且つエアタンク52が完全に膨張した状態であるとき、流入路10のバルブ6を開くことで、エアタンク52内の気体を容器30に移動させる。即ち、エアタンク52内の気圧と、容器30内の気圧との差を利用して気体を移動させる。勿論、エアタンク52を圧縮して内部の気体を押し出すようにしてもよいことは言うまでもない。
【0053】
次に、流入路10のバルブ6を閉じ、ピストン32を変位させて容器30内の気体を圧縮する。即ち、ピストン32の変位により、図5(b)に示すように容器30内部における気体を含有した担持体が占める割合が、気体のみが占める割合に対して増加する。結果、気体中の病原微生物が担持体に吸着乃至密着し易くなる。
【0054】
その後、容器30内の担持体を、溶解液等の液体に浸漬させて担持体を溶解させれば、病原微生物を液体中に残留させることができる。結果、病原微生物を溶解液中に捕集することができる。ここで溶解液としては病原微生物を増殖させる培養液を用いてもよい。この場合の担持体としては当該培養液中で容易機に溶けるものを選択する。
【0055】
以上、説明したように、担持体を収容させている容器に病原微生物を含んだ気体を充満させて病原微生物を担持体に付着させるので、気体中の病原微生物を不活化させることなく効率よく捕集することができる。また、被検装置50から排気された気体がエアタンク52、容器30の順に移動する。結果、容器30には、被検装置50からの排出された気体が集まる。従って、被検装置50から排出された気体中の病原微生物の殆ど全てを捕集することができる。なお、容器30に収容された気体を担持した担持体と共に容器30を振動させたり、容器内に収容されている担持体に超音波等で微振動を与えたりすることで、より確実に気体中の病原微生物を担持体に付着乃至吸着させるようにしてもよい。
【0056】
このように、本発明の捕集装置によれば、被検装置から排出された気体中の病原微生物を捕集できるため、被検装置の空気清浄機能の評価等において、非常に有用である。また、被検装置から排出されてきた気体中の病原微生物を不活化させることなく、捕集できることから、被検装置が紫外線等で病原生物を不活化させる装置である場合には、被検装置による不活化性能をより正確に把握することが可能となる。屋内外の検査対象空気を捕集して、本発明の捕集装置によって検査すれば、当該空気中の菌類やウイルス等の有無或いは量を正確に検出することが出来る。
【0057】
また、被検装置による不活化性能を把握することを目的とする場合、担持体には、病原微生物を不活化させないものを用いることが望ましい。即ち、界面活性剤や一部の分散剤(タンニン酸等)は、病原微生物を不活化させ得るため、これらを除いた無機塩類、有機塩類、水溶性蛋白質、糖類、アミノ酸塩、核酸塩基類等の担持体を用いることが望ましい。
また、担持体は、病原微生物が付着乃至吸着し得るものであれば、不溶性或いは液体(水、溶液、薬液等)に溶けづらい性質を有するものを用いてもよい。その場合、例えば液体中に担持体及び病原微生物を浸漬させた状態で、攪拌等によって担持体から病原微生物を分離させ、その後担持体のみを溶解液内から除去することで、溶解液内に病原微生物を残存させることも可能となる。
【0058】
また、病原微生物を不活化させる機能を有する被検装置を捕集装置に接続した場合、被検装置を通過した病原微生物の総量に対して不活化させた病原微生物の割合を判定することが可能となる。具体的には、捕集装置による被検装置から排出される気体の捕集を複数回行い、PCR検査にかけるものと、培養検査にかけるものとに分ける。そして、病原微生物を付着させた担持体を液体に浸漬させた後、PCR検査にかけて得られた病原微生物の原始量と、培養検査にかけて得られた病原微生物の原始量とを比較可能となる。その結果、PCR検査によれば毒性を有する病原微生物及び不活化した病原微生物を合わせた量(或いは原始量)を把握でき、他方で培養検査によれば毒性を有する病原微生物のみの量(或いは原始量)を把握できるため、被検装置を通過した病原微生物の総量に対して不活化させた病原微生物の割合や不活化しているものの存在割合等を算出することも可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1…捕集装置、2,30…容器、4…気体充填部、4a…吸引ポンプ、6,56…バルブ、10…流入路、12…排気路、14…フィルタ、20…吸気孔、22…排気孔、32…ピストン、50…被検装置、52…エアタンク、54…導路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6