(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106034
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】視覚特性取得装置、視覚特性取得方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20220711BHJP
G01J 3/51 20060101ALI20220711BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220711BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
H04N1/60 830
G01J3/51
H04N1/60 300
H04N1/60 020
G06T1/00 510
H04N1/60
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000706
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】南川 明華
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 紘一
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴也
【テーマコード(参考)】
2G020
5B057
5C077
5C079
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA02
2G020DA03
2G020DA04
2G020DA05
2G020DA13
2G020DA23
2G020DA35
2G020DA43
2G020DA65
5B057AA20
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
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5B057CH07
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5B057DC25
5C077LL17
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5C077PQ20
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5C079HB01
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5C079MA05
5C079MA10
5C079MA17
5C079NA03
5C079NA27
5C079PA05
(57)【要約】
【課題】測光装置を用いなくとも、ディスプレイ等に再現する印刷物等の反射物の色を、観察者の見えに応じて補正することができる視覚特性取得装置を提供する。
【解決手段】色票の画像におけるカメラ画素値を用いて、カメラ側の三刺激値を算出するカメラ側三刺激値算出部と、ディスプレイに表示された発光色票における見えが、前記色票における見えと一致するように色が調整された調整後の前記発光色票における画素値であるディスプレイ画素値を取得するディスプレイ画素値取得部と、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値との関係に基づいて、ディスプレイ側の三刺激値を算出するディスプレイ側三刺激値算出部と、カメラ側の三刺激値と、ディスプレイ側の三刺激値との差分に基づいて、前記ユーザに適用する等色関数を決定する等色関数決定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラで撮像された色票の画像における画素値であるカメラ画素値を取得するカメラ画素値取得部と、
前記カメラ画素値とカメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記カメラ画素値に対応する三刺激値である基準三刺激値を算出する基準三刺激値算出部と、
前記基準三刺激値を用いて、ユーザに適用する等色関数の候補であるユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値を算出するカメラ側三刺激値算出部と、
ディスプレイに表示された発光色票における見えが、前記色票における見えと一致するように色が調整された調整後の前記発光色票における画素値であるディスプレイ画素値を取得するディスプレイ画素値取得部と、
前記ディスプレイ画素値と変換テーブルとを用いて、前記ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度を算出する分光放射輝度算出部と、
前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値との関係に基づいて、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値を算出するディスプレイ側三刺激値算出部と、
前記カメラ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値と、前記ディスプレイ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値との差分に基づいて、前記ユーザに適用する等色関数を決定する等色関数決定部と、
を備える視覚特性取得装置。
【請求項2】
前記カメラ側三刺激値算出部は、前記基準三刺激値を、変換行列を用いて変換することにより、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値を算出し、前記算出した三刺激値を前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値とし、
前記ディスプレイ側三刺激値算出部は、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と前記ユーザ等色関数候補とを波長ごとに乗算し、前記乗算した乗算値を所定の波長区間において積分し、前記積分した積分値を前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値とする、
請求項1に記載の視覚特性取得装置。
【請求項3】
前記カメラ画素値取得部は、白色とは異なる色の色票である有色色票の画像における画素値である有色カメラ画素値、及び白色の色票である白色色票の画像における画素値である白色カメラ画素値を取得し、
前記基準三刺激値算出部は、
前記有色カメラ画素値と前記カメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記有色カメラ画素値に対応する三刺激値である有色基準三刺激値を算出し、
前記白色カメラ画素値と前記カメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記白色カメラ画素値に対応する三刺激値である白色基準三刺激値を算出し、
前記カメラ側三刺激値算出部は、
前記有色基準三刺激値を、変換行列を用いて変換することにより、前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側有色三刺激値を算出し、
前記白色基準三刺激値を、前記変換行列を用いて変換することにより、前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側白色三刺激値を算出し、
前記カメラ側有色三刺激値を前記カメラ側白色三刺激値で正規化した正規化三刺激値を、前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値とし、
前記ディスプレイ側三刺激値算出部は、
前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と前記ユーザ等色関数候補とを波長ごとに乗算し、前記乗算した乗算値を所定の波長区間において積分し、前記積分した積分値を前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側有色三刺激値とし、
前記ディスプレイ側有色三刺激値を前記カメラ側白色三刺激値で正規化した三刺激値を、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値とする、
請求項1に記載の視覚特性取得装置。
【請求項4】
前記ディスプレイ側三刺激値算出部は、前記カメラ画素値に基づいて算出される三刺激値と、前記ディスプレイ画素値に基づいて算出される三刺激値とが、同じ大きさとなるように、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度のスケールを調整する、
請求項3に記載の視覚特性取得装置。
【請求項5】
前記ディスプレイ側三刺激値算出部は、基準等色関数における、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度に応じた三刺激値のY値と、前記有色基準三刺激値のY値とに基づいて、分光放射輝度のスケールを調整する、
請求項4に記載の視覚特性取得装置。
【請求項6】
前記カメラ画素値取得部は、白色とは異なる色の色票である有色色票の画像における画素値である有色カメラ画素値、及び白色の色票である白色色票の画像における画素値である白色カメラ画素値を取得し、
前記基準三刺激値算出部は、
前記有色カメラ画素値と前記カメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記有色カメラ画素値に対応する三刺激値である有色基準三刺激値を算出し、
前記白色カメラ画素値と前記カメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記白色カメラ画素値に対応する三刺激値である白色基準三刺激値を算出し、
前記有色基準三刺激値を前記白色基準三刺激値で正規化した正規化基準三刺激値を算出し、
前記カメラ側三刺激値算出部は、
前記正規化基準三刺激値を、正規化変換行列を用いて変換することにより、前記ユーザ等色関数候補における正規化三刺激値を算出し、
前記ユーザ等色関数候補における正規化三刺激値を、前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値とし、
前記ディスプレイ側三刺激値算出部は、
前記ディスプレイ画素値に対応する前記分光放射輝度と前記ユーザ等色関数候補とを波長ごとに乗算し、前記乗算した乗算値を所定の波長区間において積分し、前記積分した積分値を前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側有色三刺激値とし、
前記白色基準三刺激値を、変換行列を用いて変換することにより、前記ユーザ等色関数候補における白色三刺激値とし、
前記ディスプレイ側有色三刺激値を、前記白色基準三刺激値で正規化した正規化三刺激値を、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値とする、
請求項1に記載の視覚特性取得装置。
【請求項7】
前記カメラ画素値取得部は、白色とは異なる色の色票である有色色票の画像における画素値である有色カメラ画素値、及び白色の色票である白色色票の画像における画素値である白色カメラ画素値を取得し、
前記基準三刺激値算出部は、
前記有色カメラ画素値と前記カメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記有色カメラ画素値に対応する三刺激値である有色基準三刺激値を算出し、
前記白色カメラ画素値と前記カメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記白色カメラ画素値に対応する三刺激値である白色基準三刺激値を算出し、
前記有色基準三刺激値を、前記白色基準三刺激値で正規化した正規化基準三刺激値を算出し、
前記カメラ側三刺激値算出部は、
前記正規化基準三刺激値を、正規化変換行列を用いて変換することにより、前記ユーザ等色関数候補における正規化三刺激値を算出し、
前記ユーザ等色関数候補における正規化三刺激値を、前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値とし、
前記ディスプレイ画素値取得部は、
白色とは異なる有色の有色発光色票における見えが、前記有色色票における見えと一致するように色が調整された調整後の前記有色発光色票における画素値である有色ディスプレイ画素値を取得し、
白色の白色発光色票における見えが、前記白色色票における見えと一致するように色が調整された調整後の前記白色発光色票における画素値である白色ディスプレイ画素値を取得し、
前記分光放射輝度算出部は、
前記有色ディスプレイ画素値と前記変換テーブルとを用いて、前記有色ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記有色ディスプレイ画素値に対応する有色分光放射輝度を算出し、
前記白色ディスプレイ画素値と前記変換テーブルとを用いて、前記白色ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記白色ディスプレイ画素値に対応する白色分光放射輝度を算出し、
前記ディスプレイ側三刺激値算出部は、
前記有色分光放射輝度と前記ユーザ等色関数候補とを波長ごとに乗算し、前記乗算した乗算値を所定の波長区間において積分し、前記積分した積分値を前記有色分光放射輝度に対応するディスプレイ側有色三刺激値として算出し、
前記白色分光放射輝度と前記ユーザ等色関数候補とを波長ごとに乗算し、前記乗算した乗算値を所定の波長区間において積分し、前記積分した積分値を前記白色分光放射輝度に対応する白色三刺激値として算出し、
前記ディスプレイ側有色三刺激値を前記白色三刺激値で正規化した値を、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値とする、
請求項1に記載の視覚特性取得装置。
【請求項8】
視覚特性取得装置のコンピュータが実行する視覚特性取得方法であって、
カメラ画素値取得部が、カメラで撮像された色票の画像における画素値であるカメラ画素値を取得し、
基準三刺激値算出部が、前記カメラ画素値とカメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記カメラ画素値に対応する三刺激値である基準三刺激値を算出し、
カメラ側三刺激値算出部が、前記基準三刺激値を用いて、ユーザに適用する等色関数の候補であるユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値を算出し、
ディスプレイ画素値取得部が、ディスプレイに表示された発光色票における見えが、前記色票における見えと一致するように色が調整された調整後の前記発光色票における画素値であるディスプレイ画素値を取得し、
分光放射輝度算出部が、前記ディスプレイ画素値と変換テーブルとを用いて、前記ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度を算出し、
ディスプレイ側三刺激値算出部が、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値との関係に基づいて、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値を算出し、
等色関数決定部が、前記カメラ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値と、前記ディスプレイ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値との差分に基づいて、前記ユーザに適用する等色関数を決定する、
視覚特性取得方法。
【請求項9】
視覚特性取得装置のコンピュータに、
カメラで撮像された色票の画像における画素値であるカメラ画素値を取得するカメラ画素値取得工程、
前記カメラ画素値とカメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記カメラ画素値に対応する三刺激値である基準三刺激値を算出する基準三刺激値算出工程、
前記基準三刺激値を用いて、ユーザに適用する等色関数の候補であるユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値を算出するカメラ側三刺激値算出工程、
ディスプレイに表示された発光色票における見えが、前記色票における見えと一致するように色が調整された調整後の前記発光色票における画素値であるディスプレイ画素値を取得するディスプレイ画素値取得工程、
前記ディスプレイ画素値と変換テーブルとを用いて、前記ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度を算出する分光放射輝度算出工程、
前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値との関係に基づいて、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値を算出するディスプレイ側三刺激値算出工程、
前記カメラ側三刺激値算出工程によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値と、前記ディスプレイ側三刺激値算出工程によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値との差分に基づいて、前記ユーザに適用する等色関数を決定するユーザ等色関数決定工程、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚特性取得装置、視覚特性取得方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の視覚特性には個人差があることが指摘されており、ディスプレイ等発光物の色の見えにおいて顕著に影響する。そのため、例えば印刷物等の反射物の色の見えを、ディスプレイに再現する場合、ディスプレイを観察する観察者個人に依らず画一的な手法による再現では、観察者によっては、印刷物とディスプレイ再現物の色の見えが異なって見えてしまう。
【0003】
この問題を解決するために、観察者毎の視覚特性を取得し、その情報を利用して、ディスプレイで観察者毎の色再現をする技術が開示されている。例えば、非特許文献1には、年齢と視野角をパラメータとした視覚モデルを規定し、ディスプレイにおける再現物の色を、視覚モデルごとに再現する技術が開示されている。また、特許文献1には、観察者毎における錐体の分光感度を求め、それを利用して、観察者毎にソース側画像の色の見えと一致するようにディスプレイ表示画像を補正する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】CIE 170-1:“FUNDAMENTAL CHROMATICITY DIAGRAM WITH PHYSIOLOGICAL AXES - PART1”、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、ソース側、ディスプレイ側双方の分光輝度特性を取得する必要がある。ソース側を印刷物等の反射物とする場合、観察者にチャート等を配布したり、入手が容易なパッケージ等を使用したりすれば、印刷物の反射率を把握できる。しかし、観察光源は観察者の環境に依存するため、事前に把握することができない。このため、ソース側の分光輝度特性を取得することができない。観察環境に応じて観察光源の分光情報を取得するためには、分光情報を取得できる専用の機器(測光装置)が必要となる。しかしながら、一般のユーザが測光装置を所有していることは少ない。したがって、ディスプレイ表示画像を補正するために測光装置を所有することが、一般のユーザにとって負担が大きいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、測光装置を用いなくとも、ディスプレイ等に再現する印刷物等の反射物の色を、観察者の見えに応じて補正することができる視覚特性取得装置、視覚特性取得方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の視覚特性取得装置は、カメラで撮像された色票の画像における画素値であるカメラ画素値を取得するカメラ画素値取得部と、前記カメラ画素値とカメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記カメラ画素値に対応する三刺激値である基準三刺激値を算出する基準三刺激値算出部と、前記基準三刺激値を用いて、ユーザに適用する等色関数の候補であるユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値を算出するカメラ側三刺激値算出部と、ディスプレイに表示された発光色票における見えが、前記色票における見えと一致するように、前記ユーザにより色が調整された調整後の前記発光色票における画素値であるディスプレイ画素値を取得するディスプレイ画素値取得部と、前記ディスプレイ画素値と変換テーブルとを用いて、前記ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度を算出する分光放射輝度算出部と、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値との関係に基づいて、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値を算出するディスプレイ側三刺激値算出部と、前記カメラ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値と、前記ディスプレイ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値との差分に基づいて、前記ユーザに適用する等色関数を決定する等色関数決定部と、を備える。
【0009】
本発明の視覚特性取得方法は、カメラ画素値取得部が、カメラで撮像された色票の画像における画素値であるカメラ画素値を取得し、基準三刺激値算出部が、前記カメラ画素値とカメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記カメラ画素値に対応する三刺激値である基準三刺激値を算出し、カメラ側三刺激値算出部が、前記基準三刺激値を用いて、ユーザに適用する等色関数の候補であるユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値を算出し、ディスプレイ画素値取得部が、ディスプレイに表示された発光色票における見えが、前記色票における見えと一致するように、前記ユーザにより色が調整された調整後の前記発光色票における画素値であるディスプレイ画素値を取得し、分光放射輝度算出部が、前記ディスプレイ画素値と変換テーブルとを用いて、前記ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度を算出し、ディスプレイ側三刺激値算出部が、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値との関係に基づいて、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値を算出し、等色関数決定部が、前記カメラ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値と、前記ディスプレイ側三刺激値算出部によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値との差分に基づいて、前記ユーザに適用する等色関数を決定する。
【0010】
本発明のプログラムは、視覚特性取得装置のコンピュータに、カメラで撮像された色票の画像における画素値であるカメラ画素値を取得するカメラ画素値取得工程、前記カメラ画素値とカメラプロファイルとを用いて、基準等色関数における前記カメラ画素値に対応する三刺激値である基準三刺激値を算出する基準三刺激値算出工程、前記基準三刺激値を用いて、ユーザに適用する等色関数の候補であるユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値を算出するカメラ側三刺激値算出工程、ディスプレイに表示された発光色票における見えが、前記色票における見えと一致するように、前記ユーザにより色が調整された調整後の前記発光色票における画素値であるディスプレイ画素値を取得するディスプレイ画素値取得工程、前記ディスプレイ画素値と変換テーブルとを用いて、前記ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度を算出する分光放射輝度算出工程、前記ディスプレイ画素値に対応する分光放射輝度と、前記ユーザ等色関数候補における三刺激値との関係に基づいて、前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値を算出するディスプレイ側三刺激値算出工程、前記カメラ側三刺激値算出工程によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるカメラ側の三刺激値と、前記ディスプレイ側三刺激値算出工程によって算出された前記ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値との差分に基づいて、前記ユーザに適用する等色関数を決定するユーザ等色関数決定工程、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測光装置を用いなくとも、ディスプレイ等に再現する印刷物等の反射物の色を、観察者の見えに応じて補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態の視覚特性取得システム1の概略を示す図である。
【
図2】第1の実施形態の視覚特性取得装置10の構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態のカメラ側処理部11が行う処理を説明する図である。
【
図4】第1の実施形態のディスプレイ側処理部12が行う処理を説明する図である。
【
図5】第1の実施形態の等色関数決定部13が行う処理を説明する図である。
【
図6】第1の実施形態の視覚特性取得装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態の視覚特性取得システム1Aの概略を示す図である。
【
図8】第2の実施形態のディスプレイ側処理部12Aが行う処理を説明する図である。
【
図9】第2の実施形態の等色関数決定部13Aが行う処理を説明する図である。
【
図10】第2の実施形態の視覚特性取得装置10Aが行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第2の実施形態における変形例のカメラ側処理部11Bが行う処理を説明する図である。
【
図12】第2の実施形態における変形例の視覚特性取得装置10Bが行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第3の実施形態の視覚特性取得システム1Cの概略を示す図である。
【
図14】第3の実施形態のカメラ側処理部11Cが行う処理を説明する図である。
【
図15】第3の実施形態のディスプレイ側処理部12Cが行う処理を説明する図である。
【
図16】第3の実施形態の等色関数決定部13Cが行う処理を説明する図である。
【
図17】第3の実施形態の視覚特性取得装置10Cが行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態の視覚特性取得装置を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態の視覚特性取得システム1の概略を示す図である。視覚特性取得システム1は、例えば、カメラCMと、ディスプレイDと、視覚特性取得装置10とを備える。
【0015】
カメラCMは、観察光源KL下における色票iと色票wを撮像する撮像装置である。観察光源KLは、任意の光源であってよく、例えば、蛍光灯、LED(light emitting diode)照明、白熱灯、太陽光などの光源、又はこれらを組合せた光源である。ここで、色票の末尾に付す符号(iやw)は色票の色を示している。ここでは、色票iは、白色以外(有色)の色票である。色票wは、白色の色票である。色票i、色票wは、分光反射率が既知の色票である。以下の説明では、色票iを、「有色色票」或いは、単に「色票」と表記する場合がある。また、色票wを、「白色色票」或いは、単に「色票」と表記する場合がある。
【0016】
なお、この図では、単色の色票i、色票wが用いられる例が示されているが、これに限定されることはない。単色の色票i、色票wに代えて、複数の色票が配置されたカラーチャートが用いられてもよい。また、この図の例のように白枠がある色票が用いられてもよいし、白枠がない色票が用いられてもよい。ただし、色票の色と、白枠などの基準となる色とが配置されている色票の方が、人の目にとって色票の色の見えを正確に把握しやすくなる傾向にあることから、白枠がある色票が用いられる方が好ましい。また、白枠がある色票を用いる場合、色票w(白色色票)の代わりに色票iの白枠を用いてもよい。
【0017】
ディスプレイDは、液晶ディスプレイなどの表示装置である。ディスプレイDは、PCなどのコンピュータ装置(不図示)の制御に応じた画像を表示する。ディスプレイDは、色票の画像を表示する。以下の説明では、ディスプレイDに表示された色票の画像を「発光色票」と称する。なお、ディスプレイDに表示された色票の画像は、カメラCMによって撮像された色票の画像であってもよいし、カメラCMとは無関係に作成された色票の画像であってもよい。
【0018】
ディスプレイDには、表示する画像における色を調整する機能部が設けられている。ユーザUは、ディスプレイDに表示された発光色票の色と、観察光源KL下における色票の色とを見比べ、両方の色の見えが一致するように、発光色票の色を調整する。以下では、ユーザUにとって、観察光源KL下における色票iの色と、ディスプレイD越しに見える色票iの色の見えが一致するように調整された調整後の発光色票を、「発光色票i’」或いは「有色発光色票」などと表記する。また、ユーザUにとって、観察光源KL下における色票wの色と、ディスプレイDに表示された色票wの色とが同じ色に見えるように色が調整された調整後の発光色票を、「発光色票w’」或いは「白色発光色票」などと表記する。
【0019】
視覚特性取得装置10は、ユーザUに適する等色関数を決定するコンピュータ装置である。視覚特性取得装置10は、例えば、PC、サーバ装置などである。視覚特性取得装置10は、カメラCMによって撮像された色票の画像における画素値(カメラ画素値)を取得する。以下の説明では、色票iの画像におけるカメラ画素値を、(Ri、Gi、Bi)と表記する。色票wの画像におけるカメラ画素値を、(Rw、Gw、Bw)と表記する。また、色を区別しない場合、色を示すパラメータ(iやw)の記載を省略し、単に、カメラ画素値(R、G、B)と表記する場合がある。
【0020】
具体的に、視覚特性取得装置10は、カメラCMによって撮像された色票iの画像におけるカメラ画素値(Ri、Bi、Gi)を取得する。また、視覚特性取得装置10は、カメラCMによって撮像された色票wの画像におけるカメラ画素値(Rw、Bw、Gw)を取得する。
【0021】
また、視覚特性取得装置10は、ディスプレイDに表示された状態における色が調整された調整後の発光色票における画素値(ディスプレイ画素値)を取得する。以下の説明では、発光色票i’におけるディスプレイ画素値を、(R’i、G’i、B’i)と表記する。発光色票w’におけるディスプレイ画素値を、(R’w、G’w、B’w)と表記する。また、色を区別しない場合、色を示すパラメータ(iやw)の記載を省略し、単に、ディスプレイ画素値(R’、G’、B’)と表記する場合がある。
【0022】
具体的に、視覚特性取得装置10は、調整後の発光色票i’における画素値(R’i、G’i、B’i)を取得する。また、視覚特性取得装置10は、調整後の発光色票w’におけるディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)を取得する。
【0023】
視覚特性取得装置10は、カメラCMから取得したカメラ画素値(R、G、B)、及びディスプレイDから取得したディスプレイ画素値(R’、G’、B’)に基づいて、ユーザUに適する等色関数を決定し、その結果を出力する。
【0024】
図2は、第1の実施形態の視覚特性取得装置10の構成例を示すブロック図である。視覚特性取得装置10は、例えば、カメラ側処理部11と、ディスプレイ側処理部12と、等色関数決定部13とを備える。
【0025】
カメラ側処理部11は、カメラCMから取得される情報、すなわちカメラ画素値(R、G、B)を用いた信号処理を行う機能部である。カメラ側処理部11は、カメラ画素値取得部111と、基準三刺激値算出部112と、カメラ側三刺激値算出部113とを備える。
【0026】
カメラ画素値取得部111は、カメラ画素値を取得し、取得したカメラ画素値を基準三刺激値算出部112に出力する。基準三刺激値算出部112は、カメラ画素値取得部111から取得したカメラ画素値を、カメラプロファイル114を用いて、基準等色関数における三刺激値(基準三刺激値)に変換する。
【0027】
カメラプロファイル114は、視覚特性取得装置10の記憶部(不図示)に記憶される情報である。カメラプロファイル114は、特定の光源下における分光反射率が既知である色票に対して、基準等色関数により計算された三刺激値(X、Y、Z)と、カメラCMにより撮像された色票のカメラ画素値(R、G、B)との関係を示す情報である。上述した特定の光源は、例えば、撮像環境に対して、自動でカメラのホワイトバランスを調整する機能(オートホワイトバランス機能)により選択された光源である。基準等色関数は、基準となる等色関数であり、例えば、CIE(国際照明委員会)測色基準観察者等色関数であるCIE1931などが用いられる。
【0028】
なお、カメラプロファイル114における光源情報(上述した特定の光源に関する情報)は、オートホワイトバランスにより選択されるものに限定されない。カメラプロファイル114における光源情報として、例えば、D50標準光源や、D65標準光源などが適用されてもよいし、これらを組み合わせた光源や、ユーザにより設定された光源が用いられてもよい。
【0029】
また、基準三刺激値算出部112は、カメラプロファイル114を用いることなく、別の情報を用いて、カメラ画素値を基準等色関数における三刺激値に変換してもよいのは勿論である。ここでの別の情報とは、例えば、特定の光源下における分光反射率が既知である色票に対して、基準等色関数により計算された三刺激値(X、Y、Z)と、撮像された色票のカメラ画素値(R、G、B)との関係を示す情報である。
【0030】
カメラ側三刺激値算出部113は、基準三刺激値を用いて、ユーザUに適用する候補となる等色関数におけるカメラ側の三刺激値を算出する。以下の説明では、ユーザに適用する候補となる等色関数のことを、基準等色関数と区別して「他の等色関数」或いは「等色関数」などと称する場合がある。また、ユーザに適用する候補となる等色関数は、「ユーザ等色関数候補」の一例である。
【0031】
視覚特性取得システム1では、ユーザに適用する候補となる等色関数が、予め複数(N個)用意される。Nは2以上の整数である。例えば、ユーザUに適用する候補となる等色関数として、CIE170-1に記載された人間の錐体における分光感度特性を線形変換することにより作成された等色関数が用いられる。
【0032】
カメラ側三刺激値算出部113は、ユーザに適用する候補となるN個の等色関数の全部または一部について、等色関数ごとにカメラ側の三刺激値を算出する。他の等色関数におけるカメラ側の三刺激値は、カメラCMにて撮像された色票の色が、その等色関数における三刺激値として表現されたものである。カメラ側三刺激値算出部113が、カメラ側の三刺激値を算出する方法については、後で詳しく説明する。
【0033】
ディスプレイ側処理部12は、ディスプレイDから取得される情報、すなわちディスプレイ画素値(R’、B’、G’)を用いた信号処理を行う機能部である。ディスプレイ側処理部12は、ディスプレイ画素値取得部121と、分光放射輝度算出部122と、ディスプレイ側三刺激値算出部123と、LUT(ルックアップテーブル)124とを備える。LUT(ルックアップテーブル)124は「変換テーブル」の一例である。
【0034】
ディスプレイ画素値取得部121は、ディスプレイ画素値を取得し、取得したディスプレイ画素値を分光放射輝度算出部122に出力する。分光放射輝度算出部122は、ディスプレイ画素値取得部121から取得したディスプレイ画素値を、LUT124を用いて、分光放射輝度に変換する。
【0035】
LUT124は、視覚特性取得装置10の記憶部(不図示)に記憶される情報である。LUT124は、例えば、ディスプレイ画素値(R’、G’、B’)と分光放射輝度の関係性を記述したLUT(ルックアップテーブル)である。LUT124は、例えば、予め測定されたディスプレイDにおける分光放射輝度の特性に応じて作成される。
【0036】
ディスプレイ側三刺激値算出部123は、分光放射輝度と、ユーザUに適用する候補となる等色関数における三刺激値との関係性を用いて、ユーザUに適用する候補となる等色関数におけるディスプレイ側の三刺激値を算出する。ディスプレイ側三刺激値算出部123は、ユーザに適用する候補となるN個の等色関数のうち、カメラ側の三刺激値が算出された等色関数について、等色関数ごとにディスプレイ側の三刺激値を算出する。等色関数におけるディスプレイ側の三刺激値は、ディスプレイDに表示された発光色票の色が、その等色関数における三刺激値として表現されたものである。ディスプレイ側三刺激値算出部123が、ディスプレイ側の三刺激値を算出する方法については、後で詳しく説明する。
【0037】
等色関数決定部13は、ユーザUに適用する等色関数を決定する。等色関数決定部13は、カメラ側三刺激値算出部113によって算出された、ユーザUに適用する候補となる等色関数におけるカメラ側の三刺激値を取得する。等色関数決定部13は、ディスプレイ側三刺激値算出部123によって算出された、対応する等色関数におけるディスプレイ側の三刺激値を取得する。ディスプレイD側では、ユーザUにとって、色票の見えと一致するように、ディスプレイDに表示された発光色票の色が調整されている。すなわち、ある等色関数について、カメラ側の三刺激値と、ディスプレイ側の三刺激値が、一致するか、又は近い値であれば、その等色関数を、ユーザUにおける等色関数と同等とみなすことができる。印刷物をディスプレイに再現する際に、その等色関数を用いることにより、ユーザUが、印刷物とディスプレイ再現物の色の見えが同等と感じられるように表示することができる。
【0038】
等色関数決定部13は、例えば、ユーザUに適用する候補となるN個の等色関数のそれぞれについてカメラ側の三刺激値と、ディスプレイ側の三刺激値とを取得する。等色関数決定部13は、等色関数ごとに、カメラ側の三刺激値と、ディスプレイ側の三刺激値との差分を算出する。ここでの差分は、例えば、色空間における二つの三刺激値の距離である。等色関数決定部13は、等色関数ごとの差分のうち、差分が最も小さい等色関数を、ユーザUに適用する等色関数と決定する。
【0039】
或いは、等色関数決定部13は、他の等色関数におけるカメラ側の三刺激値と、ディスプレイ側の三刺激値との差分が所定の閾値未満である場合に、その等色関数を、ユーザUに適用する等色関数と決定するようにしてもよい。
【0040】
図3は、第1の実施形態のカメラ側処理部11が行う処理を説明する図である。
図3に示すように、カメラ画素値取得部111は、色票iの画像におけるカメラ画素値(R
i、G
i、B
i)、及び色票wの画像におけるカメラ画素値(R
w、G
w、B
w)を取得する。カメラ画素値取得部111は、取得したカメラ画素値を基準三刺激値算出部112に出力する。
【0041】
基準三刺激値算出部112は、カメラ画素値取得部111から取得したカメラ画素値を、カメラプロファイル114を用いて、基準等色関数における三刺激値(基準三刺激値)に変換する。基準三刺激値算出部112がカメラプロファイル114を用いて画素値を三刺激値に変換する方法については、すでに説明しているため、ここではその説明を省略する。基準三刺激値算出部112は、カメラプロファイル114を用いて、カメラ画素値(Ri、Gi、Bi)を、基準三刺激値(Xi、Yi、Zi)に変換する。また、基準三刺激値算出部112は、カメラプロファイル114を用いて、カメラ画素値(Rw、Gw、Bw)を、基準三刺激値(Xw、Yw、Zw)に変換する。
【0042】
基準三刺激値算出部112は、カメラ画素値(Ri、Gi、Bi)に対応する基準三刺激値(Xi、Yi、Zi)を正規化する。ここでの正規化とは、カメラプロファイル114における光源情報をキャンセルすることである。ここでの光源情報は、基準三刺激値算出部112がカメラ画素値を基準等色関数における三刺激値に変換する際に用いた光源の情報(観察光源情報)である。基準三刺激値(Xi、Yi、Zi)を正規化することによって、カメラプロファイル114における照明と、観察光源KLとが異なっていた場合に、ユーザUに適用する等色関数の決定に与える影響を小さくすることができる。
【0043】
例えば、観察光源KLが色温度6500Kの蛍光灯であり、カメラプロファイル114における光源情報にD65標準光源が選択された場合、カメラプロファイル114を用いて変換された基準三刺激値と、観察光源KL下で計算される基準三刺激値では、三刺激値(X,Y,Z)における各成分の比率にほとんど変化はないと考えられる。一方、観察光源KLが色温度5000Kの蛍光灯であり、カメラプロファイル114における光源情報にD65標準光源が選択された場合、それぞれで得られる基準三刺激値における各成分の比率の違いが大きい可能性が高いと考えられる。この場合、ユーザUに適用する等色関数を決定した際にディスプレイ側の三刺激値との不整合が生じ得る。このような不整合の発生を抑制する対策として、基準三刺激値算出部112は、後述する正規化を行う。
【0044】
基準三刺激値算出部112は、基準三刺激値(Xi、Yi、Zi)を、カメラ画素値(Rw、Gw、Bw)に対応する基準三刺激値(Xw、Yw、Zw)を用いて正規化する。具体的には、基準三刺激値算出部112は、基準三刺激値(Xi、Yi、Zi)を、基準三刺激値(Xw、Yw、Zw)で除算することによって、正規化した基準等色関数の三刺激値、つまり、基準等色関数の正規化三刺激値(Xi/Xw、Yi/Yw、Zi/Zw)を算出する。基準三刺激値算出部112は、算出した基準等色関数の正規化三刺激値を、カメラ側三刺激値算出部113に出力する。
【0045】
カメラ側三刺激値算出部113は、基準等色関数の正規化三刺激値を、正規化変換行列を用いて、他の等色関数における正規化三刺激値に変換する。正規化変換行列は、基準等色関数の正規化三刺激値を、他の等色関数における正規化三刺激値に変換する行列である。
【0046】
以下では、ユーザUに適用する候補となるk番目の等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)に対応する三刺激値を(Xki、Yki、Zki)と表記する(1≦k≦N)。また、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)に対応する三刺激値を(Xkw、Ykw、Zkw)と表記する(1≦k≦N)。k番目の等色関数における正規化三刺激値を(Xki/Xkw、Yki/Ykw、Zki/Zkw)と表記する。
【0047】
カメラ側三刺激値算出部113は、下記の(1)式により、他の等色関数における正規化三刺激値を算出する。
【0048】
【0049】
(1)式における正規化変換行列Mnorm_std→kは、基準等色関数における正規化三刺激値を、k番目の等色関数における正規化三刺激値に変換する行列である。正規化変換行列Mnorm_std→kは、ユーザUに適用する候補となる等色関数のそれぞれに対応して作成される。すなわち、ユーザUに適用する候補となるN個の等色関数がある場合、それぞれに対応するN個の正規化変換行列Mnorm_std→k(1≦k≦N)が作成される。正規化変換行列Mnorm_std→kの作成方法は後で詳しく説明する。本実施形態では、それぞれの等色関数に対応する正規化変換行列が予め作成されて記憶されているものとする。
【0050】
カメラ側三刺激値算出部113は、他の等色関数における正規化三刺激値を、カメラ側の三刺激値として算出する。カメラ側三刺激値算出部113は、算出したカメラ側の三刺激値を等色関数決定部13に出力する。
【0051】
図4は、第1の実施形態に係るディスプレイ側処理部12が行う処理を説明する図である。
図4に示すように、ディスプレイ画素値取得部121は、発光色票i’におけるディスプレイ画素値(R’
i、G’
i、B’
i)、及び発光色票w’(白色発光色票)におけるディスプレイ画素値(R’
w、G’
w、B’
w)を取得する。ディスプレイ画素値取得部121は、取得したディスプレイ画素値を分光放射輝度算出部122に出力する。
【0052】
分光放射輝度算出部122は、ディスプレイ画素値取得部121から取得したディスプレイ画素値を、LUT124を用いて、基準等色関数における分光放射輝度に変換する。以下の説明では、ディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)における分光放射輝度(波長λを変数とする関数)を、E’i(λ)と表記する。また、ディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)における分光放射輝度(波長λを変数とする関数)を、E’w(λ)と表記する。
【0053】
分光放射輝度算出部122は、LUT124(例えば、LUT)を用いてディスプレイ画素値を、分光放射輝度に変換する。分光放射輝度算出部122は、LUT124を用いて、ディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)を、分光放射輝度E’i(λ)に変換する。また、分光放射輝度算出部122は、LUT124を用いて、ディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)を、分光放射輝度E’w(λ)に変換する。分光放射輝度算出部122は、LUT124を用いてディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換することによって、分光放射輝度を算出し、算出した分光放射輝度を、ディスプレイ側三刺激値算出部123に出力する。
【0054】
ディスプレイ側三刺激値算出部123は、分光放射輝度と等色関数の乗算値を積分することによって、その等色関数における分光放射輝度に対応する三刺激値を算出する。
【0055】
以下の説明では、ユーザUに適用する候補となるk番目の等色関数を、波長λの関数として、(xk(λ)、yk(λ)、zk(λ))と表記する(1≦k≦N)。また、k番目の等色関数におけるディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)に対応する三刺激値を(X’ki、Y’ki、Z’ki)と表記する。また、k番目の等色関数におけるディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)に対応する三刺激値を(X’kw、Y’kw、Z’kw)と表記する。
【0056】
ディスプレイ側三刺激値算出部123は、分光放射輝度と他の等色関数を、所定の波長区間において積分した積分値を、他の等色関数における三刺激値とする。ディスプレイ側三刺激値算出部123は、以下の(2)式によって、ユーザUに適用する候補となる等色関数におけるディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)に対応する三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を算出する。
【0057】
【0058】
(2)式における(X’ki)、(Y’ki)、(Z’ki)は、k番目の候補等色関数におけるディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)に対応する三刺激値のX値、Y値、Z値のそれぞれである。jは定数である。E’i(λ)は発光色票i’における分光放射輝度である。(xk(λ))、(yk(λ))、(zk(λ))は、ユーザUに適用する候補となるk番目の等色関数である。λは波長である。
【0059】
図4では、(2)式に対応する関数を、SS
k(λ)で表している。以下の説明では、(2)式に対応する積分処理を実行して三刺激値を算出することを、「関数SS
k(λ)を適用する」などと称する場合がある。
【0060】
ディスプレイ側三刺激値算出部123は、ディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)についても同様に(2)式を適用することによって、ユーザUに適用する候補となる等色関数における、ディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)に対応する三刺激値を算出する。
【0061】
なお、上記では、ディスプレイ側三刺激値算出部123が、関数SSk(λ)を適用して三刺激値を算出する場合を例に説明した。しかしながらこれに限定されることはない。ディスプレイ側三刺激値算出部123は、例えば、他の等色関数により計算された三刺激値(Xk’、Yk’、Zk’)と、ディスプレイ画素値(R’、G’、B’)との関係を示すディスプレイプロファイル情報を予め記憶させておき、そのディスプレイプロファイル情報を用いて、他の等色関数におけるディスプレイ画素値に対応する三刺激値を算出するようにしてもよい。
【0062】
ディスプレイ側三刺激値算出部123は、ディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)に対応する三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を正規化する。
【0063】
ディスプレイ側三刺激値算出部123は、三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を、ディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)に対応する三刺激値(X’kw、Y’kw、Z’kw)で除算することによって、正規化した等色関数における三刺激値、つまり、k番目の等色関数の正規化三刺激値(X’ki/X’kw、Y’ki/Y’kw、Z’ki/Z’kw)を算出する。ディスプレイ側三刺激値算出部123は、算出した基準等色関数の正規化三刺激値を、等色関数決定部13に出力する。
【0064】
図5は、第1の実施形態の等色関数決定部13が行う処理を説明する図である。
図5に示すように、等色関数決定部13は、以下の(3)式を用いて、距離e
kを算出する。距離e
kは、他の等色関数(x
k(λ)、y
k(λ)、z
k(λ))で定義される色空間におけるカメラ側の正規化三刺激値P(X
ki/X
kw、Y
ki/Y
kw、Z
ki/Z
kw)とディスプレイ側の正規化三刺激値P’(X’
ki/X’
kw、Y’
ki/Y’
kw、Z’
ki/Z’
kw)との座標間の距離である。
【0065】
【0066】
等色関数決定部13は、距離ekが最小となるkを求め、そのk番目の等色関数を、ユーザUに適用する等色関数と決定する。
【0067】
なお、距離ekを計算する計算式が(3)式に限定されることはない。例えば、等色関数決定部13は、(3)式の各項に互いに異なる重みづけをし、重みづけした各項を加算した値の平方根を距離ekとしてもよい。
【0068】
また、等色関数決定部13は、複数の色票iのそれぞれについて、距離ekをそれぞれ算出し、算出した距離ekの平均値が最小となるkを求め、のk番目の等色関数を、ユーザUに適用する等色関数と決定するようにしてもよい。
【0069】
ここで、正規化変換行列Mnorm_std→kの作成方法について説明する。まず、視覚特性取得システム1では、下記の(4)式により、基準等色関数における色票iに対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)を求める。
【0070】
【0071】
(4)式における(Xi、Yi、Zi)は、基準等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)に対応する三刺激値のX値、Y値、Z値のそれぞれである。l(小文字のエル)は定数である。E(λ)はカメラプロファイル114における光源情報に対応する分光放射輝度である。Ri(λ)は色票iの分光反射率である。x(λ)、y(λ)、z(λ)は、基準等色関数である。λは波長である。
【0072】
視覚特性取得システム1では、色票wについても、同様に、(4)式を適用することによって、基準等色関数における色票wに対応する三刺激値(Xw、Yw、Zw)を求める。
【0073】
視覚特性取得システム1では、三刺激値(Xi、Yi、Zi)を、三刺激値(Xw、Yw、Zw)で除算することによって、正規化された三刺激値(Xi/Xw、Yi/Yw、Zi/Zw)を算出する。
【0074】
視覚特性取得システム1では、(4)式を応用して基準等色関数における複数の色票i(1≦i≦M)のそれぞれに対応する、正規化された三刺激値を算出する。具体的に、(4)式におけるE(λ)に、カメラプロファイル114における光源情報の分光放射輝度を代入する。また、(4)式におけるRi(λ)に、M個の色票iのそれぞれの分光反射率を代入する。これにより、基準等色関数における色票iに対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)、色票wに対応する三刺激値(Xw、Yw、Zw)、及び正規化された三刺激値(Xi/Xw、Yi/Yw、Zi/Zw)が、M個の色票iのそれぞれについて算出できる。
【0075】
また、視覚特性取得システム1では、(4)式を応用してユーザUに適用する候補となるk番目の等色関数における複数の色票i(1≦i≦M)のそれぞれに対応する、正規化された三刺激値を算出する。具体的に、(4)式におけるE(λ)に、カメラプロファイル114における光源情報の分光放射輝度を代入する。また、(4)式におけるRi(λ)に、M個の色票iのそれぞれの分光反射率を代入する。さらに、(4)式におけるx(λ)、y(λ)、z(λ)に、k番目の等色関数における三刺激値のX値、Y値、Z値のそれぞれを代入する。これにより、k番目の等色関数における色票iに対応する三刺激値(Xki、Yki、Zki)、色票wに対応する三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)、及び正規化された三刺激値(Xki/Xkw、Yki/Ykw、Zki/Zkw)が、M個の色票iのそれぞれについて算出できる。すると、以下の(5)式が成り立つ。
【0076】
【0077】
(5)式における左辺は、k番目の等色関数における複数の色票i(1≦i≦M)のそれぞれに対応する、正規化された三刺激値である。右辺は、基準等色関数における複数の色票i(1≦i≦M)のそれぞれに対応する、正規化された三刺激値である。正規化変換行列Mnorm_std→kは、基準等色関数における正規化された三刺激値を、k番目の等色関数における正規化された三刺激値に変換する行列である。(5)式が満たされるように、正規化変換行列Mnorm_std→kを計算する。これにより、正規化変換行列Mnorm_std→kを作成することができる。
【0078】
図6は、第1の実施形態の視覚特性取得装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0079】
(ステップS10)
視覚特性取得装置10は、色票i(有色色票)、及び色票w(白色色票)におけるそれぞれのカメラ画素値を取得する。視覚特性取得装置10は、色票iにおけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)を取得する。また、視覚特性取得装置10は、色票wにおけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)を取得する。
(ステップS11)
視覚特性取得装置10は、それぞれのカメラ画素値を、基準等色関数におけるカメラ画素値に対応する三刺激値に変換する。視覚特性取得装置10は、カメラ画素値(Ri、Gi、Bi)を、基準等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)に変換する。視覚特性取得装置10は、カメラ画素値(Rw、Gw、Bw)を、基準等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)対応する三刺激値(Xw、Yw、Zw)に変換する。
(ステップS12)
視覚特性取得装置10は、三刺激値を正規化する。視覚特性取得装置10は、三刺激値(Xi、Yi、Zi)を、三刺激値(Xw、Yw、Zw)で除算することによって、基準等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)対応する、正規化された三刺激値(Xi/Xw、Yi/Yw、Zi/Zw)を算出する。
(ステップS13)
視覚特性取得装置10は、正規化された三刺激値を、基準等色関数に対応するものからユーザUに適用する候補となる等色関数に対応するものに変換する。視覚特性取得装置10は、正規化変換行列Mnorm_std→kを用いて、基準等色関数における正規化された三刺激値(Xi/Xw、Yi/Yw、Zi/Zw)を、k番目の等色関数における正規化された三刺激値(Xki/Xkw、Yki/Ykw、Zki/Zkw)に変換する。
【0080】
(ステップS14)
一方、視覚特性取得装置10は、発光色票i’(有色発光色票)、及び発光色票w’(白色発光色票)におけるそれぞれのディスプレイ画素値を取得する。視覚特性取得装置10は、発光色票i’におけるディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)を取得する。また、視覚特性取得装置10は、発光色票w’におけるディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)を取得する。
(ステップS15)
視覚特性取得装置10は、ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換する。視覚特性取得装置10は、ディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)を、LUTを用いて分光放射輝度E’i(λ)に変換する。視覚特性取得装置10は、ディスプレイ画素値(R’w、G’w、B’w)を、LUTを用いて分光放射輝度E’w(λ)に変換する。
(ステップS16)
視覚特性取得装置10は、分光放射輝度を、他の等色関数の三刺激値に変換する。視覚特性取得装置10は、関数SSk(λ)を適用することにより、k番目の等色関数における分光放射輝度E’i(λ)に対応する三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を算出する。視覚特性取得装置10は、関数SSk(λ)を適用することにより、k番目の等色関数における分光放射輝度E’w(λ)に対応する三刺激値(X’kw、Y’kw、Z’kw)を算出する。
(ステップS17)
視覚特性取得装置10は、他の等色関数における三刺激値を正規化する。視覚特性取得装置10は、三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を、三刺激値(X’kw、Y’kw、Z’kw)で除算することによって、k番目の等色関数におけるディスプレイ画素値(R’ki、G’ki、B’ki)に対応する、正規化された三刺激値(X’ki/X’kw、Y’ki/Y’kw、Zki/Zkw)を算出する。
【0081】
(ステップS18)
視覚特性取得装置10は、ユーザUに適用する等色関数を決定する。視覚特性取得装置10は、距離ekを算出し、算出した距離ekが最小となるkに対応する等色関数を、ユーザUに適用する等色関数と決定する。距離ekはカメラ側の正規化三刺激値P(Xki/Xkw、Yki/Ykw、Zki/Zkw)とディスプレイ側の正規化三刺激値P’(X’ki/X’kw、Y’ki/Y’kw、Z’ki/Z’kw)の距離である。
【0082】
なお、上述したフローチャートでは、カメラ側の処理(ステップS10~S13)を実行した後に、ディスプレイ側の処理(ステップS14~S17)を実行する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されることはない。ディスプレイ側の処理を実行した後にカメラ側の処理を実行するようにしてもよい。また、カメラ側の処理とディスプレイ側の処理を並行(パラレルに)して実行するようにしてもよい。
【0083】
以上説明したように、第1の実施形態に係る視覚特性取得装置10は、カメラ画素値取得部111と、基準三刺激値算出部112と、カメラ側三刺激値算出部113と、ディスプレイ画素値取得部121と、分光放射輝度算出部122と、ディスプレイ側三刺激値算出部123と、等色関数決定部13とを備える。カメラ画素値取得部111は、色票i、色票wのそれぞれのカメラ画素値(有色カメラ画素値、白色カメラ画素値)を取得する。基準三刺激値算出部112は、それぞれのカメラ画素値に基づく基準三刺激値(有色基準三刺激値、白色基準三刺激値)を算出し、正規化する。カメラ側三刺激値算出部113は、正規化した基準三刺激値(正規化基準三刺激値)を、他の等色関数における正規化した三刺激値に変換し、カメラ側の三刺激値とする。ディスプレイ画素値取得部121は、発光色票i’、発光色票w’のそれぞれのディスプレイ画素値(有色ディスプレイ画素値、白色ディスプレイ画素値)を取得する。分光放射輝度算出部122は、それぞれのディスプレイ画素値に基づく分光放射輝度(有色分光放射輝度、白色分光放射輝度)を算出する。ディスプレイ側三刺激値算出部123は、それぞれの分光放射輝度から、他の等色関数における三刺激値(ディスプレイ側有色三刺激値、ディスプレイ側白色三刺激値)を算出し、正規化する。等色関数決定部13は、カメラ側、ディスプレイ側それぞれの正規化された三刺激値の差分に応じて、ユーザに適用する等色関数を決定する。これにより、第1の実施形態に係る視覚特性取得装置10では、測光装置を用いなくとも、ユーザに適した等色関数を決定することができる。すなわち、ユーザの視覚特性を取得することができる。したがって、印刷物等の反射物の色の見えを、ユーザの見えに応じてディスプレイに再現することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
ここで、第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態の視覚特性取得システム1Aの概略を示す図である。視覚特性取得システム1Aでは、白色発光色票の色を調整しない。すなわち、本実施形態では、ディスプレイ画素値(R’
w、G’
w、B’
w)を用いない点において、上述した実施形態と相違する。以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について説明し、上述した実施形態と同等の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図8は、第2の実施形態のディスプレイ側処理部12Aが行う処理を説明する図である。
図8に示すように、本実施形態では、色票w’(白色発光色票)のディスプレイ画素値を取得せず、三刺激値(X
w、Y
w、Z
w)を用いた処理を行う。三刺激値(X
w、Y
w、Z
w)は、基準三刺激値算出部112により算出された、基準等色関数におけるカメラ画素値(R
w、G
w、B
w)に対応する三刺激値である。
【0086】
ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、基準等色関数における三刺激値(Xw、Yw、Zw)を、変換行列を用いて、他の等色関数における三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)に変換する。変換行列は、基準等色関数の三刺激値を、他の等色関数における三刺激値に変換する行列である。ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、下記の(6)式により、他の等色関数における三刺激値を算出する。
【0087】
【0088】
(6)式における変換行列Mstd→kは、基準等色関数における三刺激値を、k番目の等色関数における三刺激値に変換する行列である。変換行列Mstd→kは、ユーザUに適用する候補となる等色関数のそれぞれに対応して作成される。すなわち、ユーザUに適用する候補となるN個の等色関数がある場合、それぞれに対応するN個の変換行列Mstd→k(1≦k≦N)が作成される。変換行列Mstd→kの作成方法は後で詳しく説明する。本実施形態では、それぞれの等色関数に対応する変換行列が予め作成されて記憶されているものとする。
【0089】
ここで、カメラ画素値から算出される三刺激値は、ディスプレイ画素値から算出された三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)とスケールが一致しない可能性が高い。スケールが一致していない状態で正規化を行うと、照明情報をキャンセルすることが困難となる。
【0090】
この対策として、ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、スケール調整を行う。ここでのスケール調整は、ディスプレイ側の有色発光色票i’のスケールを、カメラ側の白色色票wのスケールに合わせることである。ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、例えば、ディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)に対応する分光放射輝度E’i(λ)から算出される基準等色関数における三刺激値(X’i、Y’i、Z’i)におけるY値(Y’i)を算出する。また、ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、カメラ画素値(Ri、Gi、Bi)から算出される基準等色関数における三刺激値(Xi、Yi、Zi)におけるY値(Yi)を算出する。ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、Y値(Y’i)と、Y値(Yi)とが等しくなるように式(2)における定数jについて、(j=Yi/Y’i)とする。
【0091】
なお、上記では、三刺激値(X、Y、Z)におけるY値を用いてスケール調整を行う場合を例示して説明した。しかしながらこれに限定されることはない。三刺激値(X、Y、Z)における三つの要素のうちいずれの一つの要素を用いてスケール調整を行うようにしてもよい。例えば、三刺激値(X、Y、Z)におけるX値を用いてスケール調整を行うようにしてもよいし、Z値を用いてスケール調整を行うようにしてもよい。また、三刺激値(X、Y、Z)における三つの要素のうちの何れか二つの要素を用いてスケール調整を行うようにしてもよいし、三つの要素全てを用いて、スケール調整を行うようにしてもよい。
【0092】
ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、三刺激値を正規化する。ここでの正規化の対象となる三刺激値は、k番目の等色関数における、スケール調整後の分光放射輝度E’i(λ)を用いて算出した三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)である。ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)に対応する三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)で除算することにより、正規化する。この場合、k番目の等色関数の正規化三刺激値は、(X’ki/Xkw、Y’ki/Ykw、Z’ki/Zkw)となる。
【0093】
図9は、第2の実施形態の等色関数決定部13Aが行う処理を説明する図である。
図9に示すように、等色関数決定部13Aは、距離e
kとして、色空間におけるカメラ側の正規化三刺激値P(X
ki/X
kw、Y
ki/Y
kw、Z
ki/Z
kw)と、ディスプレイ側の正規化三刺激値P’(X’
ki/X
kw、Y’
ki/Y
kw、Z’
ki/Z
kw)との座標間の距離を求める。
【0094】
ここで、変換行列Mstd→kの作成方法について説明する。下記の(7)式のように、基準等色関数における色票iに対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)を、3行1列の行列viで表記することができる。
【0095】
【0096】
(7)式における行列Sは、基準等色関数を示す、3行401列の行列である。対角行列Riは、色票iの分光反射率を示す、401行401列の行列である。行列Eは、観察光源KLの分光放射輝度を示す401行1列の行列である。ここでの401列(行)は、波長区間380~780nmを、1nmの分解能で表記したものに相当する。
【0097】
また、下記の(8)式のように、k番目の等色関数における色票iに対応する三刺激値(Xki、Yki、Zki)を、3行1列の行列vkiで表記することができる。
【0098】
【0099】
(8)式における行列Skは、k番目の等色関数を示す、3行401列の行列である。対角行列Riは、色票iの分光反射率を示す、401行401列の行列である。行列Eは、観察光源KLの分光放射輝度を示す401行1列の行列である。ここでの401列(行)は、波長区間380~780nmを、1nmの分解能で表記したものに相当する。
【0100】
(7)式と(8)式を用いて、(6)式は、下記の(9)式のように表記することができる。
【0101】
【0102】
(7)式を変形すると、下記の(10)式のように表記することができる。(10)式のTは転置記号を示す。
【0103】
【0104】
(10)式を、(8)式に代入することにより、下記の(11)式が得られる。
【0105】
【0106】
(11)式に基づき、下記の(12)式が示され、これにより、変換行列Mstd→kを作成することができる。
【0107】
【0108】
なお、変換行列Mstd→kは、ユーザUに適用する候補となるN個の等色関数それぞれに対応させて作成され、さらに、カメラプロファイル114で用いられ得る複数の光源情報ごとに作成される必要がある。
【0109】
図10は、第2の実施形態の視覚特性取得装置10Aが行う処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態のカメラ側の処理は、上述した第1の実施形態と同様である。すなわち、
図10におけるステップS20~S23に示す処理は、
図6におけるS10~S13に示す処理と同等であるため、その説明を省略する。
【0110】
(ステップS24)
一方、視覚特性取得装置10Aは、発光色票i’(有色発光色票)のディスプレイ画素値を取得する。視覚特性取得装置10Aは、発光色票i’におけるディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)を取得する。
(ステップS25)
視覚特性取得装置10Aは、ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換する。視覚特性取得装置10Aは、ディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)を、LUTを用いて分光放射輝度E’i(λ)に変換する。
(ステップS26)
視覚特性取得装置10Aは、分光放射輝度を、他の等色関数の三刺激値に変換する。視覚特性取得装置10Aは、関数SSk(λ)を適用することにより、k番目の等色関数における分光放射輝度E’i(λ)に対応する三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を算出する。
ここで、視覚特性取得装置10Aは、必要に応じてスケール調整を行う。視覚特性取得装置10Aは、(2)式における定数jについて、(j=Yi/Y’i)とすることによりスケール調整を行う。Y値(Yi)は、基準等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)に対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)のY値である。Y値(Y’i)は、基準等色関数における分光放射輝度E’i(λ)に対応する三刺激値(X’i、Y’i、Z’i)のY値である。
【0111】
(ステップS27)
視覚特性取得装置10Aは、ステップS21(S11)で算出した、基準等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)対応する三刺激値(Xw、Yw、Zw)を取得する。
(ステップS28)
視覚特性取得装置10Aは、基準等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)対応する三刺激値(Xw、Yw、Zw)を、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)対応する三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)に変換する。
(ステップS29)
視覚特性取得装置10Aは、k番目の等色関数における三刺激値を正規化する。視覚特性取得装置10Aは、k番目の等色関数における分光放射輝度E’i(λ)に対応する三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)対応する三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)で除算することにより、三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を正規化する。
(ステップS30)
視覚特性取得装置10Aは、ユーザUに適用する等色関数を決定する。視覚特性取得装置10Aは、距離ekを算出し、算出した距離ekが最小となるkに対応する等色関数を、ユーザUに適用する等色関数と決定する。距離ekはカメラ側の正規化三刺激値P(Xki/Xkw、Yki/Ykw、Zki/Zkw)とディスプレイ側の正規化三刺激値P’(X’ki/Xkw、Y’ki/Ykw、Z’ki/Zkw)の距離である。
【0112】
なお、上述したフローチャートでは、カメラ側の処理(ステップS20~S23)を実行した後に、ディスプレイ側の処理(ステップS24~S29)を実行する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されることはない。ディスプレイ側の処理を実行した後にカメラ側の処理を実行するようにしてもよい。また、カメラ側の処理とディスプレイ側の処理を並行(パラレルに)して実行するようにしてもよい。
【0113】
以上説明したように、第2の実施形態に係る視覚特性取得装置10Aは、カメラ画素値取得部111と、基準三刺激値算出部112と、カメラ側三刺激値算出部113と、ディスプレイ画素値取得部121Aと、分光放射輝度算出部122と、ディスプレイ側三刺激値算出部123Aと、等色関数決定部13とを備える。ディスプレイ画素値取得部121Aは、有色発光色票i’のディスプレイ画素値を取得する。ディスプレイ側三刺激値算出部123Aは、白色色票wのカメラ画素値で正規化する。このため、第2の実施形態に係る視覚特性取得装置10Aでは、白色発光色票w’のディスプレイ画素値を取得する必要がない。このため、ユーザの手間を低減させることができる。
【0114】
(第2の実施形態の変形例)
ここで、第2の実施形態の変形例について説明する。本実施形態では、カメラ側にて基準等色関数における正規化三刺激値を算出しない。すなわち、カメラ側にて基準等色関数における三刺激値から、直接、他の等色関数における三刺激値を算出する点において、上述した実施形態と相違する。以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について説明し、上述した実施形態と同等の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0115】
図11は、第2の実施形態の変形例におけるカメラ側処理部11Bが行う処理を説明する図である。
図11に示すように、カメラ側三刺激値算出部113Bは、基準三刺激値算出部112が算出した基準三刺激値(X
i、Y
i、Z
i)を取得する。カメラ側三刺激値算出部113Bは、取得した基準三刺激値(X
i、Y
i、Z
i)を、変換行列M
std→kを用いて、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(R
i、G
i、B
i)に対応する三刺激値(X
ki、Y
ki、Z
ki)を算出する。三刺激値(X
ki、Y
ki、Z
ki)は、「カメラ側有色三刺激値」の一例である。
【0116】
また、カメラ側三刺激値算出部113Bは、基準三刺激値算出部112が算出した基準三刺激値(Xw、Yw、Zw)を取得する。カメラ側三刺激値算出部113Bは、取得した基準三刺激値(Xw、Yw、Zw)を、変換行列Mstd→kを用いて、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)に対応する三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)を算出する。三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)は、「カメラ側白色三刺激値」の一例である。
【0117】
カメラ側三刺激値算出部113Bは、三刺激値を正規化する。ここで正規化する対象は、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)に対応する三刺激値(Xki、Yki、Zki)である。カメラ側三刺激値算出部113Bは、三刺激値(Xki、Yki、Zki)を、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)に対応する三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)で除算することにより、三刺激値(Xki、Yki、Zki)を正規化する。
【0118】
図12は、第2の実施形態の変形例における視覚特性取得装置10Bが行う処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態のディスプレイ側の処理(ステップS44~S49)、カメラ側の一部の処理(ステップS40~S41)、及びステップS50は、
図10におけるS24~S29、S20~S21、及びS30に示す処理と同等であるため、その説明を省略する。
【0119】
(ステップS42)
視覚特性取得装置10Bは、基準等色関数における三刺激値を、他の等色関数における三刺激値に変換する。視覚特性取得装置10Bは、基準等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)を、変換行列Mstd→kを用いて、k番目の等色関数における三刺激値(Xki、Yki、Zki)に変換する。また、視覚特性取得装置10Bは、基準等色関数におけるカメラ画素値(Rw、Gw、Bw)対応する三刺激値(Xw、Yw、Zw)を、変換行列Mstd→kを用いて、k番目の等色関数における三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)に変換する。
【0120】
(ステップS42)
視覚特性取得装置10Bは、他の等色関数における三刺激値を正規化する。視覚特性取得装置10Bは、k番目の等色関数における三刺激値(Xki、Yki、Zki)を、k番目の等色関数における三刺激値(Xkw、Ykw、Zkw)で除算することにより、三刺激値(Xki、Yki、Zki)を正規化する。
【0121】
以上説明したように、第2の実施形態の変形例に係る視覚特性取得装置10Bは、カメラ画素値取得部111と、基準三刺激値算出部112と、カメラ側三刺激値算出部113Bと、ディスプレイ画素値取得部121と、分光放射輝度算出部122と、ディスプレイ側三刺激値算出部123と、等色関数決定部13とを備える。カメラ側三刺激値算出部113Bは、基準三刺激値を正規化することなく、他の等色関数における三刺激値に変換し、変換後の三刺激値を正規化する。これにより、第2の実施形態の変形例における視覚特性取得装置10Bは、正規化変換行列Mnorm_std→kを用いずに処理を行うことができる。このため、上記の実施形態では、等色関数ごと、光源情報ごとに用意する必要があった正規化変換行列記憶させておく必要がない。したがって、メモリ容量を低減させることができる。
【0122】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図13は、第3の実施形態の視覚特性取得システム1Cの概略を示す図である。視覚特性取得システム1Cでは、色票w(白色色票)におけるカメラ画素値を取得しない点において、上述した実施形態と相違する。以下の説明では、上述した実施形態と異なる点について説明し、上述した実施形態と同等の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
なお、本実施形態では、カメラのオートホワイトバランスの精度が高い場合に適用されることが望ましい。この場合、カメラプロファイルの照明情報と、実際の観察光源KLの照明情報が同等とみなすことができ、照明情報をキャンセルするための正規化処理を省略することが可能となるためである。つまり、この場合、照明情報をキャンセルするために用いられる色票w(白色色票)の情報を取得する必要がない。
【0123】
図14は、第3の実施形態のカメラ側処理部11Cが行う処理を説明する図である。
図14に示すように、カメラ側三刺激値算出部113Cは、三刺激値(X
i、Y
i、Z
i)を取得する。三刺激値(X
i、Y
i、Z
i)は、基準等色関数におけるカメラ画素値(R
i、G
i、B
i)に対応する三刺激値である。カメラ側三刺激値算出部113Cは、三刺激値(X
i、Y
i、Z
i)を、変換行列M
std→kを用いて、三刺激値(X
ki、Y
ki、Z
ki)に変換する。三刺激値(X
ki、Y
ki、Z
ki)は、k番目の等色関数におけるカメラ画素値(R
i、G
i、B
i)に対応する三刺激値である。
【0124】
図15は、第3の実施形態のディスプレイ側処理部12Cが行う処理を説明する図である。
図15に示すように、ディスプレイ側三刺激値算出部123Cは、分光放射輝度E’
i(λ)を取得する。分光放射輝度E’
i(λ)は、ディスプレイ画素値(R’
i、G’
i、B’
i)に対応する分光放射輝度である。ディスプレイ側三刺激値算出部123Cは、分光放射輝度E’
i(λ)にk番目の等色関数を波長ごとに乗算した値を、所定の波長区間積分することにより、三刺激値(X’
ki、Y’
ki、Z’
ki)に変換する。三刺激値(X’
ki、Y’
ki、Z’
ki)は、k番目の等色関数における分光放射輝度E’
i(λ)に対応する三刺激値である。
【0125】
図16は、第3の実施形態の等色関数決定部13Cが行う処理を説明する図である。
図16に示すように、等色関数決定部13Cは、距離e
kとして、色空間におけるカメラ側の三刺激値P(X
ki、Y
ki、Z
ki)と、ディスプレイ側の三刺激値P’(X’
ki、Y’
ki、Z’
ki)との座標間の距離を求める。
【0126】
図17は、第3の実施形態の視覚特性取得装置10Cが行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0127】
(ステップS60)
視覚特性取得装置10Cは、色票i(有色色票)におけるカメラ画素値を取得する。視覚特性取得装置10Cは、色票iにおけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)を取得する。
(ステップS61)
視覚特性取得装置10Cは、カメラ画素値を、基準等色関数におけるカメラ画素値に対応する三刺激値に変換する。視覚特性取得装置10Cは、カメラ画素値(Ri、Gi、Bi)を、基準等色関数におけるカメラ画素値(Ri、Gi、Bi)対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)に変換する。
(ステップS62)
視覚特性取得装置10Cは、基準等色関数に対応する三刺激値を、他の等色関数に対応する三刺激値に変換する。視覚特性取得装置10Cは、基準等色関数に対応する三刺激値(Xi、Yi、Zi)を、変換行列Mstd→kを用いて、k番目の等色関数における三刺激値(Xki、Yki、Zki)に変換する。
【0128】
(ステップS63)
一方、視覚特性取得装置10Cは、発光色票i’(有色発光色票)におけるディスプレイ画素値を取得する。視覚特性取得装置10Cは、発光色票i’におけるディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)を取得する。
(ステップS64)
視覚特性取得装置10Cは、ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換する。視覚特性取得装置10は、ディスプレイ画素値(R’i、G’i、B’i)を、LUTを用いて分光放射輝度E’i(λ)に変換する。
(ステップS65)
視覚特性取得装置10Cは、分光放射輝度を、他の等色関数の三刺激値に変換する。視覚特性取得装置10Cは、分光放射輝度E’i(λ)とk番目の等色関数(xk(λ)、yk(λ)、zk(λ))を波長について乗算した値を、所定の波長区間積分することにより、k番目の等色関数における分光放射輝度E’i(λ)に対応する三刺激値(X’ki、Y’ki、Z’ki)を算出する。
(ステップS65)
視覚特性取得装置10Cは、ユーザUに適用する等色関数を決定する。視覚特性取得装置10Cは、距離ekを算出し、算出した距離ekが最小となるkに対応する等色関数を、ユーザUに適用する等色関数と決定する。距離ekはカメラ側の三刺激値P(Xki、Yki、Zki)とディスプレイ側の三刺激値P’(X’ki、Y’ki、Z’ki)の距離である。
【0129】
以上説明したように、第3の実施形態に係る視覚特性取得装置10Cは、カメラ画素値取得部111と、基準三刺激値算出部112と、カメラ側三刺激値算出部113Cと、ディスプレイ画素値取得部121と、分光放射輝度算出部122と、ディスプレイ側三刺激値算出部123Cと、等色関数決定部13Cとを備える。カメラ画素値取得部111は、色票iの画像における画素値であるカメラ画素値を取得する。基準三刺激値算出部112は、カメラ画素値に対応する基準三刺激値を算出する。カメラ側三刺激値算出部113Cは、基準三刺激値を用いて、他の等色関数におけるカメラ側の三刺激値を算出する。ディスプレイ画素値取得部121は、発光色票i’におけるディスプレイ画素値を取得する。分光放射輝度算出部122は、ディスプレイ画素値を分光放射輝度に変換する。ディスプレイ側三刺激値算出部123Cは、分光放射輝度E’i(λ)と、他の等色関数との関係に基づいて、ユーザ等色関数候補におけるディスプレイ側の三刺激値を算出する。等色関数決定部13は、ユーザUに適用する等色関数を決定する。等色関数決定部13は、カメラ側の三刺激値と、ディスプレイ側の三刺激値の差分に基づいてユーザUに適用する等色関数を決定する。これにより、第3の実施形態に係る視覚特性取得装置10Cでは、色票wにおけるカメラ画素値を取得する必要がない。このため、ユーザの手間を低減させることができる。
【0130】
上述した第3の実施形態に係る視覚特性取得装置10Cでは、カメラ側三刺激値算出部113Cは、変換行列Mstd→kを用いて基準三刺激値を変換し、k番目の等色関数における三刺激値を算出する。ディスプレイ側三刺激値算出部123Cは、関数SSk(λ)を適用することにより、三刺激値を算出する。これにより、第3の実施形態に係る視覚特性取得装置10Cでは、上述した効果と同様の効果を奏する。
【0131】
上述した実施形態における視覚特性取得装置10の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0132】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0133】
1…視覚特性取得システム
10…視覚特性取得装置
111…カメラ画素値取得部
112…基準三刺激値算出部
113…カメラ側三刺激値算出部
114…カメラプロファイル
121…ディスプレイ画素値取得部
122…分光放射輝度算出部
123…ディスプレイ側三刺激値算出部
124…LUT
13…等色関数決定部