(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106042
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】電子装置および案内システム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220711BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20220711BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G01C21/34
G01C21/26 P
G08G1/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000723
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】山本 涼
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA00
2F129BB03
2F129BB22
2F129BB26
2F129CC12
2F129CC15
2F129CC16
2F129CC17
2F129CC18
2F129CC35
2F129DD13
2F129DD14
2F129DD15
2F129DD16
2F129DD53
2F129DD58
2F129DD62
2F129EE43
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE80
2F129EE81
2F129FF11
2F129FF12
2F129FF13
2F129FF15
2F129FF17
2F129FF18
2F129FF19
2F129FF20
2F129FF36
2F129FF41
2F129FF48
2F129FF58
2F129FF59
2F129FF62
2F129FF63
2F129FF64
2F129FF65
2F129FF72
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH21
2F129HH31
2F129HH33
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC27
5H181EE08
5H181EE12
5H181EE18
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181MB06
5H181MC15
5H181MC17
5H181MC24
(57)【要約】
【課題】 車両の走行が困難であるとき誘導経路の案内を迅速に携帯端末側に継続させることができる電子装置を提供する。
【解決手段】 本発明の車載装置100は、緊急警報放送等により緊急事態を検出したとき、避難場所への誘導経路を探索し、誘導経路を案内する。誘導経路の案内中に、自車両の走行が困難であると判定された場合、車載装置100は、携帯端末200に誘導経路情報を送信し、携帯端末200が受信した誘導経路情報に基づき誘導経路を自動的に設定し、その案内を行うことができるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション機能を備えた電子装置であって、
設定された目的地に基づいて誘導経路を探索する探索手段と、
前記探索手段により探索された誘導経路を案内する案内手段と、
自車両の状況を表す状況情報を取得する取得手段と、
前記状況情報に基づき自車両の走行が困難か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段より自車両の走行が困難と判定された場合に、携帯端末へ前記誘導経路に関する誘導経路情報を送信する送信手段と、
を備える電子装置。
【請求項2】
前記誘導経路情報は、目的地としての避難場所および避難場所への誘導経路の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記探索手段は、前記判定手段により自車両の走行が困難と判定された場合に、徒歩用の誘導経路を再探索し、前記送信手段は、再探索された誘導経路に関する誘導経路情報を送信する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記探索手段は、前記判定手段により自車両の走行が困難と判定されたときの現在位置から一定の距離内の避難場所を目的地とする誘導経路を再探索する、請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記探索手段は、津波到達時間内に到着可能な避難場所を目的地とする誘導経路を再探索する、請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記状況情報に基づき自車両の衝突、水没、スタックまたはパンクのいずれかが検出されたとき、自車両が走行困難であると判定する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記携帯端末は、自車両に持ち込まれたものである、請求項1に記載の電子装置。
【請求項8】
前記探索手段は、外部からの災害警報情報の受信に応じて避難場所までの誘導経路を探索する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1つに記載の電子装置と、前記携帯端末とを含む案内システムであって、
前記携帯端末は、前記誘導経路情報を受信する受信手段と、受信した誘導経路情報に基づき目的地までの誘導経路を設定する設定手段と、設定された誘導経路を案内する案内手段とを含む、案内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に搭載された電子装置に関し、特に、ナビゲーション機能により探索された誘導経路を外部に転送することができる電子装置に関する。
【0002】
緊急警報放送等を受信したときに避難場所を表示すると共に避難場所への経路を探索し、その案内を行うナビゲーション装置が知られている。例えば、特許文献1の車両用情報提供装置は、災害情報を受信したとき、自車位置に基づき避難先となる目的地を検索し、自車位置から目的地までの徒歩移動に適した経路を提供する技術を開示している。特許文献2のナビゲーション装置は、大津波警報が発令されたときに避難候補地と候補ルートをユーザーに案内する技術を開示している。また、特許文献3のナビゲーション装置は、車両のイグニッションキーをオフする際、車両位置情報をサーバーに送信しておき、その後、サーバーにおいてユーザーの現在位置から車両現在位置までのルートを探索し、その誘導ルートをユーザーの携帯端末に配信する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-292646号公報
【特許文献2】特開2013-089224号公報
【特許文献3】特開2006-145442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
津波発生などの緊急時、例えば特許文献1に示されるように、ナビゲーション装置は、緊急警報放送の受信に応答して避難場所までの誘導経路を探索し、避難場所への案内を行うことが可能である。しかし、避難場所への走行中に、車両等の異常(例えば、水没、パンクなど)により走行が困難になった場合、ユーザーは、車両から脱出し、自身で高台等の避難場所へ避難しなければならない。もし、避難場所への誘導経路がわからなければ、ユーザーは、自身が所有する携帯端末で避難場所までの道順を再度調べたり、携帯端末側に避難場所までの誘導経路を再設定し、誘導経路を案内させる必要がある。しかしながら、一刻を争う状況では、携帯端末に誘導経路を設定する等の操作をしたことにより避難が遅れ、災害に巻き込まれる可能性がある。
【0005】
一方、特許文献3のナビゲーション装置は、駐車場に到着した際に自動的に目的地情報を携帯端末へ転送し、ACCオフ検出後に携帯端末側で駐車場内の自車への経路案内を行うものであり、車両等の異常により走行が困難になった場合には対応していない。車両等の異常の発生タイミングは駐車場以外のケースが多く、そのような場合に、特許文献3のナビゲーション装置は、誘導経路を携帯端末へ転送しない。このため、ユーザーは、携帯端末側において目的地や誘導経路の再設定や再探索をしなければならず、この作業により避難が遅延し、災害に巻き込まれる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決し、車両の走行が困難であるとき誘導経路の案内を迅速に携帯端末に継続させることができる電子装置および案内システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子装置は、ナビゲーション機能を備えたものであって、設定された目的地に基づいて誘導経路を探索する探索手段と、前記探索手段により探索された誘導経路を案内する案内手段と、自車両の状況を表す状況情報を取得する取得手段と、前記状況情報に基づき自車両の走行が困難か否かを判定する判定手段と、前記判定手段より自車両の走行が困難と判定された場合に、携帯端末へ前記誘導経路に関する誘導経路情報を送信する送信手段とを備える。
【0008】
ある実施態様では、前記誘導経路情報は、目的地としての避難場所および避難場所への誘導経路の少なくとも1つを含む。ある実施態様では、前記探索手段は、前記判定手段により自車両の走行が困難と判定された場合に、徒歩用の誘導経路を再探索し、前記送信手段は、再探索された誘導経路に関する誘導経路情報を送信する。ある実施態様では、前記探索手段は、前記判定手段により自車両の走行が困難と判定されたときの現在位置から一定の距離内の避難場所を目的地とする誘導経路を再探索する。ある実施態様では、前記探索手段は、津波到達時間内に到着可能な避難場所を目的地とする誘導経路を再探索する。ある実施態様では、前記判定手段は、前記状況情報に基づき自車両の衝突、水没、スタックまたはパンクのいずれかが検出されたとき、自車両が走行困難であると判定する。ある実施態様では、前記携帯端末は、自車両に持ち込まれたものである。ある実施態様では、前記探索手段は、外部からの災害警報情報の受信に応じて避難場所までの誘導経路を探索する。
【0009】
本発明に係る案内システムは、上記記載の電子装置と、前記携帯端末とを含むものであって、前記携帯端末は、前記誘導経路情報を受信する受信手段と、受信した誘導経路情報に基づき目的地までの誘導経路を設定する設定手段と、設定された誘導経路を案内する案内手段とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自車両の走行が困難と判定された場合に、誘導経路に関する誘導経路情報を携帯端末に送信するようにしたので、携帯端末側で受信した誘導経路情報に基づき目的地または誘導経路を自動的に設定することができる。これにより、ユーザーは、自車両から脱出した後、携帯端末に目的地や誘導経路を再設定する操作をすることなく自動設定された誘導経路の案内を迅速に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る案内システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係る車載装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施例に係る避難場所への誘導機能の構成を示す図である。
【
図4】走行困難ケースとその検出方法を例示するテーブルである。
【
図5】本発明の実施例に係る携帯端末の構成例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施例に係る誘導経路の自動設定機能の構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施例に係る避難場所への誘導動作のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明に係る電子装置は、自動車、バイク等の移動体に搭載され、ナビゲーション機能を備えている。本発明に係る電子装置は、特に限定されないが、例えば、ナビゲーション・オーディオ・ビジュアル機能を搭載した車載装置、多機能型携帯電話機(スマートフォン)、携帯型情報端末(タブレット型コンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノート型コンピュータ)等であることができる。
【実施例0013】
図1は、本発明の実施例に係る案内システムの一構成例を示す図である。車両Mには、通信モジュールの例としてテレマティクスコントロールユニット10(以下、TCUという)が搭載される。TCU10は、車両Mに搭載された車載装置100や車内に持ち込まれた携帯端末200と有線または無線により接続される。また、車載装置100と携帯端末200は、近距離無線通信等により相互に接続される。
【0014】
TCU10は、アンテナ12を介して、GPS衛星14からGPS信号を受信したり、WiFi(無線LAN)等により外部のホットスポット16と接続したり、3G/4G/5G等の携帯電話通信網やネットワークを介してサーバー18や他の携帯端末20や電子機器22(他の車両に搭載された車載装置を含む)などへ接続することが可能な複合通信ユニットである。
【0015】
TCU10を利用することで、GPS信号から車両Mの現在位置を算出したり、インターネット上のクラウドサーバーから道路地図データやその更新データ、ソフトウエアのアップデート、アプリケーションソフトウエア、地震や津波等の災害警報、交通情報、気象情報、ネット配信動画や音楽データ等をダウンロードしたり、事故が発生したときに携帯電話通信網を利用して自動的に緊急通報したり(e-Call)、車車間通信をしたりすることが可能となる。その結果、車載装置100や携帯端末200で利用できるコンテンツが格段に広がる。
【0016】
図2は、本実施例の車載装置100の構成例を示すブロック図である。車載装置100は、例えば、入力部110、位置算出部120、ナビゲーション部130、通信部140、表示部150、音声出力部160、記憶部170、車両情報取得部180および制御部190を含んで構成される。
【0017】
入力部110は、入力キーデバイス、音声入力認識装置、タッチパネルなどにより、ユーザーからの指示を受け取り、これを制御部190へ提供する。位置算出部120は、GPS信号および/またはジャイロセンサや加速度センサ等を用いて車両の現在地を算出する。ナビゲーション部130は、位置算出部120によって算出された現在地に基づき自車位置周辺の道路地図を表示部150に表示させたり、目的地までの経路を探索する。また、後述するようにナビゲーション部130は、災害等が発生した緊急時には、避難場所を目的地とする誘導経路を探索し、表示部150や音声出力部160を介して誘導経路の案内を行う。
【0018】
通信部140は、
図1に示すTCU10のような通信モジュールを含み、TCU10を介して種々の通信を可能にする。但し、TCU10は一例であり、これ以外の通信モジュールにより外部との通信を行うものであってもよい。通信部140はまた、車内に持ち込まれた1つまたは複数の携帯端末200とのデータ通信を可能にする。接続方法は、特に限定されないが、例えば、携帯端末200は近距離無線通信により車載装置100に接続される。通信部140は、過去に携帯端末200を接続したことがある場合には、携帯端末200の識別情報と接続履歴情報とを照合し、携帯端末200を自動的に接続するようにしてもよい。携帯端末200は、例えば、スマートフォンやタブレット型PCのような多機能型の通信端末である。車載装置100は、例えば、携帯端末200から出力される画像データや音声データを出力したり、携帯端末200への着信があったときハンズフリー通話を可能にする。また、後述するように、車載装置100は、車両Mの走行が困難と判定されたとき、ナビゲーション部130による誘導経路情報を通信部140を介して携帯端末200に転送する。
【0019】
表示部150は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を含み、例えば、ナビゲーション部130によって生成された道路地図データやTCU10を介してダウンロードした画像データを表示する。また、ここには図示しないが、車載装置100がマルチメディア再生機能やテレビ受信機能を備えている場合には、それらの画像データが表示部150に表示される。
【0020】
音声出力部160は、ナビゲーション部130によって生成された誘導経路の案内等の音声を出力したり、TCU10を介してダウンロードされた音声データを出力する。また、ここには図示しないが、車載装置100がマルチメディア再生機能やテレビ受信機能を備えている場合には、それらの音声データが音声出力部160から出力される。
【0021】
記憶部170は、制御部190が実行するアプリケーションソフトウエアやプログラム、ナビゲーション部130が必要とする道路地図データ等を記憶することができる。但し、道路地図データは、TCU10を介してサーバーからダウンロードするようにしてもよい。
【0022】
車両情報取得部180は、車両Mの状況に関する種々の情報を取得する。車両情報取得部180は、例えば車内ネットワークを介してエンジン制御部ECUが生成する制御信号や車両Mに搭載された種々のセンサ(例えば、障害物検出センサ、水感知センサ、車速センサ、温度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、エアバックセンサなど)によって検出されて検出結果を取得する。また、車両Mに、車両Mの周囲を撮像するための撮像カメラが搭載されている場合には、撮像カメラで撮像された画像データを取得するようにしてもよい。
【0023】
制御部190は、車載装置100の各部の動作を制御する。この制御は、ハードウエアおよび/またはソフトウエアにより実施される。ある態様では、制御部190は、ROM/RAMなどを含むマイクロコントローラ等を含み、ROM/RAMは、車載装置100を制御するための種々のプログラムを格納する。本実施例では、制御部190は、運転者の運転を支援するための運転支援機能を有するが、ここでは、運転支援機能の一部として包含される緊急時の避難場所への誘導機能の詳細について説明する。
【0024】
図3は、本実施例による避難場所への誘導機能の構成を示すブロック図である。避難場所への誘導機能300は、緊急事態検出部310、誘導経路探索部320、誘導経路案内部330、走行困難判定部340および誘導経路情報送信部350を含む。
【0025】
緊急事態検出部310は、地震、津波、火事、台風、河川の増水、土砂崩れ等の災害の緊急事態を検出する。検出方法は、特に限定されないが、例えば、TCU10を介してサーバー等から配信された緊急警報を受信したり、テレビ・ラジオ受信機(
図2には省略)から緊急警報放送を受信したり、あるいは車車間通信により他の車両から送信された緊急警報を受信したとき、緊急事態検出部310は緊急事態を検出する。勿論、これ以外にもユーザーが入力部110を介して緊急事態を指示したことに応じて緊急事態が検出されるようにしてもよい。
【0026】
緊急事態検出部310により緊急事態が検出されると、誘導経路探索部320は、ナビゲーション部130と連携して避難場所を目的地とする誘導経路を探索する。ナビゲーション部130は、位置算出部120によって算出された車両Mの現在位置から最寄りの避難場所を検索し、これを目的地とする経路を探索する。避難場所は、予め登録された地点であってもよいし、そのような地点が一定範囲内に見つからない場合には、安全性の高い公園、高台、運動場、施設などを避難場所としてもよい。
【0027】
誘導経路案内部330は、誘導経路探索部320によって避難場所への誘導経路が探索された場合、ナビゲーション部130が別の経路案内を行っている最中であれば、これを強制的に終了させ、ナビゲーション部130に避難場所までの誘導経路を案内させる。表示部150には、避難場所への誘導経路を含む地図画面が表示され、音声出力部160は、誘導経路の案内を行う。
【0028】
走行困難判定部340は、避難場所への誘導経路の案内中に、車両情報取得部180で取得された車両の状況に関する情報に基づき車両Mの走行が困難になったか否かを判定する。
図4に車両の走行困難なケースとその検出方法の一例を示す。例えば、誘導経路を走行中、車両Mが何らかの障害物に衝突し、走行が難しくなる場合がある。車両の衝突の有無は、例えば、障害物センサ、加速度センサ、エアバックの作動、撮像カメラによる画像データにより検出され、走行困難判定部340は、これらの検出結果により走行困難か否かを判定する。例えば、障害物センサにより障害物に衝突したことが検出され、そのときの加速度が一定以上であったり、あるいは、エアバックが作動したり、あるいは、画像データから車両の大きな損傷が予測される場合には、衝突により走行困難であると判定される。
【0029】
また、誘導経路を走行中、車両Mが河川の氾濫や傾斜した道路の窪みに溜まった水に浸水し、走行が難しくなる場合がある。浸水の有無は、例えば、車両が水没したか否かを検知する水没センサ(水位計)、車両の周囲の水等を撮像した画像データにより検出される。走行困難判定部340は、これらの検出結果に基づき水没したか否かを判定する。
【0030】
また、誘導経路を走行中、車両Mが砂、雪、泥によりスタックし、走行が難しくなる場合がある。スタックの有無は、例えば、車輪の空転や車両Mの周囲を撮像した画像データにより検出される。走行困難判定部330は、これらの検出結果に基づき水没したか否かを判定する。さらに、誘導経路を走行中、タイヤがパンクし、走行が難しくなる場合がある。走行困難判定部340は、タイヤの空気圧が一定以下になったとき、パンクにより走行が困難であると判定する。
【0031】
なお、
図4は、主に車両の原因で走行が難しくなる例を示しているが、これ以外にも、走行する環境が原因で走行が難しくなる場合がある。例えば、地震、雪崩、土砂崩れ等により道路が陥没または消失したり、道路上の橋が陥落したり、火災が発生して走行が難しくなることもある。このような場合には、撮像カメラで撮像した画像データで走行が難しいことを判定するようにしてもよい。
【0032】
また、ある態様では、走行困難判定部340により走行が困難であると判定された場合、誘導経路探索部320は、避難場所への誘導経路を再探索することも可能である。この場合、誘導経路探索部320は、ユーザーが車両Mを脱出した後、徒歩により避難場所に向かうことを考慮し、避難場所までの徒歩に適した誘導経路を再探索する。さらに、現在の位置から避難場所まで徒歩で移動するには遠すぎる場合には、現在の位置から一定の距離にある避難場所を再検索し、再検索された避難場所までの誘導経路を再探索するようにしてもよい。
【0033】
また、車載装置側で警報情報から津波到達時間を取得できる場合、当該津波到達時間に基づいて高台の避難場所を目的地に設定するが、車両Mの走行継続が困難になったと判定されたとき、津波到達時間以内で、かつ徒歩で行ける位置に存在する安全度の高い避難場所を目的地に再設定し、誘導経路を再探索する。
【0034】
誘導経路情報送信部350は、走行困難判定部340により車両Mの走行が困難と判定された場合、誘導経路探索部320によって探索された避難場所までの誘導経路に関する誘導経路情報あるいは避難場所までの再探索された誘導経路に関する誘導経路情報を携帯端末200に送信する。誘導経路情報は、避難場所までの誘導経路を識別するリンクデータおよび/または避難場所(目的地)の位置情報を含む。これらの情報に加えて、誘導経路情報は、避難場所への到着時間(徒歩による誘導経路を再探索した場合には、徒歩での到着時間)や、走行困難判定部340により走行困難が発生した位置情報を含むようにしてもよい。車両の走行が困難と判定された後、ユーザーは、誘導経路情報を受信した携帯端末200を所持して車両Mから脱出する。
【0035】
次に、携帯端末200の典型的な構成を
図5に示す。携帯端末200は、入力部210、通信部220、表示部230、音声出力部240、位置検出部250、記憶部260、制御部270等を含んで構成される。
【0036】
入力部210は、ユーザーからの入力を受け取り、これを制御部270へ提供する。通信部220は、車載装置100との間で近距離無線通信を可能にする。また、通信部220は、公衆無線回線網やネットワークを介して他の携帯端末やサーバー等との通信や音声通話等を可能にする。位置検出部250は、例えば、GPS衛星からの信号を利用してスマートフォンの現在位置を検出する。記憶部260は、プログラムや種々のアプリケーションソフトウエア等を格納する。
【0037】
制御部270は、例えば、ROM/RAMを含むマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ等を含み各部を制御する。制御部270はまた、記憶部260に格納されたアプリケーションソフトウエアを実行することが可能である。本実施例では、制御部270は、車載装置100から避難場所への誘導経路情報を受信した場合、受信した誘導経路情報に基づき避難場所への誘導経路を自動的に設定し、これを案内する機能を有する。
【0038】
図6は、携帯端末200に搭載された誘導経路の自動設定機能の構成を示すブロック図である。誘導経路の自動設定機能400は、誘導経路情報受信部410、現在位置算出部420、誘導経路自動設定部430および誘導経路案内部440を含む。
【0039】
誘導経路情報受信部410は、車両の走行が困難と判定されたときに車載装置100から送信される誘導経路情報を受信する。現在位置算出部420は、誘導経路情報を受信すると、位置検出部250の検出結果に基づき携帯端末200の現在位置を算出する。但し、誘導経路情報に車両の走行が困難と判定されたときの位置情報が含まれている場合には、この位置情報を利用し、携帯端末200の現在位置の算出は必ずしも必要ではない。
【0040】
誘導経路自動設定部430は、現在位置算出部420および受信した誘導経路情報に基づき避難場所を目的地とする誘導経路を設定する。ある態様では、携帯端末200は、ナビゲーション機能を実行するアプリケーションを含み、誘導経路自動設定部430は、当該ナビゲーション機能と連携して誘導経路を自動的に設定する。この場合、誘導経路情報が誘導経路のリンクデータを含まず、避難場所の目的地を含む場合には、誘導経路自動設定部430は、ナビゲーション機能に携帯端末200の現在位置から避難場所まので誘導経路を再探索させ、再探索された誘導経路を設定する。
【0041】
誘導経路案内部440は、誘導経路自動設定部430によって設定された避難場所までの誘導経路を案内する。ある態様では、ナビゲーション機能と連携し、表示部230に誘導経路を含む地図画面を表示させ、音声出力部240から誘導経路の音声案内を行う。この際、避難場所への到着時間(徒歩用に誘導経路を再探索した場合には、徒歩による到着時間)も併せて表示される。
【0042】
次に、本実施例の案内システムの動作について
図7のフローを参照して説明する。一例として、車両Mには、ユーザーの1つまたは複数の携帯端末200が持ち込まれ、携帯端末200と車載装置100との接続が確立された状態にあり、かつ、車両Mで走行中に災害等の発生を知らせる緊急警報放送を受信したことを想定する。
【0043】
緊急警報放送の受信に応答して緊急事態検出部310により緊急事態が検出されると(S100)、誘導経路探索部320は、ナビゲーション部130と連携して避難場所を検索し、検索された避難場所を目的地とする誘導経路を探索し、誘導経路案内部330は、探索された誘導経路を含む道路地図画面を表示部150に表示し、誘導経路の案内を開始する(S110)。
【0044】
走行困難判定部340は、避難場所への誘導経路の案内中(S120)、車両情報取得部180から取得される車両Mの状況を監視し、車両Mの走行が困難か否かを判定する(S130)。走行困難判定部340は、例えば
図4に例示するような走行困難な事象が検出されたとき、車両の走行が困難であると判定する。走行が困難であると判定されると、誘導経路情報送信部350は、避難場所を目的地とする誘導経路情報を携帯端末200に送信する(S140)。この誘導経路情報には、前述したように、目的地である避難場所、走行困難が発生したときの位置情報、避難場所までの誘導経路の全てまたはその一部が含まれる。また、徒歩用の避難場所までの誘導経路の再探索を行った場合には、誘導経路情報は、再探索された避難場所や避難場所までの誘導経路を含むことになる。
【0045】
携帯端末200において、誘導経路情報受信部410は、送信された誘導経路情報を受信する(S150)。誘導経路情報に、走行困難が発生したときの位置情報が含まれていない場合には、現在位置算出部420は、携帯端末200の現在の位置を算出する。次いで、誘導経路再設定部430は、受信した誘導経路情報および携帯端末200の現在位置に基づき避難場所への誘導経路を自動的に設定する(S160)。携帯端末200にナビゲーションに関するアプリケーションが実装されている場合には、誘導経路再設定部430は、当該アプリケーションを自動的に起動し、ナビゲーション機能に避難場所を目的地とする誘導経路を探索させ、探索した誘導経路を自動的に設定するか、あるいは車載装置100から受信した誘導経路情報に含まれる誘導経路を自動的に設定する。次に、誘導経路案内部440は、誘導経路を含む道路地図を表示部230に表示し、避難場所への案内を開始する(S170)。
【0046】
本実施例によれば、緊急時に避難場所への誘導中に車両の走行が困難になった場合、誘導経路情報を携帯端末側に転送し、携帯端末側で受信した誘導経路情報に基づき自動的に避難場所への誘導経路を設定するようにしたので、ユーザーは、車両から脱出した後に携帯端末で避難場所への道順を再検索したり、目的地の設定等の操作をする必要なく、即座に避難場所への移動を開始することができる。
【0047】
上記実施例では、緊急時に避難場所を目的地とする誘導経路を案内する例を示したが、本発明は、このような緊急時に限定されるものではなく、緊急時以外の平常時にも適用することができる。平常時に、設定された目的地の誘導経路の案内中に、何らかの原因で車両の走行が困難になった場合、車載装置は、誘導経路情報を携帯端末へ転送し、携帯端末側で目的地までの誘導経路の迅速な案内を継続できるようにしてもよい。
【0048】
さらに上記実施例では、車両の走行が困難になったとき、車載装置100から携帯端末200にダイレクトに誘導経路情報を送信する例を示したが、これは一例であり、本発明は、このような例に限定されるものではない。例えば、車載装置100は、通信部140からサーバー18に誘導経路情報を送信し、携帯端末200は、サーバー18から誘導経路情報を受信するようにしてもよい。この場合、サーバー18は、誘導経路情報を受信すると、直ちに誘導経路情報を携帯端末200へ転送する。また、サーバー18がナビゲーション機能を実装している場合には、携帯端末200は、断続的に現在の位置情報をサーバー18に送信し、サーバー18は、携帯端末200からの位置情報に基づき避難場所への誘導経路を含む道路地図データを携帯端末200に送信し、携帯端末200は、受信した道路地図データを表示部230に表示し、避難場所への案内を行うようにしてもよい。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。