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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106053
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】安全継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/32 20060101AFI20220711BHJP
   B60S 5/02 20060101ALN20220711BHJP
【FI】
F16L37/32
B60S5/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000751
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正浩
【テーマコード(参考)】
3D026
3J106
【Fターム(参考)】
3D026CA05
3J106AA01
3J106AB01
3J106BA02
3J106BB02
3J106BC04
3J106BC12
3J106BD01
3J106BE24
3J106CA16
3J106EA03
3J106EB12
3J106EC06
3J106ED01
3J106ED32
3J106GA02
3J106GA04
3J106GA27
(57)【要約】
【課題】 ノズル側部材であるプラグが充填装置側部材であるソケットから抜け出す初期の段階で直ちに水素ガス流路を遮断して、アウトガスの放出を防止することが出来る安全継手の提供。
【解決手段】 内部に流路が形成され、充填装置側部材と接続されている状態では遮断弁が開放している筒状のノズル側部材と、内部に流路が形成され、ノズル側部材と接続可能な筒状の充填装置側部材から構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成され、充填装置側部材と接続されている状態では遮断弁が開放している筒状のノズル側部材と、
内部に流路が形成され、ノズル側部材と接続可能な筒状の充填装置側部材から構成され、
ノズル側部材が充填装置側部材から離脱するとノズル側部材の遮断弁が閉じ且つ充填装置側部材内の流路が閉鎖される管継手において、
ノズル側部材の流路と充填装置側部材の流路の中心軸が直交して配置され、
ノズル側部材には弁体が収容されている領域よりも小径の突出部を有し、当該突出部にはノズル側部材の流路と充填装置側部材の流路を連通する貫通孔が形成されており、
充填装置側部材にはノズル側部材の突出部が挿入される開口部が充填装置側部材の流路と直交する方向に延在して形成されており、
前記開口部に摺動可能な閉鎖部材と当該閉鎖部材をノズル側部材が外れる方向に付勢する弾性部材が設けられており、
ノズル側部材と充填装置側部材が接続されている場合には閉鎖部材をノズル側部材から離隔した位置に保持する閉鎖部材保持機構を有していることを特徴とする安全継手。
【請求項2】
充填装置側部材の流路には弁体が配置されていない請求項1の安全継手。
【請求項3】
内部に流路が形成され、充填装置側部材と接続されている状態では遮断弁が開放している筒状のノズル側部材と、
内部に流路が形成され、ノズル側部材と接続されている状態では遮断弁が開放している筒状の充填装置側部材から構成され、
ノズル側部材が充填装置側部材から離脱するとノズル側部材の遮断弁及び充填装置側部材の遮断弁が閉鎖される管継手において、
ノズル側部材の流路と充填装置側部材の流路の中心軸が直交して配置され、
ノズル側部材には弁体(プラグ側弁体)が収容されている領域よりも小径の突出部を有し、当該突出部にはノズル側部材の流路と充填装置側部材の流路を連通する貫通孔が形成されており、
充填装置側部材にはノズル側部材の突出部が挿入される開口部が充填装置側部材の流路と直交する方向に延在して形成されており、
充填装置側部材の流路には、ノズル側部材が充填装置側部材と接続している場合に充填装置側の遮断弁の弁体を弁座から離隔するように支持する支持部材と、弁体を開口部側に押圧する弾性体を備え、
充填装置側部材の開口部に挿入可能で且つノズル側部材の突出部先端に当接可能なロッドと、当該ロッドに固定される円板状部材と、ロッド及び円板状部材をノズル側部材が外れる方向に付勢する弾性部材が設けられており、円板状部材の外径寸法は充填装置側部材の開口部の内径寸法よりも大きく、
ノズル側部材と充填装置側部材が接続されている場合には円板状部材及びロッドをノズル側部材から離隔した位置に保持する閉鎖部材保持機構を有していることを特徴としていることを特徴とする安全継手。
【請求項4】
前記開口部をノズル側部材の逆方向に延長した空間を有する延長部を有する請求項1~3の何れか1項の安全継手。
【請求項5】
前記閉鎖部材保持機構は長尺部材と回転係止部材を含み、
長尺部材は充填装置側部材の開口部と平行に延在しており、一端はノズル側部材の弁体が収容されている領域に取り付けられ、他端は閉鎖部材のノズル側部材から離隔した端部近傍まで延在し、当該他端はノズル側部材が充填装置側部材と接続している場合に回転係止部材に係止される位置に配置され、以てノズル側部材が充填装置側部材から外れる際に他端を介してノズル側部材が外れる動きを回転係止部材に伝達する機能を有しており、
回転係止部材は回転可能に軸支されており、ノズル側部材が充填装置側部材と接続している場合に一端はノズル側部材が充填装置側部材から外れるのを阻害する態様で閉鎖部材の端部に係合し、他端は長尺部材の前記他端と係合し、ノズル側部材が充填装置側部材から外れる際に長尺部材及びその他端を介してノズル部材側の移動が伝達されて回動し、閉鎖部材の端部との係合状態が解除される請求項1~4の何れか1項の安全継手。
【請求項6】
内部に流路が形成され、充填装置側部材と接続されている状態では遮断弁が開放している筒状のノズル側部材と、
内部に流路が形成され、ノズル側部材と接続されている状態では遮断弁が開放している筒状の充填装置側部材から構成され、
ノズル側部材が充填装置側部材から離脱するとノズル側部材の遮断弁及び充填装置側部材の遮断弁が閉鎖される管継手において、
ノズル側部材の流路と充填装置側部材の流路の中心軸が直交して配置され、
ノズル側部材には弁体が収容されている領域よりも小径の突出部を有し、当該突出部にはノズル側部材の流路と充填装置側部材の流路を連通する貫通孔が形成されており、
充填装置側部材にはノズル側部材の突出部が挿入される開口部が充填装置側部材の流路と直交する方向に延在して形成されており、開口部をノズル側部材の逆方向に延長した空間を有する延長部を有し、
充填装置側部材の流路には、ノズル側部材が充填装置側部材と接続している場合に充填装置側の遮断弁の弁体を弁座から離隔するように支持する支持部材と、弁体を開口部側に押圧する弾性体を備え、
延長部の空間及び充填装置側部材の開口部内を摺動可能な開口部閉塞部材と、開口部閉塞部材をノズル側部材が外れる方向に付勢する弾性部材が設けられており、
充填装置側部材の開口部の圧力を低減するための減圧機構を有していることを特徴とする安全継手。
【請求項7】
前記減圧機構は、開口部閉塞部材に形成された小孔と、延長部のノズル側部材から離隔した側の端部に設けられた減圧用貫通孔を有している請求項6の安全継手。
【請求項8】
充填装置側部材の開口部にはシール材が配置されている請求項1~7の何れか1項の安全継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料として用いられる水素ガス等の気体を充填するための充填装置に関する。より詳細には、本発明は当該充填装置で気体を充填している際には緊急事態が生じた時に、充填装置と気体充填用ノズルとを分離する管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水素を燃料として走行する車両400では、図8で示す様に、水素充填施設に設けられた水素充填装置200の充填ホース201先端に設けた充填ノズル202と車両側充填口203とを接続して水素ガスを充填する。この充填は、車両400に搭載された水素タンク204の最高使用圧力に応じて制御しながら行われる。
ここで、例えば充填中に車両400が移動する等により充填ホース201が引っ張られると、充填ノズル202及び充填ホース201等の機器が破損して水素ガスが噴出し、危険な状態になる。そこで、緊急離脱用の管継手100を水素充填装置200と充填ホース201の途中に設け、一定以上の引張荷重が掛かると緊急離脱用の管継手100を分離して、充填ノズル202及び充填ホース201等の機器が破損する事態を防止している。
【0003】
その様な緊急離脱用の管継手の従来技術として、出願人は先に、内部に流路が形成された筒状のプラグ(充填ノズル側部材)と、当該プラグが挿入されると遮断弁が開いてプラグ内流路と連続するソケット内流路が形成された筒状のソケット(充填装置側部材)から構成され、ソケットからプラグが離脱すると遮断弁が閉じる緊急離脱用の管継手において、プラグ内流路の中心軸とソケット内流路の中心軸が同一直線状に配置されておらず、ソケットにプラグが挿入されている場合には、ソケット側弁棹の端部(弁体の反対側端部)はプラグ側ロッド収納ケースに当接し、ソケット側弁棹の他端側に設けられた弁体はソケット側の弾性体の弾性反撥力に抗してソケット側弁座から離隔した位置に保持され、プラグ側ロッド収納ケースに保持された係止部材はソケット本体側の開口部分の内壁面により半径方向外方の移動が抑制され、プラグ側弁棹が係止部材に当接してソケット側に移動せず、プラグ側弁棹に設けられた弁体はプラグ側の弾性体の弾性反撥力に抗してプラグ側弁座から離隔した位置に保持される管継手(緊急離脱用の管継手)を提案した(特許文献1参照)。
係る管継手(特許文献1の管継手)は大変に有用な技術である。
【0004】
しかし上述した管継手100(特許文献1)において、充填ホース201(図8)に大きな引張力が作用した場合、図9で示す様に、プラグ10がソケット20から抜け出す初期の段階(抜け出し始めの段階)では、ソケット20側の弁体25に接続したソケット側ロッド22が、プラグ側弁棹2或いは当該弁棹のカバー部材3に載置してしまう。その状態(図9で示す状態)では、ソケット側弁体25はソケット20側のスプリング23の弾性反発力に抗してソケット側弁座21Eから離隔した位置となり、ソケット側遮断弁24は開放された状態になる。そのため、プラグ10がソケット20から抜け出す初期段階(抜け出し始めの段階)では、ソケット20側の開口部21Cを介して、充填装置200(図8)から供給された高圧の水素ガスが、いわゆる「アウトガス」として管継手100の外部に流出してしまう。
なお、図9において、アウトガスの流出は矢印OGで示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6540967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の第1~第3の発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ノズル側部材であるプラグが充填装置側部材であるソケットから抜け出す初期の段階で直ちに水素ガス流路を遮断して、アウトガスの放出を防止することが出来る安全継手の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明の安全継手(100)は、
内部に流路(プラグ側流路R20)が形成され、充填装置側部材(ソケット20)と接続されている状態では遮断弁(プラグ側遮断弁V10)が開放している筒状のノズル側部材(プラグ10)と、
内部に流路(ソケット側流路R20)が形成され、ノズル側部材(10)と接続可能な筒状の充填装置側部材(ソケット20)から構成され、
ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から離脱するとノズル側部材(10)の遮断弁(V10)が閉じ且つ充填装置側部材内の流路(R20)が閉鎖される(緊急離脱用の)管継手(100)において、
ノズル側部材(10)の流路(R10)と充填装置側部材(20)の流路(R20)の中心軸が直交して配置され、
ノズル側部材(10)には弁体(プラグ側弁体3)が収容されている領域よりも小径の突出部(プラグ突出部12)を有し、当該突出部(12)にはノズル側部材(10)の流路(14、15)と充填装置側部材(20)の流路(222、223)を連通する貫通孔(12T)が形成されており、
充填装置側部材(20)にはノズル側部材(10)の突出部(12)が挿入される開口部(貫通孔220)が充填装置側部材(20)の流路と直交する方向に延在して形成されており、
前記開口部(220)に摺動可能な閉鎖部材(8)と当該閉鎖部材(8)をノズル側部材(10)が外れる方向に付勢する弾性部材(ソケット側スプリング9)が設けられており、
ノズル側部材(10)と充填装置側部材(20)が接続されている場合には閉鎖部材(8)をノズル側部材(10)から離隔した位置に保持する閉鎖部材保持機構を有していることを特徴としている。
【0008】
第1の発明において、前記開口部(220)をノズル側部材(10)の逆方向に延長した空間(243)を有する延長部(24)を有し、前記閉鎖部材(8)は充填装置側部材(20)の開口部(220)と延長部(24)の空間(243)に亘って配置されているのが好ましい。
そしてノズル側部材(10)の突出部(12)内にはノズル側部材(10)の流路(R10)が形成されているのが好ましい。
また、充填装置側部材(20)の流路(R20)には弁体は配置されていないことが好ましい。
そして、充填装置側部材(20)の開口部(220)には、ノズル側部材の突出部(12)或いは閉鎖部材(8)との境界部をシールするシール材(例えばOリング7)が配置されているのが好ましい。
【0009】
本願の第2の発明に係る安全継手(100A)は、
内部に流路(プラグ側流路R10A)が形成され、充填装置側部材(ソケット20A)と接続されている状態では遮断弁(プラグ側遮断弁V10)が開放している筒状のノズル側部材(プラグ3t)と、
内部に流路(ソケット側流路R20A)が形成され、ノズル側部材(10)と接続されている状態では遮断弁(ソケット側遮断弁V20)が開放している筒状の充填装置側部材(ソケット20A)から構成され、
ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20A)から離脱するとノズル側部材の遮断弁(V10)及び充填装置側部材の遮断弁(V20)が閉鎖される(緊急離脱用の)管継手(100A)において、
ノズル側部材の流路(R10A)と充填装置側部材の流路(R20A)の中心軸が直交して配置され、
ノズル側部材(10)には弁体(プラグ側弁体3)が収容されている領域よりも小径の突出部(プラグ突出部12)を有し、当該突出部(12)にはノズル側部材の流路(R10A)と充填装置側部材の流路(R20A)を連通する貫通孔(12T)が形成されており、
充填装置側部材(20)にはノズル側部材の突出部(12)が挿入される開口部(貫通孔220)が充填装置側部材の流路(ソケット内流路R20A)と直交する方向に延在して形成されており、
充填装置側部材の流路(F1)には、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20A)と接続している場合に充填装置側の遮断弁(V20)の弁体(30)を弁座(V20)から離隔するように支持する支持部材(60)と、弁体(30)を開口部(220)側に押圧する弾性体(ソケット側スプリング40)を備え、
充填装置側部材(40)の開口部(220)に挿入可能で且つノズル側部材の突出部(12)先端に当接可能なロッド(81a)と、当該ロッド(81a)に固定される円板状部材(81b)と、ロッド(81a)及び円板状部材(81b)をノズル側部材(10)が外れる方向に付勢する弾性部材(9)が設けられており、円板状部材(81b)の外径寸法は充填装置側部材(20)の開口部(220)の内径寸法よりも大きく、
ノズル側部材(10)と充填装置側部材(20)が接続されている場合には円板状部材(81b)及びロッド(81a)をノズル側部材(10)から離隔した位置に保持する閉鎖部材保持機構を有していることを特徴としている。
【0010】
第2の発明において、前記開口部(220)をノズル側部材(10)の逆方向に延長した空間(243)を有する延長部(24)を有し、ロッド(81a)は延長部(24)の空間(243)から充填装置側部材の開口部(220)に亘って移動可能であり、円板状部材(81b)は延長部(24)の空間(243)内のみを移動するのが好ましい。
【0011】
第1及び第2の発明において、前記閉鎖部材保持機構は長尺部材(13)と回転係止部材(13L)を含み、
長尺部材(13)は充填装置側部材(20、20A)の開口部(220)と平行に延在しており、一端はノズル側部材の弁体(プラグ側弁体3)が収容されている領域(14)に取り付けられ(固定され)、他端(13L)は閉鎖部材(8、8A)のノズル側部材(10、10A)から離隔した端部(82、82A)近傍まで延在し、当該他端(13L)はノズル側部材(10、10A)が充填装置側部材(20、20A)と接続している場合に回転係止部材(31)に係止される位置に配置され、以てノズル側部材(10、10A)が充填装置側部材(20、20A)から外れる際に他端(13L)を介してノズル側部材(10、10A)が外れる動きを回転係止部材(31)に伝達する機能を有しており、
回転係止部材(31)は回転可能に軸支されており、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20、20A)と接続している場合に一端(31a)はノズル側部材(10、10A)が充填装置側部材(20、20A)から外れるのを阻害する態様で閉鎖部材(8、8A)の端部に係合し、他端(31b)は長尺部材(13)の前記他端(13L)と係合し、ノズル側部材(10、10A)が充填装置側部材(20、20A)から外れる際に長尺部材(13)及びその他端(13L)を介してノズル部材側の移動が伝達されて回動し、閉鎖部材(8、8A)の端部(31a)との係合状態が解除されるのが好ましい。
【0012】
本願の第3の発明に係る安全継手(100B)は、
内部に流路(プラグ内流路R10B)が形成され、充填装置側部材(ソケット20B)と接続されている状態では遮断弁(プラグ側遮断弁V10)が開放している筒状のノズル側部材(プラグ10B)と、
内部に流路(ソケット内流路R20B)が形成され、ノズル側部材(10B)と接続されている状態では遮断弁(ソケット側遮断弁V20)が開放している筒状の充填装置側部材(ソケット20B)から構成され、
ノズル側部材(10B)が充填装置側部材(20B)から離脱するとノズル側部材(10B)の遮断弁(V10)及び充填装置側部材(20B)の遮断弁(V20)が閉鎖される(緊急離脱用の)管継手(100B)において、
ノズル側部材(10B)の流路(R10B)と充填装置側部材(20B)の流路(R20B)の中心軸が直交して配置され、
ノズル側部材(10B)には弁体(プラグ側弁体3)が収容されている領域よりも小径の突出部(プラグ突出部12)を有し、当該突出部(12)にはノズル側部材(10B)の流路(R10B)と充填装置側部材(20B)の流路(R20B)を連通する貫通孔(12T)が形成されており、
充填装置側部材(20B)にはノズル側部材の突出部(12)が挿入される開口部(貫通孔220)が充填装置側部材(20B)の流路(R20B)と直交する方向に延在して形成されており、開口部(220)をノズル側部材(20B)の逆方向に延長した空間(243B)を有する延長部(24B)を有し、
充填装置側部材(20B)の流路(R20B)には、ノズル側部材(10B)が充填装置側部材(20B)と接続している場合に充填装置側の遮断弁(V20)の弁体(30)を弁座(V20)から離隔するように支持する支持部材(60)と、弁体(30)を開口部(220)側に押圧する弾性体(ソケット側スプリング40)を備え、
延長部(24B)の空間(243B)及び充填装置側部材(20B)の開口部(220)内を摺動可能な開口部閉塞部材(8B)と、開口部閉塞部材(8B)をノズル側部材(10B)が外れる方向に付勢する弾性部材(9B)が設けられており、
充填装置側部材の開口部(220)の圧力を低減するための減圧機構を有していることを特徴としている。
【0013】
第3の発明において、前記開口部(220)をノズル側部材(10B)の反対側に延長した空間(243B)を有する延長部(24B)を有し、前記開口部閉塞部材(8B)は延長部(24B)の空間(243B)と充填装置側部材の開口部(220)とに亘って移動可能であるのが好ましい。
また第3の発明において、前記減圧機構は、開口部閉塞部材(8B)に形成された小孔(84)と、延長部(24B)のノズル側部材(10B)から離隔した側の端部に設けられた減圧用貫通孔(246)を有しているのが好ましい。さらに、前記減圧用貫通孔(246)は圧力弁(図示せず)に連通しているのが好ましい。
【0014】
第2及び第3の発明において、充填装置側部材(20B)の開口部(220)には、ノズル側部材(10B)の突出部(12)との境界部をシールするシール材(例えばOリング7)が配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述の構成を具備する本願第1の発明の安全継手によれば、充填装置側部材(20)にはノズル側部材(10)の突出部(12)が挿入される開口部(貫通孔220)が充填装置側部材(20)の流路(ソケット内流路R20)と直交する方向に延在して形成されており、前記開口部(220)に摺動可能な閉鎖部材(8)と当該閉鎖部材(8)をノズル側部材(10)が外れる方向に付勢する弾性部材(ソケット側スプリング9)が設けられているが、ノズル側部材(10)と充填装置側部材(20)が接続されている場合には閉鎖部材保持機構により閉鎖部材(8)はノズル側部材(10)から離隔した位置に保持されている。
そのため、ノズル側部材(10)と充填装置側部材(20)が接続されている場合には閉鎖部材保持機構が充填装置側部材(20)の流路を閉塞することがなく、水素充填装置から供給された水素は、充填装置側部材(20)の水素供給口(25)、充填装置側部材の流路(R20)、ノズル側部材(10)の突出部(12)に形成された貫通孔(12T)、ノズル側部材(10)の流路(R10)、ノズル側部材の水素出口を介して、水素充填ノズルにより燃料電池車両内のタンクに充填される。
何らかのトラブルによりノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から抜け出してしまった場合には、抜け初めの段階において、閉鎖部材保持機構は閉鎖部材(8)をノズル側部材(10)から離隔した位置に保持しなくなる。そして、弾性部材(スプリング9)が閉鎖部材(8)を付勢しているので、閉鎖部材(8)はノズル側部材(10)の突出部(12)と共にノズル側部材(10)が外れる方向に移動する。そのため、閉鎖部材(8)が抜けても、ソケット側流路(R20)はノズル側部材(10)の突出部(12)或いは閉鎖部材(8)の何れかによって閉塞され、ソケット側流路(R10)に残留した水素ガスが安全継手(100)の外部に流出することは無い。そして、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から離脱する際に、安全継手(100)からアウトガスとして排出されてしまう高圧ガスの流量が極めて少なくなる。
【0016】
上述の構成を具備する本願第2の発明の安全継手(100A)によれば、充填装置側部材(20A)の流路(R20A)には、支持部材(60)と、弁体(30)を開口部(243)側に押圧する弾性体(ソケット側スプリング40)を備え、充填装置側部材(20A)の開口部(220)に挿入可能で且つノズル側部材(10A)の突出部先端(12)に当接可能なロッド(81A)と、当該ロッド(81A)に固定される円板状部材(82B)と、ロッド(81A)及び円板状部材(82B)をノズル側部材(10A)が外れる方向に付勢する弾性部材(9)が設けられており、円板状部材(82B)の外径寸法は充填装置側部材(20A)の開口部(220)の内径寸法よりも大きく、ノズル側部材(10A)と充填装置側部材(20A)が接続されている場合には円板状部材(82B)及びロッド(81A)をノズル側部材(10A)から離隔した位置に保持する閉鎖部材保持機構を有している。
そのため、ノズル側部材(10A)と充填装置側部材(20A)が接続されている場合には、支持部材(60)により充填装置側部材(20A)の遮断弁(V20)は開放した状態に保持され、水素充填装置から供給された水素は、充填装置側部材(20A)の水素供給口(25)、充填装置側部材(20A)の流路(R20A)、ノズル側部材(10A)の突出部(12)に形成された貫通孔(12T)、ノズル側部材(10A)の流路(R10A)、ノズル側部材(10A)の水素出口(5)を介して、水素充填ノズルにより燃料電池車両内のタンクに充填される。
【0017】
第2の発明において、ノズル側部材(10A)が充填装置側部材(20A)から抜け出してしまった場合には、抜け初めの段階において、ノズル側部材(10A)の突出部(12)に形成された貫通孔(12T)の位置が充填装置側部材(20A)の流路の位置と整合しなくなるため、ノズル側部材(10A)の突出部(12)が充填装置側部材(20A)の流路(R20A)を閉鎖する。
また、ノズル側部材(10A)が充填装置側部材(20A)から抜け出すと、閉鎖部材保持機構は円板状部材(82A)及びロッド(81A)をノズル側部材(10A)から離隔した位置に保持しなくなるため、円板状部材(82A)は弾性部材(9)により充填装置側部材(20A)の開口部(220)に押圧される。ここで、円板状部材(I)の外径は開口部(220)の内径よりも大きいため、弾性部材(9)により円板状部材(82A)が充填装置側部材の開口部(220)に押圧されると、充填装置側部材(20A)の開口部(220)が閉鎖される。
さらに、支持部材(60)は充填装置側部材(20A)の遮断弁(V20)を開放した状態に保持しなくなり、充填装置側部材(20A)の遮断弁(V20)は閉鎖されるので、充填装置側からの水素ガスは充填装置側部材(20A)の遮断弁(V20)により完全に遮断される。
【0018】
上述の構成を具備する本願第3の発明の安全継手(100B)によれば、ノズル側部材(10B)には弁体(プラグ側弁体3)が収容されている領域よりも小径の突出部(プラグ突出部12)を有し、当該突出部(12)にはノズル側部材(10B)の流路(10BR)と充填装置側部材(20B)の流路(R20B)を連通する貫通孔(12T)が形成されており、充填装置側部材(20B)にはノズル側部材(10B)の突出部(12)が挿入される開口部(貫通孔220)が充填装置側部材(20B)の流路(R20B)と直交する方向に延在して形成されており、開口部(220)をノズル側部材(10B)の逆方向に延長した空間(243B)を有する延長部(20B)を有し、充填装置側部材(20B)の流路にはノズル側部材(10B)が充填装置側部材(20B)と接続している場合に充填装置側(20B)の遮断弁の弁体(30)を弁座(V20)から離隔するように支持する支持部材(60)と、弁体(30)を開口部(220)側に押圧する弾性体(ソケット側スプリング40)を備え、延長部(20B)の空間(243B)及び充填装置側部材(20B)の開口部(220)内を摺動可能な開口部閉塞部材(8B)と、開口部閉塞部材(8B)をノズル側部材(10B)が外れる方向に付勢する弾性部材(9B)が設けられており、充填装置側部材(20B)の開口部(220)の圧力を低減するための減圧機構を有している。
そのため本発明によれば、ノズル側部材(10B)と充填装置側部材(20B)が接続されている場合には、支持部材(60)により充填装置側部材(20B)の遮断弁(30)は開放した状態に保持され、水素充填装置から供給された水素は、充填装置側部材(20B)の水素供給口(25)、充填装置側部材(20B)の流路(R20B)、ノズル側部材(10B)の突出部(12)に形成された貫通孔(12T)、ノズル側部材(10B)の流路(R10B)、ノズル側部材(10B)の水素出口(5)を介して、水素充填ノズルにより燃料電池車両内のタンクに充填される。
【0019】
第3の発明において、ノズル側部材(10B)が充填装置側部材(20B)から抜け出してしまった場合には、抜け初めの段階において、ノズル側部材(10B)の突出部(12)に形成された貫通孔(12T)の位置が充填装置側部材(20B)の流路の位置と整合しなくなるため、ノズル側部材(10B)の突出部(12)が充填装置側部材(20B)の流路(R20B)を閉鎖する。その際に、ノズル側部材(10B)の突出部(12)と充填装置側部材(20B)の開口部(220)との境界からガスが漏洩しても、前記減圧機構により安全継手外(100B)に排出されるので、漏洩したガスが高圧になることに伴う危険は防止される。
そして、ノズル側部材(10B)の突出部(12)が充填装置側部材(20B)から外れると、支持部材(60)は弁体(30)を開口部(220)側に押圧する弾性体(ソケット側スプリング40)の弾性反発力により開口部(220)側に移動して、充填装置側部材(20B)の遮断弁(V20)は開放した状態から直ちに閉鎖される。そのため、充填装置側(20B)からの水素ガスは充填装置側部材(20B)の遮断弁(V20)により完全に遮断される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る安全継手において、ノズル側部材(プラグ)の突出部が充填装置側部材(ソケット)に接続されている状態の説明断面図である。
図2】第1実施形態において、ノズル側部材の突出部が充填装置側部材から外れた状態の説明断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る安全継手において、ノズル側部材の突出部が充填装置側部材に接続されている状態の説明断面図である。
図4】第2実施形態において、ノズル側部材の突出部が充填装置側部材から外れた状態の説明断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る安全継手において、ノズル側部材の突出部が充填装置側部材に接続されている状態の説明断面図である。
図6】第3実施形態において、ノズル側部材の突出部が充填装置側部材から外れる途中の状態の説明断面図である。
図7】第3実施形態において、ノズル側部材の突出部が充填装置側部材から外れた状態の説明断面図である。
図8】水素充填施設の概要を示すブロック図である。
図9】従来技術に係る安全継手において、プラグがソケットから抜き出る初期の段階を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に図1図2を参照して第1実施形態を説明する。
図1において、全体を符号100で示す第一実施形態の安全継手は、ノズル側部材(プラグ)10と充填装置側部材(ソケット)20を備えている。
【0022】
プラグ10は、プラグ本体11と、プラグ本体11と一体に形成されるプラグ突出部12を有する。プラグ本体11は例えば円柱状であり、概略中央には径寸法の小さい括れ部11dが形成されている。プラグ突出部12は例えばプラグ本体11よりも径寸法の小さな円柱状に形成され、プラグ本体11から離隔する側(図1図2では左側)端部には面取り加工が施されている。
【0023】
プラグ本体11には第2の流路14が形成されており、第2の流路14のソケットから離隔した側(図1図2の右側)端部は開口しており、当該開口部にはガス流出口を構成するアタッチメント5が螺合している。
プラグ突出部12の中心部には第2の流路14よりも内径の小さな第1の流路15が形成されており、第1の流路15と第2の流路14はテーパー部(符号なし)により接続しており、第1の流路15と第2の流路14の接続箇所であるテーパー部とプラグ側弁体3のテーパー部3tにより、プラグ側の遮断弁V10が構成されている。
【0024】
第2の流路14内には、左端にテーパー部3tを下降したプラグ側弁体3が収容され、プラグ側弁体3とアタッチメント5との間には、プラグ側弁体3をソケット側(図1図2では左側)に付勢するコイルスプリング4が収容されている。
第1の流路15の先端(左端)近傍には、第1の流路15に直交する貫通孔16が形成され、貫通孔16には鋼球6(ベアリングボール:図1図2では2個)が挿入されている。
貫通孔16よりもプラグ本体11側の領域(図1図2では右側の領域)には、第2の貫通孔12Tが形成されている。
図1の状態において、第負の貫通孔12Tは、ソケット20の流路R20の中心線の延長に整合している。
【0025】
図1において、第1の流路15内にはピストン2が収容されており、ピストン2は円板部材2aと棒状部材2bを有し、円板部材2aは棒状部材2bのプラグ本体11から離隔した側(図1では左側)の先端に設けられている。
円板部材2aの外径寸法は、円板部材2aが図1の状態ではボール6を確実に押圧し、且つ、円板部材2aが第1の流路15内をガタなく滑らかに摺動する様に設定されている。
【0026】
ここで、図1の状態では、コイルスプリング4によってプラグ側弁体3が図1の左方に付勢され、プラグ側弁体3の左端面に当接したピストン2も左方に付勢される。
そのため、ピストン2の円板部材2aはボール6と当接し、ボール6よりもプラグ側本体11から離隔した側(図1では左側)の領域に移動することが出来ない。換言すれば、ピストン2の円板部材2aはボール6によりスプリング4の伸長方向(左側)に移動することは出来ない。
【0027】
ソケット20は、ソケット本体22と、ソケット本体22の延長部24を有している。ソケット本体22において、図1における下方領域(プラグ突出部12が挿入されている側の領域)には、図1の左右方向(水平方向)に開口部220(貫通孔)が形成されている。
そして、ソケット本体22の図1における垂直方向に延在するソケット内流路R20が形成され、ソケット内流路R20において、プラグ突出部12から離隔した側(図1における上方)端部には開口が形成されている。ソケット内流路R20は、図1における上方の領域(前記開口側の領域)に第一の流路222、第1の流路222とテーパー部を介して接続され且つ第1の流路222よりも内径寸法が小さい第2の流路223を有している。
上述した従来技術(特許文献1)、後述する第2実施形態及び第3実施形態とは異なり、第1実施形態のソケット20におけるソケット内流路R20には、弁体は設けられていない。
【0028】
貫通孔220における第2の流路223の直下(プラグ突出部12側)には、貫通孔220と同心で、貫通孔220よりも内径寸法が大きい円筒状空間224が形成されている。換言すれば、第2の流路223に連通する円筒状空間224は、第2の流路223に直交している。
ソケット内流路R20の上端の開口には、ガス流入口を構成するアタッチメント25が螺合している。
貫通孔220において、ソケット内流路R20を挟む左右の領域には、Oリング7が設けられている。
【0029】
ソケット本体22のプラグ10から離隔した側(図中右側)に設けられている延長部24は、円筒部241とフランジ242を有しており、フランジ24によりソケットボディー221に接続している。円筒部241には円筒空間243とスプリング収容穴244が形成されており、円筒空間243はフランジ242側(図中左側)が開口しており、閉鎖部材8を内部で摺動させる機能を有しており、スプリング収容穴244は円筒空間243に連通しており、円筒空間243よりも内径が小さい。そしてスプリング収容穴244にはスプリング9が収容され、スプリング9は閉鎖部材8をプラグ10側(図示の右側)に付勢している。
【0030】
閉鎖部材8は円筒空間243内を滑らかに摺動する機能を有し、円柱部81と、円柱部81よりも外径寸法が大きいフランジ部82を有している。円柱部81のプラグ10側(図中では左側)は、ソケット本体22に形成された貫通孔220内に挿入されており、貫通孔220内を摺動する。
【0031】
ソケット20には閉鎖部材保持機構31(レバー)が設けられ、レバー31は、プラグ10とソケット20が接続されている場合(図1の場合)に、閉鎖部材8をプラグ10から離隔した位置に保持する機能を有している。
レバー31は、ソケット20の円筒部241に設けたヒンジピン32回りを回動自在であり、概略「く」字状に形成されている。
【0032】
一方、プラグ本体11には保持解除ロッド13が設けられており、保持解除ロッド13はプラグ突出部12近傍に取り付けられ、プラグ突出部12の長手方向にプラグ本体11から離隔する方向に延在している。保持解除ロッド13のロッド先端13LはL字状に折曲しており、先端はレバー31側(図1の上方)を向いている。ロッド先端13Lの内辺(図1における左側の辺)に、レバー31の一端31bの内辺(図1における右側の辺)が係合している。そして、図1の状態では、レバー31の他端31aが閉鎖部材8のフランジ部82の裏面(プラグ10側の面:図1の右側の面)に係合している。
閉鎖部材8のフランジ部82、レバー31、保持解除ロッド13が上述した様に係合することにより、プラグ10とソケット20の接続が維持される。
【0033】
図1の状態(プラグ10がソケット20に接続されている状態)における水素ガスの流れについて、図1を参照して説明する。
水素充填の際には、アタッチメント25側(水素流入口)を介して水素充填装置200(図8参照)から供給される水素ガスは、矢印F1で示す様に、ソケット本体22のソケット内流路R20を通過し、第2の貫通孔12Tを経由して、プラグ突出部12に形成された第1の流路15に流入する。
ここで、貫通孔220におけるソケット内流路R20の左右にはOリング7が設けられているので、プラグ突出部12と貫通孔220の境界部から水素が漏洩することは防止される。
上述した通り、図1の状態では、プラグ10のピストン2における円板部材2aはボール6によりスプリング4の伸長方向(左側)に移動することは出来ず、プラグ側遮断弁V10は図1で示す開放状態を保持している。そのため、プラグ突出部12の第1の流路15に流入した水素ガスは、矢印F2で示す様に、プラグ側遮断弁V10、プラグ10の流路14、アタッチメント5の流路5i(ガス流出口)を介して、充填ホース201(図8参照)内を流れる。
図1における符号R10は、プラグ側流路を示している。
【0034】
次に、プラグ10がソケット20から外れた場合について、図2をも参照して説明する。
図1で示す状態において、プラグ10がソケット20から外れると、プラグ10に設けた保持解除ロッド13の先端13Lが、プラグ10が外れる方向(図1図2の右側)に移動する。図1において保持解除ロッド13の先端13Lが図2の右側に移動すると、ソケット20側のレバー31は、反時計回りに回動して、閉鎖部材8のフランジ部82とレバー31の係合が解除される。フランジ部82とレバー31の係合が解除されると、図2で示す様に、プラグ突出部12の先端に当接していた閉鎖部材8はコイルスプリング9に付勢されてプラグ10側(図2では右側)に移動し、図2で示す状態になる。閉鎖部材8がプラグ10側(図2では右側)に移動することにより、図2で示す様に閉鎖部材8が貫通孔220のソケット内流路R20近傍に位置し、以て、ソケット内流路R20を閉鎖して、図1の矢印F1、F2で示す水素ガスの流れを遮断する。
【0035】
プラグ10がソケット20から外れると、図1の状態から、プラグ突出部12はプラグが外れる方向(図1図2の右側)に移動し、ボール6は円筒状空間224に到達する。ボール6にはスプリング4が伸長する弾性反発力が作用しており、当該弾性反発力によりボール6はプラグ突出部12の半径方向外方に常に移動しようとしている。そのため、円筒状空間224に到達したボールはプラグ突出部12の半径方向外方方向に移動して円筒状空間224に進入し、ピストン2の円板部材2aがボール6と当接した状態が解除され、ピストン2の円板部材2aはボール6よりもスプリング4の伸長方向(図1図2の左側)に移動する。
その結果、スプリング4の弾性反発力によりプラグ側弁体3は第2の流路14の接続箇所であるテーパー部(弁座)に座着して、図2で示す様に、プラグ側の遮断弁V10が閉鎖される。
プラグ側の遮断弁V10が閉鎖されることによりプラグ10側から高圧の水素ガスが流出することは防止される。
【0036】
図1図2の第1実施形態によれば、車両の異常発進等に起因してプラグ10がソケット20から外れると、プラグ10に設けた保持解除ロッド13が右行し、保持解除ロッド13の先端13Lに係合していたソケット20側のレバー31は反時計回りに回動し、閉鎖部材8とレバー31の係合が解除され、スプリング9の付勢によって瞬時に貫通孔220に突入して、ソケット内流路R20以降の流路を遮断することができる。
また、貫通孔220におけるソケット内流路R20を挟む左右の領域にはOリング7が設けられているために、閉鎖部材8と貫通孔220内壁面との境界における水素ガスの流れもシールされる。そのため、例えば水素ガスの様な気体の漏洩(アウトガスも含む)が防止される。
更に、第1実施形態の安全継手100は、構成部材の数(部品点数)が比較的少なく、それらの形状も円柱や円筒空間を基本としているので機械加工が極めて容易であり、安価な安全継手を提供できる。
【0037】
次に、図3図4を参照して第2実施形態を説明する。
図3において、第2実施形態に係る安全継ぎ手100Aは、ソケット20Aにおけるソケット本体22の第1の流路222の内部に、ソケット側弁体30と、コイルスプリング40を配置しており、コイルスプリング40は、ソケット側弁体30とアタッチメント25の内部側端部との間に配置されている。
ソケット側弁体30の下方の第2の流路223には支持部材60が配置されており、支持部材60は、先端(弁体側先端:図3では上端)が三角錐形状で且つ全体が円筒状の中空部材であり、底面が開口を形成している。
ソケット側遮断弁V20の弁座は、第1の流路222と第2の流路223の接続部分であるテーパー部により構成されている。
図3図4の第2実施形態の安全継ぎ手100Aにおいて、図1図2の第1実施形態と同様の部材については同様な符号を付して示す。
【0038】
支持部材60の三角錐部分には、複数の小孔60aが設けられ、当該小孔60aはガスの流路の一部を構成している。プラグ10がソケット20Aに接続されている状態では、支持部材60の開放した下端は、プラグ突出部12の外周面に当接しており、支持部材60の上端にはソケット側弁体30が当接しているので、図1においては、支持部材60により、ソケット側弁体30は便座(第1の流路222と第2の流路223を接続するテーパー部)から離隔しており、ソケット側遮断弁V20は開放した状態が維持されている。
プラグ10側については、図1図2の第1実施形態と同様である。図3において、符号R10Aはプラグ内流路を示す。
【0039】
図3図4の第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ソケット20Aには閉鎖部材保持機構31(レバー)が設けられ、プラグ本体11には保持解除ロッド13が設けられている。
しかし、図3図4の第2実施形態における閉鎖部材8Aは、第1実施形態の閉鎖部材とは異なっている。閉鎖部材8Aは棒状部材81Aと円板部82Aを有しており、棒状部材81Aは貫通孔220内を延在しており、円板部82Aはスプリング9によりプラグ10側(図示の右側)に付勢されており、スプリング9は延長部24のスプリング収容穴244内に収容されている。
図3で示す状態(プラグ10がソケット20Aと接続した状態)では、保持解除ロッド13のロッド先端13Lはレバー31の一端31bに係合しており、レバー31の他端31aが閉鎖部材8の円板部82Aに係合している。図1と同様に、閉鎖部材8の円板部82A、レバー31、保持解除ロッド13が係合することにより、プラグ10とソケット20の接続が維持される。
【0040】
図3を参照して、充填ガスを充填する態様を説明する。
アタッチメント25(ガス流入口)からソケット本体22のソケット内流路R20Aに流入した水素ガスは、矢印Fa1で示す様に、開放状態のソケット側遮断弁V20を通過し、流路R20Aを通過する。そして、プラグ突出部12に形成された第2の貫通孔12Tを経由して、プラグ突出部12に形成された第1の流路15に流入する。
ソケット内流路R20Aにおいては、第1の流路222を通過したガスは、支持部材60の三角錐部分に形成された複数の小孔60a及び支持部材60の内部空間を通過する。
【0041】
次に図3及び図4を参照して、プラグ10がソケット20Aから外れた場合を説明する。
図4において、プラグ10がソケット20Aから外れる(図4の右側に移動する)際には、プラグ10に設けた保持解除ロッド13の先端13Lもプラグ側(図4の右側)に移動し、保持解除ロッド13に係合していたソケット20A側のレバー31は反時計方向に回動し、閉鎖部材8Aとレバー31の係合が解除されて、閉鎖部材8Aはコイルスプリング9の弾性反発力によりプラグ10側(図4では右側)に移動する。そして、コイルスプリング9に付勢された閉鎖部材8Aの円板部82Aが、貫通孔220の延長部24側(図4の左側)端部の開口を閉鎖する。
ここで、閉鎖部材8Aの棒状部材81Aはプラグ突出部12よりも小径であるため、プラグ突出部12により支持されていた支持部材60はソケット側スプリング40の弾性反発力により貫通孔220内部(図示の下方)に押圧される。それと共に、ソケット側弁体30もソケット側スプリング40の弾性反発力により貫通孔220側(図示の下方)に押圧され、弁座に座着し、ソケット側遮断弁V20が閉鎖される。
図3図4の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1図2の第1実施形態と同様である。
【0042】
次に、図5図7を参照して本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態に係る安全継手は全体が符号100Bで示されている。第3実施形態では、図1図4の第1実施形態及び第2実施形態における保持解除ロッド13及びレバー31を備えておらず、閉鎖部材8、8Aも含んでいない。
第3実施形態では、ソケット20Bの延長部24Bとその内部の構成が、図1図4の第1実施形態及び第2実施形態とは異なっている。
【0043】
プラグ10Bがソケット20Bと接続した状態を示す図5において、ソケット20Bの延長部24Bは段部を有する円筒状であり、プラグ10B側(図5では右側)が開口した円筒空間243Bを形成している。円筒空間243内にはスライダ8Bが収容されており、スライダ8Bは円筒空間243内を摺動する。図示の例では、円筒空間243Bの内径は、ソケット本体22に形成された貫通孔220の内径と等しい。
【0044】
円筒空間243Bのフランジ242B側と離隔する側(図5の左側)には、円筒空間243Bの内径よりも大きな内径を有する空間244B(チャンバ)が円筒空間243Bに隣接して形成されている。延長部24Bのチャンバ244B側端面(図5では右側端面)には排気口246が形成されている。
スライダ8Bはプラグ10B側(図5の右側)が閉塞し、排気口246が形成された側(図5の左側)の端側が開放した円筒状であり、その内部空間83にはコイルスプリング9Bが介装されている。スライダ8Bの開放側端部の近傍には排気用小孔84が形成されている。
図中で明示されてはいないが、排気口246は圧力弁(図示せず)に連通させることが出来る。
【0045】
円筒空間243Bにおけるチャンバ244Bとの段部の近傍にはOリング溝(符号を省略)が形成され、Oリング溝の内部にはOリング70が介装されている。
さらに、円筒空間243Bの概略中央部には圧力逃がし用の小孔245が形成されており、スライダ8Bにも圧力逃がし用の小孔84が形成されている。
後述する様に、水素ガス充填中には、貫通孔220とプラグ突出部12との境界部から水素ガス(充填ガス)が漏洩し、円筒空間243Bの内圧が昇圧する。円筒空間243Bの圧力は、プラグ10Bをソケット20Bから離隔させる方向に作用してしまう。そのため排気用小孔84、排気口246を形成して、通常の使用において円筒空間243B内の昇圧によりプラグ10Bがソケット20Bから離隔することを防止している。圧力逃がし用の小孔245も同様の趣旨で形成されている。
【0046】
図5図6の第3実施形態は、延長部24Bの構成と、保持解除ロッド13、レバー31、閉鎖部材8Aを含んでいないことを除くと、図3図4の第2実施形態と概略同様である。
そのため、第3実施形態において充填ガスを充填する態様及び矢印Fb1、Fa2で示す水素ガス流路は、図3図4の第2実施形態と概略同様である。
また、第3実施形態において、プラグ10Bがソケット20Bから外れた場合に、プラグ側遮断弁V10及びソケット側遮断弁V20が閉鎖される態様も、図3図4の第2実施形態と概略同様である。
【0047】
図5において、水素ガス充填中には、貫通孔220とプラグ突出部12との境界部から水素ガス(充填ガス)が漏洩し、漏洩した充填ガスGfは延長部24Bの円筒空間243Bに流入し、円筒空間243Bの内圧が高まる。
円筒空間243Bの内圧が昇圧すると、当該内圧によりスライダ8Bがスプリング9側(図5では左側)に移動してスプリング9を圧縮し、円筒空間243Bの容積を増大させる。さらに円筒空間243Bが昇圧して、スライダ8Bの開口側の端面が円筒空間244Bのチャンバ244Bのプラグ10Bから離隔した側(図5の左側)の内表面と当接すると、それ以上円筒空間243Bの容積は増加しない。
【0048】
ここで、スライダ8Bに圧力逃がし用の小孔84が形成され、延長部24Bの左端側端面には排気口246が形成されているため、円筒空間243Bの内圧が所定圧以上に昇圧すると、小孔84及び排気口246を介して円筒空間243内の昇圧した水素ガスは安全継手100B外へ排出される。ここで、小孔84及び/又は排気口246の内径寸法を適宜調整することにより、水素ガスが安全継手100B外へ排出される圧力(円筒空間243Bの内圧)を適宜調整することが出来る。
それに加えて、円筒空間243内の昇圧した水素ガスは、圧力逃がし用の小孔245から安全継手100B外へ逃がすことが出来る(矢印Fbx:図6)。
【0049】
プラグ10Bがソケット20Aから外れる過程において、プラグ突出部12の先端部が未だソケット20Bの貫通孔220内に位置している状態が、図6に示されている。
図6において、プラグ10Bにおけるプラグ突出部12の先端は、ソケット20Bの貫通孔220内に留まっているが、プラグ突出部12の位置は、支持部材60がソケット側スプリング40の弾性反発力により図6の下方に押圧されても、支持部材60の下降を阻害しない様な位置である。すなわち、貫通孔220の右開口部はプラグ突出部12によって閉塞している。
ソケット側スプリング40の弾性反発力により支持部材60を下降するのを阻害していたプラグ突出部12が図6の状態では移動しているため、ソケット20Bの第2の流路223に介装された支持部材60はソケット側スプリング40の弾性反発力により瞬時に下降する。その結果、ソケット側遮断弁V20は閉鎖され、充填ガスの流れも遮断される。
ソケット側遮断弁V20が閉鎖された時にソケット側弁体30の下流側(貫通孔220)に存在する水素ガスは、図6において点線で示す矢印Fbiの様に流出し円筒空間243Bに流入して円筒空間243Bの内圧は高まる。しかし、前述したように、円筒空間243Bの圧力逃がし用の小孔245からガスを逃がすことにより円筒空間243Bの内圧を下げることが出来る。
【0050】
プラグ10Bがソケット20Aから完全に外れた状態を示す図7において、プラグ10B(のプラグ突出部12)がソケット20Bから完全に外れたために、ソケット20Bの貫通孔220の右開口部が開放される。そのため、円筒空間243Bの内圧も降圧し、スプリング9Bの弾性反発力により、スプリング9Bが伸長した状態となる様にスライダ8は図6で示す状態よりもプラグ10Bが抜けた側(図7で右側)に移動する。
延長部24Bの左端側端面には排気口246が形成されているため、スライダ8Bが図7の右側に移動しても排気口246から外気が流入しチャンバ244B内が負圧になることはない。
【0051】
図5図7の第3実施形態において、プラグ10Bがソケット20から外れていない場合においてプラグ側遮断弁V10が開放している態様と、プラグ10Bがソケット20から外れた際にプラグ側遮断弁V10が閉鎖される態様は、図1図2の第1実施形態について上述した態様と同様である。
図5図7の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図3図4の第2実施形態と同様である。
【0052】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0053】
2・・・ピストン
3・・・プラグ側弁体
4・・・コイルスプリング
8・・・閉鎖部材
10・・・プラグ
12・・・プラグ突出部
13・・・保持解除ロッド
14・・・第2の流路
15・・・第1の流路
20・・・ソケット
24・・・延長部
30・・・ソケット側弁体
40・・・コイルスプリング
60・・・支持部材
100・・・安全継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9