(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106070
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】改質木材製造方法
(51)【国際特許分類】
B27K 3/02 20060101AFI20220711BHJP
B27K 5/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B27K3/02 E
B27K3/02 A
B27K5/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000782
(22)【出願日】2021-01-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】509197494
【氏名又は名称】株式会社 江間忠ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】江間 壮一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】前野 晋史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬之
(72)【発明者】
【氏名】金沢 吉昭
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA01
2B230AA27
2B230BA01
2B230EC02
2B230EC17
2B230EC21
2B230EC24
(57)【要約】
【課題】減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせず、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる木材処理装置および改質木材製造方法を提供する。
【解決手段】加圧加熱室10が、扉10aから内部に加圧加熱処理する木材を配置可能であって、気密密閉可能である。温度センサ11と圧力センサ12と酸素センサ13とが、加圧加熱室10の内部に設けられている。ヒーター14が、加圧加熱室10の内部に設けられ、加圧加熱室10の内部を加熱可能となっている。開放電磁弁15が、加圧加熱室10の内部圧力を開放可能である。制御手段16が、温度センサ11と圧力センサ12と酸素センサ13との検出値を入力して各検出値に応じてヒーター14および開放電磁弁15を制御する。ファン装置17が、加圧加熱室10の内部に動力により回転するファンを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を加圧加熱処理するための、内部に温度センサと圧力センサと酸素センサとが設けられた気密密閉可能な加圧加熱室と、
前記加圧加熱室の内部を加熱可能なヒーターと、
前記加圧加熱室の内部圧力を開放可能な開放手段と、
前記温度センサと前記圧力センサと前記酸素センサとの検出値を入力して各検出値に応じて前記ヒーターおよび前記開放手段を制御する制御手段とを、
有することを、特徴とする木材処理装置。
【請求項2】
加圧加熱室の内部に木材を配置し、前記加圧加熱室の室温が50~80℃の第1所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記加圧加熱室の気圧を1気圧に保ち、前記加圧加熱室の酸素分圧を0.2~0.13気圧以下の第1所定圧力まで低下させる第1工程と、
前記第1工程後、前記室温が50~120℃で前記第1所定温度以上の第2所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を1.5気圧まで上昇させ、前記酸素分圧を前記第1所定圧力以下でかつ0.1気圧以下の第2所定圧力まで低下させる第2工程と、
前記第2工程後、前記室温が100~140℃で前記第2所定温度以上の第3所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を1.5~2.0気圧の所定気圧まで上昇させ、前記酸素分圧を前記第1所定圧力以下でかつ0.05気圧以下の第3所定圧力まで低下させる第3工程と、
前記第3工程後、前記室温が130~160℃で前記第3所定温度以上の第4所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を前記所定気圧に保ち、前記酸素分圧を前記第3所定圧力以下でかつ0.02気圧以下の第4所定圧力まで低下させる第4工程と、
前記第4工程後、前記室温が160~180℃の第5所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を前記所定気圧に保ち、前記酸素分圧を0.02気圧以下に保つ第5工程とを、有することを特徴とする改質木材製造方法。
【請求項3】
前記第1工程で前記第1所定温度になるまでの加熱を温度勾配0.5~2℃/2minで行い、前記第2工程で前記第2所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行い、前記第3工程で前記第3所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行い、前記第5工程で前記第5所定温度になるまでの加熱を温度勾配2~10℃/1minで行うことを、特徴とする請求項2記載の改質木材製造方法。
【請求項4】
前記第2工程および前記第3工程で前記気圧の上昇を0.01~0.03/10minの圧力勾配で行うことを、特徴とする請求項3記載の改質木材製造方法。
【請求項5】
前記第1工程では前記加圧加熱室を圧力開放下で加熱し、前記第2工程では前記加圧加熱室を圧力開放下および圧力閉止下で加熱し、前記第3工程では前記加圧加熱室を圧力閉止下で加熱し、前記第4工程では前記加圧加熱室を圧力開放下で加熱停止することを、特徴とする請求項4記載の改質木材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材処理装置および改質木材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を高温高圧処理することにより製造される、寸法安定性、耐朽性に優れた改質木材が知られている。
従来、木材を不活性ガス雰囲気中で高温高圧処理することにより埋木化する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、密閉空間内に無垢材である被処理木材を収容して、該密閉空間の内圧を50kPa以下に維持する減圧処理工程と、該減圧処理工程により酸素含有量が低下した被処理木材を収容する密閉空間に過熱水蒸気を導入して、該被処理木材を170℃以上の温度に加熱する過熱水蒸気処理工程と、該過熱水蒸気処理工程後の被処理木材に対して変色促進処理を施す変色促進工程とを含む、熱処理木材の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、木材を気密タンク内に設置する設置ステップと、気密タンクを既定の圧力まで加圧して、木材の加圧環境を確立する加圧ステップと、既定の温度まで木材を加熱する加熱ステップとを含み、加熱中の既定の圧力は木材中の水が既定の温度で蒸発することを妨げる、木材の熱処理方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-135004号公報
【特許文献2】特開2016-30404号公報
【特許文献3】特開2018-507129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、減圧工程や不活性ガスの注入工程が必要なため、製造コストがかさむという課題があった。特許文献2に記載の方法では、減圧工程を必要とするとともに、過熱水蒸気導入装置が必要なため、製造コストがかさむという課題があった。特許文献3に記載の方法では、含浸剤を必要とするため、含浸剤の管理が必要となるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせず、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる木材処理装置および改質木材製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る木材処理装置は、木材を加圧加熱処理するための、内部に温度センサと圧力センサと酸素センサとが設けられた気密密閉可能な加圧加熱室と、前記加圧加熱室の内部を加熱可能なヒーターと、前記加圧加熱室の内部圧力を開放可能な開放手段と、前記温度センサと前記圧力センサと前記酸素センサとの検出値を入力して各検出値に応じて前記ヒーターおよび前記開放手段を制御する制御手段とを、有することを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る木材処理装置では、制御手段により、加圧加熱室の内部に設けられた温度センサと圧力センサと酸素センサとの検出値を入力して各検出値に応じてヒーターおよび開放手段を制御し、加圧加熱室の内部を加熱したり、加圧加熱室の内部圧力を開放したりすることができる。これにより、減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせずに、加圧加熱室に配置した木材に効率的に加熱および加圧を行い、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる。本発明に係る木材処理装置により、寸法安定性、耐朽性に優れた改質木材を製造することができる。
本発明に係る木材処理装置は、加圧加熱室の内部を動力で撹拌するファン装置を有することが好ましい。
【0008】
本発明に係る改質木材製造方法は、加圧加熱室の内部に木材を配置し、前記加圧加熱室の室温が50~80℃の第1所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記加圧加熱室の気圧を1気圧に保ち、前記加圧加熱室の酸素分圧を0.2~0.13気圧以下の第1所定圧力まで低下させる第1工程と、前記第1工程後、前記室温が50~120℃で前記第1所定温度以上の第2所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を1.5気圧まで上昇させ、前記酸素分圧を前記第1所定圧力以下でかつ0.1気圧以下の第2所定圧力まで低下させる第2工程と、前記第2工程後、前記室温が100~140℃で前記第2所定温度以上の第3所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を1.5~2.0気圧の所定気圧まで上昇させ、前記酸素分圧を前記第1所定圧力以下でかつ0.05気圧以下の第3所定圧力まで低下させる第3工程と、前記第3工程後、前記室温が130~160℃で前記第3所定温度以上の第4所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を前記所定気圧に保ち、前記酸素分圧を前記第3所定圧力以下でかつ0.02気圧以下の第4所定圧力まで低下させる第4工程と、前記第4工程後、前記室温が160~180℃の第5所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を前記所定気圧に保ち、前記酸素分圧を0.02気圧以下に保つ第5工程とを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る改質木材製造方法では、加圧加熱室の内部に木材を配置し、第1工程から第5工程で加圧加熱室の温度と圧力を制御することによって、減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせずに、加圧加熱室に配置した木材に効率的に加熱および加圧を行い、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる。本発明に係る改質木材製造方法により、寸法安定性、耐朽性に優れた改質木材を製造することができる。
本発明に係る改質木材製造方法は、前記第1工程で前記第1所定温度になるまでの加熱を温度勾配0.5~2℃/2minで行い、前記第2工程で前記第2所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行い、前記第3工程で前記第3所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行い、前記第5工程で前記第5所定温度になるまでの加熱を温度勾配2~10℃/1minで行うことが好ましい。この場合、加圧加熱室に配置した木材に、より効率的に加熱および加圧を行うことができる。
【0010】
本発明に係る改質木材製造方法は、前記第2工程および前記第3工程で前記気圧の上昇を0.01~0.03/10minの圧力勾配で行うことが好ましい。この場合、加圧加熱室に配置した木材に、より効率的に加熱および加圧を行うことができる。
本発明に係る改質木材製造方法において、前記第1工程では前記加圧加熱室を圧力開放下で加熱し、前記第2工程では前記加圧加熱室を圧力開放下および圧力閉止下で加熱し、前記第3工程では前記加圧加熱室を圧力閉止下で加熱し、前記第4工程では前記加圧加熱室を圧力開放下で加熱停止することが好ましい。この場合、加圧加熱室に配置した木材に、より効率的に加熱および加圧を行うことができる。
本発明に係る改質木材製造方法では、第5工程後、気温まで降温させる前に200~250℃の所定の温度で所定時間維持することが好ましい。降温の際には、外気圧を導入して1気圧に保つことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせず、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる木材処理装置および改質木材製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態の木材処理装置の構成を示す概略縦断面図である。
【
図2】
図1の木材処理装置による昇温時の制御方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の木材処理装置による製造スケジュールと酸素除去の一般的な製造スケジュールとを比較して示すグラフである。
【
図4】大気雰囲気と低酸素雰囲気とで木材を加熱処理したときの質量減少率を示すグラフである。
【
図5】温度と気体膨脹比との関係を示すグラフである。
【
図6】定圧の温度による酸素分圧変化を示すグラフである。
【
図7】温度と水蒸気分圧の関係を示すグラフである。
【
図8】飽和水蒸気大気中の残存酸素比と温度との関係を示すグラフである。
【
図9】ジルコニア酸素センサの出力特性を示すグラフである。
【
図10】定圧の飽和水蒸気状態と温度膨脹時の温度による酸素分圧変化を示すグラフである。
【
図11】実施例の製造スケジュールを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の木材処理装置を示している。
図1に示すように、木材処理装置1は、加圧加熱室10と、温度センサ11と、圧力センサ12と、酸素センサ13と、ヒーター14と、開放電磁弁(開放手段)15と、制御手段16と、ファン装置17とを有している。
【0014】
加圧加熱室10は、扉10aから内部に加圧加熱処理する木材を配置可能であって、気密密閉可能である。温度センサ11と圧力センサ12と酸素センサ13とは、加圧加熱室10の内部に設けられている。ヒーター14は、加圧加熱室10の内部に設けられ、加圧加熱室10の内部を加熱可能となっている。開放電磁弁15は、加圧加熱室10の内部圧力を開放可能である。制御手段16は、A/DコンバータとPLCとを備え、
図2に示すように、温度センサ11と圧力センサ12と酸素センサ13との検出値を入力して各検出値に応じてヒーター14および開放電磁弁15を制御する構成を有している。
【0015】
酸素分圧の制御は、ボイルシャルルの法則で明らかなように、温度による気体膨張と木材中の水分の気化による水蒸気分圧のバランスにより行われる。温度センサ11、圧力センサ12および酸素センサ13の応答性が重要であるばかりか、これらを総合的に管理し製造スケジュールをリニアに調整することが必要となる。
図2のフローで示しているのは大きな概念的な制御ではあるが、データベースを構築し既存の製造方法をフィードバックしたAI制御を行うことによって、製造の安定化を図ることができる。
ファン装置17は、加圧加熱室10の内部に動力により回転するファンを有している。
【0016】
木材処理装置1を用いて、
図3に示す製造スケジュールで以下の方法により改質木材を製造する。
扉10aを開けて、加圧加熱室10の内部に木材を配置する。制御手段16により以下の第1工程から第5工程でヒーター14と開放電磁弁15を制御する。
第1工程では、加圧加熱室10の室温が50~80℃の第1所定温度になるまで加圧加熱室10を加熱し、加圧加熱室10の気圧を1気圧に保ち、加圧加熱室10の酸素分圧を0.2~0.13気圧以下の第1所定圧力まで低下させる。第1工程では、第1所定温度になるまでの加熱を温度勾配0.5~2℃/2minで行う。また、第1工程では、加圧加熱室10を圧力開放下で加熱する。
【0017】
第1工程後、第2工程では、室温が50~120℃で第1所定温度以上の第2所定温度になるまで加圧加熱室10を加熱し、気圧を1.5気圧まで上昇させ、酸素分圧を第1所定圧力以下でかつ0.1気圧以下の第2所定圧力まで低下させる。第2工程では、第2所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行う。また、気圧の上昇を0.01~0.03/10minの圧力勾配で行う。第2工程では、加圧加熱室10を圧力開放下および圧力閉止下で加熱する。
【0018】
第2工程後、第3工程では、室温が100~140℃で第2所定温度以上の第3所定温度になるまで加圧加熱室10を加熱し、気圧を1.5~2.0気圧の所定気圧まで上昇させ、酸素分圧を第1所定圧力以下でかつ0.05気圧以下の第3所定圧力まで低下させる。第3工程では、第3所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行う。また、気圧の上昇を0.01~0.03/10minの圧力勾配で行う。第3工程では、加圧加熱室10を圧力閉止下で加熱する。
第3工程後、第4工程では、室温が130~160℃で第3所定温度以上の第4所定温度になるまで加圧加熱室10を加熱し、気圧を所定気圧に保ち、酸素分圧を第3所定圧力以下でかつ0.02気圧以下の第4所定圧力まで低下させる。第4工程では、加圧加熱室10を圧力開放下で加熱停止する。
【0019】
第4工程後、第5工程では、室温が160~180℃の第5所定温度になるまで加圧加熱室10を加熱し、気圧を所定気圧に保ち、酸素分圧を0.02気圧以下に保つ。第5工程では、第5所定温度になるまでの加熱を温度勾配2~10℃/1minで行う。
第5工程後、200~250℃の所定の温度、例えば220℃で所定時間維持する。その後、気温まで降温させる。降温の際には、開放電磁弁15を作動させ、外気圧を導入して加圧加熱室10の内部を1気圧に保つ。
こうして、寸法安定性、耐朽性に優れた改質木材を製造することができる。
【0020】
木材処理装置1では、制御手段16により、加圧加熱室10の内部に設けられた温度センサ11と圧力センサ12と酸素センサ13との検出値を入力して各検出値に応じてヒーター14および開放電磁弁15を制御し、加圧加熱室10の内部を加熱したり、加圧加熱室10の内部圧力を開放したりすることができる。
木材処理装置1を用いた改質木材製造方法では、加圧加熱室10の内部に木材を配置し、第1工程から第5工程で加圧加熱室10の温度と圧力を制御することによって、減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせずに、加圧加熱室10に配置した木材に効率的に加熱および加圧を行い、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる。
【0021】
図3に示すように、本発明の実施の形態の改質木材製造方法で最も大きな優位性は、製造時間の短縮である。前処理としての脱酸素が必要ないことによって達成されている。酸素の管理は斜線で示している約50~150℃の雰囲気温度の領域で行われる限定的な制御であるが、木材の成分の性質上この温度領域で確実に酸素を制御できれば品質の安定した製品ができる。酸素センサ13を用いて適切な温度領域、圧力領域で酸素分圧の管理を行うことは、有効な手段である。
【0022】
このように、本実施の形態により、製造された改質木材の寸法安定性、耐朽性を付与し、製品歩留りの向上を図ることができる。本実施の形態の改質木材製造方法では、木材に内部割れ等の瑕疵が発生しにくい。
【0023】
(低酸素状態での製造の合理性)
これまでの製造方法では、減圧工程で雰囲気中の酸素比率を低下させた後、加熱工程に移っていた。
図4に、大気中と酸素を不活性ガスで置換した場合とで温度処理した場合の質量減少を示している、当初の質量大幅低下は木材中に存在する水分の除去に伴う減少である。その後、温度が高い方が質量減少が大きく、更に酸素が存在する大気中の方が質量減少が多い。
【0024】
質量減少は木材中の成分が気体等に相転移し、木材中に存在しなくなるために起こる現象である。酸素含有大気中の方が質量減少率は高いことから、酸素には木材質量減少促進性があると考えられる。木材は炭水化物であるため、結合水が無く高エネルギー雰囲気下では酸素と結合すると、CO2およびH2Oに分解し、木材組成を弱体化させると考えられる。
【0025】
木材の構成要素(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)のうち、ヘミセルロースは、180℃近傍から熱分解が始まり、加水分解によって低分子化していく。190℃での製造では木材中のヘミセルロースが分解し、木材組織から除去されることによって質量低下を170℃より多く招いていることを十分説明できる。表1は、それぞれの雰囲気での成分変化についての表であるが、これを見ても190℃におけるヘミセルロースの減少が最も大きい。
【0026】
【0027】
(熱処理と酸素の関係)
空気中で熱処理を行えば、材料が空気に触れて酸化または脱炭し、材料表面に酸化スケール層が形成される。そのため大気状態(大気炉)での熱処理は、熱処理後にピーリング処理(皮むき処理)が必要で、ピーリング処理を前提に寸法設定や切削などの後処理といった手間がかかっていた。その解決策として不活性ガスをはじめとした雰囲気ガスを加熱炉内に充満させ、酸化・脱炭を防ぐ「雰囲気熱処理」が生まれた。
【0028】
脱酸素しないと、表面に炭化層スケールの生成があり、製品の品質が安定しない。酸素と酸化反応温度には、相関関係がある。ヘミセルロースが最も盛んに分解する温度範囲は180℃~300℃、セルロースは240~400℃、リグニンは280~550℃である。これらの温度以下でも雰囲気条件によっては分解反応は起きる。その温度以下で酸素濃度を的確に低下することによって製品の安定化を行う必要がある。
常圧の加熱水蒸気型熱処理では適切に酸素濃度を低下できないため、充分な熱反応ができないため製品の品質が低下する。
【0029】
(本実施の形態と従来技術との比較)
酸素が少ない場合、質量減少が少なく、熱分解が抑えられる。同じ重量減少率の場合、セルロースの結晶化が進み、強度の低下が抑えられる。
【0030】
(木材の熱分解)
木材およびその主要成分は加熱によって、まずその含有水分が失われて乾燥し、絶乾状態になると同時に熱分解が始まる。従って100℃以下でも木材および木材成分は絶乾状態であれば熱分解が始まる。一般に熱抵抗性はヘミセルロースやセルロースのような鎖状構造では長いものほど大きく、またリグニンのような網状構造のものも大きい。
【0031】
加熱処理することにより木材構成要素中のヘミセルロース(βγセルロースのほとんど)を主体と知る低分子糖類が熱分解されてアルカリ溶液で抽出されやすくなり、またフェノール等の抽出成分も加熱温度が高くなるにつれて分解される。
【0032】
酸素がある場合、上記木材構成成分ヘミセルロールの熱による加水分解だけでなく、セルロース及びリグニンの組成についても酸化分解作用があり、木材質量が低下することから木材の強度の低下は大きくなる。このため、先行する技術では酸素の除去を前工程として行うものが多い。
本実施の形態では酸素を除去することなく、密閉容器中に木材を投入し雰囲気内の酸素管理を適切に行いながら熱処理をすることによって、品質の高い製造ができる。
【0033】
(低酸素雰囲気の作成方法)
密閉した容器での雰囲気の状態を温度と圧力および酸素分圧の関係から検討する。
本実施の形態の熱処理木材製造装置は、一例で約5m3の木材を加工することができる。これを例にとって本実施の形態の概要を説明する。
(条件)
・木材の含水率:15%
・木材の比重:0.35(絶乾比重)
・空隙率:77%
・木材の組織比重:1.5 (空隙を取り除いた真体積の比重)
・木材の組成
・セルロース:約50%(重量比)
・ヘミセルロース:約20%(重量比)
・リグニン:約30%(重量比)
・揮発性炭化水素:テルペン類・エステル類等(微量のより無視)
・熱処理化木材の比重:絶乾比重-12%(重量比)
・処理釜の容量:5m3(材の加工量)
・処理釜の直径:2m
・処理釜の長さ:5m
・空間容量(釜容積):15.708m3(釜の間隙・送風管・ヒーター等全体)
・酸素濃度:大気構成成分中の20%
として、検討する。
【0034】
1気圧・100℃以上では、水は相転移し、気体であるから、ボイルシャルルの法則に従う。
よって、1 cm3 の水は、 100℃で1,700 cm3 の水蒸気(気体)(1 mol の水は、30,600 cm3 の水蒸気)になり、ボイルシャルルの法則に従い、1K変化すれば、1/273体積が変化する。
【0035】
本実施の形態の場合、100℃の開放状態に置いて木材の含水が全て気体へと相転移すれば、その量は、446.25m3となり、装置の31.253倍の体積となる。1気圧を保ったまま変化するとすれば、この状態での酸素分圧は、0.006(雰囲気気体構成成分比)となることから、脱酸素をしなくても、雰囲気の変化を管理することによって、低酸素の雰囲気状態を形成し、製品の製造を行うことができうる。この現象を効率的に管理しながら製造することによって減圧工程を除去して製造することが可能となる。
【0036】
[仮定値1]上記の条件より、木材中の水分が水蒸気に相転移した場合の常圧での気体体積等を計算すると以下のようになる。
処理装置容積:15.708m3
処理木材重量:1,750kg
真体積:1.167m3
含水量:263kg(0.263m3)
木材実体積:1.429m3
空間量:14.279m3
含水→水蒸気:446.25m3
空隙倍率:31.253倍
この状態での100℃飽和水蒸気下の酸素分圧: 0.006(0.6%)
【0037】
[仮定値2]木材状態を以下のようにする。
1-1・処理木材の比重
含水率式から
0.15=(M-0.35)/0.35
M=0.4025
1-2・処理材の重量
重量=5,000×0.4025
=2,012.5(kg)
1-3・含まれる水分量
水分量=2,012.5-5,000×0.35
=262.5(kg)
1-4・木材中のヘミセルロース量
=5,000×0.35×0.2
≒350(kg)
1-5・熱処理によるヘミセルロース減少量
=350-5,000×0.35×(1-0.12)×0.08
=226.8(kg)
1-6・木材中の空気量
=5×0.77=3.85(m3)
1-7・木材の熱伝導率=0.08(kcal/mh)
1-8・木材の比熱
C=(26.6+0.116t+u)/(100+u)
U:含水率
T:温度
1-9・廃液量(開放含む・実測概数値)
=16.5L/m3
【0038】
(酸素分圧の変化1)
密閉容器内の圧力を変化することによって酸素分圧変化を示すと、気体の温度による膨張は1Kに対し、1/273であることから、
図5に示すように変化し、酸素分自体は構成が変わらないため、酸素分圧は変化しない。
ここで、圧力容器内を常時1気圧にし、温度による気体の膨張を開放しながら酸素分圧の変化を観察すると、
図6のグラフのようになる。仮定として、木材に含まれる水分がそのままであり、温度と共にボイルシャルルの法則で雰囲気を構成する気体膨張があり、その気圧を1気圧に保つことによるとしている。1気圧を保つためには膨張分を常に放出し続けることになる。当初は20%の酸素分圧も、1K温度が上昇するに従って、雰囲気気体量×1/273の20%分の酸素が放出されて1気圧を保つのであるから、温度上昇と共に酸素分圧は下がっていく。雰囲気温度が185℃以上になると、酸素分圧はほぼ0になる。
【0039】
ここで、水蒸気に着目する。特に飽和水蒸気は1気圧の大気中でも分圧を担っている。この飽和水蒸気分圧の計算はいくつかの計算式があるがここではAntoineの式を用いる。
Ps(kPa)=0.1333*EXP(18.4841-3927.236/(ta+231.405))
気温 ta :℃
飽和水蒸気圧ps:kPa
【0040】
この式の温度による飽和水蒸気圧を計算した結果をプロットしたグラフを
図7に示す。
温度の上昇と共に酸素濃度は低下していく。373Kで飽和水蒸気は1気圧を超え、雰囲気の構成を飽和水蒸気で満たすことができるようになる。その場合、雰囲気中には酸素が含まれない状態になる。常圧状態での酸素分圧に着目したものは、
図8のグラフに示すように、装置内の雰囲気を制御することによって100℃でも酸素の除去は可能となることが示されている。
【0041】
これらの検討から酸素分圧を何らかの方法を用いて下げることなく、密閉容器内で加熱・加圧することによって製品を製造することができると考えられる。
現在行っている製造方法のうち、
・初期の減圧処理
・不活性ガス(N2)充填
を行わず、製品の製造をした。それを適切な大きさの試験体に加工し、屋内腐朽試験を行い、性能の付与が適切に行われているかどうかを確認した。屋内腐朽試験は、日本工業規格JIS K1571に基づいて行った。その結果を表2に示す。
【0042】
表2において、180℃・辺材の大気圧および2kg/cm2は本実施の形態以外の条件で製造した改質木材であり、180℃・辺材の3kg/cm2および220℃・辺材は本実施の形態により製造した改質木材である。
表2に示すとおり、本実施の形態の改質木材は日本工業規格JIS K1571に基づく屋内腐朽試験に合格する性能を有していた。
【0043】
【0044】
昇温および圧力の生成は温度を主体として管理し、生成する圧力になった時に圧力調整バルブを開放し、一定圧力を維持し、製造している。
この製造方法では、酸素の管理は行っていないため、初期の酸素状態および低い温度での製造時には酸素の影響と見られる品質の低下が見られている。一番の原因としては酸素分圧の管理が上げられることから、適正な酸素管理ができれば、これまでの製造のような初期段階での脱酸素工程を行わずに、品質の安定化を図れると考えられる。
【0045】
(酸素センサ)
熱処理木材のような
・1~5気圧の圧力
・150~240℃の温度
の雰囲気状態で温度センサおよび圧力センサに加え、適正に酸素を計測できるセンサを用意し、フィードバック制御を行うことによって適正なスケジュールの確立をする。
【0046】
酸素センサの仕組みは構成材料として気体を感知する固体電解質であるジルコニアを用いる。固体電解質とは固体中でO2-イオンが自由に動ける特性を有する物質であり、この固体電解質の板を壁として両側に白金の電極を有するA室とB室に分け、両室間に酸素濃度差がある場合は濃度の高い側から濃度の低い側へと、酸素イオンがその濃度差を減らす方向に移動する。このO2-の移動はe-の移動で電池の働きをすることになるので起電力が発生する。この原理を利用して酸素濃度を測定する。
【0047】
酸素センサで発生する電圧はネルンストの式によって求めることができる。
E=(R・T/n・F)・ln(P0/P1)
E=4.96×10-6・T・ln(P0/P1)
ここで
E:起電力
R:気体定数(8.3145 J・mol-1・k-1)
T:絶対温度
n:反応に含まれる電子数(この反応ではn=4)
F:ファラデー定数(9.649×104 C・mol-1)
P0:大気酸素分圧
P1:排出ガス酸素分圧
【0048】
本実施の形態の熱処理木材製造装置で用いる場合、
図9で示すように酸素状態と発生する電圧の関係があるが、図に示した斜線部分が制御の重要な部分となる。微細な電圧を含むため電圧増幅オペアンプを複合し、雑音に強い信号を得るような工夫を行っている。入力した信号はリニアに温度センサおよび圧力センサを制御し、所定値と比較することでその状態で適切な温度もしくは圧力の管理を行う。
【0049】
(制御の合理性)
[熱による自然増加圧力と酸素分圧の関係]
本実施の形態では、密閉した容器内に、一定の含水量(約15%程度)の木材を封入し、加熱することによって木材中の水分(含水)の相転移気体(水蒸気)による圧力の上昇および雰囲気気体の膨張により所定の圧力を出現させ製造を行うが、圧力と温度の出現方法が異なる場合、所定圧力に達するまでの雰囲気気体内の酸素分圧に差異が生じる。
(昇圧方法についての検討)
方法として
(1)所定の圧力になるまで開放しないで行う方法
(2)雰囲気温度の上昇に合わせて開放しながら温度と圧力を管理する方法
(3)木材の状態によって適切に管理する方法
がある。
ここで
2気圧(大気圧+1気圧)になるまでの酸素の含有量変化について検討する
条件:大気中の酸素比率:20%
(1)の方法では外部との気体の流動がないことから単純に雰囲気酸素比=10%
(2)については体積膨張は温度により変化することから式として
σO∝∫α・(V0・1/20+V1-vd・1/2)dtm
σO:雰囲気酸素比
α:気体の温度膨張係数
V0:雰囲気の気体
V1:水蒸気分圧量
Vd:開放量
dtm:温度変化
となる
(3)については、
σO∝∫∫α・(V0・1/20+V1-vd・1/2)dtm・dt
ここで
dt:時間変化
となることから、ただ単純に温度を上昇させ雰囲気を所定の圧力にするだけではなく、製品の品質向上のために適切な酸素管理は製造管理について有効である。
【0050】
[水蒸気について]
雰囲気中の水蒸気は飽和水蒸気圧×水蒸気分圧によって求めることができる。
ある温度(T)での水蒸気はワグナーの式を用いれば計算できる
Pws=Pc×exp((A・x+B・x
1.5+C・x
3+D・x
6)/(1-x))
ここで
Pws:[kPa]ワグナーの式による水蒸気圧
Pc :22120[kPa]臨界圧
Tc :647.3[K]臨界温度
T :絶対温度[K]
x :x=1-T/Tc
A :-7.76451
B : 1.45838
C :-2.7758
D :-1.23303
水蒸気分圧量は大気の中に占める水蒸気の重量を示すものである。
飽和水蒸気分圧により酸素分圧の状態は
図8のグラフで示したようになる。
【0051】
以上のことから温度上昇による水蒸気分圧変化および雰囲気を構成する気体の膨張により、計画的に酸素分圧を制御できる領域が存在する。
図10は、制御可能領域酸素分圧を示す。上限は、温度による気体膨張にのみ支配される場合の酸素分圧である。下限の曲線は、飽和水蒸気雰囲気で気圧を常圧に保ちつつ温度を上昇させていく場合の酸素分圧である。この両者の線で囲まれた領域内では、温度および圧力により酸素分圧を制御できる。
【0052】
木材の変質は木材中の水分が無くなった時点から始まる。
図10のグラフに示す制御可能領域では、雰囲気温度が100℃であれば、酸素分圧を0~0.2(気圧)までの領域で制御できる。100℃は常圧での水の沸点であるから、常圧以上の圧力が雰囲気の場合、材中の水分は存在する。
【0053】
木材のヘミセルロースは180℃以上になると加水分解を始めるが、100℃の加熱水蒸気の雰囲気下は充分低い温度であるばかりか、木材中の水分もまだ抜けきってはおらず、酸素分圧もほぼ0.0である。本実施の形態の製造環境では、100℃以下の温度では酸素との結合による質量損失等の材質の低下は見られず、100℃という常圧の水沸点近傍での絶乾になりうる環境においては酸素分圧の制御は有効である。100℃以上の環境温度から木材の劣化が始まると考えられるため、積極的な酸素制御は品質を高めた製造をする上では重要である。
【実施例0054】
図11に実施例の製造スケジュールを示す。圧力は2気圧・最終到達製造温度は220℃・製造時間・6時間のスケジュールにて行った。この場合の製造時間は、減圧工程および不活性気体を注入しないで行われるため、約2時間の製造時間短縮を図ることができた。製造された改質木材は、表2に示すとおり、日本工業規格JIS K1571に基づく屋内腐朽試験に合格する性能を有していた。
【0055】
表2に示した圧力による腐朽度の違いは、酸素管理が不十分だったことから発生している。適切な酸素管理方法を構築し、オンタイム制御をすることによって活性酸素による材質の低下を招くことなく熱処理木材を製造するスケジュールを見い出している。
前記第1工程で前記第1所定温度になるまでの加熱を温度勾配0.5~2℃/2minで行い、前記第2工程で前記第2所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行い、前記第3工程で前記第3所定温度になるまでの加熱を温度勾配1~5℃/1minで行い、前記第5工程で前記第5所定温度になるまでの加熱を温度勾配2~10℃/1minで行うことを、特徴とする請求項1または2記載の改質木材製造方法。
前記第1工程では前記加圧加熱室を圧力開放下で加熱し、前記第2工程では前記加圧加熱室を圧力開放下および圧力閉止下で加熱し、前記第3工程では前記加圧加熱室を圧力閉止下で加熱し、前記第4工程では前記加圧加熱室を圧力開放下で加熱停止することを、特徴とする請求項4記載の改質木材製造方法。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせず、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる改質木材製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る改質木材製造方法は、加圧加熱室の内部に木材を配置し、前記加圧加熱室の室温が50~80℃の第1所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記加圧加熱室の気圧を1気圧に保ち、前記加圧加熱室の酸素分圧を0.2気圧以下の第1所定圧力まで低下させる第1工程と、前記第1工程後、前記室温が50~120℃で前記第1所定温度以上の第2所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を1.5気圧まで上昇させ、前記酸素分圧を前記第1所定圧力以下でかつ0.1気圧以下の第2所定圧力まで低下させる第2工程と、前記第2工程後、前記室温が100~140℃で前記第2所定温度以上の第3所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を1.5~2.0気圧の所定気圧まで上昇させ、前記酸素分圧を前記第1所定圧力以下でかつ0.05気圧以下の第3所定圧力まで低下させる第3工程と、前記第3工程後、前記室温が130~160℃で前記第3所定温度以上の第4所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を前記所定気圧に保ち、前記酸素分圧を前記第3所定圧力以下でかつ0.02気圧以下の第4所定圧力まで低下させる第4工程と、前記第4工程後、前記室温が160~180℃の第5所定温度になるまで前記加圧加熱室を加熱し、前記気圧を前記所定気圧に保ち、前記酸素分圧を0.02気圧以下に保つ第5工程とを、有することを特徴とする。
前記第1所定圧力は0.13気圧以下であることがより好ましい。
本発明によれば、減圧や不活性ガスの注入、含浸剤を必要とせず、改質木材の製造コストの低減と製造時間の短縮を図ることができる改質木材製造方法を提供することができる。