(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010609
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 129
B41J2/01 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111276
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
(72)【発明者】
【氏名】八木 猛
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA04
2C056EC72
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA22
2C056HA42
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】印刷スループットの低下が抑えられ、かつ見た目の違和感が軽減された印刷物を得ることができる新規なインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】本発明に係るインクジェットプリンタは、有色の光硬化性インクを吐出する有色ノズル群と、透明の光硬化性インクを吐出する透明ノズル群と、を備え、記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドが搭載されるキャリッジと、前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方が1回移動するときに、前記有色ノズル群および前記透明ノズル群から所定の領域に光硬化性インクを吐出し、有色画像と、前記有色の光硬化性インクと前記透明の光硬化性インクとが重なるテクスチャ画像と、を形成するように構成された第1吐出制御部を備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、
前記記録媒体の上に吐出された前記光硬化性インクに対して光を照射する光照射部と、
前記インクヘッドが搭載されるキャリッジと、
前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方を他方に対して相対的に第1方向に移動させる移動機構と、
前記インクヘッドと前記光照射部と前記移動機構とを制御する制御部と、
を備え、
前記インクヘッドは、
有色の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第1方向と直交する第2方向に複数設けられた有色ノズル群と、
透明の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第2方向に複数設けられた透明ノズル群と、
を備え、
前記制御部は、前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方が前記第1方向の一方から他方に1回移動するときに、前記有色ノズル群から所定の領域に前記光硬化性インクを吐出すると共に前記透明ノズル群から前記所定の領域に前記光硬化性インクを吐出し、有色画像と、前記有色の光硬化性インクと前記透明の光硬化性インクとが重なるテクスチャ画像と、を形成するように構成された第1吐出制御部を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、
前記記録媒体の上に吐出された前記光硬化性インクに対して光を照射する光照射部と、
前記インクヘッドが搭載されるキャリッジと、
前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方を他方に対して相対的に第1方向に移動させる移動機構と、
前記インクヘッドと前記光照射部と前記移動機構とを制御する制御部と、
を備え、
前記インクヘッドは、
有色の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第1方向と直交する第2方向に複数設けられた有色ノズル群と、
透明の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第2方向に複数設けられた透明ノズル群と、
を備え、
前記制御部は、
前記有色の光硬化性インクを吐出するための有色インク用印刷データと、前記透明の光硬化性インクを吐出するための透明インク用印刷データと、を受信する印刷信号受信部と、
前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方が前記第1方向の一方から他方に1回移動するときに、前記有色インク用印刷データに基づいて前記有色ノズル群から所定の領域に前記光硬化性インクを吐出すると共に、前記透明インク用印刷データに基づいて前記透明ノズル群から前記所定の領域に前記光硬化性インクを吐出し、少なくとも一部の前記有色の光硬化性インクと前記透明の光硬化性インクとが重なって形成されるように構成された第1吐出制御部と、
を備える、インクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、前記記録媒体上の同一の領域に対して、前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方を前記第1方向に複数回移動させることで、前記有色の光硬化性インクと前記透明の光硬化性インクとが厚み方向に混在するテクスチャ画像を形成するように構成されている、
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記第1吐出制御部は、前記有色ノズル群および前記透明ノズル群の前記第2方向に揃った領域に含まれる前記ノズルからそれぞれ前記光硬化性インクを吐出するように、前記インクヘッドを制御するように構成されている、
請求項1から3のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記第1吐出制御部は、前記透明ノズル群の1つの前記ノズルから吐出される前記光硬化性インクの量が、前記有色ノズル群の1つの前記ノズルから吐出される前記光硬化性インクの量よりも多くなるように、前記インクヘッドを制御するように構成されている、
請求項1から4のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記有色ノズル群は、第1の色の前記光硬化性インクを吐出するノズルが前記第2方向に並んで設けられた第1有色ノズル群を有し、
前記透明ノズル群の数は、前記第1有色ノズル群よりも多い、
請求項1から5のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記第1の色は、プロセスカラーのうちのいずれか一色である、
請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記インクヘッドは、
前記光硬化性インクが貯留される圧力室と、前記圧力室と連通する前記ノズルと、が形成された中空のケース本体と、
前記ケース本体に設けられ、前記圧力室を区画する振動板と、
前記振動板に連結され、駆動パルスが供給されると前記圧力室を膨張および収縮させる圧電素子と、
を備え、
前記第1吐出制御部は、
前記ノズルから第1吐出量の前記光硬化性インクを吐出させる第1駆動パルスと、前記ノズルから前記第1吐出量よりも多い第2吐出量の前記光硬化性インクを吐出させる第2駆動パルスと、を記憶する記憶部を備え、
前記有色ノズル群に対して前記第1駆動パルスを供給し、前記透明ノズル群に対して前記第2駆動パルスを供給するように構成されている、
請求項1から7のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性インクを用いるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット方式によって記録媒体上に所望の画像を印刷するインクジェットプリンタが知られている。例えば特許文献1には、有色の紫外線硬化型インク(有色インク)を吐出する第1インクヘッドと、透明の紫外線硬化型インク(クリアインク)を吐出する第2インクヘッドと、記録媒体上に吐出された紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射する紫外線照射装置と、第1インクヘッド、第2インクヘッド、および紫外線照射装置が搭載され、主走査方向に移動自在に設けられたキャリッジと、記録媒体をフィード方向に搬送する搬送装置と、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。
【0003】
特許文献1には、第1インクヘッドのフィード方向前側に位置する第1吐出領域から有色インクを吐出させて、記録媒体の表面に有色画像を形成した後、記録媒体をフィード方向に搬送し、次いで、第2インクヘッドのフィード方向後側に位置する第2吐出領域からクリアインクを吐出させて、有色画像の上に線状のパターンで(凹凸表面を有する)クリア画像を形成するレイヤー印刷の技術が開示されている。特許文献1には、このようなレイヤー印刷によって有色画像の見た目を変化させ、有色画像に装飾性を付与する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、従来、有色インクを用いた有色画像の形成と、クリアインクを用いたクリア画像の形成とは、工程を分けて順番に行われていた。しかし、有色画像とクリア画像とを別々に形成する場合、印刷に時間がかかり、印刷スループットが低下する。また、有色画像の上に凹凸表面のクリア画像を形成することで、印刷物に質感(テクスチャ)の表現、例えば視覚的な変化や触感を付与することができる。しかし、有色画像の上にクリア画像を形成すると、クリア画像が形成された部分と形成されていない部分(例えば有色画像が露出した部分)とで、光沢感(例えば光反射率)に違いが生じうる。このため、ユーザが見た目に違和感を覚えることがあった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷スループットの低下が抑えられ、かつ凹凸による質感は維持しつつ光沢の差による見た目の違和感が軽減された印刷物を得ることができる新規なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、前記記録媒体の上に吐出された前記光硬化性インクに対して光を照射する光照射部と、前記インクヘッドが搭載されるキャリッジと、前記キャリッジとおよび前記記録媒体のいずれか一方とを他方相対的に対して相対的に第1方向に移動させる移動機構と、前記インクヘッドと前記光照射部と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える。前記インクヘッドは、有色の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第1主走査方向と直交する第2副走査方向に複数設けられた有色ノズル群と、透明の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第2副走査方向に複数設けられた透明ノズル群と、を備える。前記制御部は、前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方が前記第1方向の一方から他方に1回移動するときに、前記有色ノズル群から所定の領域に前記光硬化性インクを吐出すると共に前記透明ノズル群から前記所定の領域に前記光硬化性インクを吐出し、有色画像と、前記有色の光硬化性インクと前記透明の光硬化性インクとが重なる テクスチャ画像と、を形成するように構成された第1吐出制御部を備えている。
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、前記記録媒体の上に吐出された前記光硬化性インクに対して光を照射する光照射部と、前記インクヘッドが搭載されるキャリッジと、前記キャリッジとおよび前記記録媒体のいずれか一方とを他方相対的に対して相対的に第1方向に移動させる移動機構と、前記インクヘッドと前記光照射部と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える。前記インクヘッドは、有色の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第1主走査方向と直交する第2副走査方向に複数設けられた有色ノズル群と、透明の光硬化性インクを吐出するノズルが前記第2副走査方向に複数設けられた透明ノズル群と、を備える。前記制御部は、前記有色の光硬化性インクを吐出するための有色インク用印刷データと、前記透明の光硬化性インクを吐出するための透明インク用印刷データと、を受信する印刷信号受信部と、前記キャリッジおよび前記記録媒体のいずれか一方が前記第1方向の一方から他方に1回移動するときに、前記有色インク用印刷データに基づいて前記有色ノズル群から所定の領域に前記光硬化性インクを吐出すると共に、前記透明インク用印刷データに基づいて前記透明ノズル群から前記所定の領域に前記光硬化性インクを吐出し、少なくとも一部の前記有色の光硬化性インクと前記透明の光硬化性インクとが重なって形成されるように構成された第1吐出制御部と、を備える。
【0009】
上記インクジェットプリンタは、1回の走査で、すなわち、キャリッジおよび記録媒体のいずれか一方が他方に対して第1方向の一方から他方に1回移動するときに、有色の光硬化性インクと透明の光硬化性インクとを吐出する。このため、有色の光硬化性インクと透明の光硬化性インクとを別々の走査で吐出する場合に比べて、印刷に要する時間を短縮し、印刷スループットの低下を抑えることができる。また、上記インクジェットプリンタでは、記録媒体上の所定の領域に、有色の光硬化性インクと透明の光硬化性インクとが吐出され、有色の光硬化性インクと透明の光硬化性インクとが重なった画像が形成される。例えば、有色の光硬化性インクからなる有色画像と共に、有色の光硬化性インクと透明の光硬化性インクとが重なったテクスチャ画像が形成される。これにより、例えば特許文献1のレイヤー印刷のように有色画像の上にクリア画像を形成する場合に比べて、透明の光硬化性インクが付与された部分と付与されていない部分との境界が不鮮明になり、表面の光沢感の差異を低減することができる。したがって、凹凸による質感は維持しつつ光沢の差による見た目の違和感が軽減された印刷物を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェットプリンタによれば、印刷スループットの低下を抑えることができる。また、凹凸による質感は維持しつつ光沢の差による見た目の違和感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図である。
【
図5】(A)~(C)は、マルチパス方式で印刷する場合のプリンタの動きを説明する平面図である。
【
図8】テクスチャ画像の変形例を表す平面図および断面図である。
【
図9】模様形状の変形例を表す模式図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図10】模様形状の変形例を表す模式図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図11】模様形状の変形例を表す模式図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図12】模様形状の変形例を表す平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態にかかるインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
また、本明細書において「インクジェットプリンタ」とは、従来公知のインクジェット技術による印刷方法、例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般をいう。また、「プリンタ」には、二次元の画像を印刷する2Dプリンタと、三次元の造形物を造形する3Dプリンタ(三次元造形装置)と、が包含される。
【0014】
図1は、インクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」ということがある。)1の正面図である。プリンタ1は、2Dプリンタである。なお、以下の説明において、左、右、上、下とは、プリンタ1の正面にいるユーザ(プリンタ1の使用者)から見た左、右、上、下をそれぞれ意味し、プリンタ1からユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ、前、後、左、右、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、副走査方向(前後方向)、主走査方向(左右方向)、上下方向を表すものとする。主走査方向は、第1方向の一例であり、副走査方向は、第1方向と直交する第2方向の一例である。また、上下方向は、記録媒体2および画像の厚み方向の一例である。ただし、これらは説明の便宜上定めたものに過ぎず、プリンタ1の設置態様を何ら限定するものではない。
【0015】
プリンタ1は、大判サイズの記録媒体2に対して画像を印刷する大型プリンタである。記録媒体2は、画像が印刷される対象物である。本実施形態において、記録媒体2はロール状の媒体であり、所謂、ロール紙である。ただし、記録媒体2の形態はロール状に限定されない。また、記録媒体2の材質も特に限定されない。記録媒体2は、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、例えば、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の樹脂製のシート、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、木材、ガラス、ゴム等の各種の材料からなる板材、織布や不織布等の布帛、皮革、その他の媒体であってもよい。また、本明細書において「画像」とは、記録媒体2上にインクで形成される層のことであり、その内容は特に限定されない。画像には、文字、数字、記号、図形、絵柄、模様、ベタ塗り等が含まれる。
【0016】
図1に示すように、プリンタ1は、プラテン3と、ガイドレール4と、ケーシング9と、キャリッジ10と、キャリッジ移動機構11と、インクヘッド12と、UVランプ17と、制御部20と、を備えている。ケーシング9は、プリンタ1の筐体である。ケーシング9は、主走査方向Yに延びている。ケーシング9の右端部には、操作パネル9Aが設けられている。操作パネル9Aには、操作状態等を表示する表示部と、ユーザによって操作される入力キー等と、が設けられている。
【0017】
プラテン3は、印刷の際に記録媒体2を支持するものである。プラテン3は、ケーシング9に設けられ、主走査方向Yに延びている。プラテン3は、ガイドレール4よりも下方に配置されている。プラテン3の少なくとも一部は、ガイドレール4と平行に配置されている。プラテン3は、キャリッジ10よりも下方に設けられている。プラテン3には、記録媒体2が載置される。プラテン3の上方には、記録媒体2を上から押さえつけるピンチローラ5Aが設けられている。プラテン3におけるピンチローラ5Aと対向する位置には、グリッドローラ5Bが設けられている。グリッドローラ5Bは、フィードモータ5C(
図4参照)に連結されている。
【0018】
フィードモータ5Cは、制御部20と電気的に接続されており、制御部20によって制御される。グリッドローラ5Bは、フィードモータ5Cの駆動力を受けて回転可能に構成されている。ピンチローラ5Aとグリッドローラ5Bとの間に記録媒体2が挟まれた状態でグリッドローラ5Bが回転すると、記録媒体2が副走査方向(
図1の前後方向)Xに搬送される。本実施形態では、ピンチローラ5Aとグリッドローラ5Bとフィードモータ5Cとが、記録媒体2を副走査方向Xに移動させる搬送機構である。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、搬送機構の構成は特に限定されない。
【0019】
ガイドレール4は、ケーシング9に設けられ、主走査方向Yに延びている。ガイドレール4は、プラテン3よりも上方に配置されている。ガイドレール4には、キャリッジ10がスライド可能に係合している。キャリッジ10は、ケーシング9の内部に配置されている。キャリッジ10には、後述するインクヘッド12とUVランプ17とが搭載されている。キャリッジ10は、キャリッジ移動機構11によって主走査方向Yに移動する。
【0020】
キャリッジ移動機構11は、ガイドレール4の左右に配置されたプーリ6L,6Rと、プーリ6L,6Rに巻き掛けられた無端状のベルト7と、プーリ6Rに連結されたキャリッジモータ8と、を備えている。キャリッジ10は、ベルト7に固定されている。キャリッジモータ8は、制御部20と電気的に接続されており、制御部20によって制御される。キャリッジモータ8が駆動すると、プーリ6Rが回転してベルト7が走行する。これにより、キャリッジ10と、キャリッジ10に搭載されているインクヘッド12およびUVランプ17と、が一体となり、ガイドレール4に沿って主走査方向Y(
図1の左右方向)に移動する。すなわち、キャリッジ10は、主走査方向Yの一方から他方(
図1の左から右)に向かう第1走査方向、および、第1走査方向の逆方向である主走査方向Yの他方から一方(
図1の右から左)に向かう第2走査方向に移動する。キャリッジ移動機構11は、キャリッジ10を主走査方向Yに移動させる移動機構の一例である。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、キャリッジ移動機構11の構成は特に限定されない。
【0021】
図2は、キャリッジ10を下方から見た図である。
図2に示すように、キャリッジ10には、インクヘッド12と、2つのUVランプ17と、が設けられている。主走査方向Yにおいて、インクヘッド12は、2つのUVランプ17に挟まれている。2つのUVランプ17は、インクヘッド12の左右の側方にそれぞれ配置されている。これにより、プリンタ1は、双方向印刷が可能なように構成されている。なお、本実施形態におけるインクヘッド12およびUVランプ17の配置は一例に過ぎず、特に限定されない。
【0022】
インクヘッド12は、記録媒体2に向かって光硬化性インクを吐出して、記録媒体2上にインクのドット31,32(
図7参照)を形成するものである。
図1に示すように、インクヘッド12は、プラテン3よりも上方に配置されている。インクヘッド12は、記録媒体2と対向している。インクヘッド12は、キャリッジ10を介してガイドレール4にスライド可能に係合している。インクヘッド12は、有色の光硬化性インク(以下、単に「有色インク」ということがある。)を吐出する第1サブヘッド121と、透明の光硬化性インク(以下、単に「クリアインク」ということがある。)を吐出する第2サブヘッド122と、を有している。第1サブヘッド121と第2サブヘッド122とは、主走査方向Yに並設されている。本実施形態において、第1サブヘッド121と第2サブヘッド122とは、同じキャリッジ10に搭載されている。ただし、第1サブヘッド121と第2サブヘッド122とは、必ずしも同じキャリッジ10に搭載されている必要はなく、別々のキャリッジに搭載されていてもよい。
【0023】
なお、本明細書において「クリアインク」とは、着色剤(可視光領域の波長の光を吸収する成分)を含まないか、あるいは含んでいても着色を目的としない程度である(例えば、着色剤がインク全体の略0.1質量%以下)であるインクをいい、「有色インク」とは、クリアインクを除くインク全般、典型的には着色剤を含むインク全般をいう。
【0024】
第1サブヘッド121は、着色剤を含んだ有色インクL(
図3参照)、例えばカラーインクやメタリックインクを吐出して、有色画像42およびテクスチャ画像44(
図6参照)を印刷可能なように構成されている。本実施形態において、第1サブヘッド121は、シアンインク(C)を吐出する1つのヘッド部12Cと、マゼンタインク(M)を吐出する1つのヘッド部12Mと、イエローインク(Y)を吐出する1つのヘッド部12Yと、ブラックインク(K)を吐出する1つのヘッド部12Kと、ホワイトインク(W)を吐出する2つのヘッド部12Wと、を備えている。このうち4つのヘッド部12C,12M,12Y,12Kは、プロセスカラーインクを吐出するヘッド部である。
【0025】
6つのヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wは、主走査方向Yに並設されている。ただし、本実施形態における第1サブヘッド121のヘッド部の個数や着色剤の種類は一例に過ぎず、特に限定されない。第1サブヘッド121のヘッド部は、例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、ライトブラック等のライトカラーを吐出するものであってもよいし、シルバーやゴールド等のメタリック顔料を含んだメタリックインクを吐出するものであってもよい。また、ホワイトインクを吐出するヘッド部12Wは、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。第1サブヘッド121は、ヘッド部12Wを備えていなくてもよい。6つのヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wは、それぞれ有色インクLを貯留するインクタンク(図示せず)に連結されている。
【0026】
第2サブヘッド122は、クリアインク、例えば画像の表面に光沢を付与するためのグロスインクや画像の下地または裏地を形成する前処理用のプライマーインクを吐出して、テクスチャ画像44(
図6参照)を印刷可能なように構成されている。本実施形態において、第2サブヘッド122は、グロスインクを吐出する2つのヘッド部12CLを備えている。2つのヘッド部は、主走査方向Yに並設されている。ただし、本実施形態における第2サブヘッド122のヘッド部の個数は一例に過ぎず、特に限定されない。例えば、第2サブヘッド122のヘッド部は、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。2つのヘッド部12CLは、クリアインクを貯留するインクタンク(図示せず)に連結されている。
【0027】
なお、本実施形態における第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の配置は一例に過ぎず、特に限定されない。また、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122のうちの少なくとも一方は、複数であってもよい。例えば、主走査方向Yにおいて、複数の第1サブヘッド121の間に第2サブヘッド122が配置されていてもよいし、第1サブヘッド121の両側に複数の第2サブヘッド122が配置されていてもよい。より具体的には、主走査方向Yにおいて、ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのいずれかの間に、ヘッド部12CLが配置されていてもよいし、ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wの両側にヘッド部12CLが配置されていてもよい。
【0028】
第1サブヘッド121および第2サブヘッド122からは、光硬化性インクが吐出される。光硬化性インクは、光が照射されると硬化する性質を有する。光硬化性インクは、典型的には、光重合性化合物と、光重合開始剤と、有機溶剤と、を含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、顔料や染料等の着色剤、光増感剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤等を含み得る。光硬化性インクは、ここでは紫外線(波長:10~400nm)が照射されると硬化する性質を有する紫外線硬化インク(UVインク)である。
【0029】
好適な一態様では、有色インクLとクリアインクとが、同種類の光重合性化合物を含む。例えば有色インクLとクリアインクとが、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーを含むとよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、「メタクリロイル」および「アクリロイル」を包含する用語である。また、他の好適な一態様では、有色インクLとクリアインクとが、同種類の有機溶剤を含む。例えば有色インクLとクリアインクとが、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類を含むとよい。詳しくは後述するが、本実施形態のプリンタ1は、記録媒体2上に有色インクLのドット31(
図7参照)とクリアインクのドット32(
図7参照)とを、少なくとも主走査方向Yに混在させた状態で硬化するように構成されている。有色インクLとクリアインクとが同種類の化合物、例えば、光重合性化合物および有機溶剤のうちの少なくとも一方を含むことで、有色インクLとクリアインクとの親和性が高まり、記録媒体2上で一体的に定着し易くなる。
【0030】
図2に示すように、複数のヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLは、それぞれ、記録媒体2と対向する側の面(本実施形態では下面)に、光硬化性インクを吐出する複数のノズル13を備えている。本実施形態において、複数のヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLの複数のノズル13は、全て同じ個数である。ただし、ノズル13の個数は、ヘッド部の一部または全部で相互に異なっていてもよい。複数のノズル13は、ドット31,32(
図7参照)の形成密度に対応した所定のピッチ(例えば360dpi)で配列されている。複数のヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLにおいて、複数のノズル13は、全て同じピッチで配列されている。
【0031】
本実施形態において、複数のヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLのノズル13は、全て同じ直径である。ただし、ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル13と、ヘッド部12CLのノズル13とは、同じ直径であってもよく、異なる直径であってもよい。例えば、ヘッド部12CLのノズル13の直径が、ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル13よりも大きくてもよい。
【0032】
本実施形態において、複数のヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLは、副走査方向Xに揃った位置に配置されている。ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wの複数のノズル13と、ヘッド部12CLの複数のノズル13とは、副走査方向Xに揃った位置に配置されている。各ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLは、複数のノズル13が副走査方向Xに長さL1で揃ったノズル列13Aを有する。ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル列13Aは、有色ノズル群の一例であり、ヘッド部12CLのノズル列13Aは、透明ノズル群の一例である。
【0033】
本実施形態において、プロセスカラーのうちのいずれか一色を吐出する4つのヘッド部12C,12M,12Y,12Kのノズル列13Aの数は、それぞれ1つである。ホワイトインクを吐出するヘッド部12Wのノズル列13Aの数は、ヘッド部12C,12M,12Y,12Kのそれぞれよりも多く、ここでは2つである。また、クリアインクを吐出するヘッド部12CLのノズル列13Aの数は、ヘッド部12C,12M,12Y,12Kのそれぞれよりも多く、ここでは2つである。クリアインクを吐出するヘッド部12CLのノズル列13Aの数は、ホワイトインクを吐出するヘッド部12Wのノズル列13Aの数と同じである。プロセスカラーは、第1の色の一例であり、ヘッド部12C,12M,12Y,12Kのノズル列13Aは、第1有色ノズル群の一例である。
【0034】
各ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLのノズル列13Aは、副走査方向Xに同じ長さL1で配置されている。長さL1は、複数のノズル13のなかで副走査方向Xの最も前方に位置するノズル(最前ノズル)13の中心から最も後方に位置するノズル(最後ノズル)13の中心までの長さである。本実施形態において、各ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLでは、複数のノズル13が副走査方向Xに一直線上に並んで、長さL1のノズル列13Aを構成している。ただし、ノズル列13Aにおけるノズル13の配置や個数は特に限定されない。複数のノズル13は、例えば千鳥状に配列されていてもよい。
【0035】
図3は、ヘッド部12Cの一部の鉛直断面図である。詳しくは、ヘッド部12Cの1つのノズル13の中心を通る鉛直断面図である。
図3に示すように、ヘッド部12Cは、中空のケース本体14と、ケース本体14に形成され、所定量の有色インクLが貯留される圧力室15と、圧力室15内の有色インクLを加圧するアクチュエータ16と、を有している。圧力室15の一面(
図3の下面)には、上下方向Zに貫通したノズル孔13hが形成されている。圧力室15は、ノズル孔13hを介してノズル13に繋がっている。
【0036】
アクチュエータ16は、圧電素子を有する。アクチュエータ16は、圧力室15の一部を仕切る振動板14Vに連結されている。アクチュエータ16は、制御部20と電気的に接続されており、制御部20によって制御される。制御部20は、アクチュエータ16に対し、所定量のインクを吐出させるためのパルス波形(駆動パルス)を供給する。アクチュエータ16は、駆動パルスの波形に応じて収縮または伸長する。これによって振動板14Vが撓み、圧力室15が膨張または収縮することで、圧力室15内の有色インクLが加圧される。圧力室15内の有色インクLが加圧されることにより、ノズル13から有色インクLが吐出される。なお、ここではヘッド部12Cを例に説明したが、その他のヘッド部12M、12Y、12K、12W、12CLについても、同じ構成であってよい。
【0037】
UVランプ17は、記録媒体2上に吐出された光硬化性インクに向かって紫外線を照射するものである。
図1に示すように、UVランプ17は、プラテン3よりも上方に配置されている。UVランプ17は、キャリッジ10を介してガイドレール4にスライド可能に係合している。UVランプ17は、光硬化性インクを硬化可能な紫外線波長の光を照射するように構成されている。UVランプ17は、例えばLED(Light Emitting Diode)であってもよいし、蛍光灯(低圧水銀灯)方式や高圧水銀灯方式であってもよい。UVランプ17は、光照射部の一例である。なお、UVランプ17は、必ずしもインクヘッド12と同じキャリッジ10に搭載されている必要はなく、例えばキャリッジ10とは別のキャリッジに搭載されていてもよく、ケーシング9の壁面等に取り付けられていてもよい。UVランプ17は、制御部20と電気的に接続されており、制御部20によって点灯(ON)と消灯(OFF)とが制御される。
【0038】
制御部20は、プリンタ1の全体の動作を制御するものである。
図1に示すように、本実施形態において、制御部20は、ケーシング9の内部に設けられている。制御部20は、例えばマイクロコンピュータである。ただし、制御部20は、必ずしもケーシング9の内部に設けられている必要はなく、例えば、ケーシング9の外部に配置され、プリンタ1と通信可能に接続された汎用のパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0039】
制御部20のハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0040】
図4は、制御部20の機能ブロック図である。制御部20は、フィードモータ5Cと、キャリッジ移動機構11のキャリッジモータ8と、インクヘッド12のアクチュエータ16と、UVランプ17と、に通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御部20は、印刷信号受信部21と、フィード制御部22と、スキャン制御部23と、吐出制御部24と、照射制御部25と、記憶部26と、を備えている。制御部20の各部は、相互に通信可能に構成されている。制御部20の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御部20の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれたものであってもよい。
【0041】
詳しくは後述するが、制御部20は、フィード制御部22による搬送動作と、スキャン制御部23、吐出制御部24および照射制御部25による印刷動作(パス)と、を交互に繰り返し行うことで、記録媒体2に対して印刷を行う。これにより、記録媒体2上に、有色画像42(
図6参照)およびテクスチャ画像44(
図6参照)を形成する。なお、本明細書において「テクスチャ画像」とは、記録媒体2の上に、有色インクのみで形成された有色画像42よりも大きな凹凸(表面粗さ)となるように形成された画像をいう。記録媒体2上にテクスチャ画像44を形成することで、印刷物40(
図6参照)の表面、例えば、記録媒体2や有色画像42に質感を付与することができる。
【0042】
また、本明細書において「印刷動作」とは、キャリッジ10を主走査方向Yに移動させながら、インクヘッド12から記録媒体2上に光硬化性インクを吐出すると共に、記録媒体2上の光硬化性インクに対してUVランプ17から紫外線を照射する動作のことをいう。また、1回の印刷動作とは、主走査方向Yの一方から他方(
図1の左から右)または主走査方向Yの他方から一方(
図1の右から左)へ、1回移動する動作のことをいう。
【0043】
印刷信号受信部21は、ホストコンピュータ等の図示しない外部機器から、印刷データと印刷設定情報とを受信する制御部である。印刷データは、画像を表すデータであり、例えばコンピュータ等で作成した様々な形式の画像ファイルを、ラスターイメージプロセッサー(Raster Image Processor)等のコンピュータプログラムでプリンタ1が読み込み可能な形式に変換(ラスタライズ)することによって作成される。印刷データは、例えばラスター形式のデータである。印刷データでは、印刷可能領域のなかの各印刷領域(例えばピクセル単位)に、どの種類の光硬化性インクを付与するかが関連付けられている。
【0044】
本実施形態において、印刷データは、有色インクLを付与する有色インク付与領域が設定された有色インク用印刷データと、クリアインクを付与するクリアインク付与領域が設定された透明インク用印刷データと、を含んでいる。有色インク用印刷データは、有色画像42(
図6参照)とテクスチャ画像44(
図6参照)とを形成するためのものである。透明インク用印刷データは、テクスチャ画像44を形成するためのものである。有色インク用印刷データと透明インク用印刷データとは、例えば印刷開始位置を基準として重ね合わせられた(合成された)状態で外部機器から送信されてもよいし、別個独立した状態で別々に外部機器から送信されてもよい。
【0045】
透明インク用印刷データは、予め用意された複数の模様の中からユーザが任意に選択可能にであってもよい。透明インク用印刷データは、繰り返し模様で構成される規則的なパターン等であってもよい。透明インク用印刷データにおいて、クリアインク付与領域は、印刷可能領域の全体であってもよく、一部であってもよい。クリアインク付与領域は、有色インク付与領域と記録媒体2上の位置(平面視での位置)が重なっていてもよく、重なっていなくてもよい。
【0046】
印刷設定情報は、各印刷領域におけるインクの吐出設定を含んでいる。インクの吐出設定は、例えば、記録媒体2の単位面積あたりについてノズル13から吐出するインクの液量、形成するドット31,32(
図7参照)の寸法(平面視での大きさおよび厚み)、ドット31,32の形成密度の情報、のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0047】
クリアインクのドット32(
図7参照)の寸法は、クリアインク付与領域の全体で同じに設定されていてもよいし、例えば有色画像42(
図6参照)が印刷される部分と有色画像42が印刷されない部分とにわたってクリアインク付与領域が設定されている場合には、有色画像42が印刷される部分と有色画像42が印刷されない部分とで異なる寸法に設定されていてもよい。例えば、有色画像42が印刷されない部分で所定の第1の寸法に設定され、有色画像42が印刷される部分で、所定の第1の寸法よりも相対的に大きな第2の寸法に設定されていてもよい。また、有色画像42が印刷される部分のなかで、様々な寸法に設定されていてもよい。
【0048】
ドットの形成密度は、所定の領域内の画素(単位画素数)において、ドットが形成される画素の割合である。クリアインクのドット32(
図7参照)の形成密度は、クリアインク付与領域の全体で同じに設定されていてもよいし、例えば有色画像42が印刷される部分と有色画像42が印刷されない部分とにわたってクリアインク付与領域が設定されている場合には、有色画像42が印刷される部分と有色画像42が印刷されない部分とで異なる形成密度に設定されていてもよい。例えば、有色画像42が印刷されない部分で所定の第1の形成密度に設定され、有色画像42が印刷される部分で、所定の第1の形成密度よりも相対的に高い第2の形成密度に設定されていてもよい。
【0049】
フィード制御部22は、搬送動作の制御を行う。フィード制御部22は、記録媒体2の副走査方向Xへの移動を制御する制御部である。フィード制御部22は、フィードモータ5Cの駆動を制御する。フィード制御部22は、フィードモータ5Cの制御を介して、記録媒体2を、例えば副走査方向Xの上流側(後方)から下流側(前方)に順次搬送する。フィード制御部22は、記録媒体2を所定の搬送幅ずつ前方に送り出す。搬送幅は、インクヘッド12のノズル列13Aの副走査方向Xの長さL1以下の距離である。搬送幅は、予め設定されているものであり、記憶部26に記憶されていてもよい。搬送幅は、例えば、ノズル列13Aの長さL1の1/2、1/4、1/8、1/16等である。
【0050】
スキャン制御部23は、印刷動作の制御を行う。スキャン制御部23は、キャリッジ10の主走査方向Yへの移動を制御する制御部である。スキャン制御部23は、キャリッジモータ8の駆動を制御する。スキャン制御部23は、キャリッジモータ8の制御を介して、キャリッジ10を、主走査方向Yの一方から他方(
図1の左から右)に向かう第1走査方向と、主走査方向Yの他方から一方(
図1の右から左)に向かう第2走査方向と、に移動(走査)させる。スキャン制御部23は、フィード制御部22によって記録媒体2が前方に1回送り出される毎に、キャリッジ10を主走査方向Yに1回または複数回移動(走査)させる。
【0051】
記憶部26には、所定量のインクを吐出させるための複数のパルス波形(駆動パルス)を含んだ共通駆動信号が予め記憶されている。共通駆動信号は、例えば、寸法の異なる3種類のドット、例えば、小ドット、中ドット、大ドットを形成可能なように構成されていてもよい。共通駆動信号は、1つのドットを形成するための時間として予め設定された単位時間(駆動周期)に、それぞれ1つまたは2つ以上の駆動パルスを含む小ドット用駆動信号、中ドット用駆動信号、および大ドット専用駆動信号を生成可能に構成されていてもよい。複数の駆動パルスのうちの少なくとも一部は、アクチュエータ16の電圧を降下させて圧力室15を膨張させる波形要素と、降下させた電圧を維持して圧力室15の膨張している状態を保つ波形要素と、維持された電圧を上昇させて圧力室15を収縮させる波形要素と、を含む波形であってもよい。
【0052】
吐出制御部24は、印刷動作の制御を行う。吐出制御部24は、印刷データに基づいて、インクヘッド12(第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の少なくとも一方)から光硬化性インクを吐出して、記録媒体2上に画像を形成する制御部である。制御部20は、アクチュエータ16に対して、駆動パルスを供給する。詳しくは、吐出制御部24は、駆動周期内に、共通駆動信号に含まれる駆動パルスのなかから形成するドットの寸法等に応じて1つまたは2つ以上の駆動パルスを選択し、アクチュエータ16に供給する。選択する駆動パルスによって、ノズル13から吐出される光硬化性インクの液量が変わり、記録媒体2上に形成されるドットの寸法が決定される。
【0053】
本実施形態において、吐出制御部24は、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122からインクを吐出する第1吐出制御部241と、第1サブヘッド121のみからインクを吐出する、言い換えれば、第2サブヘッド122からはインクを吐出しない第2吐出制御部242と、第2サブヘッド122のみからインクを吐出する、言い換えれば、第1サブヘッド121からはインクを吐出しない第3吐出制御部243と、を備えている。
【0054】
第1吐出制御部241は、1回の印刷動作のなかで(すなわち、キャリッジ10が第1走査方向または第2走査方向に1回移動するときに)、主走査方向Yの少なくとも一部において、2種類のインクを同時に吐出する、具体的には、第1サブヘッド121のノズル13から有色インクLを吐出すると共に、第2サブヘッド122のノズル13からクリアインクを吐出する制御部である。すなわち、第1吐出制御部241は、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122のアクチュエータ16に対して、それぞれ駆動パルスを供給する。本実施形態において、第1吐出制御部241は、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の少なくとも主走査方向Yに隣り合うアクチュエータ16に対して、それぞれ駆動パルスを供給する。これにより、1回の印刷動作で、記録媒体2上の同一の領域に、有色インクLとクリアインクとが吐出される。
【0055】
本実施形態において、第1吐出制御部241は、有色インクLからなる有色画像42(
図6参照)と、有色インクLとクリアインクとが混在するテクスチャ画像44(
図6参照)と、を形成するように構成されている。テクスチャ画像44の形成された領域(例えばクリアインク付与領域)は、テクスチャ画像44の形成されていない領域(例えば有色インクLからなる有色画像42の領域)と比較して、相対的に大きな凹凸(表面粗さ)を示す。これにより、印刷物40(
図6参照)の表面に質感を付与することができる。なお、有色画像42の表面も完全な平らではないが、その表面粗さ(例えば、JIS B0601:2013年に基づく最大高さRz)は、概ね0.01mm以内である。テクスチャ画像44の形成された領域の算術平均粗さRa(JIS B0601:2013年に基づく値。以下同じ。)は、典型的には有色インクLからなる有色画像42の最大高さRzよりも大きく、好ましくは有色画像42の最大高さRzの2倍以上、3倍以上、5倍以上であって、例えば20倍以下、10倍以下であってもよい。
【0056】
テクスチャ画像44(
図6参照)は、典型的には記録媒体2の表面に直接形成されている。ただし、例えば有色画像42(
図6参照)の表面に形成されていてもよい。いくつかの実施形態において、テクスチャ画像44は、繰り返し模様で構成される規則的なパターンであってもよい。テクスチャ画像44は、例えば1つまたは複数の模様形状30(
図7参照)が所定のピッチP(隣り合う模様形状30の両端の離間距離、
図7参照)で散点状に複数配置された規則的なパターンであってもよい。また、いくつかの実施形態において、テクスチャ画像44は、規則的パターンではなく、任意の方向に配向もされず、ランダムな模様であってもよい。また、いくつかの実施形態において、テクスチャ画像44は、所定の図形で構成される幾何学模様であってもよい。テクスチャ画像44を幾何学模様とすることで、印刷物40(
図6参照)の見た目を効果的に変化させることができる。
【0057】
本実施形態では、模様形状30(
図7参照)の形状や大きさ、配置等を調整することで、印刷物40(
図6参照)の表面の質感(例えば見た目や触感)にバリエーションを持たせることができる。言い換えれば、模様形状30の形状や大きさ、配置等は、所望の質感が実現されるように適宜調整するとよい。このため、特に限定されるものではないが、模様形状30の外形は、例えば、山型状、円錐状、多角錐状等であってもよい。平面視において、模様形状30は、例えば、線形や、球形、楕円形等の円形、あるいは、三角形、四角形、五角形等の多角形であってもよい。断面視において、模様形状30は、中央部が上方に突出した形状(例えばドーム状や三角形状)や、中央部が窪んだすり鉢状であってもよい。
【0058】
模様形状30の直径Φ(模様形状30が多角形状の場合は円相当径、
図6、
図7参照)は、例えば0.05~0.5mmであってもよい。模様形状30の高さH(最大高さ、
図7参照)は、例えば0.02~0.1mmであってもよい。複数の模様形状30の高さHの平均(平均高さ)は、典型的には有色画像42の最大高さRzよりも大きく、好ましくは有色画像42の最大高さRzの2倍以上、3倍以上、5倍以上であって、例えば20倍以下、10倍以下であってもよい。模様形状30間のピッチP(
図6、
図7参照)は、例えば0.1~1.0mmであってもよい。上記のうちの少なくとも1つを満たすことで、美しい外観を維持したまま、際立った質感(例えば触感)を付与することができる。
【0059】
記録媒体2の単位面積あたりに吐出するインクの液量は、例えば、使用するヘッド部の個数や、印刷設定情報のドット31,32の寸法や形成密度、インクヘッド12の駆動パルス等によって制御しうる。例えば、第1吐出制御部241は、2つのヘッド部12CLからそれぞれクリアインクを吐出するように第2サブヘッド122を制御してもよい。また、第1吐出制御部241は、第2サブヘッド122の1つのノズル13から吐出されるクリアインクの液量が、第1サブヘッド121の1つのノズル13から吐出される有色インクLの液量よりも多くなるように、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122を制御してもよい。また、共通駆動信号に第1吐出量のインクを吐出させる第1駆動パルスと第1吐出量よりも多い第2吐出量のインクを吐出させる第2駆動パルスとが含まれている場合に、第1吐出制御部241は、第1サブヘッド121に対して第1駆動パルスを供給し、第2サブヘッド122に対して第2駆動パルスを供給してもよい。
【0060】
本実施形態において、第1吐出制御部241は、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の副走査方向Xに揃った領域のノズル13からそれぞれインクを吐出するように構成されている。すなわち、第1吐出制御部241は、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122のノズル列13Aのうち、少なくとも所定の長さで揃った部分からそれぞれインクを吐出するように構成されている。
【0061】
第1吐出制御部241は、例えばノズル列13Aを副走査方向Xに複数のノズル領域に分割して、そのうちの主走査方向Yに隣り合う1つまたは複数のノズル領域に含まれるノズル13からそれぞれインクを吐出するように構成されていてもよい。このとき、第1サブヘッド121のノズル領域と第2サブヘッド122のノズル領域とは、少なくとも一部が副走査方向Xに揃っているとよい。ただし、副走査方向Xの長さは、相互に異なっていてもよい。また、第1吐出制御部241は、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の長さL1のノズル列13A全体から、それぞれインクを吐出するように構成されていてもよい。
【0062】
第2吐出制御部242は、1回の印刷動作のなかで(すなわち、キャリッジ10が第1走査方向または第2走査方向に1回移動するときに)、第1サブヘッド121のノズル13から有色インクLを吐出して有色画像42(
図6参照)のみを形成する制御部である。第3吐出制御部243は、1回の印刷動作のなかで(すなわち、キャリッジ10が第1走査方向または第2走査方向に1回移動するときに)、第2サブヘッド122のノズル13からクリアインクを吐出してテクスチャ画像44(
図6参照)のみを形成する制御部である。ただし、第2吐出制御部242および/または第3吐出制御部243は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0063】
照射制御部25は、印刷動作の制御を行う。照射制御部25は、吐出制御部24の制御によって記録媒体2上に吐出された光硬化性インクに対して光を照射し、光硬化性インク(有色インクLおよびクリアインク)を硬化させる制御部である。照射制御部25は、UVランプ17の点灯および消灯を制御する。照射制御部25は、例えば吐出制御部24の制御によってインクヘッド12から光硬化性インクを吐出しながら、または、インクヘッド12から光硬化性インクを吐出しない状態で、キャリッジ10が主走査方向Yに移動するときに、UVランプ17を点灯させて、記録媒体2上の光硬化性インクに紫外線を照射する。
【0064】
上述の通り、プリンタ1は、搬送動作と印刷動作とを交互に繰り返し行うことで、記録媒体2に対して印刷を行う。第1吐出制御部241を用いて記録媒体2上に有色画像42(
図6参照)とテクスチャ画像44(
図6参照)とを形成する場合、1回の印刷動作の間(キャリッジ10が主走査方向Yの一方向に1回移動する間)に、主走査方向Yの少なくとも一部において、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の少なくとも副走査方向Xに隣り合ったノズル13からインクが吐出される。詳しくは、第1サブヘッド121のノズル13から有色インクLが吐出され、第2サブヘッド122のノズル13からクリアインクが吐出される。ノズル13から吐出された有色インクLおよびクリアインクは、共に、記録媒体2の所定の領域に着弾する。ここで「所定の領域」とは、主走査方向Yの一方向に1回移動する間に第1サブヘッド121のノズル13と第2サブヘッド122のノズル13との両方からインクが吐出できる共通の領域をいう。次に、照射制御部25は、UVランプ17を点灯させて、記録媒体2に着弾した未硬化の有色インクLおよびクリアインクに対して、紫外線を照射する。これによって、有色インクLおよびクリアインクを硬化させる。
【0065】
例えば
図2のようなインクヘッド12を備えたプリンタ1を用い、1回の印刷動作(1パス)において、有色インクL、クリアインクの順にインクを吐出することで、所定の領域で、記録媒体2上に有色インクLのドット31(
図7参照)が形成され、有色インクLのドット31の上に透明インクのドット32(
図7参照)が形成される。これとは逆に、1回の印刷動作(1パス)において、所定の領域で、クリアインク、有色インクLの順にインクを吐出することで、記録媒体2上に透明インクのドット32が形成され、透明インクのドット32の上に有色インクLのドット31が形成される。これにより、所定の領域では、ドット31,32が上下方向Z(厚み方向)に積層され、テクスチャ画像44(
図6参照)が形成されうる。以上のようにして、記録媒体2上に有色画像42(
図6参照)とテクスチャ画像44(
図6参照)とが形成される。
【0066】
本実施形態において、プリンタ1は、記録媒体2の印刷領域のうちの同一の印刷領域をキャリッジ10が複数回移動することで印刷を行う、所謂、マルチパス方式によって印刷を行うように構成されている。以下、
図5を参照しつつ、2パスで印刷を行う場合を例に、プリンタ1の動作を説明する。なお、
図5では、説明を簡略化するために、一部のノズル列13Aを省略した状態で示している。また、
図5では、各ノズル列13Aを副走査方向Xに2分割して、上流側(後方)から順に分割ノズル列131、132と表している。本実施形態では、ノズル列13Aの長さL1をパス数である2で割った値(L1/2)を記録媒体2の1回の搬送幅として、記録媒体2の同一の印刷領域をキャリッジ10が2回移動する。
【0067】
図5(A)は1回目の印刷動作を表している。
図5(A)に示すように、1回目の印刷動作では、キャリッジ10が主走査方向Yの一方向(
図5(A)の右から左に向かう矢印S1の方向)へ移動すると共に、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の分割ノズル列131からそれぞれインクが吐出される。詳しくは、記録媒体2のパス印刷領域A1に対して、第1サブヘッド121の分割ノズル列131から有色インクLが吐出され、第2サブヘッド122の分割ノズル列131からクリアインクが吐出される。さらに、UVランプ17からは紫外線が照射される。1回目の印刷動作の後、矢印Feで示すように、記録媒体2を、副走査方向Xの下流側に、L1/2の搬送幅で搬送させる搬送動作が行われる。この搬送動作により、パス印刷領域A1が分割ノズル列131よりも下流側に移動する。1回目の搬送動作の後、2回目の印刷動作が行われる。
【0068】
図5(B)は2回目の印刷動作を表している。
図5(B)に示すように、2回目の印刷動作では、キャリッジ10が主走査方向Yの一方向(
図5(B)の左から右に向かう矢印S2の方向)へ移動すると共に、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の分割ノズル列131、132からそれぞれインクが吐出される。詳しくは、記録媒体2のパス印刷領域A1に対して、第1サブヘッド121の分割ノズル列132から有色インクLが吐出され、第2サブヘッド122の分割ノズル列132からクリアインクが吐出される。さらに、UVランプ17からは紫外線が照射される。これにより、パス印刷領域A1では、インクのドットが上下方向Zに積層され、有色画像42とテクスチャ画像44とが形成される。また、記録媒体2のパス印刷領域A2に対して、第1サブヘッド121の分割ノズル列131から有色インクLが吐出され、第2サブヘッド122の分割ノズル列131からクリアインクが吐出される。さらに、UVランプ17からは紫外線が照射される。2回目の印刷動作の後、矢印Feで示すように、1回目と同様、搬送動作が行われる。この搬送動作により、パス印刷領域A2が分割ノズル列131よりも下流側に移動する。2回目の搬送動作の後、3回目の印刷動作が行われる。
【0069】
図5(C)は3回目の印刷動作を表している。
図5(C)に示すように、3回目の印刷動作では、キャリッジ10が主走査方向Yの一方向(
図5(C)の右から左に向かう矢印S1の方向)へ移動すると共に、第1サブヘッド121および第2サブヘッド122の分割ノズル列132からそれぞれインクが吐出される。詳しくは、記録媒体2のパス印刷領域A2に対して、第1サブヘッド121の分割ノズル列132から有色インクLが吐出され、第2サブヘッド122の分割ノズル列132からクリアインクが吐出される。さらに、UVランプ17からは紫外線が照射される。これにより、パス印刷領域A2では、インクのドットが上下方向Zに積層され、有色画像42とテクスチャ画像44とが形成される。
【0070】
図6は、プリンタ1によって得られる印刷物40を表す模式的な平面図であり、
図7は、
図6の一部分を拡大した部分断面図である。
図6に示す印刷物40は、記録媒体2と、有色画像42と、テクスチャ画像44と、を含んでいる。平面視において、有色画像42とテクスチャ画像44とは、それぞれ印刷物40の表面に露出している。テクスチャ画像44は、有色画像42に重なるように形成されている。
【0071】
図6に示すように、テクスチャ画像44は、複数の同一形状の模様形状30が所定のピッチPで規則的に配置されたパターンである。各模様形状30の外周は、ここでは有色画像42に囲まれている。各模様形状30の周縁は、有色画像42と接している。模様形状30は、平面視において円形である。
図7に示すように、模様形状30は、断面視においてドーム状である。模様形状30の直径Φは、ここでは0.1mmであり、模様形状30の高さHは、ここでは0.05mmである。また、隣り合う模様形状30間のピッチPは、ここでは0.1mmである。
【0072】
図7に示すように、模様形状30はインクの複数のドットの集合体である。詳しくは、模様形状30は、1つまたは複数の有色インクLのドット31と、1つまたは複数のクリアインクのドット32と、の集合体である。模様形状30は、ここでは、複数の有色インクLのドット31と、複数のクリアインクのドット32と、を含んでいる。模様形状30の部分において、ドット31,32は、それぞれ、記録媒体2の表面(インクヘッド12と対向する側の面)と接している。本実施形態では、主走査方向Yおよび上下方向Zにおいて、ドット31,32は、散らばって(まばらに)配置されている。ドット31,32は、主走査方向Yおよび上下方向Zに混在している。主走査方向Yおよび上下方向Zにおいて、ドット31,32は、それぞれ、非連続的に、例えばドット状(島状)に配置されている。例えば、複数のドット31が島状に分散配置され、当該島状に分散配置された複数のドット31のすき間に、複数のドット32が島状に分散配置されている。ドット31,32は、ほぼ均質に分散されている。
【0073】
以上のように、プリンタ1によれば、1回の走査で有色インクLとクリアインクとを吐出し、記録媒体2上に、模様形状30を含んだテクスチャ画像44を形成することができる。そのため、例えば特許文献1の技術に対して、スループットを向上することができる。すなわち、特許文献1では、特許文献1の
図2に開示されるように、最初に領域B1に有色インクで有色画像を形成する工程(
図2(a))と、次に2つの領域にそれぞれ画像を形成する工程、具体的には、領域B2に有色インクで有色画像を形成し、かつ領域B1にクリアインクで画像形成する工程(
図2(b))と、最後に領域B2にクリアインクで画像形成する工程(
図2(c))とを行い、全3工程で画像形成を行う。これに対し、本実施形態では、同一領域に有色インクLとクリアインクとを同時に吐出することができるため、全2工程(B2の領域に1工程とB1の領域に1工程)で済む。したがって、スループットを向上することができ、印刷時間を短くすることができる。
【0074】
また、模様形状30では、平面視において(記録媒体2を表面側から見たときに)、有色インクLのドット31とクリアインクのドット32とが散らばって配置されている。そのため、テクスチャ画像44の表面の光沢の変化を低減することができる。例えば、テクスチャ画像44の模様形状30の部分と、有色画像42が露出した部分(例えば、
図7の模様形状30の左右の部分)とで、光沢の差異を軽減することができる。これにより、有色画像42とテクスチャ画像44との一体性が高まり、見た目の違和感を軽減すると共に、好ましくは印刷物40の美観を向上することができる。
【0075】
また、光硬化性インクは記録媒体2上で比較的早く硬化されるので、ドット31,32が過度に混ざりあって、有色インクLが滲んだり有色画像42が歪んだりすることが生じにくい。さらに、記録媒体2の単位面積あたりに付与される有色インクLのドット31は、透明インク用印刷データとは無関係の有色インク用印刷データに基づいて決定されている。これにより、記録媒体2の単位面積当たりの着色剤の絶対量は、テクスチャ画像44の模様形状30と有色画像42が露出した部分(例えば、
図7の模様形状30の左右の部分)とで、均質になる。そのため、平面視において(記録媒体2を表面から見たときに)、有色画像42とテクスチャ画像44との色味の差異が小さく抑えられる。
【0076】
加えて、断面視において、模様形状30のなかにクリアインクのドット32が混在していることにより、模様形状30がドット32によって立体的に盛り上げられる。これにより、例えば有色画像42の見た目の変化(例えば表面の色味や反射率の差異)を小さく抑えた状態で、有色画像42の所望の部分に選択的に凹凸を形成し、触感(さわりごごち)を付与することができる。好ましくは、テクスチャ画像44は、印刷物40を一見しても判別困難な程度にまで有色画像42と一体化され、印刷物40に触れることによって初めて認識することができる。
【0077】
本実施形態では、制御部20は、記録媒体2上の同一の領域に対して、キャリッジ10を主走査方向Y(第1方向)に複数回移動させることで、有色インクLのドット31と透明インクのドット32とが上下方向Z(厚み方向)に混在するテクスチャ画像44を形成するように構成されている。キャリッジ10を主走査方向Yに複数回移動(往復移動または同じ方向に2回移動)させることで、例えば
図2に示すように、有色インクのヘッド部12M、12Y、12K、12Wとクリアインクのヘッド部12CLとが主走査方向Yに横並びとなっている場合であっても、厚み方向に2種類のインクを混在させることができる。その結果、印刷物40の見た目の変化を効果的に抑えた状態で、テクスチャ画像44を立体的に盛り上げることができる。ただし、有色インクのヘッド部の間にクリアインクのヘッド部が配置されている場合や、クリアインクのヘッド部の間に有色インクのヘッド部が配置されている場合等には、キャリッジ10を主走査方向Yに1回移動させるだけで厚み方向に2種類のインクを混在させることが可能である。
【0078】
また、本実施形態では、記録媒体2上の同一の領域に対してキャリッジ10を複数回走査させる場合であっても、同じ条件のインク層(同じ画像、同じ凹凸)を形成する場合には、レイヤー印刷に比べてスループットを向上することができる。すなわち、レイヤー印刷では、キャリッジを走査させて有色インクで有色画像を形成した後、さらにキャリッジを走査させてクリアインクで凹凸画像を形成する2工程を行うことが必要となる。一方、本実施形態では、有色インクとクリアインクを同じ領域に同時に吐出しながら走査する1工程で済む。そのため、レイヤー印刷に比べてスループットを向上することができる。
【0079】
本実施形態では、第1吐出制御部241は、第1サブヘッド121(ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル列13A)および第2サブヘッド122(ヘッド部12CLのノズル列13A)の副走査方向Xに揃った領域(例えば長さL1の少なくとも一部、具体的には長さL1全体あるいは長さL1の一部)に含まれるノズル13からそれぞれ光硬化性インクを吐出するように、インクヘッド12を制御するように構成されている。これにより、模様形状30を安定かつスピーディーに形成することができ、印刷スループットをより良く向上することができる。
【0080】
本実施形態では、第1吐出制御部241は、第2サブヘッド122(ヘッド部12CLのノズル列13A)の1つのノズル13から吐出される光硬化性インクの量が、第1サブヘッド121(ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル列13A)の1つのノズル13から吐出される光硬化性インクの量よりも多くなるように、インクヘッド12を制御するように構成されている。これにより、模様形状30の中のクリアインクのドット32の割合を増やすことができ、有色画像42をより立体的に盛り上げることができる。したがって、印刷物40に触れた際の触感を効果的に高めることができる。
【0081】
本実施形態では、ヘッド部12C,12M,12Y,12Kは、プロセスカラーのうちのいずれか一色(第1の色)の光硬化性インクを吐出するノズル13が副走査方向Xに並んで設けられたノズル列13A(第1有色ノズル群)を有し、ヘッド部12CLのノズル列13Aの数は、第1有色ノズル群よりも多い。これにより、模様形状30の中のクリアインクのドット32の割合を増やすことができ、有色画像42をより立体的に盛り上げることができる。したがって、印刷物40に触れた際の触感を効果的に高めることができる。
【0082】
本実施形態では、インクヘッド12は、光硬化性インクが貯留される圧力室15と、圧力室15と連通するノズル13と、が形成された中空のケース本体14と、ケース本体14に設けられ、圧力室15を区画する振動板14Vと、振動板14Vに連結され、駆動パルスが供給されると圧力室15を膨張および収縮させるアクチュエータ16(圧電素子)と、を備える。第1吐出制御部241は、ノズル13から第1吐出量の光硬化性インクを吐出させる第1駆動パルスと、ノズル13から第1吐出量よりも多い第2吐出量の光硬化性インクを吐出させる第2駆動パルスと、を記憶する記憶部26を備え、第1サブヘッド121(ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル列13A)に対して第1駆動パルスを供給し、第2サブヘッド122(ヘッド部12CLのノズル列13A)に対して第2駆動パルスを供給するように構成されている。これにより、模様形状30の中のクリアインクのドット32の割合を増やすことができ、有色画像42をより立体的に盛り上げることができる。したがって、印刷物40に触れた際の触感を効果的に高めることができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0084】
上記した実施形態では、テクスチャ画像44が、複数の模様形状30が所定のピッチPで散点状に複数配置された規則的なパターンであったが、これには限定されない。
図8は、テクスチャ画像の変形例を表す平面図および断面図である。
図8に示すテクスチャ画像44Xは、模様形状30Xの一部または全部が、連続的あるいは非連続的に山脈のように連なった形状である。テクスチャ画像44Xは、複数の模様形状30Xと、隣り合う模様形状30X同士を連結する連結部33Xと、を含んでいる。連結部33Xは、ここでは模様形状30Xよりも表面の凹凸が小さい。
【0085】
上記した実施形態では、テクスチャ画像44に含まれる模様形状30が、平面視において円形であり、断面視においてドーム状であったが、これには限定されない。
図9~
図12は、模様形状の変形例を表す平面図および断面図である。
図9に示す模様形状30Aは、外形が四角錐状で、(A)平面視において四角形であり、かつ(B)断面視において中央部が上方に突出した三角形状である。
図10に示す模様形状30Bは、外形が五角錐状で、(A)平面視において五角形であり、かつ(B)断面視において中央部が上方に突出した三角形状である。
図11に示す模様形状30Cは、外形が三角錐状で、(A)平面視において三角形であり、かつ(B)断面視において中央部が上方に突出した三角形状である。また、
図12に示す模様形状30Dは、(A)平面視において円形であり、かつ(B)断面視において中央部が窪んだすり鉢状である。
【0086】
上記した実施形態では、模様形状30に含まれるドット31、32が同じ寸法で表されていたが、これには限定されない。各模様形状30には、寸法の異なるドット、例えば、小ドット、中ドット、大ドットのうちの2つ以上が含まれていてもよい。また、断面視において、模様形状30を厚み方向に2分したときに、表面側に近い上方部と記録媒体2に近い下方部とで、ドットの平均的な寸法が異なっていてもよい。例えば、
図7に示すような断面視がドーム状の模様形状30において、上方部には下方部に比べて多くの小ドットが含まれていてもよいし、下方部には上方部に比べて多くの大ドットが含まれていてもよい。また、
図8に示すような断面視が山脈状のテクスチャ画像44において、模様形状30と連結部33とで平均的なドットの寸法が異なっていてもよい。
【0087】
上記した実施形態では、プリンタ1は、2パスで印刷を行っていたが、これには限定されない。プリンタ1は、例えば、4パスで印刷を行ってもよいし、8パスで印刷を行ってもよいし、16パスで印刷を行ってもよい。
【0088】
上記した実施形態では、各ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12W,12CLのノズル列13Aが、副走査方向Xに同じ長さL1で配置されていたが、これには限定されない。例えば、副走査方向Xにおいて、ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル列13Aは、その一部または全部の長さが相互に異なっていてもよい。また、ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル列13Aと、ヘッド部12CLのノズル列13Aとは、長さが相互に異なっていてもよい。例えば、ヘッド部12CLのノズル列13Aの少なくとも一部が、ヘッド部12C,12M,12Y,12K,12Wのノズル列13Aよりも長くてもよい。
【0089】
上記した実施形態では、キャリッジ10が主走査方向Yに移動し、記録媒体2が副走査方向Xに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ10と記録媒体2との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動してもよい。例えば、記録媒体2は移動不能に配置され、キャリッジ10が主走査方向Yおよび副走査方向Xの両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、キャリッジ10および記録媒体2のいずれもが両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【0090】
上記した実施形態では、インクヘッド12がキャリッジ10に搭載され、主走査方向Yに往復移動(シャトル移動)しながら印刷が行われる、所謂、シャトルタイプ(シリアルタイプ)のプリンタ1について説明したが、これには限定されない。ここに開示される技術は、例えば記録媒体2と同じ幅のラインヘッドを備え、ラインヘッドが固定された状態で印刷が行われる、所謂、ラインタイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【0091】
さらに、ここに開示される技術は、様々なタイプのインクジェットプリンタに適用することができる。例えば、上記実施形態で示したロール状の記録媒体2を搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタ1の他、フラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、プリンタ1は独立したプリンタとして単独で使用されるものに限定されず、他の装置と組み合わせたものであってもよい。例えば、プリンタ1は、カッティング装置等を備えていてもよいし、他の装置に内蔵されていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 インクジェットプリンタ
12C,12M,12Y,12K,12W ヘッド部
12CL ヘッド部
13 ノズル
13A ノズル列
24 吐出制御部
241 第1吐出制御部
30、30A、30B、30C、30X 模様形状
31 有色インクのドット
32 クリアインクのドット
40 印刷物
42 有色画像
44、44X テクスチャ画像