(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106112
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ドラムスティック
(51)【国際特許分類】
G10D 13/12 20200101AFI20220711BHJP
【FI】
G10D13/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000864
(22)【出願日】2021-01-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】503273996
【氏名又は名称】有限会社浅野木工所
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】浅野 純一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 利彦
(57)【要約】
【課題】
ドラム演奏者がドラムスティックに伝達される振動を通じてよりセンシティブな演奏を行うことが可能であると共に、耐久性に優れ、さらに、複数のタムやドラムスティックを準備することなく様々な音色を表現することができるドラムスティックを提供する。
【解決手段】
チップ及びショルダーを含む合成樹脂製の第一棒状部と、前記第一棒状部に結合されると共にグリップを有する第二棒状部と、を有する演奏用のドラムスティックであって、前記第一棒状部の内部には、軸方向に沿っていると共に、前記第一棒状部の全長にわたって延在する空洞が設けられており、前記空洞は、前記チップ先端の開口部で外部に開放されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ及びショルダーを含む合成樹脂製の第一棒状部と、前記第一棒状部に結合されると共にグリップを有する第二棒状部と、を有する演奏用のドラムスティックであって、
前記第一棒状部の内部には、軸方向に沿っていると共に、前記第一棒状部の全長にわたって延在する空洞が設けられており、
前記空洞は、前記チップ先端の開口部で外部に開放されていることを特徴とするドラムスティック。
【請求項2】
前記第一棒状部の内部に形成された前記空洞は、前記開口部から前記ショルダーまで延在する入口空洞部と、前記入口空洞部と連通していると共に、前記入口空洞部よりも内径が大きい共鳴空洞部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のドラムスティック。
【請求項3】
前記第一棒状部の前記ショルダーには、前記第一棒状部の周方向に沿って形成された環状溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドラムスティック。
【請求項4】
前記第一棒状部の後端側には、前記第一棒状部の軸方向に沿った補強溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドラムスティック。
【請求項5】
前記第二棒状部は、合成樹脂製のグリップと、前記グリップと前記第一棒状部を結合する木製の中間棒状部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のドラムスティック。
【請求項6】
前記チップの外周面には、複数のディンプルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドラムスティック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムやシンバルを叩いて演奏するドラムスティックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドラムスティックは、ヒッコリー、メープル、オーク等の木製が主流であった。しかし、木製のドラムスティックは、経時的な使用に伴ってささくれが発生してしまうという問題から、木くずが飛び散ってしまい、ステージの床に落ちた木くずの掃除が煩雑であった。また、木は自然物であり、繊維の方向や密度が一定ではないことから、突然に割れが生じ、ドラムスティックが折れてしまうという問題があった。そのため、ドラム演奏者は、あらかじめドラムスティックが折れてしまうことを想定し、予備のドラムスティックを複数本持っているのが一般的である。また、木製のドラムスティックは、湿度によって曲がってしまうという問題もあった。さらに、木製のドラムスティックでは、ドラムスティック自体の長さ、太さ等によって重心が決まってしまうため、同じ長さ、太さのドラムスティックで重心をコントロールすることができなかった。
【0003】
そこで、近年では、合成樹脂製のドラムスティックが提案されている(例えば、特許文献1)。合成樹脂製のドラムスティックは、経時的な使用に伴ったささくれが発生することがない。また、木製のドラムスティックに比べて大きく耐久性が向上すると共に、湿度によって曲がってしまうこともない。更に、木材を消費することがないため、環境破壊を防止することもできる。
【0004】
一方で、ドラム演奏者は、楽曲の演奏時において、他の楽器の音や観客の歓声によって、自身が演奏している楽器の音がほとんど聞こえていない場合がある。そのため、ドラム演奏者のなかには、ヘッドフォン等によってメトロノームの発するクリック音を聞きながら演奏する者が数多く存在する。これによって、ドラム演奏者は、他の楽器や観客の歓声があったとしても、適切なリズム感でドラムの演奏を行うことができ、演奏時のリズムを安定させることができる。
【0005】
また、自身が演奏している楽器の音がほとんど聞こえない状況下において、ドラム演奏者は、クリック音に加えて、ドラムを叩打した際の手に伝わる振動を頼りに自身が演奏している楽器の音を把握し、コントロールしている。すなわち、自己のパフォーマンスを最大限に発揮するためには、ドラムスティックを叩打した際の手に伝わる振動が重要である。そのため、音色や音の表現の幅を広げるには、ドラムスティックを叩打した際の手に伝わる振動とドラムから発せられる音とが安定して一致している必要があると共に、振動の伝達が優れているドラムスティックが好ましいといえる。
【0006】
しかし、近年普及している合成樹脂製のドラムスティックは、合成樹脂であるため硬度が高く、ドラムの叩き方によっては、ドラム演奏者の意図しない鋭い音が発生してしまう場合があった。合成樹脂製のドラムスティックは耐久性や湿度による状態変化の面で優れているため、一定のニーズは存在するものの、その扱いの困難さから、ドラム演奏者が奏でる音の質を求めるためには、より繊細に振動が感じられる必要があった。また、従来のドラムスティックでは振動の伝達が正確ではなく、センシティブな演奏を行うことができないことから、ドラム演奏者は大きさの異なるタムや太さ等が異なるドラムスティックを準備する必要があり、演奏する楽曲に応じてそれらを使い分けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドラム演奏者がドラムスティックに伝達される振動を通じてよりセンシティブな演奏を行うことが可能であると共に、耐久性に優れ、さらに、複数のタムやドラムスティックを準備することなく様々な音色を表現することができるドラムスティックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、チップ及びショルダーを含む合成樹脂製の第一棒状部と、前記第一棒状部に結合されると共にグリップを有する第二棒状部と、を有する演奏用のドラムスティックであって、前記第一棒状部の内部には、軸方向に沿っていると共に、前記第一棒状部の全長にわたって延在する空洞が設けられており、前記空洞は、前記チップ先端の開口部で外部に開放されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のドラムスティックによれば、第一棒状部に設けられた空洞の形状・大きさを適宜変更することによりドラムスティックを叩打した際の共振周波数をコントロールすることができるため、ドラムスティックを通じて手に伝わる振動とドラムから発せられる音とを一致させることができる。従って、自身の楽器の音が聞こえない状況下でドラムの演奏をする場合であっても、よりセンシティブな演奏をすることが可能となる。
【0011】
また、センシティブな演奏が可能になるがゆえに、ドラム演奏者自身がタムやシンバルを叩く際の強弱をつけることが容易となり、大きさの異なるタムや太さ等の異なるドラムスティックを準備することなく音色の幅、及びダイナミックレンジを広げることが可能となる。
【0012】
さらに、第一棒状部に設けられた空洞の形状、大きさを変更することによって、ドラムスティック自体の重心をコントロールすることができる。これにより、ドラム演奏者は自身の好みに合わせたドラムスティックを選択することができ、よりセンシティブな演奏を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用したドラムスティックの第一実施形態の全体を示す図である。
【
図3】本発明を適用したドラムスティックの第二実施形態の第一棒状部を示す断面図である。
【
図5】第二実施形態の第一棒状部の変形例を示す斜視図である。
【0014】
以下、添付図面を用いて本発明のドラムスティックを詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用したドラムスティックの第一実施形態の全体を示す図である。前記ドラムスティック1は、ドラムやシンバルを叩く際に使用されるものである。前記ドラムスティック1は、第一棒状部2と、前記第一棒状部2と結合された第二棒状部3と、から構成されている。
図1では、前記第一棒状部2が断面図で示されている。本実施形態において、前記第一棒状部2と前記第二棒状部3は接着剤により結合されているが、ピンで結合する等、前記第一棒状部2と前記第二棒状部3とが強固に結合されれば適宜設計変更可能である。
【0016】
前記第一棒状部2は、合成樹脂材料から形成されている。そのため、木製のドラムスティック1に比べて耐久性が高く折れにくい。本実施形態の前記第一棒状部2は、金型による射出成型により製造している。
【0017】
前記第一棒状部2は、チップ4と、ショルダー5と、連結部24が連なって形成されている。前記ショルダー5は、前記第一棒状部2の後端側に向けて広がる円錐状を成している。前記ショルダー5の先端部には、開口部41を有するチップ4が設けられている。すなわち、前記チップ4は、第一棒状部2の最先端に設けられている。前記チップ4は、略球体を成しており、ドラム演奏時の叩打部分として使用される。そのため、前記チップ4でドラムの膜部分を叩くことにより、ドラムの音を奏でることができる。尚、チップ4の形状は、丸形、角型、涙型、三角型、チップレス等、適宜設計変更が可能である。
【0018】
また、前記第一棒状部2の後端側には、前記ショルダー5と後端側に連続する結合部24が設けられている。前記結合部24には、第二棒状部3を結合するための嵌合穴23が設けられている。
【0019】
前記第一棒状部2の内部には、空洞25が設けられている。前記空洞25は、前記第一棒状部2の軸方向に沿って均一な内径で設けられている。前記空洞25は、前記チップ4の先端に設けられた前記開口部41で外部に開放されている。他方、前記空洞25の後端部は、第一棒状部2と第二棒状部3を結合するための前記嵌合穴23と連通している。前記空洞25があることによって、ドラムを叩いた際に前記空洞25内の空気がバネとして、空気振動が誘発される。そのため、当該空気振動は、前記空洞25の長さ、断面積、体積、内径を適宜調節することによって気柱の共振をコントロールし、所定の周波数で共振させることができる。前記空洞25は、射出成型時において金型内のスライドピンで成型される。尚、前記空洞25は、前記チップ4に設けられた開口部41と連通していれば、内径が徐々に拡大するテーパ状等、特に形状の限定はない。
【0020】
前記第二棒状部3は、前記第一棒状部2に対し結合部24で結合されている。前記第二棒状部3は、ヒッコリー、メープル、オーク等の木で構成されている。前記第二棒状部3は、グリップを含むため、前記ドラムスティック1の持ち手となる。前記第二棒状部3の最後端には、グリップエンドキャップ32が設けられている。前記第二棒状部3の先端には円形突起31が設けられており、前記円形突起31は、前記第一棒状部2の前記嵌合穴23に挿入される。尚、本実施形態において前記第二棒状部3は木製から成るが、合成樹脂製であっても良い。
【0021】
また、
図2に示すように、前記第二棒状部3は、中間棒状部6と、グリップ7と、から構成されるものであっても良い。前記中間棒状部6は、ヒッコリー、メープル、オーク等の木で構成されている。前記中間棒状部6は、前記第二棒状部3の先端側に設けられている。前記中間棒状部6の先端には、円形突起31が設けられており、
図1の例と同様に、第一棒状部2の嵌合穴23に挿入される。前記中間棒状部6と前記第一棒状部2は、接着剤等により結合されている。前記中間棒状部6は、リムショットの際に使用することで木製ドラムスティックと同様に柔らかい音を出すことが可能である。
【0022】
前記グリップ7は、合成樹脂で構成されている。前記グリップ7は、前記第二棒状部3の後端に設けられている。前記グリップ7の最後端には、グリップエンドキャップ32が設けられている。前記グリップ7と前記中間棒状部6は、接着剤等により結合されている。当該ドラムスティック1は、第一棒状部2及びグリップ7が合成樹脂、前記中間棒状部6が木製で成形されることから、前記ドラムスティック1の構成全体の合成樹脂部分の占める割合が多い。そのため、前記第二棒状部3を中間棒状部6、及びグリップ7から構成した場合は、ドラムスティックを成型する際の木材の消費を最小限に抑えることができる。
【0023】
次に、第一実施形態のドラムスティック1の使用方法について説明する。
【0024】
前記ドラムスティック1を用いてドラムセットの演奏をする際には、前記第二棒状部3を手で握り、ドラムの打面を前記ドラムスティック1のチップ4で叩打することで行う。
【0025】
ドラムスティック1を叩打すると、叩打したチップ4から振動が生ずる。前記ドラムスティック1は、前記第一棒状部2の内部に空洞25を有するため、前記ドラムスティック1に振動が発生すると前記空洞25内の気柱共鳴が生じる。当該気柱共鳴が生じると、前記空洞25内で起きる共鳴現象により振動が増幅し、ドラムスティック1全体が振動する。すなわち、前記ドラムスティック1は、楽曲の演奏中におけるドラムを叩く力の強弱に応じて、気柱共鳴により増幅した空気振動が前記第二棒状部3を通じて手に伝わる。
【0026】
気柱の共鳴は、前記空洞25の長さ、断面積、体積、内径を適宜調節することによってコントロールできる。そのため、ドラム演奏者の好み、楽曲、ドラム打面の張り強度等に合わせて、空気振動の共振周波数を調節することができる。これにより、ドラム演奏者は、自身の好みや楽曲に合わせた共振周波数の振動が手で感じ取れるドラムスティックを使用することによって、より繊細に振動を感じ取ることができる。そのため、ドラム演奏者は、共振周波数が調節された複数のドラムスティックの中から、楽器から出る音とドラムスティックを叩打した際の手に伝わる振動とが一致したドラムスティックを選択することができる。
【0027】
以上説明してきたように、本発明を適用した第一実施形態のドラムスティック1によれば、ドラム演奏者は、自身が演奏している楽器の音が聞こえない状況下であっても、楽器から出る音とドラムスティックを叩打した際の手に伝わる振動とが一致していることによって、自身が演奏している楽器から奏でられる音を、叩打した際の手に伝わる振動を通じて正確に把握することができ、安定して演奏を行うことができると共に、よりセンシティブな演奏が可能となる。
【0028】
また、本実施形態のドラムスティック1によれば、通常のドラムスティックに比べてセンシティブな演奏を行うことができる。そのため、ドラム演奏者がタムやシンバルを叩く際の強弱をつけることが容易となるため、一つのドラムスティックで様々な音色を表現することができ、かつ、ダイナミックレンジを広げることができる。従って、ドラム演奏者は、大きさの異なるタムや太さ等が異なるドラムスティックの種類を増やすことなく様々な音色を表現することができる。
【0029】
さらに、ドラムスティック1内部の空洞25の形状を適宜調節することによって、木製のドラムスティックでは困難であったドラムスティック全体の重心のコントロールができる。これにより、ドラム演奏者は、自身の好みに適した重心のドラムスティックを選択することができ、さらにセンシティブな演奏を行うことができる。
【0030】
次に、本発明を適用した第二実施形態のドラムスティックについて説明する。
【0031】
図3及び
図4は、ドラムスティック1の第一棒状部2Aの第二実施形態を示す図であり、
図3は断面図、
図4は斜視図である。この第一棒状部2Aは、第一実施形態のドラムスティック1と同じように、第二棒状部3の先端に結合して使用される。
【0032】
前記第一棒状部2Aは、チップ4と、ショルダー5と、連結部24と、が連なって形成されている。基本的な構成は第一実施形態と同一であるため、図中に同一の符号を付して、ここでは相違部分について言及する。
【0033】
前記ショルダー5の先端付近には、ショルダー溝51が設けられている。前記ショルダー溝51は、前記第一棒状部2Aの周方向に沿って環状に形成されている。この実施形態において、前記ショルダー溝51は前記第一棒状部2Aの軸方向に沿って3本が間隔を置いて配列されている。これにより、前記ドラムスティック1を叩打した際に、当該ショルダー溝51で撓みを促すことができ、振動が発生しやすくなる。
【0034】
前記ショルダー5の後端側には、前記第一棒状部2Aの軸方向に沿った直線の補強溝27が複数設けられている。前記補強溝27は、前記第一棒状部2Aの周方向に沿って等間隔で設けられている。前記補強溝27は、連結部24からショルダー5にかけて形成されている。これにより、前記ショルダー5の撓みに対する強度を上げることができ、前記ドラムスティック1を叩打した際に生じる振動の伝達を促すことができる。
【0035】
前記第一棒状部2Aの内部には、空洞25が設けられている。前記空洞25は、先端側に設けられた入口空洞部22と、後端側に設けられた共鳴空洞部21と、から構成されている。前記入口空洞部22は、前記第一棒状部2Aの先端側に設けられている。前記入口空洞部22は、前記チップ4の先端に設けられた開口部41で外部に開放されている。前記入口空洞部22は、前記共鳴空洞部21よりも全長が短く、かつ、小さい空洞になっている。前記入口空洞部22は、テーパ状に形成されている。つまり、前記入口空洞部22の内部空間は、前記第一棒状部2の先端側に向かって徐々に広がっている。前記入口空洞部21をテーパ状に形成することで、前記ショルダー5の周壁26の厚みを均一にすることができる。これにより、ドラムスティックの強度を保つことができる。
【0036】
前記共鳴空洞部21は、前記第一棒状部2Aの後端側に設けられている。前記共鳴空洞部21は、前記入口空洞部21よりも大きい内径となっている。前記共鳴空洞部21は、テーパ状に形成されている。つまり、前記共鳴空洞部21の内部空間は、前記第一棒状部2Aの後端側に向かって徐々に広がっている。また、この共鳴空洞部21は、第一棒状部2Aの嵌合穴23に挿入された第二棒状部3の円形突起31によって閉塞される。前記共鳴空洞部21についてもテーパ状に形成することで、前記ショルダー5の周壁26の厚みを均一にすることができる。第二実施形態においても、前記空洞25があることによって、ドラムを叩いた際に前記空洞25内の空気がバネとして空気振動が誘発される。
【0037】
前記第二棒状部3の構成は、第一実施形態と同一であるため、図中に同一の符号を付して、ここではその詳細な説明を省略する。
【0038】
次に、第二実施形態のドラムスティック1の使用方法について説明する。
【0039】
前記ドラムスティック1を用いてドラムの演奏を行う場合には、第一実施形態のドラムスティック1と同じように、第二棒状部3を手で握り、チップ4でドラム打面を叩打する。
【0040】
第一実施形態のドラムスティックと同じように、前記ドラムスティック1を叩打すると、前記空洞25内の空気が振動し共鳴する。前記ドラムスティック1は、共鳴空洞部21の内部空間が、入口空洞部22の内部空間よりも大きく構成されているため、前記空洞25内の空気振動が大きくなる。すなわち、前記ドラムスティック1は、前記空洞25の気柱共鳴を誘発させたときに、ヘルムホルツ共鳴を生じさせる。これにより、前記空洞25をストレートな空洞にしたときよりも、前記空洞25内の空気振動の増幅量が大きくなる。
【0041】
第二実施形態においても、前記入口空洞部22、及び共鳴空洞部21の長さ、断面積、体積、内径を適宜調節することによって、共振周波数をコントロールすることができる。そのため、ドラム演奏者は、共振周波数が調節された複数のドラムスティックの中から、楽器から出る音とドラムスティックを叩打した際の手に伝わる振動とが一致したドラムスティックを選択し、これを用いて演奏することができる。
【0042】
また、前記ショルダー5の先端側には、振動の発生を促すためのショルダー溝51が設けられており、かつ、前記ショルダー5の後端側には、振動の伝達を促す補強溝27が設けられている。これによれば、前記チップ4を叩打した際に、前記ショルダー溝51によってドラムスティックの先端部分が振動しやすくなる。また、当該振動が伝達されたショルダー5の後端側は、補強溝27が設けられていることによって撓みに対する耐性が強いため、振動を維持し、これをさらに第二棒状部3に伝達する。そのため、ショルダー溝51及び補強溝27があることによって、ドラムスティック1を叩打した際の振動を感じやすくなる。
【0043】
以上説明してきたように、本発明を適用した第二実施形態のドラムスティック1によれば、ヘルムホルツ共鳴を生じさせることにより空気振動を増幅し、かつ、ショルダー溝51及び補強溝27によって振動の伝達を促すことができることから、ドラムスティックを叩打した際の手に伝わる振動を感じやすく、よりセンシティブな演奏を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態のドラムスティック1によれば、通常のドラムスティックに比べてセンシティブな演奏を可能とするため、一つのドラムスティックで様々な音色を表現することができ、かつ、ダイナミックレンジを広げることができる。そのため、ドラム演奏者は、大きさの異なるタムや太さ等が異なるドラムスティックを準備することなく、様々な音色を表現することができる。
【0045】
さらに、
図5に示すように、前記チップ4の外周面には、ディンプルが設けられているものであっても良い。これにより、チップ4が合成樹脂で成形されているドラムスティックであっても、木製のドラムスティックのように柔らかい音を出すことができる。
【符号の説明】
【0046】
1…ドラムスティック、2…第一棒状部、3…第二棒状部、5…ショルダー、23…嵌合孔、25…空洞、41…開口部
【手続補正書】
【提出日】2021-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ、ショルダー及び連結部が連なって形成された合成樹脂製の第一棒状部と、前記連結部を介して前記第一棒状部に結合されると共にグリップを有する第二棒状部と、を備え、
前記第一棒状部の内部には、軸方向に沿って且つ前記第一棒状部の全長にわたって延在する空洞が設けられ、
前記空洞の一端は前記チップの先端に設けられた開口部で外部に開放される一方、他端は前記連結部の嵌合穴に差し込まれた前記第二棒状部で閉塞されていることを特徴とする演奏用のドラムスティック。
【請求項2】
前記第一棒状部に設けられた空洞は前記開口部から前記嵌合穴にかけて均一な内径で設けられていることを特徴とする請求項1記載の演奏用ドラムスティック。
【請求項3】
前記第一棒状部に設けられた前記空洞は、前記開口部から前記ショルダーまで延在する入口空洞部と、前記入口空洞部と連通していると共に、前記入口空洞部よりも内径が大きい共鳴空洞部と、を備え、
前記入口空洞部は前記開口部に向けて内径が徐々に広がるテーパ状に形成される一方、前記共鳴空洞部は前記嵌合穴に向けて内径が徐々に広がるテーパ状に形成されていることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の演奏用ドラムスティック。
【請求項4】
前記第一棒状部の後端側には、前記第一棒状部の軸方向に沿った補強溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載の演奏用ドラムスティック。
【請求項5】
前記第二棒状部は、合成樹脂製のグリップと、前記グリップと前記第一棒状部を結合する木製の中間棒状部と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の演奏用ドラムスティック。
【請求項6】
前記チップの外周面には、複数のディンプルが設けられていることを特徴とする請求項1記載の演奏用ドラムスティック。