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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106127
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ダンパー
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20220711BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20220711BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B23P19/06 E
F16F15/067
F16F1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000895
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】初見 雅人
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD05
3J048BC02
3J048CB01
3J048DA01
3J048EA07
3J059AA09
3J059AD02
3J059BA01
3J059BB01
3J059BD01
3J059DA33
3J059GA30
(57)【要約】
【課題】容易にバネ圧を調整できるようにしたダンパーを提供することを目的とする
【解決手段】当該ダンパー10は、自動機に取り付けられる第1取付部材12と、動力工具に取り付けられる第2取付部材14と、第1取付部材12と第2取付部材14との間に配置された緩衝機構部16とを備える。緩衝機構部16は、第1取付部材12に固定された保持部24と、保持部24に対して回転可能に配置されたバネ圧調整部材26と、バネ圧調整部材26の雄ネジ部42に螺合されたバネ台座44と、バネ台座44と第2取付部材14との間に設定された緩衝バネと54を備える。第2取付部材14が初期位置から動作限界位置に向かって変位するときに緩衝バネ54は圧縮される。バネ圧調整部材26を回転させることでバネ台座44が長手軸線Lの方向に変位して緩衝バネ54のバネ圧が変更される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力工具を自動機に搭載するためのダンパーであって、
動力工具と自動機とのうちの一方に取り付けられる第1取付部材と、
動力工具と自動機とのうちの他方に取り付けられ、該第1取付部材に対して所定の動作方向で初期位置から動作限界位置にまで変位可能とされた第2取付部材と、
該第1取付部材と該第2取付部材との間に配置された緩衝機構部と、
を備え、
該緩衝機構部が、
該第1取付部材に対して固定配置された保持部と、
雄ネジ部が形成された軸部を有し、該保持部に対して該軸部の長手軸線の周りで回転可能としながら該長手軸線の方向では変位しないように配置されたバネ圧調整部材と、
該バネ圧調整部材の該雄ネジ部に螺合された雌ネジ部を有し、該保持部に対する回転が制限されるように配置され、該バネ圧調整部材が回転したときに該保持部に対して該長手軸線の方向で変位するようにされたバネ台座と、
該バネ台座と該第2取付部材との間に設定され、該第2取付部材が該初期位置から該動作限界位置に向かって変位するときに圧縮されて該第2取付部材を該初期位置に向かって付勢する緩衝バネと、
を有する、ダンパー。
【請求項2】
該緩衝機構部が、該バネ台座と該保持部との間に設定された、該緩衝バネよりも強い付勢力を有する押圧バネをさらに有し、
該バネ圧調整部材が、該長手軸線の方向で該押圧バネの反対側から該保持部に係合する係合部を有し、
該バネ圧調整部材は、該押圧バネの付勢力によって、該係合部が該保持部に押し付けられた状態が維持されて該長手軸線の方向で変位しないようにされた、請求項1に記載のダンパー。
【請求項3】
該保持部が、端壁部と、該端壁部から該動作方向に筒状に延びて内部空間を画定する筒状壁部とを有し、該端壁部に該バネ圧調整部材の該軸部を通す貫通孔が設けられ、該端壁部の外面に該バネ圧調整部材の該係合部が係合するようにされ、
該バネ圧調整部材の該軸部が該内部空間を通って該動作方向に延び、該押圧バネ及び該緩衝バネが該内部空間内に少なくとも部分的に収容されるようにされた、請求項2に記載のダンパー。
【請求項4】
該筒状壁部に開口が設けられており、該バネ台座が、該雌ネジ部が形成された中央部と該中央部から該開口内に延びる回転抑止部とを有し、該回転抑止部が該開口の内周面に係合することにより、該バネ台座の該保持部に対する回転が制限されるようにされた、請求項3に記載のダンパー。
【請求項5】
該第2取付部材に対して固定配置され、該筒状壁部の一部を摺動可能に受け入れて該筒状壁部を該動作方向に沿って案内するようにされた筒状ガイド部をさらに備える、請求項3又は4に記載のダンパー。
【請求項6】
該第1取付部材と該第2取付部材との間に設けられ、該第1取付部材と該第2取付部材とが該動作方向に沿って変位するように案内するリニアガイドをさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のダンパー。
【請求項7】
該緩衝機構部と該リニアガイドとをそれぞれ1つだけ備える、請求項6に記載のダンパー。
【請求項8】
該第2取付部材は該第1取付部材に近づくように変位することにより該初期位置から該動作限界位置に変位するようにされ、該リニアガイドによって該第2取付部材が該初期位置を超えてさらに該第1取付部材から離れる方向に変位するのが防止されるようにされた、請求項6又は7に記載のダンパー。
【請求項9】
該第2取付部材は該第1取付部材から遠ざかるように変位することにより該初期位置から該動作限界位置に変位するようにされ、該リニアガイドによって該第2取付部材が該動作限界位置を超えてさらに該第1取付部材から離れる方向に変位するのが防止されるようにされた、請求項6又は7に記載のダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ドライバなどの動力工具を産業用ロボットなどの自動機に搭載するために動力工具と自動機との間に取り付けられるダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインにおいて組立作業等を行う産業用ロボットに電動ドライバを搭載して、自動でのネジ締め作業が行われている。このとき、ロボットアームの位置決め誤差、ネジやネジ穴の形状誤差、ネジがネジ穴に噛み合うタイミングのずれなどにより、ロボットアームに搭載された電動ドライバのねじ締め作業中の位置がネジ締め作業に最適な位置からずれてしまう可能性がある。特に、ネジの噛み合いのタイミングのズレなどに伴うネジの締め付け方向での位置ズレが大きくなることがある。そうすると、ねじ締め作業中にネジをネジ穴に対して適度な力で押し付けることができなくなり、ネジ締め不良が生じる虞がある。
【0003】
上記問題を解決するために、例えば特許文献1においては、電動ドライバとロボットアームとの間にバネによる緩衝機構を設けて、ネジの締め付け方向での位置ズレを吸収するとともに、ネジをネジ穴に対して押し付ける力が一定の範囲内の大きさになるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6550679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
締め付けるネジの大きさやワークの材質等により、締め付け作業時の最適なネジの押し付け力は異なる。そのため、緩衝機構(ダンパー)におけるバネのバネ圧を変更する必要が生じる場合がある。上述の従来技術においては、電動ドライバにも緩衝機構が設けられており、そのバネ圧が調整できるようになっているが、電動ドライバにそのような機構が設けられていない場合には、ロボットアーム側で押し付け力を調整しなければならない。上述の従来技術におけるロボットアームに取り付けられた緩衝機構にはバネ圧を調整する機構が設けられていないため、バネ圧を変更するためにはバネを変更しなければならない。しかしながら、このようなバネの交換作業は面倒であるし、またバネ圧の細かな調整も行いにくい。
【0006】
そこで本発明は、動力工具と自動機との間に取り付けられるダンパーであって、容易にバネ圧を調整できるようにしたダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
動力工具を自動機に搭載するためのダンパーであって、
動力工具と自動機とのうちの一方に取り付けられる第1取付部材と、
動力工具と自動機とのうちの他方に取り付けられ、該第1取付部材に対して所定の動作方向で初期位置から動作限界位置にまで変位可能とされた第2取付部材と、
該第1取付部材と該第2取付部材との間に配置された緩衝機構部と、
を備え、
該緩衝機構部が、
該第1取付部材に対して固定配置された保持部と、
雄ネジ部が形成された軸部を有し、該保持部に対して該軸部の長手軸線の周りで回転可能としながら該長手軸線の方向では変位しないように配置されたバネ圧調整部材と、
該バネ圧調整部材の該雄ネジ部に螺合された雌ネジ部を有し、該保持部に対する回転が制限されるように配置され、該バネ圧調整部材が回転したときに該保持部に対して該長手軸線の方向で変位するようにされたバネ台座と、
該バネ台座と該第2取付部材との間に設定され、該第2取付部材が該初期位置から該動作限界位置に向かって変位するときに圧縮されて該第2取付部材を該初期位置に向かって付勢する緩衝バネと、
を有する、ダンパーを提供する。
【0008】
当該ダンパーにおいては、バネ圧調整部材を回転させることにより長手軸線の方向でのバネ台座の位置を変更することができる。これによりバネ台座と第2取付部材との間に設定された緩衝バネの圧縮量を変更して緩衝バネにより生じるバネ圧を調整することが可能となる。また、緩衝バネが伸縮したときにバネ台座に回転方向での力が作用することがあるが、バネ台座は保持部に対して回転が制限された状態で配置されているため、バネ台座が意図せず回転してバネ圧が変わってしまうことがない。さらには、バネ圧調整部材は、回転を制限されたバネ台座を介して緩衝バネに係合するため緩衝バネからの回転方向への力は実質的に伝わらない。これにより、バネ圧調整部材が保持部に対して回転してバネ台座が長手軸線の方向に意図せず変位してしまうことを防止することが可能となる。
【0009】
また、
該緩衝機構部が、該バネ台座と該保持部との間に設定された、該緩衝バネよりも強い付勢力を有する押圧バネをさらに有し、
該バネ圧調整部材が、該長手軸線の方向で該押圧バネの反対側から該保持部に係合する係合部を有し、
該バネ圧調整部材は、該押圧バネの付勢力によって、該係合部が該保持部に押し付けられた状態が維持されて該長手軸線の方向で変位しないようにすることができる。
【0010】
バネ圧調整部材の係合部が保持部に押し付けられることにより、係合部と保持部との間に摩擦力が生じ、バネ圧調整部材が弱い力では回転しないようにすることができる。これにより、動作中の振動を受けたときや、不意にバネ圧調整部材に触れてしまったときなどに、バネ圧調整部材が意図せず回転してしまうことをより確実に防止することが可能となる。
【0011】
さらに、
該保持部が、端壁部と、該端壁部から該動作方向に筒状に延びて内部空間を画定する筒状壁部とを有し、該端壁部に該バネ圧調整部材の該軸部を通す貫通孔を設けられ、該端壁部の外面に該バネ圧調整部材の該係合部が係合するようにされ、
該バネ圧調整部材の該軸部が該内部空間を通って該動作方向に延び、該押圧バネ及び該緩衝バネが該内部空間内に少なくとも部分的に収容されるようにすることができる。
【0012】
さらに、
該筒状壁部に開口が設けられており、該バネ台座が、該雌ネジ部が形成された中央部と該中央部から該開口内に延びる回転抑止部とを有し、該回転抑止部が該開口の内周面に係合することにより、該バネ台座の該保持部に対する回転が制限されるようにすることができる。
【0013】
さらに、該第2取付部材に対して固定配置され、該筒状壁部の一部を摺動可能に受け入れて該筒状壁部を該動作方向に沿って案内するようにされた筒状ガイド部を備えるようにすることができる。
【0014】
さらに、該第1取付部材と該第2取付部材との間に設けられ、該第1取付部材と該第2取付部材とが該動作方向に沿って変位するように案内するリニアガイドを備えるようにすることができる。
【0015】
この場合には、該緩衝機構部と該リニアガイドとをそれぞれ1つだけ備えるようにすることができる。
【0016】
また、該第2取付部材は該第1取付部材に近づくように変位することにより該初期位置から該動作限界位置に変位するようにされ、該リニアガイドによって該第2取付部材が該初期位置を超えてさらに該第1取付部材から離れる方向に変位するのが防止されるようにすることができる。
【0017】
又は、該第2取付部材は該第1取付部材から遠ざかるように変位することにより該初期位置から該動作限界位置に変位するようにされ、該リニアガイドによって該第2取付部材が該動作限界位置を超えてさらに該第1取付部材から離れる方向に変位するのが防止されるようにすることができる。
【0018】
以下、本発明に係るダンパーの実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るダンパーを電動ドライバとロボットアームとの間に取り付けた状態を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るダンパーの斜視図である。
図3図2のダンパーの初期位置における断面図である。
図4図2のダンパーの動作限界位置における断面図である。
図5】バネ圧調整部材によりバネ圧を調整して緩衝バネのバネ圧を大きくした状態の断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るダンパーの初期位置における断面図である。
図7図6のダンパーの動作限界位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るダンパー10は、電動ドライバ(動力工具)1をロボットアーム(自動機)2に搭載するために使用され、電動ドライバ1とロボットアーム2との間に取り付けられている。
【0021】
図2に示すように、ダンパー10は、ロボットアーム2に取り付けられる上側の第1取付部材12と、電動ドライバ1に取り付けられる下側の第2取付部材14と、第1取付部材12と第2取付部材14との間にそれぞれ配置された緩衝機構部16及びリニアガイド18とを備える。電動ドライバ1は、その先端部が第2取付部材14の工具取付穴20を通り、本体部分が第1取付部材12の凹部22を通るようにして、第2取付部材14に取り付けられる。後述するように、第2取付部材14は、リニアガイド18に案内されてリニアガイド18のガイド方向(動作方向)Aで第1取付部材12に対して変位可能となっており、その変位に伴って緩衝機構部16が動作して緩衝作用が発揮されるようになっている。
【0022】
緩衝機構部16は、図3に示すように、第1取付部材12に固定された筒状の保持部24と、保持部24に保持されたバネ圧調整部材26とを備える。保持部24は、上部の端壁部28と、端壁部28から動作方向Aでの下方に筒状に延びて内部空間30を画定する筒状壁部32とからなり、筒状壁部32を第1取付部材12に形成された取付穴34に圧入することにより第1取付部材12に固定されている。端壁部28には貫通孔36が設けられている。バネ圧調整部材26は、頭部38と、頭部38から貫通孔36を通って下方に延びる軸部40とからなるボルトであり、軸部40の外周面には雄ネジ部42が形成されている。バネ圧調整部材26は、軸部40の長手軸線Lの方向が動作方向Aと同じになるようにして配置されており、保持部24に対して長手軸線Lの周りで回転可能となっている。緩衝機構部16はさらに、バネ圧調整部材26の軸部40の雄ネジ部42に螺合されたバネ台座44を備える。バネ台座44は、雄ネジ部42に螺合された雌ネジ部46を有する中央部48と、中央部48から互いに反対側に向かって外方に延びる回転抑止部50とを有する。保持部24の筒状壁部32には開口52が形成されており、バネ台座44の回転抑止部50はこの開口52内に延びている。回転抑止部50はその回転方向で開口52の内周面に係合するようになっており、これによりバネ台座44は保持部24に対する回転が制限されるようになっている。緩衝機構部16はさらに、バネ台座44と第2取付部材14との間に設定された緩衝バネ54と、バネ台座44と保持部24の端壁部28との間に設定された押圧バネ56とを備える。押圧バネ56は緩衝バネ54よりも強い付勢力を有している。緩衝バネ54の一部と押圧バネ56は、それぞれバネ圧調整部材26の軸部40の周囲に配置され、内部空間30内に収容されている。バネ圧調整部材26は、押圧バネ56の付勢力によって、頭部38の下面の係合部58が保持部24の外面60に押し付けられた状態とされ、保持部24に対して長手軸線Lの方向で変位しないようになっている。
【0023】
リニアガイド18は、第1取付部材12に固定された筒状部材62と、第2取付部材14に固定されたガイド軸64と、筒状部材62とガイド軸64との間に配置された摺動機構部66とを有する。筒状部材62は第1取付部材12に形成された取付穴68に圧入することにより固定されている。ガイド軸64は、その下端のネジ部70に螺合された取付ナット72により第2取付部材14に固定されている。当該実施形態におけるリニアガイド18は、摺動機構部66に多数のボール(図示しない)が配置されたボールガイドであるが、他の形態のリニアガイドとしてもよい。このリニアガイド18により、第1取付部材12と第2取付部材14とは互いに平行な状態を維持したまま動作方向Aで直線的に変位するようになっている。ガイド軸64の上端に取り付けられた変位制限ナット74によって筒状部材62及び摺動機構部66が図3の位置から上方にそれ以上は変位しないようになっている。
【0024】
ダンパー10はさらに、第2取付部材14の固定凹部76、78にそれぞれ圧入して固定された2つの筒状ガイド部80、82を有する。一方の筒状ガイド部80は、保持部24の筒状壁部32の下端部分を摺動可能に受け入れて筒状壁部32を動作方向Aに沿って案内するとともに、第1取付部材12がリニアガイド18の周りで回転しないようにしている。
【0025】
ロボットアーム2が操作されて電動ドライバ1がネジをワークに捩じ込むためにワークに向かって押し付けられるようにされたときに、第2取付部材14は、図3の初期位置から第1取付部材12に近づくようにして図4の動作限界位置にまで変位可能となっている。第2取付部材14が動作限界位置に向かって変位するときに、緩衝バネ54はさらに圧縮されて第2取付部材14を初期位置に向かって付勢する。一方で、より強い付勢力を有する押圧バネ56は、第2取付部材14の位置に関わらず圧縮されない。そのため、バネ台座44とバネ圧調整部材26は長手軸線Lの方向で保持部24に対して変位せず、バネ圧調整部材26の係合部58が保持部24の端壁部28に押し付けられた状態が維持される。図4の動作限界位置においては、2つの筒状ガイド部80、82が第1取付部材12の下面84にそれぞれ当接して、第1取付部材12と第2取付部材14が動作限界位置を超えてさらに近づくように変位することが防止される。電動ドライバ1がワークから離されると、緩衝バネ54の付勢力により第2取付部材14は図3の初期位置に戻る。上述のとおり、リニアガイド18の変位制限ナット74が筒状部材62及び摺動機構部66の変位を制限するため、第2取付部材14は図3の初期位置を超えてさらに第1取付部材12から離れる方向には変位しない。
【0026】
上述のとおり、バネ圧調整部材26は、保持部24に対して長手軸線Lの周りで回転可能ではあるが、押圧バネ56の付勢力によって長手軸線Lの方向には変位しない。バネ圧調整部材26を回転させると、軸部40に螺合されているバネ台座44が長手軸線Lの方向に変位する。このときバネ台座44は、その回転抑止部50が筒状壁部32の開口52の内周面に係合するため、保持部24に対して回転しない。バネ台座44を図3の上方位置から図5の下方位置に変位させると、緩衝バネ54がさらに圧縮されてその付勢力が大きくなる。これにより緩衝機構部16のバネ圧が大きくなる。このようにバネ圧調整部材26を回転操作するだけで緩衝機構部16のバネ圧を容易に調整することができる。
【0027】
第2取付部材14の初期位置と動作限界位置は、上述の通りリニアガイド18と筒状ガイド部80、82とによってそれぞれ規定されており、緩衝バネ54のバネ圧を調整するためにバネ台座44を移動させても、第2取付部材14が変位可能な範囲は変わらない。なお、バネ台座44が下方に変位することにより押圧バネ56は伸長してその付勢力が小さくなるが、バネ台座44が変位可能な範囲内において押圧バネ56の付勢力は常に緩衝バネ54の付勢力よりも大きくなるようにしてある。そのため、バネ圧調整部材26が緩衝バネ54の付勢力によって保持部24に対して長手軸線Lの方向に変位することはなく、その係合部58が端壁部28に押し付けられた状態が常に維持されることになる。
【0028】
通常、コイルバネが伸縮する際にコイルバネの端部は僅かではあるが回転方向に変位するため、コイルバネの端部を押さえている部材には回転方向の力が加わることになる。当該ダンパー10においてはコイル状の緩衝バネ54の端部を押さえているバネ台座44は、保持部24に対して回転しないように配置されているため、緩衝バネ54から回転方向への力を受けたとしても回転することはない。そして、バネ圧調整部材26は、回転しないバネ台座44を介して緩衝バネ54に係合しており、緩衝バネ54からの回転方向の力を実質的に受けないため、動作中に緩衝バネ54の作用により回転してしまうことがない。さらには、バネ圧調整部材26は押圧バネ56によって係合部58が端壁部28に押し付けられた状態に維持されるため、係合部58と端壁部28との間に常に摩擦力が生じている。バネ圧調整部材26は、この摩擦力によっても回転が防止されているようになっている。これにより、動作時の振動を受けたときや不意にバネ圧調整部材26に触れてしまったときなどに、バネ圧調整部材26が意図せず回転してバネ圧が変わってしまうことをより確実に防止できる。
【0029】
図6及び7には本発明の第2の実施形態に係るダンパー110が示されている。ここでは第1の実施形態に係るダンパー10と相違する構成について説明し、同様な構成については説明を省略する。第2の実施形態に係るダンパー110においては、ロボットアーム2に取り付けられる第1取付部材112が下側に位置し、電動ドライバ1に取り付けられる第2取付部材114が上側に位置するように配置されている。緩衝機構部116の保持部124は、第2取付部材114の非環状貫通孔186を通って第1取付部材112にまで延びて、第1取付部材112に固定されている。具体的には、第1取付部材112の固定凹部176に圧入して固定された筒状止め部材180に対して圧入又は接着されることにより、筒状止め部材180を介して第1取付部材112に固定されている。なお、非環状貫通孔186は、その横断面がC字状や、間隔を空けて配置された複数の円弧からなる形状とされており、第2取付部材114の非環状貫通孔186の外側の部分と内側の部分とはつながっている。また保持部124の筒状壁部132も非環状貫通孔186に対応した形状とされている。第2取付部材114は、バネ台座144と第1取付部材112との間に設定されている緩衝バネ154によって、第1取付部材112に近づく方向に付勢されている。緩衝バネ154によって付勢された第2取付部材114は、筒状止め部材180および筒状ガイド部材182に当接して、初期位置(図6)に保持される。ロボットアーム2が操作されて電動ドライバ1がネジをワークに捩じ込むためにワークに向かって押し付けられるようにされたときに、第2取付部材114は、図6の初期位置から第1取付部材112から遠ざかるようにして図7の動作限界位置にまで変位可能となっている。第2取付部材114が動作限界位置に向かって変位するときに、緩衝バネ154はさらに圧縮されて第2取付部材114を初期位置に向かって付勢する。一方で、より強い付勢力を有する押圧バネ156は、第2取付部材114の位置に関わらず圧縮されない。そのため、バネ台座144とバネ圧調整部材126は長手軸線Lの方向で保持部124に対して変位せず、バネ圧調整部材126の係合部158が保持部124の端壁部128に押し付けられた状態が維持される。図7の動作限界位置において、リニアガイド118の変位制限ナット174が筒状部材162及び摺動機構部166のそれ以上の変位を制限するため、第2取付部材114は動作限界位置を超えてさらに第1取付部材112から遠ざかる方向には変位しない。なお、当該ダンパー110においては、保持部124の筒状壁部132が第2取付部材114の非環状貫通孔186に直接係合するようになっているが、第2取付部材114に筒状ガイド部を固定配置して、この筒状ガイド部が筒状壁部132を摺動可能に受け入れて動作方向に沿って案内するようにすることもできる。
【0030】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、ロボットアームなどの自動機を第2取付部材に取り付けて、電動ドライバなどの動力工具を第1取付部材に取り付けるようにすることもできる。また、押圧バネは必ずしも必要ではなく、例えば保持部がバネ圧調整部材の頭部を上方から押さえるようにして、緩衝バネの付勢力によって頭部が保持部に押し付けられるようにすることもできる。また、緩衝機構部を2つ以上配置してもよい。この場合には、リニアガイドをなくして、複数の緩衝機構部で動作方向での直線的な動作を確保するようにすることもできる。本発明のダンパーは、ロボットアームの他、電動モータ、油圧、空気圧などの各種動力によって駆動される各種自動機に使用することができる。また、電動ドライバ以外の、ナットランナーや研磨機などの他の形態の動力工具を自動機に取り付ける際に使用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 電動ドライバ(動力工具)
2 ロボットアーム(自動機)
10 ダンパー
12 第1取付部材
14 第2取付部材
16 緩衝機構部
18 リニアガイド
20 工具取付穴
22 凹部
24 保持部
26 バネ圧調整部材
28 端壁部
30 内部空間
32 筒状壁部
34 取付穴
36 貫通孔
38 頭部
40 軸部
42 雄ネジ部
44 バネ台座
46 雌ネジ部
48 中央部
50 回転抑止部
52 開口
54 緩衝バネ
56 押圧バネ
58 係合部
60 外面
62 筒状部材
64 ガイド軸
66 摺動機構部
68 取付穴
70 ネジ部
72 取付ナット
74 変位制限ナット
76 固定凹部
78 固定凹部
80 筒状ガイド部
82 筒状ガイド部
84 下面
110 ダンパー
112 第1取付部材
114 第2取付部材
116 緩衝機構部
118 リニアガイド
124 保持部
126 バネ圧調整部材
128 端壁部
132 筒状壁部
144 バネ台座
154 緩衝バネ
156 押圧バネ
158 係合部
162 筒状部材
166 摺動機構部
174 変位制限ナット
176 固定凹部
180 筒状止め部材
182 筒状ガイド部材
186 非環状貫通孔
A ガイド方向、動作方向
L 長手軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7