(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106144
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】めっき治具
(51)【国際特許分類】
C25D 17/08 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
C25D17/08 G
C25D17/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000933
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正博
(57)【要約】
【課題】生産効率を低下させる事無く、被めっき基板の周縁端部の側面と一方の面を電気めっき液に触れさせることなく、基板のもう一方の面のみに電気めっきを行う事を可能とするめっき治具を提供する。
【解決手段】被めっき基板1の、めっきをしない面を支持する非めっき面側固定板13と、めっきする面の周縁部を支持する被めっき面側固定板12によって、被めっき基板を挟持することにより、被めっき基板の周縁部と被めっき面側固定板との間に設置されたシール部材3と、被めっき基板の周縁部より外側において、被めっき面側固定板と非めっき面側固定板との間に設置されたシール部材4と、被めっき基板と、非めっき面側固定板と、被めっき面側固定板と、によって形成された密閉空間14が形成されることで、被めっき面のみに電気めっきを行う事を可能とするめっき治具11。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき基板の、非めっき面と周縁端部の側面には電気めっきをせず、被めっき面だけに電気めっきを行うめっき治具であって、
被めっき基板の非めっき面側に面して被めっき基板を固定する非めっき面側固定板と、
被めっき基板の被めっき面側の周縁端部を固定する被めっき面側固定板と、
被めっき基板の被めっき面側の周縁端部と被めっき面側固定板との間に備えられたシール部材Aおよび被めっき面側固定板と被めっき基板より外側の非めっき面側固定板との間に備えられたシール部材Bと、
被めっき面側固定板を非めっき面側固定板に押圧する事によって被めっき基板を固定する固定手段と、を備えており、
シール部材Aおよびシール部材Bは、硬度が異なる2種類以上のゴムを貼り合わせたゴムパッキンからなり、
被めっき基板の被めっき面側の周縁端部と、被めっき面側固定板と、それらの間に備えられたシール部材Aと、被めっき基板より外側の被めっき面側固定板と、非めっき面側固定板と、それらの間に備えられたシール部材Bと、によって囲まれた密閉空間が形成される事を特徴とするめっき治具。
【請求項2】
前記固定手段が、回転ラッチ、ネジ、又はクリップを使用した固定手段である事を特徴とする請求項1のめっき治具。
【請求項3】
前記シール部材A及びBにおいて、少なくとも2種類の異なる硬度のゴムの内、硬度が高いゴムが前記密閉空間側に位置して、硬度が低いゴムがめっき液に接する側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のめっき治具。
【請求項4】
前記硬度が高いゴムより、前記硬度が低いゴムの方が、0から5mmの範囲で、高さが高いことを特徴とする請求項3に記載のめっき治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっきやエッチング等の湿式表面処理装置で使用可能なめっき治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気めっきでは、被めっき基板の片面(一方の面)だけにめっきする場合がある。電気めっき液は強酸である為、被めっき基板のめっきを行わない面を電気めっき液に浸漬したくない場合、電気めっき液に浸漬したくない面を電気めっき液から隔離する必要がある。
【0003】
被めっき基板の一部を電気めっき液から隔離する方法としては、耐酸性テープの貼り付け、耐酸性薬剤の塗布、樹脂やステンレス製治具での覆い、などがある。
【0004】
上記耐酸性テープの貼り付けでは、貼り付け工程及び剥離工程は短時間で行うことが可能であるが、被めっき基板の端面の被覆には適していない。なぜなら、上記耐酸性テープは、上記被めっき基板の端面における基板主面と側面の境界において、十分にその形状に追従できず、めっき液が浸入しうる間隙を生じる場合があるからである。
【0005】
上記耐酸性薬剤の塗布においても、塗布工程及び剥離工程は短時間で行うことが可能であるが、被めっき基板の端面の被覆には適していない。なぜなら、上記被めっき基板端面において主面と側面が接する境界部において、形状起因の濡れ性の不均一が生じ、上記耐酸性薬剤の濡れ不良が発生することがあるからである。
【0006】
一方、上記樹脂やステンレス製治具での覆いでは、取り付け工程及び取り外し工程を短時間で行うことが可能であり、且つ被めっき基板の端面の被覆にも適している。なぜなら、
治具の構造を工夫することによって、上記被めっき基板の端面そのものに触れることなく、その近傍の数か所を遮蔽して、端面における基板形状の急変による影響を回避しつつ、上記被めっき基板の片面全体を、めっき液より隔離することが可能となるからである。
【0007】
例えば、特許文献1に、シリコンウェハなどの板状部材への電気めっき工程において、樹脂やステンレス製治具で、被めっき基板のめっきされない片面及び端面を電気めっき液からシール部材により隔離する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの治具においては、円板状のシリコンウェハを用いることを想定している為、長方形の基板を用いた場合については考慮されていない。またこの様な場合に関する技術的な開示がなされていない。
【0009】
長方形の基板の端部とめっきしない片面を電気めっき液に浸漬させずに、被めっき面だけを電気めっきする技術に関しては、特許文献2に、被めっき面だけを電気めっきすることを可能とする表面処理装置が開示されている。しかしながら、特許文献2の表面処理装置では、めっき槽の側壁部に設けられた開口部に被めっき基板を装着する構成となっている。そのため、基板を1枚電気めっきする際に、まず、めっき液が入っていないめっき槽の側壁部に設けられた開口部に基板を装着することで、めっき槽にめっき液を入れられるようにした後、めっき液を入れる。次に、基板に電気めっきを行った後、めっき槽の中のめっき液を抜いてから基板を取り外し、新しい基板を装着後、再びめっき液を入れることが必要であり、生産効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5576848号公報
【特許文献2】特願2017-537035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の事情に鑑み、本発明は、生産効率を低下させる事無く、被めっき基板の周縁端部の側面と一方の面を電気めっき液に触れさせることなく、基板のもう一方の面のみに電気めっきを行う事を可能とするめっき治具を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、被めっき基板の、非めっき面と周縁端部の側面には電気めっきをせず、被めっき面だけに電気めっきを行うめっき治具であって、
被めっき基板の非めっき面側に面して被めっき基板を固定する非めっき面側固定板と、
被めっき基板の被めっき面側の周縁端部を固定する被めっき面側固定板と、
被めっき基板の被めっき面側の周縁端部と被めっき面側固定板との間に備えられたシール部材Aおよび被めっき面側固定板と被めっき基板より外側の非めっき面側固定板との間に備えられたシール部材Bと、
被めっき面側固定板を非めっき面側固定板に押圧する事によって被めっき基板を固定する固定手段と、を備えており、
シール部材Aおよびシール部材Bは、硬度が異なる2種類以上のゴムを貼り合わせたゴムパッキンからなり、
被めっき基板の被めっき面側の周縁端部と、被めっき面側固定板と、それらの間に備えられたシール部材Aと、被めっき基板より外側の被めっき面側固定板と、非めっき面側固定板と、それらの間に備えられたシール部材Bと、によって囲まれた密閉空間が形成される事を特徴とするめっき治具である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記固定手段が、回転ラッチ、ネジ、又はクリップを使用した固定手段である事を特徴とする請求項1のめっき治具である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記シール部材A及びBにおいて、少なくとも2種類の異なる硬度のゴムの内、硬度が高いゴムが前記密閉空間側に位置して、硬度が低いゴムがめっき液に接する側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のめっき治具である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、前記硬度が高いゴムより、前記硬度が低いゴムの方が、0から5mmの範囲で、高さが高いことを特徴とする請求項3に記載のめっき治具である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のめっき治具は、被めっき基板の非めっき面側に面して被めっき基板を固定する非めっき面側固定板と、被めっき基板の被めっき面側の周縁端部を固定する被めっき面側固定板と、被めっき基板の被めっき面側の周縁端部と被めっき面側固定板との間および被めっき基板より外側の非めっき面側固定板と被めっき面側固定板との間には、それぞれ着脱可能且つ異なる硬度の複数のゴムが貼り合わされた構造を備えたシール部材と、被めっき面側固定板を非めっき面側固定板に押圧する事によって被めっき基板を固定する固定手段と、を備えている。その為、被めっき基板の被めっき面側の周縁端部と被めっき面側固定板とそれらの間に備えられたシール部材、および被めっき基板より外側の非めっき面側
固定板と被めっき面側固定板とそれらの間に備えられたシール部材、によって密閉空間を形成する事ができる。その密閉空間に、被めっき基板の、非めっき面と、周縁端部の側面と、を配置する事ができる為、本発明のめっき治具に被めっき基板を装着し、電気めっきを行う事で、電気めっきを施したい被めっき面のみに電気めっきを行う事ができる。その為、生産性を低下させる事無く、被めっき基板の、非めっき面と、周縁端部の側面と、を電気めっき液に浸漬させる事無く、被めっき基板の一方の面のみに電気めっきを行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のめっき治具の一例を示す正面概略図。
【
図2】
図1のめっき治具に被めっき基板を取り付けた状態を例示する概略図。
【
図6】本発明のめっき治具の被めっき基板の被めっき面側固定板を例示する正面概略図。
【
図7】本発明のめっき治具の被めっき基板の非めっき面側固定板を例示する正面概略図。
【
図8】本発明のめっき治具のシール部材3を例示する断面概略図。
【
図9】本発明のめっき治具のシール部材4を例示する断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しながら本発明のめっき治具の実施形態を説明する。なお、重複する説明を省略するべく、図では同一又は類似の機能を発揮する構成要素には同一の符号を付している。
また、説明中に示す各部の寸法は一例であり、使用目的や測定試料の種類等の各種条件によって適宜変更することができる。
【0019】
本発明のめっき治具について説明する。
【0020】
本発明のめっき治具は、被めっき基板の、非めっき面と周縁端部の側面には電気めっきをせず、被めっき面だけに電気めっきを行うめっき治具である。以下に、
図1~
図9を使用して、本発明のめっき治具11について説明する。
【0021】
図1は、本発明のめっき治具11を例示した説明図である。めっき治具11は、被めっき基板1の非めっき面1b側に面して固定する非めっき面側固定板13(
図4参照)と、被めっき基板1の被めっき面1a側の周縁端部を固定する被めっき面側固定板12(
図5参照)と、を備えている。被めっき基板1は、支持体10に形成された凹部10a(
図5参照)に配置・固定され、非めっき面側固定板13と被めっき面側固定板12により、挟持される事により(
図5参照)、被めっき基板1の、非めっき面1b(めっきを行わない面)と周縁端部の側面1cが、めっき液に浸漬されない密閉空間14内に配置される事で(
図4、5参照)、非めっき面1bと側面1cには電気めっきされることが無い。
【0022】
なお凹部10aは、被めっき基板1の固定手段の1つの形態であって、これに限定する必要は無い。被めっき基板1の非めっき面側と面して被めっき基板1を固定可能な手段であれば、如何なる手段であっても良い。なお、凹部10aは、例えば、座ぐり加工によって形成された凹部であっても良い。また、凹部10aの代わりに、3つ以上の固定ピンによって基板を一定の位置に配置し、固定する手段であっても良いし、その他の手段であっても構わない。
【0023】
また、本発明のめっき治具11のより具体的な構成は、めっき電源に接続した電極であるブスバー9と、ブスバー9から延伸し、支持体10を固定する固定部8と、ブスバー9と次に説明する給電部5を電気的に接続する給電線6と、給電線6と被めっき基板1を接続する給電部5と、被めっき面側固定板12を非めっき面側固定板13に押圧して固定する固定手段7と、非めっき面側固定板13の主たる構成要素であり、被めっき基板1を、凹部10aにて支持する支持体10と、被めっき面側固定板12の主たる構成要素であり、被めっき基板1の被めっき面1aがめっき可能となる開口部15を備えた対向板2と、被めっき基板1の周縁端部と、対向板2の開口部15の内側の端縁部に沿って、それらの両者に密着し、シール可能に備えられたシール部材3と、シール部材3の外側で、支持体10と対向板2とに密着し、シール可能に備えられたシール部材4と、を備えている(以上、
図1および
図3参照)。
【0024】
その為、被めっき基板1の、めっきしない片面(非めっき面1b)と、周縁端部の側面1cとは、対向板2と、被めっき基板1と、支持体10と、シール部材3と、シール部材4と、によって密封された空間14内に配置される。その事により、被めっき基板1の非めっき面1bと周縁端部の側面1cとは、電気めっき液に浸漬されることがなく、電気めっきされる事は無いが、被めっき基板1の被めっき面1aには電気めっきを行うことが可能となる。
【0025】
図2は、めっき治具11に被めっき基板1を取り付けた図であり、被めっき基板1は対向板2と支持体10との間に取り付けられている。被めっき基板1の被めっき面1a(
図4、
図5参照)は、シール部材3で密封されている一部を除き、電気めっき液に浸漬できるように、めっき治具11の対向板2に形成された開口部15により露出している。
【0026】
図3は、めっき治具11に被めっき基板1を取り付けた
図2を透視して見た透視図である。
シール部材3は、被めっき基板1の被めっき面1aの露出部と被めっき基板1の外周との間、または、被めっき基板1の周縁端部1cの内側に配置されている(
図4、
図5参照)。
シール部材3は、硬度の異なる2種類以上のゴム(例えば、ゴムパッキン3aとゴムパッキン3b、ゴムパッキン3aとゴムパッキン3bとゴムパッキン3c、など)が貼り合わされた構造を備えている(
図8参照)。
【0027】
ここで、例えば、ゴムパッキン3aとゴムパッキン3bが貼り合わされた構造とは、被めっき基板1の対向板2と被めっき面側固定板12を押圧する方向に、ゴムパッキン3aとゴムパッキン3bが平行に貼り合わされて配置された構造である。ゴムパッキン3aとゴムパッキン3bとゴムパッキン3cについても同様である。ただし、例えば、ゴムパッキン3aとゴムパッキン3bの、被めっき基板1の対向板2と被めっき面側固定板12を押圧する方向の高さ(または長さ)が、同一でなくても良い。その様に高さを変えることによって、いずれか一方が先に被めっき基板1の対向板2と被めっき面側固定板12によって押圧される構造を実現することができる。
【0028】
シール部材4は、対向板2の外周(周縁端部)と支持体10の外周(周縁端部)との間に配置されている(
図4、
図5参照)。シール部材4は、硬度の異なる2種類以上のゴム(例えば、ゴムパッキン4aとゴムパッキン4b、ゴムパッキン4aとゴムパッキン4bとゴムパッキン4c、など)が貼り合わされた構造を備えている(
図9参照)。
給電部5は、シール部材3とシール部材4との間に配置され、且つ被めっき基板1の外周内、即ち周縁端部の内側に位置する。
給電線6は、給電部5とブスバー9とを電気的に接続して給電部5に電源からの電力を供給する役割を果たすものであるが、給電部5と固定部8とを接続してもよい。その場合
は、固定部8が銅などの導電性が高い材料で作製されている必要がある。固定部8は、ブスバーと支持体10とを固定している。
【0029】
図4は、
図2のA-A’切断線におけるめっき治具11の断面図である。被めっき基板1は対向板2と支持体10との間に挟持されている。
対向板2は、被めっき面側固定板12(
図5参照)の主たる構成要素である。被めっき面側固定板12は、対向板2と、対向板2に形成された凹部2a、2bに、それぞれ配置されたシール部材3、4と、を備えている。
また、支持体10は、非めっき面側固定板13の主たる構成要素である。
シール部材3は、被めっき基板1と対向板2との間をシーリングしている。
シール部材4は、対向板2と支持体10との間をシーリングしている。被めっき基板1とシール部材3と対向板2とシール部材4と支持体10と被めっき基板1を固定する為の支持体10の凹部10aとで覆われた空間14には電気めっき液が侵入しない為、被めっき基板1の、非めっき面1bと、周縁端部の側面1cはめっき液に浸漬されず、被めっき面1aのみを電気めっき液に浸漬させ電気めっきを行うことができる。なお、凹部10aと非めっき面1bとは接触しているが、
図4、
図5では隙間を強調して示している。
【0030】
図5は、
図2のB-B’切断線におけるめっき治具11の断面図である。給電部5は、給電線6及び被めっき基板1の被めっき面1aに電気的に接続しており、被めっき面1aに給電している。給電部5の数は特に限定されない。
【0031】
図6は、被めっき基板1の被めっき面側固定板12の被めっき基板1に接する面を示した説明図(
図5参照)である。被めっき面側固定板12の対抗板2の中央部は開口部15となっており、対向板2の上(非めっき面側固定板13側)にシール部材3とシール部材4が設置されている場合を例示している。給電部5は対向板2を貫いて設置されている。
【0032】
図7は、被めっき基板の非めっき面側固定板13の被めっき基板1に接する面を示した説明図である(
図4参照)。被めっき基板の非めっき面側固定板13は固定部8を通してブスバー9に固定されている。被めっき基板の非めっき面側固定板13には被めっき基板1を固定する為の凹部10aが形成されている。また、凹部10aを形成する代わりに位置決めピン等で被めっき基板を固定してもよい。また、被めっき基板の非めっき面側固定板13には固定手段7が設置されていてもよい。固定手段7の数は特に限定されず、被めっき基板を固定可能な手段であればどの様な手段であっても構わない。例えば、固定手段7として、回転ラッチ、クリップ、ネジ、回転留め具等を用いてもよい。
【0033】
図8は、シール部材3の断面図である。シール部材3としては、硬度の異なるゴムパッキン3aと3bとを貼り合わせたシール部材を例として挙げる事ができる(
図8(a))。硬度が異なる2種類のゴムパッキン3aと3bとの貼り合わせによりシーリング機能を向上させることが可能となっている。さらに、
図8(a)に例示したシール部材3-1のように、硬度の異なる3種類のゴムパッキン3aと3bと3cとを貼り合わせた物をとしてもよい。
【0034】
対向板2を被めっき基板1に押付けた場合(例えば、
図4参照)、例えば、ゴムパッキン3aが自動車のタイヤ程度の硬度70°、ゴムパッキン3bが人肌程度の硬度10°の場合、硬度が大きいゴムパッキン3aが支柱となり、対向板2と被めっき基板1との間隔が偏りなく形成され、硬度が小さいゴムパッキン3bの柔軟性により、対向板2とシール部材3との高いシーリング機能、及び被めっき基板1とシール部材3との高いシーリング機能を得ることができる。シール部材3は対向板2の内側に配置された凹部2aに固定されていることが望ましい。
【0035】
図9は、シール部材4の断面図である。シール部材4としては、硬度の異なるゴムパッキン4aと4bとを貼り合わせたシール部材を例として挙げる事ができる(
図9(a))。硬度が異なるゴムパッキン4aと4bとの貼り合わせによりシーリング機能を向上させることが可能となっている。さらに、
図8(b)に例示したシール部材4-1のように、硬度の異なるゴムパッキン4aと4bと4cとを貼り合わせた物をとしてもよい。
【0036】
対向板2を支持体10に押付けた場合(例えば、
図4参照)、例えば、ゴムパッキン4aが自動車のタイヤ程度の硬度70°、ゴムパッキン4bが人肌程度の硬度10°の場合、硬度が大きいゴムパッキン4aが支柱となり対向板2と支持体10との間隔が偏りなく形成され、硬度が小さいゴムパッキン4bの柔軟性により、対向板2とシール部材4との高いシーリング機能、及び支持体10とシール部材4との高いシーリング機能を得ることができる。シール部材4は対向板2の外側に配置された凹部2bに固定されていることが望ましい。
【0037】
固定手段7(
図1~
図4参照)は、対向板2と被めっき基板1、及び対向板2と支持体10とに均一に圧力を印可して、シール部材3及びシール部材4のシーリング機能を発揮させる。固定手段7の数は特に限定されない。
【0038】
固定手段7の機能は、対向板2と被めっき基板1、及び対向板2と支持体10とに均一に圧力を印可して、シール部材3及びシール部材4のシーリング機能を発揮させることである。その為、同様の機能を発揮できる手段であれば限定する必要は無い。例えば、固定手段7として、回転ラッチ、クリップ、ネジ、回転留め具等を用いてもよい。
【0039】
以上、
図1~
図9を用いて本発明のめっき治具を説明した様に、本発明のめっき治具11は、被めっき基板1の非めっき面1b側に面して被めっき基板1を固定する非めっき面側固定板13(
図3および
図4参照)と、被めっき基板1の被めっき面1a側の周縁端部を固定する被めっき面側固定板12(
図3および
図5参照)と、を備えている。更に、被めっき基板1の被めっき面1a側の周縁端部と対向板2との間(
図4参照)および被めっき基板1より外側の非めっき面側固定板13と対向板2との間には、それぞれ着脱可能なシール部材3、4と、対向板2を非めっき面側固定板13の支持体10に押圧する事によって、被めっき基板1を、支持体10と対向板2の間に挟持し、固定する固定手段7と、を備えている。
【0040】
図4に示した様に、被めっき基板1の被めっき面1a側の周縁端部と、被めっき面側固定板12の主たる構成要素である対向板2と、それらの間に備えられたシール部材3と、および被めっき面側固定板の対向板2と、被めっき基板1より外側の非めっき面側固定板13の主たる構成要素である支持体10と、それらの間に備えられたシール部材4と、によって密閉空間14が形成されている。この密閉空間14に、被めっき基板1の、非めっき面1bと、周縁端部の側面1cと、が配置される。その為、電気めっきを行う際に、それらが電気めっき液に浸漬されることが無い。
【0041】
また、
図8、9について説明した通り、シール部材3、3-1及びシール部材4、4-1は、硬度の異なる2種類以上のゴムを貼り合わせることにより、対向板2と被めっき基板1との間隔、及び対向板2と支持体10との間隔、とを偏りなく形成する機能と、対向板2と被めっき基板1とのシーリング、及び対向板2と支持体10とのシーリング、とを高める機能と、をゴムの硬度により役割分担している。この役割分担により向上したシーリング機能によって、被めっき基板1の、めっきしない面(非めっき面1b)と周縁端部の側面1cを電気めっき液に浸漬させることなく、被めっき面1aのシール部材3、4が密着している部分などを除いて、電気めっき液に浸漬して、電気めっきすることができる。
【0042】
また、めっき治具11は、ブスバー9、固定部8、リード線6を取り外すことで、エッチング治具、現像治具として使用することができる。また給電部5を取り外し、給電部5が貫通している対向板2の穴をふさぎ、エッチング治具、現像治具として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 被めっき基板
1a 被めっき面
1b 非めっき面
1c 周縁端部の側面
2 対向板
2a、2b、10a 凹部
3、3-1、4、4-1 シール部材
3a、3b、3c、4a、4b、4c ゴムパッキン
5 給電部
6 給電線
7 固定手段
8 固定部
9 ブスバー
10 支持体
11 めっき治具
12 (被めっき基板の)被めっき面側固定板
13 (被めっき基板の)非めっき面側固定板
14 電気めっき液が浸漬しない空間
15 (対向板2に形成された)開口部