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  • 特開-カードプリンター用カード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106145
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】カードプリンター用カード
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20220711BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220711BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B41M5/52 400
B32B27/30 101
B32B27/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000934
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上原 隆志
【テーマコード(参考)】
2H111
4F100
【Fターム(参考)】
2H111CA02
2H111CA04
2H111CA30
2H111CA42
4F100AK15B
4F100AK22B
4F100AK41C
4F100AK42A
4F100AK51C
4F100AK68B
4F100AL01B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100EJ65C
4F100GB90
4F100HB31D
4F100JA07B
4F100JA07C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】印画時及びラミネートフィルム転写時に、高い熱エネルギーが加えられた場合でも、貼り付きや印画品質の低下が発生することの無いカードプリンター用カードを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の一方の面に配置された受像層を有し、
前記受像層は、数平均分子量25,000以上50,000以下の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを含み、
該エチレン-酢酸ビニル共重合体の重量比が2.5~10.0%であり、
前記基材と前記受像層の間にアンカー層を有し、
該アンカー層が、数平均分子量10,000以上40,000以下のポリエステルウレタン樹脂を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面に配置された受像層を有し、
前記受像層は、数平均分子量25,000以上50,000以下の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを含み、
該エチレン-酢酸ビニル共重合体の重量比が2.5~10.0%であり、
前記基材と前記受像層の間にアンカー層を有し、
該アンカー層が、数平均分子量10,000以上40,000以下のポリエステルウレタン樹脂を含むことを特徴とするカードプリンター用カード。
【請求項2】
前記基材と前記アンカー層の間には、オフセット印刷層があることを特徴とする請求項1に記載のカードプリンター用カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに関し、詳しくは昇華熱転写方式によるカードプリンターで任意の画像が形成され、かつ同カードプリンターによる印字画像が転写されるときに加わる高温条件に対する耐熱性に優れた受像層が設けられたカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックカードは、個人情報を記録したIDカード(社員証、学生証、セキュリティカード等)、銀行カード、クレジットカード、交通カードの他、健康保険カード、各種会員カード等、多岐にわたるカードが使用されている。これらのカードとしては、個別認識できるように、その一方の面に、所有者の住所や名前等の文字情報が記録され、更に所有者以外の不正使用を防止する目的で、所有者の顔写真等の画像情報が記録されて使用されている。これらの個人情報は、通常、カード形状とされた後でカード表面に記録される。
【0003】
この様な個人情報が記録されたカードは、画像情報の鮮明性や文字情報を印字する際の簡便性を考慮して、熱転写シートを用いたカードプリンターで製造されている。例えば、基材上にイエロー、マゼンタおよびシアン等の色材層を設けた熱転写シートを用いて、カード上にカラーの人物画像を記録し、次いで、ブラックの色材層を設けた熱転写シートを用いて、基材上の人物画像を形成した以外の部分に文字等を記録することにより製造されている。熱転写シートを用いて得られる画像は、中間色の再現性や階調性に優れ、フルカラー写真画像に匹敵する高品質な画像を形成できるため、特に、記録画像により個別認識を必要とするようなIDカード等においては、熱転写シートを用いて製造することが一般的となっている。
【0004】
その際、カードには熱転写シートのインクを受容する受像層が設けられる。受像層としては、印画性に優れること、すなわち印画濃度が十分となり、印字ヌケ等が発生しないことが求められる。特許文献1には、受像層を基材に貼り合わせる加工法により形成し、その際に低温で貼り合わせることで受像層が熱ダメージを受けて印画濃度が低下するのを防ぐことができるとしたカードが開示されている。また特許文献2には、耐熱性が高く、熱転写シートとの貼り付きが発生し難いとしたカードが開示されている。
【0005】
また、受像層上に印画した画像の上にキズや汚れが付いて視認性が損なわれない様に、透明なラミネートフィルムをカード印画領域の全体に転写することが行われるが、その場合、受像層としては、印画性に優れることと共に、ラミネートフィルムとの密着性が良好なことが求められる。近年、プリンターの高速化に伴い、印画時及びラミネートフィルム転写時に、受像層にはより短時間でより高い熱エネルギーが与えられる傾向にある。
【0006】
特にラミネートフィルムの転写時には、200℃程度の温度が加えられるため、この熱エネルギーによって、画質が損なわれない受像層を設けることが求められている。また、ラミネートフィルムは基材/接着層/ラミネートフィルム層が積層されて構成されているが、この熱エネルギーによってラミネートフィルムの接着層が熱融着を発生し、ラミネートフィルム層の基材からの剥離性が悪くなり、ラミネートフィルム層が受像層に転写されない場合や、剥離痕によって印画物の品質を低下させてしまうことがあり、問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-137786号公報
【特許文献2】特許第6711073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、印画時及びラミネートフィルム転写時に、高い熱エネルギーが加えられた場合でも、貼り付きや印画品質の低下が発生することの無いカードプリンター用カードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
基材と、前記基材の一方の面に配置された受像層を有し、
前記受像層は、数平均分子量25,000以上50,000以下の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを少なくとも含み、
該エチレン-酢酸ビニル共重合体の重量比が2.5~10.0%であり、
前記基材と前記受像層の間にアンカー層を有し、
該アンカー層が、数平均分子量10,000以上40,000以下のポリエステルウレタン樹脂を少なくとも含むことを特徴とするカードプリンター用カードである。
【0010】
上記カードプリンター用カードにおいて、
前記基材と前記アンカー層の間には、オフセット印刷層があって良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカードプリンター用カードによれば、基材と受像層の間にアンカー層を設け、受像層とアンカー層が特定の樹脂を含むものとしたことで、ラミネートフィルムの転写時に200℃程度の熱エネルギーが加えられても印画性が損なわれず、ラミネートフィルムが受像層に適正に転写され、ラミネートフィルム/受像層/アンカー層/基材の密着性が良いカードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のカードプリンター用カードの一形態の断面模式図である。
図2】本発明のカードプリンター用カードにラミネートフィルムを積層した媒体の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0014】
図1は本発明のカードプリンター用カードの一形態の断面模式図である。また図2は、カードプリンター用カードの受像層に昇華転写リボンを用いて画像を形成し、ラミネートフィルムを貼り合わせた媒体の断面模式図である。本発明のカードプリンター用カード(以下、単に「カード」とも記す)10は、アンテナシート16の両面にコアシート15が積層され、その両方の外層に外装シート14が積層された基材19の、一方の外装シート14上にオフセット印刷層13、アンカー層12、受像層11が順次積層されて構成される。
【0015】
受像層11としては、昇華性染料(熱移行性染料)の受容性を求められることから、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレ
タン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、ブチラール樹脂及び塩素化プロピレン樹脂を用いることができる。中でも、数平均分子量25,000以上50,000以下の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを少なくとも含み、かつエチレン-酢酸ビニル共重合体の重量比は2.5~10.0%の範囲とする。この様な樹脂組成とすることで、後述するラミネートフィルム17を、例えば200℃程度の高温でラミネートしたときでも受像層11に記録された画像の画質が損なわれることがなく、またラミネートフィルム17との接着が適正に行える受像層11とすることができる。受像層11の厚みは、20~30μmとすると好ましい。
【0016】
アンカー層12は、数平均分子量10,000以上40,000以下のポリエステルウレタン樹脂を少なくとも含む。アンカー層12の厚みとしては、10~20μmとすると好ましい。アンカー層12を設けることで、ラミネートフィルム17/受像層11/アンカー層12/基材19の密着性が良いカード10とすることができる。
【0017】
外装シート14は、合成樹脂からなるシートであり、外装シートに使用される従来公知の材料から適宜選択して用いることができるが、具体的には、塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールとの共重合体、これらの共重合体とポリカーボネートやポリアリレートとのポリマーアロイからなる非晶質ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、トリアセチルセルロース樹脂などの合成樹脂、天然樹脂類、あるいはその樹脂の変性樹脂などを単独、あるいは組合せた複合体、アロイ体、ブレンド体などを用いることができる。外装シート14の厚みは、例えば125μmである。
【0018】
コアシート15としては、アンテナシート16との熱融着性が求められ、例えば非結晶性の樹脂シートを用いることができ、ポリエチレンテレフタレートの構成成分であるエチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールで置換したPET-Gなどの非結晶性ポリエステル樹脂が例示できるが、これに限定されない。コアシート15の厚みは、例えば250μmとすることができるが、これに限定されない。
【0019】
アンテナシート16は、典型的には金属製のアンテナパターンや電極パターンを形成した基板にICチップを搭載し、これらICチップとアンテナパターンを相互に結線したものである。金属製のアンテナパターンや電極パターンなどは、スクリーン印刷による印刷配線や、金属エッチングなどの方法により形成される。基板としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂からなるフィルム、あるいは、FR4等のガラス繊維材やセラミックからなる基板が用いられる。アンテナシート16の厚みは、例えば50μmである。
【0020】
また、各層の間には、特に図示していないが必要に応じて接着層が別途設けられても良い。接着層は、シート状のものとして設置されてあっても良く、またコーティング層あるいは印刷層として設けられてあっても良い。
【0021】
図2は、カード10の受像層11に昇華転写リボンを用いて画像18を形成し、ラミネートフィルム17を貼り合わされた媒体20の断面模式図であり、昇華転写リボンの昇華性インクは受像層11内部に拡散浸透した態様で画像18を形成している。
【0022】
ラミネートフィルム17は、透明な保護層であり、形成された画像18に傷がつくことを防ぎ、また耐久性向上に寄与するものである。このラミネートフィルム17は、従来から保護層形成用樹脂として知られている各種の樹脂で形成することができる。保護層形成
用樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物や、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等を例示することができる。このほかに必要に応じて、紫外線吸収剤、有機フィラー及び/又は無機フィラーを適宜添加することができる。
【0023】
以上説明した様に、本発明のカードは、受像層が数平均分子量25,000以上50,000以下の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを必須に含み、かつエチレン-酢酸ビニル共重合体の重量比は2.5~10.0%の範囲とすることで、ラミネートフィルムをラミネートする際に200℃程度の熱エネルギーが加えられても印画性が損なわれず、ラミネートフィルムが受像層に適正に転写され、数平均分子量10,000以上40,000以下のポリエステルウレタン樹脂を含むアンカー層により、ラミネートフィルム/受像層/アンカー層/基材の密着性が良い。
【実施例0024】
以下に実施例で本発明を具体的に説明する。
(実施例)
下記カード構成でカードを作製した。
(1)外装シート:白色PET(東レ製ルミラー(登録商標)E28G厚み125μm)(2)コアシート:PET-G(三菱ケミカル製PG-WHI-MC厚み250μm)
(3)受像層:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(日信化学製ソルバイン(登録商
標)C5R(数平均分子量26,000))
:エチレン-酢酸ビニル共重合体(三菱ケミカル製ノバテックEVA4%)
厚み2.0~3.0μm
(4)アンカー層:ポリエステルウレタン樹脂(東洋紡製バイロン(登録商標)UR-
4800(数平均分子量25,000))
厚み1.0~2.0μm
下記カードプリンターで、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色材層を設けた熱転写シートを使用して110℃で印字後、200℃でラミネートフィルムを転写したところ、中間色の再現性や階調性に優れた適正な印字画像が得られ、層間密着性が良好であった。
・カードプリンター:凸版印刷社製CP1750(直接昇華熱転写方式カードプリンター)
【0025】
(比較例1)
受像層組成中の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂を、分子量が24,500のものとした以外は、実施例1と同様の受像層とした。受像層以外の部材も実施例1と同様とし、同様にカードプリンターでの印画およびラミネートフィルムの転写を行った。
・結果:印画濃度が薄く、視認性が悪かった。
【0026】
(比較例2)
受像層組成中の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂を、分子量が52,000のものとした以外は、実施例1と同様の受像層とした。受像層以外の部材も実施例1と同様とし、同様にカードプリンターでの印画およびラミネートフィルムの転写を行った。
・結果:アンカー層との密着が弱く、セロテープ(登録商標)剥離試験で剥離した。
【0027】
(比較例3)
受像層組成中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の比率を、2.45%となる様にした以外は、実施例1と同様の受像層とした。受像層以外の部材も実施例1と同様とし、同様にカードプリンターでの印画およびラミネートフィルムの転写を行った。
・結果:耐熱効果がなく、インクリボンが貼り付き、印画性が適正ではなかった。
【0028】
(比較例4)
受像層組成中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の比率を、10.5%のものとした以外は、実施例1と同様の受像層とした。受像層以外の部材も実施例1と同様とし、同様にカードプリンターでの印画およびラミネートフィルムの転写を行った。
・結果:印画面が白化し、発色性が適正ではなかった。
【0029】
(比較例5)
アンカー層組成中のポリエステルウレタン樹脂を、分子量が、9,800のものとした以外は、実施例1と同様の受像層とした。受像層以外の部材も実施例1と同様とし、同様にカードプリンターでの印画およびラミネートフィルムの転写を行った。
・結果:基材との密着が弱く、セロテープ(登録商標)剥離試験で剥離した。
【0030】
(比較例6)
アンカー層組成中のボリエステルウレタン樹脂の分子量が40,000より大きいものとした以外は、実施例1と同様の受像層とした。受像層以外の部材も実施例1と同様とし、同様にカードプリンターでの印画およびラミネートフィルムの転写を行った。
・結果:印画面が白化し、発色性が適性ではなかった。
【符号の説明】
【0031】
10・・・カードプリンター用カード
11・・・受像層
12・・・アンカー層
13・・・オフセット印刷層
14・・・外装シート
15・・・コアシート
16・・・アンテナシート
17・・・ラミネートフィルム
18・・・画像
19・・・基材
20・・・媒体
図1
図2