IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カネソウ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-床用目地カバー装置 図1
  • 特開-床用目地カバー装置 図2
  • 特開-床用目地カバー装置 図3
  • 特開-床用目地カバー装置 図4
  • 特開-床用目地カバー装置 図5
  • 特開-床用目地カバー装置 図6
  • 特開-床用目地カバー装置 図7
  • 特開-床用目地カバー装置 図8
  • 特開-床用目地カバー装置 図9
  • 特開-床用目地カバー装置 図10
  • 特開-床用目地カバー装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106158
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】床用目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000950
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健治
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001PA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】目地に差し渡されたカバー体が、塵や砂などにより円滑に摺動し難くなることを抑制し得る床用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】一方の床85の側縁に設けられた支持受枠体41は、カバー体11の一端から垂設された挿入縁部15を挿入する案内溝47と、カバー体11の、挿入縁部15よりも目地内側の部位を支承する支承縁部45とを備え、支承縁部45で該カバー体11を支承した状態で、挿入縁部15を、案内溝47の底縁部43a上に空隙49をおいて保持するようにしたものである。かかる構成によれば、案内溝47に塵や砂などが侵入しても、砂などによってカバー体11が目地長手方向へ摺動し難くなってしまうことを抑制できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されるカバー体の一端部に設けられた被支持部が、一方の床の側縁に設けられた支持受枠体に、目地長手方向へ摺動可能に支持されると共に、該カバー体の他端部が他方の床の側縁に目地幅方向へ摺動可能に支持されてなる床用目地カバー装置において、
前記カバー体の被支持部は、カバー体の一端から垂設された挿入縁部を備え、
前記支持受枠体は、
前記一方の床の側縁に保持される上下方向の保持縁部と、
前記保持縁部の下部から目地内方に延出された底縁部と、
前記底縁部の内端から上方に延出され、前記保持縁部との間に、前記カバー体の挿入縁部が挿入される案内溝を形成する係止縁部と、
前記係止縁部の上部に設けられ、前記カバー体の、前記挿入縁部よりも目地内側の部位を支承する支承縁部と
を備え、
前記支承縁部により前記カバー体を支承した状態で、該カバー体の前記挿入縁部を前記底縁部上に空隙をおいて保持するものであることを特徴とする床用目地カバー装置。
【請求項2】
他方の床の側縁に、カバー体の他端部を目地幅方向へ摺動可能に支持する摺動受枠体が設けられたものであって、
前記カバー体は、
目地を覆う平板状の目地カバー板と、
前記目地カバー板の下面に、目地長手方向に間隔をおいて突設され、目地幅方向に延在する複数の被案内杆と
を備えたものであり、
前記摺動受枠体は、
目地長手方向に間隔をおいて並設され、前記カバー体の各被案内杆が夫々目地幅方向へ摺動可能に挿通される複数の案内部材と、
前記案内部材の上方に配設され、常態で前記カバー体の他端部を覆う床部カバー板と
を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の床用目地カバー装置。
【請求項3】
支持受枠体の支承縁部は、
カバー体に設けられた被案内杆の端部を支承するものであることを特徴とする請求項2に記載の床用目地カバー装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地を覆う床用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による被害を最小限に留めるために、緩衝機能を備えた免震装置によって下部を支持した建造物が多く建設されている。こうした免震構造の建造物間には、地震による変位を吸収し得る比較的広幅の目地が形成されており、かかる目地を覆う床用目地カバー装置が配設されている。
【0003】
こうした床用目地カバー装置として、例えば、特許文献1の構成が、本願出願人によって提案されている。かかる床用目地カバー装置201は、図11に示すように、隣接する建造物の床相互間の目地83を覆うカバー体202の一端にスライダー205が配設され、一方の建造物81の床85の側縁に、前記スライダー205を目地83の長手方向に摺動可能に支持するレール部材211が配設された構成である。そして、レール部材211は、前記床85の側縁に保持される導入縁部212と、該導入縁部212の下部から内方へ延出された受縁部213と、該受縁部213の先端から上方へ延出された係止縁部214とを備え、さらに、係止縁部214の上端に導入縁部212側へ突出する抜止縁部215を備えてなる。一方、スライダー205は、カバー体202の一端から垂設された延成縁部206と、該延成縁部206の下端に連成された摺動縁部207とを備えてなる。かかる従来構成にあっては、スライダー205が、レール部材211の導入縁部212と係止縁部214との間に上方から挿入されて、摺動縁部207が該レール部材211の受縁部213に支承される。
【0004】
前述した従来の床用目地カバー装置201は、地震の際に、隣接する建造物の床相互が目地長手方向に相対変位すると、レール部材211に支持されたスライダー205の摺動作用を介して、カバー体202の一端縁が一方の建造物81の床85の側縁に沿って目地長手方向に摺動して、該目地長手方向の相対変位に追従できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-231525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した従来の床用目地カバー装置201にあっては、レール部材211が、カバー体202のスライダー205を目地長手方向に摺動し得るように、該カバー体202よりも長尺の所定長さで形成されている。そのため、地震の無い常態で、レール部材211は、カバー体202の左右両側で、受縁部213がスライダー205の摺動縁部207を支承しておらず、該受縁部213上が開放されている。このように開放された受縁部213には、塵や砂や小石などが入り込んでしまうことがあり得る。そして、塵や砂等が入り込むと、レール部材211の受縁部213に支承されたスライダー205が、目地長手方向へ円滑な摺動し難くなってしまう虞があった。特に、こうした塵や砂等が入り込むという問題は、床用目地カバー装置201が屋外に配設された場合に発生し易くなる傾向にある。
【0007】
本発明は、塵や砂などの侵入によりカバー体が円滑に摺動し難くなることを、抑制し得る床用目地カバー装置を提案するものである。
【0008】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されるカバー体の一端部に設けられた被支持部が、一方の床の側縁に設けられた支持受枠体に、目地長手方向へ摺動可能に支持されると共に、該カバー体の他端部が他方の床の側縁に目地幅方向へ摺動可能に支持されてなる床用目地カバー装置において、前記カバー体の被支持部は、カバー体の一端から垂設された挿入縁部を備え、前記支持受枠体は、前記一方の床の側縁に保持される上下方向の保持縁部と、前記保持縁部の下部から目地内方に延出された底縁部と、前記底縁部の内端から上方に延出され、前記保持縁部との間に、前記カバー体の挿入縁部が挿入される案内溝を形成する係止縁部と、前記係止縁部の上部に設けられ、前記カバー体の、前記挿入縁部よりも目地内側の部位を支承する支承縁部とを備え、前記支承縁部により前記カバー体を支承した状態で、該カバー体の前記挿入縁部を前記底縁部上に空隙をおいて保持するものであることを特徴とする床用目地カバー装置である。
【0009】
かかる構成にあっては、一方の床の側縁に設けられた支持受枠体にカバー体の一端部が支持された状態で、該支持受枠体の案内溝に挿入された該カバー体の挿入縁部が、該支持受枠体の底縁部から浮上されていることから、前記案内溝に塵や砂等の侵入異物が入り込んだ場合に、該侵入異物によって、カバー体が目地長手方向へ摺動し難くなってしまうことを抑制できる。詳述すると、前記案内溝に侵入した前記侵入異物は、底縁部上に載ることから、該底縁部と空隙を介する前記挿入縁部との接触が抑制され得る。さらに、挿入縁部と底縁部との間に空隙があることから、挿入縁部が摺動する際に、該挿入縁部に接触した前記侵入異物が該空隙に逃避できるため、該侵入異物によって該挿入縁部の移動が妨げられ難くなっている。このように前記案内溝に侵入異物が入り込んだとしても、該案内溝に挿入された挿入縁部が、該侵入異物によって目地長手方向へ摺動し難くなってしまうこと、を抑制できる。したがって、本発明の構成によれば、前記支持受枠体の案内溝に侵入異物が侵入した状態であっても、地震の際に、カバー体が目地長手方向へ円滑に摺動できる。
【0010】
尚、本発明の構成にあって、カバー体の被支持部を構成する挿入縁部は、目地幅方向を板厚方向とする板状を成すものである構成が好適である。ここで、本発明は、カバー体の挿入縁部は、床相互間の目地長手方向への相対移動の際に、該カバー体を、支持受枠体の案内溝に沿って該目地長手方向へ摺動させる機能を有するものであり、カバー体による荷重が作用しない。そのため、前記した板状の挿入縁部を備えた構成では、該挿入縁部の板厚を比較的薄くすることができ、これに伴って、支持受枠体の案内溝を幅狭の構成とできる。そして、このように幅狭の案内溝とすることによって、該案内溝に前記侵入異物が入り込むことを抑制できることから、カバー体を目地長手方向へ円滑に摺動させ得るという前述した本発明の作用効果を一層向上できる。
【0011】
前述した本発明の床用目地カバー装置にあって、他方の床の側縁に、カバー体の他端部を目地幅方向へ摺動可能に支持する摺動受枠体が設けられたものであって、前記カバー体は、目地を覆う平板状の目地カバー板と、前記目地カバー板の下面に、目地長手方向に間隔をおいて突設され、目地幅方向に延在する複数の被案内杆とを備えたものであり、 前記摺動受枠体は、目地長手方向に間隔をおいて並設され、前記カバー体の各被案内杆が夫々目地幅方向へ摺動可能に挿通される複数の案内部材と、前記案内部材の上方に配設され、常態で前記カバー体の他端部を覆う床部カバー板とを備えたものである構成が提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、地震の際に、隣接する建造物の床相互が目地幅方向に相対変位した場合に、カバー体の被案内杆が、他方の床に設けられた摺動受枠体の案内部材に対して摺動することによって、該カバー体が目地幅方向に移動して前記床相互の相対変位に追従できる。また、このように隣接する建造物の床相互が目地幅方向に相対変位する場合には、一方の床に設けられた支持受枠体の案内溝に挿入されたカバー体の挿入縁部が、該案内溝を介して対設された保持縁部と係止縁部とによって、目地幅方向への移動が制限され、カバー体を当該床と一体的に移動させることができる。したがって、本構成によれば、カバー体を床相互の目地幅方向への相対変位に安定して追従させることができる。
【0013】
前述した本発明の床用目地カバー装置にあって、支持受枠体の支承縁部は、カバー体に設けられた被案内杆の端部を支承するものである構成が提案される。
【0014】
かかる構成にあっては、目地カバー板の下面に突設された被案内杆の端部が支持受枠体の支承縁部に支持されたものであることから、カバー体を該支持受枠体に一層安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の床用目地カバー装置は、前述したように、一方の床の側縁に設けられた支持受枠体にカバー体の一端部が支持された状態で、該支持受枠体の案内溝に挿入された該カバー体の挿入縁部と該案内溝の底縁部との間に空隙が形成されたものであるから、該挿入縁部が、該案内溝に入り込んだ塵や砂等の侵入異物によって目地長手方向へ摺動し難くなってしまうことを抑制できる。したがって、本発明の構成によれば、前記支持受枠体の案内溝に侵入異物が侵入しても、地震の際にカバー体が目地長手方向へ円滑に摺動できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】床用目地カバー装置1の施工状態を示す縦断面図である。
図2】床用目地カバー装置1の施工状態を示す平面図である。
図3】床用目地カバー装置1の施工状態を示す斜視図である。
図4】床用目地カバー装置1の分解斜視図である。
図5図1中のX部拡大図である。
図6】抜止部材を省略して示す図2中のY-Y線断面図である。
図7図2中のZ-Z線断面図である。
図8】カバー体11の挿入縁部15と支持受枠体41との連結状態を示す、下方から見た部分拡大斜視図である。
図9】カバー体11と支持受枠体41とを分離して示す、下方から見た部分拡大斜視図である。
図10】カバー体11と支持受枠体41とを分離して示す、上方から見た部分拡大斜視図である。
図11】従来構成の床用目地カバー装置201を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
床用目地カバー装置1は、図1~3に示すように、隣接する建造物81,82間に設けられた目地83に配設されて、両建造物81,82を連絡する通路を構成する。ここで、本実施例にあっては、床用目地カバー装置1が、両建造物81,82を連絡する屋外の通路に設けられている。
【0018】
前記建造物81,82はそれぞれ、緩衝機能を備えた免震装置(図示せず)によって下部が支持された免震構造の建造物である。目地83は、建造物81と建造物82との間に所定幅で形成され、地震の際に建造物81と建造物82との水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0019】
尚、本実施例では、目地83の幅方向を、床用目地カバー装置1の前後方向とし、目地83に沿った長手方向を、床用目地カバー装置1の左右方向として説明する。すなわち、本実施例の前後方向が、本発明の目地幅方向に相当し、左右方向が、本発明の目地長手方向に相当する。そして、目地83の前側にある建造物82を、第二建造物82とし、目地83の後側にある建造物81を、第一建造物81として、以下で説明する。
【0020】
本実施例の床用目地カバー装置1は、前記した目地83に差し渡されるカバー体11と、該カバー体11の後端部を左右方向(目地長手方向)へ摺動可能に支持する支持受枠体41と、該カバー体11の前端部を前後方向へ摺動可能に支持する摺動受枠体21とを備える。ここで、支持受枠体41は、前記した第一建造部81の床85の側縁に配設され、摺動受枠体21は、前記した第二建造物82の床86の側縁に配設される。
【0021】
前記した第二建造物82の床86の側縁には、底面を略矩形状とする所定深さの支持段縁91が設けられており、該支持段縁91に前記摺動受枠体21が配設されている。摺動受枠体21は、左右方向に所定間隔をおいて前記支持段縁91に複数並設された長尺状の案内部材31と、該案内部材31上で該支持段縁91を覆う矩形板状の床部カバー板23と、該支持段縁91の前端に左右方向に亘って配設された支持縁26と、該支持段縁91の後端に左右方方向に亘って配設された断面略L形の受縁27とを備える。前記床部カバー板23は、その前縁が前記支持縁26の上部に螺子により連結されており、前記床86と略同一の高さとなるように配設される。ここで、前記支持段縁91は、図2に示すように、前記カバー体11を目地83に差し渡した状態で、該カバー体11の左右幅に対応する所定幅で形成されている。また、前記床部カバー板23は、二枚の矩形状鋼板が重ね合わされてなるものであり、前記支持段縁91の全域を覆う上板の後部に、該上板よりも短い前後長の下板が重ね合わされた構成である。そして、上板には、その上面に滑止め用の突部(図示せず)が複数設けられている。
【0022】
前記した各案内部材31は、その前端が前記支持縁26の下部に螺子より固結されて、前後方向に沿って前記支持段縁91に配設されている。案内部材31は、図4,7に示すように、支持段縁91の底面に載置される底縁部32と、該底縁部32の左右端から夫々立設された側縁部33,33と、各側縁部33,33から左右外方へ延出された支持縁部34,34とを備え、前記底縁部32と左右の側縁部33,33とによって、上方開口する挿通間隙35が形成されている。尚、本実施例にあっては、支持段縁91に四個の案内部材31が配設され、該案内部材31が該支持段縁91に配設された状態で、該案内部材31の後端部が目地83内に突出している。
【0023】
前記したカバー体11は、図1~4に示すように、前記第一建造物81の床85と第二建造物82の床86との間に差し渡されて目地83を覆うものであり、矩形板状の目地カバー板12と、該目地カバー板12の下面に左右方向へ所定間隔をおいて並設された複数の被案内杆13とを備える(図8,9参照)。各被案内杆13は、長尺状の角パイプにより構成され、前後方向に沿って目地カバー板12の下面に夫々固結されて、前記した各案内部材31の挿通間隙35に、該案内部材31の長手方向(前後方向)へ摺動可能に夫々挿通される。こうしたカバー体11は、図7に示すように、各被案内杆13が前記した各案内部材31の挿通間隙35に挿通されて、目地カバー板12が各案内部材31の支持縁部34,34に支承される。これにより、カバー体11は、第二建造物82の床86に設けられた摺動受枠体21に対して、前後方向へ摺動可能に配設される。ここで、本実施例にあっては、目地カバー板12が各案内部材31の支持縁部34,34に支承された状態で、各被案内杆13が該案内部材31の底縁部32から空隙をおいて浮上している。
【0024】
このように前記案内部材31に支持されたカバー体11は、前記第二建造物82の支持段縁91上に配置された前部が、前記した床部カバー板23により覆われる(図1,2参照)。ここで、床部カバー板23は、カバー体11の前部に乗載され、この乗載された状態で、該床部カバー板23の上面が、第二建造物82の床86と略同一の高さとなる(図1参照)。
【0025】
本実施例にあって、カバー体11の目地カバー板12は、二枚の矩形状鋼板が水平方向に接合されて、一枚板状に形成されたものである。そして、地震の無い常態で目地83上に位置して前記床部カバー板23に覆われない後側の鋼板は、その上面に滑止め用の加工(例えば、複数の窪み)が行われたものであり、該常態で該床部カバー板23に覆われる前側の鋼板は、前記滑止めの加工が実行されていないものである。これにより、地震の際に、床部カバー板23が目地カバー板12上を前後方向へ摺動し易くしている。
【0026】
前記カバー体11は、その後端部が、前記第一建造物81の床85の側縁に配設された前記支持受枠体41に、左右方向へ摺動可能に連結されている。カバー体11の後端部を前記支持受枠体41に連結する構成が、本発明の要部にかかり、以下に説明する。
【0027】
カバー体11には、図6,9に示すように、目地カバー板12の後端から垂設された挿入縁部15が、該カバー体11の左右方向に亘って設けられている。挿入縁部15は、左右方向に細長い鋼板から構成されており、該挿入縁部15の上端が前記目地カバー板12の後端に接合されて形成されてなる。そして、カバー体11は、各被案内杆13の後端が前記挿入縁部15の前面に当接されており、該挿入縁部15が該被案内杆13よりも下方へ突出している(図5参照)。
【0028】
前記支持受枠体41は、図1,3に示すように、第一建造物81の床85の側縁に固結されたものであり、前記カバー体11を左右方向(目地長手方向)へ摺動させ得るように、該カバー体11の左右幅よりも長い所定の左右方向長さで形成されている。この支持受枠体41は、図5,8,9に示すように、該床85の側縁に保持される上下方向の保持縁部42と、該保持縁部42の下端から下斜め前方へ延出された傾斜縁部43と、該傾斜縁部43から上方へ延出された係止縁部44と、該係止縁部44の上端から前方へ延出された水平状の支承縁部45とを備えている。尚、本実施例の支持受枠体4は、前記保持縁部42の上端から後方へ延出された水平縁部(図示せず)を備えている。
【0029】
ここで、係止縁部44は、保持縁部42との間に、前記カバー体11の挿入縁部15を挿入可能な間隙を介して配設されている。そして、保持縁部42と、係止縁部44と、前記傾斜縁部43とによって、上方へ開口された案内溝47が形成されており、該案内溝47の溝底が、該前記傾斜縁部43の、該保持縁部42と該係止縁部44との間に位置する部位(底縁部43a)により構成されている。この案内溝47は、前記挿入縁部15を上方から挿入可能かつ左右方向へ摺動可能であり、支持受枠体41の左右方向長さに亘って設けられている。また、本実施例にあって、前記傾斜縁部43は、前記案内溝47を構成する底縁部43aと、前記係止縁部44よりも前方へ突出された突出縁部43bとにより構成されている。すなわち、係止縁部44は、底縁部43aの前端から上方へ延出されたものである。
【0030】
支持受枠体41は、カバー体11の挿入縁部15を前記案内溝47に挿入させることで、前記支承縁部45に、当該カバー体11の各被案内杆13の後端部が支承される。そして、支承縁部45に各被案内杆13を支承した状態で、案内溝47に挿入されたカバー体11の挿入縁部15を、前記底縁部43a上に空隙49を介した浮上位置で保持する。さらに、支持受枠体41が支承縁部45によりカバー体11を支持した状態で、目地カバー板12が第一建造物81の床85と略同一の高さ位置に配される。こうしたカバー体11の支持態様を構成するように、該カバー体11の挿入縁部15の高さ寸法、支持受枠体41の支承縁部45の高さ位置や案内溝47の溝深さなどの、各構成部位の寸法形状が設定されている。
【0031】
また、本実施例にあっては、前記案内溝47の前後幅(保持縁部42と係止縁部44との間隔)が、前記挿入縁部15の板厚(前後厚)よりも若干広く設定されている。すなわち、案内溝47は、カバー体11の挿入縁部15を左右方向へ円滑に摺動可能、かつ前後幅(開口幅)を可及的に狭く形成したものである。こうした構成により、上方開口する案内溝47に、塵や砂等が侵入し難くしている。
【0032】
さらにまた、本実施例の支持受枠体41は、図8~10に示すように、前記支承縁部45および係止縁部44の強度と剛性とを補強する複数の補強縁部48が、左右方向に所定間隔をおいて配設されている。そして、係止縁部44には、隣合う補強縁部48の間に、前記案内溝47と目地83とを連通する排出孔50が複数開口形成されている。ここで、排出孔50は、係止縁部44の下端から上方へ延成されて形成されており、カバー体11の挿入縁部15が案内溝47に挿入された状態で、該挿入縁部15直下の前記空隙49は、該排出孔50を介して目地83と連通されている(図5参照)。
【0033】
一方、本実施例では、支持受枠体41の案内溝47に挿入されたカバー体11の挿入縁部15が該案内溝47から上方へ抜け出てしまうことを防止するための、抜止部材19を備える。この抜止部材19は、図5,8に示すように、カバー体11の被案内杆13に固定される固定縁部と、該固定縁部から下方へ突出された断面略L形の抜止縁部とを備えたものであり、前述したようにカバー体11が支持受枠体41の支承縁部45に支承された状態で、該固定縁部が該カバー体11の被案内杆13に螺子(図示せず)により固結されて取り付けられる。
【0034】
前述したように、目地83に差し渡されるカバー体11は、その後端に垂設された挿入縁部15が、第一建造物81の床85の側縁に配設された支持受枠体41の案内溝47に挿入され、かつ支持受枠体41の支承縁部45に支承されることにより、該第一建造物81に、左右方向へ相対移動可能に連結される。そして、カバー体11は、各被案内杆13が第二建造物82の床86の側縁に配設された各案内部材31の挿通間隙35に挿入され、且つ該案内部材31の支持縁部34に支承されることにより、該第二建造物82に、前後方向へ相対移動可能に支持される。
【0035】
このように配設された床用目地カバー装置1は、地震の際に、第一建造物81と第二建造物82とが目地83の長手方向(左右方向)に相対変位すると、カバー体11の各被案内杆13が各案内部材31によって位置規制されることから、カバー体11が第二建造物82と共に左右方向へ変位して、該カバー体11の挿入縁部15が支持受枠体41の案内溝47に沿って左右方向へ摺動する。これにより、前記した目地83の長手方向の相対変位に追従できる。
一方、地震の際に、第一建造物81と第二建造物82とが目地83の幅方向(前後方向)に相対変位すると、カバー体11の挿入縁部15が支持受枠体41の係止縁部44によって位置規制されることから、カバー体11が第一建造物81と共に前後方向へ変位して、該カバー体11の各被案内杆13が各案内部材31の挿通間隙35に沿って前後方向へ摺動する。これにより、前記した目地83の幅方向の相対変位に追従できる。ここで、カバー体11の各被案内杆13と摺動受枠体21の各案内部材31とにより、該カバー体11を前後方向へ相対移動させる案内作用を生じさせている。
【0036】
前述した本実施例の構成は、第一建造物81の床85の側縁に配設された支持受枠体41が、カバー体11の後端に設けられた挿入縁部15を挿入する案内溝47と、該カバー体11の各被案内杆13の後端を支承する支承縁部45とを備え、該支承縁部45にカバー体11を支承した状態で、該カバー体11の挿入縁部15を、前記案内溝47の底縁部43a上に空隙49を介して配置させるものである。このようにカバー体11の後端が支持受枠体41に連結されることにより、前述したように、該カバー体11が第一建造物81に対して目地83の長手方向へ摺動可能であり、地震の際における目地83の長手方向への相対変位に追従できる。すなわち、支持受枠体4の案内溝47とカバー体11の挿入縁部15とにより、該カバー体11を左右方向へ相対移動させる案内作用を生じさせている。
そして、本実施例にあって、前記支持受枠体41は、案内溝47により左右方向へ案内されるカバー体11の挿入縁部15を直接支持せず、かつ該挿入縁部15を、該案内溝47の底縁部43a上に前記空隙49を介して浮上させた状態で保持する。かかる構成によれば、上方開口する構造である前記案内溝47に、塵や砂等が侵入すると、これら塵や砂等の侵入異物が該案内溝47の底縁部43aに載って前記空隙49内に位置し易い。そのため、カバー体11の挿入縁部15が、案内溝47に侵入した侵入異物と接触することを抑制できる。これにより、案内溝47内における挿入縁部15が前記侵入異物によって左右方向へ摺動し難くなることを抑制できる。さらに、前記空隙49を有することにより、前記カバー体11の挿入縁部15が摺動する際に、該挿入縁部15を接触した前記侵入異物が該空隙49に逃避できる。これによっても、挿入縁部15が前記侵入異物により摺動し難くなることを抑制するという、前述の作用効果が発揮される。こうしたことから、本実施例の構成によれば、前記支持受枠体41の案内溝47に侵入異物が侵入したとしても、地震の際に、カバー体11が目地83の長手方向へ円滑に摺動できる。
【0037】
また、本実施例では、前記案内溝47の底縁部43aが、下方傾斜する傾斜縁部43により構成されると共に、係止縁部44の下端に、前記空隙49と目地83とを連通させる排出孔50が複数設けられている。これにより、案内溝47に侵入した前記侵入異物が該排出孔50を介して目地83へ排出され易いことから、該侵入異物によって案内溝47内での挿入縁部15が摺動し難くなることを抑制する効果が向上し、該挿入縁部15が一層安定して摺動できる。したがって、地震の際にカバー体11が目地83の長手方向へ円滑に摺動できるという、前述の作用効果が一層向上する。
【0038】
また、本実施例の構成は、前述したように、カバー体11の挿入縁部15と支持受枠体41の案内溝47とにより該カバー体11を左右方向へ案内する機能を有するものであり、該挿入縁部15が該カバー体11の荷重を支持しない。そのため、挿入縁部15は、カバー体11の荷重を支持可能な耐力を要せず、比較的薄い板厚に設定でき、これに伴って、案内溝47を比較的狭い溝幅とすることができる。このように案内溝47の溝幅を狭くできることによって、該案内溝47への前記侵入異物の侵入を抑制できることから、本構成によれば、該案内溝47に侵入した侵入異物によって挿入縁部15が左右方向へ摺動し難くなることを抑制できるという、前述した本実施例の作用効果を、一層向上できる。
一方、本実施例の構成は、支持受枠体41の支承縁部45によって、カバー体11の各被案内杆13の後端を支承するものであり、該被案内杆13が左右方向に間隔をおいて配設されている。これにより、支持受枠体41は、カバー体11の荷重を左右方向に比較的均等に支持でき、該カバー体11を安定して支持することができる。
【0039】
また、本実施例の構成は、カバー体11の各被案内杆13が摺動受枠体21の各案内部材31によって前後方向へ案内されるものであり、該被案内杆13と案内部材31とによって前後方向に伸縮する伸縮構造が形成されている。そして、この伸縮構造によって、カバー体11を、目地83の幅方向へ移動可能とする一方、目地83の長手方向への移動を規制して、目地83の長手方向へ摺動させている。したがって、前記伸縮構造によれば、カバー体11を、比較的長期に亘って安定して前後方向へ摺動できると共に、左右方向への移動も安定して生じさえ得る。
【0040】
尚、本実施例にあって、第一建造物81の床85が、本発明にかかる一方の床に相当し、第二建造物82の床86が、本発明にかかる他方の床に相当する。そして、カバー体11の後端部が、本発明にかかるカバー体の一端部に相当し、カバー体11の前端部が、本発明にかかるカバー体の他端部に相当する。
また、本実施例にあって、カバー体11の挿入縁部15と、支持受枠体41の支承縁部45により支承される被案内杆13の後端部とにより、本発明にかかる被支持部が構成されている。そして、支承縁部45により支承される被案内杆13の後端部が、本発明にかかる前記カバー体の前記挿入縁部よりも目地内側の部位に相当する。
【0041】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、実施例では、カバー体11が、目地カバー板12と挿入縁部15とを別体形成したものであるが、これに限らず、例えば、目地カバー板を構成する鋼板の後端部を下方へ折り曲げ加工することにより、該目地カバー板と挿入縁部とを一体形成することができる。
【0042】
また、実施例では、支持受枠体41の底縁部43aが、下方傾斜する傾斜縁部43により構成されたものであるが、これに限らず、底縁部が水平方向に沿って形成されたものであっても良い。また、支持受枠体が突出縁部43bを備えない構成とすることもできる。
【0043】
また、実施例では、支持受枠体41の係止縁部44の下部に排出孔50が開口形成された構成であるが、これに限らず、排出孔は、案内溝47の空隙49と目地83とを連通する構成であれば、適宜変更して設けることが可能である。例えば、実施例にあって、係止縁部44の下部と突出縁部43bとに連成された形態の排出孔を備えたものとすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 床用目地カバー装置
11 カバー体
12 目地カバー板
13 被案内杆
15 挿入縁部
21 摺動受枠体
23 床部カバー板
31 案内部材
41 支持受枠体
42 保持縁部
43a 底縁部
44 係止縁部
45 支承縁部
47 案内間隙
81 第一建造物(建造物)
82 第二建造物(建造物)
83 目地


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11