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  • 特開-間仕切り用生地、および間仕切り 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106180
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】間仕切り用生地、および間仕切り
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20220711BHJP
   A47G 5/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
E04B2/74 561H
A47G5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001015
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】北本 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】浜口 裕香
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智栄子
(57)【要約】
【課題】飛沫感染症の蔓延および光線反射を抑制し、かつ間仕切りを挟んだ相手の視認性を確保しつつ会話の聞き取りやすさに影響を与えにくい間仕切り用生地などを提供する。
【解決手段】間仕切り用生地は、間仕切りとして設置される生地であって、前記生地の繊維表面に抗微生物剤が付着しており、かつ以下の要件(A)(B)(C)(D)を全て満足する。(A)JIS L1055(2009)に規定されるA法で測定した遮光率が20%以上85%以下であること。(B)目付が10g/m以上150g/m以下であること。(C)JIS L1902(2015)に規定される菌液吸収法にて測定した黄色ブドウ球菌の抗菌活性値が増殖値以上である制菌性を有すること。(D)JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法にて測定したA型インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値が2.0以上である抗ウイルス性を有すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切りとして設置される生地であって、前記生地の繊維表面に抗微生物剤が付着しており、かつ以下の要件(A)(B)(C)(D)を全て満足することを特徴とする、間仕切り用生地。
(A)JIS L1055(2009)に規定されるA法で測定した遮光率が20%以上85%以下であること。
(B)目付が10g/m以上150g/m以下であること。
(C)JIS L1902(2015)に規定される菌液吸収法にて測定した黄色ブドウ球菌の抗菌活性値が増殖値以上である制菌性を有すること。
(D)JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法にて測定したA型インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値が2.0以上である抗ウイルス性を有すること。
【請求項2】
前記生地は、さらに、以下の要件(E)を満足することを特徴とする、請求項1に記載の間仕切り用生地。
(E)JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法に準拠して測定したヒトコロナウイルス229Eの抗ウイルス活性値が2.0以上である抗ウイルス性を有すること。
【請求項3】
前記生地を構成する繊維の素材は、合成繊維からなり、かつ前記生地を構成する繊維は、スパン糸、マルチフィラメントの無撚糸、加工糸からなる群より選ばれる1つ以上の繊維からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の間仕切り用生地。
【請求項4】
前記生地の表面に付着している抗微生物剤が、少なくとも銀を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の間仕切り用生地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の間仕切り用生地を少なくとも一部に用いていることを特徴とする、間仕切り。
【請求項6】
前記間仕切りは、卓上用であることを特徴とする、請求項5に記載の間仕切り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切り用生地および間仕切りに関する。
【背景技術】
【0002】
肺炎球菌、百日咳菌、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどの微生物が原因となる感染症は、その多くが咳、くしゃみ、会話などで発生する呼吸飛沫によるものであり、感染経路として一般的である。
【0003】
外界からの飛沫の吸入量を低減したり、自身が飛沫を飛散させることを抑制したりするためにマスクの着用が推奨されているが、食事、接客、肌トラブル、マスク携帯忘れなどの理由により、マスクを着用できない場面が存在する。また、作業に集中したり、くつろいだりする際には、マスクを外して呼吸を楽にしたいという要望も強い。
【0004】
マスク着用以外で飛沫の飛散する範囲を限定する手段として、板やシートで空間を区切る間仕切りが一般的に使用されている。特にポリエチレンテレフタレートやアクリル樹脂などの透明度が高いプラスチック製の板やシートで作られた間仕切りは、間仕切りを挟んだ相手が視認できるため、食卓、オフィスのデスク、店舗のカウンターなど対面する場面にて好ましく用いられている。
【0005】
しかし、これらプラスチック製の間仕切りでは、声が間仕切りに反射または吸収され、声がこもったり声質が変化してしまったりして会話が阻害されてしまう課題がある。さらに、プラスチック製の間仕切りは、その光沢(光線反射率の高さ)に起因する自分の顔の映り込みや、蛍光灯などの照明によるグレアといった光線反射が間仕切りによって発生し、食事や作業、会話などの際に気が散ってしまうという課題もある。
【0006】
特許文献1では、ポリエチレンテレフタレート樹脂やアクリル樹脂等の合成樹脂製の芯板に、装飾性の生地を接着一体化することで意匠性の高いパーティション板を提供する技術が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、衛生的で快適な空間を形成するため、間仕切りを構成する部材の表面に抗菌塗料を塗布してコーティング層を形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-210130号公報
【特許文献2】特開平8-232374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示されている発明は、間仕切りによる光線反射の課題は解決されているものの、基本的に目隠しおよび防音を目的とするものであり、間仕切りを挟んだ相手の視認性や、会話の聞き取りやすさが阻害されてしまう課題を考慮したものではない。
【0010】
また、特許文献2に開示されている発明により、間仕切りに抗菌性を付与することが可能となるが、特許文献1と同様に、間仕切りを挟んだ相手の視認性や、会話の聞き取りやすさが阻害されてしまう課題を考慮したものではない。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、飛沫の飛散による感染症の蔓延および間仕切りによる光線反射を抑制し、かつ間仕切りを挟んだ相手の視認性を確保しつつ、会話の聞き取りやすさに影響を与えにくい間仕切り用生地および間仕切りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明の一態様を完成するに至った。
【0013】
(1)本発明にかかる間仕切り用生地は、間仕切りとして設置される生地であって、前記生地の繊維表面に抗微生物剤が付着しており、かつ以下の要件(A)(B)(C)(D)を全て満足することを特徴とする。
(A)JIS L1055(2009)に規定されるA法で測定した遮光率が20%以上85%以下であること。
(B)目付が10g/m以上150g/m以下であること。
(C)JIS L1902(2015)に規定される菌液吸収法にて測定した黄色ブドウ球菌の抗菌活性値が増殖値以上である制菌性を有すること。
(D)JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法にて測定したA型インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値が2.0以上である抗ウイルス性を有すること。
【0014】
(2)また、前記生地は、さらに、以下の要件(E)を満足するとよい。
(E)JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法に準拠して測定したヒトコロナウイルス229Eの抗ウイルス活性値が2.0以上である抗ウイルス性を有すること。
【0015】
(3)また、前記生地を構成する繊維の素材は、合成繊維からなり、かつ前記生地を構成する繊維は、スパン糸、マルチフィラメントの無撚糸、加工糸からなる群より選ばれる1つ以上の繊維からなるとよい。
【0016】
(4)また、前記生地の表面に付着している抗微生物剤が、少なくとも銀を含むとよい。
【0017】
(5)本発明にかかる間仕切りは、上記いずれかの間仕切り用生地を少なくとも一部に用いていることを特徴とする。
【0018】
(6)また、前記間仕切りは、卓上用であるとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、飛沫の飛散による感染症の蔓延および間仕切りによる光線反射を抑制し、かつ間仕切りを挟んだ相手の視認性を確保しつつ、会話の聞き取りやすさに影響を与えにくい間仕切りを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施の形態にかかる間仕切りの斜視図である。
図2図2は、実施の形態にかかる間仕切りの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、本発明は、以下の態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲において多くの変形が可能である。
【0022】
<間仕切り用生地>
本実施の形態にかかる間仕切り用生地は、間仕切りとして設置される生地であって、前記生地の繊維表面に抗微生物剤が付着しており、かつ以下の要件(A)(B)(C)(D)を全て満足することを特徴とする。
【0023】
(A)JIS L1055(2009)に規定されるA法で測定した遮光率が20%以上85%以下であること。
(B)目付が10g/m以上150g/m以下であること。
(C)JIS L1902(2015)に規定される菌液吸収法にて測定した黄色ブドウ球菌の抗菌活性値が増殖値以上である制菌性を有すること。
(D)JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法にて測定したA型インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値が2.0以上である抗ウイルス性を有すること。
【0024】
間仕切り用生地に用いられる生地を構成する繊維の素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ乳酸、芳香族ポリアミド、ポリイミドまたはポリフェニレンサルファイドといった合成繊維、または、アセテートやプロミックスといった半合成繊維、キュプラ、レーヨンといった再生繊維、綿、麻、絹、羊毛といった天然繊維、あるいは、これらの素材の混繊、混紡、交織または交編品などを用いることができる。特に、加工の容易性や、洗濯など取り扱い容易性といった観点から、合成繊維を素材として用いることが好ましい。
【0025】
間仕切り用生地に用いられる生地を構成する繊維は、スパン糸、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸のいずれであってもよい。また、この繊維を用いた糸は、無撚糸、撚糸、および加工糸のいずれであってもよい。加工糸としては、特に限定されるものではないが、例えば仮撚加工糸、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、インターレース加工糸、捲縮糸、サイドバイサイド複合加工糸などを用いることができる。特に、糸自身に膨らみを有し、飛沫の捕集性に優れるスパン糸、マルチフィラメントの無撚糸、加工糸からなる群より選ばれる1つ以上の繊維からなるとよい。
【0026】
間仕切り用生地に用いられる生地を構成する繊維の断面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドックボーンなどが挙げられる。
【0027】
間仕切り用生地に用いられる生地は、平織、綾織、朱子織などの組織の織物、経編、緯編(横編または丸編)などの組織の編物、または不織布など、いかなる形態であってもよい。
【0028】
また、間仕切り用生地に用いられる生地は、間仕切りを挟んだ相手の視認性を大きく阻害しない範囲において、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。生地を着色する場合には、分散染料、カチオン染料、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、硫化染料等の染料、蛍光増白剤、または顔料などを用いることで生地を着色することができる。生地を着色するために用いられる材料としては、上述したものに限定されず、各生地の素材に合わせて適切なものを選択すればよい。
【0029】
本実施の形態にかかる間仕切り用生地において、生地の繊維表面には、抗微生物剤が付着している。抗微生物剤としては、例えば、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤などが挙げられる。より具体的には、硫酸アルミニウムや酸化亜鉛などの両性物質、銀や銅などの貴金属およびそれらを多孔質体などに担持した粒子、第4級アンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、ベタインなどの両性界面活性剤、ジンクピリチオン、タンニン酸、酸化チタンや酸化タングステンなどの光触媒などである。生地の繊維表面に付着させる抗微生物剤は、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよく、また、付着量の向上や付着した抗微生物剤の脱離を防ぐためのバインダーと組み合わせてもよい。
【0030】
特に、抗微生物剤は、少なくとも銀を含むとよい。銀は、ごく微量で真菌からウイルスまで幅広い抗微生物スペクトルを有し、安全性が高く環境汚染をしない抗微生物剤であるため、様々な感染症に対して抑制効果を発揮し、かつ日常生活で使用できるとの観点から好ましい。なお、銀は、安定的に生地の繊維表面に付着させるとの観点から、後述するバインダーを併用し、架橋やグラフト重合により繊維に結合させたり、メソポーラスシリカやゼオライトなどの多孔質体に担持した形態で用いたりすることが好ましい。
【0031】
生地の繊維表面に抗微生物剤を付着させる方法は、抗微生物剤と必要に応じてバインダーなどの助剤とを水に溶解または分散させた処理液を作製し、浸漬、噴霧または塗付などで用意した生地に処理液を付与し、脱水や乾燥させる方法が挙げられる。この方法により、抗微生物剤を生地の繊維表面に付着させることができる。なお、バインダーを併用する場合は、熱処理や活性エネルギー線照射による架橋促進、および/または、湿熱処理によるグラフト重合などを行ってもよい。複数種の抗微生物剤を生地の繊維表面に付着させる場合には、処理液中に複数種の抗微生物剤を添加しておいて複数種の抗微生物剤を一括して生地に付着させる加工を行ってもよいし、複数種の抗微生物剤が別々に添加された複数の処理液を準備しておいて複数種の抗微生物剤を段階的に生地に付着させる加工を行ってもよい。
【0032】
なお、間仕切り用生地に用いられる生地には、さらに、所期の目的を逸脱しない限りにおいて、防炎加工、撥水加工、紫外線遮蔽加工、または、赤外線吸収加工などの機能性付与加工を行ってもよいし、柄の印刷加工、エンボス加工、またはプリーツ加工などの意匠性を向上させる加工を行ってもよい。意匠性を向上させる加工を行う場合には、意匠が間仕切りの周辺部に配置されるように加工を行い、間仕切りを挟んだ相手の視認性を大きく阻害しない程度とする。
【0033】
本実施の形態における間仕切り用生地は、JIS L1055(2009)に規定されるA法で測定した遮光率が20%以上85%以下である。間仕切り用生地の遮光率が20%以上であれば、間仕切り用生地が飛沫の飛散を抑制する能力を十分に発揮できる。また、間仕切り用生地の遮光率が85%以下であれば、間仕切りを挟んだ相手の表情を十分に認識することができ、会話の際の違和感を抑制することができる。飛沫の飛散の抑制と間仕切りを挟んだ相手の視認性の確保および会話の聞き取りやすさとの両立を図るとの観点では、好ましい遮光率の範囲は、30%以上75%以下であり、特に好ましい遮光率の範囲は35%以上70%以下である。
【0034】
さらに、本実施の形態における間仕切り用生地は、目付が10g/m以上150g/m以下である。間仕切り用生地の目付が10g/m以上であれば、間仕切り用生地が飛沫の飛散を抑制する能力を十分に発揮できる。また、間仕切り用生地の目付が150g/m以下であれば、音波障壁としては会話の高音(高周波数成分)の減衰がほぼ問題とならない低い密度となり、会話の聞き取りやすさに影響を与えにくい。好ましい目付の範囲は20g/m以上100g/m以下であり、特に好ましい目付の範囲は30g/m以上70g/m以下である。
【0035】
さらに、本実施の形態における間仕切り用生地は、制菌性の指標として、JIS L1902(2015)に規定される菌液吸収法にて測定した黄色ブドウ球菌の抗菌活性値が増殖値以上である。前記菌液吸収法にて測定した抗菌活性値が増殖値以上であることは、細菌の増殖速度以上に生地表面での細菌不活化速度が速いことを意味するので、前記菌液吸収法にて測定した抗菌活性値が増殖値以上であることで、間仕切り用生地に付着した細菌の病原性を時間とともに減らすことができる。また、前記菌液吸収法にて測定した抗菌活性値が2.2以上であれば、菌を原因とする悪臭を抑制する効果も発揮されるので、より好ましい。さらに好ましくは、前記菌液吸収法で測定した抗菌活性値は、3.0以上である。
【0036】
さらに、本実施の形態における間仕切り用生地は、抗ウイルス性の指標として、JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法にて測定したA型インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値が2.0以上である。前記プラーク測定法にて測定したA型インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値が2.0以上であれば、比較的短時間で間仕切り用生地に付着したウイルスの感染能力を抑制することができる。特に、前記プラーク測定法にて測定したA型インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値は、2.5以上であることが好ましい。
【0037】
また、本実施の形態における間仕切り用生地は、さらに、抗ウイルス性の別の指標として、JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法に準拠して測定したヒトコロナウイルス229Eの抗ウイルス活性値が2.0以上である抗ウイルス性を有するとよい。前記プラーク測定法に準拠して測定したヒトコロナウイルス229Eの抗ウイルス活性値が2.0以上であれば、インフルエンザウイルスなどのマイナス鎖RNAウイルスの感染能力を短時間で抑制できるだけではなく、ヒトコロナウイルス229Eなどのプラス鎖RNAウイルスの感染能力も短時間で抑制することができる。特に、前記プラーク測定法に準拠して測定したヒトコロナウイルス229Eの抗ウイルス活性値は、2.5以上であることが好ましい。このように、本実施の形態における間仕切り用生地は、インフルエンザウイルスなどのマイナス鎖RNAウイルスだけではなく、ヒトコロナウイルス229Eなどのプラス鎖RNAウイルスに対しても感染能力を抑制できる幅広い抗微生物スペクトルを有する。
【0038】
<間仕切り>
次に、本実施の形態にかかる間仕切りについて説明を行う。なお、先に説明を行った事項と重複する事項については一部説明を省略または簡略化する。
【0039】
本実施の形態にかかる間仕切りは、上記の間仕切り用生地を少なくとも一部に用いられていることを特徴とする。
【0040】
間仕切り用生地を少なくとも一部に用いて間仕切りを作成する際、間仕切り用生地を、十分な剛性を有する剛体である支持部材に支持させるとよい。間仕切り用生地を支持する支持部材は、例えば、1つ以上の棒状部材によって構成される。一例として、間仕切り用生地を支持する支持部材は、正面視が、ロの字状、コの字またはL字状のフレーム、もしくは、2本以上の支柱などによって構成される。また、間仕切り用生地を支持する支持部材は、金属、プラスチックまたは厚紙などによって構成される。なお、間仕切り用生地を支持する支持部材の形状および材料は、上記のものに限定されるものではない。
【0041】
間仕切り用生地は、このような形状および材料からなる剛体である支持部材に取り付けられる。例えば、支持部材がロの字状またはコの字状の枠体である場合、枠体の開口を覆うように間仕切り用生地を枠体にはめ込んだり紐などでくくったりすることで、間仕切り用生地を枠体に取り付けることができる。また、支持部材が、間隔をあけて配置された2本の支柱である場合、間仕切り用生地の両端部を2本の支柱に把持させてることで、2本の支柱の間を覆うようにして間仕切り用生地を2本の支柱に取り付けることができる。また、支持部材が2本の支柱とその間に掛け渡された横棒または紐などの横支持体とによって構成されている場合、横支持体に間仕切り用生地をカーテンのように吊るすことで、間仕切り用生地を支持部材に取り付けることができる。
【0042】
また、このように構成される間仕切りは、床面または机の天面などの設置面に立設される。この場合、間仕切りは、設置面に略垂直方向に立てられる姿勢で、例えば、間仕切り用生地の大部分が壁面と略平行となるように設置される。また、間仕切りは、移動させることができ、必要に応じて設置面に設置したり設置しなかったりすることができる。
【0043】
なお、間仕切りは、支持部材ごと移動できるものに限らない。例えば、間仕切り用生地を支持する支持部材は、壁や天井、家具などであってもよい。この場合、壁や天井、棚の壁面などに設置したフックやクリップ、釣り糸、横支持体などによって間仕切り用生地を支持すればよい。また、間仕切りとしては、間仕切り用生地の一端を上記壁などに固定し、間仕切り用生地の他端を支柱などの移動可能な支持部材で支持したものであってもよい。
【0044】
間仕切りのサイズは特に限定されないが、幅(横の長さ)は、対面する人間の肩幅より広くし、高さ(縦の長さ)は、間仕切り用生地の上端部が人間の頭の高さよりも高くなるような長さにして、間仕切り用生地が人間の上半身よりも広くなるようなサイズにするとよい。これにより、十分に飛沫の飛散を抑制する効果が得られる。また、間仕切り用生地の下端部は、床面または机の天面に軽く接地するかまたは少し隙間が空く程度が好ましいが、特に卓上に設置し、物品のやり取りをする店舗のカウンターなどの間仕切りとして用いる際には、机の天面と間仕切り用生地との隙間を大きめにとったり、間仕切り用生地の下端部に切れ目を入れてすだれ状にしたりしてもよい。また、間仕切りを挟んだ相手の視認性を大きく阻害しない程度で、間仕切りにおいて、間仕切り用生地を複数枚重ねて用いてもよい。
【0045】
間仕切りの設置の形態は特に限定されず、人間に正対するように設置したり、人間の左右に設置したり、人間の三方を囲ったり、四方を囲って個室の形態にしたりしてもよい。
【0046】
本実施の形態における間仕切りは、呼吸器から発生する飛沫の飛散を抑制し、かつ他人との会話の際の違和感を低減させる効果を有する間仕切りであることから、家庭の食卓や食堂のテーブル、オフィスや会議室のデスク、店舗のレジや受付などのカウンターなど、机や台などの上に載置、または机や台などを横断する卓上用間仕切りとして好適に用いられる。
【0047】
本実施の形態にかかる間仕切り1の一例を図1および図2に示す。図1は、実施の形態にかかる間仕切り1の斜視図である。図2は、同間仕切り1の正面図である。
【0048】
図1および図2に示される間仕切り1は、間仕切り用生地2と、間仕切り用生地2を支持する支持部材3とを備える。
【0049】
支持部材3は、正面視がロの字形状の枠体であり、開口を有する。具体的には、支持部材3は、2本の支柱と、2本の支柱の上端部に掛け渡された上横棒と、2本の支柱の下端部に掛け渡された下横棒とを備えている。なお、支持部材3は、プラスチック製(樹脂製)である。
【0050】
間仕切り用生地2は、支持部材3の開口を塞ぐように支持部材3に取り付けられている。具体的には、間仕切り用生地2は、支持部材3の上横棒に巻き付けるようにして上横棒に取り付けられ固定されている。また、間仕切り用生地2は、2本の支柱の各々と下横棒とにも固定されている。つまり、間仕切り用生地2は、端部全周が支持部材3に取り付けられている。なお、間仕切り用生地2は、シワが無いように平面状になっているとよい。
【0051】
このように構成される間仕切り1は、立設する姿勢で設置面に設置される。図1および図2において、間仕切り1は、机の天面に設置されている。なお、支持部材3の2本の支柱の足元には、各支柱とT字状をなすように棒状の脚部が取り付けられている。これにより、間仕切り1を安定して設置面に設置することができる。
【実施例0052】
以下、本実施の形態における間仕切り用生地および間仕切りについて、実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の目的を逸脱しない範囲で変更を施すことは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例および比較例における「%」は、「質量%」を意味する。また、以下の例における各種性能等の測定、試験および評価は次の方法で行った。
【0053】
<間仕切り用生地の遮光率>
JIS L1055(2009)に規定されるA法に準じ、照度10,000lxの光環境下で測定した。
【0054】
<間仕切り用生地の目付>
JIS L1096(2010)に規定されるA法(JIS法)に準じて測定した。
【0055】
<間仕切り用生地の制菌性の測定>
JIS L1902(2015)に規定の菌液吸収法に準じて、黄色ブドウ球菌(ATCC6538P)に対する抗菌活性値を測定した。具体的には、黄色ブドウ球菌を菌濃度2.2×10CFU/mLで接種し、18時間培養後、混釈平板培養法にて定量測定を行って得られた値、および標準布で同様の試験を行って得られた値を基に抗菌活性値、および増殖値を計算した。得られた抗菌活性値が増殖値以上であるものを合格とした。
【0056】
<抗インフルエンザウイルス性>
JIS L1922(2016)に規定のプラーク測定法に準じ、A型インフルエンザウイルス(H3N2 ATCC VR-1679)をウイルス株として、MDCK細胞(ATCC CCL-34)を宿主細胞として用い、2時間作用させ、測定された試験前後の感染価を用いてA型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を計算した。
【0057】
<抗ヒトコロナウイルス性>
JIS L1922(2016)に規定のプラーク測定法に準じ、ヒトコロナウイルス229E(ATCC VR-740)をウイルス株として、MRC-5細胞(ATCC CCL-171)を宿主細胞として用い、2時間作用させ、測定された試験前後の感染価を用いてヒトコロナウイルス229Eに対する抗ウイルス活性値を計算した。
【0058】
<間仕切りの飛沫遮蔽率>
まず、図1および図2に示される枠体(高さ70cm、幅90cm)からなる支持部材に試験体となる間仕切り用生地をシワが無いように平面状にして固定した間仕切りと、直径2μm以上5μm以下の水滴約4万個を約5m/秒の速度で発射するネブライザーを準備した。ネブライザーの発射口を机の天面から35cmの高さとし、間仕切りの中央がネブライザーの射出線上に位置するように対面させ、ネブライザーの発射口から100cmの距離となる位置に間仕切りを机の天面に設置した。ネブライザーから略平行に飛沫を発射し、ネブライザーの発射口と同じ高さ、ネブライザーの発射口から射出線上の水平距離110cm、および150cm(それぞれ間仕切りから10cm、50cm)の位置に設置したパーティクルカウンターにて、飛来した2μmおよび5μmの飛沫の数Tを計測した。また、間仕切りを設置しなかった場合の飛沫の飛来数Bも測定し、下式にて間仕切りの飛沫遮蔽率を求めた。
【0059】
間仕切りの飛沫遮蔽率=(1-T/B)×100(%)
【0060】
<間仕切りの評価>
図1および図2に示されるように、枠体(高さ70cm、幅90cm)からなる支持部材に、試験体となる間仕切り用生地をシワが無いように平面状にして固定した間仕切りを机の上に設置し、2人の人間が間仕切りを挟んで会話をした際、光線反射、視認性、会話の聞き取りやすさを以下の基準にて評価した。
【0061】
<間仕切りによる光線反射の評価基準>
○:映り込みやグレアが気にならない
×:映り込みやグレアが気になる
【0062】
<間仕切りの視認性の評価基準>
◎:相手の表情が詳細に確認できる
○:相手の表情が確認できる
×:相手の表情が確認できない
【0063】
<間仕切りによる会話の聞き取りやすさへの影響の評価基準>
○:影響を感じない
×:声がこもったり、声質が変わって聞こえたりする
【0064】
(実施例1)
実施例1では、間仕切り用生地の素材として、糸の太さ83dtex、仮撚加工されたポリエステル繊維からなる平織生地を準備した。この織物を、銀ゼオライト0.6%、およびシリコーン系バインダー0.05%の水分散液中に浸漬させ、その後、脱水および乾燥することで、銀が担持されたゼオライト粒子が生地の繊維表面に付着した間仕切り用生地を得た。得られた間仕切り用生地の性能を表1に示す。
【0065】
このようにして得られた間仕切り用生地を、高さ70cm、幅90cmの枠体にシワがないように固定することで間仕切りを得た。得られた間仕切りの評価結果を表2に示す。
【0066】
(実施例2)
実施例2では、間仕切り用生地の素材として、糸の太さ55dtex、仮撚加工されたポリエステル繊維からなる平織生地を用いた以外は、実施例1と同様にして間仕切り用生地、および間仕切りを得た。得られた間仕切り用生地の性能を表1、間仕切りの評価結果を表2に示す。
【0067】
(実施例3)
実施例3では、間仕切り用生地の素材として、糸の太さ55dtex、強撚加工されたポリエステル繊維からなる平織生地を用いた以外は、実施例1と同様にして間仕切り用生地、および間仕切りを得た得られた間仕切り用生地の性能を表1、間仕切りの評価結果を表2に示す。
【0068】
(実施例4)
実施例4では、間仕切り用生地の素材として、糸の太さ8dtex、弱撚加工されたポリエステル繊維からなる平織生地を用いた以外は、実施例1と同様にして間仕切り用生地、および間仕切りを得た。得られた間仕切り用生地の性能を表1、間仕切りの評価結果を表2に示す。
【0069】
(比較例)
比較例では、間仕切り用生地の素材として、厚さ0.15mmの透明な軟質塩化ビニルシートを用い、実施例1と同様にして間仕切りを得た。得られた軟質塩化ビニルシートの性能を表1、間仕切りの評価結果を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1および表2に示されるように、実施例1~4は、高い飛沫遮蔽率を有しており、飛沫の飛散による感染症の蔓延を効果的に抑制することができた。
【0073】
また、実施例1~4は、繊維からなる生地によって構成されているが、間仕切りを挟んだ相手を把握することができ、視認性を確保することができた。特に、実施例2~4のように、遮光率が52%以下では、相手の表情を詳細に確認することができた。
【0074】
しかも、実施例1~4では、比較例と比較して、会話の聞き取りやすさに影響を与えることなく、しかも、光線反射を抑制することができた。
【0075】
このように、実施例1~4における間仕切り用生地および間仕切りによれば、飛沫の飛散による感染症の蔓延および間仕切りによる光線反射を抑制し、かつ間仕切りを挟んだ相手の視認性を確保しつつ、会話の聞き取りやすさに影響を与えにくい。
【符号の説明】
【0076】
1 間仕切り
2 間仕切り用生地
3 支持部材
図1
図2