(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106198
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】加圧装置及び加圧力の調整方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001041
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃正
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】江嶋 善幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 厚樹
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316CC02
5E316DD02
5E316EE01
5E316GG28
5E316HH40
(57)【要約】
【課題】対象物に対して適切な加圧力を付与し易くなる加圧装置及び加圧力の調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】積層体Bを加圧して保持する加圧治具1Aであって、積層体Bが載置されるベースプレート2と、ベースプレート2に対向して配置され、ベースプレート2との間で積層体Bを挟持するカバープレート3と、カバープレート3上に配置された複数のコイルスプリング41、42と、複数のコイルスプリング41、42上に配置された加圧プレート5と、加圧プレート5を介して弾性部4Aを圧縮して積層体Bを加圧する加圧構造6と、を備え、複数のコイルスプリング41、42の少なくとも一部は、カバープレート3と加圧プレート5との間で、直列に配置されると共に、圧縮方向に沿った同一直線La上に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を加圧して保持する加圧装置であって、
前記対象物が載置される土台部と、
前記土台部に対向して配置され、前記土台部との間で前記対象物を挟持するカバー部と、
前記カバー部上に配置された複数の圧縮バネと、
前記複数の圧縮バネ上に配置された加圧部と、
前記加圧部を介して前記複数の圧縮バネを圧縮して前記対象物を加圧する加圧構造と、を備え、
前記複数の圧縮バネの少なくとも一部は、前記カバー部と前記加圧部との間で、直列に配置されると共に、圧縮方向に沿った同一直線上に配置されている、加圧装置。
【請求項2】
前記カバー部と前記加圧部との間に配置された中間部を更に備え、
前記複数の圧縮バネは、前記カバー部と前記中間部との間に配置された第1の圧縮バネ群と、前記中間部と前記加圧部との間に配置されると共に、前記第1の圧縮バネ群に対して直列に配置された第2の圧縮バネ群と、に分けられ、
前記第1の圧縮バネ群に属する少なくとも一部の前記圧縮バネは、前記第2の圧縮バネ群の前記圧縮バネに対して前記同一直線上に配置されている、請求項1記載の加圧装置。
【請求項3】
前記第1の圧縮バネ群に属する前記複数の圧縮バネの数に対し、前記第2の圧縮バネ群に属する前記複数の圧縮バネの数の比率は、60%以上で、且つ100%以下である請求項2記載の加圧装置。
【請求項4】
前記同一直線上に配置されている前記複数の圧縮バネのバネ定数は同じである、請求項1~3のいずれか一項記載の加圧装置。
【請求項5】
前記同一直線上に配置されている前記複数の圧縮バネのバネ定数は異なる、請求項1~3のいずれか一項項記載の加圧装置。
【請求項6】
前記圧縮バネを位置決めする位置決め部を更に備えている、請求項1~5のいずれか一項記載の加圧装置。
【請求項7】
前記位置決め部は、前記カバー部、前記加圧部の少なくとも一に設けられ、前記圧縮バネの少なくとも一部を収容する溝部である請求項6記載の加圧装置。
【請求項8】
前記圧縮バネはコイルスプリングであり、
前記位置決め部は、前記コイルスプリングに挿通された支柱部である、請求項6記載の加圧装置。
【請求項9】
前記同一直線上に配置されている前記複数の圧縮バネは、互いに当接されている、請求項1記載の加圧装置。
【請求項10】
前記加圧構造は、前記土台部から立設され、前記カバー部及び前記加圧部を貫通する複数の支柱部と、前記支柱部の軸方向に移動自在に挿通され、且つ前記支柱部の軸方向の所定位置で固定されると共に、前記加圧部に干渉して前記加圧部を保持する複数の係止部とを備えており、
前記複数の支柱部は、前記カバー部の周縁に沿って配置されると共に、前記第1の圧縮バネ群に属する複数の前記圧縮バネを囲むように配置されている、請求項2または3記載の加圧装置。
【請求項11】
前記第1の圧縮バネ群に属する前記複数の圧縮バネのうち、前記複数の支柱部それぞれに最も近い複数の前記圧縮バネは、前記第2の圧縮バネ群に属する前記複数の圧縮バネに対して前記同一直線上に配置されている、請求項10記載の加圧装置。
【請求項12】
前記第1の圧縮バネ群に属する前記複数の圧縮バネのうち、前記複数の支柱部それぞれに最も近い前記複数の圧縮バネ以外の前記圧縮バネは、前記第2の圧縮バネ群に属する前記複数の圧縮バネに対して前記同一直線上に配置されている、請求項10または11記載の加圧装置。
【請求項13】
圧縮バネを介して対象物を加圧して保持する加圧装置において、前記対象物に付与する加圧力を調整する方法であって、
複数の前記圧縮バネを直列に配置すると共に、圧縮方向に沿った同一直線上に配置して前記加圧力を調整する、加圧力の調整方法。
【請求項14】
バネ定数が同じ前記複数の圧縮バネを前記同一直線上に配置する、請求項13記載の加圧力の調整方法。
【請求項15】
バネ定数が異なる前記複数の圧縮バネを前記同一直線上に配置する、請求項13記載の加圧力の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体などの対象物を加圧して保持する加圧装置及び加圧力の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板等に使用される積層体等の対象物を、加圧した状態で保持する加圧装置が知られている。この種の加圧装置では、加圧する積層体を上下の板材で挟み、更に、上方の板材をコイルスプリングで押圧することで対象物を保持している(特許文献1、2、3参照)。加圧装置は、例えば、加熱炉に供給されて対象物の接合等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-23899号公報
【特許文献2】特開2012-200730号公報
【特許文献3】特開2013-71880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の加圧装置において、加圧力を調整する必要性については何ら考慮されておらず、特に、過度の加圧力、あるいは不十分な加圧力の付与によって対象物に与える影響などについては、考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、対象物に対して適切な加圧力を付与し易くなる加圧装置及び加圧力の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、加圧装置にて保持された対象物を加熱炉に供給して加熱接合する際、加熱炉内の雰囲気に依存して適切な加圧状態が異なるとの知見を得て本発明に想到した。つまり、本発明は、対象物を加圧して保持する加圧装置であって、対象物が載置される土台部と、土台部に対向して配置され、土台部との間で前記対象物を挟持するカバー部と、カバー部上に配置された複数の圧縮バネと、複数の圧縮バネ上に配置された加圧部と、加圧部を介して複数の圧縮バネを圧縮して対象物を加圧する加圧構造と、を備え、複数の圧縮バネの少なくとも一部は、カバー部と加圧部との間で、直列に配置されると共に、圧縮方向に沿った同一直線上に配置されている。
【0007】
圧縮バネはバネ定数を有するが、本発明では、複数の圧縮バネを直列に配置しており、単一の圧縮バネを配置する態様に比べ、圧縮バネ全体としてのバネ定数を抑え易く、更に複数の圧縮バネは圧縮方向に沿った同一直線上に配置されているので適切な加圧力を付与し易くなる。
【0008】
上記の加圧装置において、カバー部と加圧部との間に配置された中間部を更に備え、複数の圧縮バネは、カバー部と中間部との間に配置された第1の圧縮バネ群と、中間部と加圧部との間に配置されると共に、第1の圧縮バネ群に対して直列に配置された第2の圧縮バネ群と、に分けられ、第1の圧縮バネ群に属する少なくとも一部の圧縮バネは、第2の圧縮バネ群の圧縮バネに対して、圧縮方向に沿った同一直線上に配置されていてもよい。中間部を設ける事で、複数の圧縮バネを圧縮方向に沿った同一直線上に配置し易くなり、また、同一直線上の複数の圧縮バネが干渉して破損してしまうのを抑制できる。
【0009】
上記の加圧装置において、第1の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネの数に対し、第2の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネの数の比率は、60%以上で、且つ100%以下であってもよい。第2の圧縮バネ群の圧縮バネの数が少なくとも第1の圧縮バネ群の圧縮バネの数の60%以上にすることで、適切な加圧力を付与するための調整を行い易くなる。
【0010】
上記の加圧装置において、圧縮方向に沿った同一直線上に配置されている複数の圧縮バネのバネ定数は同じであってもよい。複数の圧縮バネのバネ定数を同じにすることで扱い易くなり、加圧力の調整を行い易くなる。
【0011】
上記の加圧装置において、圧縮方向に沿った同一直線上に配置されている複数の圧縮バネのバネ定数は異なっていてもよい。バネ定数が異なる複数の圧縮バネを使用することで、加圧力の複雑な調整にも対応し易くなる。
【0012】
上記の加圧装置において圧縮バネを位置決めする位置決め部を備えていてもよい。複数の圧縮バネがずれ難くなり、対象物を安定して加圧するのに有利になる。
【0013】
上記の位置決め部は、カバー部及び加圧部の少なくとも一方に設けられ、圧縮バネの少なくとも一部を収容する溝部であってもよい。溝部内に圧縮バネを収容させることで、圧縮バネのずれを効果的に抑制できる。
【0014】
上記の加圧装置において、圧縮バネはコイルスプリングであり、位置決め部は、コイルスプリングに挿通された支柱部であってもよい。直列に配置されたコイルスプリングを支柱部に挿通することにより、コイルスプリングは安定して位置決めされ、更に、支柱部に案内されながら圧縮されるので、適切な加圧力の付与に有利になる。
【0015】
上記の加圧装置において、圧縮方向に沿った同一直線上に配置されている複数の圧縮バネは、互いに当接されていてもよい。圧縮方向に沿った同一直線上に配置されている複数の圧縮バネを互いに当接させることで、簡素な構造を実現し易くなる。
【0016】
上記の加圧装置において、加圧構造は、土台部から立設され、カバー部及び加圧部を貫通する複数の支柱部と、支柱部の軸方向に移動自在に挿通され、且つ支柱部の軸方向の所定位置で固定されると共に、加圧部に干渉して加圧部を保持する複数の係止部とを備えており、複数の支柱部は、カバー部の周縁に沿って配置されると共に、第1の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネを囲むように配置されていてもよい。係止部は、支柱部の軸方向の所定位置で保持されることで、この位置で加圧部を安定的に保持でき、対象物に対して適切な加圧力を付与するのに有利になる。また、複数の支柱部は、カバー部の周縁に沿って配置されると共に、第1の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネを囲むように配置されているので、第1の圧縮バネ群に属する圧縮バネの圧縮に偏りが少なくなる。
【0017】
上記の加圧装置において、第1の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネのうち、複数の支柱部それぞれに最も近い複数の圧縮バネは、第2の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネに対して、圧縮方向に沿った同一直線上に配置されていてもよい。支柱部に近い圧縮バネは、遠い圧縮バネに比べ、加圧部からより強い力を受け易い。上記構成によれば、第1の圧縮バネ群において支柱部に近い圧縮バネは、第2の圧縮バネ群の圧縮バネに対して圧縮方向に沿った同一直線上に並ぶことになり、より強い力を加圧部から受けて対象物を加圧し易くなる。
【0018】
上記の加圧装置において、第1の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネのうち、複数の支柱部それぞれに最も近い複数の圧縮バネ以外の圧縮バネは、第1の圧縮バネ群に属する複数の圧縮バネに対して同一直線上に配置されていてもよい。複数の支柱部から遠い方が、加圧部から受ける力が安定し均一になり易い。上記構成によれば、第1の圧縮バネ群において支柱部に近い圧縮バネ以外の圧縮バネは、第2の圧縮バネ群の圧縮バネに対して圧縮方向に沿った同一直線上に並ぶことになり、より安定した力を加圧部から受けて対象物を適切に加圧し易くなる。
【0019】
また、本発明は、圧縮バネを介して対象物を加圧して保持する加圧装置において、対象物に付与する加圧力を調整する方法であって、複数の圧縮バネを直列に配置すると共に、圧縮方向に沿った同一直線上に配置して加圧力を調整する、加圧力の調整方法である。
【0020】
本発明に係る加圧力の調整方法によれば、複数の圧縮バネを直列に配置すると共に、圧縮方向に沿った同一直線上に配置して加圧力を調整することで、単一の圧縮バネを配置する態様に比べ、弾性部としてのバネ定数を抑えることができ、更に複数の圧縮バネが縦に並ぶように圧縮方向に沿った同一直線上に配置することで適切な加圧力を付与し易くなる。
【0021】
上記の加圧力の調整方法において、バネ定数が同じ複数の圧縮バネを同一直線上に配置してもよい。複数の圧縮バネのバネ定数が同じであれば、簡素な構造にて加圧力の調整を行い易くなる。
【0022】
上記の加圧力の調整方法において、バネ定数が異なる複数の圧縮バネを同一直線上に配置してもよい。複数の圧縮バネのバネ定数が異なっていれば、加圧力の複雑な調整を行い易くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、対象物に対して適切な加圧力を付与し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態に係る加圧治具の側断面図である。
【
図2】第2の実施形態に係る加圧治具の側断面図である。
【
図3】第3の実施形態に係る加圧治具の側断面図である。
【
図4】第4の実施形態に係る加圧治具の側断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る加圧治具の側断面図であり、(a)の図は第5の実施形態に係る側断面図であり、(b)の図は第6の実施形態に係る側断面図であり、(c)の図は第7の実施形態に係る側断面図である。
【
図7】他の実施形態に係る加圧治具の側断面図であり、(a)の図は第8の実施形態に係る側断面図であり、(b)の図は第9の実施形態に係る側断面図であり、(c)の図は第10の実施形態に係る側断面図である。
【
図8】他の実施形態に係る加圧治具の側断面図であり、(a)の図は第11の実施形態に係る側断面図であり、(b)の図は第12の実施形態に係る側断面図であり、(c)の図は第13の実施形態に係る側断面図である。
【
図9】他の実施形態に係る加圧治具の側断面図であり、(a)の図は第14の実施形態に係る側断面図であり、(b)の図は第15の実施形態に係る側断面図であり、(c)の図は第16の実施形態に係る側断面図である。
【
図10】他の実施形態に係る加圧治具の側断面図であり、(a)の図は第17の実施形態に係る側断面図であり、(b)の図は第18の実施形態に係る側断面図であり、(c)の図は第19の実施形態に係る側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
まず、
図1を参照して、第1の実施形態に係る加圧治具1A(加圧装置の一例)について説明する。加圧治具1Aは、半導体の基板等に使用される積層体Bを加圧保持した状態で加熱炉内に導入される。加熱炉内において、積層体Bは加熱され、ろう付けにより接合される。本実施形態において積層体Bは、加圧治具1Aが加圧して保持する対象物の一例である。
【0027】
本実施形態では、複数の基板ユニットBaがスペーサSを挟んで積層されており、基板ユニットBaと加圧治具1Aとの間にもスペーサSが配置されている。また、接合前の状態において、基板ユニットBaは、セラミック板b2を一対の銅板b1で挟んで形成された積層体構造になっている。本実施形態に係る積層体Bは、スペーサS及び複数の基板ユニットBaによって形成される。本実施形態に係る積層体Bは平面視で矩形であるが、他の形状であってもよい。スペーサSは、基板ユニットBa同士の接合及び基板ユニットBaと加圧治具1Aとの接合を阻止できればよく、本実施形態ではカーボンスペーサを利用している。
【0028】
加圧治具1Aは、積層体Bが載置される板状のベースプレート2(土台部の一例)と、ベースプレート2に対向して配置されたカバープレート3(カバー部の一例)とを備えている。カバープレート3は、ベースプレート2との間で積層体Bを挟持する。また、加圧治具1Aは、カバープレート3上に配置された複数の弾性部4Aと、弾性部4A上に配置された加圧プレート5(加圧部の一例)とを備えている。また、加圧治具1Aは、加圧プレート5によって弾性部4Aを圧縮して積層体Bを加圧する加圧構造6を有する。
【0029】
ベースプレート2は、例えば矩形状であり、平面視で積層体Bからはみ出た領域、つまり積層体Bに重なっていない張出領域2aを有する。ベースプレート2の張出領域2aには、積層体Bを囲むように複数の支柱8が立設されている。支柱8は、例えば、矩形のベースプレート2の各角部に設けられていたり、積層体Bの縁に沿うように等間隔に並んで配置されていたりしてもよい。支柱8の上部には、ナット61(締結部)が螺合するための雄ネジ部62が設けられている。
【0030】
カバープレート3は、例えば矩形状であり、平面視で積層体Bからはみ出た領域、つまり、平面視でベースプレート2の張出領域2aに重なる張出領域3aを有する。カバープレート3の張出領域3aには、支柱8が挿通する複数の中間ガイド孔31が形成されている。支柱8は、中間ガイド孔31に挿通されることでカバープレート3を貫通している。カバープレート3は、中間ガイド孔31に挿通された支柱8に案内されながら、支柱8の軸方向L、つまり上下方向に移動可能である。
【0031】
カバープレート3は、一方の表面(以下、「下面3b」と称する)と他方の表面(以下、「上面3c」と称する)とを有する。下面3bは平坦面であり、積層体Bに当接する。上面3cには、弾性部4Aが配置されている。
【0032】
加圧プレート5は、例えば矩形状であり、平面視で積層体Bからはみ出た領域、つまり、平面視でカバープレート3の張出領域3aに重なる張出領域5aを有する。加圧プレート5の張出領域5aには、支柱8が挿通する複数の上部ガイド孔51が形成されている。支柱8は、上部ガイド孔51に挿通されることで加圧プレート5を貫通している。加圧プレート5は、上部ガイド孔51に挿通された支柱8に案内されながら、支柱8の軸方向L、つまり上下方向に移動可能である。
【0033】
加圧プレート5は、一方の表面(以下、「下面5b」と称する)と他方の表面(以下、「上面5c」と称する)とを有する。下面5bは弾性部4Aに直接的、あるいは間接的に当接する。上面5cはナット61に直接的、あるいは間接的に当接する。
【0034】
加圧構造6は、上記の複数の支柱8(支柱部の一例)と、支柱8の軸方向Lに移動自在に挿通され、且つ支柱8の軸方向Lの所定位置で固定される複数のナット61(係止部の一例)とを備えている。支柱8の上部には雄ネジ部62が設けられており、雄ネジ部62の一部分は、加圧プレート5の上部ガイド孔51を貫通して上方に突出している。ナット61は、加圧プレート5の上方に突出している雄ネジ部62の一部分に螺合する。
【0035】
ナット61を雄ネジ部62に螺合して締結していくと、ナット61の下面は加圧プレート5の上面5cに直接的または間接的に当接して干渉する。ナット61は螺合により、所定位置まで進行(降下)し、所定位置で螺合を停止することで実質的に固定される。加圧プレート5は、ナット61による干渉を受けて下方へ押し下げられ、所定位置にて保持される。加圧プレート5の下方には弾性部4Aが配置されており、弾性部4Aは、加圧プレート5からの加圧力を受けて圧縮される。弾性部4Aの下方にはカバープレート3が配置されており、更にカバープレート3の下方には、積層体Bを挟持するようにベースプレート2が配置されている。カバープレート3は、弾性部4Aの反発力を受けて下方の積層体Bを加圧し、ベースプレート2との間で積層体Bを保持している。
【0036】
加圧治具1Aにおいて、積層体Bを保持する際に適切な加圧力を付与することは非常に重要である。例えば、加圧治具1Aにて保持された積層体Bを加熱炉に供給して加熱接合する際、加熱炉内の雰囲気に依存して適切な加圧状態が異なる。この適切な加圧状態から外れた状態、例えば、不十分な加圧力や過度な加圧力を付与した状態で加熱炉に供給して加熱接合等が行われると、接合品質を低下させるおそれがある。そこで、本実施形態では、適切な加圧力を付与するために弾性部4Aの形態に工夫を施している。以下、弾性部4Aについて詳しく説明する。
【0037】
加圧治具1Aは、複数の弾性部4Aを備え、弾性部4Aは、下段のコイルスプリング41(圧縮バネの一例)と上段のコイルスプリング42(圧縮バネの一例)を備えている。下段のコイルスプリング41はカバープレート3上に載置され、上段のコイルスプリング42は、下段のコイルスプリング41上に重なるように配置され、更に上段のコイルスプリング42の上端は、加圧プレート5の下面5bに当接している。下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とは、支柱8に挿入されており、支柱8の軸方向Lに沿って圧縮され、加圧が解かれると復元する。つまり、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とは、コイルスプリング41、42の圧縮方向に沿った仮想の同一直線La上に配置されている。なお、本実施形態では、支柱8の軸方向Lと同一直線Laとは一致している。
【0038】
下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とは、カバープレート3とベースプレート2との間で直列に配置されている。なお、本実施形態では、上下二段(複数)のコイルスプリング41、42が一組となって一つの弾性部4Aを形成するが、3個以上のコイルスプリング(圧縮バネ)が直列に配置されて一つの弾性部を形成するようにしてもよい。また、本実施形態に係る弾性部4Aは、複数形成されているが、単一の弾性部であってもよい。
【0039】
次に、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とが「直列に配置されている」という技術的意義について説明する。例えば、下段のコイルスプリング41のバネ定数をk1とし、上段のコイルスプリング42のバネ定数をk2とし、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42との合成バネ定数をk3とする。そして、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とが「直列に配置されている」とは、実質的に以下の式(1)の関係が成立する配置関係を意図する。
【0040】
1/k3=(1/k1)+(1/k2) (1)
【0041】
例えば、本実施形態においては、一つの弾性部4Aを形成する下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42は上記式(1)の関係が成立するので、直列に配置されているということができる。また、例えば、複数の下段のコイルスプリング41をまとめて一つの下段圧縮バネ群40Aとして把握し、複数の上段のコイルスプリング42をまとめて一つの上段圧縮バネ群40Bとして把握することもできる。この場合に、下段圧縮バネ群40Aのバネ定数をk1とし、上段圧縮バネ群40Bのバネ定数をk2とし、両者の合成バネ定数をk3とすると、上記式(1)の関係を満たすので、下段圧縮バネ群40Aと上段圧縮バネ群40Bとは直列に配置されていると説明することもできる。なお、隣り合う弾性部4A同士は並列に配置されており、直列に配置されているとは言えない。
【0042】
本実施形態に係る加圧治具1Aの弾性部4Aは、直列に配置された複数のコイルスプリング41、42を備えている。各コイルスプリング41、42はバネ定数を有するが、複数のコイルスプリング41、42を直列に配置することで、単一の圧縮バネを配置する態様に比べ、弾性部4Aとしてのバネ定数を抑えることができる。その結果、適切な加圧力を付与し易くなる。
【0043】
また、本実施形態に係る加圧治具1Aは、直列に配置された複数のコイルスプリング41、42を位置決めする位置決め部として支柱8を備えている。支柱8で位置決めすることにより、複数のコイルスプリング41、42は、ずれ難くなり、積層体Bを安定して加圧するのに有利になる。更にコイルスプリング41、42は支柱8に案内されながら圧縮されるので、適切な加圧力の付与に有利になる。
【0044】
次に、積層体Bに付与する加圧力を調整する方法について説明する。上述の通り、加圧治具1Aは弾性部4Aを備えている。弾性部4Aは下段のコイルスプリング41を備えているが、弾性部4Aの加圧力を調整するために、バネ定数が異なる単体の別のコイルスプリングに置き換えるのではなく、下段のコイルスプリング41の上に上段のコイルスプリング42を直列に配置するようにする。その結果、弾性部4Aのバネ定数を、下段のコイルスプリング41のバネ定数k1から、合成バネ定数「k3=1/(1/k1+1/k2)」に変更して積層体Bに付与する加圧力を調整することができる。なお、本実施形態では、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とは実質的に同一のコイルスプリングであり、バネ定数も同一であるが、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とを異なる材料あるいは異なるバネ定数にして、調整することも可能である。
【0045】
上記の加圧力の調整方法によれば、複数のコイルスプリング41、42を直列に配置することで、単一の圧縮バネを配置する態様に比べ、弾性部4Aとしてのバネ定数を抑えることができる。その結果、適切な加圧力を付与し易くなる。
【0046】
次に、
図2を参照し、第2の実施形態に係る加圧治具1Bを説明する。本実施形態に係る加圧治具1Bは、第1の実施形態に係る加圧治具1Aと同様の構造や要素を備えている。以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態に係る加圧治具1Bは、ベースプレート2(土台部の一例)と、ベースプレート2に対向して配置されたカバープレート3(カバー部の一例)と、カバープレート3上に配置された複数の弾性部4Bと、弾性部4B上に配置された加圧プレート5(加圧部)とを備えている。また、加圧治具1Bは、加圧プレート5によって弾性部4Bを圧縮して積層体Bを加圧する加圧構造6を有する。一つの弾性部4Bは、上下に直列に配置された一組の下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とによって形成されている。また、一組の下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とは、コイルスプリング41、42の圧縮方向に沿った仮想の同一直線La上に配置されている。
【0048】
カバープレート3の上面3cには、下段のコイルスプリング41の個数に対応した複数の溝部32が設けられている。また、加圧プレート5の下面5bには、上段のコイルスプリング42の個数に対応した複数の溝部52が設けられている。複数の溝部32と複数の溝部52とは平面視で重なるように、互いが対面する位置に設けられている。カバープレート3の溝部32には、下段のコイルスプリング41の下部の一部分が収容され、加圧プレート5の溝部52には、上段のコイルスプリング42の上部の一部分が収容されている。
【0049】
溝部32は、下段のコイルスプリング41の外周形状に倣った形状(平面視で円形)を有し、下段のコイルスプリング41の位置決め部として機能する。また、溝部52は、上段のコイルスプリング42の外周形状に倣った形状(平面視で円形)を有し、上段のコイルスプリング42の位置決め部として機能する。なお、溝部32内に、下段のコイルスプリング41が挿通される軸部(支柱部)を設けたり、溝部52内に、上段のコイルスプリング42が挿通される軸部(支柱部)を設けたりしてもよい。
【0050】
次に、
図3を参照し、第3の実施形態に係る加圧治具1Cを説明する。本実施形態に係る加圧治具1Cは、第1、第2の実施形態に係る加圧治具1A、1Bと同様の構造や要素を備えている。以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施形態に係る加圧治具1Cは、ベースプレート2(土台部の一例)と、ベースプレート2に対向して配置されたカバープレート3(カバー部の一例)と、カバープレート3上に配置された複数の弾性部4Cと、弾性部4C上に配置された加圧プレート5(加圧部)とを備えている。また、加圧治具1Cは、加圧プレート5によって弾性部4Cを圧縮して積層体Bを加圧する加圧構造6を有する。また、加圧治具1Bは、ベースプレート2とカバープレート3との間に、中間プレート7(中間部の一例)を備えている。弾性部4Cは、中間プレート7を介して上下に直列に配置された複数の下段のコイルスプリング41と複数の上段のコイルスプリング42とによって形成されている。
【0052】
複数の下段のコイルスプリング41は、下段圧縮バネ群40A(第1の圧縮バネ群)であり、複数の上段のコイルスプリング42は、上段圧縮バネ群40B(第2の圧縮バネ群)である。下段圧縮バネ群40Aに属する少なくとも一部のコイルスプリング41は、上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対して同一直線La上に配置されている。なお、本実施形態では、下段圧縮バネ群40Aの全てのコイルスプリング41が上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対して同一直線La上に配置されている。
【0053】
中間プレート7は、例えば矩形状であり、平面視で積層体Bからはみ出た領域、つまり、平面視でカバープレート3の張出領域3aや加圧プレート5の張出領域5aに重なる張出領域7aを有する。中間プレート7の張出領域7aには、支柱8が挿通する複数の中間ガイド孔71が形成されている。支柱8は、中間ガイド孔71に挿通されることで中間プレート7を貫通している。中間プレート7は、中間ガイド孔71に挿通された支柱8に案内されながら、支柱8の軸方向L、つまり上下方向に移動可能である。
【0054】
中間プレート7は、一方の表面(以下、「下面7b」と称する)と他方の表面(以下、「上面7c」と称する)とを有する。下面7bは下段のコイルスプリング41の上端に直接的または間接的に当接し、上面7cは上段のコイルスプリング42の下端に直接的または間接的に当接する。
【0055】
本実施形態では、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とは直接的には当接していないが、中間プレート7を介して複数の下段のコイルスプリング41と複数の上段のコイルスプリング42とが直列に配置されている。例えば、複数の下段のコイルスプリング41が属する下段圧縮バネ群40Aを単体の圧縮バネとして把握し、複数の上段のコイルスプリング42が属する上段圧縮バネ群40Bを単体の圧縮バネとして把握することができる。そして、下段圧縮バネ群40Aのバネ定数をk1とし、上段圧縮バネ群40Bのバネ定数をk2とし、両者の合成バネ定数をk3とすると、上記式(1)の関係を満たすので、下段圧縮バネ群40Aと上段圧縮バネ群40Bとは直列に配置されていると説明することができる。
【0056】
次に、
図4を参照し、第4の実施形態に係る加圧治具1Dを説明する。本実施形態に係る加圧治具1Dは、第1~第3の実施形態に係る加圧治具1A~1Cと同様の構造や要素を備えている。以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
加圧治具1Dは、第3の実施形態に係る加圧治具1Cと同様に中間プレート7(中間部の一例)を備えている。カバープレート3と中間プレート7との間に配置された複数の下段のコイルスプリング41は、下段圧縮バネ群40A(第1の圧縮バネ群)である。また、中間プレート7と加圧プレート5との間に配置された複数の上段のコイルスプリング42は、上段圧縮バネ群40B(第2の圧縮バネ群)である。上段圧縮バネ群40Bは下段圧縮バネ群40Aに対して直列に配置されている。下段圧縮バネ群40Aに属する少なくとも一部のコイルスプリング41は、上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対して同一直線La上に配置されている。なお、本実施形態では、下段圧縮バネ群40Aの全てのコイルスプリング41が上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対して同一直線La上に配置されている。
【0058】
図5に示されるように、本実施形態に係る加圧治具1Dは、下段圧縮バネ群40Aに属する複数のコイルスプリング41の数は9個であり、上段圧縮バネ群40Bに属する複数のコイルスプリング42の数は、同数の9個である。つまり、下段圧縮バネ群40Aに属する複数のコイルスプリング41の数に対し、上段圧縮バネ群40Bに属する複数のコイルスプリング42の数の比率は100%である。
【0059】
ここで、下段圧縮バネ群40Aに属する複数のコイルスプリング41の数に対し、上段圧縮バネ群40Bに属する複数のコイルスプリング42の数の比率は100%(同数)に限定されず、100%以下で、且つ60%以上にすることができ、また、80%以上にすると好ましく、90%以上にすると更に好ましい。
【0060】
また、本実施形態に係る加圧治具1Dでは、四本(複数)の支柱8が設けられており、複数の支柱8は、カバープレート3の周縁に沿って配置されている。例えば、本実施形態では、カバープレート3は平面視で矩形であり、四本の支柱8は、カバープレート3の四隅(角部)に配置されている。なお、支柱8はカバープレート3の角部ではなく、カバープレート3の辺の部分に沿って配置されていても良い。
【0061】
また、複数の支柱8は、下段圧縮バネ群40Aに属する複数のコイルスプリング41を囲むように配置されている。具体的には、平面視で複数の支柱8の中心を通る円を描くことができる場合には、その円を仮定し、その円の内側に全てのコイルスプリング41が配置されている。または、複数の支柱8を直線で結んで形成される領域(本実施形態では四角の領域)を仮定し、その領域内に全てのコイルスプリング41が配置されている。
【0062】
また、上述の通り、本実施形態に係る加圧治具1Dは、下段圧縮バネ群40Aに属する9個(複数)のコイルスプリング41を備え、9個のコイルスプリング41は、四本(複数)の支柱8に囲まれている。9個のコイルスプリング41は、三行、三列に並び、角に配置された4個のコイルスプリング41は、四本の支柱8のそれぞれから最も近い位置に配置されている。この4個のコイルスプリング41は、上段圧縮バネ群40Bに属するコイルスプリング42に対し、コイルスプリング41の圧縮方向に沿った同一直線La上に配置されている。
【0063】
加圧プレート5は、コイルスプリング41及びコイルスプリング42を圧縮した状態で、支柱8に螺合するナット61(係止部の一例)に当接し、所定位置に保持されている。その結果、加圧プレート5は、支柱8に近いほど、コイルスプリング41及びコイルスプリング42に付与する力は大きくなる。一方で、加圧プレート5は、支柱8から離れると僅かな撓みを生じる可能性もあって相対的にコイルスプリング41及びコイルスプリング42に付与する力は小さくなる。つまり、支柱8に近いコイルスプリング41及びコイルスプリング42は、支柱8から遠いコイルスプリング41及びコイルスプリング42に比べて加圧プレート5から、より強い力を受け易い。そして、本実施形態では、下段圧縮バネ群40Aのコイルスプリング41のうち、少なくとも支柱8に最も近い4個のコイルスプリング41は、上段圧縮バネ群40Bに属するコイルスプリング42に対し、圧縮方向に沿った同一直線La上に配置されているので、より強い力を加圧プレート5から受けて積層体Bを加圧し易くなる。
【0064】
一方で、加圧プレート5は、支柱8に近い位置に比べ、支柱8から離れた位置の方がコイルスプリング41、コイルスプリング42に付与する力が安定し、均一になり易い。そして、本実施形態では、下段圧縮バネ群40Aのコイルスプリング41のうち、支柱8に最も近い4個のコイルスプリング41以外のコイルスプリング41も、上段圧縮バネ群40Bに属するコイルスプリング42に対し、圧縮方向に沿った同一直線La上に配置されている。その結果、コイルスプリング41及びコイルスプリング42は、安定した力を加圧プレート5から受けることができ、積層体Bを適切に加圧し易くなる。
【0065】
なお、本実施形態において、例えば、支柱8に最も近い4個のコイルスプリング41以外のコイルスプリング41は、上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対し、圧縮方向に沿った同一直線Laからずらして配置することも可能である。また、例えば、支柱8に最も近い4個のコイルスプリング41を上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対し、圧縮方向に沿った同一直線Laからずらして配置し、支柱8に最も近い4個のコイルスプリング41以外のコイルスプリング41を、上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対し、圧縮方向に沿った同一直線La上に配置することも可能である。
【0066】
図4に示されるように、本実施形態に係る加圧治具1Dの中間プレート7の下面7bには、下段のコイルスプリング41の上部の一部分が収容される溝部72が設けられている。中間プレート7の上面7cには、上段のコイルスプリング42の下部の一部分が収容される溝部73が設けられている。溝部72は、下段のコイルスプリング41の外周形状に倣った形状(平面視で円形)を有し、下段のコイルスプリング41の位置決め部として機能する。また、溝部73は、上段のコイルスプリング42の外周形状に倣った形状(平面視で円形)を有し、上段のコイルスプリング42の位置決め部として機能する。なお、溝部72内に、下段のコイルスプリング41が挿通される軸部(支柱部)を設けたり、溝部73内に、上段のコイルスプリング42が挿通される軸部(支柱部)を設けたりしてもよい。
【0067】
また、カバープレート3の上面3cには、下段のコイルスプリング41の下部の一部分を収容する溝部32が設けられている。また、加圧プレート5の下面5bには、上段のコイルスプリング42の上部の一部分を収容する溝部52が設けられている。つまり、下段のコイルスプリング41は、下部がカバープレート3の溝部32に収容され、上部が中間プレート7の溝部72に収容されて位置決めされている。また、上段のコイルスプリング42は、下部が中間プレート7の溝部73に収容され、上部が加圧プレート5の溝部52に収容されて位置決めされている。
【0068】
次に、
図6を参照し、第5、第6及び第7の実施形態に係る加圧治具1E、1F、1Gを説明する。第5、第6及び第7の実施形態に係る加圧治具1E、1F、1Gは、他の実施形態と同様の構造や要素を備えている。特に、加圧治具1E、1F、1Gは、中間プレート7及び中間プレート7に設けられた溝部72、73を備えているので、第4の実施形態に係る加圧治具1Dと比較しながら、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
加圧治具1E(
図6の(a)図参照)、加圧治具1F(
図6の(b)図参照)、および加圧治具1G(
図6の(c)図参照)は、下段圧縮バネ群40Aに属する下段の複数のコイルスプリング41と、上段圧縮バネ群40Bに属する上段の複数のコイルスプリング42とを備えている。下段圧縮バネ群40Aと上段圧縮バネ群40Bとは直列に配置されている。
【0070】
加圧治具1Eでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41は、中間プレート7を介し、上段のコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶように配置されている。また、加圧治具1Eでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41以外の下段のコイルスプリング41に対して、同一直線La上となる位置のコイルスプリング42は省略されている。
【0071】
加圧治具1Fでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41以外のコイルスプリング41(中央のコイルスプリング41)は、中間プレート7を介し、上段のコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶように配置されている。また、加圧治具1Fでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41に対して、同一直線La上となる位置の上段のコイルスプリング42は省略されている。
【0072】
加圧治具1Gでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41は、中間プレート7を介し、上段のコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶように配置されている。また、中間プレート7には、逃げ孔74が形成されている。支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41以外の下段のコイルスプリング41(中央のコイルスプリング41)は、逃げ孔74を通り、上段のコイルスプリング42に直接当接している。
【0073】
次に、
図7を参照し、第8、第9及び第10の実施形態に係る加圧治具1H、1I及び1Jを説明する。加圧治具1H~1Jは、他の実施形態と同様の構造や要素を備えており、他の実施形態との相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
加圧治具1H(
図7の(a)図参照)、加圧治具1I(
図7の(b)図参照)、及び加圧治具1J(
図7の(c)図参照)は、下段圧縮バネ群40Aに属する下段の複数のコイルスプリング41と、上段圧縮バネ群40Bに属する上段の複数のコイルスプリング42とを備えている。加圧治具1H~1Jは、カバープレート3と加圧プレート5との間に配置された中間プレート7X(中間部の一例)を備えている。加圧治具1H~1Jの下段圧縮バネ群40Aと上段圧縮バネ群40Bとは、中間プレート7Xを介して直列に配置されている。
【0075】
中間プレート7Xは、支柱8を避けるような形状及び寸法にて形成されており、実質的に、複数の下段のコイルスプリング41と複数の下段のコイルスプリング42とに挟まれた状態で保持されている。
【0076】
加圧治具1H(
図7(a)図参照)では、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41は、中間プレート7を介し、上段のコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶように配置されている。また、加圧治具1Hでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41以外の下段のコイルスプリング41(中央のコイルスプリング41)は、中間プレート7を介し、上段のコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶように配置されている。
【0077】
加圧治具1I(
図7(b)図参照)では、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41は、中間プレート7を介し、上段のコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶように配置されている。また、加圧治具1Iでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41以外の下段のコイルスプリング41に対して、同一直線La上となる位置のコイルスプリング42は省略されている。
【0078】
加圧治具1J(
図7(c)図参照)では、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41以外のコイルスプリング41(中央のコイルスプリング41)は、中間プレート7を介し、上段のコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶように配置されている。また、加圧治具1Jでは、支柱8に最も近い複数の下段のコイルスプリング41に対して、同一直線La上となる位置の上段のコイルスプリング42は省略されている。
【0079】
次に、
図8、
図9、
図10を参照し、第11~第19の実施形態に係る加圧治具1K~1Sを説明する。加圧治具1K~1Sは、他の実施形態と同様の構造や要素を備えており、他の実施形態との相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0080】
第11の実施形態に係る加圧治具1K(
図8の(a)図参照)は第1の実施形態に係る加圧治具1Aの変形例である。第12の実施形態に係る加圧治具1L(
図8の(b)図参照)は第2の実施形態に係る加圧治具1Bの変形例である。第13の実施形態に係る加圧治具1M(
図8の(c)図参照)は第3の実施形態に係る加圧治具1Cの変形例である。第14の実施形態に係る加圧治具1N(
図9の(a)図参照)は第4の実施形態に係る加圧治具1Dの変形例である。第15の実施形態に係る加圧治具1O(
図9の(b)図参照)は第5の実施形態に係る加圧治具1Eの変形例である。第16の実施形態に係る加圧治具1P(
図9の(c)図参照)は第6の実施形態に係る加圧治具1Fの変形例である。第17の実施形態に係る加圧治具1Q(
図10の(a)図参照)は第8の実施形態に係る加圧治具1Hの変形例である。第18の実施形態に係る加圧治具1R(
図10の(b)図参照)は第9の実施形態に係る加圧治具1Iの変形例である。第19の実施形態に係る加圧治具1S(
図10の(c)図参照)は第10の実施形態に係る加圧治具1Jの変形例である。
【0081】
先に説明した第1~第10の実施形態に係る加圧治具1A~1Jは、下段のコイルスプリング41のバネ定数と上段のコイルスプリング42のバネ定数とが同じであった。これらに対し、第11~第19の実施形態に係る加圧治具1K~1Sは、下段のコイルスプリング41のバネ定数と上段のコイルスプリング42のバネ定数とが異なっている。具体的には、上段のコイルスプリング42の巻き数が下段のコイルスプリング41の巻き数よりも少なく、上段のコイルスプリング42のバネ定数が下段のコイルスプリング41のバネ定数よりも大きくなっている。
【0082】
上記の各実施形態に係る加圧治具1A~1Sは、複数のコイルスプリング41、42を備えている。複数のコイルスプリング41、42は、カバープレート3と加圧プレート5との間で、直列に配置されると共に、圧縮方向に沿った同一直線La上に配置されている。各コイルスプリング41、42はバネ定数を有するが、複数のコイルスプリング41、42を直列に配置することで、単一の圧縮バネを配置する態様に比べ、コイルスプリング41及びコイルスプリング42の全体としてのバネ定数を抑え易くなる。更にコイルスプリング41とコイルスプリング42とが圧縮方向に沿った同一直線La上に配置され、縦に並ぶように配置されているので適切な加圧力を付与し易くなる。
【0083】
また、第3、第4、第5~第10、第13~第19の実施形態に係る加圧治具1C、1D、1E~1J、1M~1Sは、中間プレート7,7Xを備えており、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とを圧縮方向に沿った同一直線La上に配置し易くなり、また、中間プレート7、7Xを介在させるので、同一直線La上のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とが干渉して破損してしまうのを抑制できる。
【0084】
また、各実施形態に係る加圧治具1A~1Sは、下段圧縮バネ群40Aに属する複数のコイルスプリング41の数に対し、上段圧縮バネ群40Bに属する複数のコイルスプリング42の比率は、60%以上で、且つ100%以下である。その結果、適切な加圧力を付与するための調整を行い易くなる。
【0085】
また、第1~第10の実施形態に係る加圧治具1A~1Jは、下段のコイルスプリング41のバネ定数と上段のコイルスプリング42のバネ定数とが同じである。これらの実施形態によれば、弾性部4A~4Jとしての合成バネ定数を把握し易くなって扱い易くなり、加圧力の調整を行い易くなる。
【0086】
また、第11~第19の実施形態に係る加圧治具1K~1Sは、下段のコイルスプリング41のバネ定数と上段のコイルスプリング42のバネ定数とが異なる。これらの実施形態によれば、所望の加圧力を得るためにバネ定数の微妙な調整を実現でき、加圧力の複雑な調整にも対応し易くなる。
【0087】
また、上記の各実施形態に係る加圧治具1A~1Sは、各コイルスプリング41、42の位置決め部として機能する支柱8や溝部32、52、72、73を備えている。その結果、直列に配置された複数のコイルスプリング41、42は位置決め部の作用によってずれ難なり、積層体Bを安定して加圧するのに有利になる。特に、位置決め部として溝部32、52、72、73を備えた実施形態では、溝部32、52、72、73内に各コイルスプリング41、42を収容させることで、コイルスプリング41、42のずれを効果的に抑制できる。また、位置決め部として支柱8を備えた実施形態では、コイルスプリング41、42を支柱8に挿通することにより、コイルスプリング41、42は安定して位置決めされ、更に、支柱8に案内されながら圧縮されるので、適切な加圧力の付与に有利になる。
【0088】
また、第1、第2、第11、及び第12の実施形態に係る加圧治具1A、1B、1K、1Lでは、直列に配置された複数のコイルスプリング41、42は、圧縮方向に沿った同一直線La上に並び、且つ互いに当接しているので、簡素な構造を実現し易くなる。
【0089】
また、各実施形態に係る加圧治具1A~1Sの加圧構造6は、カバープレート3、加圧プレート5、及び中間プレート7を貫通する複数の支柱8(支柱部)と、支柱8の雄ネジ部62に螺合する複数のナット61(係止部)とを備えている。複数の支柱8は、カバープレート3の周縁に沿って配置されると共に、下段圧縮バネ群40Aに属する複数のコイルスプリング41を囲むように配置されている。ナット61は、支柱8の軸方向Lの所定位置で保持されることで、この位置で加圧プレート5を安定的に保持でき、積層体Bに対して適切な加圧力を付与するのに有利になる。また、複数の支柱8は、カバープレート3の周縁に沿って配置されると共に、下段圧縮バネ群40Aに属する複数のコイルスプリング41を囲むように配置されているので、下段圧縮バネ群40Aに属するコイルスプリング41の圧縮に偏りが少なくなる。
【0090】
また、第4、第5、第7、第8、第9、第14、第15、第17、第18の実施形態に係る加圧治具1D、1E、1G、1H,1I、1N、1O、1Q,1Rによれば、下段圧縮バネ群40Aにおいて支柱8に近いコイルスプリング41は、上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶことになり、より強い力を加圧プレート5から受けて積層体Bを加圧し易くなる。
【0091】
また、第4、第6、第8、第10、第14、第16、第17、第19の実施形態に係る加圧治具1D、1F、1H、1J、1N、1P、1Q、1Sによれば、下段圧縮バネ群40Aにおいて支柱8に近いコイルスプリング41以外のコイルスプリング41は、上段圧縮バネ群40Bのコイルスプリング42に対して圧縮方向に沿った同一直線La上に並ぶことになり、より安定した力を加圧プレート5部から受けて積層体Bを適切に加圧し易くなる。
【0092】
また、上記の各実施形態に係る加圧治具1A~1Sを用いることで、下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とを直列に配置して積層体Bに付与する加圧力を調整する調整方法を実施できる。この加圧力の調整方法によれば、単一の圧縮バネを配置する態様に比べ、弾性部4A~4Sとしてのバネ定数を抑えることができる。その結果、適切な加圧力を付与し易くなる。
【0093】
また、この加圧力の調整方法において、バネ定数が同じである下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とを用いるようにすれば、簡素な構造にて加圧力の調整を行い易くなる。
【0094】
また、この加圧力の調整方法において、バネ定数が異なる下段のコイルスプリング41と上段のコイルスプリング42とを用いるようにすれば、加圧力の複雑な調整を行い易くなる。
【0095】
以上、各実施形態に係る加圧治具に基づいて加圧装置を説明したが、本発明は、これらの実施形態のみには限定されない。例えば、弾性部を形成する複数の圧縮バネはコイルスプリングに限定されず、スプリングワッシャや板バネであってもよく、また、断面が蛇腹状に蛇行している形状のバネ(例えばZバネ)などであってもよい。
【0096】
また、加圧構造としてはボルトやナットに限定されず、例えば、支柱に係止され、その位置で加圧部に干渉して加圧部を留めておく爪構造やラチェット構造などであってもよい。
【0097】
また、対象物としては半導体の基板等に使用される積層体に限定されず、例えば、ヒートシンクとセラミック基板との接合物等であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1A~1S…加圧治具(加圧装置)、2…ベースプレート(土台部)、3…カバープレート(カバー部)、4A~4S…弾性部、5…加圧プレート、6…加圧構造、7,7X…中間プレート、8…支柱(支柱部、位置決め部)、32,52,72,73…(溝部、位置決め部)、40A…下段圧縮バネ群(圧縮バネ)、40B…上段圧縮バネ群(圧縮バネ)、41…下段のコイルスプリング(圧縮バネ)、42…上段のコイルスプリング(圧縮バネ)、61…ナット(係止部)、B…積層体、L…軸方向。