(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106199
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】加圧装置
(51)【国際特許分類】
B25B 11/00 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
B25B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001042
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃正
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】江嶋 善幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 厚樹
(72)【発明者】
【氏名】橘 正晴
(72)【発明者】
【氏名】松村 和
【テーマコード(参考)】
3C020
【Fターム(参考)】
3C020XX07
(57)【要約】
【課題】連続炉で積層体を加熱するのに有効な加圧装置を提供することを目的とする。
【解決手段】積層体Bを加圧した状態で保持する加圧治具1であって、積層体Bが載置されるベースプレート2と、ベースプレート2に対向して配置され、ベースプレート2との間で積層体Bを挟持するカバープレート3と、カバープレート3上に配置されたスプリングワッシャ4と、スプリングワッシャ4上に配置された加圧プレート5によってスプリングワッシャ4を圧縮して積層体Bを加圧する加圧構造6と、を備え、ベースプレート2から加圧プレート5に至る高さ方向Dhにおいて、非圧縮状態でのスプリングワッシャ4の高さHは、ベースプレート2の高さ方向Dhの厚みTaとカバープレート3の高さ方向Dhの厚みTbとの合計値よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体を加圧保持した状態で連続炉内に導入される加圧装置であって、
前記積層体が載置される土台部と、
前記土台部に対向して配置され、前記土台部との間で前記積層体を挟持するカバー部と、
前記カバー部上に配置された弾性部と、
前記弾性部上に配置された加圧部によって前記弾性部を圧縮して前記積層体を加圧する加圧構造と、を備え、
前記土台部から前記加圧部に至る高さ方向において、非圧縮状態での前記弾性部の高さは、前記土台部の前記高さ方向の厚みと前記カバー部の前記高さ方向の厚みとの合計値よりも小さい、加圧装置。
【請求項2】
非圧縮状態での前記弾性部の高さは、前記カバー部の前記高さ方向の厚みよりも小さい、請求項1記載の加圧装置。
【請求項3】
前記弾性部は、スプリングワッシャである、請求項1または2記載の加圧装置。
【請求項4】
前記カバー部には、前記弾性部を収容して保持する座ぐりが形成されている、請求項1または2記載の加圧装置。
【請求項5】
前記弾性部は、前記カバー部上に、複数配置されている、請求項1または2記載の加圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体を加圧保持した状態で連続炉内に導入される加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板等に使用される積層体を加圧した状態で保持する加圧装置が知られている。この種の加圧装置では、積層体を上下の板材で挟持し、上方の板材にコイルスプリングを載置し、このコイルスプリングを圧縮することで積層体を挟持している(特許文献1、2、3参照)。加圧装置は、積層体を保持した状態のままバッチ式の加熱炉に導入され、積層体の接合が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-23899号公報
【特許文献2】特開2012-200730号公報
【特許文献3】特開2013-71880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、従来技術ではバッチ式の加熱炉を利用するので高さ方向の寸法に対する配慮の必要性は少ない。しかしながら、積層体を連続炉に導入して接合する場合には高さ方向の制限が厳しく、従って、従来の加圧装置では、積層体の積層数を減らすなどの工夫が必要となり、効率化を阻害して実質的に利用しにくい構造になっていた。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、連続炉で積層体を加熱するのに有効な加圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、積層体を加圧した状態で保持する加圧装置であって、積層体が載置される土台部と、土台部に対向して配置され、土台部との間で積層体を挟持するカバー部と、カバー部上に配置された弾性部と、弾性部上に配置された加圧部によって弾性部を圧縮して積層体を加圧する加圧構造と、を備え、土台部から加圧部に至る高さ方向において、非圧縮状態での弾性部の高さは、土台部の高さ方向の厚みとカバー部の高さ方向の厚みとの合計値よりも小さい。
【0007】
この加圧装置では、非圧縮状態での弾性部の高さは、土台部の高さ方向の厚みとカバー部の高さ方向の厚みとの合計値よりも小さい。従って、弾性部で積層体を加圧している圧縮状態において、加圧装置が連続炉に導入されたとしても、連続炉の高さ方向での制約を受け難い。その結果、連続炉で積層体を加熱するのに有効である。
【0008】
また、非圧縮状態での弾性部の高さは、カバー部の高さ方向の厚みよりも小さくてもよい。カバー部の厚みよりも、弾性部の高さが小さければ、加圧装置の高さ方向のコンパクト化に更に有利となる。
【0009】
また、弾性部は、スプリングワッシャであってもよい。複数巻きのコイルスプリングに比べ、スプリングワッシャであれば高さ方向の寸法を抑え易い。更に、スプリングワッシャであれば、圧縮状態で潰れて平坦になるので、積層体を安定的に加圧し、更に保持するのに有利になる。
【0010】
また、カバー部には、弾性部を収容して保持する座ぐりが形成されていてもよい。座ぐりによって、弾性部が定位置に保持され易くなり、積層体の適切な加圧を行えるので、弾性部のコンパクト化に起因した不具合を生じ難い。
【0011】
また、弾性部は、カバー部上に、複数配置されていてもよい。弾性部を複数配置することにより、積層体の加圧場所のバラツキを抑え易くなり、弾性部のコンパクト化に起因した不具合を生じ難い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連続炉で積層体を加熱するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る加圧治具の斜視図である。
【
図2】実施形態に係る加圧治具を一部破断して示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る加圧治具を一部破断して示す正面図である。
【
図4】実施形態に係る加圧治具を一部破断して示す側面図である。
【
図7】積層体を連続炉に導入した場合の温度のばらつきを示すグラフである。
【
図8】他の実施形態に係る加圧治具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
まず、
図1、
図2、
図3及び
図4を参照して、実施形態に係る加圧治具1(加圧装置の一例)について説明する。加圧治具1は、半導体の基板等に使用される積層体Bを加圧保持した状態で窒素連続炉50内に導入される。窒素連続炉50内において、積層体Bは加熱され、ろう付けにより接合される。なお、窒素連続炉50は連続炉の一例であり、連続炉は窒素連続炉に限定されず、他の連続炉であってもよく、積層体Bの種類や用途に応じて適宜に選択される。
【0016】
本実施形態では、複数の基板ユニットBaがスペーサSを挟んで積層されており、基板ユニットBaと加圧治具1との間にもスペーサSが配置されている。また、接合前の状態において、基板ユニットBaは、セラミック板b2を一対の銅板b1で挟んで形成された積層体構造(
図5参照)になっている。本実施形態に係る積層体Bは、スペーサS及び複数の基板ユニットBaによって形成されるが、単体の基板ユニットBaを加圧治具1によって保持する場合には、単体の基板ユニットBaが積層体Bを形成することになる。本実施形態に係る積層体Bは平面視で矩形であるが、他の形状であってもよい。スペーサSは、基板ユニットBa同士の接合及び基板ユニットBaと加圧治具1との接合を阻止できればよく、本実施形態ではカーボンスペーサを利用している。
【0017】
加圧治具1は、積層体Bが載置される板状のベースプレート2(土台部)と、ベースプレート2に対向して配置されたカバープレート3(カバー部)とを備えている。カバープレート3は、ベースプレート2との間で積層体Bを挟持する。また、加圧治具1は、カバープレート3上に配置された複数のスプリングワッシャ4と、スプリングワッシャ4上に配置された加圧プレート5(加圧部)とを備えている。また、加圧治具1は、加圧プレート5によってスプリングワッシャ4を圧縮して積層体Bを加圧する加圧構造6を有する。
【0018】
ベースプレート2は例えば矩形状であり、平面視で積層体Bからはみ出た領域、つまり積層体Bに重なっていない張出領域2aを有する。ベースプレート2の張出領域2aには、ベースプレート2の短辺に沿うように二本の支柱8が立設されている。また、支柱8は、ベースプレート2の長手方向(左右方向)の両側で対向して配置されており、左右で対向する一対の支柱8同士の間に積層体Bが配置されている。支柱8の上部には、係止爪9が挿通される係合孔8aが形成されている。
【0019】
カバープレート3は、積層体Bの形状に対応した矩形状であり、一方の表面3a(以下、「下面」と称する)と他方の表面3b(以下、「上面」と称する)とを有する。下面3aは平坦面であり、積層体Bに当接する。上面3bには、座ぐり3cが形成されており、座ぐり3c内にはスプリングワッシャ4が収納されるように配置されている。座ぐり3cの深さは、例えば螺旋状のスプリングワッシャ4が圧縮されて平坦になった際に、スプリングワッシャ4の全体が収まる程度の寸法であると望ましい。座ぐり3cは、平面視でドーナツ状(環状)を呈し、平面視で環状のスプリングワッシャ4が収まり、スプリングワッシャ4の位置ずれを防止する。座ぐり3cは、スプリングワッシャ4の位置決め部として機能する。スプリングワッシャ4は弾性部の一例である。
【0020】
加圧プレート5は、平面視でベースプレート2の張出領域2aに対向する余剰領域5aを有する。余剰領域5aには、支柱8が貫通する支柱貫通孔5bが形成されている。また、余剰領域5aの上面には、支柱貫通孔5bを通るように収納溝5cが設けられている。収納溝5cには、係止爪9が収まる。
【0021】
加圧プレート5は、カバープレート3に重ねるように配置され、更に、スプリングワッシャ4に当接するように押し下げられる。加圧プレート5を押し下げる際、加圧プレート5の余剰領域5aに設けられた支柱貫通孔5bには支柱8(支柱部)が通される。支柱8の上部は支柱貫通孔5bの上方に突き出る。支柱8の上部には、係合孔8aが設けられており、係合孔8aには係止爪9(係止部)が挿通される。係止爪9は、横方向から係合孔8aを貫通すると共に、加圧プレート5のスプリングワッシャ4に当接する側の表面(下面)とは反対側の表面(上面)に当接して加圧プレート5を係止する。加圧プレート5の上面には、係止爪9の軌跡に沿うように収納溝5cが形成されており、係止爪9は収納溝5cに沿ってスライドする。
【0022】
係止爪9が加圧プレート5を係止すると、加圧プレート5は上方への移動を規制される。加圧プレート5の移動の規制により、スプリングワッシャ4の復元が阻止され、スプリングワッシャ4は圧縮状態で保持される。本実施形態に係る加圧構造6は、少なくとも加圧プレート5、支柱8、係合孔8a及び係止爪9を備えて構成されている。
【0023】
次に、ベースプレート2から加圧プレート5に至る高さ方向Dhを基準にして、スプリングワッシャ4の高さと、ベースプレート2の厚みTa及びカバープレート3の厚みTbとの関係について、
図5を参照しながら説明する。ベースプレート2の厚みTaとは、上記の高さ方向Dhにおける寸法を意味し、基本的には、ベースプレート2が積層体Bに重なる領域において、最も寸法の大きくなる厚みを意味する。なお、本実施形態では、ベースプレート2は平坦な板状であり、全ての部分で同じ厚みを有する。また、カバープレート3の厚みTbとは、上記の高さ方向Dhにおける寸法を意味し、基本的には、カバープレート3が積層体Bに重なることを想定された領域において、最も寸法の大きくなる厚みを意味する。なお、本実施形態のカバープレート3には座ぐり3cが形成されており、カバープレート3の厚みTbは、座ぐり3cが形成されていない領域の寸法を意味する。
【0024】
スプリングワッシャ4は、例えば、インコネル750、インコネル718、窒化ケイ素、カーボンコンポジット等によって形成されている。スプリングワッシャ4は、カバープレート3に当接していない状態で非圧縮状態である。スプリングワッシャ4は、重なることなく螺旋状に巻かれ、且つ両端部4a、4bが離間している圧縮バネの一例である。より具体的に説明すると、スプリングワッシャ4はC字状の形状を呈し、両端部4a、4bは、互いに離間すると共に、螺旋状を仮定した場合の軸線方向(例えば上下方向)にずれている。ここで、カバープレート3の座ぐり3c内で、座ぐり3cの底に当接している一方の端部を下端部4aとし、反対側の他方の端部を上端部4bとする。そして、スプリングワッシャ4の高さとは、スプリングワッシャ4の下端部4aと上端部4bとの高さ方向Dhの高低差、つまり下端部4aから上端部4bまでの高さ方向Dhの距離を意味する。
【0025】
本実施形態では、スプリングワッシャ4の高さHは、ベースプレート2の厚みTaとカバープレート3の厚みTbとの合計値よりも小さい。更に本実施形態では、スプリングワッシャ4の高さHは、ベースプレート2の厚みTaよりも小さく、また、カバープレート3の厚みTbよりも小さい。更に、本実施形態では、座ぐり3cが形成されている部分の厚み(厚みが最も小さくなる部分)よりもスプリングワッシャ4の高さHの方が小さくなっている。なお、スプリングワッシャ4の高さHは、座ぐり3cが形成されている部分の厚みよりも大きく、且つ座ぐり3cを避けた部分の厚みよりも小さくすることも可能である。
【0026】
次に、
図6を参照し、積層体Bの接合方法について説明する。本実施形態に係る積層体Bの接合方法は、例えば、治具積層工程S1、接合工程S2、及び治具離脱工程S3を備えている。本実施形態に係る積層体Bの接合方法は、バッチ式ではなく、連続式である。バッチ式とは、例えば、複数の積層体に対して治具積層工程を実施し、治具積層工程が完了した複数の積層体に対して接合工程を実施し、接合工程が完了した複数の積層体に対して治具離脱工程を実施するような方法である。これに対し、連続式とは、例えば、積層体Bごとに、治具積層工程S1から治具離脱工程S3までを連続して実施するような方法である。また、連続式を実施するシステム100は、治具積層工程S1を実施する積層装置11、接合工程S2を実施する接合装置12、治具離脱工程S3を実施する離脱装置13を備えている。また、このシステム100は、積層体Bを保持する複数の加圧治具1を搬送し、治具積層工程S1、接合工程S2、及び治具離脱工程S3に連続的に導入する搬送部14を備えている。
【0027】
治具積層工程S1では、積層体Bが加圧治具1に設置される。具体的には、治具積層工程S1では、ろう材の印刷が完了した接合前の積層体B(未接合積層体)が搬送部14によって積層装置11に供給される。積層装置11は、未接合積層体Bを加圧治具1のベースプレート2上に載置し、未接合積層体B上にカバープレート3及びスプリングワッシャ4を設置し、カバープレート3及びスプリングワッシャ4上に加圧プレート5を設置する。加圧プレート5は、スプリングワッシャ4を圧縮するように押し下げられ、加圧構造6によって所定位置に保持される。加圧プレート5によって圧縮されたスプリングワッシャ4はカバープレート3を加圧し、カバープレート3を介して未接合積層体Bが加圧され、所定位置に保持される。
【0028】
接合工程S2では、窒素連続炉50において未接合積層体Bの接合が行われる。具体的には、本実施形態の窒素連続炉50は、窒素雰囲気を形成可能な室部51、室部51内に設けられた加熱部52を備えている。搬送部14は、未接合積層体Bを保持している加圧治具1を窒素連続炉50の室部51内に導入する。室部51内では、積層体Bの温度を、積層体Bの接合が可能となる所定温度(接合温度)以上にまで上げ、更に適切な接合が可能となるように、所定時間(接合時間)だけ接合温度を維持する必要がある。
【0029】
例えば、本実施形態では、接合温度として800℃以上にする必要があり、接合時間として6分以上が必要である。
図7は、窒素連続炉50内での経過時間と温度との関係を示しており、「0:00:00」は加熱のスタート時、つまり窒素連続炉50の入口近傍を示し、「1:00:00」は加熱の終了時、つまり窒素連続炉50の出口近傍を示している。また、符号Xは、窒素連続炉50内の温度を測定した複数の結果(グラフ)を炉内温度群の結果として示している。
図7の炉内温度群の結果Xによれば、複数の結果(グラフ)は概ね一致しており、ピーク温度は870℃程度である。また、符号Yは、窒素連続炉50内で加熱される積層体Bの温度を測定した複数の結果(グラフ)を積層体温度群の結果として示している。
図7の積層体温度群の結果Yによれば、複数の結果(グラフ)は、ピーク温度に多少のばらつきはあるものの、800℃の温度状態を、少なくとも6分以上維持できていることを確認できる。
【0030】
治具離脱工程S3では、接合が完了した積層体Bに対する加圧治具1の加圧が解除され、積層体Bが加圧治具1から取り外される。離脱装置13は、加圧治具1の加圧構造6による加圧プレート5の係止状態を解き、スプリングワッシャ4を復元させる。スプリングワッシャ4の復元により、積層体Bは、ベースプレート2及びカバープレート3から取り外し可能(剥離可能)な状態になり、離脱装置13は積層体Bを加圧治具1から取り外し、次工程に搬送する。
【0031】
次に、
図8を参照し、他の実施形態に係る加圧治具1Aを説明する。加圧治具1Aは、基本的に上述の実施形態に係る加圧治具1と共通する構造や要素を備えている。従って、以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通する構造や要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
カバープレート3は、弾性部としてスプリングワッシャ4に代えてコイルスプリング4Aを使用している。コイルスプリング4Aは複数の巻き数を有するので、スプリングワッシャ4に比べて弾性力は大きくなるが、スプリングワッシャ4に比べて高さ方向Dhの寸法は大きくなり易い。コイルスプリング4Aの高さHは、ベースプレート2の厚みTa及びカバープレート3の厚みTbの合計値よりも小さい。なお、本実施形態に係るコイルスプリング4Aの高さHは、カバープレート3の厚みTbよりも小さいが、大きくすることもできる。
【0033】
カバープレート3には、コイルスプリング4Aの一部を収容する座ぐり3cが形成されている。座ぐり3cの深さは、少なくともコイルスプリング4Aの位置ズレを防止できる深さであるとよく、更に、圧縮状態でのコイルスプリング4A全体が収まる深さであると望ましい。
【0034】
上述の通り、上記の各実施形態では、連続式の接合方法で使用される加圧治具1、1Aを説明している。ここで、例えば、バッチ式の接合方法によって積層体Bを加熱する場合、炉内の温度条件を一定に保持するのは窒素連続炉50に比べて容易であり、加圧装置の高さや寸法等に配慮する必要性は少ない。これに対し、窒素連続炉50に加圧治具1、1Aを導入する場合には、加圧治具1、1Aの高さや寸法等に応じて室部51を大きくすると、室部51内の温度や環境を維持するための条件が厳しくなる。その結果、積層体Bの温度を接合温度以上とし、更に接合時間を維持するようにする制御や調整は、困難になり易い。
【0035】
しかしながら、上記の各実施形態に係る加圧治具1、1Aには、好適に高さを抑える工夫が施されており、従って、窒素連続炉50に導入して積層体Bを接合する場合の優位性が高い。具体的には、非圧縮状態でのスプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aの高さHは、ベースプレート2の高さ方向Dhの厚みTaとカバープレート3の高さ方向Dhの厚みTbとの合計値よりも小さい。従って、スプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aで積層体Bを加圧している圧縮状態において、加圧治具1Aが窒素連続炉50に導入されたとしても、窒素連続炉50の高さ方向Dhでの制約を受け難い。
【0036】
更に、本実施形態において、非圧縮状態でのスプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aの高さHは、カバープレート3の高さ方向Dhの厚みTbよりも小さいので、加圧治具1Aの高さ方向Dhのコンパクト化に更に有利となる。
【0037】
補足として、本実施形態では、ベースプレート2の厚みやカバープレート3の厚みの単体ではなく、両者の合計値あるいは一方と弾性部(スプリングワッシャ4やコイルスプリング4A等)の高さHとの関係性に着目することで、好適に加圧治具1Aの高さを抑えており、その優位性は高く、単なる設計事項であるとは言えない。例えば、積層体Bを挟持するベースプレート2及びカバープレート3の機能は、スプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aの弾性機能とは本質的に異なる。従って、本来であれば、ベースプレート2及びカバープレート3の設計条件と、スプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aの設計条件とは本質的に異なる。しかしながら、本実施形態の如く、両者の相関性に着目することで、例えば、スプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aとして必要な最低限の弾性機能を実現しつつ、ベースプレート2の厚みTaやカバープレート3の厚みTbをできるだけ小さくすることが可能になり、好適に加圧治具1Aの高さを抑え易くなる。
【0038】
また、上記の実施形態に係る加圧治具1では、弾性部としてスプリングワッシャ4を使用しているので、他の実施形態に係る複数巻きのコイルスプリング4Aに比べ、高さ方向Dhの寸法を抑え易い。更に、スプリングワッシャ4であれば、圧縮状態で潰れて平坦になるので、積層体Bを安定的に加圧し、更に保持するのに有利になる。
【0039】
また、カバープレート3には、スプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aを収容して保持する座ぐり3cが形成されている。そして、この座ぐり3cによって、スプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aは定位置に保持され易くなり、積層体Bの適切な加圧を行える。したがって、弾性部のコンパクト化のために、例えば、スプリングワッシャ4等を使用したとしても、そのコンパクト化に起因した位置ズレ等の不具合を生じ難い。
【0040】
また、スプリングワッシャ4やコイルスプリング4Aは、カバープレート3上に、複数配置されている。スプリングワッシャ4等を複数配置することにより、積層体Bの加圧場所のバラツキを抑え易くなる。したがって、弾性部のコンパクト化のために、例えば、スプリングワッシャ4等を使用したとしても、そのコンパクト化に起因した不均一あるいは不十分な加圧等の不具合を生じ難い。
【0041】
以上、各実施形態に基づいて、加圧装置を説明したが、本発明は、これらの実施形態のみには限定されない。例えば、上記の実施形態では、弾性部としてスプリングワッシャやコイルスプリングを例に説明したが、板バネその他の弾性機能を有する部材を広く使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1、1A…加圧治具(加圧装置)、2…ベースプレート(土台部)、3…カバープレート(カバー部)、3c…座ぐり、4…スプリングワッシャ(弾性部)、4A…コイルスプリング(弾性部)、5…加圧プレート(加圧部)、6…加圧構造、B…積層体、Dh…高さ方向、H…非圧縮状態での前記弾性部の高さ、Ta…ベースプレートの厚み、Tb…カバープレートの厚み。