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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106204
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】制御装置および直流給配電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20220711BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
H02J7/35 B
H02J1/00 304G
H02J1/00 304H
H02J1/00 306L
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001055
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加茂 章太郎
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165BB01
5G165BB02
5G165DA06
5G165EA02
5G165EA03
5G165HA16
5G165JA07
5G165LA01
5G165LA02
5G165MA08
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA06
5G503DA15
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】直流給配電系統を安定化できる制御装置を実現する。
【解決手段】制御装置(30)は、母線電圧値と電圧上限値との偏差を参照して第1電流指令値を出力する第1のPI制御回路(35)と、母線電圧値と電圧下限値との偏差を参照して第2電流指令値を出力する第2のPI制御回路(36)と、直流給配電システムの需給の変動に応じた第3電流指令値を出力する電流指令値出力回路(37)と、第1電流指令値と、第2電流指令値と、第3電流指令値とを加算した値に応じた、蓄電装置の充放電を制御するための制御信号を出力する制御信号出力回路(39)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、
前記直流母線の母線電圧値と電圧上限値との偏差を参照してPI(Proportional Integral)制御を行うとともに、前記蓄電装置の充放電を行わないかまたは充電を行うように制限された第1電流指令値を出力する第1のPI制御回路と、
前記直流母線の母線電圧値と電圧下限値との偏差を参照してPI制御を行うとともに、前記蓄電装置の充放電を行わないかまたは放電を行うように制限された第2電流指令値を出力する第2のPI制御回路と、
前記蓄電装置の入出力を電力制御する電流指令値である第3電流指令値を出力する電流指令値出力回路と、
前記第1電流指令値、前記第2電流指令値、および前記第3電流指令値を加算した値に応じた、前記蓄電装置の充放電を制御するための制御信号を出力する制御信号出力回路と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記第1のPI制御回路は、前記母線電圧値と前記電圧上限値との偏差に応じた入力を積分する第1積分器を備え、
前記第1積分器は、前記母線電圧値と前記電圧上限値との偏差に応じた入力が負の値または0である場合には、当該入力について積分を行い、前記母線電圧値と前記電圧上限値との偏差に応じた入力が正の値である場合には、当該第1積分器の出力が0以上の場合には当該入力を0として積分を行い、当該第1積分器の出力が0よりも小さい場合には当該入力について積分を行う、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1のPI制御回路は、入力を0以下に制限して出力する第1リミッタをさらに備え、前記第1リミッタの出力を第1電流指令値として出力する、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2のPI制御回路は、前記母線電圧値と前記電圧下限値との偏差に応じた入力を制限する第2積分器とを備え、
前記第2積分器は、前記母線電圧値と前記電圧下限値との偏差に応じた入力が0または正の値である場合には、当該入力について積分を行い、前記母線電圧値と前記電圧下限値との偏差に応じた入力が負の値である場合には、当該第2積分器の出力が0以下の場合には当該入力を0として積分を行い、当該第2積分器の出力が0よりも大きい場合には当該入力について積分を行う、請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2のPI制御回路は、入力を0以上に制限して出力する第2リミッタをさらに備え、前記第2リミッタの出力を第2電流指令値として出力する、請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記制御装置により充放電を制御される蓄電装置と、を備える直流給配電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流給配電システムに含まれる蓄電池の充放電を制御する制御装置、および当該制御装置を備える直流給配電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、急峻な負荷変動が生じた場合でも、系統を安定化することができる、直流給配電系統の系統安定化装置などが開示されている。当該系統安定化装置においては、発電装置および蓄電池のそれぞれの変換器について、電力制御と電圧制御とを切り替えて制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-205225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の系統安定化装置においては、電力制御と電圧制御との切り替え時に、母線電圧値が大きく変動する場合がある。このため、特許文献1の系統安定化装置によっては直流給配電系統の安定化が不十分である。
【0005】
本発明の一態様は、直流給配電系統をより安定化することが可能な制御装置などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、前記直流母線の母線電圧値と電圧上限値との偏差を参照してPI(Proportional Integral)制御を行うとともに、前記蓄電池の充放電を行わないかまたは充電を行うように制限された第1電流指令値を出力する第1のPI制御回路と、前記直流母線の母線電圧値と電圧下限値との偏差を参照してPI制御を行うとともに、前記蓄電池の充放電を行わないかまたは放電を行うように制限された第2電流指令値を出力する第2のPI制御回路と、前記蓄電装置の入出力を電力制御する電流指令値である第3電流指令値を出力する電流指令値出力回路と、前記第1電流指令値、前記第2電流指令値、および前記第3電流指令値を加算した値に応じた、前記蓄電装置の充放電を制御するための制御信号を出力する制御信号出力回路と、を備える。
【0007】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、直流給配電系統をより安定化することが可能な制御装置などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る制御装置が適用される直流給配電システム1の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】制御装置が適用された直流給配電システムにおける各部の動作を示すグラフである。
図5】比較例の直流給配電システムにおける各部の動作を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
(直流給配電システム1の構成)
図1は、本実施形態に係る制御装置30が適用される直流給配電システム1の構成を示す図である。図1に示すように、直流給配電システム1は、商用電源11、太陽電池パネル12、直流母線10および直流負荷40を備える。直流母線10には、蓄電装置20が接続されている。蓄電装置20には、制御装置30が接続されている。
【0012】
商用電源11は、直流母線10に対してAC(Alternating Current)により電力を供給する。商用電源11は、変圧器11a、AC-DC(Direct Current)コンバータ11b、およびブレーカー11cを介して直流母線10に接続される。変圧器11aは、商用電源11から入力されるACの電圧を変圧する。AC-DCコンバータ11bは、変圧器11aから入力されるACをDCに変換して出力する。また、直流給配電システム1は、AC-DCコンバータ11bの代わりに整流回路を備えていてもよい。ブレーカー11cは、AC-DCコンバータ11bから入力されるDCの電流が過大になった場合に、AC-DCコンバータ11bと直流母線10との間を遮断する。ただし、ブレーカー11cは必須ではない。
【0013】
太陽電池パネル12は、太陽光の日射量に応じて発電した電力をDCにより直流母線10へ供給する。太陽電池パネル12は、DC-DCコンバータ12aを介して直流母線10に接続される。DC-DCコンバータ12aは、太陽電池パネル12から入力されるDCの電圧を変換して出力する。
【0014】
蓄電装置20は、蓄電池21、ブレーカー22およびDC-DCコンバータ23を備える。蓄電池21は、電力を内部にエネルギーとして保持し、保持したエネルギーを必要に応じてDCにより直流母線10へ供給する。ブレーカー22は、蓄電池21から入力されるDCの電流が過大になった場合に、蓄電池21と直流母線10との間を遮断する。DC-DCコンバータ23は、制御装置30から入力される指令値に基づいて、蓄電池21から入力されるDCの電圧を変換して直流母線10へ出力するか、または直流母線10から入力されるDCの電圧を変換して蓄電池21へ出力する。ただし、ブレーカー22は必須ではない。
【0015】
蓄電池21は、リチウムイオン電池、NaS(ナトリウム・硫黄)電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池等の、2次電池を備えた装置であり得る。しかし蓄電池21は2次電池を備えた装置に限られるものではない。蓄電池21として、キャパシタ、超伝導電力貯蔵ユニット、フライホイール式電力貯蔵ユニット、圧縮空気式電力貯蔵ユニットなど、電気エネルギーを貯蔵する機能を備えた任意のユニットを用いることができる。
【0016】
直流母線10は、商用電源11、太陽電池パネル12、および蓄電装置20から供給される電力を直流負荷40へ供給する電力線である。図1に示す例では、直流負荷40として、2つの負荷41および42が示されている。ただし、直流給配電システム1における直流負荷40の数は、1または3以上であってもよい。
【0017】
制御装置30は、直流母線10における電圧値である母線電圧値が所定の目標範囲内であるように、蓄電装置20の充放電を制御する。目標範囲の下限を電圧下限値、目標範囲の上限を電圧上限値とする。制御装置30は、母線電圧値を検出するための直流母線電圧検出用変圧器31aを介して直流母線10と接続されている。制御装置30の具体的な構成については後述する。
【0018】
(制御装置30の構成)
図2は、本実施形態に係る制御装置30の構成を示す図である。図2に示すように、制御装置30は、母線電圧測定部31、LPF(Low Pass Filter)32、正規化部33、第1の偏差算出部34a、第2の偏差算出部34b、第1のPI制御回路35、第2のPI制御回路36、電流指令値出力回路37、PI制御値加算部38a、電流指令値加算部38bおよび制御信号出力回路39を備える。
【0019】
母線電圧測定部31は、母線電圧値を測定する。LPF32は、母線電圧値の高周波成分を除去する。正規化部33は、母線電圧値に所定の係数を乗じることで、母線電圧値を正規化する。第1の偏差算出部34aは、第1の偏差を算出する。第1の偏差は、正規化された母線電圧値と電圧上限値との偏差である。第2の偏差算出部34bは、第2の偏差を算出する。第2の偏差は、正規化された母線電圧値と電圧下限値との偏差である。第1の偏差の算出に用いられる電圧上限値、および第2の偏差の算出に用いられる電圧下限値は、母線電圧値と同様に正規化された値である。
【0020】
なお、LPF32は制御装置30において必須ではない。また、制御装置30は正規化部33を備えず、母線電圧測定部31が測定した母線電圧値が第1の偏差算出部34aおよび第2の偏差算出部34bに入力されるように構成されてもよい。
【0021】
第1のPI制御回路35は、直流母線10の母線電圧値と電圧上限値との偏差を参照してPI制御を行うとともに、蓄電装置20の充放電を行わないかまたは充電を行うように制限された第1電流指令値を出力する。すなわち、第1のPI制御回路35は、第1の偏差算出部34aからの入力が0または正の値であるときには、出力を0以下に制限する。一方、第1のPI制御回路35は、第1の偏差算出部34aからの入力が負の値であるときには、当該入力に応じた負の値、すなわち蓄電装置20の充電を行う信号を出力する。
【0022】
具体的には、第1のPI制御回路35は、ゲイン351、ゲイン352、第1積分器353、加算器354、および第1リミッタ355を備える。ゲイン351および352はそれぞれ、第1の偏差算出部34aからの入力に所定の係数を乗じた値を出力する。第1積分器353は、積分範囲を0以下としてゲイン352からの入力を積分する。すなわち、第1積分器353は、ゲイン352からの入力が負の値または0である場合には、当該入力について積分を行う。一方、第1積分器353は、ゲイン352からの入力が正の値である場合には、第1積分器353の出力が0以上の場合は当該入力を0として積分を行い、第1積分器353の出力が0よりも小さい場合には当該入力について積分を行う。これにより、第1積分器353は、蓄電装置20の充電を行う信号のみを積分できる。
【0023】
加算器354は、ゲイン351および第1積分器353からの入力の和を出力する。第1リミッタ355は、加算器354からの入力を0以下に制限して出力する。具体的には、第1リミッタ355は、加算器354からの入力が0以下である場合には、加算器354からの入力をそのまま出力する。一方、第1リミッタ355は、加算器354からの入力が0よりも大きい場合には0を出力する。第1のPI制御回路35は、第1リミッタ355の出力を第1電流指令値として出力する。これにより、第1のPI制御回路35は、蓄電装置20の充電を行う信号のみを出力できる。
【0024】
第2のPI制御回路36は、直流母線10の母線電圧値と電圧下限値との偏差を参照してPI制御を行うとともに、蓄電装置20の充放電を行わないかまたは放電を行うように制限された第2電流指令値を出力する。すなわち、第2のPI制御回路36は、第2の偏差算出部34bからの入力が0または負の値であるときには、出力を0よりも大きい値に制限する。一方、第2のPI制御回路36は、第2の偏差算出部34bからの入力が正の値であるときには、当該入力に応じた正の値、すなわち蓄電装置20の放電を行う信号を出力する。
【0025】
具体的には、第2のPI制御回路36は、ゲイン361、ゲイン362、第2積分器363、加算器364、および第2リミッタ365を備える。ゲイン361および362はそれぞれ、第2の偏差算出部34bからの入力に所定の係数を乗じた値を出力する。第2積分器363は、積分範囲を0以上としてゲイン362からの入力を積分する。すなわち、第2積分器363は、ゲイン362からの入力が正の値または0である場合には、当該入力について積分を行う。一方、第2積分器363は、ゲイン362からの入力が負の値である場合には、第2積分器363の出力が0以下の場合には当該入力を0として積分を行い、第2積分器363の出力が0よりも大きい場合には当該入力について積分を行う。これにより、第2積分器363は、蓄電装置20の放電を行う信号のみを積分できる。
【0026】
加算器364は、ゲイン361および第2積分器363からの入力の和を出力する。第2リミッタ365は、加算器364からの入力を0以上に制限して出力する。具体的には、第2リミッタ365は、加算器364からの入力が0以上である場合には、加算器364からの入力をそのまま出力する。一方、第2リミッタ365は、加算器364からの入力が0よりも小さい場合には0を出力する。第2のPI制御回路36は、第2リミッタ365の出力を第2電流指令値として出力する。これにより、第2のPI制御回路36は、蓄電装置20の放電を行う信号のみを出力できる。
【0027】
電流指令値出力回路37は、蓄電装置20の入出力を電力制御する電流指令値である第3電流指令値を出力する。直流給配電システム1においては、例えば太陽電池パネル12の出力電力に変動が生じた場合、電流指令値出力回路37は、当該変動に起因する電力の需給の変動を抑制するように第3電流指令値を出力する。また、電流指令値出力回路37は、蓄電池21のSOC(State Of Charge)に応じて蓄電装置20の充放電を行うように第3電流指令値を出力してもよい。また、電流指令値出力回路37は、例えば昼間に蓄電装置20の充電を行い、夜間に蓄電装置の放電を行うなど、蓄電装置20の充放電を時間帯に応じて行うように第3電流指令値を出力してもよい。第3電流指令値は、蓄電装置20の充電を行う場合には負の値となる。また、第3電流指令値は、蓄電装置20の放電を行う場合には正の値となる。ただし、第3電流指令値の符号と充電および放電との関係は逆であってもよい。
【0028】
PI制御値加算部38aは、第1電流指令値および第2電流指令値の和を出力する。母線電圧値が電圧下限値以上かつ電圧上限値以下である場合には、第1積分器353および第2積分器363の出力が0であれば、PI制御値加算部38aの出力は0である。また、第1積分器353および第2積分器363の出力が0でなければ、第1積分器353および第2積分器363の出力は0になるように変化していく。母線電圧値が電圧上限値よりも大きい場合には、PI制御値加算部38aの出力は、第1のPI制御回路35の出力に等しい。母線電圧値が電圧下限値よりも小さい場合には、PI制御値加算部38aの出力は、第2のPI制御回路36の出力に等しい。
【0029】
電流指令値加算部38bは、PI制御値加算部38aからの入力に、第3電流指令値をさらに加算して出力する。すなわち、電流指令値加算部38bは、第1電流指令値と、第2電流指令値と、第3電流指令値とを加算した値を出力する。
【0030】
制御信号出力回路39は、電流指令値加算部38bからの入力に応じた制御信号を出力する。すなわち、制御信号出力回路39は、第1電流指令値、第2電流指令値、および第3電流指令値を加算した値に応じた、蓄電装置20の充放電を制御するための制御信号を出力する。具体的には、制御信号出力回路39は、電流指令値加算部38bからの入力に従って蓄電装置20を充放電させるようにDC-DCコンバータ23をスイッチングさせる制御信号を生成して、DC-DCコンバータ23に出力する。
【0031】
(制御装置30の動作)
図3は、制御装置30の動作を示すフローチャートである。制御装置30において、母線電圧測定部31は、母線電圧値を測定する(S1)。LPF32は母線電圧値の高周波成分を除去し、正規化部33は母線電圧値を正規化する(S2)。第1の偏差算出部34aは第1の偏差を算出し、第2の偏差算出部34bは第2の偏差を算出する(S3)。
【0032】
第1のPI制御回路35は、第1電流指令値を出力する(S4)。第2のPI制御回路36は、第2電流指令値を出力する(S5)。電流指令値出力回路37は、第3電流指令値を出力する(S6)。PI制御値加算部38aは第1電流指令値および第2電流指令値の和を出力し、電流指令値加算部38bはPI制御値加算部38aからの入力に第3電流指令値をさらに加算して出力する(S7)。制御信号出力回路39は、電流指令値加算部38bからの入力に応じた制御信号をDC-DCコンバータ23へ出力する(S8)。
【0033】
制御装置30においては、第1電流指令値および第2電流指令値がともに0である場合には、制御信号出力回路39が出力する制御信号は電力制御の信号のみとなる。一方、第1電流指令値および第2電流指令値のうちいずれかが0でない場合には、制御信号出力回路39が出力する制御信号は電圧制御の信号を含む。母線電圧値の目標範囲からの逸脱が大きければ大きい程、制御信号における電圧制御の信号の比率は大きくなる。
【0034】
第1のPI制御回路35は、母線電圧値が電圧上限値よりも大きい値から電圧上限値以下に変化した場合には、出力を0にする方向に動作する。このため、母線電圧値が電圧上限値以下に変化した場合に、第1積分器353をリセットする必要がない。また、第2のPI制御回路36は、母線電圧値が電圧下限値よりも小さい値から電圧下限値以上に変化した場合には、出力を0にする方向に動作する。このため、母線電圧値が電圧下限値以上に変化した場合に、第2積分器363をリセットする必要がない。したがって、第1~第3電流指令値の和に、第1積分器353または第2積分器363をリセットすることに起因するステップ状の変動が生じない。したがって、母線電圧値の変動を抑制し、直流給配電システム1を安定化することができる。
【0035】
また、母線電圧値が目標範囲内である状態が継続している場合には、第1のPI制御回路35および第2のPI制御回路36は、いずれも出力が0で安定した状態で待機している。このため、母線電圧値が目標範囲内から目標範囲外に変化した場合にも、第1~第3電流指令値の和にステップ状の変動が生じない。したがって、母線電圧値の変動を抑制し、直流給配電システム1を安定化することができる。
【0036】
また、AC-DCコンバータ11bが双方向に制御可能であっても、当該AC-DCコンバータ11bのAC側の電圧を電力制御で制御している場合には、制御装置30による上述の制御により母線電圧値を安定させることができる。また、AC-DCコンバータ11bがDCAVR(Direct Current Automatic Voltage Regulator)で動作している場合には、通常の状態であれば母線電圧値は安定する。しかし、直流給配電システム1のAC系統(商用電源11、変圧器11a、AC-DC(Direct Current)コンバータ11b、およびブレーカー11c)に異常が生じた場合には、制御装置30による上述の制御により母線電圧値を安定させることができる。したがって、AC系統における異常発生時の協調制御を、当該異常発生をAC系統から蓄電装置20へ通知する通信装置などを増設することなく実現できる。
【0037】
なお、上述した実施形態では、蓄電装置20および制御装置30が直流給配電システム1に接続されているものとして説明した。しかし、蓄電装置20および制御装置30は、直流給配電システム1に含まれていてもよい。すなわち、制御装置30および蓄電装置20を備える直流給配電システム1も、本願発明の範囲に含まれる。
【0038】
(実験例)
図4は、制御装置30が適用された直流給配電システム1における各部の動作の例を示すグラフである。図4には、直流給配電システム1における交流電圧のグラフが、符号410で示されている。また、図4には、直流給配電システム1における交流電流のグラフが、符号420で示されている。また、図4には、直流給配電システム1における直流電圧のグラフが、符号430で示されている。また、図4には、直流給配電システム1における直流電流のグラフが、符号440で示されている。符号440のグラフにおいて、正の値は充電電流(負荷電流)、負の値は放電電流(発電電流)を示す。
【0039】
図5は、比較例の直流給配電システムにおける各部の動作の例を示すグラフである。比較例の直流給配電システムには、制御装置30の代わりに、母線電圧値が所定範囲内の場合には蓄電装置20の充放電を電力制御で制御し、母線電圧値が所定範囲外の場合には蓄電装置20の充放電を電圧制御で制御する制御装置が適用されている。図5には、比較例の直流給配電システムにおける交流電圧のグラフが、符号510で示されている。また、図5には、比較例の直流給配電システムにおける交流電流のグラフが、符号520で示されている。また、図5には、比較例の直流給配電システムにおける直流電圧のグラフが、符号530で示されている。また、図5には、比較例の直流給配電システムにおける直流電流のグラフが、符号540で示されている。符号540のグラフにおいて、正の値は充電電流(負荷電流)、負の値は放電電流(発電電流)を示す。
【0040】
符号410~440、510~540のいずれにおいても、横軸は時間である。符号410および510の縦軸は、商用電源11の電圧である。符号420および520の縦軸は、商用電源11の電流である。符号430および530の縦軸は、母線電圧値である。符号440および540の縦軸は、直流負荷40、直流母線10、蓄電装置20、および太陽電池パネル12の電流である。符号440のグラフでは、直流負荷40の電流が符号441で、直流母線10の電流が符号442で、蓄電装置20の電流が符号443で、太陽電池パネル12の電流が符号444で、それぞれ示されている。符号540のグラフでは、直流負荷40の電流が符号541で、直流母線10の電流が符号542で、蓄電装置20の電流が符号543で、太陽電池パネル12の電流が符号544で、それぞれ示されている。図4および図5に示す例において、電圧上限値は660Vである。
【0041】
図4に示す例では、時刻t=0.4s近傍において直流負荷40の電力需要が減少し、符号441に示すように、直流負荷40の電流が減少した。直流負荷40の電流が太陽電池パネル12の電流以下になることで電力の供給過多になり、符号430に示すように、母線電圧値が上昇した。この母線電圧値の上昇を検出して、符号443に示すように、蓄電装置20の充電電流が増加した。
【0042】
母線電圧値が電圧上限値を超えると、上述したとおり、第1のPI制御回路35が第1電流指令値を出力するようになった。この結果、母線電圧値が電圧上限値以下まで低下した。その後、第1電流指令値は次第に減少した。時刻t=0.7s近傍において直流負荷40の電力需要が初期状態に戻り、符号441に示すように、直流負荷40の電流が増加した。これに伴い、符号430に示すように、母線電圧値が低下した。一連の動作の間、符号442および444に示すように、直流母線10および太陽電池パネル12の電流にも大きな変動は見られなかった。すなわち、直流給配電システム1は安定していた。
【0043】
図5に示す例では、時刻t=0.4s近傍において直流負荷40の電力需要が増大し、符号541に示すように、直流負荷40の電流が減少した。直流負荷40の電流が太陽電池パネル12の電流以下になることで電力の供給過多になり、符号530に示すように、母線電圧値が上昇した。この母線電圧値の上昇を検出して、符号443に示すように、蓄電装置20の充電電流が増加した。
【0044】
母線電圧値が電圧上限値を超えると、上述したとおり、蓄電装置20の制御が電力制御から電圧制御に切り替わった。このため、DC-DCコンバータ23に入力される指令値がステップ的に変動し、母線電圧値が急激に低下した。これにより母線電圧値が電圧上限値以下となり、蓄電装置20の制御が電圧制御から電力制御に切り替わった。その結果、電力制御により母線電圧値が再度上昇した。以後、蓄電装置20の制御の切り替わり、および母線電圧値の変動が連続して繰り返されることにより母線電圧値に振動が生じ、母線電圧値が不安定になった。また、符号542、543、544に示すように、直流母線10、蓄電装置20および太陽電池パネル12の電流にも振動が生じていた。すなわち、比較例の直流給配電システムは不安定であった。
【0045】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置30の制御ブロック(特に母線電圧測定部31、LPF32、正規化部33、第1の偏差算出部34a、第2の偏差算出部34b、第1のPI制御回路35、第2のPI制御回路36、電流指令値出力回路37、PI制御値加算部38a、電流指令値加算部38bおよび制御信号出力回路39)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0046】
後者の場合、制御装置30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0047】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 直流給配電システム
10 直流母線
20 蓄電装置
30 制御装置
35 第1のPI制御回路
353 第1積分器
355 第1リミッタ
36 第2のPI制御回路
363 第2積分器
365 第2リミッタ
37 電流指令値出力回路
39 制御信号出力回路
図1
図2
図3
図4
図5