(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106214
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20220711BHJP
B29D 30/38 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B60C15/00 G
B29D30/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001067
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】川端 宏志
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
【Fターム(参考)】
3D131AA24
3D131BA02
3D131BB01
3D131BB09
3D131BC13
3D131BC31
3D131BC51
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3D131DA30
3D131EC22V
3D131EC22X
3D131LA28
4F215AH20
4F215VC11
4F215VD10
4F215VK17
4F215VL27
(57)【要約】
【課題】低荷重時のタイヤの接地面積等を確保しつつ、高い縦ばね剛性が得られる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1のカーカス層6は、本体部63aと折返し部63bとを含む第1カーカスコード63と、第1カーカスコード63の折返し部63bのタイヤ軸方向外側の位置で終端する第2カーカスコード64とを含む。第2カーカスコード64のヤング率E2は、第1カーカスコード63のヤング率E1よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記一対のビード部間をのびるカーカス層とを含む空気入りタイヤであって、
前記カーカス層は、
前記トレッド部から前記サイドウォール部を経て前記ビード部に至る本体部と前記本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部とを含む第1カーカスコードと、
前記トレッド部から前記ビード部に至りかつ前記第1カーカスコードの前記折返し部のタイヤ軸方向外側の位置で終端する第2カーカスコードとを含み、
前記第2カーカスコードのヤング率は、前記第1カーカスコードのヤング率よりも大きい、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2カーカスコードのヤング率は、前記第1カーカスコードのヤング率の1.5~2.5倍である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1カーカスコードの前記本体部と前記第2カーカスコードとの間にインスレーションゴムが配されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記インスレーションゴムのタイヤ半径方向の外端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置している、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記インスレーションゴムのタイヤ半径方向の内端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の内側に位置している、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記インスレーションゴムは、前記折返し部よりもタイヤ軸方向の内側に配されている、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
レースに用いられる請求項1ないし6の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記一対のビード部間をのびるカーカス層とを含む空気入りタイヤの製造方法であって、
第1カーカスコードを含む第1カーカスプライを円筒状に巻き付ける第1工程と、
前記第1カーカスプライのタイヤ半径方向外側に円環状のビードコアを配置する第2工程と、
前記第1カーカスプライの前記ビードコアよりも軸方向外側部分を前記ビードコアに沿って半径方向外側に折り返す第3工程と、
前記第1カーカスコードよりもヤング率が大きい第2カーカスコードを含む第2カーカスプライを前記第1カーカスプライのタイヤ半径方向外側に巻き付ける第4工程とを含む、
空気入りタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記第2カーカスプライのタイヤ半径方向外側にトレッドゴムを巻き付けて生タイヤを成形する第5工程と、
前記生タイヤを加硫する第6工程とを含み、
前記第6工程において、前記トレッドゴムは、タイヤ周方向に2~4%伸張される、請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の空気力学特性によるダウンフォースを用いて、走行性能を高める技術が知られている。ダウンフォースを安定的に得るためには、タイヤに高い縦ばね剛性を付与することが有効である。
【0003】
そして、特許文献1では、第1カーカスプライと第2カーカスプライとによるアップダウン構造により、縦ばね剛性を高めたタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタイヤでは、内圧を高めたり、カーカスケースの剛性を高めることにより、縦ばね剛性が高められていた。しかしながら、上記手法によれば、低荷重時の撓みが不足し、タイヤの接地長さ及び接地面積(以下、接地面積等とする)が減少するため、ダウンフォースが減少する低速度域では却って走行性能が低下することがあった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、低荷重時のタイヤの接地面積等を確保しつつ、高い縦ばね剛性が得られる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部間をのびるカーカス層とを含む空気入りタイヤであって、前記カーカス層は、前記トレッド部から前記サイドウォール部を経て前記ビード部に至る本体部と前記本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部とを含む第1カーカスコードと、前記トレッド部から前記ビード部に至りかつ前記第1カーカスコードの前記折返し部のタイヤ軸方向外側の位置で終端する第2カーカスコードとを含み、前記第2カーカスコードのヤング率は、前記第1カーカスコードのヤング率よりも大きい。
【0008】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第2カーカスコードのヤング率は、前記第1カーカスコードのヤング率の1.5~2.5倍である、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1カーカスコードの前記本体部と前記第2カーカスコードとの間にインスレーションゴムが配されている、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記インスレーションゴムのタイヤ半径方向の外端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に位置している、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記インスレーションゴムのタイヤ半径方向の内端は、前記折返し部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の内側に位置している、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記インスレーションゴムは、前記折返し部よりもタイヤ軸方向の内側に配されている、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、レースに用いられる、ことが望ましい。
【0014】
本発明は、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部間をのびるカーカス層とを含む空気入りタイヤの製造方法であって、第1カーカスコードを含む第1カーカスプライを円筒状に巻き付ける第1工程と、前記第1カーカスプライのタイヤ半径方向外側に円環状のビードコアを配置する第2工程と、前記第1カーカスプライの前記ビードコアよりも軸方向外側部分を前記ビードコアに沿って半径方向外側に折り返す第3工程と、前記第1カーカスコードよりもヤング率が大きい第2カーカスコードを含む第2カーカスプライを前記第1カーカスコードのタイヤ半径方向外側に巻き付ける第4工程とを含む。
【0015】
本発明に係る前記空気入りタイヤの製造方法において、前記第2カーカスプライのタイヤ半径方向外側にトレッドゴムを巻き付けて生タイヤを成形する第5工程と、前記生タイヤを加硫する第6工程とを含み、前記第6工程において、前記トレッドゴムは、タイヤ周方向に2~4%伸張される、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の前記空気入りタイヤは、前記本体部と前記折返し部とを含む前記第1カーカスコードと、前記第1カーカスコードの前記折返し部のタイヤ軸方向外側に終端を有する前記第2カーカスコードとを含む。前記空気入りタイヤに荷重が負荷されると、前記サイドウォール部の内側では圧縮応力が発生し、前記サイドウォール部の外側では引張応力が発生する。本発明では、外側に位置される前記第2カーカスコードの前記ヤング率が内側に位置される前記第1カーカスコードの前記ヤング率よりも大きいので、高荷重時の縦ばね剛性が向上する。一方、低荷重時にあっては、前記サイドウォール部の外側で発生する引張応力は小さいため、前記第2カーカスコードが縦ばね剛性に及ぼす影響は限定的となり、十分な接地面積等が容易に確保される。
【0017】
本発明の空気入りタイヤの製造方法によって製造される空気入りタイヤは、外側に位置される前記第2カーカスコードの前記ヤング率が内側に位置される前記第1カーカスコードの前記ヤング率よりも大きいので、高荷重時の縦ばね剛性が向上する。一方、低荷重時にあっては、前記サイドウォール部の外側で発生する引張応力は小さいため、前記第2カーカスコードが縦ばね剛性に及ぼす影響は限定的となり、十分な接地面積等が容易に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す子午断面図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤの一方側の断面図である。
【
図3】荷重が負荷された空気入りタイヤのサイドウォール部に生ずる応力を模式的に示した断面図である。
【
図4】インスレーションゴムを含むサイドウォール部の断面図である。
【
図5】
図1の空気入りタイヤの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含む子午断面図である。
【0020】
「正規状態」とは、空気入りタイヤ1が正規リムに組み込まれ、かつ、正規内圧が充填され、無負荷の状態である。以下、特に言及されない場合、空気入りタイヤ1の各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」とは、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」とは、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUSCOLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
レース用のタイヤのように、適用される規格がない場合、正規リム、正規内圧には、メーカにより推奨されるリム、空気圧が適用される。
【0024】
空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、それぞれにビードコア5が埋設された一対のビード部4と、一対のビード部4間をのびるカーカス層6とを含む。
【0025】
トレッド部2には、カーカス層6のタイヤ半径方向外側にトレッドゴム21が設けられている。カーカス層6とトレッドゴム21との間には、トレッド部2を補強するためのベルト層が設けられていてもよい。
【0026】
図2は、空気入りタイヤ1のタイヤ赤道CLに対する一方側の構成を示している。
【0027】
カーカス層6は、第1カーカスプライ61と、第1カーカスプライ61の外側に配される第2カーカスプライ62とを含んでいる。第1カーカスプライ61の内側には、空気非透過性に優れたゴムを含むインナーライナーゴムが設けられていてもよい。
【0028】
第1カーカスプライ61は、タイヤ半径方向及びタイヤ軸方向に沿って配列された複数の第1カーカスコード63がトッピングゴムで被覆されることにより構成されている。同様に、第2カーカスプライ62は、タイヤ半径方向及びタイヤ軸方向に沿って配列された複数の第2カーカスコード64がトッピングゴムで被覆されることにより構成されている。
【0029】
第1カーカスコード63は、本体部63aと本体部63aに連なる折返し部63bを含んでいる。本体部63aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4に至る。折返し部63bは、ビードコア5の回りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。折返し部63bは、例えば、タイヤ最大幅部の近傍で終端する。
【0030】
第2カーカスコード64は、トレッド部2からビード部4に至りかつ第1カーカスコード63の折返し部63bのタイヤ軸方向外側の位置で終端する。
【0031】
上記第1カーカスプライ61及び第2カーカスプライ62によって、いわゆる1アップ1ダウン構造のカーカス層6となる。
【0032】
本発明では、第2カーカスコード64のヤング率E2は、第1カーカスコード63のヤング率E1よりも大きい。
【0033】
図3は、荷重が負荷された空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に生ずる応力を模式的に示している。空気入りタイヤ1に荷重が負荷されると、サイドウォール部3に撓み変形が生じ、サイドウォール部3の内側では圧縮応力が発生し、サイドウォール部3の外側では引張応力が発生する。
【0034】
本発明では、サイドウォール部3の外側に位置される第2カーカスコード64のヤング率E2がサイドウォール部3の内側に位置される第1カーカスコード63のヤング率E1よりも大きいので、高荷重時の縦ばね剛性が向上する。
【0035】
トップカテゴリーのレース車両では、床下を流れる空気によるダウンフォースを用いて、タイヤへの縦荷重を増やすことによりグリップ力を高め、走行性能の向上が図られている。このような車両は、高い速度域で走行するとき大きいダウンフォースを発生する反面、床と地面との距離が変動すると、ダウンフォースの量が大きく変動し、走行性能の低下を招く。また、加減速時の荷重移動により、車両の姿勢が変動すると、ダウンフォースの前後バランスが変動し、走行性能の低下を招く。
【0036】
本発明の空気入りタイヤ1によれば、高荷重時において高い縦ばね剛性が得られるので、高速度走行時においても床と地面との距離及び車両の姿勢が安定する。従って、大きいダウンフォースを安定的に得ることができ、車両の走行性能を容易に高めることが可能となる。
【0037】
一方、ヘヤピンカーブ等の低速度域では、車両が発生するダウンフォースが大幅に減少することに伴い、タイヤに負荷される荷重も大幅に減少する。従って、サイドウォール部3の撓み変形が抑制されるので、サイドウォール部3の外側で発生する引張応力は小さくなるため、ヤング率E2が大きい第2カーカスコード64が空気入りタイヤ1の縦ばね剛性に及ぼす影響は限定的となる。従って、本発明の空気入りタイヤ1は、低荷重域でもサイドウォール部3が柔軟に撓み、十分な接地面積等が容易に確保され、車両の走行性能を容易に高めることが可能となる。また、加減速によって各輪に負荷される縦荷重が減少しても(例えば、加速時の前輪又は減速時の後輪)、接地面積等の変化が少なく、車両の走行性能を容易に高めることが可能となる。
【0038】
第2カーカスコード64のヤング率E2は、第1カーカスコード63のヤング率E1の1.5~2.5倍が望ましい。上記ヤング率E2が上記ヤング率E1の1.5倍以上であることにより、
一方、上記ヤング率E2が上記ヤング率E1の2.5倍以下であることにより、サイドウォール部3の撓み変形が十分に確保され、良好な耐久性能が得られる。
【0039】
空気入りタイヤ1では、第2カーカスコード64のヤング率E2は、第1カーカスコード63のヤング率E1よりも大きいので、両者の間で剛性差が生ずる。
【0040】
そこで、本実施形態では、
図2に示されるように、第1カーカスコード63の本体部63aと第2カーカスコード64との間にインスレーションゴム65が配されている、のが望ましい。インスレーションゴム65は、第1カーカスコード63の本体部63aと第2カーカスコード64との間で緩衝部材として機能し、上記剛性差に起因するカーカス層6の損傷を抑制する。
【0041】
図4は、インスレーションゴム65を含むサイドウォール部3のタイヤ周方向に沿う断面図である。なお、同図において、第1カーカスコード63及び第2カーカスコード64の断面を示すハッチングは省略している。インスレーションゴム65は、第1カーカスコード63を被覆する第1トッピングゴム66及び第2カーカスコード64を被覆する第2トッピングゴム67とは異なるゴムである。
【0042】
図2に示されるように、インスレーションゴム65のタイヤ半径方向の外端65oは、折返し部64bのタイヤ半径方向の外端64eよりもタイヤ半径方向の外側に位置している、のが望ましい。これにより、上記外端64eよりもタイヤ半径方向の外側(例えば、荷重の負荷時に変形の大きいバットレス部)でのカーカス層6の損傷が抑制される。
【0043】
インスレーションゴム65のタイヤ半径方向の内端65iは、折返し部64bの外端64eよりもタイヤ半径方向の内側に位置している、のが望ましい。これにより、上記外端64eの近傍でのカーカス層6の損傷が抑制される。
【0044】
インスレーションゴム65は、折返し部64bよりもタイヤ軸方向の内側に配されている、のが望ましい。これにより、折返し部64bがビード部4のタイヤ軸方向の外側に位置されるので、高荷重が負荷されたときのビード部4の縦剛性が向上する。
【0045】
なお、インスレーションゴム65は、省略されていてもよい。
【0046】
図5は、空気入りタイヤ1の製造方法100の手順を示すフローチャートである。空気入りタイヤ1の製造方法100は、第1カーカスプライ61を円筒状に巻き付ける第1工程S1と、ビードコア5を配置する第2工程S2と、第1カーカスコード63の折返し部63bを折り返す第3工程と、第2カーカスプライ62を巻き付ける第4工程S4とを含む。
【0047】
第1工程S1では、第1カーカスコード63を含む第1カーカスプライ61が、例えば、円筒状の成形ドラムの外周面に巻き付けられる。
【0048】
第2工程S2では、第1カーカスプライ61のタイヤ半径方向外側に円環状のビードコア5が配置される。ビードコア5は、第1カーカスプライ61のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向内側に配置される。これにより、第1カーカスコード63においてビードコア5よりもタイヤ軸方向外側部分が折返し部63bとなる。
【0049】
第3工程S3では、第1カーカスプライ61の折返し部64bがビードコア5に沿って半径方向外側に折り返される。なお、上記インスレーションゴム65は、第3工程S3を実行する前に、第1カーカスプライ61に巻き付けられる。
【0050】
第4工程S4では、第2カーカスプライ62が第1カーカスプライ61のタイヤ半径方向外側に巻き付けられる。すでに述べたように、第2カーカスプライ62を構成する第2カーカスコード64は、第1カーカスプライ61を構成する第1カーカスコード63よりもヤング率が大きい。
【0051】
空気入りタイヤ1の製造方法100では、以下の工程を含んでいてもよい。
【0052】
第5工程S5では、第2カーカスプライ62のタイヤ半径方向外側にトレッドゴム21が巻き付けられる。これにより、生タイヤが成形される。
【0053】
第6工程S6では、生タイヤが加硫される。第6工程S6において、トレッドゴム21は、タイヤ周方向に2~4%伸張される、のが望ましい。これにより、加硫成形時のトレッドゴム21と加硫成形金型との干渉が抑制され、かつ、トレッド部2の変形が抑制される。
【0054】
本実施形態では、第1工程S1で巻き付けられる第1カーカスコード63は、第4工程S4で巻き付けられる第2カーカスコード64よりもヤング率が小さいので、加硫成形時の第1トッピングゴム66及びインナーライナーゴムの移動が抑制され、オープンスレッドの発生が抑制される。
【0055】
以上、本発明の空気入りタイヤ1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例0056】
図1の基本構造を有するサイズ:330/710R18の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づいて試作され、各種の性能がテストされた。各タイヤのタイヤ周方向に対するカーカスコードの角度は90゜である。テスト方法は、以下の通りである。
【0057】
<オープンスレッドの発生>
各タイヤが、100本製造され、オープンスレッドの発生の有無が作業者の目視によって確認された。
【0058】
<耐久性能>
ドラム試験機によって各タイヤの高速耐久力がテストされた。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が大きい程、耐久性能に優れていることを示す。
【0059】
<接地長さ>
各タイヤの低荷重時(2kN)、高荷重時(8kN)における静的な接地長さが測定された。結果は、比較例1を100とする指数である。
【0060】
<コーナリングフォース>
フラットベルト式のタイヤ試験機を用いて、各タイヤの低荷重時(2kN)、高荷重時(8kN)におけるコーナリングフォースが測定された。なお、測定時のスリップ角は、4度であり、キャンバー角は0度であり、速度は60km/hである。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が大きい程、コーナリング性能に優れていることを示す。
【0061】
<負荷半径>
フラットベルト式のタイヤ試験機を用いて、各タイヤの低荷重時(2kN)、高荷重時(10kN)における負荷半径が測定された。なお、測定時のキャンバー角は0度であり、速度は60km/hである。結果は、比較例1を100とする指数である。
【0062】
【0063】
表1から明らかなように、実施例の空気入りタイヤは、比較例に比べて低荷重時のコーナリングフォースを低下させることなく、タイヤ負荷半径の変化を抑制できることが確認できた。