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特開2022-106226法面削孔用の二重管削孔装置、および二重管削孔方法
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  • 特開-法面削孔用の二重管削孔装置、および二重管削孔方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106226
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】法面削孔用の二重管削孔装置、および二重管削孔方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001089
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】520040739
【氏名又は名称】川浪 正機
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100142701
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】川浪 正機
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA03
2D129AB09
2D129BA03
2D129BA21
2D129DA12
2D129DA18
2D129DC42
2D129EA16
2D129EB01
(57)【要約】
【課題】法面でも容易にアウター管とインナー管の二重管による二重管削孔を行うことができる二重管削孔装置を提供する。
【解決手段】アウター管削孔器具3の断面が多角形の被把持部33を有し、被把持部33の多角形と対応する多角形の把持部を有し、削孔機2のガイドレール51の削孔機2の下部に取り付けられ、アウター管削孔器具3の回転を増幅する回転増幅器25(26)を有する、法面削孔用の二重管削孔装置。回転増幅器25(26)は、エアーコンプレッサーから供給された高圧エアーにより回転するものとすることができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が多角形の被把持部を有する、アウター管削孔器具および/またはインナー管削孔器具の、前記被把持部の多角形と対応する多角形の把持部を有し、削孔機のガイドレールの前記削孔機の下部に取り付けられ、前記アウター管削孔器具および/または前記インナー管削孔器具の回転を増幅する回転増幅器を有する、法面削孔用の二重管削孔装置。
【請求項2】
前記削孔機および前記回転増幅器が、エアーコンプレッサーから供給された高圧エアーにより回転するエアモーターを有する、請求項1に記載の二重管削孔装置。
【請求項3】
前記回転増幅器が、前記ガイドレールに固定された、請求項1または2に記載の二重管削孔装置。
【請求項4】
前記回転増幅器が、前記削孔機とともに、前記ガイドレールに沿って上下に移動する、請求項1または2に記載の二重管削孔装置。
【請求項5】
前記削孔機が、前記アウター管削孔器具と、前記インナー管削孔器具とを取付け自在の取付部を有する、請求項1~4のいずれかに記載の二重管削孔装置。
【請求項6】
アウター管削孔器具および/またはインナー管削孔器具の断面が多角形の被把持部分を有し、前記被把持部の多角形と対応する多角形の把持部で前記被把持部を把持し、削孔機のガイドレールの前記削孔機の下部に取り付けられる回転増幅器により、前記アウター管削孔器具および/または前記インナー管削孔器具の回転を増幅する工程を有する、法面の二重管削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面削孔用の二重管削孔装置に関する。また、法面の二重管削孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
法面の崩落防止などの法面工事のために法面に、法面の削孔を伴う工事が行われている。法面の削孔は、傾斜がある作業環境での工事となり、さらに高低差が大きい範囲や、傾斜の程度が種々異なる範囲で行う必要があるなどの状況に対応したものが求められる。
【0003】
例えば、非特許文献1は、足場の要らないロックボルト工法を開示するものである。このロックボルト工法は、ケーブルクレーンで移動する削岩機を仮設したタワーで削孔するものである。
【0004】
特許文献1は、削孔装置を取り付けたタワーと補助タワーを交互に動かし移動するシステムで、ワイヤーケーブルで立木等を会してウィンチで上下左右に遠隔操作することを特徴とする削孔装置の移動システムを開示している。また、特許文献2は、削孔装置を取り付けたタワーと補助タワーをコンパス状にして、交互に動かし移動するシステムで、その開閉用にエアーシリンダーを取り付け、又、補助タワーの脚部にもエアーシリンダーを取り付け移動、固定の操作を容易にし、ワイヤーケーブルで立木等を会してウィンチで上下左右に遠隔操作することを特徴とする削孔装置の移動システムを開示している。
【0005】
削孔した孔は、孔が開口状態を維持しきれず、周囲の土砂が崩れたり流入したりして穴が埋まるおそれがある。このため、二重削孔機で削孔し、アウター管を削孔した場所に残したままセメントを注入することで、孔内に確実にセメントを注入することなどが検討されている。
【0006】
二重管削孔装置について、様々な技術が検討されている。例えば、特許文献3は、マストに沿って平行に配置された複数のスライドベースの各先端側に、各スライドベース上の二重管ロッドが貫通する内,外管ロッド把持装置及び内,外管ロッドネジ戻し用装置を設けると共に、地面側に、削孔を終えた二重管ロッドの外管ロッドを削孔から引き抜く外管ロッド引抜きジャッキと、当該引抜きジャッキのラムに取り付く、内,外管ロッド把持装置及び内,外管ロッドネジ戻し用装置とを備えたものを開示している。
【0007】
特許文献4は、外管の内部にインナーロッドを配設し、前記外管の先端部にアウタービット、前記インナーロッドの先端部にインナービットをそれぞれ備え、それらの外管の内周面とインナーロッドの外周面との間の間隙部を経由して掘削によって生じる繰り粉を排出するように構成した二重管削孔装置において、前記インナービットのアウタービットに対する突出量が該アウタービットの外径の所定の範囲に収まるように設定したことを特徴とする小口径用二重管削孔装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-193073号公報
【特許文献2】特開2001-248377号公報
【特許文献3】特開平5-25984号公報
【特許文献4】特開2006-183300号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】株式会社エース産業、CTB、足場のいらないロックボルト工法[令和2年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.ace-tec.co.jp/entry3.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように法面でもアウター管とインナー管の二重管による削孔が求められる場合がある。しかし、二重管の削孔を行う装置は、従来の単管の削孔よりもより大口径の削孔をしないといけないため、法面工事に必要な口径の削孔を行おうとすると、総重量が500~600kg程度の大型の車両などに取り付けられた大型の装置が必要である。
【0011】
法面の工事は、車両などの侵入が困難な場所で行う必要がある。また、斜面の範囲が広く、専門の作業員がワイヤー装置などを駆使して行っており、大型車両なども伴う大型装置が必要な二重管削孔は難しかった。
【0012】
係る状況下、本発明の目的は、法面でも容易に二重管削孔を行うことができる装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0014】
<1> 断面が多角形の被把持部を有する、アウター管削孔器具および/またはインナー管削孔器具の、前記被把持部の多角形と対応する多角形の把持部を有し、削孔機のガイドレールの前記削孔機の下部に取り付けられ、前記アウター管削孔器具および/または前記インナー管削孔器具の回転を増幅する回転増幅器を有する、法面削孔用の二重管削孔装置。
<2> 前記削孔機および前記回転増幅器が、エアーコンプレッサーから供給された高圧エアーにより回転する前記<1>に記載の二重管削孔装置。
<3> 前記回転増幅器が、前記ガイドレールに固定された、前記<1>または<2>に記載の二重管削孔装置。
<4> 前記回転増幅器が、前記削孔機とともに、前記ガイドレールに沿って上下に移動する、前記<1>または<2>に記載の二重管削孔装置。
<5> 前記削孔機が、前記アウター管削孔器具と、前記インナー管削孔器具とを取付け自在の取付部を有する、前記<1>~<4>のいずれかに記載の二重管削孔装置。
<6> アウター管削孔器具および/またはインナー管削孔器具の断面が多角形の被把持部分を有し、前記被把持部の多角形と対応する多角形の把持部で前記被把持部を把持し、削孔機のガイドレールの前記削孔機の下部に取り付けられる回転増幅器により、前記アウター管削孔器具および/または前記インナー管削孔器具の回転を増幅する工程を有する、法面の二重管削孔方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、法面でも容易に二重管削孔を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る削孔装置の概要図である。
図2】本発明の実施形態に係る削孔装置の回転増幅器および削孔機の拡大図である。
図3】本発明の第一の実施形態の回転増幅器の拡大図である。
図4】本発明の第二の実施形態の回転増幅器の拡大図である。
図5】本発明の二重管削孔装置に用いられる回転増幅器を平面視した図である。
図6】本発明の実施形態に係る削孔装置の削孔機周辺の拡大図である。
図7】二重管削孔方法を説明するための概要図である。
図8】本発明の二重管削孔装置により法面を削孔する参考状態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0018】
[本発明の二重管削孔装置]
本発明の二重管削孔装置は、断面が多角形の被把持部を有する、アウター管削孔器具および/またはインナー管削孔器具の、前記被把持部の多角形と対応する多角形の把持部を有し、削孔機のガイドレールの前記削孔機の下部に取り付けられ、前記アウター管削孔器具および/または前記インナー管削孔器具の回転を増幅する回転増幅器を有する、法面削孔用の二重管削孔装置である。
この回転増幅器は、断面が多角形の被把持部を有するアウター管削孔器具や、断面が多角形の被把持部を有するインナー管削孔器具の、前記被把持部の多角形と対応する多角形の把持部を有する。また、回転増幅器は、削孔機のガイドレールの前記削孔機の下部に取り付けられる。また、回転増幅器は、前記アウター管削孔器具および/または前記インナー管削孔器具の回転を増幅する。
【0019】
本発明の二重管削孔装置によれば、法面でも容易に二重管削孔ができる。これは、回転増幅器で回転を増幅させて、アウター管削孔器具や、インナー管削孔器具を回転させるため、削孔機のみでは回転力が不足する場合も、安定して回転させて削孔できるためである。法面でもワイヤー等で移動できる大きさの単管用の駆動力の削孔装置でも、容易に二重管の削孔ができる。
【0020】
[本発明の二重管削孔方法]
本発明の二重管削孔方法は、アウター管削孔器具および/またはインナー管削孔器具の断面が多角形の被把持部分を有し、前記被把持部の多角形と対応する多角形の把持部で前記被把持部を把持し、削孔機のガイドレールの前記削孔機の下部に取り付けられる回転増幅器により、前記アウター管削孔器具および/または前記インナー管削孔器具の回転を増幅する工程を有する、法面の二重管削孔方法である。
【0021】
本発明の二重管削孔方法によれば、法面でも容易に二重管の削孔ができる。なお、本願において本発明の二重管削孔装置により本発明の二重管削孔方法を行うこともでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0022】
本発明の二重管削孔装置および削孔方法の説明にあたって、まず、法面におけるロックボルト工法による削孔について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の二重管削孔装置により法面を削孔する参考状態を示す概要図である。図8(a)は法面9を横方向から見た図であり、図8(b)は法面を正面から見た図である。削孔装置10は、法面9に対して、略垂直方向などに削孔するように配置して用いられる。削孔装置10の上部に設けられたワイヤー81~84は、それぞれウィンチ811~814に連結されている。ウィンチ811、812は、法面9の上側に配置され、ウィンチ813、814は法面9の下側に配置されている。削孔装置10は、これらのワイヤーの長さを適宜調整しながら、その配置を調節して、所定の位置に穴hを削孔する。
【0023】
[削孔装置1]
図1は、本発明の実施形態に係る削孔装置の概要図である。削孔装置1は、法面の削孔に用いられる装置である。削孔装置1は、削孔機2を有し、削孔機2の取付部22にアウター管削孔器具3が取り付けられている。アウター管削孔器具3は、アウター管先端部32が法面9に接触し、法面9に侵入することでアウター管の削孔を行うことができる。
【0024】
また、削孔装置1は、図6(b)に示すようにインナー管削孔器具4を、インナー管用取付部24に取り付けて、インナー管の削孔を行うこともできる。取付部22が、アウター管削孔器具3と、インナー管削孔器具4を同時に取り付けることができる構造とすれば、削孔装置1は、アウター管と、インナー管を同時に削孔することもできる。
【0025】
削孔装置1の削孔機2は、ガイドレール51に連結部21により連結されている。ガイドレール51は、削孔機2の上下移動をガイドするためのレールである。ガイドレール51には、基部53側に昇降機6も連結されている。昇降機6は、ベルト63により削孔機2と連接されている。ベルト63はガイドレール51の下部であるギア61と、ガイドレール51の上部である頭頂部71側に取り付けられたギア62との間につながれている。ベルト63は、ギア61、62の回転により上下に巻き取られ、ベルト63の移動に伴い、削孔機2も上下に移動する。ガイドレール51は、これらの削孔機2の衝撃等に耐え、取り回しが行いやすいように補強部52が設けられている。図1の削孔装置1は、回転増幅器25を備えるものである。
【0026】
[削孔機2]
削孔機2は、エアー圧や油圧、水圧等で回転や上下移動することで、削孔する機器である。特に、法面での操作に適した重量で取り回ししやすいことを考慮すると、エアーコンプレッサーから供給された高圧エアーで削孔するものを採用することが好ましい。また、この削孔のための穿孔はライフルバータイプのものとすることができる。このような削孔機としては、例えば、ヤマモトロックマシン株式会社の空圧ドリフター“YLD-90”などを用いることができる。
【0027】
[回転増幅器25、26]
図2は、本発明の第一の実施形態および第二の実施形態に係る削孔装置の拡大図である。図2(a)は、固定式の回転増幅器25を備えた第一の実施形態に係る削孔装置である。図2(b)は、移動式の回転増幅器26を備えた第二の実施形態に係る削孔装置である。
【0028】
回転増幅器25、26で回転増幅するために、アウター管削孔器具3や、インナー管削孔器具4は、その断面が多角形の被把持部を有する。回転増幅器25、26は、これらの被把持部の多角形と対応する多角形の把持部を有する。
【0029】
また、回転増幅器25、26は、削孔機2のガイドレール51に取り付けられる。この取付位置は、削孔機2の下部である地面側に取り付けられる。回転増幅器25、26は、把持しているインナー管削孔器具4(図6(b)参照)やアウター管削孔器具3の回転を増幅する。
【0030】
本発明の二重管削孔装置は、法面で取り回ししやすいような大きさで設計することが好ましい。このとき、エアーコンプレッサーから供給された高圧エアーで削孔するものとすることができるが、削孔機2のみでは駆動力が弱く、地盤が固いとき削孔ができずに空回りしているような状態となったり、地面からの反発で回転量が低減したり止まったりする可能性がある。これらを解決するために、本発明の二重管削孔装置1は、アウター管削孔器具3やインナー管削孔器具4の回転増幅器25(または回転増幅器26)を有する。
【0031】
図3は、本発明の第一の実施形態の回転増幅器の拡大図である。図3は、図2(a)の回転増幅器25の拡大図である。回転増幅器25は、昇降機6と同様にガイドレール51の下方に固定して取り付けられている。回転増幅器25はこの位置でアウター管削孔器具3やインナー管削孔器具4を把持して削孔のための回転を補助する。
【0032】
図4は、本発明の第二の実施形態の回転増幅器26の拡大図である。図4は、図2(b)の回転増幅器26の拡大図である。回転増幅器26は削孔機2の近傍でガイドレール51に取り付けられている。回転増幅器26は、アウター管削孔器具3やインナー管削孔器具4を把持し、削孔機2の上下移動に連動してガイドレール51に沿って上下に移動しながら、削孔のための回転を補助する。
【0033】
図5は、本発明の二重管削孔装置に用いられる回転増幅器を平面視した図である。図5(a)は回転増幅器26を例にしたものである。回転増幅器26は中央に把持部261を有している。把持部261の中央は中空となっており、アウター管削孔器具3の被把持部33の側面を把持する。このため、把持部261は、アウター管削孔器具3、または、インナー管削孔器具4のいずれを把持するかによって、その形状が変更できるように、取り換え式の部材等で、調整できるものとすることができる。図5の把持部261は、アウター管削孔器具3を把持するための構造である。
【0034】
把持部261で把持するために、アウター管削孔器具3の対応する位置の被把持部33は、把持部261に合わせた形状とする。図5(a)において、把持部261は、平面視したとき六角形の中空部を設けている。この把持部261で把持するアウター管削孔器具3の被把持部は、断面が六角形である。
【0035】
把持部および被把持部は、六角形に限らず多角形とすることができる。多角形は、三角形~十二角形や、四角形~八角形などとすることができる。通常のインナー管削孔器具および/またはアウター管削孔器具は断面が円だが、円のものは把持されにくく衝撃によって空回りなどする。しかし、把持部および被把持部を互いに対応する多角形として把持することで、辺で接し角部で引っ掛かり強固に把持されて回転が増幅する。
【0036】
図5(a)において、アウター管削孔器具3を把持するために、把持部261は、回転増幅器26の中央にコマ261aを配置したものである。図5(b)は、コマ261aを、回転増幅器26から取り出した状態で平面視した図である。この構成例では、把持部261をなすコマ261aの対によりアウター管削孔器具3の被把持部33を把持するものである。図5(c)は、図5(b)の変形例で、インナー管削孔器具4の被把持部43を把持するためのもので、コマ261bの対によるものである。被把持部33に対応して、コマ261aは、コマ261bよりも細い。このように、回転増幅器26の中央のコマを取り換えることで、径が異なるアウター管削孔器具3や、インナー管削孔器具4のいずれも把持できるものとできる。
【0037】
また、回転増幅器26は、エアモーター263を3つ有している。エアモーター263は回転増幅器26内で、把持部261の周囲の歯車262と連動して、把持部261を回転させる。このように、回転増幅器26は、把持部261でアウター管削孔器具3を把持するだけでなく、削孔機2の回転に加えてこれらのエアモーター263によっても回転させることで、より強い安定した回転を行い、削孔を行う。なお、削孔機2と、エアモーター263は、同じエアーコンプレッサーから供給される高圧エアーにより回転するものにできる。
【0038】
[取付部22]
図6は、本発明の実施形態に係る削孔装置の削孔機の拡大図である。削孔機2は、取付部22を有する。取付部22は、アウター管用取付部23と、インナー管用取付部24を有する。図6(a)はアウター管削孔器具3の取り付けを説明するための図である。アウター管用取付部23は、アウター管削孔器具3のアウター管取付部31を取り付けることができ、アウター管削孔器具3の上部の先端は、雄螺子の加工がされている。取付部22のアウター管用取付部23はこのアウター管取付部31を螺合することができる構造である。
【0039】
図6(b)はインナー管削孔器具4の取り付けを説明するための図である。インナー管用取付部24は、インナー管削孔器具4のインナー管取付部41を取り付けることができ、インナー管削孔器具4の上部の先端は、雌螺子の加工がされている。取付部22のインナー管用取付部24はこのインナー管取付部41を螺合することができる構造である。
【0040】
取付部22には、アウター管削孔器具3と、インナー管削孔器具4とを同時に取り付けておいて、一度の削孔で二重管削孔をするものとしてもよい。または、取付部22に、アウター管削孔器具3、または、インナー管削孔器具4の一方のみを取り付けて、それぞれを削孔することで、二重管削孔してもよい。
【0041】
[削孔方法]
図7は、二重管削孔方法の一例を説明するための概要図である。図7は、アウター管削孔器具3のアウター管の削孔と、インナー管削孔器具4のインナー管の削孔とをそれぞれ行うことで二重管削孔する例である。図7(a)~(c)は、アウター管削孔器具3による削孔に関するものであり、図7(d)~(f)は、インナー管削孔器具4による削孔に関するものである。この図7は、アウター管30を先に設け、その後、インナー管削孔器具4を用いてアウター管30内に削孔する例である。
【0042】
図7(a)に示すように、まず削孔機2の取付部(図6参照)に、アウター管削孔器具3を取り付ける。そして、削孔機2で削孔するための駆動をしながら昇降機6で削孔機2を上下に移動させる。削孔機2は、作業開始時には法面よりも上部に配置されているため、アウター管削孔器具3のアウター管先端部32(図1等参照)を法面に接触させる位置まで下降させる。
【0043】
そして、アウター管削孔器具3を徐々に法面に侵入させる。図7(b)は、アウター管削孔器具3を半分ほど法面に侵入させて孔91を削孔する段階である。さらにアウター管削孔器具3を深く侵入させて、図7(c)に示すように孔91を設ける。この孔91は、アウター管30が中空であることから、アウター管30の内側には法面の土が含まれている。アウター管削孔器具3は、アウター管30を所定の深さまで侵入させた状態で、削孔機2から取り外し、法面内に残存した状態とする。
【0044】
図7(d)は、アウター管30を、法面9内に維持した状態で削孔機2を引き上げ、削孔機2にインナー管削孔器具4を取り付けた状態である。インナー管削孔器具4の先端は、アウター管30内の略中央に、同軸上にインナー管削孔器具4を侵入させるように配置させる。
【0045】
図7(e)は、削孔機2により削孔しながら、昇降機6で削孔機2を上下させて、アウター管30の内部をインナー管削孔器具4により削孔させている状態である。削孔機2は、削孔中、法面に対して垂直に進入させる方向だけでなく、徐々に土砂を排出しながらより開口した状態を確保するために、昇降機6で繰り返し上下させて削孔することができる。
【0046】
図7(f)は、アウター管30の内部の土砂を排出し、開口させた孔92を設けた状態である。孔92を設けた後、孔92からインナー管削孔器具4を引き抜き、削孔機2からインナー管削孔器具4を取り外してよい。
【0047】
このように、本発明の二重管削孔方法は、アウター管用取付部23(図6(a)参照)にアウター管削孔器具3を取り付けて、削孔して法面9にアウター管30を配置する工程と、インナー管用取付部24(図6(b)参照)にインナー管削孔器具4を取り付けて、アウター管の内側を削孔する工程とを行うものとすることができる。
【0048】
前述の削孔後、法面にはアウター管30の内部の土砂が排出された孔92が設けられている。この孔92には、セメントを流し込んで補強して、セメントが固定する前にアウター管30を引き抜くことで、法面にセメント注入固化による補強部が設けられる。
【0049】
なお、図7に示すように、図6に示すような取付部22を有する削孔機2で二重管削孔を行うことで、従来の法面用の削孔装置で二重管削孔を行うこともできる。このための二重管削孔装置は、アウター管削孔器具と、インナー管削孔器具とを取付け自在の取付部、を有する削孔機を有する法面用の削孔装置とすることができる。このような二重管削孔装置により、法面でも二重管削孔を行うことができる。この二重管削孔装置は、アウター管削孔器具と、インナー管削孔器具とを取り付け自在に切り替えて削孔する。
【0050】
これは、詳しくは図7で示す削孔方法で説明するように、アウター管削孔器具、またはインナー管削孔器具の一方を取り付けた状態でそれぞれ削孔して、二重管を削孔するほどの駆動力を必要とせずに行うこともできる。この場合、法面でもワイヤー等で移動できる大きさの単管用の駆動力の削孔装置で、二重管の削孔をおこなってもよい。
【0051】
二重管削孔方法は、アウター管削孔器具と、インナー管削孔器具とを取付け自在の取付部、を有する削孔機を有する法面用の削孔装置を用いる削孔方法であって、前記取付部にアウター管削孔器具を取り付けて、削孔してアウター管を配置する工程と、前記取付部にインナー管削孔器具を取り付けて、前記アウター管の内側を削孔する工程とを有する、法面の二重管の削孔方法とすることができる。二重管削孔方法によれば、法面でもワイヤー等で移動できる大きさの単管用の駆動力の削孔装置で、二重管の削孔ができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、法面の二重管削孔に利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0053】
1、10 削孔装置
2 削孔機
21 連結部
22 取付部
23 アウター管用取付部
24 インナー管用取付部
25、26 回転増幅器
261 把持部
261a、261b コマ
262 歯車
263 エアモーター
3 アウター管削孔器具
30 アウター管
31 アウター管取付部
32 アウター管先端部
33、43 被把持部
4 インナー管削孔器具
41 インナー管取付部
51 ガイドレール
52 補強部
53 基部
6 昇降機
61、62 ギア
63 ベルト
71 頭頂部
81~84 ワイヤー
811~814 ウィンチ
9 法面
91、92 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8