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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106234
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】船外機用エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20220711BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
F02M37/00 331A
F02M37/00 N
F02M37/00 301J
B63H20/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001108
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸倫
(57)【要約】
【課題】
船外機用エンジンの燃料供給装置について余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を抑制可能として燃料を安定的かつ高精度に供給できるようにする。
【解決手段】
ハウジング2内に燃料ポンプ3と燃料を所定圧力に調整して余剰燃料を燃料貯留槽2aに戻すレギュレータ4を備えて所定圧力の燃料をエンジンに供給する船外機用燃料供給装置1Aであって、ハウジング2内部の上部側に、レギュレータ4の下部を挿入・支持した状態で余剰燃料を燃料貯留槽2aに送る余剰燃料排路28を形成するレギュレータホルダ40が配設され、そのレギュレータホルダ40がレギュレータ4を下から支えるカップ状の支持部40の底面から管状の足部40bが下向きに延設された漏斗状の構造を備えて、その足部40bの先端が燃料貯留槽2aに貯留した燃料の油面下に位置するものとした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設され、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽を形成したハウジング本体と前記ハウジング本体の開口部を気密に覆う蓋体からなるハウジングの内部に、貯留した燃料を圧送する燃料ポンプと、圧送する燃料を所定圧力に調整しながら余剰燃料を前記燃料貯留槽に戻すレギュレータと、前記燃料貯留槽に貯留した燃料の油面を一定レベルに維持する燃料貯留量調整手段とを備えており、前記蓋体の燃料吐出口から所定圧力の燃料を送出してエンジンに供給する船外機用エンジンの燃料供給装置において、前記ハウジング内部の上部側には、リターンポートのある前記レギュレータの下部を挿入して支持した状態で前記レギュレータから流下した余剰燃料を前記燃料貯留槽に送る余剰燃料排路を形成するレギュレータホルダが配設されており、前記レギュレータホルダは、前記レギュレータを下から支えるカップ状の支持部の底面から管状の足部が上下両端側を開口しながら下向きに延設された漏斗状の構造を備えているとともに前記足部の先端が前記燃料貯留槽に貯留した燃料の油面下に位置しており、前記支持部内に流下した余剰燃料が前記足部内を通して前記油面下で開口した先端側から戻されることを特徴とする船外機用エンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
前記レギュレータホルダが、前記燃料ポンプの中心軸線を基準として、前記燃料ポンプの燃料吸込み口への燃料侵入経路の対角側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の船外機用エンジンの燃料供給装置。
【請求項3】
前記レギュレータホルダが、その足部を前記レギュレータのリターンポート開口部の直下位置からずれた位置で前記支持部の内側底面の上方にてその先端を開口しており、前記レギュレータから流下する余剰燃料を前記支持部の内側底面でいったん受け止めてから前記足部内に流入させることを特徴とする請求項1または2に記載の船外機用エンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の外部に取付ける船外機用エンジンにおいて燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設される燃料供給装置に関し、殊に、燃料ポンプとレギュレータに加え燃料貯留槽を備えてリザーバを兼ねることのできる船外機用エンジンの燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船外機用エンジンは船内に配置した燃料タンクに貯留した液体燃料をエンジンに供給するが、急加速や急減速、或いは強い振動があっても燃料を途切れることなく安定的に供給するため、燃料ポンプとレギュレータに加え燃料貯留槽を備えてリザーバとしても機能することのできる燃料供給装置を、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設することが一般的に行われている。
【0003】
そして、このような船外機用エンジンの燃料供給装置は、例えば、特開2008-297941号公報に記載されているように、ハウジング本体内部でリザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽内に貯留した燃料をエンジンに向けて圧送する燃料ポンプと、貯留した燃料の油面を一定レベルに維持するためのフロートを有した燃料貯留量調整手段と、燃料調圧手段としてのレギュレータとを備えて、レギュレータ下部に設けたリターンポートから、調圧により余剰となった燃料を燃料貯留槽に流下させて戻す方式を採用しているのが通常である。
【0004】
しかしながら、この従来の船外機用エンジンの燃料供給装置では、レギュレータから燃料貯留槽に流下する余剰燃料が燃料貯留槽内に貯留した燃料を攪拌して、ベーパーを生じたり油面が乱れてフロートを揺動させたりして、エンジンに対する燃料の安定供給を妨げてしまう場合があり、また、燃料貯留槽内の底部に堆積した燃料に含まれる水分や不純物等の異物がレギュレータから余剰燃料が流下することで貯留燃料内に拡散して、そのままエンジンに供給されてしまうという問題もある。
【0005】
特に、エンジンおよび燃料タンクに近接した状態で1個のハウジング内に収納される船外機用の燃料供給装置においては、内部に貯留した燃料の温度が上昇しやすいことに加えエンジンの振動が継続的に燃料に加わることから、温度の上昇した余剰燃料がレギュレータから燃料油面に吹付けられて一層ベーパーを生じやすい状態となるため、ベーパーを含んだ燃料が燃料ポンプからエンジンに送出されることにより、燃料の計量精度が低下してエンジン回転を不安定にしてしまうという難点を有している。
【0006】
また、上述したような従来の船外機用エンジンの燃料供給装置では、余剰燃料が流下して貯留した燃料が攪拌されることにより、燃料の流入量を調整するフロートが揺れてオーバーフローを生じやすくなり、燃料貯留槽内に油面上部に溜まる燃料貯留槽内に生じたベーパーが油面上部に溜まることでそれが大気連通路に達した場合にオーバーフローを引き起こしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-297941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来の船外機用エンジン用の燃料供給装置が有する課題を解決しようとするものであり、余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を抑制可能なものとして、燃料を安定的かつ高精度に供給できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設され、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽を形成したハウジング本体と前記ハウジング本体の開口部を気密に覆う蓋体からなるハウジングの内部に、貯留した燃料を圧送する燃料ポンプと、圧送する燃料を所定圧力に調整しながら余剰燃料を前記燃料貯留槽に戻すレギュレータと、前記燃料貯留槽に貯留した燃料の油面を一定レベルに維持する燃料貯留量調整手段とを備えており、前記蓋体の燃料吐出口から所定圧力の燃料を送出してエンジンに供給する船外機用エンジンの燃料供給装置において、前記ハウジング内部の上部側には、リターンポートのある前記レギュレータの下部を挿入して支持した状態で前記レギュレータから流下した余剰燃料を前記燃料貯留槽に送る余剰燃料排路を形成するレギュレータホルダが配設されており、前記レギュレータホルダは、前記レギュレータを下から支えるカップ状の支持部の底面から管状の足部が上下両端側を開口しながら下向きに延設された漏斗状の構造を備えているとともに前記足部の先端が前記燃料貯留槽に貯留した燃料の油面下に位置しており、前記支持部内に流下した余剰燃料が前記足部内を通して前記油面下で開口した先端側から戻されることを特徴とする。
【0010】
このように、レギュレータを支持するレギュレータホルダを漏斗状の構造を備えたものとして、レギュレータから流下した余剰燃料を燃料貯留槽に貯留した燃料の油面よりも深い位置で開口した足部先端側から戻すようにしたことで、レギュレータから流下した余剰燃料が燃料油面に衝突してベーパーを発生させたり燃料油面を揺らしたりするのを最小限に抑えることが可能となるため、安定的且つ精度高い燃料供給を実現することができる。
【0011】
また、本発明において、そのレギュレータホルダは、燃料ポンプの中心軸線を基準として、燃料ポンプの燃料吸込み口への燃料侵入経路の対角側に配設されている、ことを特徴としたものとすれば、燃料吸込み口から遠い位置で余剰燃料が燃料貯留槽に戻されるようにした場合には、燃料ポンプによるベーパーの吸入量を低減させることができる。
【0012】
更に、本発明において、レギュレータホルダが、その足部をレギュレータのリターンポート開口部の直下位置からずれた位置で支持部の内側底面の上方にてその先端を開口して、レギュレータから流下する余剰燃料を支持部の内側底面でいったん受け止めてから足部内に流入させる場合には、レギュレータから噴出した余剰燃料の勢いをいったん軽減させてから足部の内周面を伝って貯留燃料内に戻すことが可能になるため、余剰燃料の流下により生じる弊害を一層低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
漏斗状の構造を備えたレギュレータホルダで余剰燃料を貯留燃料の油面下に戻す方式とした本発明によると、余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を最小限に抑制可能として、燃料を安定的かつ高精度に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における実施の形態である船外機用エンジンの燃料供給装置の斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図1の船外機用エンジンの燃料供給装置においてレギュレータを支持するレギュレータホルダとその配設状態を説明するための分解部分拡大斜視図である。
図5】本発明における異なる実施の形態である船外機用エンジンの燃料供給装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1乃至図4は、エンジン(図示せず)および燃料タンク(図示せず)とともに1個のハウジング内に近接した状態で内装される船外機用エンジンにおける本発明の好ましい実施の形態である燃料供給装置1Aを示すものであり、燃料供給装置1Aは、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設されることで、燃料供給手段として機能することに加えリザーバとしても機能も有するもので、急加速や急減速、或いは大きな振動があっても燃料を途切れることなく安定的に供給可能としている。
【0017】
更に詳細に説明すると、燃料供給装置1Aは、リザーバタンクとしても機能する燃料貯留槽2aを内部に形成したハウジング本体2Aと、その開口部を気密的に塞ぐ蓋体2Bを備えており、これらで中空のハウジング2を構成しており、そのハウジング2の内部に、燃料ポンプ3、レギュレータ4、燃料貯留槽2a、燃料貯留量調整手段の一部を構成するフロート6、燃料を濾過するフィルタ8を備えており、また、蓋体2Bの上面側には、燃料を導入する燃料導入パイプ23と燃料を吐出する燃料吐出パイプ24を備えている。
【0018】
また、本実施の形態は、前記図3に示したように、ハウジング本体2Aと蓋体2Bとで構成されるハウジング2内部の上部側に、レギュレータ4のリターンポートのある下部側を挿入した状態でこれを支持しながらレギュレータ4から流下する余剰燃料を燃料貯留槽2aに送る余剰燃料排路28を形成する機能を備えたレギュレータホルダ40が配設されている。
【0019】
前記レギュレータホルダ40は、図4の分解部分斜視図に示すように、レギュレータ4を下から支えるカップ状の支持部40aの底面から管状の足部40bが上下両端側を開口して下向きに延設された漏斗状の構造を備えており、燃料ポンプ3の上部側に取付けるための平面視8字状の取付け部品44と組み合わされた状態で、レギュレータ4を燃料貯留槽2aの上方に支持している。
【0020】
そして、前記レギュレータホルダ40は、前記図3に示したように、これを装着した状態でその足部40bの先端側が一点鎖線で示す燃料貯留槽2aに貯留した燃料の油面レベルよりも下側に位置しており、レギュレータ4からカップ状の支持部40a内に流下した余剰燃料が、管状の足部40bの内側を通って貯留燃料の油面よりも深い位置で開口した足部40b先端側から燃料貯留槽2a側に戻されるようになっている。
【0021】
即ち、ハウジング2内でレギュレータ4を支持するレギュレータホルダ40を漏斗状の構造を設けて、レギュレータ4から流下した余剰燃料を燃料貯留槽2aの貯留燃料の油面下で開口した管状の足部40b先端側から戻す方式を採用したことにより、足部40b先端側の周壁で囲まれた狭い空間内で露出した狭い油面部分のみに余剰燃料を流下させるようにした。
【0022】
そのため、レギュレータ4から流下した余剰燃料が、燃料貯留槽2aの広い燃料油面に直接的に衝突することでベーパーを発生させたり燃料油面を大きく揺らしたりすることを回避しながら、燃料を安定的かつ精度高くエンジンに供給することを実現可能としており、また、管状の足部40b内の狭い空間でベーパーが生じたとしても、その先端側は貯留燃料の油面よりも下側で開口していることから、ベーパーがレギュレータホルダ40の外側空間に拡散しにくい状態を形成することができる。
【0023】
また、本実施の形態においては、図3に示したように、前述したレギュレータホルダ40が、二点鎖線で示す燃料ポンプ3の中心軸線を基準として、フィルタ8を介して燃料ポンプ3の燃料吸込み口31に至る破線矢印で示す燃料侵入経路の対角側に配設されており、これにより、燃料ポンプ3の燃料吸込み口31から遠い位置で余剰燃料が燃料貯留槽2aに戻されるため、燃料ポンプ3におけるベーパーの吸入量を最小限に低減させることが可能である。
【0024】
尚、本実施の形態の燃料供給装置1Aにおいては、前述したようにレギュレータホルダ40を漏斗状として、これとレギュレータ4を蓋体2B側で支持・固定するために燃料ポンプ3の上部に取付ける平面視8字状の取付け部品44と組合せる構成としているが、レギュレータホルダ40と取付け部品44を一体に形成した形状としてハウジング2内に設けても良い。
【0025】
更に、図4は、前述した燃料供給装置1Aの異なる実施の形態である船外機用エンジンの燃料供給装置1Bを示すものであり、この燃料供給装置1Bにおいて配設されるレギュレータホルダ41は、そのカップ状の支持部41aの底面から延設されている足部41bが、支持しているレギュレータ4のリターンポート開口部の直下位置から所定距離ずれた位置で支持部41aの内側底面上にて、その管状の上端側を開口している。
【0026】
そのため、レギュレータ4のリターンポートから支持部41a内に流下した余剰燃料は、支持部41aの内側底面上でいったん受け止められてから足部41b内に流入することになり、レギュレータ4から噴出した余剰燃料を、その勢いをいったん低減させてから足部41bの内周面を伝って貯留燃料2a内に戻す機能を発揮するようになっており、余剰燃料の流下により生じる弊害を一層低減しやすいものとしている。
【0027】
加えて、そのレギュレータ41の足部41bをレギュレータ4のリターンポートの直下位置からずらした方向が、燃料ポンプ3の中心軸線を基準としてその燃料吸込み口31から遠くなる方向にしてあるため、燃料ポンプ3によるベーパーの吸込み量をさらに低減可能なものとしている。
【0028】
以上、述べたように、本発明により余剰燃料の流下に伴う弊害の発生を最小限に抑制可能として、燃料を安定的かつ高精度に供給できる船外機用エンジンの燃料供給装置を提供することが可能になった。
【符号の説明】
【0029】
1A,1B 燃料供給装置、2 ハウジング、2A ハウジング本体、2B 蓋体、3 燃料ポンプ、4 レギュレータ、6 フロート、28 余剰燃料排路、31 燃料吸込み口、40,41 レギュレータホルダ、40a,41b 支持部、40b,41b 足部
図1
図2
図3
図4
図5