(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106237
(43)【公開日】2022-07-19
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001112
(22)【出願日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】松田 勲
(72)【発明者】
【氏名】青木 洋一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 裕城
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB02
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】検出精度を向上させる検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は気体が充填される袋状の第1部材14と、前記第1部材上に接続し、気体が充填される袋状の第2部材12と、振動を前記第1部材の下面に伝達する第3部材18と、振動を前記第2部材の上面に伝達する第4部材16と、前記第1部材内の気体圧力と前記第2部材内の気体圧力との差を検出する検出器と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が充填される袋状の第1部材と、
前記第1部材上に接続し、気体が充填される袋状の第2部材と、
振動を前記第1部材の下面に伝達する第3部材と、
振動を前記第2部材の上面に伝達する第4部材と、
前記第1部材内の気体圧力と前記第2部材内の気体圧力との差を検出する検出器と、
を備える検出装置。
【請求項2】
平面視において、前記第4部材は前記第2部材より大きい請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第4部材の上方から被験者のバイタルの振動が伝わり、
前記第4部材が前記第2部材の上面に接する面積は前記第2部材の平面視の面積より小さい請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第4部材の上方から被験者のバイタルの振動が伝わり、
前記第4部材が前記第2部材に接する面積は前記第2部材の平面視の面積の1/2以下である請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第3部材が前記第1部材の下面に接する面積は前記第4部材が前記第2部材に接する面積以上である請求項3または4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第4部材が前記第2部材の上面に接する領域は前記第2部材の平面視における中心を含む請求項3から5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
平面視において、前記第3部材は前記第1部材より大きく、前記第4部材は前記第2部材より大きく、
平面視において前記第1部材および前記第2部材を囲む一部における前記第3部材と前記第4部材との間に設けられ、前記第3部材と前記第4部材を接続する支持部材を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第4部材は、第1平板と前記第1平板から前記第2部材の方向に突出し先端が前記第2部材の上面に接する突出部とを備える請求項1から7のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記第4部材は、上方から被験者のバイタルの振動が伝わる第1平板と前記第1平板から前記第2部材の方向に突出し先端が前記第2部材の上面に接する突出部とを備え、
前記突出部が前記第2部材の上面に接する領域は前記第2部材の平面視における中心を含み、前記突出部が前記第2部材の上面に接する面積は前記第2部材の平面視の面積の1/2以下である請求項1から7のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記第3部材は前記第1部材下に設けられ、平面視において前記第1部材以上の大きさを有する第2平板を含む請求項8または9に記載の検出装置。
【請求項11】
平面視において、前記第3部材は前記第1部材より大きく、前記第4部材は前記第2部材より大きく、
平面視において前記第1部材および前記第2部材を囲む領域において、前記第1部材と前記第2部材とは空隙を介し対向する請求項1から10のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
前記第1部材と前記第2部材は、前記第2部材に被験者の荷重がかかる人体部位に重なるように設けられる請求項1から11のいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関し、例えば、バイタルの振動を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の脈波や呼吸などのバイタル等の振動を検出する検出装置が知られている(例えば特許文献1~6)。バイタル等の振動の検出に、空気が入った袋状部材を用い、袋状部材内の空気の圧力を検出することでバイタル等の振動を検出することが知られている(例えば特許文献4および5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-219341号公報
【特許文献2】特開2006-218068号公報
【特許文献3】特開2006-42904号公報
【特許文献4】特開2018-47862号公報
【特許文献5】特開2009-82585号公報
【特許文献6】特開2009-104599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高感度な振動検出器は外乱振動の影響を受けやすい。例えば、バイタル等の振動の周波数成分と同じ帯域の大きい外乱振動が含まれる環境においてはバイタル等の振動を検出することが難しい。例えば、車両内ではドライブノイズ等の振動が生じる。ドライブノイズには、バイタル情報の周波数成分と同じ帯域の大きな外乱振動が含まれる。このため、検出される信号が飽和し、バイタル等の振動を検出できなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、気体が充填される袋状の第1部材と、前記第1部材上に接続し、気体が充填される袋状の第2部材と、振動を前記第1部材の下面に伝達する第3部材と、振動を前記第2部材の上面に伝達する第4部材と、前記第1部材内の気体圧力と前記第2部材内の気体圧力との差を検出する検出器と、を備える検出装置である。
【0007】
上記構成において、平面視において、前記第4部材は前記第2部材より大きい構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第4部材の上方から被験者のバイタルの振動が伝わり、前記第4部材が前記第2部材の上面に接する面積は前記第2部材の平面視の面積より小さい構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第4部材の上方から被験者のバイタルの振動が伝わり、前記第4部材が前記第2部材に接する面積は前記第2部材の平面視の面積の1/2以下である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第3部材が前記第1部材の下面に接する面積は前記第4部材が前記第2部材に接する面積以上である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第4部材が前記第2部材の上面に接する領域は前記第2部材の平面視における中心を含む構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、平面視において、前記第3部材は前記第1部材より大きく、前記第4部材は前記第2部材より大きく、平面視において前記第1部材および前記第2部材を囲む一部における前記第3部材と前記第4部材との間に設けられ、前記第3部材と前記第4部材を接続する支持部材を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第4部材は、第1平板と前記第1平板から前記第2部材の方向に突出し先端が前記第2部材の上面に接する突出部とを備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第4部材は、上方から被験者のバイタルの振動が伝わる第1平板と前記第1平板から前記第2部材の方向に突出し先端が前記第2部材の上面に接する突出部とを備え、前記突出部が前記第2部材の上面に接する領域は前記第2部材の平面視における中心を含み、前記突出部が前記第2部材の上面に接する面積は前記第2部材の平面視の面積の1/2以下である構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記第3部材は前記第1部材下に設けられ、平面視において前記第1部材以上の大きさを有する第2平板を含む構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、平面視において、前記第3部材は前記第1部材より大きく、前記第4部材は前記第2部材より大きく、平面視において前記第1部材および前記第2部材を囲む領域において、前記第1部材と前記第2部材とは空隙を介し対向する構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記第1部材と前記第2部材は、前記第2部材に被験者の荷重がかかる人体部位に重なるように設けられる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例1における振動検出部および差圧センサを示す概略図である。
【
図2】
図2(a)は、実施例1における振動検出部の平面図、
図2(b)および
図2(c)は、それぞれ
図2(a)のA-A断面図およびB-B断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1における振動検出部が座席シートに配置される例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1における検出装置を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、シミュレーションにおけるモデルを示す図である。
【
図7】
図7は、シミュレーションにおける点押しおよび面押しの空間11および13の体積減少率を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、実験1における点押し実験装置の配置を示す断面図、
図8(b)から
図8(d)は平面図である。
【
図9】
図9は、実験1における面押し実験装置の配置を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実験1における点押し治具の位置に対する差圧センサの出力値を示す図である。
【
図12】
図12は、実験1および2における点押し治具の位置に対する差圧センサの出力値を示す図である。
【
図13】
図13(a)から
図13(c)は、実施例1における伝達部材の例を示す振動検出装置の断面図である。
【
図15】
図15(a)から
図15(f)は、実施例1における伝達部材およびパッドの例を示す平面図である。
【
図16】
図16(a)から
図16(f)は、実施例1における支持部材の配置の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0021】
図1は、実施例1における振動検出部および差圧センサを示す概略図である。
図1に示すように、振動検出部10は、パッド12(第2部材)およびパッド14(第1部材)を備えている。パッド14上にパッド12が重なり、パッド14と12との間には振動が伝わる。パッド12と14とは、振動が伝わるように接続されていれば、接していなくてもよい。パッド12および14は、内部に空気等の気体が充填された空間11および13を有する袋状の部材であり、可撓性を有する樹脂等からなる。差圧センサ20は、筐体22、振動膜24および圧電素子25を備えている。筐体22は剛体であり、筐体22内には空間21および23が設けられている。空間21と23の形状および大きさは例えばほとんど同じである。
【0022】
なお、ここでパッド12および14は、可撓性を有するとしたが、以下のような硬さを有してもよい。ここで、パッド12および14の材質は、例えば、ポリエチレンである。パッド12および14の幅は、例えば、40mmである。つまり、差圧センサ20では、圧電素子25に圧力が加わることでパッド12および14に伝達される振動が検出される。パッド12および14に伝達された振動による空間11および13の圧力の変化が空間21および23の圧力の変化に伝わり、その結果、振動膜24が変形する。圧電素子25は振動膜24の変形による圧力を検出する。よって、パッド12および14の材料は、パッド12および14に伝達された振動が空間11および13の圧力の変化となり、圧電素子25が振動を検出できるものであればよい。例えば、パッド12および14は、ポリカーボネード等のやや硬質な材料でもよい。
【0023】
筐体22の形状は、例えば筒状または箱体であり、筐体22は、金属または樹脂を主材料として構成されている。
図1の筐体22は、例えば円形の上面、円形の下面、その間をつなぐ側面からなる円筒形である。なお、パッド12と14の外形は、厚みの薄い直方体、例えばエアーマットや座布団を小さくしたような形状、または平面視で円形や楕円の食用のパイ(pie)生地のような形状であり、パッド12および14は中空構造の袋状の形状を有しているものである。また空間11および13は被検者の体重でつぶれない程度の圧力に保たれている。そして
図1では、パッド12の下面とパッド14の上面は、当接している。なお、被験者の体重がかかると、パッド12および14が変形し、パッド12と14との当接面の面積が増加する。
【0024】
振動膜24は空間21と23とを仕切るように設けられている。すなわち、空間21を画定する内壁の下面は振動膜24の上面であり、空間23を画定する内壁の上面は振動膜24の下面である。筐体22の側壁に対応する内壁には、全周に渡り、内側に突出する突出部22aが設けられている。突出部22aの上面に振動膜24の周縁が接合されている。振動膜24の周縁全体は突出部22aに固定されている。なお、振動膜24は、突出部22aの下面に設けてもよい。また筐体22の側壁には、空間21と23に対応して、接続用のパイプが設けられている。このパイプをここでは、接続部28および29とよぶ。この接続部28および29は、チューブ26および27を接続するために設けられている。よって、空間21は接続部28およびチューブ26を介しパッド12内の空間11と繋がっている。空間23は接続部29およびチューブ27を介しパッド14内の空間13と繋がっている。空間21および23中には空気等の気体または液体などの流体が充填されている。振動膜24の上面には圧電素子25が設けられている。振動膜24で、パッド12および14からの振動(例えば圧力の振動)を一旦受けて圧電素子25に伝えるため、圧電素子25は、突出部22aに重ならないように設けられている。
【0025】
パッド12および14に振動が加わる際、前述したようにパッド12および14に圧力が加わり、パッド12および14が変形する。その結果、空間11および13内の気体の圧力が変化する。気体の圧力の変化は空間21および23に伝わる。センサは差圧型であるので、パッド12と14に加わる振動が同じ位相および振幅のとき振動膜24はほとんど振動しない。振動膜24には、パッド12と14とに加わる振動の差分に相当する振動が伝わる。圧電素子25は、この振動膜24の振動(例えば圧力の振動)を検出し、検出信号を信号処理装置30(例えば回路)に出力する。空間21と23との圧力の差を検出する検出器としては、圧電素子等の圧電センサ以外に、静電容量センサ、ピエゾ抵抗センサまたは差動トランス等を用いてもよい。このように、差圧センサ20は、パッド12内の気体圧力(すなわち空間11に充填された気体の圧力)とパッド14内の気体圧力(すなわち空間13に充填された気体の圧力)との差を検出する。
【0026】
図2(a)は、実施例1における振動検出部の平面図、
図2(b)および
図2(c)は、それぞれ
図2(a)のA-A断面図およびB-B断面図である。パッド12および14の重なる方向をZ方向、パッド12および14の辺の延伸方向をX方向およびY方向とする。
図2(a)から
図2(c)に示すように、
図1で説明した振動検出部10は、パッド12(第2部材)、14(第1部材)、伝達部材16(第4部材)、18(第3部材)および支持部材15を備える。パッド12と14は重なりかつ面で接して設けられており、互に振動を伝達する。伝達部材16は、平板16a(第1平板)と軸心16bを備え、伝達部材18は、平板18a(第2平板)と軸心18bを備えている。伝達部材16および18は、パッド12の上面およびパッド14の下面に振動を伝達する部材であり、パッド12および14より硬い材料からなる。伝達部材16および18で使用する材料は、例えば、塩化ビニルである。平板16aと軸心16bとは別の部材でもよく、ここでは、同一材料で一体に成形されている。平板18aと軸心18bとは別の部材でもよく、ここでは、同一材料で一体に成形されている。平板16aと18aとの間におけるパッド12、14、支持部材15および軸心16bおよび18b以外は空隙(例えば空気)である。また、支持部材15を設けず、平板16aおよび18aがパッド12および14よりも小さくてもよい。
【0027】
軸心16bの下面はパッド12の上面に接し、軸心18bの上面はパッド14の下面に接する。平面視において軸心16bおよび18bは、パッド12および14の中心12aおよび14aと重なって設けられている。支持部材15はパッド12および14を囲むように設けられ、伝達部材16と18を支持する。伝達部材16および18の平面形状は一例として矩形であり、支持部材15は、例えば4隅に設けられている。支持部材15は伝達部材16および18を支持する部材であり、パッド12および14より硬い材料からなる。支持部材15により、伝達部材16または18に大きな力が加わって、パッド12または14が破壊される力がパッド12および14に加わらないようにしている。なお、支持部材15は、平面視で円形でもよく、さらに、支持部材15は、平面視で三点以上において伝達部材16および18を支持してもよい。
【0028】
以下、各部材の寸法の好ましい範囲を記載する。
パッド12および14
W2axおよびW2bx:10mm~150mm
W2ayおよびW2by:10mm~150mm
H2aおよびH2b:3mm~20mm
厚さH3:0.5mm~2mm
平板16a
W1ax:3mm~150mm
W1ay:3mm~150mm
H1a:0.5mm~5mm
平板18a
W1bx:10mm~150mm
W1by:10mm~150mm
H1b:3mm~5mm
軸心16bおよび18b
W3axおよびW3bx:3mm~75mm
W3ayおよびW3by:3mm~75mm
H3aおよびH3b:0.5mm~20mm
支持部材15
W4x:3mm~30mm
W4y:3mm~30mm
高さ:7mm~80mm
【0029】
各部材の弾性率の好ましい範囲を記載する。
パッド12および14
弾性率:0.1Mpa~2000MPa
伝達部材16、18および支持部材15
弾性率:50Mpa~4000MPa
伝達部材16、18および支持部材15の弾性率はパッド12および14の弾性率より大きいことが好ましく、10倍以上がより好ましい。
【0030】
図3は、実施例1における振動検出部10が座席シートに配置される例を示す図である。
図4は、
図3のA-A断面図である。被験者48がカーシート41に着座したとき、右方向を+X方向側、前方向を+Y方向側および上方向を+Z方向側とする。
図3および
図4に示すように、4輪車両内のカーシート41として、台座42、シートクッション44およびシートバック46が設けられている。台座42は例えば金属部材である。シートクッション44には、
図4に示す運転者等の被験者48の大腿部および臀部が接触し、シートバック46には被験者48の頸部、背部および腰部が接触する。シートクッション44内に
図1および
図4に示す振動検出部10が設けられている。シートクッション44はシートクロス43に覆われている。シートクッション44は、柔らかな樹脂からなり、例えばウレタン等の発泡樹脂である。被験者48がカーシート41に着座すると、被験者48の右臀部48aが振動検出部10に重なるように位置する。被験者48のバイタル等の振動はシートクッション44を介し振動検出部10に伝わる。振動検出部10を左臀部48bに重なるように配置してもよく、大腿部に重なるように配置してもよい。なお、振動検出部10をシートバック46に配置し、頸部、背部または腰部に重なるようにしてもよい。振動検出部10は、自転車のサドル、デスクチェア、ベッド、マットおよびブレスレッドなどに設けてもよい。
【0031】
図5は、実施例1における検出装置を示すブロック図である。
図5に示すように、検出装置100は、振動検出部10とセンサユニット31を備えている。差圧センサ20は回路部品35に検出信号を出力する。回路部品35は、例えばプリアンプ(アナログアンプ)を含んでおり、検出信号を増幅する。差圧センサ20の筐体22内にプリント基板を設け、回路部品35は、このプリント基板に設けられていてもよいし、筐体22外に設けられていてもよい。また、プリアンプは、1チップまたは1パッケージとして用意され、振動膜24の表面、または裏面に設けてもよい。
【0032】
回路部品35が処理した信号は信号処理装置30に出力される。信号処理装置30は、増幅器32、処理部34、メモリ36および出力部38等を備えている。増幅器32は回路部品35の出力信号を増幅する。増幅器32の利得は可変である。処理部34は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、増幅された信号をAD(Analog Digital)変換し、変換されたデジタル信号をデジタル処理し、呼吸および脈波等のバイタル情報を演算(または算出)する。メモリ36は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリであり、処理部34が実行するプログラムおよび処理中のデータを格納する。出力部38は処理部34が算出したバイタル情報を外部装置に出力する。バイタル情報の出力には例えば無線通信または有線通信を用いる。
【0033】
[シミュレーション]
比較例1として、パッド12および14を重ねクッション部材内に埋め込んだ。そして、クッション部材の上面を点押しした場合と面押しした場合とに分け、パッド12および14内の空気の減少率を、ANSYSを用い2次元シミュレーションした。
図6は、シミュレーションにおけるモデルを示す図である。
図6に示すようにクッション部材50内にパッド12および14を配置した。直線64において対称であると仮定し、直線64に対し左右対称とした。点押しでは、クッション部材50の上面のうち領域60を一定の力F60で押圧した。面押しでは、クッション部材50の上面のうち領域62を一定の力F62で押圧した。
【0034】
以下、シミュレーション条件を示す。2次元シミュレーションのため奥行きの寸法はない。
クッション部材50の幅W11:84mm
クッション部材50の高さH11:42mm
パッド12、14の幅W12:20mm
パッド12、14の合計の高さH12:10.5mm
パッド12、14の厚さH13:1.5mm
空間11、13の高さH14:3mm
領域60の幅W60:3mm
領域62の幅W62:64mm
点押しの力F60:4N
面押しの力F62:130N
クッション部材50の材料:発泡ウレタン
パッド12、14の材料:ポリエチレン
空間11、13:空気
なお、高さH12はパッド12と14を重ねたときのパッド14の下面からパッド12の上面までの高さである。
【0035】
ここで、点押しと面押しについて若干の説明をする。面押しはパッド12および14の幅以上の幅の板状部材を用い、点押しはパッド幅の25%以下の幅の四角柱などの部材を用い、パッド12および14を押した場合を想定した。パッド12および14を押す部材の幅がパッド12および14の幅の25%以上であっても、パッド12および14を押す部材の幅がパッド12および14の幅の25%以下のときと実質的に同様な効果が得られれば点押しと定義してもよい。領域60および62に力F60およびF62を加える前の空間11および13の面積をS0、領域60および62に力F60およびF62を加えたとき空間11および13の面積をS1とする。このとき、体積減少率は、(S0-S1)/S1[%]である。なお、2次元シミュレーションのため面積の減少率を体積減少率としている。
【0036】
バイタル等の振動の振動源は被験者の身体の一部(例えば臀部の一部)である。このため、点押しはバイタル等の振動に相当する。ドライブノイズのような外乱振動は、クッション部材50全体に伝わる。このため、面押しはドライブノイズのような外乱振動に相当する。
【0037】
図7は、シミュレーションの結果で、点押しおよび面押しの空間11および13のそれぞれ体積減少率11aおよび13aを示す図である。
図7に示すように、点押しでは、下の空間13の体積減少率13aは上の空間11の体積減少率11aより小さい。一方、面押しでは下の空間13と上の空間11の体積減少率11aおよび13aはほぼ同じである。このように、外乱振動に相当する面押しの振動による体積減少率は空間11と13でほぼ同じである。これにより、外乱振動、例えばドライブノイズなどの大きな振動は、差圧センサ20においてキャンセルされる。一方、バイタルの振動に相当する点押しの振動による空間11の体積減少率11aは空間13の体積減少率13aより大きい。つまり、上のパッド12は、その点押しの振動を下のパッド14の倍以上大きく受信可能である。これにより、バイタル等の振動がパッド12に伝達された場合には、差圧センサ20において、空間21と23と(すなわち空間11と13と)の圧力の差分が大きくなる。このため、バイタル等の振動は差圧センサ20に検出され易い。
【0038】
[実験1]
クッション部材50内にパッド12および14を埋め込んだ比較例1において、クッション部材50上面に点押しの振動および面押しの振動を加え、差圧センサ20の検出信号を測定した。
図8(a)は、実験1における点押し実験装置の配置およびその構造を示す断面図、
図8(b)から
図8(d)は平面図である。
図8(a)に示すように、剛体の台51上にクッション部材50を配置する。クッション部材50内にパッド12および14が埋め込まれている。クッション部材50の上面に金属板52を配置する。その金属板52上に金属リング57を配置し、その上にスピーカである加振器54を配置する。加振器54内には振動を発生する振動部55が設けられており、加振器54上に質量が1kgの錘56を配置する。振動部55の下面には点押し治具58が接しており、この点押し治具58は、金属リング57および金属板52の開口59を介しクッション部材50の上面に接する。
図8(b)は、金属板52の平面図であり、金属板52には円形の開口59が形成されている。
図8(c)は、金属リング57の平面図であり、金属リング57は円筒状である。
図8(a)~
図8(d)に示すように、加振器54、振動部55、点押し治具58、金属リング57および開口59の中心Cはほぼ一致している。
【0039】
図9は、面押し実験装置の配置を示す断面図である。
図9に示すように、面押し実験装置では、金属板52に開口は設けられておらず、金属板52上に直接加振器54が配置されている。加振器54上に1kgの錘が配置されている。その他の構成は
図8(a)の点押し実験装置と同じであり説明を省略する。
【0040】
以下、実験条件を示す。
クッション部材50の幅W21:300mm
クッション部材50の高さH21:60mm
パッド12、14の幅W22
パッドA:40mm×40mm
パッドB:160mm×40mm
パッド12、14の高さH22:8mm
金属板52の幅W23:300mm
点押し治具58の幅W24:10mm
振動部55の振動:10Hzの正弦波
クッション部材50の材料:発泡ウレタン
パッド12、14の材料:ポリエチレン
空間11、13:空気
【0041】
表1は、前述の小さいパッドAおよび大きいパッドBにおいて、パッドAおよびBの中心と点押し治具58および金属板52の中心をほぼ一致させたときの差圧センサ20の出力値を示す表である。
【表1】
【0042】
差圧センサ20の出力値mVppは、プラス側ピークからマイナス側ピークまでの電圧差を示している。「差圧」は、差圧センサ20の検出結果である。サイズの異なるパッドAおよびパッドBを採用し、それぞれ
図8(a)~
図8(d)の点押し、
図9の面押しの加振器54で測定したものである。なお、どちらとも1kgの錘56が配置されている。また、「空間11」は、空間11(すなわち
図1の空間21)の圧力による差圧センサ20の検出結果であり、空間23は空間13(パッド14)には接続されず開放されている。つまり、
図8(a)~
図8(d)および
図9の点押しと面押しを採用し、チューブ27に栓をし、パッド14の圧力はパッド12と同じ圧力で維持される。空間23は、チューブ27と接続せずに、開放されている。よってパッド12に加わる振動だけが、差圧センサ20に加わる。「空間13」は、空間13(すなわち
図1の空間23)の圧力による差圧センサ20の検出結果であり、空間21は空間11には接続されず開放されている。同様に、
図8(a)~
図8(d)および
図9の点押しと面押しを採用し、チューブ26に栓をし、パッド12の圧力は、パッド14と同じ圧力で維持される。空間21は、チューブ26と接続せずに、開放させている。よってパッド14に加わる振動だけが、差圧センサ20に加わる。「空間11-空間13」は、「空間11」の出力値と「空間13」の出力値との差である。
【0043】
表1に示すように、差圧センサ20の出力値「差圧」の欄の数値と「空間11-空間13」の欄の数値とはほぼ一致している。点押しは、面押しより差圧センサ20の出力値「差圧」が大きい。大きいサイズのパッドBでは、点押しの「差圧」は、サイズの小さいパッドAより小さい。大きいサイズのパッドBは、面押しの「差圧」は、パッドAより大きい。このように、点押しの方が面押しよりも出力を大きく取れる。さらにはパッドのサイズが小さいほど点押しは面押しより差圧センサ20の出力値が大きくなる。
【0044】
以上の説明から、面押しよりも点押しの機構の方が差圧センサ20の出力を大きく取れることがわかった。では、点押しの機構である伝達部材16の位置がずれるとどうなるのか、その実験を行った。パッド(12および14)の中心(12aおよび14a)から
図8(a)~
図8(d)に示す点押し治具58の中心Cの位置をシフトさせ、点押しにおける差圧センサ20の出力値を測定した。
【0045】
図10は、実験1における点押し治具の位置に対する差圧センサ20の出力値を示す図である。横軸に示す位置は、パッド(12および14)の中心(12aおよび14a)からの点押し治具58の中心Cまでの位置を示す。位置が0mmのとき、パッド(12および14)の中心(12aおよび14a)と点押し治具58の中心Cとが一致している。パッドAでは位置が20mmのとき、パッドBでは位置が80mmのときが、パッド(12および14)の端に一致する。
【0046】
図10に示すように、位置が0mmのとき、サイズの小さいパッドAの出力値はパッドBの出力値より大きい。これは表1の結果と一致している。このパッドAでは、位置がずれるにつれて出力値は急激に小さくなり、位置が20mmのとき出力値はほぼ0mVppとなる。サイズの大きいパッドBでは、位置が40mm以下での出力値は、パッドAの位置0mmの出力値より小さいものの、位置によらずほとんど変わらない。位置が40mmより大きくなると出力値は徐々に小さくなり、位置が80mmのとき出力値はほぼ0mVppとなる。
【0047】
実験1をまとめると、表1のように、
1.パッドの平面形状が大きくなると、点押しの出力値が小さくなり、面押しの出力値が大きくなる。
2.点押しがバイタル等の振動の成分に相当し、面押しが外乱振動に相当すると仮定すると、パッドの平面形状は小さい方がよい。
3.
図10のように、点押し位置をパッドの中心とすることで、出力値を大きくとれる。
4.パッドの平面形状が大きいと中心を点押ししたときの出力値は小さいが、点押し位置が中心からずれても出力値はあまり変化しない。
このように、パッドは小さい方がバイタル等の振動の検出精度は高くなるが、位置ずれによる許容範囲が狭くなってしまう。被験者のバイタル等の振動の振動源の面積は小さいため、被験者の振動源がパッドの中心に重ならないと、検出精度が低くなる。
【0048】
さらに整理して説明する。つまり、バイタル等の振動を検出するには、人体(例えば臀部)の血管の位置とパッド12の中心が一致して、さらには点押し機構を採用し、その点押しの中心も一致させることで、パッド12の体積の変化率を最大化でき、センサ(ここでは差圧センサ)の出力も最大化ができる。しかし、人体は、例えば運転者であり、運転者が座席シートに座る位置は、変化する。そのため、運転者の血管の位置とパッド12の中心を一致させることは、かなり難しい。一方、
図2(a)~
図2(c)の構成をとれば、前述した問題が解決される。
図2(a)~
図2(c)を見ると、上のパッド12と下のパッド14に、伝達部材16および18がそれぞれ設けられている。具体的には伝達部材16である平板16aに軸心16bが設けられている。上の構造で説明すれば、平板16aと一体で軸心16bが設けられている。この軸心16bがパッド12を点押ししている。つまりこの軸心16bの中心とパッド12の中心12aとが大きくずれない限り、センサの出力が大きく取れる。
【0049】
一方、運転者が座席シートに座るときの、血管の位置ずれは、平板16aのサイズがパッド12より大きいことで解決される。この平板16a上のクッション部材に、人体の臀部の一部が当接すれば、血管からのバイタル等の振動は、上方から平板16aに伝達される。その結果、平板16aから軸心16bおよび軸心16bからパッド12の上面にその振動が伝わる。軸心16bの中心がパッド12の中心と一致していることで、センサの出力は大きく取れることになる。下の平板18a、軸心18bおよびパッド14の位置関係および効果も同じであり説明を省略する。なお、軸心16bおよび18bは、それぞれ平板16aおよび18aと同一材料で一体でなくてもよい。また軸心16bおよび18bの中心とパッド12および14の中心12aおよび14aとのずれは、ある程度許容される。
【0050】
バイタル等の振動は、ドライブノイズ等の外乱振動から比べると小さい。その振動は、上の平板16aおよび軸心16bを介しパッド12に伝わる。下の平板18aからパッド14へのバイタル等の振動の伝達はほとんどないとみなせる。一方ドライブノイズなどの外乱振動は、バイタル等の振動から比べるとかなり大きい。このため、外乱振動は、上の平板16aと下の平板18aに、ほぼ同じレベルで伝達する。よって、差圧センサ20では、この外乱振動はキャンセルされて、バイタル等の振動が抽出できる。なお、
図1~
図2(c)に示すように、実施例1は、積層された二つのパッド12および14と一つの差圧センサ20で構成されている。しかし
図2(b)において、パッドを一つにしてもよい。この場合、この一つのパッドの上と下には平板16aおよび18aが設けられ、少なくとも一方の平板とパッドの間に軸心が設けられた形でもその効果は大である。その際、センサは差圧型でなくてもよい。
【0051】
外乱振動に起因する空間11および13内の気体圧力の振動振幅をほぼ同じにするため、パッド12と14の平面形状は略同じであり、体積は略同じであることが好ましい。伝達部材16と18(軸心16bと18b)の平面形状は略同じであることが好ましい。
【0052】
[実験2]
伝達部材16および18の軸心16bおよび18bの平面形状の大きさを変えバイタルの振動と外乱振動のS/N(Signal/Noise)比を測定した。実施例1の検出装置を
図3および
図4のようにカーシート41に設置した。被験者48がカーシート41に着座した。これにより、バイタルの振動は被験者の臀部から検出装置に伝わる。外乱振動として、カーシート41下に加振器を設置した。加振器は周波数が20Hzで振幅が2000mVの正弦波振動をカーシート41に加えた。
【0053】
その他の実験条件は以下である(各寸法については
図2(a)~
図2(c)参照)。
クッション部材50の幅W21:300mm
クッション部材50の高さH21:60mm
パッド12
平面形状:正方形
幅W2a:W2ax=W2ay=40mm
高さH2a:8mm
パッド14
平面形状:正方形
幅W2b:W2bx=W2by=40mm
高さH2b:8mm
平板16a
平面形状:正方形
幅W1a:W1ax=幅W1ay=90mm
高さH1a:2mm
平板18a
平面形状:正方形
幅W1b:W1bx=W1by=110mm
高さH1b:2mm
軸心16b
平面形状:円形
幅W3a:W3ax=W3ay
高さH3a:2mm
軸心18b
平面形状:円形
幅W3b:W3bx=W3by
高さH3b:2mm
支持部材15
平面形状:正方形
幅W4:W4x=W4y=15mm
高さ:H2a+H2b+H3a+H3b=20mm
クッション部材50の材料:発泡ウレタン
パッド12、14の材料:ポリエチレン
伝達部材16、18の材料:塩化ビニル
支持部材15の材料:塩化ビニル
空間11、13:空気
【0054】
軸心(16bおよび18b)の幅(直径)を変えS/N比を測定した。軸心(16bおよび18b)の中心はパッド(12および14)の中心(12aおよび14a)に一致させた。
図11(a)から
図11(c)は、実験2におけるS/N比を示す図である。S/N比はdB表示であり、大きい方(0に近い方)が外乱振動に対するバイタルの振動が大きく、検出精度が高いことを示している。なお、後述する
図14(a)~
図14(d)に示すように、軸心は、平面視で円形の円筒を想定しているが、円形以外の多角形などでもよい。
【0055】
図11(a)では、軸心(16bおよび18b)の幅(W3aとW3b)を同じにした。パッド(12および14)の平面視の幅(W2aおよびW2b)は40mm×40mmであり、W3a=W3b=50mmでは軸心(16bおよび18b)がパッド(12および14)より大きい。このとき、S/N比は約-50dBであり、最も低い。パッドの幅より小さい軸心の幅が、20mmや30mmでは、S/N比は大きくなるが、10mmではS/N比はやや悪くなる。
【0056】
図11(b)では、軸心16bの幅W3aを軸心18bの幅W3bより小さくしている。W3aが10mmおよびW3bが50mmではS/N比は最も大きい。W3aが30mmになるとS/N比が小さくなる。W3bが30mmとなってもS/N比は小さくなる。
図11(c)では、軸心16bの幅W3aを軸心18bの幅W3bより大きくしている。W3aが50mmおよびW3bが10mmではS/N比は約-50dBであり、W3aおよびW3bが50mmのときと変わらない。W3bが30mmになるとS/N比が大きくなる。W3aが30mmとなってもS/N比は大きくなる。要するに、
図11(b)で示したように、W3a=10mm、W3b=50mmのときが最もS/N比が大きくなり、バイタルの振動を検出しやすい組み合わせと言える。一方で、
図11(c)で示したように、W3a=50mm、W3b=10mmのときが最もS/N比が小さく、バイタル測定しにくい組み合わせと言える。
【0057】
実験2における軸心16bがパッド12の上面に接する面積を算出する。パッド12の平面視の面積は40mm×40mm=1600mm2である。幅W3aが50mmのとき、パッド12の4隅以外のパッド12の上面は軸心16bに接している。すなわち、パッド12の平面視の面積と軸心16bがパッド12の上面に接する面積はほぼ同じである。幅W3aが10mm、20mmおよび30mmのとき、軸心16bがパッド12の上面に接する面積は、それぞれ79mm2、314mm2、707mm2であり、いずれもパッド12の平面視の面積より小さい。
【0058】
図11(a)から
図11(c)のように、軸心16bの幅W3aが10mm、20mm、30mmのとき、軸心16bの幅W3aが50mmのときよりS/N比が大きい。すなわち、被験者のバイタルの振動が上方から伝わるとき、軸心16bがパッド12の上面に接する面積をパッド12の平面視の面積より小さくすることにより、S/N比を大きくできる。軸心16bがパッド12の上面に接する面積は、パッド12の平面視の面積の1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下がさらに好ましい。
【0059】
図11(a)における幅W3aが10mmおよび30mmのときと、
図11(b)における幅W3aが10mmおよび30mmのときを比較すると、軸心18bがパッド14の下面に接する面積を軸心16bがパッド14に接する面積より大きくすることにより、S/N比を大きくできる。軸心18bがパッド14の下面に接する面積は軸心16bがパッド14に接する面積の2倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましい。
【0060】
実験1の
図8(a)から
図8(d)と同様の点押しの実験装置を用い、クッション部材50内に実施例1の検出装置を配置し、パッド12および14の中心12aおよび14aから点押し治具58の中心C位置をシフトさせ、点押しにおける差圧センサ20の出力値を測定した。
図12は、実験1および2における点押し治具の位置に対する差圧センサ20の出力値を示す図である。実験1のパッドAは、実験1の
図10のパッドAと同じデータである。実験2は、軸心16bおよび18bの幅W3aおよびW3bがそれぞれ10mmおよび30mmのときの測定結果である。ドットは測定点を示し、線はドットをつなぐ直線である。
【0061】
図12に示すように、実験2では、実験1のパッドAとパッド12および14の大きさは同じであるが、点押し位置が中心12aおよび14aからずれても出力値は低下しない。このように、被験者のバイタル等の振動の振動源の位置に対する許容値が実験2では実験1のパッドAより大きい。このように、実施例1では、伝達部材16および18を設けることで、差圧センサ20の出力値が最大となるパッド12の中心に振動を伝えることができ、かつ、振動検出部10のクッション部材への過度な沈み込みを防ぐため、被験者のバイタル等の振動源の位置が変わってもバイタル等の振動のS/N比を向上できる。
【0062】
図13(a)から
図13(c)は、実施例1における伝達部材の例を示す振動検出装置の断面図である。
図13(a)に示すように、下の伝達部材18は平板により形成され軸心を含まなくてもよい。
図13(b)に示すように、下の軸心18bの幅W3bは、上の軸心16bの幅W3aより大きくてもよい。
図13(c)に示すように、軸心(16bおよび18b)がパッド(12および14)に接する領域は、軸心16bおよび18bが平板16aおよび18aに接する領域より小さくてもよい。この構造であれば、平板の振動を軸心に効率よく収束できる。
【0063】
実験2の
図11(a)から
図11(c)の結果から、
図13(a)のように、伝達部材18は軸心18bを含まない、または
図13(b)のように、幅W3bは幅W3aより大きいことが好ましい。
図13(c)のように、軸心16bおよび18bを錐台形状としてもよい。これにより平板16aおよび18aに加わった振動がパッド12および14に効率よく伝わる。
【0064】
伝達部材16はパッド12上に平板16aを備える。これにより、被験者のバイタル等の振動を平板16aで受けることができる。平板16aと被験者との間には、発泡樹脂等のクッション部材が設けられている。伝達部材16は平板16aからパッド12の方向に突出し先端がパッド12に接する軸心16b(突出部)を備える。これにより、平板16aが受けた振動をパッド12に伝達することができる。また、伝達部材16がパッド12に接する面積を小さくできるため、
図11(a)~
図11(c)のように、S/N比を向上できる。このとき、被験者の臀部をパッド12の中心12aに重なるように合わせなくともよい。軸心16bはパッド12の中心12aにほぼ一致して設けられている。このため、平板16aのどの部分に被験者の臀部が当たっていたとしても、軸心16bが存在することにより、パッド12の中心12aにバイタル等の振動を伝えることができる。よって、バイタル等の振動検出精度が向上する。なお、伝達部材16における平板と突出部とは、一体として形成されていてもよいし、別の部材でもよい。
【0065】
伝達部材18はパッド14下に平板18aを備える。これにより、ドライブノイズ等の外乱振動をパッド14および12に伝達することができる。また、振動検出部10がクッション部材等に沈み込むことを抑制できる。伝達部材18は平板18aからパッド14の方向に突出し先端がパッド14に接する軸心18b(突出部)を備えてもよい。なお、平板16aおよび18aは、平面視においてパッド12および14と重なる領域およびパッド12および14を囲む領域が平板状であればよい。例えば平板16aおよび18aの周縁部が上または下に湾曲していてもよい。
【0066】
平面視においてパッド12および14を囲む領域において、伝達部材16と18とは空気等の空隙を介し対向することが好ましい。これにより、伝達部材16および18が受けた振動は、伝達部材16および18のみを介しパッド12および14に伝達される。よって、バイタル等の振動のS/N比を向上できる。
【0067】
図14(a)から
図14(f)は、実施例1における軸心の例を示す平面図である。
図14(a)に示すように、軸心16bおよび18bの平面形状は、
図2(a)のような円形でなくとも正方形、長方形等の四角形、または四角形以外の多角形でもよい。
図14(b)に示すように、軸心16bおよび18bの平面形状は楕円形、長円形または卵型のように、外周が曲線でもよい。軸心16bおよび18bが多角形の場合、外周の頂点においてパッド12および14に応力が集中して加わる可能性がある。軸心16bおよび18bの平面形状の外周が曲線の場合、パッド12および14に加わる応力の集中が抑制できる。
【0068】
図14(c)および
図14(d)は、
図13(d)の軸心16bおよび18bに相当する。
図14(c)では、軸心16bおよび18bの平面形状は楕円であり、
図14(d)では、軸心16bおよび18bの平面形状は四角形である。領域16dおよび18dは軸心16bおよび18bがパッド12および14に接する領域である。
図14(a)から
図14(d)のように、軸心16bおよび18bの平面形状は適宜設定できる。軸心16bおよび18bの立体形状は円柱または多角形柱のような柱状形状でもよいし、錐台形状でもよい。軸心16bと18bとの平面形状および立体形状は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
軸心16bおよび18bがパッド12の上面およびパッド14の下面にそれぞれ接する領域は、パッド12の平面視における中心12aおよびパッド14の平面視における中心14aを含む。これにより、実験2の
図12のように、伝達部材16も振動は効率よくパッド12に伝わる。軸心16bおよび18bがパッド12の上面およびパッド14の下面にそれぞれ接する領域の中心は中心12aおよび14aと略一致することが好ましい。
【0070】
図14(e)に示すように、軸心16bおよび18bは各々2個設けられている。軸心16bおよび18bはパッド12および14の中心12aおよび14aを挟むように中心12aおよび14aに略対称に設けられている。これにより、軸心16bおよび18bの重心は中心12aおよび14aと略一致する。よって、伝達部材16および18の振動を効率よくパッド12および14に伝えることができる。
【0071】
図14(f)に示すように、軸心16bおよび18bは各々4個設けられている。軸心16bおよび18bはパッド12および14の中心12aおよび14aを囲むように中心12aおよび14aに略対称に設けられている。これにより、軸心16bおよび18bの重心は中心12aおよび14aとほぼ一致する。よって、伝達部材16および18の振動を効率よくパッド12および14に伝えることができる。軸心16bの個数と軸心18bの個数とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
図15(a)から
図15(f)は、実施例1における伝達部材およびパッドの例を示す平面図である。
図15(a)に示すように、伝達部材16および18の平面形状は、
図2(a)のような長方形でなく、正方形でもよい。
図15(b)に示すように、伝達部材16および18の平面形状は円形、楕円形、長円形または卵型のように、外周が曲線でもよい。
図15(c)に示すように、伝達部材16および18の平面形状は、+型、X型または星形でもよい。例えば伝達部材16および18の平面形状を+型とすると、被験者が前方に姿勢を崩して着座、被験者がシートバック側に重心をかけて着座、および被験者が右側または左側にずれて着座しても、被験者のバイタル等の振動の振動源の振動をパッド12および14に効率よく伝えることができる。さらに、シートクッション44内のクッション部材50を除去する体積を小さくできるため、シートクッション44の強度を確保できる。伝達部材16と18との平面形状および大きさは同じもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
図15(d)に示すように、パッド12および14の平面形状は、
図2(a)のような略正方形でなく、略長方形でもよく、4角形以外の多角形状でもよい。
図15(e)に示すように、パッド12および14の平面形状は略円形でもよい。
図15(f)に示すように、パッド12および14の平面形状は略楕円形、長円形状または卵型でもよい。このように、パッド12および14の平面形状は外周が曲線でもよい。パッド12と14の平面形状は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0074】
図16(a)から
図16(f)は、実施例1における支持部材の配置の例を示す平面図である。
図16(a)に示すように、支持部材15は伝達部材16および18の四隅に2個ずつ設けられている。このように、伝達部材16および18の4隅に各々複数の支持部材15が設けられていてもよい。
図16(b)に示すように、支持部材15は、伝達部材16および18の4辺の中央付近に設けられていてもよい。伝達部材16および18の4辺の中央付近に各々複数個の支持部材15が設けられていてもよい。
図16(c)に示すように、支持部材15は伝達部材16および18の対向する2辺のうち一方の辺の両端部と2辺の他方の辺の中央付近に設けられている。
【0075】
図16(d)に示すように、支持部材15は伝達部材16および18の対向する2辺に沿って設けられている。
図16(e)に示すように、支持部材15は伝達部材16および18の対向する2辺のうち両端部を除く領域に設けられている。
図16(f)に示すように、支持部材15は伝達部材16および18の対向する2辺のうち一方の辺に沿って設けられ、2辺のうち他方の辺の中央部に設けられている。
【0076】
支持部材15が伝達部材16と18との間に設けられ、伝達部材16と18を接続することで、被験者が着座して体重が振動検出部10に加わっても振動検出部10の耐久性を高めることができ、振動検出部10の破損を抑制することができる。支持部材15が平面視においてパッド12および14を囲むように設けられることで、振動検出部10の耐久性を高めることができる。パッド12および14を360°囲むように支持部材15が設けられると、伝達部材16および18の振動が妨げられてしまう。そこで、支持部材15は、平面視においてパッド12および14を囲む一部に設けられ、一部に設けられていないことが好ましい。例えば、パッド12および14の中心に対し支持部材15を対称に設けることが好ましい。
【0077】
バイタル等の振動は、例えば呼吸または脈拍等の振動である。ドライブノイズは、例えば、エアコンの風、エンジン音、人体の体動およびロードノイズ(道路からのノイズ)の少なくとも1つを含む。体動とは、運転操作などの乗車中の運転手の動きのことである。車椅子および移動式ベッドが移動すると、車両と同様のドライブノイズが生じるため被験者のバイタル等の振動を検出することが難しくなる。よって、車椅子などの座席シートに座った被験者からのバイタル等の振動の検出、または移動式ベッドに横たわる被験者からのバイタル等の振動の検出に実施例1を用いてもよい。
【0078】
被験者がシートに着席する場合、バイタル等の振動源としては臀部が最もふさわしい。そこで、
図4のように、パッド12および14は被験者の臀部など荷重がかかる人体部位に(例えば右臀部48aまたは左臀部48b)に重なるように設けられることが好ましい。パッド12および14は、被験者の大腿部等のバイタル等の振動源に重なるように設けられていればよい。
【0079】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。