IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-三次元積層造形装置 図1
  • 特開-三次元積層造形装置 図2
  • 特開-三次元積層造形装置 図3
  • 特開-三次元積層造形装置 図4
  • 特開-三次元積層造形装置 図5
  • 特開-三次元積層造形装置 図6
  • 特開-三次元積層造形装置 図7
  • 特開-三次元積層造形装置 図8
  • 特開-三次元積層造形装置 図9
  • 特開-三次元積層造形装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106332
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】三次元積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20220712BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220712BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220712BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220712BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20220712BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B22F3/16
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/153
B29C64/245
B22F3/105
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001226
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇行
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL72
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】チャンバーに設けられた窓を、有色のフィルムを用いることなく保護することができる三次元積層造形装置を提供する。
【解決手段】三次元積層造形装置は、三次元の造形物を形成するためのステージが内部に配置されるチャンバー12と、チャンバー12の内部を観察するためにチャンバー12に設けられた窓39と、チャンバー12の内部に配置されて窓39を開閉するシャッター42と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元の造形物を形成するためのステージが内部に配置されるチャンバーと、
前記チャンバーの内部を観察するために前記チャンバーに設けられた窓と、
前記チャンバーの内部に配置されて前記窓を開閉するシャッターと、
を備える三次元積層造形装置。
【請求項2】
前記シャッターを動作させるための駆動源と、
あらかじめ設定された条件に基づいて前記駆動源を駆動することにより、前記シャッターの動作を制御する制御部と、
を備える請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項3】
前記シャッターが着脱可能である
請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ステージ上に一層分の粉末が敷き詰められるたびに繰り返される複数の工程のうち、所定量以上の汚染物質の発生が見込まれる工程においては前記シャッターによって前記窓を閉じるように、前記シャッターの動作を制御する
請求項2に記載の三次元積層造形装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ステージ上に一層分の粉末が敷き詰められるたびに繰り返される複数の工程のうち、所定以上の熱量の発生が見込まれる工程においては前記シャッターによって前記窓を閉じるように、前記シャッターの動作を制御する
請求項2に記載の三次元積層造形装置。
【請求項6】
前記シャッターの開閉指示をユーザーから受け付ける指示受付部を備え、
前記制御部は、前記指示受付部が受け付けた前記開閉指示にしたがって前記シャッターの動作を制御する
請求項2~5のいずれか一項に記載の三次元積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ステージ上に敷き詰められた金属の粉末に電子ビームを照射して粉末を溶融および凝固させるとともに、凝固させた層をステージの移動により順に積層させて三次元の造形物を形成する三次元積層造形装置が開発されている。
【0003】
三次元積層造形装置に関して、たとえば特許文献1には、真空チャンバーに窓を設け、この窓を通してパウダーヘッドにおける表面層の温度分布を記録する技術が記載されている。また、特許文献1には、窓をフィルムによって保護し、このフィルムを窓に沿って送ることにより、窓の透明性を維持する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003-531034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術には次のような課題がある。
三次元積層造形装置で粉末を溶融させる場合、チャンバーの内部は高温になるため、窓を保護するフィルムには耐熱性が求められる。しかし、一般に、耐熱性を有するフィルムは有色であるため、チャンバー内部の観察には不向きである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、チャンバーに設けられた窓を、有色のフィルムを用いることなく保護することができる三次元積層造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る三次元積層造形装置は、三次元の造形物を形成するためのステージが内部に配置されるチャンバーと、チャンバーの内部を観察するためにチャンバーに設けられた窓と、チャンバーの内部に配置されて窓を開閉するシャッターと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チャンバーに設けられた窓を、有色のフィルムを用いることなく保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る三次元積層造形装置の構成を概略的に示す側断面図である。
図2図1に示す三次元積層造形装置をA方向から見た概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る三次元積層造形装置の主要部を示す縦断面図である。
図4】シャッターによって窓を閉じた状態を示す図である。
図5】シャッターによって窓を開けた状態を示す図である。
図6】シャッター機構の配置を示す側断面概略図である。
図7】シャッター機構の配置をチャンバーの上壁よりも上方から見た斜視図である。
図8】シャッター機構の配置をチャンバーの上壁よりも下方から見た斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係るシャッター制御回路の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の実施形態に係る三次元積層造形装置を用いた造形物の形成方法を工程順に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る三次元積層造形装置の構成を概略的に示す側断面図である。図2は、図1に示す三次元積層造形装置10をA方向から見た概略図である。
以降の説明では、三次元積層造形装置の各部の形状や位置関係などを明確にするために、図1の左右方向をX方向、図1の奥行き方向をY方向、図1の上下方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。また、X方向およびY方向は水平方向に平行な方向であり、Z方向は鉛直方向に平行な方向である。方向の定義は、他の図でも同様である。
【0012】
図1に示すように、三次元積層造形装置10は、チャンバー12と、ビーム照射装置14と、粉末供給装置16と、造形テーブル18と、造形ボックス20と、ステージ22と、ステージ移動装置24と、を備えている。粉末供給装置16、造形テーブル18およびステージ22は、チャンバー12の内部に配置されている。
【0013】
チャンバー12は、図示しない真空ポンプによってチャンバー内の空気を排気することにより、真空状態を作り出すチャンバー、すなわち真空チャンバーである。チャンバー12は、上壁12a、側壁12bおよび底壁12cを有している。上壁12aおよび底壁12cは、Z方向で対向している。
【0014】
ビーム照射装置14は、造形面32aに電子ビーム15を照射する装置である。造形面32aは、ステージ22上に敷き詰められる粉末32の上面に相当する。ビーム照射装置14は、電子ビームの発生源となる電子銃26と、電子銃26が発生した電子ビーム15を制御する光学系27とを備える。
【0015】
光学系27は、集束レンズ28と、対物レンズ29と、偏向レンズ30とを備えている。集束レンズ28は、電子銃26が発生する電子ビーム15を集束させるレンズである。対物レンズ29は、集束レンズ28で集束させた電子ビーム15を造形面32aに合焦させるレンズである。偏向レンズ30は、対物レンズ29によって合焦させた電子ビーム15を造形面32a上で走査させるために電子ビーム15を偏向するレンズである。なお、ビームは電子ビームに限らず、レーザービームであってもよい。また、光学系27における各レンズ28,29,30の配置は必要に応じて変更可能であり、光学系27の構成についても必要に応じて変更可能である。
【0016】
ビーム照射装置14は、チャンバー12の上壁12aに取り付けられている。ビーム照射装置14は、電子銃26および光学系27の中心軸31がZ方向と平行となるように配置されている。ビーム照射装置14の下端部にはビーム出射口34が設けられている。ビーム出射口34は、光学系27によって制御された電子ビーム15を出射させる開口である。すなわち、電子ビーム15は、このビーム出射口34から出射される。ビーム出射口34は、電子ビーム15を制御する光学部品(レンズ等)に形成されていてもよいし、光学部品を保持する筐体に形成されていてもよい。
【0017】
ビーム出射口34は、光学系27の中心軸方向から見て円形に形成されている。ビーム出射口34は、電子ビーム15の進行方向の上流側から下流側に向かって徐々に直径が大きくなる形状、すなわちラッパ状に形成されている。ビーム出射口34をラッパ状に形成する理由は、偏向レンズ30による電子ビーム15の偏向を許容するためである。具体的には、ビーム出射口34は、偏向レンズ30によって電子ビーム15を偏向するときに、電子ビーム15がビーム出射口34の内周面34aに干渉(接触)しないよう、その内周面34aが中心軸31に対して所定の角度で傾斜している。
【0018】
ビーム照射装置14はカバー部材36を備えている。カバー部材36は、ビーム出射口34の内周面34aを覆う部材であり、ビーム出射口34の形状にあわせてラッパ状に形成されている。カバー部材36は、後述する蒸発物質がビーム出射口34の内周面34aに付着することを防止する部材である。カバー部材36は、内周面34aの全面を覆っている。光学系27を構成する部品は耐熱温度に制限があるため、あまり高温にすることはできない。これに対し、ビーム出射口34の内周面34aをカバー部材36によって覆った場合は、光学系27に対してカバー部材36が断熱(遮熱)効果を発揮する。このため、光学系27の構成部品を熱から保護することができる。
【0019】
粉末供給装置16は、造形物38の原材料となる金属の粉末32を造形テーブル18上に供給する装置である。粉末供給装置16は、ホッパー16aと、粉末投下器16bと、スキージ16cとを有している。ホッパー16aは、粉末を貯蔵するための容器である。粉末投下器16bは、ホッパー16aに貯蔵されている粉末を造形テーブル18上に投下する機器である。粉末投下器16bは、予め決められた量の粉末を造形テーブル18の端に投下する。スキージ16cは、Y方向に長い長尺状の部材である。スキージ16cは、粉末投下器16bによって投下された粉末を造形テーブル18上に敷き詰める。スキージ16cは、造形テーブル18の全面に粉末を均一に敷き詰めるために、X方向に移動可能に設けられている。
【0020】
造形テーブル18は、チャンバー12の内部に水平に配置されている。造形テーブル18は、粉末供給装置16よりも下方に配置されている。造形テーブル18の中央部には開口部18aが形成されている。開口部18aは、平面視円形または平面視四角形に形成される。本実施形態においては、一例として、開口部18aが平面視円形に形成されているものとする。
【0021】
造形ボックス20は、造形テーブル18の開口部18aの下方に造形用の空間を形成するボックスである。造形ボックス20の上端部は、開口部18aの縁で造形テーブル18の下面に接続されている。造形ボックス20の下端部は、チャンバー12の底壁12cに接続されている。
【0022】
ステージ22は、金属の粉末32を用いて三次元の造形物38を形成するためのステージである。ステージ22は、造形テーブル18の開口部18aの形状にあわせて平面視円形に形成されている。ステージ22は、上面22aおよび下面22bを有する。三次元積層造形装置10によって造形物38を形成する場合、ステージ22の上面22aには所定の厚さで粉末32が敷き詰められる。所定の厚さは、三次元の造形物を一層ずつ積み重ねて形成する場合の一層分の厚さに相当する。ステージ22の上面22aは、Z方向においてビーム照射装置14と対向するように配置されている。ステージ22の下面22bは、Z方向において、チャンバー12の底壁12cと対向するように配置されている。
【0023】
ステージ移動装置24は、ステージ22を上下方向に移動させる装置である。ステージ移動装置24は、シャフト24aと、駆動機構部24bとを備えている。シャフト24aは、ステージ22の下面22bに接続されている。駆動機構部24bは、図示しないモータを駆動源として駆動することにより、シャフト24aと一体にステージ22を上下方向に移動させる。なお、駆動機構部24bについては、シャフト24aをチャンバー12の底壁12cに貫通させることで、チャンバー12の外部に配置することも可能である。
【0024】
図2に示すように、チャンバー12の上壁12aには窓39が設けられている。窓39は、チャンバー12の内部を観察するために設けられる。窓39を利用して行われる観測には、測定を伴う場合と測定を伴わない場合とがあるが、本実施形態においては、いずれの場合でもかまわない。つまり、本実施形態では、観測の目的、観測の仕方、観測の方法は問わない。窓39は、チャンバー12の内部を観測するのに適した透明性が確保されていれば、どのような構成であってもよく、窓19の数も一つに限らず、複数であってもよい。一例を挙げると、窓39は、図示はしないが、チャンバー12の上壁12aに形成された少なくとも一つの開口部を、無色透明なX線遮蔽用鉛ガラスを用いて塞いだ構成になっている。X線遮蔽用鉛ガラスは、チャンバー12の上壁12aに直接取り付けてもよいし、チャンバー12の開口部を塞ぐように上壁12aに取り付けられた観察用の部材に取り付けてもよい。
【0025】
窓39は、ビーム照射装置14とは水平方向(図例ではY方向)に位置をずらして設けられている。チャンバー12の上壁12aの上面には、窓39を通してチャンバー12の内部を観察するための機器(図示せず)が取り付けられる。観察用の機器としては、たとえば、カメラと照明、あるいは各種のセンサ類などが考えられる。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る三次元積層造形装置の主要部を示す縦断面図である。
図3に示すように、チャンバー12の内部にはシャッター42が配置されている。具体的には、シャッター42は、チャンバー12の上壁12aの下面側に配置されている。シャッター42は、モータ44の駆動にしたがって動作することにより、窓39を開閉する。窓39の開閉とは、蒸発物質の付着による汚染やビーム照射に伴う熱などから窓39を保護するために窓39を閉状態とする場合と、窓39を通してチャンバー12の内部を観測するために窓39を開状態とする場合の両方を含む。
【0027】
シャッター42は、チャンバー12の上壁12aを下方から見た場合に、図4に示すように窓39を遮蔽する閉位置と、図5に示すように窓39を露出(開放)させる開位置との間で動作する。本実施形態においては、一例として、シャッター42の動作は回転移動動作となっている。ただし、シャッター42の動作は回転移動動作に限らず、たとえば直線移動動作であってもよいし、図示しないヒンジを用いた開閉移動動作であってもよい。すなわち、シャッター42の動作は、窓39を開閉できる動作であれば、どのような動作であってもよい。
【0028】
本実施形態におけるシャッター42の動作は、連結シャフト46の回転中心軸を中心とした回転移動動作となっている。連結シャフト46は、モータ44の駆動にしたがって回転するシャフトである。モータ44は、シャッター42を動作させるための駆動源の一例として設けられている。連結シャフト46は、シャッター42およびモータ44と共に、シャッター機構40を構成している。以下、シャッター機構40の構成について詳しく説明する。なお、以降の説明において、窓39を開閉することと、シャッター42を開閉することは、実質的に同じ意味である。
【0029】
図6は、シャッター機構40の配置を示す側断面概略図である。また、図7は、シャッター機構40の配置をチャンバー12の上壁12aよりも上方から見た斜視図であり、図8は、シャッター機構40の配置をチャンバー12の上壁12aよりも下方から見た斜視図である。なお、図6における符号11は、チャンバー12の内部で汚染源または発熱源となる部分を模式的に示している。三次元積層造形装置10で造形物を形成する際の主たる汚染源または発熱源は、電子ビーム15が照射されるステージ22上に存在する。
【0030】
図6図8に示すように、シャッター機構40は、上述したシャッター42、モータ44および連結シャフト46の他に、モータマウント部48、回転導入機50およびアーム52を備えている。モータ44は、モータマウント部48に実装されている。
【0031】
モータマウント部48は、複数(本形態例では4つ)の支持脚49によってチャンバー12の上壁12aに取り付けられている。図3に示すように、モータ44の出力軸44aは、カップリング部材54によって連結シャフト46に接続されている。モータ44の出力軸44aと連結シャフト46とは、同軸状に配置されている。これにより、連結シャフト46は、モータ44の出力軸44aと一体に回転する。
【0032】
連結シャフト46は、モータ44とアーム52とを連結するシャフトである。回転導入機50は、チャンバー12内の気密性を維持した状態で、チャンバー12の外部から内部へと連結シャフト46を導入する機器である。アーム52は、連結シャフト46の下端部に取り付けられている。アーム52は、チャンバー12の上壁12aよりも下方に、上壁12aの下面と平行に配置されている。アーム52は、モータ44の駆動によって連結シャフト46が回転した場合に、連結シャフト46の回転にしたがって揺動する。
【0033】
シャッター42は、アーム52に着脱可能に取り付けられている。シャッター42、アーム52および連結シャフト46は、それぞれ帯電防止のために金属(合金を含む)で構成されている。図3に示すように、アーム52には、位置決め部材としての位置決めネジ53が取り付けられている。位置決めネジ53は、シャッター42を位置決めするためのネジである。位置決めネジ53は、アーム52に形成されたネジ孔に位置決めネジ53を噛み合わせて締め込むことにより、アーム52に固定されている。位置決めネジ53の雄ネジ部は、アーム52を貫通して下方に突き出している。これに対して、シャッター42には位置決め用孔55が形成されている。位置決め用孔55は、シャッター42を厚み方向に貫通している。シャッター42は、位置決め用孔55を位置決めネジ53の雄ネジ部に嵌め込むことにより位置決めされる。
【0034】
図4および図5に示すように、シャッター42には切り欠き部56が形成されている。切り欠き部56は、位置決め用孔55を中心に円弧状に形成されている。切り欠き部56には、回転式の留め具57が取り付けられている。留め具57は、ネジ孔57a(図3参照)を有する断面T字形の部材である。留め具57のネジ孔57aには、留めネジ58(図3参照)の雄ネジ部が噛み合っている。留めネジ58の雄ネジ部は、アーム52に形成された貫通孔とシャッター42に形成された切り欠き部56とを通して、留め具57のネジ孔57aに噛み合っている。
【0035】
アーム52にシャッター42を取り付ける場合は、まず、位置決めネジ53の雄ネジ部にシャッター42の位置決め用孔55を嵌め込んだ状態で、シャッター42の切り欠き部56の端を留めネジ58の雄ネジ部に突き当てる。次に、留め具57を一方向(たとえば、時計回り方向)に回して締め付ける。そうすると、シャッター42とアーム52は、留め具57と留めネジ58とによって挟み込まれる。このため、シャッター42は留め具57の締め付け力によって固定される。これにより、シャッター42をアーム52に取り付けることができる。
【0036】
これに対し、アーム52からシャッター42を取り外す場合は、まず、留め具57を他方向(たとえば、反時計回り方向)に回して留め具57の締め付け力を緩める。次に、位置決めネジ53の雄ネジ部を中心にシャッター42を回転させることにより、シャッター42の切り欠き部56を留め具57から離脱させる。これにより、シャッター42をアーム52から取り外すことができる。
【0037】
上記構成からなるシャッター機構40において、チャンバー12の窓39を保護する場合は、モータ44の駆動によってシャッター42を閉じる。これにより、窓39がシャッター42によって遮蔽される。このため、チャンバー12に設けられた窓39を、有色のフィルムを用いることなく保護することができる。また、窓39を通してチャンバー12の内部を観察する場合は、モータ44の駆動によってシャッター42を開ける。これにより、窓39が開放される。このため、チャンバー12に設けられた窓39を通して、チャンバー12の内部を直接、観察することができる。したがって、有色のフィルムを通してチャンバー12の内部を観察する場合に比べて、チャンバー12内の様子や状態を正確に観察することができる。
【0038】
また、シャッター42は、アーム52に対して着脱可能に構成されている。これにより、汚染源から発生した蒸発物質(後述)の付着によってシャッター42が汚れた場合に、シャッター42を交換することができる。
【0039】
図9は、本発明の実施形態に係るシャッター制御回路の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、シャッター機構40のモータ44には制御部60が接続されている。制御部60は、あらかじめ設定された条件に基づいてモータ44を駆動することにより、シャッター42の動作を制御する。制御部60は、たとえば、CPU、ROM、RAMなどのコンピュータハードウェアによって構成される。
【0040】
制御部60には、指示受付部62が接続されている。指示受付部62は、たとえば操作パネルなどのユーザーインタフェースによって構成され、シャッター42の開閉指示を受け付ける。シャッター42の開閉指示には、シャッター42を開ける指示と、シャッター42を閉じる指示とがある。シャッター42を開ける指示とは、上記閉位置に配置されたシャッター42を上記開位置へと移動させて窓39を開放するための指示である。シャッター42を閉じる指示とは、上記開位置に配置されたシャッター42を上記閉位置へと移動させて窓39を遮蔽するための指示である。指示受付部62は、ユーザーから受け付けた開閉指示の内容を制御部60に通知する。これに対し、制御部60は、指示受付部62が受け付けた開閉指示にしたがってシャッター42の動作を制御する。
【0041】
続いて、本発明の実施形態に係る三次元積層造形装置を用いた造形物の形成方法(三次元積層造形方法)について説明する。
三次元積層造形装置10を用いて三次元の造形物を形成する工程は、造形準備工程および造形物取り出し工程を除くと、図10に示すように、ステージ加熱工程→粉末敷き詰め工程→第1予備加熱工程→本溶融工程→第2予備加熱工程の順に行われる。そして、第2予備加熱工程を行なった後は粉末敷き詰め工程に戻り、以降は粉末敷き詰め工程によってステージ22上に一層分の粉末32が敷き詰められるたびに、第1予備加熱工程、本溶融工程および第2予備加熱工程が繰り返される。また、粉末敷き詰め工程から第2予備加熱工程までの工程は、所定の回数(積層数)だけ繰り返される。以下、各工程について順に説明する。
【0042】
(ステージ加熱工程)
ステージ加熱工程においては、ビーム照射装置14によってステージ22の上面22aに電子ビーム15を照射することにより、ステージ22を加熱する。
【0043】
(粉末敷き詰め工程)
粉末敷き込み工程においては、ステージ22の上面22aを造形テーブル18の上面よりも所定量だけ下げた状態で、粉末供給装置16により造形テーブル18上に金属の粉末32を供給する。その際、ホッパー16aに貯蔵されている粉末は、粉末投下器16bによって造形テーブル18上に投下される。造形テーブル18上に投下された粉末32は、スキージ16cの移動によって造形テーブル18上に敷き詰められる。スキージ16cは、移動中にステージ22の上を通過する。このため、ステージ22上にも粉末32が敷き詰められる。
【0044】
(第1予備加熱工程)
第1予備加熱工程においては、ビーム照射装置14によってステージ22上の粉末32に電子ビーム15を照射することにより、粉末32を仮焼結させる。その際、ビーム照射装置14は、目的とする造形物よりも広い範囲、たとえばステージ22上の粉末32全体に電子ビーム15を走査することにより、ステージ22上の粉末32を仮焼結させる。第1予備加熱工程は、パウダーヒート工程とも呼ばれる。
【0045】
(本溶融工程)
本溶融工程においては、ビーム照射装置14によってステージ22上の粉末32に電子ビーム15を照射することにより、粉末32を溶融および凝固させる。その際、ビーム照射装置14は、目的とする造形物の三次元CAD(Computer-Aided Design)データを一定の厚みにスライスした2次元データに基づいて電子ビーム15を走査することにより、ステージ22上の粉末32を選択的に溶融する。電子ビーム15の照射によって溶融した粉末32は、電子ビーム15が通過した後に凝固する。これにより、一層分の造形が完了する。また、本溶融工程において金属の粉末32に電子ビーム15を照射すると、溶融した金属の一部が蒸発物質となって霧状に立ち昇る。蒸発物質は、チャンバー12の内壁などに付着して、そこを汚染する。すなわち、蒸発物質は汚染物質となる。
【0046】
(第2予備加熱工程)
第2予備加熱工程においては、次の層の形成に備えてステージ22上の造形物に電子ビーム15を照射することにより、造形物を昇温させる。第2予備加熱工程は、アフターヒート工程とも呼ばれる。
【0047】
以上述べた工程のうち、制御部60は、所定量以上の汚染物質の発生が見込まれる工程においては窓39をシャッター42によって閉じるように、シャッター42の動作を制御する。所定量以上の汚染物質とは、窓39への付着によってチャンバー12内の観測に悪影響を与えるおそれがある汚染物質をいう。また、制御部60は、所定以上の熱量の発生が見込まれる工程においても窓39をシャッター42によって閉じるように、シャッター42の動作を制御する。所定以上の熱量とは、直接的な熱の入射によって窓39がダメージを受けるおそれがある熱量をいう。本実施形態においては、所定量以上の汚染物質の発生が見込まれる工程、および、所定以上の熱量の発生が見込まれる工程が、いずれも本溶融工程である場合を例に挙げて説明する。
【0048】
制御部60は、次のようにモータ44の駆動を制御する。
まず、制御部60は、ステージ加熱工程、粉末敷き詰め工程、第1予備加熱工程および第2予備加熱工程の各工程では、シャッター42を開位置に配置し、本溶融工程では、シャッター42を閉位置に配置するように、モータ44の駆動を制御する。また、制御部60は、本溶融工程を開始する場合に、モータ44を駆動してシャッター42を開位置から閉位置へと移動させる。これにより、窓39がシャッター42によって覆い隠される。また、制御部60は、本溶融工程を終了する場合に、モータ44を駆動してシャッター42を閉位置から開位置へと移動させる。これにより、窓39が開放される。
【0049】
このように、制御部60によってシャッター42を自動的に開閉することにより、本溶融工程において汚染源や発熱源から窓39を保護することができる。具体的には、本溶融工程で発生する蒸発物質が窓39に付着しないよう、シャッター42によって窓39を保護することができる。また、本溶融工程で発生する熱が窓39に直接入射しないよう、シャッター42によって窓39を保護することができる。また、制御部60は、あらかじめ設定された条件に基づいてシャッター42の動作を制御する。このため、ユーザーが手動操作でシャッター42を動作させる必要がない。したがって、ユーザーの介在なしに窓39を汚染源や発熱源から保護することができる。特に、三次元積層造形装置10を用いて造形物を形成する場合は、粉末32を積層する回数が非常に多いため、造形を開始してから終了するまで数時間から数日間を要する場合がある。そのような場合でも、あらかじめ決められた条件に基づいて制御部60がシャッター42を自動的に開閉することにより、チャンバー12の窓39を汚れや熱から確実に保護することができる。
【0050】
また、指示受付部62がユーザーからシャッター42の開閉指示を受け付けると、制御部60は、その指示内容を基にモータ44を駆動してシャッター42の動作を制御する。たとえば、シャッター42が閉位置に配置されている状況下で、シャッター42を開ける指示を指示受付部62がユーザーから受け付けると、制御部60は、モータ44を駆動してシャッター42を閉位置から開位置へと移動させる。また、シャッター42が開位置に配置されている状況下で、シャッター42を閉じる指示を指示受付部62がユーザーから受け付けると、制御部60は、モータ44を駆動してシャッター42を開位置から閉位置へと移動させる。
【0051】
このように、ユーザーによるシャッター42の開閉指示にしたがってシャッター42を動作させることにより、ユーザーが所望するタイミングでチャンバー12内を観察したり、窓39を汚染源や発熱源から保護したりすることができる。このため、三次元積層造形装置10の利便性を向上させることができる。
【0052】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0053】
たとえば、上記実施形態においては、本溶融工程を開始する場合に窓39をシャッター42によって閉じるとしたが、シャッター42を閉じるタイミングは、本溶融工程の開始タイミングと必ずしも一致させる必要はなく、本溶融工程を開始する少し前でも少し後でもよい。同様に、シャッター42を開けるタイミングは、本溶融工程の終了タイミングと必ずしも一致させる必要はなく、本溶融工程を終了する少し前でも少し後でもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、シャッター42によって窓39を閉じる工程として、本溶融工程のみを挙げたが、本発明はこれに限らず、本溶融工程以外の工程、たとえば第1予備加熱工程あるいは第2予備加熱工程においても、シャッター42によって窓39を閉じるようにしてもよい。つまり、シャッター42を閉じる対象となる工程は1つに限らず、複数であってもよい。また、各工程に適用されるプロセスパラメータは、金属の粉末32として、どのような材料を用いるかによって異なるため、材料によっては複数の工程でシャッター42を閉じるように制御してもよい。複数の工程でシャッター42を閉じる場合としては、たとえば高融点金属の粉末32を用いる場合が考えられる。
【0055】
また、上記実施形態においては、制御部60によってシャッター42を自動的に開閉する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、ユーザーの手動操作によってシャッター42を開閉する構成を採用してもよい。また、シャッター42を開閉するための駆動源は、モータ以外のアクチュエータであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…三次元積層造形装置
12…チャンバー
22…ステージ
39…窓
42…シャッター
44…モータ(駆動源)
60…制御部
62…指示受付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10