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特開2022-106347ゲートウェイ、同期システム、同期方法、および同期プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106347
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ゲートウェイ、同期システム、同期方法、および同期プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20220712BHJP
   H04W 4/33 20180101ALI20220712BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W4/33
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001251
(22)【出願日】2021-01-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000102739
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 賢徳
(72)【発明者】
【氏名】本田 新九郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 達也
(72)【発明者】
【氏名】仁木 智子
(72)【発明者】
【氏名】中川 知子
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】太田 厚
(72)【発明者】
【氏名】小林 守
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067AA21
5K067AA43
5K067BB37
5K067DD30
5K067EE12
(57)【要約】
【課題】GPS信号を受信できない場所に設置されたゲートウェイであっても、ゲートウェイとデバイスとの同期を実現する。
【解決手段】屋内に設置されるゲートウェイ1Aであって、ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得部11と、所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御部12と、前記制御部12の指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイス2A、2Bに送信する送信部13と、を備え、前記制御部12は、屋内に配置されるゲートウェイ1Aの数に応じて、ビーコンの送信を間引く。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設置されるゲートウェイであって、
ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得部と、
所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御部と、
前記制御部の指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイスに送信する送信部と、を備え、
前記制御部は、屋内に配置されるゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引く
ゲートウェイ。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定の周期のビーコンを送信すべき各タイミングおいて、屋内に配置されるゲートウェイの数に応じて自身に割り当てられたビーコンを送信するタイミングか否かを判別する
請求項1に記載のゲートウェイ。
【請求項3】
前記所定の周期の中には、GPS信号の受信が可能な屋外ゲートウェイのみがビーコンを送信するタイミングがある
請求項1または2記載のゲートウェイ。
【請求項4】
LoRaWANのClass Bの基地局として用いられる
請求項1から3のいずれか1項に記載のゲートウェイ。
【請求項5】
屋内に設置される複数のゲートウェイと、デバイスとを備える同期システムであって、
前記ゲートウェイは、
ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得部と、
所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御部と、
前記制御部の指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイスに送信する送信部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記ゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引き、
前記デバイスは、
複数の前記ゲートウェイから送信されるビーコンの受信を試みる受信部と、
前記受信部がビーコンを受信した場合、前記時刻情報を用いて自身の時刻を更新する同期部と、を備え、
前記同期部は、前記時刻情報から算出されるオフセット時間の後にダウンリンク信号を受信するためのスロットを開放する
同期システム。
【請求項6】
屋内に設置されるゲートウェイが行う、デバイスとの同期方法であって、
ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得ステップと、
所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御ステップと、
前記制御ステップの制御に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンを前記デバイスに送信する送信ステップと、を行い、
前記制御ステップは、屋内に配置されるゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引く
同期方法。
【請求項7】
屋内に設置される複数のゲートウェイと、デバイスとが行う同期方法であって、
前記ゲートウェイは、
ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得ステップと、
所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御ステップと、
前記制御ステップの指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイスに送信する送信ステップと、を行い、
前記制御ステップは、複数の前記ゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引き、
前記デバイスは、
複数の前記ゲートウェイから送信されるビーコンの受信を試みる受信ステップと、
前記受信ステップでビーコンを受信した場合、前記時刻情報を用いて自身の時刻を更新する同期ステップと、を備え、
前記同期ステップは、前記時刻情報から算出されるオフセット時間の後にダウンリンク信号を受信するためのスロットを開放する
同期方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載のゲートウェイとしてコンピュータを機能させる同期プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートウェイ、同期システム、同期方法、および同期プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet of Things)サービスでは、サーバがデバイスに直接、制御指示を送信せずに、デバイスと無線通信を行うゲートウェイが、サーバからの制御指示を中継し、デバイスに送信することがある。
【0003】
例えば、LPWA(Low Power Wide Area)の1つであるLoRaWAN (Long Range Wide Area Network)のクラスBサービスでは、デバイスに対する遠隔指示を、ゲートウェイを介してデバイスに送信している。任意のタイミングで、サーバからの遠隔指示をデバイスに送信するために、ゲートウェイは周期的にビーコンを送信し、デバイスはこのビーコンを受信することで、ゲートウェイとビーコンとの間で時刻同期をとっている。
【0004】
特許文献1、2には、時刻同期に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-086431号公報
【特許文献2】特開2006-074326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LoRaWANでは、屋外に設置されたゲートウェイを前提としている。屋外の各ゲートウェイが、高精度な時刻を示すGPS信号を受信し、全てのゲートウェイが同期した状態で一斉にビーコンを発出する。デバイスは、このビーコンを受信して時刻同期をとることで、デバイスとゲートウェイ間の同期を実現している。これにより、ゲートウェイは、バッテリーセービングのために頻繁に起動およびスリープを繰り返しているデバイスに対して、ビーコン及び、ダウンリンク信号の送信を可能としている。
【0007】
しかしながら、GPS信号を受信できない屋内(例えば地下等)に設置されたゲートウェイでは、GPS信号を用いた同期を実現することができない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、GPS信号を受信できない場所に設置されたゲートウェイであっても、ゲートウェイとデバイスとの同期を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、屋内に設置されるゲートウェイであって、ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得部と、所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御部と、前記制御部の指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイスに送信する送信部と、を備え、前記制御部は、屋内に配置されるゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引く。
【0010】
本発明の一態様の同期システムは、屋内に設置される複数のゲートウェイと、デバイスとを備える同期システムであって、前記ゲートウェイは、ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得部と、所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御部と、前記制御部の指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイスに送信する送信部と、を備え、前記制御部は、複数の前記ゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引き、前記デバイスは、複数の前記ゲートウェイから送信されるビーコンの受信を試みる受信部と、前記受信部がビーコンを受信した場合、前記時刻情報を用いて自身の時刻を更新する同期部と、を備え、前記同期部は、前記時刻情報から算出されるオフセット時間の後にダウンリンク信号を受信するためのスロットを開放する。
【0011】
本発明の一態様は、屋内に設置されるゲートウェイが行う、デバイスとの同期方法であって、ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得ステップと、所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御ステップと、前記制御ステップの制御に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンを前記デバイスに送信する送信ステップと、を行い、前記制御ステップは、屋内に配置されるゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引く。
【0012】
本発明の一態様は、屋内に設置される複数のゲートウェイと、デバイスとが行う同期方法であって、前記ゲートウェイは、ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得ステップと、所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御ステップと、前記制御ステップの指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイスに送信する送信ステップと、を行い、前記制御ステップは、複数の前記ゲートウェイの数に応じて、ビーコンの送信を間引き、前記デバイスは、複数の前記ゲートウェイから送信されるビーコンの受信を試みる受信ステップと、前記受信ステップでビーコンを受信した場合、前記時刻情報を用いて自身の時刻を更新する同期ステップと、を備え、前記同期ステップは、前記時刻情報から算出されるオフセット時間の後にダウンリンク信号を受信するためのスロットを開放する。
【0013】
本発明の一態様は、上記ゲートウェイとしてコンピュータを機能させる同期プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、GPS信号を受信できない場所に設置されたゲートウェイであっても、ゲートウェイとデバイスとの同期を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態の同期システムの構成を示す構成図である。
図2図2は、本実施形態の屋内ゲートウェイとデバイスの構成の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態のビーコンの送信を説明する説明図である。
図4図4は、比較例のビーコンの送信を説明する説明図である。
図5図5は、屋内ゲートウェイの時刻取得処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、屋内ゲートウェイのビーコン送信処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、デバイスの処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、ハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
本実施形態では、地下やビル内部等のGPS信号が受信できない場所に設置されたゲートウェイ(以下「GW 」)を、LoRaWANのクラスBの基地局として用いる場合を例として説明するが、これに限定されない。
【0018】
LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)は、IoT向け通信方式のLPWA(Low Power Wide Area)の1つである。クラスBは、デバイスの消費電力を抑えながら、ダウンリンク信号の応答性を向上した方式である。デバイスは、定期的にアクティブモードになり、ダウンリンク信号を受信するタイミングを作り、GWはそのタイミングに合わせてダウンリンク信号を送信する。このため、一般的なGWは、時刻情報を含むビーコン(同期信号)を、128秒程度の所定の周期でデバイスにブロードキャストする。また、クラスBのデバイスでは、間欠受信モードで稼働しており、消費電力も少ないが、起動とスリープとを繰り返しているため、GWとの高精度な時刻同期が要求される。
【0019】
図1は、本実施形態の同期システムの構成図である。図示する同期システムは、GW1A、1Bと、デバイス2A、2Bと、ネットワークサーバ3と、NTPサーバ4と、GPS衛星5とを備える。
【0020】
ネットワークサーバ3は、GW1A、1Bを介してダウンリンク信号をデバイス2A、2Bに送信し、デバイス2A、2Bを制御する。NTP(Network Time Protocol)サーバ4は、インターネットなどのネットワークを介して時刻を配信する。GPS衛星5は、GPS信号を発出する。
【0021】
本実施形態のGWは、GPS信号が受信できない場所またはGPS信号を受信し難い場所に設置されるGW1A(以下、「屋内GW」)と、GPS信号が受信可能な場所に設置されるGW1B(以下、「屋外GW」)とを含む。すなわち、本実施形態では、屋内GW1Aと、屋外GW1Bとが混在している。GPS信号が受信できない場所または受信し難い場所としては、例えば、地下、建物内部などがある。また、屋外であってもビル街などGPS信号が受信し難い場所に設置されたGWについては、ここでは屋内GW1Aとする。
【0022】
図示する同期システムは、屋内GW1Aと、屋外GW1Bとが混在している場合を例として説明するが、複数の屋内GW1Aのみを備える同期システムであってもよい。
【0023】
屋外GW1Bは、LoRaWANの仕様に従って、GPS衛星5からGPS信号を取得し、自身の内部時計の時刻を高精度に設定する。一方、屋内GW1Aは、GPS信号を受信できない、または、GPS信号を受信し難いため、ネットワークを介して、NTPサーバ4から時刻を取得する。屋内GW1は、NTPのプロトコルを使用してNTPサーバ4に時刻を問い合わせ、自身の内部時計の時刻を設定する。
【0024】
GW1A、1Bは、同一のビーコンをデバイス2A、2Bに向けてそれぞれ送信する。送信タイミングが揃っている場合、ビーコン(厳密にはビーコンの前半部分)には、各GW1A、1Bで共通の内容が設定されるため、デバイス2A、2Bは、衝突した状態で複数のビーコンを受信したとしても、同一内容なので符号誤りは発生しない。
【0025】
具体的には、複数のGW1A、1Bから届くビーコンがデバイス2A、2Bに到着する時間差が、遅延波(伝搬路上で反射物に反射して遅れて届く電波)レベルの時間差(μs)の場合には、デバイス2A、2Bでの符号誤りは発生しないが、遅延波のレベルを大幅に超えると、見かけ上は全く別の信号が衝突したように見えてしまい符号誤りが発生する。
【0026】
すなわち、各GW1A、1Bのビーコンの送信タイミングが揃えば、デバイス2A、2B側でビーコンの衝突が発生せず、デバイス2A、2Bはビーコンを受信することができるが、送信タイミングがずれると、ビーコンの衝突により符号誤りが発生し、デバイス2A、2Bはビーコンを受信できない。
【0027】
屋外GW1BはGPS信号を用いて時刻を設定するため、複数の屋外GW1Bはμs以下の高精度でビーコンの送信タイミングを同期することができる。一方、屋内GW1AはNTPサーバ4を用いて時刻を設定する。NTPサーバ4の時刻の精度はmsオーダーであり、複数の屋内GW1A間、および屋内GW1Aと屋外GW1Bとの間で、ビーコンの送信タイミングを高精度に同期させることができず、デバイス2A、2Bでのビーコン衝突時の符号誤りが発生してしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、NTPサーバ4を用いて時刻を取得する屋内GW1Aが、一定の周期で送信すべきビーコンの送信を、屋内GW1Aの数に応じて間引くことで、ビーコンの衝突を回避する。
【0029】
本実施形態のデバイスは、例えばガスや水道のスマートメータ(IoTデバイス)などであって、屋内デバイス2Aと、屋外デバイス2Bとを含む。屋外デバイス2Bは、屋外GW1Bから送信されたビーコンを受信可能な場所(例えば屋外)に設置されたデバイスである。屋内デバイス2Aは、屋外GW1Bから送信されたビーコンを受信できない、または受信し難い場所(例えば、地下、建物内などの屋内)に設置されたデバイスである。
【0030】
デバイス2A、2Bは、各GW1A、1Bから送信されるビーコンを受信し、GW1A、1Bとの同期を確保する。デバイス2A、2Bは、省電力化のため起動とスリープとを繰り返し、起動時にのみGW1A、1Bを介してネットワークサーバ3から送信されるダウンリンク信号を受信する。
【0031】
図2は、本実施形態における屋内GW1Aおよび屋内デバイス2Aの構成を示す構成図である。屋外GW1Bには、一般的なGWを用いる。また、屋内デバイス2Aは一般的なデバイスであり、本実施形態に伴う従来のデバイスからの変更はない。屋外デバイス2Bは、屋内デバイス2Aと同様である。
【0032】
図示する屋内GW1Aは、時刻取得部11と、制御部12と、送信部13と、通信部14とを備える。
【0033】
時刻取得部11は、インターネットなどのネットワークを介してNTPサーバ4から時刻を取得する。制御部12は、所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する。具体的には、制御部12は、屋内に配置される屋内GW1Aの数に応じて、ビーコンの送信を間引く。制御部12は、所定の周期のビーコンを送信すべき各タイミングおいて、屋内GW1Aの数に応じて自身に割り当てられたビーコンを送信するタイミングか否かを判別してもよい。ビーコンを送信すべき所定の周期の中には、GPS信号の受信が可能な屋外GW1Bのみがビーコンを送信するタイミングを設けてもよい。
【0034】
送信部13は、制御部12の指示に従って、時刻取得部11が取得した時刻を基づく時刻情報を含むビーコンを屋内デバイス2Aに送信する。送信部13は、例えばブロードキャスト送信によりビーコンを送信することができる。
【0035】
通信部14は、ネットワークサーバ3が送信するダウンリンク信号を屋内デバイス2Aに送信する。また、通信部14は、屋内デバイス2Aが送信するアップリンク信号をネットワークサーバ3に送信する。
【0036】
図示する屋内デバイス2Aは、受信部21と、同期部22と、処理部23とを備える。
【0037】
受信部21は、複数のGW1A、1Bから送信されるビーコンの受信を試みる。同期部22は、受信部21がビーコンを受信した場合、ビーコンに含まれる時刻情報を用いて自身の時刻を更新する。また、同期部22は、時刻情報から算出されるオフセット時間の後にダウンリンク信号を受信するためのスロットを開放する。
【0038】
処理部23は、ネットワークサーバ3が送信するダウンリンク信号(制御信号)に応じて、所定の処理を行う。例えば、地震などの大規模災害が発生した場合に、ネットワークサーバ3はガス栓を閉める指示のダウンリンク信号を送信し、GW1Aを介して当該ダウンリンク信号を受信した屋内デバイス2Aはガス栓を閉める。また、屋内デバイス2Aは、例えばセンサであって、ダウンリンク信号の制御に従って、検知したセンシングデータをアップリンク信号としてネットワークサーバ3に送信してもよい。またここでは明示しなかったが、ネットワークサーバ3がガス栓を閉める指示のダウンリンク信号を送信したとき、屋外GW1Bを介して当該ダウンリンク信号を受信した屋外デバイス2Bも同様にガス栓を閉める。
【0039】
次に、屋内GWおよび屋外GWによるビーコンの送信について説明する。
【0040】
図3は、本実施形態の屋内GWが、ビーコンを間引いて送信する送信処理を説明する説明図である。
【0041】
デバイスは、所定の回数M(例えば50回)連続してビーコンを受信できない場合に、非同期状態(同期ハズレ)を検出する。このため、M回以上連続してビーコンが衝突する状況を回避できれば、デバイスは同期状態を維持し続けることが可能である。
【0042】
本実施形態では、複数の屋内GWが存在する場合に、各屋内GWは、自身に割り当てられた周期で定期的にビーコンの送信を間引くことで、各屋内GWのビーコンの送信タイミングをずらす。これにより、屋内GWのビーコンの送信タイミングが、GPS信号を用いた屋外GWの送信タイミングとずれていたとしても、M回以上連続のビーコン衝突を回避することが可能になる。
【0043】
特に複数の屋内GWの全てが、ビーコンの送信を行わないタイミングを確保することで、既存の屋外GWと屋外デバイスには悪影響を与えずに、屋外GWおよび屋内デバイスが混在する中でも安定した動作を実現することができる。
【0044】
本実施形態では、屋内GWは、屋内GWの数に応じて、所定の周期で繰り返し送信すべきビーコンの送信を間引く。例えば、各屋内GWは、以下の剰余演算式の送信タイミングに該当した場合にのみビーコンを送信する。
【0045】
N mod T = = k
Nは、所定の周期で1ずつ加算される屋外GWが送信するビーコンの送信回数を示すカウンタ値である。Tは、屋内GWの数に少なくとも1を加算した値である。kは、各屋内GWに割り当てられる送信タイミングを示す定数である。
【0046】
図3に示す例では、図1に示すように2つの屋内GWと、1つの屋外GWとを有する同期システムとする。図3では、図1に示す屋内GW1Aを、屋内GW-1A-1および屋内GW-1A-2と記載する。
【0047】
そして、T=3(屋内GWの数+1)とし、屋内GW-1A-1にはk=1を、屋内GW-1A-2にはk=2を割り当てる。
【0048】
屋外GWは、全ての送信タイミング(N回目、N+1回目、N+2回目)でビーコンを送信する(S1、S2、S4)。
【0049】
一方、屋内GW-1A-1(k=1)は、送信回数N (Nは3の倍数とする)を、3で割った余りが1になったとき(N+1回目)にのみ、ビーコンを送信する(S3)。すなわち、屋内GW-1A-1は、送信回数Nを3で割った余りが0および2の場合は(N回目、N+2回目)、ビーコンを間引いて送信しない。
【0050】
同様に、屋内GW-1A-2(k=2)は、送信回数Nを3で割った余りが2になった場合(N+2回目)にのみビーコンを送信し(S5)、送信回数Nを3で割った余りが0および1の場合(N回目、N+1回目)は、ビーコンを間引いて送信しない。
【0051】
送信回数Nを3で割った余りが0になった場合(N回目)では、前述の通り屋外GWからのビーコンのみが送信される。このとき、屋外デバイスは、屋外GWから送信されたビーコン(S1)のみを受信することができる。屋内GWからのビーコンが送信されないため、屋外デバイスでは、ビーコンの衝突が発生せず、屋外GWからの高精度なビーコンの受信機会を確保することができる。なお、複数の屋外GWがそれぞれビーコンを送信する場合であっても、屋外GWはGPS信号を用いた高精度な時刻同期を確保しているため、ビーコンの衝突は発生せず、屋外デバイスは、複数の屋外GWから送信されたビーコンを受信することができる。
【0052】
一方、屋内デバイスは、屋外GWからの電波が届かない(電波が微弱な)不感知エリアに設定されているため、N回目においては、屋外GWが送信するビーコンを受信することができない。
【0053】
N+1回目においては、屋外GWからのビーコン(S2)と、屋内GW-1A-1からのビーコン(S3)とが送信される。屋外デバイスでは、屋内GW-1A-1からのビーコン(S3)の電波が微弱な場合には、結果として屋外GWからのビーコン(S2)のみを受信することになりビーコンの衝突が回避されビーコンを受信できるが、屋内GW-1A-1からのビーコン(S2)の電波が微弱でない場合には、ビーコンの衝突が発生し、ビーコンを受信できない可能性が高い。
【0054】
一方、屋内デバイスは、屋外GWからのビーコン(S2)は受信できず、屋内GW-1A-1からの1つのビーコン(S3)のみを受信するため、ビーコンの衝突は発生しない。したがって、屋内デバイスは、N+1回目で屋内GW-1A-1からのビーコン(S3)を受信することができる。
【0055】
N+2回目においては、屋外GWからのビーコン(S4)と、屋内GW-1A-2からのビーコン(S5)とが送信される。屋外デバイスは、N+1回目と同様に、屋内GW-1A-2からのビーコン(S5)の電波が微弱な場合には、屋外GWのビーコン(S4)を受信できるが、屋内GW-1A-2からのビーコン(S5)の電波が微弱でない場合には、ビーコンの衝突が発生し、ビーコンを受信できない可能性が高い。
【0056】
一方、屋内デバイスは、屋外GWからのビーコン(S4)は受信できず、屋内GW-1A-2からの1つのビーコン(S5)のみを受信するため、ビーコンの衝突は発生しない。したがって、屋内デバイスは、N+2回目で屋内GW-1A-2からのビーコン(S5)を受信することができる。
【0057】
このように、本実施形態では、屋外GWは、128秒毎の所定の周期でビーコンを送信し、屋内GWは、所定の周期で送信すべきビーコンを、屋内GWの数に基づく前記剰余演算式の送信タイミングで送信する。すなわち、屋内GWは、ビーコンの送信を間引く。
【0058】
本実施形態では、屋外GWのみビーコンを送信する周期を設けることで、屋外GWおよび屋内GWが混在する環境であっても、屋外デバイスにおける屋外GWからのビーコンの受信機会を確保することができる。
【0059】
一方、屋外GWからの電波が届かない(電波が微弱な)不感知エリアの屋内デバイスでは、複数の屋内GWからのビーコンの衝突を回避するために、間引きの周期を計画的にずらすことで、1つの屋内GWからのビーコンのみを、屋内デバイスに受信させることができる。
【0060】
屋外デバイスおよび屋内デバイスは、ビーコンを1度受信すると、所定の期間(例えば、120分間)は自身の時刻に合わせて自走でビーコンの受信動作を継続するため、ビーコンが受信できないタイミングが発生してもその影響は限定的である。
【0061】
図4は、比較例のビーコンの送信を説明する説明図である。比較例では、屋内GW-1A-1、GW-1A-2は、ビーコンを間引くことなく、全ての送信タイミングでビーコンを送信する。したがって、屋外GWおよび屋内GW-1A-1、GW-1A-2は、全ての送信タイミング(N回目、N+1回目、N+2回目)でビーコンを送信する。屋外デバイスおよび屋内デバイスでは、全ての送信タイミングで、屋外GWおよび屋内GW-1A-1、GW-1A-2が送信した3つのビーコンを受信することになる。
【0062】
屋外デバイスでは、屋内GW-1A-1、GW-1A-2からのビーコンの電波が微弱な場合には、結果として屋外GWからのビーコンのみを受信することになりビーコンの衝突が回避されビーコンを受信できるが、屋内GW-1A-1、GW-1A-2からのビーコンの電波が微弱でない場合には、ビーコンの衝突が発生し、ビーコンを受信できない。
【0063】
屋内デバイスでは、屋外GWからのビーコンは受信されないものの、屋内GW-1A-1および屋内GW-1A-2からの2つのビーコンの衝突が発生し、ビーコンを受信することができない。
【0064】
したがって、比較例では、屋内デバイスおよび屋外デバイスは、全ての送信タイミングでビーコンが衝突する可能性が極めて高い。
【0065】
図5および図6に、屋内GWの動作を示すフローチャートを示す。
【0066】
図5は、屋内GWの時刻取得処理を示すフローチャートである。屋内GWは、所定の周期で(I秒毎に)NTPサーバから時刻を取得する。屋内GWは、時刻取得タイミングか否かを判別する(S11)。具体的には、屋内GWは、前回、時刻を取得してからI秒経過すると、時刻取得タイミングであると判別する。
【0067】
時刻取得タイミングと判別した場合(S11:YES)、屋内GWは、ネットワークを介してNTPサーバから時刻を取得し(S12)、取得した時刻で自身の内部時計の時刻を更新する(S13)。
【0068】
図6は、屋内GWのビーコン制御処理を示すフローチャートである。屋内GWは、J秒毎(LoRaWAN規格では128秒)の所定の周期で繰り返し送信すべきビーコンの送信を、自身に割り当てられた送信タイミング以外は間引くように制御する。
【0069】
屋内GWは、J秒周期の次回のビーコンを送信すべきタイミングにおいて、自身の送信タイミングか否かを判定する(S21)。具体的には、屋内GWは、以下の剰余演算式の値が自身に割り当てられたkと一致する場合に、自身の送信タイミングであると判別する。
【0070】
N mod T = = k
Nは、J秒周期で1ずつインクリメントされるビーコンの送信回数を示すカウンタ値である。Tは、屋内GWの数に少なくとも1を加算した値である。Tを、屋内GWの数に1を加算した値とした場合、屋外GWのみが送信される割合は、1/Tとなる。Tを、屋内GWの数に2を加算した値とした場合、屋外GWのみが送信される割合は、2/Tとなる。k(0≦k≦T)は、各屋内GWに割り当てられる送信タイミングを示すものである。
【0071】
そして、屋内GWは、Nを1インクリメントする(S21)。
【0072】
自身の送信タイミングであると判別すると(S21:YES)、屋内GWは、ビーコンを送信すべきタイミングに、1PPS(pulse per second)のタイミングでビーコンを送信する(S22)。具体的には、屋内GWは、前回のビーコンを送信すべきタイミングからJ秒経過すると、送信すべきタイミングであると判別し、ビーコンを送信する。
【0073】
ネットワークサーバからのダウンリンク信号の送信命令がある場合(S23:YES)、屋内GWは、ビーコンの送信から所定のオフセット時間が経過後にダウンリンク信号を送信する(S24)。
【0074】
一方、自身の送信タイミングでないと判別した場合(S21:NO)、屋内GWは、S21に戻り、以降の処理を繰り返す。このように、屋内GWは、自身の送信タイミングでない場合、送信すべきビーコンの送信を間引く。また、ダウンリンク信号の送信命令がない場合(S23:NO)、屋内GWは、S21に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0075】
図7は、デバイスの動作を示すフローチャートである。屋内デバイスと屋外デバイスは同一の構成であり、共に図7に示す動作を行う。デバイスは、1度はビーコンを受信し、いずれかのGWと同期状態にあるものとする。
【0076】
デバイスは、自走で(自律的に)、次回のビーコンの受信タイミングを取得し、当該受信タイミングにスリープ状態から、ビーコンを受信可能なように起動する(S31)。すなわち、デバイスは、ビーコンを受信するために所定の時間アクティブ状態になる。
【0077】
アクティブ状態において、デバイスは、複数のGWから送信されるビーコンの受信を試みる(S32)。ビーコンの衝突がなく、ビーコンを受信できた場合(S32:YES)、デバイスは、受信したビーコンに含まれる時刻情報で、自身の時刻を更新する(S33)。そして、デバイスは、前記時刻情報に基づいてオフセット時間を算出し、オフセット時間の後にダウンリンク信号を受信するためのPing Slotを開放する(S34)。
【0078】
デバイスは、Ping Slotでダウンリンク信号を待ち受ける(S35)。具体的には、デバイスは、開放されたPing Slotで自身のデバイス宛てのダウンリンク信号がGWから送信された場合、当該ダウンリンク信号を受信する。そして、デバイスはS31に戻り、以降の処理を繰り返し行う。また、アクティブ状態の間にビーコンを受信できない場合(S32:NO)、デバイスは、S31に戻り、以降の処理を繰り返し行う。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の屋内GWは、ネットワークを介して時刻を取得する時刻取得部11と、所定の周期で送信すべきビーコンの送信を制御する制御部12と、制御部12の指示に従って、前記時刻に基づく時刻情報を含むビーコンをデバイスに送信する送信部13と、を備え、制御部12は、屋内GWの数に応じて、ビーコンの送信を間引く。
【0080】
本実施形態の屋内GWは、GPS信号に匹敵する高精度な時刻を追求することなく、ネットワークを介した時刻を取得し、ビーコンの送信を間引くことでビーコンの衝突を削減する。すなわち、高精度な時刻精度の追及ではなく、最低限のビーコン受信頻度を担保する形でビーコン衝突を許容する。これにより、GPS信号を受信できない場所に配置され、且つ周辺に他のゲートウェイが存在する環境下の屋内GWであっても、デバイスとの同期を実現することができる。
【0081】
具体的には、GPS信号の時刻に比べると精度が低いNTPサーバの時刻を使用して、ビーコンの衝突を回避する。これにより、本実施形態では、GPS信号に匹敵する1μs以下の時刻精度を実現する高価な装置を導入することなく、プログラム(ソフトウェア)を改修するだけでネットワークから低コストに時刻を取得することができる。したがって、本実施形態では、低コストでシステムを導入することができる。
【0082】
また、IoT系サービスを低コストに実現するためには、既存の装置を極力そのまま使用できることが重要である。本実施形態の屋内GWでは、ネットワークサーバおよびデバイスへの改修は一切必要ない。また、屋内GWについても、大掛かりな装置の追加を不要とし、既存のGWのプログラムを改修するだけで実現できる。なお、既存のGWでは、ネットワークサーバとネットワークを介して既に接続されているため、プログラムの改修規模はそれほど大きくない。このため、サービス導入時の追加のコストを極力抑えることができる。
【0083】
本実施形態では、屋内GWと屋外GWと混在する環境においても、既存の屋外GWおよび屋外デバイスに悪影響を与えることなく、安定したサービス提供を継続することができる。
【0084】
また、本実施形態では、LoRaWANサービスを用いて、地下やビル内部等GPS信号が受信できない場所でも、屋内GW(基地局)から屋内デバイスに対してビーコンを送信することができる。これにより、例えば、地下等の飲食店で火災が発生したときに、ネットワークサーバからダウンリンク信号をデバイスに送信し、ガス栓を遠隔で閉栓することができる。
【0085】
すなわち、LoRaWANサービスの提供エリアが屋内か屋外かに関わらず、GWからビーコンを発出することができ、LoRaWANのClass Bサービスが提供可能となる。これにより、サービス提供のバリエーションを増やし、サービス品質の向上に寄与することができる。
【0086】
上記説明した屋内GWには、例えば、図8に示すような汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。図示するコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた屋内GW用のプログラムを実行することにより、屋内GWの各機能が実現される。
【0087】
また、屋内GWは、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、屋内GWは、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0088】
屋内GW用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0089】
なお、本発明は上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1A:屋内GW
1B:屋外GW
11:時刻取得部
12:制御部
13:送信部
14:通信部
2A:屋内デバイス
2B:屋外デバイス
21:受信部
22:同期部
23:処理部
3 :ネットワークサーバ
4 :NTPサーバ
5 :GPS衛星
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8