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特開2022-106349毛髪用脱色・脱染剤組成物および毛髪用脱色・脱染剤セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106349
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】毛髪用脱色・脱染剤組成物および毛髪用脱色・脱染剤セット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/22 20060101AFI20220712BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220712BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61K8/22
A61K8/36
A61K8/25
A61Q5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001254
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】柴田 愛実
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB322
4C083AB371
4C083AB372
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC182
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC692
4C083AC892
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD352
4C083BB53
4C083CC35
4C083DD06
4C083DD17
4C083EE07
4C083EE27
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い脱色力を有し、ムラなく均一に毛髪を明るくすることができ、かつ、仕上がりの指通りおよび毛先のまとまりにも優れる毛髪用脱色・脱染剤組成物および毛髪用脱色・脱染剤セットを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)3~20質量%と、過硫酸アンモニウムを含む1種以上の過硫酸塩(B)10~40質量%と、ケイ酸ナトリウムおよびメタケイ酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ剤(C)10~55質量%とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)3~20質量%と、
過硫酸アンモニウムを含む1種以上の過硫酸塩(B)10~40質量%と、
ケイ酸ナトリウムおよびメタケイ酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ剤(C)10~55質量%とを含む、毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【請求項2】
カチオン性高分子化合物(D)をさらに含む、請求項1に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【請求項3】
キレート剤(E)をさらに含む、請求項1または2に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【請求項4】
前記炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)が、ミリスチン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、およびオレイン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【請求項5】
前記過硫酸塩(B)が過硫酸アンモニウムと、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種とからなる過硫酸塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【請求項6】
粉末状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物からなる第一剤と、
過酸化水素水を含む第二剤とを備えた、毛髪用脱色・脱染剤セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用脱色・脱染剤組成物に関する。また、本発明は、前記毛髪用脱色・脱染剤組成物からなる第一剤と、過酸化水素水を含む第二剤とを備えた、毛髪用脱色・脱染剤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化助剤およびアルカリ剤を含む第一剤と、酸化剤を含む第二剤とを、脱色処理の直前に混合して用いる二剤型の毛髪用脱色・脱染剤が知られている。
二剤型の毛髪用脱色・脱染剤は、脱色力を向上させるために、第一剤に含まれる酸化助剤およびアルカリ剤の配合量を増やすことが行われてきた。しかし、アルカリ剤を多く配合した第一剤を使用すると、毛髪の手触りが悪化したり、毛髪がちぎれる等、毛髪へのダメージが大きかった。
【0003】
そのため、脱色力を向上させ、毛髪へのダメージも少なくするための技術開発が行われてきた。例えば、特許文献1では、特定の物質と過硫酸アンモニウムを特定量混合し、混合調整時のpHが弱アルカリ性となる毛髪脱色/染毛剤組成物が開示されている。特許文献2では、特定量の過硫酸塩を含む毛髪脱色・脱染剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-280506号公報
【特許文献2】特開2013-147467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、毛髪が充分明るくならず、脱色力が満足できる品質ではなかった。特許文献2の技術では、すすぎ時や風乾後の毛髪の感触が悪くなりやすかった。
【0006】
さらに、本発明者は、技術開発を進めるなかで、第一剤に酸化助剤として配合された過硫酸塩は、特定の量より多く配合しても脱色力が向上しないことを見出した。また、第一剤に、特定の量より多く過硫酸塩を配合すると、第二剤と混合した後の混合物が硬くなり、毛髪へ均一に塗布することができず、仕上がりにムラが生じることもわかった。
【0007】
このようなことから、本発明は、高い脱色力を有し、ムラなく均一に毛髪を明るくすることができ、かつ、仕上がりの指通りおよび毛先のまとまりにも優れる毛髪用脱色・脱染剤組成物および毛髪用脱色・脱染剤セットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪用脱色・脱染剤組成物および毛髪用脱色・脱染剤セットにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、例えば以下の[1]~[7]である。
[1]炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)3~20質量%と、過硫酸アンモニウムを含む1種以上の過硫酸塩(B)10~40質量%と、ケイ酸ナトリウムおよびメタケイ酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ剤(C)10~55質量%とを含む、毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【0010】
[2]カチオン性高分子化合物(D)をさらに含む、[1]に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
[3]キレート剤(E)をさらに含む、[1]または[2]に記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【0011】
[4]前記炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)が、ミリスチン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、およびオレイン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【0012】
[5]前記過硫酸塩(B)が過硫酸アンモニウムと、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種とからなる過硫酸塩である、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
【0013】
[6]粉末状である、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の毛髪用脱色・脱染剤組成物からなる第一剤と、過酸化水素水を含む第二剤とを備えた、毛髪用脱色・脱染剤セット。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高い脱色力を有し、ムラなく均一に毛髪を明るくすることができ、かつ、仕上がりの指通りおよび毛先のまとまりにも優れる毛髪用脱色・脱染剤組成物および毛髪用脱色・脱染剤セットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物および毛髪用脱色・脱染剤セットについて具体的に説明する。
【0016】
<毛髪用脱色・脱染剤組成物>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)3~20質量%と、過硫酸アンモニウムを含む1種以上の過硫酸塩(B)10~40質量%と、ケイ酸ナトリウムおよびメタケイ酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ剤(C)10~55質量%とを含む。
【0017】
<毛髪用脱色・脱染剤セット>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤セットは、上記の毛髪用脱色・脱染剤組成物からなる第一剤と、過酸化水素水を含む第二剤とを備える。
【0018】
<炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、炭素数14~18の高級脂肪酸塩(A)(以下、単に「成分(A)」とも記す。)を3~20質量%、好ましくは5~10質量%含む。
【0019】
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(A)を上記の量で含むことによって、脱色・脱染の効果に優れ、仕上がりの毛髪の指通りや毛先のまとまりにも優れる。
成分(A)が前記下限量より少ないと、脱色・脱染の効果が悪くなることがある。前記上限量より多いと、過酸化水素水を含む第二剤と混合した際の混合物の粘度が著しく低くなり、毛髪に均一に塗布することができず、ムラのある仕上がりとなる場合がある。
【0020】
成分(A)において、炭素数は好ましくは16~18、より好ましくは18である。
成分(A)において、脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよいが、組成物の安定性に優れることから、脂肪酸は飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0021】
成分(A)において、塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;アミン塩が挙げられる。これらの中でも、塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩およびカリウム塩がより好ましい。
【0022】
具体的には、成分(A)が、ミリスチン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、およびオレイン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、入手が容易であることから、成分(A)がミリスチン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、およびオレイン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、脱色力を高める効果に特に優れることから、ステアリン酸ナトリウムおよびパルミチン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
成分(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<過硫酸塩(B)>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、過硫酸アンモニウムを含む1種以上の過硫酸塩(B)(以下、単に「成分(B)」とも記す。)を10~40質量%、好ましくは20~35質量%を含む。
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(B)を上記の量で含むことによって、仕上がりの毛髪を明るくすることができ、感触にも優れる。
【0024】
成分(B)が前記下限量より少ないと、毛髪が充分に明るくならないことがある。成分(B)が前記上限量より多いと、毛髪の指通りや毛先のまとまりが悪くなる傾向がある。また、過酸化水素水を含む第二剤と混合した際の混合物の粘度が低くなり、毛髪に均一に塗布することができない場合がある。
【0025】
成分(B)において、塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;アミン塩が挙げられる。これらの中でも、塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩が好ましく、カリウム塩およびアンモニウム塩がより好ましい。過硫酸塩として、具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、および過硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0026】
成分(B)は、過硫酸アンモニウムのみでもよく、過硫酸アンモニウムと1種以上の過硫酸塩との組み合わせでもよい。
成分(B)が過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種の過硫酸塩とからなることが好ましく、仕上がりの指通りに優れることから、成分(B)が過硫酸アンモニウムと過硫酸ナトリウムとからなることがより好ましい。
【0027】
成分(B)が過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種の過硫酸塩とからなる場合では、過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種の過硫酸塩との質量比((過硫酸アンモニウム):(過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種の過硫酸塩))が5:1~1:2であることが好ましく、脱色力に優れ、毛髪の手触りにも優れることから3:1~1:1であることがより好ましい。
【0028】
成分(B)が過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムとからなる場合では、過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムとの質量比((過硫酸アンモニウム):(過硫酸カリウム))が5:1~1:2であることが好ましく、脱色力に優れ、毛髪の手触りにも優れることから3:1~1:1であることがより好ましい。
【0029】
成分(B)が過硫酸アンモニウムと過硫酸ナトリウムとからなる場合では、過硫酸アンモニウムと過硫酸ナトリウムとの質量比((過硫酸アンモニウム):(過硫酸ナトリウム))が5:1~1:2であることが好ましく、脱色力に優れ、毛髪の手触りにもに優れることから3:1~1:1であることがより好ましい。
【0030】
<アルカリ剤(C)>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、ケイ酸ナトリウムおよびメタケイ酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ剤(C)(以下、単に「成分(C)」とも記す。)を10~55質量%、好ましくは20~55質量%、より好ましくは20~50質量%含む。
【0031】
成分(C)を上記の量で含むことによって、仕上がりの毛髪を明るくすることができ、指通りや毛先のまとまりにも優れる。
成分(C)が前記下限量より少ないと、毛髪が充分に明るくならないことがある。前記上限量より多いと、毛髪の指通りや毛先のまとまりが悪くなる傾向がある。また、過酸化水素水を含む第二剤と混合した際の混合物の粘度も低くなり、毛髪に均一に塗布することができなくなる場合がある。
【0032】
成分(C)は、ケイ酸ナトリウムであることが好ましい。
成分(C)は、通常、粉末状である。本発明において粉末状とは、常温(15℃~25℃)で固体の成分(C)が、粉である状態を指す。成分(C)は、60メッシュサイズ(目開き0.25mm)未満の粒子が90%以上を占めていることが好ましい。
成分(C)は、1種単独で用いても、2種を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
<カチオン性高分子化合物(D)>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、カチオン性高分子化合物(D)を好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%含む。
カチオン性高分子化合物(D)が前記範囲内にあると、すすぎ時および風乾後の指通りに優れるため好ましい。
【0034】
カチオン性高分子化合物(D)としては、例えば、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、(ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)コポリマー、および(ビニルピロリドン/アクリル酸DMAPA)コポリマーが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、カチオン性高分子化合物(D)が、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースおよび塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、カチオン性高分子化合物(D)が、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースであることがさらに好ましい。
カチオン性高分子化合物(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
<キレート剤(E)>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、キレート剤(E)を好ましくは0.3~3質量%含む。
キレート剤(E)が前記範囲内にあると、仕上がりの均一性に優れるため好ましい。
キレート剤(E)としては、例えば、エデト酸二ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸、エデト酸、エデト酸三ナトリウム、およびヒドロキシエタンジホスホン酸塩が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、キレート剤(E)が、エデト酸二ナトリウムおよびジエチレントリアミン五酢酸であることがより好ましく、価格がより低廉でキレート効果に優れることから、キレート剤(E)が、エデト酸二ナトリウムであることがさらに好ましい。
キレート剤(E)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
<毛髪用脱色・脱染剤セット>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤セットは、毛髪用脱色・脱染剤組成物からなる第一剤と、過酸化水素水を含む第二剤とを備える。
【0039】
本発明の毛髪用脱色・脱染剤セットにおいて、第二剤は、酸化剤として過酸化水素を含む。第二剤は、第二剤全体を100質量%とした場合、過酸化水素を通常1~6質量%含む。なお、第二剤は、酸化剤として過酸化水素以外の酸化剤を含んでいてもよい。
【0040】
<その他成分>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、保湿剤、生薬類、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、増粘剤および色素等の添加剤を含有することができる。
【0041】
その他の成分として、具体的には、pH調整剤として、炭酸マグネシウムを用いることができ、増粘剤としてキサンタンガムを用いることができる。
なお、本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物において、第一剤に上述のその他成分を含有する場合には、その他成分が粉末状であることが好ましい。
【0042】
本発明の毛髪用脱色・脱染剤セットにおいて、第二剤に上述のその他成分を含有する場合には、その他成分が液状であることが好ましい。
その他の成分は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
<毛髪用脱色・脱染剤組成物の製造等>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、乳化、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。
【0044】
〔剤型〕
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、粉末状であることが好ましい。
本発明の毛髪用脱色・脱染剤セットは、毛髪用脱色・脱染剤組成物からなる第一剤の剤型は粉末状であることが好ましく、過酸化水素水を含む第二剤の剤型は、液状であることが好ましい。
【0045】
<用途>
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、過酸化水素水を含む第二剤と混合した後、混合物を毛髪に塗布して使用することができる。
【0046】
混合物を毛髪に塗布する場合は、適量をコームやハケで塗布することができる。通常、毛髪1gに対して、混合物を2~5g塗布することが好ましい。
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物を第一剤として、過酸化水素水を含む第二剤と混合する場合、第一剤と第二剤との混合割合(第一剤:第二剤)は、必要に応じて適宜調整されるが、好ましくは1:2(質量比)である。
【0047】
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、高い脱色力を有し、ムラなく均一に毛髪を明るくすることができ、かつ、仕上がりの指通りおよび毛先のまとまりにも優れる。
【実施例0048】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1~52、比較例1~28〕
実施例および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0050】
【表1】
【0051】
表2に示す処方で各成分を混合して、第二剤を製造した。表2の処方の数値は、第二剤全体を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
【0052】
表3~9に示す処方で各成分を混合して、毛髪用脱色・脱染剤組成物を製造し、試料とした。なお、当該試料は、毛髪用脱色・脱染剤セットにおける第一剤に相当する。表3~9の処方の数値は、毛髪用脱色・脱染剤組成物全体を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
【0053】
〔脱色処理〕
試料と、下記表2に示す処方で製造した第二剤とを1:2(質量比)で混合した。
【0054】
【表2】
【0055】
10cmの人毛黒髪毛束(ビューラックス社製BS-B-A)1gに対して、上記混合物6gをハケで塗布し、ラップで包んだ。その後、40℃で30分間放置し、脱色した(脱色処理)。脱色した毛束を10%アルスコープDA-330S(東邦化学工業株式会社)水溶液で洗浄し、すすぎ時および風乾後の毛束について評価項目(1)、(2)、(3)の評価を行った。続いて、脱色処理後の毛束の仕上がりについて、評価項目(4)、(5)の評価を行った。
【0056】
〔評価方法〕
評価項目(1)~(4)では、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、評価基準に従って官能評価を行った。各評価項目につき10名の評価点の平均を算出し、平均点を以下のとおり評価した。
【0057】
・評価項目(1)、(2)、(4)
◎◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が4.5点以上である。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上4.5未満である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0058】
・評価項目(3)
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0059】
評価項目(5)では、脱色処理後の毛束の色について、分光測色計(SPECTRO PHOTOMETER NF555、日本電色工業株式会社、標準光源D65)を用いてL***表色系における値を計測し、評価した。計測値が高いほど、仕上がりの毛髪が明るいことを示しており、試料の脱色力および脱染力が高いことを意味する。
【0060】
〔評価項目および評価基準〕
(1)すすぎ時の指通り
脱色した毛束をすすいでいる時の指通りおよび手触りについて、触感で評価した。
5点:非常に指通りがよく、なめらかである
4点:指通りがよい
3点:指通りがややよい
2点:指通りが悪い
1点:毛髪の絡まりが強く、指通りが非常に悪い
【0061】
(2)風乾後の指通り
脱色処理後、風乾させた毛束の指通りおよび手触りについて、触感で評価した。
5点:非常に指通りがよく、なめらかである
4点:指通りがよい
3点:指通りがややよい
2点:指通りが悪い
1点:毛髪のきしみ感が強く、指通りが非常に悪い
【0062】
(3)風乾後の毛先のまとまり
脱色処理後、風乾させた毛束の毛先のまとまりについて、目視で評価した。
4点:まとまりが非常によく、しっとり感を感じる
3点:まとまりがよい
2点:まとまりが悪い
1点:まとまりが非常に悪く、ガサついている
【0063】
(4)仕上がりの均一性
脱色処理後、風乾させた毛束のムラについて、目視で評価した。
5点:ムラがなく、均一に脱色されている
4点:ほとんどムラなく脱色されている
3点:ややムラはあるが問題なく脱色されている
2点:ムラがある
1点:ムラが目立つ
【0064】
(5)仕上がりの毛髪の明るさ
脱色処理後、風乾させた毛束の色を分光測色計で測定し、測定値(L*値)を評価した。
◎:L*値が65以上である
○:L*値が60以上65未満である
△:L*値が55以上60未満であ。
×:L*値が55未満である
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
実施例1~52で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、(1)~(5)の評価項目において良好な結果となった。実施例49~52は、特に良好な結果となった。
本発明の毛髪用脱色・脱染剤組成物は、高い脱色力を有し、ムラなく均一に毛髪を明るくすることができ、かつ、仕上がりの指通りおよび毛先のまとまりにも優れることがわかる。
【0073】
比較例1および2で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(A)が配合されていないため、仕上がりの毛髪の明るさが悪く、ムラもあった。
比較例3で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(A)の配合量が規定量より少ないため、毛先のまとまりおよび仕上がりの毛髪の明るさが悪かった。
【0074】
比較例4で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(A)の配合量が規定量より多いため、仕上がりにムラがあった。
比較例5~16で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(B)として過硫酸アンモニウムが配合されていないため、指通りおよび毛先のまとまりと、仕上がりの毛髪の明るさおよび均一性とが両立できていなかった。
【0075】
比較例17、19、21、および23で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、過硫酸アンモニウムは配合されているものの、成分(B)の配合量が規定量より少ないため、仕上がりの毛髪の明るさが悪かった。
【0076】
比較例18、20、22、および24で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、過硫酸アンモニウムは配合されているものの、成分(B)の配合量が規定量より多いため、指通りが悪かった。
【0077】
比較例25および27で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(C)の配合量が規定量より少ないため、仕上がりの毛髪の明るさが悪かった。
比較例26および28で製造した毛髪用脱色・脱染剤組成物は、成分(C)の配合量が規定量より多いため、指通りが悪く、仕上がりにムラがあった。