(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106395
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20220712BHJP
F16F 9/48 20060101ALI20220712BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/48
F16F9/32 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001345
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】KYBモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】森 健
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069AA53
3J069CC15
3J069EE01
3J069EE52
(57)【要約】
【課題】最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる緩衝器の提供する。
【解決手段】本発明における緩衝器D1は、シリンダ1と、シリンダ1の端部に設けられた環状のロッドガイド2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド3と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を圧側室R2と伸側室R1とに区画するピストン4と、ピストンロッド3の側方から開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路Pと、ピストンロッド3の外周に装着される環状のバルブホルダ6と、バルブホルダ6とロッドガイド2とを連結する弾性部材としてのコイルばねSと、ピストンロッド3に装着されてバルブホルダ6に軸方向で対向するストッパとしてのリバウンドストッパ13と、バルブホルダ6に保持されるチェックバルブ23とを備えて構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填されるシリンダと、
前記シリンダの端部に設けられた環状のロッドガイドと、
前記ロッドガイドの内周に挿通されて前記シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、
前記シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内を圧側室と前記ロッドガイドに面する伸側室とに区画するピストンと、
前記ピストンロッドの側方から開口して前記伸側室と前記圧側室とを連通する通路と、
前記ピストンロッドの外周に軸方向へ移動可能に装着されて前記通路に対向可能な環状のバルブホルダと、
前記バルブホルダと前記ロッドガイドとを連結する弾性部材と、
前記ピストンロッドに装着されて前記バルブホルダに軸方向で対向するストッパと、
前記バルブホルダに保持されて、前記バルブホルダが前記通路に対向した状態で、前記液体が前記通路を前記伸側室から前記圧側室へ向かう場合には前記通路を遮断し、前記液体が前記通路を前記圧側室から前記伸側室へ向かう場合には前記通路を開放するチェックバルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記バルブホルダは、環状であって前記弾性部材に連結されるとともに、内周或いは外周の一方に周方向に沿って設けられた環状溝と、内周或いは外周の他方から前記環状溝に連通する通孔とを有し、
前記チェックバルブは、一箇所に割を具備する円環状であって、前記環状溝内に収容され前記通孔に対向している
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記チェックバルブの前記割の形状は、円環の一箇所を軸方向から見て径方向に対して傾斜する方向に切断してできる形状である
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記チェックバルブにおける前記割を具備する周方向の両端は、径方向で互いに重なる
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記バルブホルダは、環状であって前記弾性部材に連結されるとともに内周に前記ピストンロッドの外周に対向する環状溝を有し、
前記チェックバルブは、
円環状であって内周のピストン側に環状の凹部を有する本体と、
前記本体の外周に設けられて前記本体のピストン側端から反ピストン側端へ通じる外周溝と、
前記本体の反ピストン側の端部に設けられて少なくとも前記バルブホルダの内周よりも内側から開口して前記外周溝に通じる端部溝とを有し、
前記環状溝内に軸方向移動可能に収容されて前記ピストンロッドの外周に摺接する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記バルブホルダは、環状であって前記弾性部材に連結されるとともに内周或いは外周の一方に周方向に沿って設けられた環状溝と、内周或いは外周の他方から前記環状溝に連通する通孔とを有し、
前記チェックバルブは、
円環状であって、前記環状溝内に軸方向移動可能に収容されて互いに軸方向で対向する一対の弁体と、
前記環状溝内に収容されて前記弁体同士を挟んで互いに前記弁体を軸方向で当接させる方向へ付勢する一対のばね部材と、
前記弁体は、互いに対向する端部の内周に前記伸側室の圧力を受ける凹部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、鞍乗型車両における車両の車体と車輪との間に介装されて使用され、伸縮時に発生する減衰力で車体と車輪の振動を抑制する。
【0003】
緩衝器は、内部に搭載されているバルブによって減衰力を発生するが、このほかに、最伸長時におけるロッドガイドとピストンロッドの先端に設けたリバウンドストッパとの激しい衝突を防止するために、ストロークエンド近傍まで伸長するとそれ以上の伸長を抑制する油圧ロック機構を備える場合がある。
【0004】
油圧ロック機構は、たとえば、シリンダの端部に装着されるロッドガイドに取り付けられた環状のリバウンドクッションと、ロッドガイドにコイルばねを介して取り付けられてピストンロッドの外周に軸方向へ移動自在に摺接してピストンロッドに設けられた伸側室と圧側室とを連通する減衰力調整用通路を開閉するシャッタとを備えている。
【0005】
具体的には、シャッタは、ピストンロッドがシリンダに対して伸側のストロークエンド近傍まで変位すると、ピストンロッドの外周に装着された環状のストッパに当接して、ピストンロッドの側方から開口する減衰力調整用通路を閉塞する。シャッタによって減衰力調整用通路が閉塞されるため、伸側室内の圧力上昇が促進されてピストンロッドの伸長側への移動が抑制される。また、この状態からさらに緩衝器が伸長作動すると、シャッタが減衰力調整用通路閉じたままストッパと共に移動し、リバウンドクッションがストッパに当接する。この状態では、シャッタによって減衰力調整用通路が閉塞されるとともにリバウンドクッションとリバウンドストッパとの当接によって、伸側室におけるリバウンドクッションの内周側の空間が伸側室におけるリバウンドクッションの外周側の空間および圧側室から隔絶される。このような状況となると、油圧ロック機構は、ピストンロッドの伸長側へのストロークに対して前記空間内の圧力を上昇させてピストンロッドのそれ以上の伸長側への移動を阻止する油圧ロック機能を発揮して、リバウンドストッパとロッドガイドとが勢いよく衝突するのを防止する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の緩衝器では、コイルばねでシャッタをロッドガイドから離間した位置に配置でき、減衰力調整用通路を早いタイミングで閉塞できるので、ピストンロッドの速度を十分に減速して、最伸長時の衝撃を緩和できる。
【0008】
しかしながら、従来の緩衝器では、シャッタが減衰力調整用通路を閉塞してからピストンロッドの移動方向が逆となって収縮する際に、シャッタが減衰力調整用通路を開放するまでに要するピストンロッドの収縮側への移動量が多くなる。つまり、シャッタをコイルばねによってピストン側にずらして配置した分だけ、緩衝器の伸長時にシャッタが減衰力調整用通路を閉塞してからピストンロッドがストロークエンドへ達するまでの距離を長くできるが、反対にピストンロッドが伸長側のストロークエンドから収縮側へ移動する際にシャッタが減衰力調整用通路を開放するまでのピストンロッドの移動量が増えてしまう。
【0009】
すると、この緩衝器の伸長の際にシャッタによって減衰力調整用通路が閉塞されて油圧ロックが機能してから緩衝器が収縮する際、シャッタが減衰力調整用通路を開放するまでの間、油圧ロック機能が発揮されたままとなる。このような状況となると、緩衝器の収縮初期の減衰力が高くなって、緩衝器はスムーズに収縮作動できなくなってしまう問題が生じる。
【0010】
これに対して、減衰力調整用通路を介して圧側室の圧力をシャッタに作用させて緩衝器の収縮初期に速やかにシャッタが減衰力調整通路を開放するようにして、前記問題の解決を図ろうとする提案もあり得る。
【0011】
しかしながら、シャッタ自体に圧側室の圧力を作用させてシャッタの減衰力調整通路の開放タイミングを早める方法では、コイルばねのばね定数の設定で開放タイミングと開放時の流路面積が変化してしまう。
【0012】
また、コイルばねのばね定数を大きくするとシャッタが減衰力調整通路を開放しづらくなるため、コイルばねのばね定数を大きくして緩衝器の伸長時の減衰力にコイルばねの大きなばね力を付加したい場合、緩衝器の収縮初期にシャッタが減衰力調整通路を開放できずに減衰力が過剰となって収縮行程における緩衝器のスムーズな収縮が妨げられてしまう。
【0013】
そこで、本発明は、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、液体が充填されるシリンダと、シリンダの端部に設けられた環状のロッドガイドと、ロッドガイドの内周に挿通されてシリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、シリンダ内に挿入されてシリンダ内を圧側室とロッドガイドに面する伸側室とに区画するピストンと、ピストンロッドの側方から開口して伸側室と圧側室とを連通する通路と、ピストンロッドの外周に軸方向移動自在に装着されて通路に対向可能な環状のバルブホルダと、バルブホルダとロッドガイドとを連結する弾性部材と、ピストンロッドに装着されてバルブホルダに軸方向で対向するストッパと、バルブホルダに保持されてバルブホルダが通路に対向した状態で液体が通路を伸側室から圧側室へ向かう場合には通路を遮断し、液体が通路を圧側室から伸側室へ向かう場合には通路を開放するチェックバルブとを備えて構成されている。
【0015】
このように構成された緩衝器では、伸長作動してバルブホルダに保持されたチェックバルブが通路の開口である横孔に対向するとチェックバルブが通路を遮断し、緩衝器が伸長作動から収縮作動に転じるとチェックバルブが通路を速やかに開放する。
【0016】
また、バルブホルダが環状であって弾性部材に連結されるとともに、内周或いは外周の一方に周方向に沿って設けられた環状溝と、内周或いは外周の他方から環状溝に連通する通孔とを有し、チェックバルブが一箇所に割を具備する円環状であって環状溝内に収容されて通孔に対向してもよい。このように構成された緩衝器によれば、チェックバルブを簡単な構成で実現でき、安価に製造できる。
【0017】
さらに、チェックバルブの割の形状は、円環の一箇所を軸方向から見て径方向に対して傾斜する方向に切断してできる形状となっていてもよい。のように構成された緩衝器によれば、最伸長時に高い液圧ロック効果を得られる。
【0018】
なお、チェックバルブは、割を具備する周方向の両端が径方向で互いに重なるように構成されてもよい。このように緩衝器が構成されても、最伸長時に高い液圧ロック効果を得られる。
【0019】
さらに、バルブホルダが環状であって弾性部材に連結されるとともに、内周にピストンロッドの外周に対向する環状溝を備え、チェックバルブが円環状であって内周のピストン側に環状の凹部を有する本体と、本体の外周に設けられて本体のピストン側端から反ピストン側端へ通じる外周溝と、本体の反ピストン側の端部に設けられて少なくとも環状溝の内周よりも内側から開口して外周溝に通じる端部溝とを備えている。このように構成された緩衝器によれば、チェックバルブを簡単な構成で実現でき、安価に製造できる。
【0020】
また、バルブホルダが環状であって弾性部材に連結されるとともに、内周或いは外周の一方に周方向に沿って設けられた環状溝と、内周或いは外周の他方から環状溝に連通する通孔とを有し、チェックバルブが円環状であって、環状溝内に軸方向移動可能に収容されて互いに軸方向で対向する一対の弁体と、環状溝内に収容されて弁体同士を挟んで互いに弁体を軸方向で当接させる方向へ付勢する一対のばね部材とを有し、弁体が互いに対向する端部の内周に圧側室の圧力を受ける凹部を有している。このように構成された緩衝器によれば、チェックバルブを簡単な構成で実現でき、安価に製造できるとともに、チェックバルブの開弁タイミングの設定が簡単となる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明の緩衝器によれば、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
【
図2】第1の実施の形態における緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【
図3】第1の実施の形態における緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【
図4】第1の実施の形態の緩衝器におけるチェックバルブの平面図である。
【
図5】(a)は、第1の実施の形態の緩衝器におけるチェックバルブの第1変形例の側面図である。(b)は、第1の実施の形態の緩衝器におけるチェックバルブの第2変形例の側面図である。(c)は、第1の実施の形態の緩衝器におけるチェックバルブの第3変形例の側面図である。
【
図6】第1の実施の形態の緩衝器におけるチェックバルブの第4変形例の平面図である。
【
図7】第2の実施の形態における緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【
図8】第3の実施の形態における緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【
図9】(a)は、外周に環状溝を持つバルブホルダとチェックバルブの一例における一部拡大縦断面図である。(b)は、外周に環状溝を持つバルブホルダとチェックバルブの他の例における一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、第1の実施の形態における緩衝器D1は、液体が充填されるシリンダ1と、シリンダ1の端部に設けられた環状のロッドガイド2と、ロッドガイド2の内周に挿通されてシリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド3と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を圧側室R2とロッドガイド2に面する伸側室R1とに区画するピストン4と、ピストンロッド3の側方から開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路Pと、ピストンロッド3の外周に軸方向へ移動自在に装着されて通路Pに対向可能な環状のバルブホルダ6と、バルブホルダ6とロッドガイド2とを連結する弾性部材としてのコイルばねSと、ピストンロッド3に装着されてバルブホルダ6に軸方向で対向するストッパとしてのリバウンドストッパ13と、バルブホルダ6に保持されて通路Pを開閉するチェックバルブ23とを備えて構成されている。そして、この緩衝器D1の場合、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0024】
以下、緩衝器D1の各部について詳細に説明する。
図1に示すように、シリンダ1の
図1中上端には、環状のロッドガイド2が装着されている。そして、ロッドガイド2の内周には、ピストンロッド3が挿通されており、ロッドガイド2は、ピストンロッド3のシリンダ1に対する軸方向となる
図1中上下方向の相対移動を案内する。
【0025】
ロッドガイド2は、シリンダ1内に嵌合する環状の本体部2aと、本体部2aの内周から
図2中上方へ立ち上がる筒状の凸部2bと、本体部2aの下端外周から
図2中下方へ立ち上がる筒状のクッション保持部2cとを備えている。また、ロッドガイド2の本体部2aの内周から凸部2bの内周にかけてピストンロッド3の外周に摺接する筒状のブッシュ7が装着されている。さらに、本体部2aの外周には、シリンダ1とロッドガイド2との間をシールするシールリング8が装着される環状溝2dが設けられている。
【0026】
クッション保持部2cの内径は、本体部2aの内径よりも大径とされている。よって、クッション保持部2cとピストンロッド3との間には環状隙間が形成されている。
【0027】
そして、ロッドガイド2における本体部2aの
図2中下方であってクッション保持部2cの内周には、ピストンロッド3の外周に摺接する環状のUパッキン9と、コイルばねSの
図2中上端を保持するばね受部材20と、環状のスペーサ21と、リバウンドクッション15とが順に装着されている。詳しくは、クッション保持部2cは、
図2中下方へ向かうほど内径が3段に大径となっており、
図2中最下端には内周側へ突出するフランジ部2eを備えている。Uパッキン9は、クッション保持部2cの内径が最小となる部位に嵌合されており、ロッドガイド2とピストンロッド3との間シールしている。
【0028】
ばね受部材20は、環状のプレート部20aと、プレート部20aの内周から
図2中下方へ延びてピストンロッド3の外周に摺接する環状の嵌合部20bとを備えており、クッション保持部2cの
図2中の中段にスペーサ21とともに積層されている。さらに、リバウンドクッション15は、クッション保持部2cの
図2中の最下方側の段部とスペーサ21の
図2中下端に積層されており、外周が前記下方側の段部とフランジ部2eとで挟持されてロッドガイド2に固定されている。リバウンドクッション15の内径は、ピストンロッド3の外径よりも大径とされており、リバウンドクッション15とピストンロッド3との間に環状隙間が形成されている。また、リバウンドクッション15は、内周に
図2中下方へ突出する環状の突出部15aを備えており、ロッドガイド2のクッション保持部2cに装着された状態でロッドガイド2の最下端より突出部15aが
図2中下方へ突出している。
【0029】
つづいて、ばね受部材20の嵌合部20bの外周には、弾性部材としてのコイルばねSの
図2中上端が嵌合されている。コイルばねSは、リバウンドクッション15とロッドガイド2とで挟持されるばね受部材20を介してロッドガイド2に取付けられている。なお、スペーサ21を廃止して、リバウンドクッション15でばね受部材20をロッドガイド2に固定してもよい。ただし、スペーサ21を設けるとリバウンドクッション15の位置を
図2中下方へ配置でき、コイルばねSの密着長を長くできコイルばねSの設計自由度が向上し、さらには、コイルばねSの収容スペースを確保しやすくなるという利点がある。
【0030】
なお、本体部2aの肩がシリンダ1の内周に装着されたCリング10に当接しており、ロッドガイド2は、シリンダ1に対して抜け出る方向への移動が規制され、シリンダ1内の圧力を受けてCリング10に押圧されるのでシリンダ1に対して固定される。
【0031】
さらに、ロッドガイド2の凸部2bの
図2中上端外周には、ピストンロッド3の外周に摺接するダストシール5が装着されており、シリンダ1内への水や塵などの侵入が防止されている。
【0032】
ピストンロッド3は、前述したようにロッドガイド2の内周に挿通されている。ピストンロッド3は、先端に、ピストン4、伸側減衰バルブ11、圧側減衰バルブ12およびリバウンドストッパ13が装着される小径部3aを備えている。小径部3aの先端には、ピストンナット14が螺着されており、ピストンナット14によって、ピストン4、伸側減衰バルブ11、圧側減衰バルブ12およびリバウンドストッパ13がピストンロッド3に固定されている。
【0033】
リバウンドストッパ13は、軸方向にてリバウンドクッション15の突出部15aに対向している。よって、緩衝器D1が最伸長するとリバウンドストッパ13がリバウンドクッション15の突出部15aに当接して、伸側室R1内をリバウンドクッション15の内周側の環状の空隙L1とリバウンドクッション15の外周側の空隙L2とに仕切って、当該空隙L1との当該空隙L2との直接的な連通を断つようになっている。
【0034】
ピストン4は、前述したようにピストンロッド3の先端に装着されるとともにシリンダ1内に摺動自在に挿入されており、シリンダ1内をロッドガイド2に面する
図1中でピストン4よりも上方側の伸側室R1と
図1中でピストン4よりも下方側の圧側室R2とに区画している。そして、伸側室R1と圧側室R2内には、作動油等の液体が充填されている。なお、液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体とされてもよい。
【0035】
ピストン4は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路4aと圧側通路4bとを備えている。そして、伸側減衰バルブ11は、ピストン4の
図1中下方に積層されていて伸側通路4aの
図1中下端を開閉し、圧側減衰バルブ12は、ピストン4の
図1中上方に積層されていて圧側通路4bの
図1中上端を開閉する。これら伸側減衰バルブ11および圧側減衰バルブ12は、ともに環状板でなるリーフバルブを複数積層して構成される積層リーフバルブとされている。そして、伸側減衰バルブ11は、ピストンロッド3がシリンダ1に対して
図1中上方へ移動する緩衝器D1の伸長行程において、ピストン4によって圧縮される伸側室R1から拡大される圧側室R2へ向かって伸側通路4aを通過する作動油の流れに対して開弁するとともに抵抗を与える。圧側減衰バルブ12は、ピストンロッド3がシリンダ1に対して
図1中下方へ移動する緩衝器D1の収縮行程において、ピストン4によって圧縮される圧側室R2から拡大される伸側室R1へ向かって圧側通路4bを通過する作動油の流れに対して開弁するとともに抵抗を与える。また、リバウンドストッパ13は、環状であって圧側減衰バルブ12の
図1中上方に積層されており、ロッドガイド2に取付けられたリバウンドクッション15に対向している。
【0036】
また、ピストンロッド3は、本実施の形態では内部が中空な筒状であって、ピストンロッド3の小径部3aよりも
図2中上方から開口して内部に通じる横孔3bを備えている。このピストンロッド3の横孔3bと横孔3bよりも
図1中下方の中空部とで、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路Pが形成される。なお、ピストンロッド3の内周であって横孔3bよりも下方側には筒状の弁座部材16が装着され、また、ピストンロッド3内には、軸方向へ移動可能にニードル17aが挿入されている。ニードル17aは、ピストンロッド3内に挿通されたコントロールロッド17の先端に形成されており、ピストンロッド3の図示しない上端に装着される図外のアジャスタの操作によって軸方向へ移動可能である。そして、ニードル17aを弁座部材16に対して遠近させると、ニードル17aと弁座部材16との間に隙間を広狭させ得るので、通路Pを通過する作動油の流れに与える抵抗を大小変更できる。このように、本実施の形態の緩衝器D1は、弁座部材16とニードル17aとで構成される減衰力調整バルブVを備えている。なお、ニードル17aは、コントロールロッド17に一体に設けられいるが、コントロールロッド17とは別の部品とされてもよい。
【0037】
なお、シリンダ1の
図1中下端は、閉塞されており、詳しくは図示しないが、緩衝器D1を車体或いは車輪側に連結するブラケットを備えている。また、シリンダ1内には、圧側室R2の下方に気室Gを区画するフリーピストンFが摺動自在に挿入されている。
【0038】
そして、緩衝器D1が伸長する際には、圧縮される伸側室R1から拡大する圧側室R2へ向かう作動油の流れに対して伸側減衰バルブ11と減衰力調整バルブVとで抵抗を与え、緩衝器D1は、伸長を妨げる減衰力を発生する。よって、減衰力調整バルブVにおける前記隙間を広狭させることで緩衝器D1の伸側減衰力を高低調整し得る。また、緩衝器D1の伸長行程時には、ピストンロッド3がシリンダ1内から退出するために、ピストンロッド3がシリンダ1内から退出する体積に見合った分だけフリーピストンFが
図1中上方へ移動して気室Gが拡大し、ピストンロッド3がシリンダ1内から退出する体積の補償が行われる。
【0039】
反対に、緩衝器D1が収縮する際には、圧縮される圧側室R2から拡大する伸側室R1へ向かう作動油の流れに対して圧側減衰バルブ12と減衰力調整バルブVとで抵抗を与え、緩衝器D1は、収縮を妨げる減衰力を発生する。よって、減衰力調整バルブVにおける前記隙間を広狭させることで緩衝器D1の圧側減衰力を高低調整し得る。また、緩衝器D1の収縮の際には、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入するために、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入する体積に見合った分だけフリーピストンFが
図1中下方へ移動して気室Gが縮小し、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入する体積の補償が行われる。
【0040】
なお、前述したところでは、ピストンロッド3がシリンダ1内に出入りする体積の補償をシリンダ1内にフリーピストンFを設けて気室Gを形成することで行っているが、シリンダ1外に圧側室R2に連通されるリザーバタンクを設けて前記体積の補償を行ってもよい。その場合、圧側室R2とリザーバタンクとの間に圧側室R2からリザーバタンクへ向かう作動油の流れに抵抗を与えるベースバルブを設け、ベースバルブが圧側減衰力の発生に寄与するようにしてもよい。
【0041】
つづいて、ピストンロッド3の外周には、バルブホルダ6が軸方向へ移動可能に装着されている。また、バルブホルダ6は、弾性部材としてのコイルばねSを介してロッドガイド2に連結されている。バルブホルダ6は、
図2および
図3に示すように、環状であって内径がピストンロッド3の外径より大径な筒部6aと、筒部6aの内周に周方向に沿って設けられてピストンロッド3の外周に対向する環状溝6bと、筒部6aの
図2中下端外周となるストッパ側端の外周に設けられてリバウンドストッパ13に対向するフランジ部6cと、筒部6aの外周から開口して環状溝6bへ通じる通孔6dとを備えて構成されている。バルブホルダ6は、ピストンロッド3の外周に隙間を介して遊嵌されており、ピストンロッド3に対して軸方向への移動が可能である。また、環状溝6bは、バルブホルダ6がリバウンドストッパ13に当接した状態においてピストンロッド3の横孔3bに対向するように筒部6aに設けられている。
【0042】
バルブホルダ6の筒部6aの外周には、コイルばねSの
図2中下端が嵌合されており、バルブホルダ6は、ばね受部材20およびコイルばねSを介してロッドガイド2に連結されている。また、バルブホルダ6は、ピストンロッド3がシリンダ1に対して
図2中上方に移動し、
図3に示すようにリバウンドストッパ13に当接すると、筒部6aでピストンロッド3における横孔3bが設けられる範囲の外周を覆う。なお、バルブホルダ6の筒部6aの内径がピストンロッド3の外径よりも大径であるので、ピストンロッド3の横孔3bに筒部6aが対向しても、後述するチェックバルブ23が開弁状態では、バルブホルダ6とピストンロッド3との間および通路Pを介して圧側室R2と伸側室R1とが連通される。なお、本実施の形態の緩衝器D1では、弾性部材をコイルばねSとしているが、弾性部材は、コイルばねS以外のばねやゴムといった弾性体とされてもよい。
【0043】
バルブホルダ6の環状溝6b内には、チェックバルブ23が収容されている。チェックバルブ23は、
図2および
図4に示すように、一箇所に割23aを具備する円環状であって、環状溝6b内に収容されてピストンロッド3の外周に軸方向移動可能に装着されるとともに、外周を通孔6dに対向させている。
【0044】
チェックバルブ23における割23aの形状は、円環の一箇所を軸方向から見て径方向に対して傾斜する方向に切断してできる形状とされている。また、バルブホルダ6がリバウンドストッパ13に当接した状態では、環状溝6b内に収容されたチェックバルブ23は、ピストンロッド3の外周に開口する横孔3bに対向する。なお、チェックバルブ23は、樹脂製でも金属製でもよい。
【0045】
そして、チェックバルブ23は、外周側から径方向内側へ向けて押圧する圧力が作用すると両端が密着して割23aを閉じて縮径してピストンロッド3の外周に密着し、内周側から径方向外側へ向けて押圧する圧力が作用すると割23aの間隔を大きくするように拡径してピストンロッド3の外周との間に隙間を生じさせる。チェックバルブ23は、縮径してピストンロッド3の外周に密着しても外径が筒部6aの内径よりも小さくならず、環状溝6bから脱落しない。また、っ環状溝6bの深さは、チェックバルブ23がピストンロッド3に密着した状態から拡径してチェックバルブ23とピストンロッド3との間に隙間を生じさせ得るように設定されている。
【0046】
よって、チェックバルブ23が通路Pの開口である横孔3bに対向した状態では、外周にバルブホルダ6の通孔6dを介して伸側室R1の圧力が作用するとともに、内周に通路Pを介して圧側室R2の圧力が作用する。伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも大きい場合、チェックバルブ23は、割23aを閉じて縮径してピストンロッド3の外周に密着して通路Pの開口である横孔3bを閉塞する。このような状態では、チェックバルブ23は、通路Pを遮断して伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れを阻止する。反対に、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも大きい場合、チェックバルブ23は、割23aの間隔を広げて拡径してピストンロッド3の外周との間に隙間を生じさせて通路Pの開口である横孔3bを開放する。このような状態では、チェックバルブ23は、通路Pを開放して圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れを許容する。
【0047】
このように、チェックバルブ23は、バルブホルダ6に拡縮可能な状態で保持されており、通路Pに対向した状態で、液体が通路Pを伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合には通路Pを遮断し、液体が通路Pを圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合には通路Pを開放する。
【0048】
このように構成された緩衝器D1は、ピストンロッド3がシリンダ1に対して
図2中上方へ移動する伸長行程にあって、リバウンドストッパ13にバルブホルダ6が当接するまでピストンロッド3が移動すると、バルブホルダ6に保持されたチェックバルブ23が横孔3bに完全に対向する。緩衝器D1の伸長行程時では、通孔6dを介してチェックバルブ23の外周側に作用する伸側室R1の圧力が通路Pを介してチェックバルブ23の内周側に作用する圧側室R2の圧力よりも高くなるため、チェックバルブ23が縮径して割23aを閉じつつピストンロッド3の外周に密着して通路Pを遮断する。通路Pがチェックバルブ23によって閉じられる前は、伸側室R1と圧側室R2とが伸側通路4aと通路Pの双方を介して連通状態におかれ、通路Pがチェックバルブ23によって閉塞されると伸側通路4aのみで伸側室R1と圧側室R2とが連通される状態となる。このように、通路Pがチェックバルブ23によって閉塞されることにより流路面積が減少するため、緩衝器D1が発生する減衰力は、通路Pがチェックバルブ23により閉塞される前よりも閉塞された後の方が高くなる。前述のように、チェックバルブ23が通路Pを閉塞するようになると緩衝器D1は、伸側の減衰力を高めるのでピストンロッド3の伸長側への移動速度が減殺される。
【0049】
また、本実施の形態の緩衝器D1では、リバウンドストッパ13がバルブホルダ6に当接した状態からさらに伸長して、ピストンロッド3が
図3中上方へ移動すると、リバウンドクッション15がリバウンドストッパ13に当接して伸側室R1における環状の空隙L1と空隙L2との直接の連通を断つ。このように、通路Pがチェックバルブ23によって閉塞され、さらに、空隙L1と空隙L2との連通が断たれた状態では、ピストンロッド3がそれ
図2中上方へ移動しようとすると、空隙L1内の圧力が上昇して、緩衝器D1は、それ以上の伸長を抑制する液圧ロック機能を発揮する。このように緩衝器D1は、最伸長時にロック機能を発揮するので、リバウンドストッパ13がリバウンドクッション15を押しつぶしてロッドガイド2へ勢いよく衝突するのを防止できる。
【0050】
このように空隙L1がバルブホルダ6に設けられたチェックバルブ23およびリバウンドクッション15によって閉鎖された状態から、緩衝器D1が伸長行程から収縮行程に切り換わると、ピストンロッド3の
図2中下方への移動に伴って圧側室R2の圧力が上昇し、空隙L1の圧力が減少する。よって、通路Pを介してチェックバルブ23の内周に作用する圧側室R2の圧力が通孔6dを介してチェックバルブ23の外周に作用する空隙L1の圧力よりも高くなって、チェックバルブ23の両端が割23aの間隔を大きくするように離間してチェックバルブ23が拡径しチェックバルブ23の内周とピストンロッド3の外周との間に隙間が生じる。すると、チェックバルブ23が通路Pを開放して、通路P、チェックバルブ23とピストンロッド3との間、バルブホルダ6とピストンロッド3との間、チェックバルブ23の割23aおよび通孔6dを介して、圧側室R2と空隙L1とが連通状態となる。
【0051】
すると、圧側室R2の液体がチェックバルブ23の開弁によって伸側室R1内における空隙L1内へ移動して空隙L1の圧力が速やかに上昇するため、液圧ロックが解除され、緩衝器D1は、伸長作動から収縮作動への切り換わりにおいて過剰な減衰力を発揮することなく円滑に収縮する。つまり、緩衝器D1は、伸長作動から収縮作動への切り換わりにおいて、収縮行程初期で減衰力が大きくなることなく収縮し始める。また、通路Pの開閉は、バルブホルダ6によって行われるのではなく、チェックバルブ23によって行われるため、バルブホルダ6をロッドガイド2に連結するコイルばねSの影響を全く受けない。
【0052】
以上、本実施の形態の緩衝器D1は、液体が充填されるシリンダ1と、シリンダ1の端部に設けられた環状のロッドガイド2と、ロッドガイド2の内周に挿通されてシリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド3と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を圧側室R2とロッドガイド2に面する伸側室R1とに区画するピストン4と、ピストンロッド3の側方から開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路Pと、ピストンロッド3の外周に軸方向へ移動自在に装着されて通路Pに対向可能な環状のバルブホルダ6と、バルブホルダ6とロッドガイド2とを連結する弾性部材としてのコイルばねSと、ピストンロッド3に装着されてバルブホルダ6に軸方向で対向するストッパとしてのリバウンドストッパ13と、バルブホルダ6に保持されてバルブホルダ6が通路Pに対向した状態で液体が通路Pを伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合には通路Pを遮断し、液体が通路Pを圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合には通路Pを開放するチェックバルブ23とを備えて構成されている。
【0053】
このように構成された緩衝器D1では、伸長作動してバルブホルダ6に保持されたチェックバルブ23が通路Pの開口である横孔3bに対向するとチェックバルブ23が通路Pを遮断し、緩衝器D1が伸長作動から収縮作動に転じるとチェックバルブ23が通路Pを速やかに開放する。このように、本実施の形態の緩衝器D1は、最伸長後に収縮行程に切り換わった際にチェックバルブ23が速やかに通路Pを開放するので、最伸長時の液圧ロック機能を発揮しつつも、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて速やかに液圧ロックを解除して過剰な減衰力を発生することなく収縮作動する。また、チェックバルブ23の開閉動作は、バルブホルダ6を付勢するコイルばねSのばね力の大きさに何ら影響を受けない。
【0054】
よって、本実施の形態の緩衝器D1では、弾性部材であるコイルばねSのばね定数を大小変更しても、伸長行程から収縮行程に切り換わりの際のチェックバルブ23の開閉動作に何ら影響を与えない。以上より、本実施の形態の緩衝器D1によれば、コイルばね(弾性部材)Sの設定によらず、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいてチェックバルブ23が速やかに通路Pを開放できるので、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる。
【0055】
また、本実施の形態の緩衝器D1によれば、コイルばね(弾性部材)Sのばね定数の設定とは独立して、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける減衰力のチューニングをチェックバルブ23の設定で行うことができ、緩衝器D1の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける使用感(フィーリング)のみをチューニングできる。換言すれば、本実施の形態の緩衝器D1によれば、緩衝器D1の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける使用感(フィーリング)を変更せずにコイルばね(弾性部材)Sのばね定数を自由に設定できる。
【0056】
また、本実施の形態の緩衝器D1では、バルブホルダ6が環状であってコイルばね(弾性部材)Sに連結されるとともに、内周にピストンロッド3の外周に対向する環状溝6bと、外周から環状溝6bに連通する通孔6dとを有し、チェックバルブ23が一箇所に割23aを具備する円環状であって環状溝6b内に収容されてピストンロッド3の外周に軸方向移動可能に装着されるとともに外周を通孔6dに対向させている。このように構成された緩衝器D1は、チェックバルブ23を簡単な構成で実現でき、安価に製造できる。なお、本実施の形態の緩衝器D1では、バルブホルダ6の内径がピストンロッド3の外径よりも大径であるので、チェックバルブ23の開弁時には、割23aと通孔6dでなる流路に加えてバルブホルダ6とピストンロッド3との間の隙間を介して通路Pと伸側室R1とを連通させるので、チェックバルブ23の開弁時の流路を大きく確保でき、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを効果的に抑制できる。バルブホルダ6とピストンロッド3との間の隙間を通路Pと伸側室R1とを連通させる流路として利用しない場合、バルブホルダ6の筒部6aの内周をピストンロッド3の外周に摺接させてもよい。
【0057】
さらに、本実施の形態の緩衝器D1では、チェックバルブ23の割23aの形状が円環の一箇所を軸方向から見て径方向に対して傾斜する方向に切断してできる形状となっている。このように構成された緩衝器D1によれば、チェックバルブ23が外周側から作用する圧力によって縮径した際に、周方向の両端の端面の面積を大きくできるとともに、割23aを狭めて両端の端面同士を接触した際にチェックバルブ23の外周側の圧力で前記端面同士を押し付けて密着させ得るので、通路Pを密に遮断できる。よって、このように構成された緩衝器D1によれば、最伸長時に空隙L1の密閉性を高めて高い液圧ロック効果を得られる。
【0058】
なお、チェックバルブ23の割23aは、
図5に示すように、円環の一箇所を径方向から見て径方向にまっすぐに切断してできる形状(
図5(a)参照)や、径方向から見て斜めに切断してできる形状(
図5(b)参照)、径方向から見て階段状に切断した形状(
図5(c)参照)、他にも蛇行やジグザグとなる形状といった様々な形状に設定されてもよい。ただし、
図4に示したように、割23aが斜めに切断した形状である方が通路Pの遮断性能が向上する。また、チェックバルブ23は、周方向で割23aが横孔3bと対向する位置にあるのが好ましいが、拡径時にはチェックバルブ23とピストンロッド3との間に隙間が形成されて液体が筒部6aとピストンロッド3との間を通過できるので、必ずしも割23aが横孔3bに対向していなくともよい。
【0059】
さらに、チェックバルブ24は、
図6に示したチェックバルブの一変形例に示すように、割24aを具備する周方向の両端24b,24cが径方向で互いに重なるように構成されてもよい。この場合も、チェックバルブ24が外周側から作用する圧力によって縮径した際に、チェックバルブ24は、割24aを狭めて両端24b,24c同士が接触した際に外周側の圧力で両端24b,24c同士が押し付けられて密着されるので、通路Pを密に遮断できる。よって、このように一変形例のチェックバルブ24を備えた緩衝器D1によれば、最伸長時に空隙L1の密閉性を高めて高い液圧ロック効果を得られる。
【0060】
また、チェックバルブ25は、
図7に示した第2の実施の形態の緩衝器D2のように構成されてもよい。第2の実施の形態の緩衝器D2は、チェックバルブ25およびバルブホルダ26の構成が第1の実施の形態の緩衝器D1と異なっているが、その他の構成は緩衝器D1と同一の構成を備えている。よって、第2の実施の形態の緩衝器D2の説明では、説明が重複するため、第1の実施の形態の緩衝器D1と同様の部品については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。このことは、後述する第3の実施の形態の緩衝器D3の説明においても同様である。
【0061】
第2の実施の形態の緩衝器D2におけるチェックバルブ25は、バルブホルダ26の内周に設けられた環状溝26b内に軸方向へ移動可能に収容されてバルブホルダ26に移動可能に保持されている。バルブホルダ26は、
図7に示すように、環状であって内径がピストンロッド3の外径より大径な筒部26aと、筒部26aの内周に設けられてピストンロッド3の外周に対向する環状溝26bと、筒部26aの
図7中下端外周となるストッパ側端の外周に設けられてリバウンドストッパ13に対向するフランジ部26cとを備えて構成されている。バルブホルダ26は、ピストンロッド3の外周に隙間を介して遊嵌されており、ピストンロッド3に対して軸方向への移動が可能である。また、環状溝26bは、バルブホルダ26がリバウンドストッパ13に当接した状態においてピストンロッド3の横孔3bに対向するように筒部26aに設けられている。
【0062】
バルブホルダ26の筒部26aの外周には、コイルばねSの
図7中下端が嵌合されており、バルブホルダ26は、ばね受部材20およびコイルばねSを介してロッドガイド2に連結されている。また、バルブホルダ26は、ピストンロッド3がシリンダ1に対して
図7中上方に移動し、リバウンドストッパ13に当接すると、筒部26aをピストンロッド3における横孔3bが設けられる範囲の外周を覆う。なお、バルブホルダ26の筒部26aの内径がピストンロッド3の外径よりも大径であるので、後述するチェックバルブ25が開弁した状態では、バルブホルダ26がピストンロッド3の横孔3bに筒部26aが対向してもバルブホルダ26とピストンロッド3との間および通路Pを介して圧側室R2と伸側室R1とが連通される。なお、バルブホルダ26における筒部26aの環状溝26bよりも
図7中下方側となるピストン側とピストンロッド3との間にも隙間があるものの、バルブホルダ26がリバウンドストッパ13と当接すると液体は筒部26aの環状溝26bよりも
図7中下方側とピストンロッド3との間の隙間を通過し得ない。
【0063】
バルブホルダ26の環状溝26b内には、チェックバルブ25が収容されている。チェックバルブ25は、
図7に示すように、円環状であって内周のピストン側に環状の凹部25bを有する本体25aと、本体25aの外周に設けられて本体25aの
図7中下端となるピストン側端から
図7中上端となる反ピストン側端へ通じる外周溝25cと、本体25aの反ピストン側の端部に設けられて少なくとも筒部26aの内周よりも内側から開口して外周溝25cに通じる端部溝25dとを備えている。
【0064】
また、チェックバルブ25の軸方向長さは、環状溝26bの軸方向長さよりも短く、チェックバルブ25の本体25aの外周は、環状溝26bの底面を形成する内周面に摺接している。さらに、チェックバルブ25の本体25aの内径は、バルブホルダ26の筒部26aの最小内径よりも小さく、本体25aの内周は、ピストンロッド3の外周に摺接している。よって、チェックバルブ25は、ピストンロッド3に対して軸方向への移動が可能であって、かつ、バルブホルダ26の環状溝26b内で軸方向への移動が可能となっている。チェックバルブ25は、バルブホルダ26に対して、バルブホルダ26がリバウンドストッパ13に当接するとピストンロッド3の横孔3bに対向するように配置されている。なお、本体25aに設けられる凹部25bは、チェックバルブ25が横孔3bに対向した際に通路Pを通じて圧側室R2の圧力を受けてチェックバルブ25に
図7中で上方側となる反ピストン側へ付勢力を作用させ得るように設けられている。よって、凹部25bは、少なくとも、本体25aの内周側であって反ピストン側の端部に通じずにピストン側の端部に開口するように設けられていればよく、凹部25bの形状は特に限定されない。
【0065】
バルブホルダ26がリバウンドストッパ13に当接した状態で、チェックバルブ25のピストン側端の端面がバルブホルダ26の環状溝26bの
図7中下方のピストン側の側壁に当接すると、通路Pの開口である横孔3bにチェックバルブ25が対向して外周溝25cと通路Pとの連通が断たれるとともに、チェックバルブ25の本体25aがピストンロッド3に摺接して通路Pとバルブホルダ26とピストンロッド3との間の隙間との連通が断たれる。前述した通り、バルブホルダ26がリバウンドストッパ13に当接しているので、液体は筒部26aの環状溝26bよりも
図7中下方側とピストンロッド3との間の隙間を通過し得ない。よって、チェックバルブ25は、チェックバルブ25のピストン側端の端面がバルブホルダ26の環状溝26bの
図7中下方のピストン側の側壁に当接し、かつ、横孔3bに対向する状態では、通路Pを遮断する。
【0066】
これに対して、チェックバルブ25の反ピストン側端の端面がバルブホルダ26の環状溝26bの
図7中上方の反ピストン側の側壁に当接した状態においては、通路Pの開口である横孔3bにチェックバルブ25が対向しても、通路Pが外周溝25c、端部溝25d、バルブホルダ26とピストンロッド3との間とを介して伸側室R1内の空隙L1に連通する。よって、チェックバルブ25は、チェックバルブ25のピストン側端の端面がバルブホルダ26の環状溝26bの
図7中下方のピストン側の側壁から離間し、かつ、横孔3bに対向する状態では、通路Pを開放する。
【0067】
そして、チェックバルブ25の本体25aの凹部25bには、通路Pを介して圧側室R2の圧力が導かれ、本体25aの反ピストン側の端面にはバルブホルダ26とピストンロッド3との間の隙間を介して伸側室R1の圧力が作用する。よって、バルブホルダ26がリバウンドストッパ13に当接し、チェックバルブ25が横孔3bに対向した状態で、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも大きい場合、チェックバルブ25は、環状溝26bの
図7中下方のピストン側の側壁へ押し付けられて通路Pを遮断する。このような状態では、チェックバルブ25は、通路Pを遮断して伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れを阻止する。他方、バルブホルダ26がリバウンドストッパ13に当接し、チェックバルブ25が横孔3bに対向した状態で、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも大きい場合、チェックバルブ25は、環状溝26bの
図7中上方の反ピストン側の側壁へ押し付けられて通路Pを開放する。このような状態では、チェックバルブ25は、通路Pを開放して圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れを許容する。
【0068】
なお、バルブホルダ26の筒部26aがピストンロッド3の外周に摺接する場合、筒部26aに伸側室R1と環状溝26bの
図7中上端側となる反ピストン側とを連通する通孔を設けて、チェックバルブ25が環状溝26bの
図7中上方の反ピストン側の側壁へ当接した際に通孔と外周溝25cとが連通するようにしてもよい。この場合、チェックバルブ25の反ピストン側の外周を切り欠いて環状凹部を設け、通孔と外周溝25cとを環状凹部を通じて連通させると、チェックバルブ25を周方向に位置決めせずとも通孔と外周溝25cとを確実に連通させ得る。
【0069】
このように、チェックバルブ25は、第1の実施の形態の緩衝器D1におけるチェックバルブ23と同様に、バルブホルダ26に保持されて通路Pに対向した状態で、液体が通路Pを伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合には通路Pを遮断し、液体が通路Pを圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合には通路Pを開放する。よって、このように構成された第2の実施の形態の緩衝器D2は、第1の実施の形態の緩衝器D1と同様に、伸長行程にあってリバウンドストッパ13にバルブホルダ26が当接するまでピストンロッド3が移動すると、バルブホルダ26に保持されたチェックバルブ25が横孔3bに対向して通路Pを遮断する。
【0070】
また、チェックバルブ25が通路Pを遮断した状態から、緩衝器D2が伸長行程から収縮行程に切り換わると、ピストンロッド3の
図7中下方への移動に伴って圧側室R2の圧力が上昇し、伸側室R1の圧力が減少して、チェックバルブ25が通路Pを開放して、圧側室R2と伸側室R1とを連通状態とする。
【0071】
よって、第2の実施の形態の緩衝器D2は、第1の実施の形態の緩衝器D1と同様に、最伸長時に液圧ロック機能を発揮するとともに、伸長作動から収縮作動への切り換わりにおいて過剰な減衰力を発揮することなく円滑に収縮する。また、第2の実施の形態の緩衝器D2においても、通路Pの開閉は、バルブホルダ26によって行われるのではなく、チェックバルブ25によって行われるため、バルブホルダ26をロッドガイド2に連結するコイルばねSの影響を全く受けない。
【0072】
以上、本実施の形態の緩衝器D2は、液体が充填されるシリンダ1と、シリンダ1の端部に設けられた環状のロッドガイド2と、ロッドガイド2の内周に挿通されてシリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド3と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を圧側室R2とロッドガイド2に面する伸側室R1とに区画するピストン4と、ピストンロッド3の側方から開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路Pと、ピストンロッド3の外周に軸方向へ移動自在に装着されて通路Pに対向可能な環状のバルブホルダ26と、バルブホルダ26とロッドガイド2とを連結する弾性部材としてのコイルばねSと、ピストンロッド3に装着されてバルブホルダ26に軸方向で対向するストッパとしてのリバウンドストッパ13と、バルブホルダ26に保持されてバルブホルダ26が通路Pに対向した状態で液体が通路Pを伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合には通路Pを遮断し、液体が通路Pを圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合には通路Pを開放するチェックバルブ25とを備えて構成されている。
【0073】
このように構成された緩衝器D2によれば、第1の実施の形態の緩衝器D1と同様に、伸長作動してバルブホルダ26に保持されたチェックバルブ25が通路Pの開口である横孔3bに対向するとチェックバルブ25が通路Pを遮断し、緩衝器D1が伸長作動から収縮作動に転じるとチェックバルブ25が通路Pを速やかに開放する。このように、本実施の形態の緩衝器D2は、最伸長後に収縮行程に切り換わった際にチェックバルブ25が速やかに通路Pを開放するので、最伸長時の液圧ロック機能を発揮しつつも、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて速やかに液圧ロックを解除して過剰な減衰力を発生することなく収縮作動する。また、チェックバルブ25の開閉動作は、バルブホルダ26を付勢するコイルばねSのばね力の大きさに何ら影響を受けない。
【0074】
よって、本実施の形態の緩衝器D2では、弾性部材であるコイルばねSのばね定数を大小変更しても、伸長行程から収縮行程に切り換わりの際のチェックバルブ25の開閉動作に何ら影響を与えない。以上より、本実施の形態の緩衝器D2によれば、コイルばね(弾性部材)Sの設定によらず、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいてチェックバルブ25が速やかに通路Pを開放できるので、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる。
【0075】
また、本実施の形態の緩衝器D2によれば、コイルばね(弾性部材)Sのばね定数の設定とは独立して、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける減衰力のチューニングをチェックバルブ25の設定で行うことができ、緩衝器D2の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける使用感(フィーリング)のみをチューニングできる。換言すれば、本実施の形態の緩衝器D2によれば、緩衝器D2の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける使用感(フィーリング)を変更せずにコイルばね(弾性部材)Sのばね定数を自由に設定できる。
【0076】
また、本実施の形態の緩衝器D2では、バルブホルダ26が環状であってコイルばね(弾性部材)Sに連結されるとともに内周にピストンロッド3の外周に対向する環状溝26bを備え、チェックバルブ25が円環状であって内周のピストン側に環状の凹部25bを有する本体25aと、本体25aの外周に設けられて本体25aのピストン側端から反ピストン側端へ通じる外周溝25cと、本体25aの反ピストン側の端部に設けられて少なくとも環状溝26bの内周よりも内側から開口して外周溝25cに通じる端部溝25dとを備えている。このように構成された緩衝器D2は、チェックバルブ25を簡単な構成で実現でき、安価に製造できる。
【0077】
さらに、チェックバルブ27は、
図8に示した第3の実施の形態の緩衝器D3のように構成されてもよい。第3の実施の形態の緩衝器D3は、チェックバルブ27およびバルブホルダ28の構成が第1の実施の形態の緩衝器D1と異なっているが、その他の構成は緩衝器D1と同一の構成を備えている。
【0078】
第3の実施の形態の緩衝器D3におけるチェックバルブ27は、バルブホルダ28の内周に設けられた環状溝28b内に軸方向へ移動可能に収容されて、バルブホルダ28に移動可能に保持されている。
【0079】
バルブホルダ28は、
図8に示すように、環状であって内径がピストンロッド3の外径より大径な筒部28aと、筒部28aの内周に設けられてピストンロッド3の外周に対向する環状溝28bと、筒部28aの
図8中下端外周となるストッパ側端の外周に設けられてリバウンドストッパ13に対向するフランジ部28cと、筒部28aの外周から開口して環状溝28b内に通じる通孔28dとを備えて構成されている。バルブホルダ28は、ピストンロッド3の外周に隙間を介して遊嵌されており、ピストンロッド3に対して軸方向への移動が可能である。また、環状溝28bは、バルブホルダ26がリバウンドストッパ13に当接した状態においてピストンロッド3の横孔3bに対向するように筒部28aに設けられている。
【0080】
バルブホルダ28の筒部28aの外周には、コイルばねSの
図8中下端が嵌合されており、バルブホルダ28は、ばね受部材20およびコイルばねSを介してロッドガイド2に連結されている。また、バルブホルダ28は、ピストンロッド3がシリンダ1に対して
図8中上方に移動し、リバウンドストッパ13に当接すると、筒部28aをピストンロッド3における横孔3bが設けられる範囲の外周を覆う。なお、バルブホルダ28の筒部28aの内径がピストンロッド3の外径よりも大径となっているので、後述するチェックバルブ27が無ければ、ピストンロッド3の横孔3bに筒部28aが対向してもバルブホルダ28とピストンロッド3との間および通路Pを介して圧側室R2と伸側室R1とが連通されるが、バルブホルダ28の筒部28aをピストンロッド3の外周に摺接させてもよい。
【0081】
バルブホルダ28の環状溝28b内には、チェックバルブ27が収容されている。チェックバルブ27は、
図8に示すように、円環状であって環状溝28b内に軸方向移動可能に収容されてピストンロッド3の外周に摺接するとともに互いに軸方向で対向する一対の弁体30,31と、環状溝28b内に収容されて弁体30,31同士を挟んで互いに弁体30,31を軸方向で当接させる方向へ付勢する一対のばね部材32,33とを備えている。
【0082】
弁体30,31は、ともに同一の形状をしている。弁体30は、円環状であって内周のピストン側に環状の凹部30aを備えている。弁体31は、円環状であって内周の反ピストン側に環状の凹部31aを備えている。そして、弁体30,31は、一方を天地逆にして互いの凹部30a,31a同士が向き合うように積層した状態で環状溝28b内に収容される。また、ばね部材32,33は、本実施の形態の緩衝器D3では、ウェーブワッシャとされており、軸方向で弁体30,31を上下に挟むようにして弁体30,31とともに環状溝28b内に収容されており、常時、弁体30,31同士を軸方向で当接させる方向に付勢している。よって、弁体30,31は、伸側室R1と圧側室R2の圧力が作用しない無負荷状態では、ばね部材32,33によって互いに当接した状態に維持される。なお、ばね部材32,33は、ウェーブワッシャ以外にも皿ばねやゴム等の弾性体とされてもよい。
【0083】
また、互いに当接した状態における弁体30,31の全体の軸方向長さは、環状溝28bの軸方向長さよりも短く、弁体30,31の外周は、環状溝28bの底面を形成する内周面に摺接している。さらに、弁体30,31の内径は、バルブホルダ28の筒部28aの最小内径よりも小さく、弁体30,31の内周は、ピストンロッド3の外周に摺接している。よって、チェックバルブ27における弁体30,31は、ピストンロッド3に対して軸方向への移動が可能であって、かつ、バルブホルダ28の環状溝28b内で軸方向への移動が可能となっている。また、バルブホルダ28とピストンロッド3との間に隙間が形成されているので、弁体30,31によってバルブホルダ28がピストンロッド3に対して径方向に位置決めされる。このように、バルブホルダ28の内径をピストンロッド3の外径よりも大径にして、弁体30,31の外周をバルブホルダ28に摺接させる構造を採用しているので、バルブホルダ28がピストンロッド3から離間しているため弁体30,31の軸方向への移動を妨げない。なお、バルブホルダ28をピストンロッド3の外周に摺接させる場合、弁体30,31の外周径を環状溝28bの底面の径よりも小さくするとよい。弁体30,31とバルブホルダ28とピストンロッド3に摺接する場合、何れかに寸法誤差が生じて径方向にずれてしまうと、弁体30,31とバルブホルダ28との間に緊迫力が生じて弁体30,31の円滑な軸方向への移動が妨げられる可能性があるが、本実施の形態の構成及び前述の構成を採用すれば、弁体30,31の円滑な軸方向移動を保証し得る。
【0084】
また、チェックバルブ27における弁体30,31は、互いに向き会う端面同士を当接させた状態でバルブホルダ28がリバウンドストッパ13に当接すると、ピストンロッド3の横孔3bに対向するように配置されている。
【0085】
そして、バルブホルダ28がリバウンドストッパ13に当接し、弁体30,31が互いに向き会う端面同士を当接させた状態では、弁体30,31が通路Pの横孔3bに対向して通路Pを遮断して伸側室R1と圧側室R2との連通を断つ。前述した通り、バルブホルダ28がリバウンドストッパ13に当接しているので、液体は筒部28aの環状溝28bよりも
図8中下方側とピストンロッド3との間の隙間を通過し得ない。また、ピストンロッド3の外周に弁体30,31が摺接しているので、液体は、ピストンロッド3と弁体30,31間も通過し得ず、弁体30,31同士が当接して外周をバルブホルダ28に摺接させているので通孔28dと通路Pとの連通も断たれている。以上より、チェックバルブ27は、バルブホルダ28がリバウンドストッパ13に当接し、且つ、弁体30,31が互いに向き会う端面同士を当接させた状態では通路Pを遮断する。
【0086】
これに対して、弁体30,31がばね部材32,33のばね力に抗して離間すると、通路Pとバルブホルダ28の通孔28dとが連通して伸側室R1と圧側室R2とが連通される。よって、チェックバルブ27は、弁体30,31同士が離間すると通路Pを開放する。
【0087】
そして、チェックバルブ27の弁体30,31の凹部30a,31aには、通路Pを介して圧側室R2の圧力が導かれ、弁体30,31は、凹部30a,31aに作用する圧側室R2の圧力によって互いに離間する方向へ付勢される。よって、バルブホルダ28がリバウンドストッパ13に当接し、弁体30,31が横孔3bに対向した状態であっても、圧側室R2の圧力による弁体30,31を離間させる力が小さく、ばね部材32,33のばね力に抗して弁体30,31が離間できない場合、チェックバルブ27は通路Pを遮断する。圧側室R2の圧力が小さくなるのは、緩衝器D3の伸長作動時であるので、チェックバルブ27は、緩衝器D3の伸長作動時は閉弁して通路Pを液体が伸側室R1から圧側室R2へ向かって流れるのを阻止する。他方、バルブホルダ28がリバウンドストッパ13に当接し、弁体30,31が横孔3bに対向した状態で、圧側室R2の圧力による弁体30,31を離間させる力が大きくなってばね部材32,33のばね力に抗して弁体30,31が離間すると、チェックバルブ27は通路Pを開放する。このような状態では、チェックバルブ27は、通路Pを開放して圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れを許容する。
【0088】
このように、チェックバルブ27は、第1の実施の形態の緩衝器D1におけるチェックバルブ23と同様に、バルブホルダ28に保持されて通路Pに対向した状態で、液体が通路Pを伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合には通路Pを遮断し、液体が通路Pを圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合には通路Pを開放する。よって、このように構成された第3の実施の形態の緩衝器D3は、第1の実施の形態の緩衝器D1と同様に、伸長行程にあってリバウンドストッパ13にバルブホルダ28が当接するまでピストンロッド3が移動すると、バルブホルダ28に保持されたチェックバルブ27が横孔3bに対向して通路Pを遮断する。
【0089】
また、チェックバルブ27が通路Pを遮断した状態から、緩衝器D3が伸長行程から収縮行程に切り換わると、ピストンロッド3の
図8中下方への移動に伴って圧側室R2の圧力が上昇し、チェックバルブ27が通路Pを開放して、圧側室R2と伸側室R1とを連通状態とする。
【0090】
よって、第3の実施の形態の緩衝器D3は、第1の実施の形態の緩衝器D1と同様に、最伸長時に液圧ロック機能を発揮するとともに、伸長作動から収縮作動への切り換わりにおいて過剰な減衰力を発揮することなく円滑に収縮する。また、第3の実施の形態の緩衝器D3においても、通路Pの開閉は、バルブホルダ28によって行われるのではなく、チェックバルブ27によって行われるため、バルブホルダ28をロッドガイド2に連結するコイルばねSの影響を全く受けない。
【0091】
以上、本実施の形態の緩衝器D3は、液体が充填されるシリンダ1と、シリンダ1の端部に設けられた環状のロッドガイド2と、ロッドガイド2の内周に挿通されてシリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド3と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を圧側室R2とロッドガイド2に面する伸側室R1とに区画するピストン4と、ピストンロッド3の側方から開口して伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路Pと、ピストンロッド3の外周に軸方向へ移動自在に装着されて通路Pに対向可能な環状のバルブホルダ28と、バルブホルダ28とロッドガイド2とを連結する弾性部材としてのコイルばねSと、ピストンロッド3に装着されてバルブホルダ28に軸方向で対向するストッパとしてのリバウンドストッパ13と、バルブホルダ28に保持されてバルブホルダ28が通路Pに対向した状態で液体が通路Pを伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合には通路Pを遮断し、液体が通路Pを圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合には通路Pを開放するチェックバルブ27とを備えて構成されている。
【0092】
このように構成された緩衝器D3によれば、第1の実施の形態の緩衝器D1と同様に、伸長作動してバルブホルダ28に保持されたチェックバルブ27が通路Pの開口である横孔3bに対向するとチェックバルブ27が通路Pを遮断し、緩衝器D1が伸長作動から収縮作動に転じるとチェックバルブ27が通路Pを速やかに開放する。このように、本実施の形態の緩衝器D3は、最伸長後に収縮行程に切り換わった際にチェックバルブ27が速やかに通路Pを開放するので、最伸長時の液圧ロック機能を発揮しつつも、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて速やかに液圧ロックを解除して過剰な減衰力を発生することなく収縮作動する。また、チェックバルブ27の開閉動作は、バルブホルダ28を付勢するコイルばねSのばね力の大きさに何ら影響を受けない。
【0093】
よって、本実施の形態の緩衝器D3では、弾性部材であるコイルばねSのばね定数を大小変更しても、伸長行程から収縮行程に切り換わりの際のチェックバルブ27の開閉動作に何ら影響を与えない。以上より、本実施の形態の緩衝器D2によれば、コイルばね(弾性部材)Sの設定によらず、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいてチェックバルブ27が速やかに通路Pを開放できるので、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる。
【0094】
また、本実施の形態の緩衝器D3によれば、コイルばね(弾性部材)Sのばね定数の設定とは独立して、最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける減衰力のチューニングをチェックバルブ27の設定で行うことができ、緩衝器D3の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける使用感(フィーリング)のみをチューニングできる。換言すれば、本実施の形態の緩衝器D3によれば、緩衝器D3の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおける使用感(フィーリング)を変更せずにコイルばね(弾性部材)Sのばね定数を自由に設定できる。
【0095】
また、本実施の形態の緩衝器D3では、バルブホルダ28が環状であってコイルばね(弾性部材)Sに連結されるとともに内周に周方向に沿って設けられてピストンロッド3の外周に対向する環状溝28bと、外周から環状溝28bに連通する通孔28dとを有し、チェックバルブ27が円環状であって、環状溝28b内に軸方向へ移動可能に収容されてピストンロッド3の外周に摺接するとともに互いに軸方向で対向する一対の弁体30,31と、環状溝28b内に収容されて弁体30,31同士を挟んで互いに弁体30,31を軸方向で当接させる方向へ付勢する一対のばね部材32,33とを有し、弁体30,31が互いに対向する端部の内周に伸側室R1の圧力を受ける凹部30a,31aを有している。このように構成された緩衝器D3は、チェックバルブ25を簡単な構成で実現でき、安価に製造できる。また、このように構成された緩衝器D3では、チェックバルブ27は、閉弁時に弁体30,31がバルブホルダ28の通孔28dを外周で遮断するため、伸側室R1の圧力とは無関係に圧側室R2のみの圧力によって開弁するから、開弁タイミングの設定が簡単となる。
【0096】
なお、前述した各実施の形態の緩衝器D1,D2,D3では、チェックバルブ23,25,27は、バルブホルダ6,26,28の内周側に保持されており、通路Pにおけるピストンロッド3の横孔3bの開口を直接に開閉する構造を採用しているが、バルブホルダが横孔3bに対向した際に通路Pと伸側室R1とを連通するホルダ内通路を設けて、チェックバルブがホルダ内通路を開閉する構造を採用してもよい。たとえば、第1の実施の形態の緩衝器D1では、バルブホルダ6の筒部6aの内周側にチェックバルブ23を収容する環状溝6bを設けて、筒部6aの外周から環状溝6bに通じる通孔6dを設けていたが、バルブホルダ61は、
図9(a)に示すように構成されてもよい。
図9(a)に示したバルブホルダ61は、ピストンロッド3の外周に摺接する筒部61aと、筒部61aの外周に設けた環状溝61bと、筒部61aの
図7中下端外周となるストッパ側端の外周に設けられてリバウンドストッパ13に対向するフランジ部61cと、筒部61aの内周から開口して環状溝61bへ通じる通孔61dとを備えて構成されている。そして、チェックバルブ23は、バルブホルダ61の外周側から環状溝61b内に装着されている。よって、チェックバルブ23の外周には常時、伸側室R1の圧力がチェックバルブ23を縮径させるように作用し、バルブホルダ61がピストンロッド3に設けた横孔3bに対向した状態では、チェックバルブ23の内周には、通路Pおよび通孔61dを介して圧側室R2内の圧力がチェックバルブ23を拡径させるように作用する。このように、チェックバルブ23をバルブホルダ61の外周に形成された環状溝61b内に収容する構成を採用した緩衝器は、前述した第1の実施の形態の緩衝器D1と同様の動作を行ってチェックバルブ23が通路Pを開閉するので、緩衝器D1の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる。
【0097】
さらに、
図9(b)に示すように、このバルブホルダ61の環状溝61b内に第3の実施の形態の緩衝器D3におけるチェックバルブ27を収容しても、緩衝器D3と同様に緩衝器D3の最伸長後の収縮行程への切り換わりにおいて減衰力が過剰となるのを抑制してスムーズな収縮を実現できる。なお、この場合のチェックバルブ27における弁体30,31が伸側室R1に全体が暴露されているため伸側室R1の圧力が弁体30,31同士を当接させるように付勢するので、チェックバルブ27の開弁動作は伸側室R1の圧力の影響を受ける。
【0098】
また、本実施の形態の緩衝器D1,D2,D3は、ロッドガイド2に装着されて、リバウンドストッパ(ストッパ)13に当接した際に内周側に空隙L1を形成する環状のリバウンドクッション15を備えている。このように構成された緩衝器D1,D2,D3によれば、バルブホルダ6で通路Pを閉塞した後にリバウンドクッション15とリバウンドストッパ(ストッパ)13とが当接すると、空隙L1を伸側室R1および圧側室R2から隔絶して液圧ロック機能を発揮できるから、ロッドガイド2とリバウンドストッパ(ストッパ)13との衝突を阻止し得る。なお、本実施の形態の緩衝器D1,D2,D3は、コイルばね(弾性部材)Sでバルブホルダ6をロッドガイド2に連結をしており、バルブホルダ6を下方に配置でき、緩衝器D1,D2,D3の最伸長時の衝撃を緩和できるので、液圧ロック機能の発揮が不要であれば緩衝器D1,D2,D3の最伸長時に密閉される空隙L1を形成するリバウンドクッション15を省略できる。また、前述した実施の形態では、通路Pに減衰力調整バルブVを設けていたが、減衰力調整バルブVは廃止されてもよい。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1・・・シリンダ、2・・・ロッドガイド、3・・・ピストンロッド、4・・・ピストン、6,26,28,61・・・バルブホルダ、6b,26b,28b,61b・・・環状溝、6d,28d・・・通孔、13・・・リバウンドストッパ(ストッパ)、15・・・リバウンドクッション、23,24,25,27・・・チェックバルブ、23a,24a・・・割、25a・・・本体、25b・・・凹部、25c・・・外周溝、25d・・・端部溝、30,31・・・弁体、30a,31a・・・凹部、32,33・・・ばね部材、D1,D2,3・・・緩衝器、L1・・・空隙、P・・・通路、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、S・・・コイルばね(弾性部材)