(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106401
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ズームレンズ及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20220712BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220712BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20220712BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001359
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】水間 章
(72)【発明者】
【氏名】中原 誠
【テーマコード(参考)】
2H087
2K005
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087MA16
2H087NA07
2H087NA14
2H087PA08
2H087PA09
2H087PA20
2H087PB11
2H087PB12
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA14
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA42
2H087SA43
2H087SA47
2H087SA49
2H087SA52
2H087SA56
2H087SA57
2H087SA62
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA73
2H087SB04
2H087SB13
2H087SB23
2H087SB33
2H087SB43
2K005AA01
2K005AA05
2K005CA02
2K005CA23
(57)【要約】
【課題】全ズーム範囲で高い光学性能を有し、小型で軽量なズームレンズを提供する。
【解決手段】ズームレンズ(1a)は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群(L1)、負の屈折力の第2レンズ群(L2)、正の屈折力の第3レンズ群(L3)、および、正の屈折力の第4レンズ群(L4)を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔は広がり、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔は狭まり、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔は狭まり、第3レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された正レンズと負レンズとからなり、望遠端におけるズームレンズの光学全長TLt、望遠端におけるズームレンズの焦点距離ft、第3レンズ群の焦点距離f3は、所定の条件式を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、および、正の屈折力の第4レンズ群を有し、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔は広がり、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔は狭まり、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間隔は狭まり、
前記第3レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された正レンズと負レンズとからなり、
望遠端におけるズームレンズの光学全長をTLt、望遠端におけるズームレンズの焦点距離をft、前記第3レンズ群の焦点距離をf3とするとき、
0.50 <TLt/ft<0.69
0.10< f3/ft<0.58
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記第3レンズ群の前記正レンズと前記負レンズとの間隔をD3、前記第3レンズ群の全肉厚をLT3とするとき、
0.25<D3/LT3<1.00
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第3レンズ群の前記正レンズのアッベ数をνdpとするとき、
νdp>65
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第3レンズ群の前記負レンズのd線における屈折率をNdnとするとき、
Ndn>1.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第3レンズ群の前記負レンズのアッベ数をνdn、部分分散比をθgFnとするとき、
25<νdn<45
θgFn-0.6438+0.001682×νdn<0.02
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第3レンズ群の前記負レンズは、像側に凸のメニスカス形状を有し、物体側および像側の曲率半径をそれぞれRpf、Rprとするとき、
-10.0<(Rpf+Rpr)/(Rpf-Rpr)<-1.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第4レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズと、正レンズまたは負レンズとの2枚のレンズからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第4レンズ群のうち像側に設けられた前記正レンズまたは前記負レンズは、非球面を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された負レンズと正レンズとの接合レンズからなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記第4レンズ群よりも像側に配置された負の屈折力の第5レンズ群を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記第5レンズ群よりも像側に配置された第6レンズ群を更に有することを特徴とする請求項10に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第5レンズ群は、無限から至近へのフォーカシングを行うフォーカスレンズ群であることを特徴とする請求項10または11に記載のズームレンズ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のズームレンズと、該ズームレンズによって形成された像を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に関し、特に銀塩フィルムカメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ等のズームレンズ及びそれを有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置には、高画素の撮像素子が用いられている。このような撮像装置に用いられる光学系は、諸収差が良好に補正され、画面全体にわたり高い光学性能を有するとともに、小型かつ軽量であることが要求される。
【0003】
特許文献1には、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群、および正の屈折力の第6レンズ群を有するズームレンズが開示されている。このズームレンズにおいて、第3レンズ群は、正レンズと像側に凸の負メニスカスレンズの2枚のレンズで構成されている。
【0004】
特許文献2には、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、および負の屈折力の第5レンズ群を有するズームレンズが開示されている。このズームレンズにおいて、第3レンズ群は、正レンズと物体側に凸の負メニスカスレンズの2枚のレンズで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-209347号公報
【特許文献2】特開2013-97322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ズームレンズの小型化を図るには、望遠端でテレフォト型のパワー配置を採用し、物体側の正の屈折力と像側の負の屈折力を強くすることが有効である。しかしながら、各レンズ群の屈折力を強くすると、ズーミングに伴う諸収差の変動が大きくなり、少ないレンズ枚数で諸収差を良好に補正することが困難となる。このため、光学系の小型化と軽量化を両立させるには、各レンズ群の屈折力やレンズ構成を適切に設定することが重要となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に開示されたズームレンズでは、第3レンズ群の屈折力やレンズ構成が不適切であるため、小型で軽量なズームレンズを実現することが難しい。
【0008】
そこで本発明は、全ズーム範囲で高い光学性能を有し、小型で軽量なズームレンズ及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、および、正の屈折力の第4レンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔は広がり、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔は狭まり、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間隔は狭まり、前記第3レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された正レンズと負レンズとからなり、望遠端におけるズームレンズの光学全長TLt、望遠端におけるズームレンズの焦点距離ft、前記第3レンズ群の焦点距離f3は、所定の条件式を満足する。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、全ズーム範囲で高い光学性能を有し、小型で軽量なズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1におけるズームレンズの広角端および望遠端での断面図である。
【
図2】実施例1におけるズームレンズの広角端、中間ズーム位置、および望遠端での縦収差図である。
【
図3】実施例2におけるズームレンズの広角端および望遠端での断面図である。
【
図4】実施例2におけるズームレンズの広角端、中間ズーム位置、および望遠端での縦収差図である。
【
図5】実施例3におけるズームレンズの広角端および望遠端での断面図である。
【
図6】実施例3におけるズームレンズの広角端、中間ズーム位置、および望遠端での縦収差図である。
【
図7】実施例4におけるズームレンズの広角端および望遠端での断面図である。
【
図8】実施例4におけるズームレンズの広角端、中間ズーム位置、および望遠端での縦収差図である。
【
図9】実施例5におけるズームレンズの広角端および望遠端での断面図である。
【
図10】実施例5におけるズームレンズの広角端、中間ズーム位置、および望遠端での縦収差図である。
【
図11】実施例6におけるズームレンズの広角端および望遠端での断面図である。
【
図12】実施例6におけるズームレンズの広角端、中間ズーム位置、および望遠端での縦収差図である。
【
図13】各実施例におけるアッベ数と部分分散比との関係を示す図である。
【
図14】各実施例におけるズームレンズを備えた撮像装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1、
図3、
図5、
図7、
図9および
図11はそれぞれ、実施例1~6のズームレンズ(光学系)1a~1fの無限遠に合焦した状態(無限遠合焦状態)での断面図である。各実施例のズームレンズは、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等の撮像装置や交換レンズを含む光学機器に用いられる撮像光学系である。
【0015】
各断面図において、左側が物体側(前方)で、右側が像側(後方)である。各実施例のズームレンズは、複数のレンズ群により構成されている。各実施例において、レンズ群とは、ズーミングに際して一体的に移動する又は不動のレンズのまとまりである。各実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズームレンズに際して、隣り合うレンズ群間の間隔が変化する。広角端と望遠端は、ズーミングに際して移動するレンズ群が、機構上、光軸OAに沿った方向(光軸方向)に移動可能な範囲の両端に位置したときのズーム状態である。なお、レンズ群は1枚のレンズにより構成されていてもよいし、複数枚のレンズにより構成されていてもよい。また、レンズ群は開口絞りを含んでいてもよい。
【0016】
各断面図において、i(自然数)は物体側から数えたときの順番を示し、Liは第iレンズ群を示す。SPは開口絞りである。IPは像面であり、各実施例のズームレンズ1a~1fをデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ用の撮像光学系として用いる際には、像面IPにCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が配置される。各実施例の光学系1a~1fを銀塩フィルム用カメラ用の撮像光学系として用いる際には、像面IPにはフィルムの感光面が配置される。各実施例のズームレンズ1a~1fでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、各断面図に実線矢印で示されるように各レンズ群を移動させる。
【0017】
図2、
図4、
図6、
図8、
図10および
図12はそれぞれ、実施例1~6のズームレンズ1a~1fの縦収差図である。各収差図において、(A)は広角端かつ無限遠合焦状態での縦収差図、(B)は中間ズーム位置かつ無限遠合焦状態での縦収差図、(C)は望遠端かつ無限遠合焦状態での縦収差図をそれぞれ示す。
【0018】
球面収差図において、FnoはFナンバーであり、球面収差図にはd線(波長587.6nm)とg線(波長435.8nm)に対する球面収差量をそれぞれ実線と二点鎖線で示す。非点収差図において、ΔSはサジタル像面における非点収差量(実線)、ΔMはメリディオナル像面における非点収差量(破線)を示す。歪曲収差図において、d線に対する歪曲収差量を示す。色収差図において、g線における色収差量を示す。ωは半画角(°)である。
【0019】
次に、各実施例のズームレンズの特徴的な構成および条件について説明する。各実施例のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、正の屈折力の第4レンズ群L4、および1つ以上のレンズ群(後群LR)を有する。広角端から望遠端へのズーミングの際に、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間隔は広がり、第2レンズ群L2と第3レンズ群L3との間隔は狭まり、第3レンズ群L3と第4レンズ群L4との間隔は狭まり、後群LRは光軸上を移動する。このような構成により、広角端から望遠端へのズーミングの際に、望遠端でテレフォト型のパワー配置となり、望遠端の光学全長(最も物体側面から像面IPまでの距離)を小さくすることができる。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された正レンズと負レンズとの2枚のレンズから構成されているため、第3レンズ群L3の軽量化およびズームレンズの全系の軽量化を図ることができる。
【0020】
各実施例において、小型かつ軽量で良好に抑えられた光学性能を得るには、以下の条件式(1)、(2)を満足する必要がある。
【0021】
0.50<TLt/ft<0.69 ・・・(1)
0.10<f3/ft<0.58 ・・・(2)
条件式(1)において、TLtは望遠端におけるズームレンズの全系の光学全長((最も物体側面から像面IPまでの距離))、ftは望遠端におけるズームレンズの全系の焦点距離である。条件式(2)において、f3は第3レンズ群L3の焦点距離である。
【0022】
条件式(1)は、望遠端におけるズームレンズの光学全長と焦点距離との比(テレフォト比)を示す。条件式(1)は、ズームレンズの小型化および軽量化と良好な光学性能を適切にするための条件式である。条件式(1)の上限を超えて第1レンズ群L1の屈折力が弱くなると、ズームレンズは大型化してしまう。一方、条件式(1)の下限を超えて第1レンズ群L1の屈折力が強くなると、望遠端において、色収差が目立ち易くなり光学性能を維持するのが困難になる。
【0023】
好ましくは、条件式(1)の数値範囲は以下の条件式(1a)のように設定される。
【0024】
0.55<TLt/ft<0.69 ・・・(1a)
条件式(2)は、第3レンズ群L3の焦点距離と望遠端におけるズームレンズの焦点距離との比を示す。条件式(2)は、第3レンズ群L3の屈折率を適切に抑制するための条件式である。条件式(2)の上限を超えて第3レンズ群L3の屈折力が弱くなると、ズームレンズは大型化してしまう。一方、条件式(2)の下限を超えて第3レンズ群L3の屈折力が強くなると、広角端において、球面収差が大きくなり光学性能を維持するのが困難になる。
【0025】
好ましくは、条件式(2)の数値範囲は以下の条件式(2a)のように設定される。
【0026】
0.20<f3/ft<0.50 ・・・(2a)
各実施例によれば、条件式(1)、(2)を満足するように構成することで、望遠タイプのズームレンズにおいて、ズーム全域で光学性能が良好に抑えられた、小型で軽量なズームレンズを実現することができる。
【0027】
各実施例において、更に小型かつ軽量で良好に抑えられた光学性能を得るには、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0028】
0.25<D3/LT3<1.00 ・・・(3)
条件式(3)において、D3は第3レンズ群L3の正レンズと負レンズとの間隔、LT3は第3レンズ群L3の全肉厚である。条件式(3)は、第3レンズ群L3の正レンズと負レンズとの間隔D3を適切に設定するための条件式である。条件式(3)の上限を超えると、第3レンズ群L3の正レンズと負レンズとを物理的に配置できない。一方、条件式(3)の下限を超えると、球面収差が可補正になり、2枚のレンズ構成で光学性能を維持することが困難になる。
【0029】
更に好ましくは、条件式(3)の数値範囲は以下の条件式(3a)のように設定される。
【0030】
0.25<D3/LT3<0.90 ・・・(3a)
各実施例において、更に小型かつ軽量で良好に抑えられた光学性能を得るには、第3レンズ群L3を構成する正レンズのアッベ数をνdpとするとき、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0031】
νdp>65 ・・・(4)
条件式(4)は、第3レンズ群L3を構成する正レンズにおいて、アッベ数の適切な値となる材料を示す。ここで、ある材料のアッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、以下のように表すことができる。
【0032】
νd=(Nd-1)/(NF-NC) ・・・(a)
条件式(4)の下限を超えると、色消しが不十分となり、色収差の補正が困難となる。
【0033】
更に好ましくは、条件式(4)の数値範囲は以下の条件式(4a)のように設定される。
【0034】
νdp>70 ・・・(4a)
各実施例において、更に小型かつ軽量で良好に抑えられた光学性能を得るには、第3レンズ群L3を構成する負レンズのd線における屈折率をNdnとするとき、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
【0035】
Ndn>1.80 ・・・(5)
条件式(5)の下限を超えると、ペッツヴァール和が負の方向で過大な値となり、像面湾曲等の軸外収差が増加するため好ましくない。
【0036】
更に好ましくは、条件式(5)の数値範囲は以下の条件式(5)のように設定される。
【0037】
Ndn>1.85 ・・・(5a)
各実施例において、更に小型かつ軽量で良好に抑えられた光学性能を得るには、第3レンズ群L3を構成する負レンズのアッベ数をνdn、部分分散比をθgFnとするとき、以下の条件式(6)を満足することが好ましい。
【0038】
25<νdn<45 ・・・(6)
θgFn-0.6438+0.001682×νdn<0.02 ・・・(7)
ここで、ある材料の部分分散比θgFは、g線(435.8nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)に対する材料の屈折率をそれぞれNg、NF、NCとするとき、以下のように表すことができる。
【0039】
θgF=(Ng-NF)/(NF-NC) ・・・(b)
図13は、アッベ数νdと部分分散比θgFとの関係を示すグラフである。
図13において、横軸はアッベ数νd、縦軸は部分分散比θgFをそれぞれ示す。また
図13において、株式会社オハラ社製の製品名:PBM2(νd=36.26、θgF=0.5828)と製品名:NSL7(νd=60.49、θgF=0.5436)を示す。 これら2点を結んだ線を基準線とする。低分散ガラスに関しては、基準線より上側に位置するものを使用するのが二次スペクトルの補正に対し効果的であり、基準線から離れるほど補正効果が高まる。
【0040】
条件式(6)、(7)は、第3レンズ群L3を構成する負レンズにおいて、アッベ数νdnと部分分散比θgFの適切な値となる材料を示す。高分散でありながら、異常分散性を有しているレンズ材料は、色収差補正に効果的でない。条件式(6)、(7)を満足するレンズ材料は、高分散でありながら、異常分散性を抑制されているので、色収差補正に効果的である。
【0041】
条件式(6)の上限を超えると、2枚のレンズ構成で色消しが不十分となり、軸上色収差の補正が困難となる。一方、条件式(6)の下限を超えると、2枚のレンズ構成で色消しが可補正となり、軸上色収差の補正が困難となる。条件式(7)の上限を超えると、負レンズの材料の異常分散性が大きくなり、2枚のレンズ構成で色収差の二次スペクトルの補正が困難となる。
【0042】
更に好ましくは、条件式(6)、(7)の数値範囲はそれぞれ以下の条件式(6a)、(7a)のように設定される。
【0043】
25<νdn<35 ・・・(6a)
θgFn-0.6438+0.001682×νdn<0.01 ・・・(7a)
各実施例において、更に小型かつ軽量で良好に抑えられた光学性能を得るには、第3レンズ群L3を構成する負レンズは、像側に凸のメニスカス形状で、以下の条件式(8)を満足することが好ましい。
【0044】
-10.0<(Rpf+Rpr)/(Rpf-Rpr)<-1.0 ・・・(8)
条件式(8)において、Rpf、Rprはそれぞれ、第3レンズ群L3を構成する負レンズの物体側と像側の曲率半径である。条件式(8)は、第3レンズ群L3を構成する負レンズのメニスカス形状を示すシェイプファクターである。条件式(8)の上限を超えると、負レンズの物体側の曲率半径が小さくなり、球面収差が補正過剰となり、光学性能の維持が困難となる。一方、条件式(8)の下限を超えると、負レンズの物体側の曲率半径が大きくなり、球面収差の補正不足となり、光学性能の維持が困難となる。
【0045】
更に好ましくは、条件式(8)の数値範囲を以下の条件式(8a)のように設定される。
【0046】
-5.0<(Rpf+Rpr)/(Rpf-Rpr)<-1.1 ・・・(8a)
各実施例において、更に小型で高い光学性能を得るには、第4レンズ群L4は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズと、正レンズまたは負レンズとの2枚のレンズからなることが好ましい。このような構成により、第4レンズ群L4の軽量化およびズームレンズの全系の軽量化を図ることができる。
【0047】
各実施例において、更に小型で高い光学性能を得るには、第4レンズ群L4のうち像側に設けられたレンズ(正レンズまたは負レンズ)は、非球面を有することが好ましい。この位置に非球面を配置することで、ズーミングの際の球面収差変動を低減することができ、画面周辺まで良好な光学性能を得ることができる。
【0048】
各実施例において、更に小型で高い光学性能を得るには、第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された負レンズと正レンズとの接合レンズであることが好ましい。このような構成により、第2レンズ群L2の色収差を適切にすることができ、色収差を補正して良好な光学性能を得ることができる。また、第2レンズ群L2を光軸OAと垂直の成分を含む方向に移動させることにより、防振を行う際に、防振時に色収差の変動を抑制することができる。
【0049】
各実施例において、更に小型で高い光学性能を得るには、後群LRは負の屈折力の第5レンズ群L5を有することが好ましい。このような構成により、望遠端でテレフォト型のパワー配置を採用する際に、像側の負の屈折力を強くすることができて、光学全長を小さくすることができる。
【0050】
各実施例において、更に小型で高い光学性能を得るには、後群LR内の負の屈折力の第5レンズ群L5は、無限遠から至近へのフォーカシングを行うことが好ましい。変倍作用の小さい開口絞りSPよりも後ろ側(像側)のレンズ群をフォーカスレンズ群とすることで、無限から至近へのフォーカシングを行う際に像倍率変化を小さくすることができる。この点は、被写体が無限遠から至近に変化した際に画角の変化を小さくすることができる為、動画撮影時において特に適する。
【0051】
第4レンズ群L4内の像側の正レンズまたは負レンズは樹脂レンズである。このような光学材料の具体例として、例えばシクロオレフィンポリマー系の熱可塑性樹脂がある。樹脂レンズは、ガラスレンズに比べて比重が小さく、ズームレンズのレンズ重量が小さくなる。なお、ガラスレンズに比して比重の小さな材料であれば、これらに限定されるものではない。
【0052】
以上のように構成することにより、望遠タイプの光学系において、ズーム全域で光学性能が良好に抑えられた、小型で軽量なズームレンズを得ることができる。以下、各実施例のズームレンズについて詳細に述べる。
【実施例0053】
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の実施例1におけるズームレンズ1aについて説明する。ズームレンズ1aは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、正の屈折力の第4レンズ群L4、および後群LRから構成されている。後群LRは、物体側から像側へ順に配置された負の屈折力の第5レンズ群L5と第6レンズ群L6とから構成されている。
【0054】
第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズL11と、負レンズL12と正レンズL13との接合レンズとから構成されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負レンズL21と正レンズL22との接合レンズから構成されている。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、開口絞りSP、正レンズL31、および像側に凸の負メニスカスレンズL32から構成されている。第4レンズ群L4は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズL41と負メニスカスレンズL42とから構成されている。負メニスカスレンズL42は、樹脂材料からなる。
【0055】
第5レンズ群L5は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズL51と負レンズL52との接合レンズから構成されている。第6レンズ群L6は、屈折力のない平板レンズから構成されている。広角端から望遠端へのズーミングに際し、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間隔は広がり、第2レンズ群L2と第3レンズ群L3との間隔は狭まり、第3レンズ群L3と第4レンズ群L4との間隔は狭まり、後群LRは光軸上を移動する。無限遠から至近へのフォーカシングに際して、第5レンズ群L5は、光軸方向に沿って像側へ移動する。
【0056】
各収差図から明らかなように、本実施例では諸収差が良好に補正されている。
第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズL11と、負レンズL12と正レンズL13との接合レンズとから構成されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負レンズL21と正レンズL22との接合レンズから構成されている。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、開口絞りSP、正レンズL31、および像側に凸の負メニスカスレンズL32から構成されている。第4レンズ群L4は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズL41と負メニスカスレンズL42とから構成されている。負メニスカスレンズL42は、樹脂材料からなる。
第5レンズ群L5は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズL51と負レンズL52との接合レンズから構成されている。第6レンズ群L6は、屈折力のない平板レンズから構成されている。広角端から望遠端へのズーミングに際し、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2との間隔は広がり、第2レンズ群L2と第3レンズ群L3との間隔は狭まり、第3レンズ群L3と第4レンズ群L4との間隔は狭まり、後群LRは光軸上を移動する。無限遠から至近へのフォーカシングに際して、第5レンズ群L5は、光軸方向に沿って像側へ移動する。