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特開2022-106417外壁パネル固定金具、外壁パネルの固定構造、及び外壁パネルの固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106417
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】外壁パネル固定金具、外壁パネルの固定構造、及び外壁パネルの固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/94 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
E04B2/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001387
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110664
【氏名又は名称】ナンカイ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】豊島 一也
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 克己
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 俊明
(72)【発明者】
【氏名】枩林 邦生
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NB06
2E002PA04
2E002PA08
2E002RA02
2E002RB01
2E002RB03
2E002TA01
(57)【要約】
【課題】 H型鋼からなる梁材に外壁パネルを設置する際に、梁材の上下に別部材が配置されている場合であっても、容易に外壁パネルを梁材に固定することができる外壁パネル固定金具を提供する。
【解決手段】外壁パネル固定金具2は、H型鋼からなる梁材Aに、外壁パネルBを固定する金具であって、鉛直方向へ延び、外壁パネルBを固定される第1板部31、及び第1板部31の鉛直方向の両端縁31aから水平方向へ延出する一対の第2板部32、33を有するC字型状の第1金具3と、下側の第2板部32を梁材Aの下フランジA2に固定する第2金具4と、上側の第2板部33を板厚方向へ貫通する棒状の第3金具5と、を備え、第3金具5は、上側の第2板部33に軸方向へ移動可能に固定されるとともに、梁材Aの上フランジA3の下端面A3aを押圧する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの板面を鉛直方向へ向けたH型鋼からなる梁材に、外壁パネルを固定する外壁パネル固定金具であって、
鉛直方向へ延び、前記外壁パネルを固定される第1板部、及び前記第1板部の鉛直方向の両端縁から水平方向へ延出する一対の第2板部を有するC字型状の第1金具と、
下側の第2板部を前記梁材の下フランジに固定する第2金具と、
上側の第2板部を板厚方向へ貫通するとともに、先端が下側の第2板部と反対の方向へ突出する棒状の第3金具と、を備え、
前記第3金具は、前記上側の第2板部に軸方向へ移動可能に固定されるとともに、前記梁材の上フランジの下端面を押圧することを特徴とする外壁パネル固定金具。
【請求項2】
前記梁材は、下フランジに板厚方向へ貫通する貫通孔が形成されており、
前記下側の第2板部は、板厚方向へ貫通する第1雌ねじ孔が形成されており、
前記第2金具は、前記貫通孔に挿入されるとともに、前記第1雌ねじ孔に螺着するボルトであることを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル固定金具。
【請求項3】
前記上側の第2板部は、板厚方向へ貫通する第2雌ねじ孔が形成されており、
前記第3金具は、前記第2雌ねじ孔に螺着して上側の前記第2板部を貫通する第1ボルトと、当該第1ボルトの軸部に螺着する第1ナットと、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外壁パネル固定金具。
【請求項4】
前記外壁パネルは、板状の外壁仕上材と、当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の水平レール材と、を有し、
前記第1金具は、前記第1板部の水平方向の端縁から前記一対の第2板部と反対の方向へ突出し、且つ、前記水平レール材のリップに引掛けられるL字型状の係止部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の外壁パネル固定金具。
【請求項5】
前記梁材の下部に配置される水平軸組材に水平方向へ移動可能に固定され、且つ、前記水平レール材のリップに嵌合する第4金具を備えることを特徴とする請求項4に記載の外壁パネル固定金具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の外壁パネル固定金具と、
ウェブの板面を鉛直方向へ向けたH型鋼からなる梁材と、
板状の外壁仕上材、及び当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の水平レール材を有する外壁パネルと、
前記梁材の下部に配置される水平軸組材と、を備え、
前記外壁パネルは、屋外側から前記第1板部にビス固定されることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の外壁パネル固定金具を用いて、ウェブの板面を鉛直方向へ向けたH型鋼からなる梁材に外壁パネルを固定する外壁パネル固定方法であって、
前記第1板部を屋外側へ向けるとともに、下側の前記第2板部を前記第2金具で前記梁材の下フランジに固定し、
前記第3金具を前記梁材の上フランジの方向へ移動させて、前記第3金具で前記上フランジの下端面を押圧し、
前記外壁パネルを屋外側から前記第1板部にビス固定することを特徴とする外壁パネルの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼からなる梁材に外壁パネルを固定する外壁パネル固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、H形鋼からなる梁材のウェブに面して外壁パネルを設置する場合、予め外壁パネルの裏面に固定された固定金具をウェブにボルト固定する方法が知られている。しかしながら、この外壁パネルにシャッターを設置する場合、梁材のウェブには、シャッター配線用の大きな開口が設けられるため、固定金具をウェブにボルト固定できない場合があった。
【0003】
一方、特許文献1に記載の発明には、H型鋼からなる梁材のウェブに面して外壁パネルを設置する際、ウェブにボルト孔を形成することなく外壁パネルを設置可能な固定金具について記載されている。この固定金具は、鉛直方向へ延び、外壁パネルを固定される板状の金具本体と、当該金具本体の上下端から屋内方向へ突出する一対の取り付け片とを有しており、金具本体を屋外側へ向けた状態で、一対の取り付け片をそれぞれ梁材の上下フランジにボルト固定することでウェブにボルト孔を形成することなく梁材に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-279739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、外壁パネルを固定する梁材の上部には、上階の外壁パネル下端部を支持するための水平軸組材が設置されていることがあり、また、梁材の下部には、サッシを支持するためのサッシ用水平軸組材が設置されていることがある。このような場合に特許文献1に記載の固定金具を用いると、一対の取り付け片を固定するボルト又はナットがこれらの水平軸組材に干渉して上手く固定金具を固定することができない。
【0006】
そこで、本発明は上述した課題を鑑みてなされたものであって、H型鋼からなる梁材に外壁パネルを設置する際に、梁材の上下に別部材が配置されている場合であっても、容易に外壁パネルを梁材に固定することができる外壁パネル固定金具、外壁パネルの固定構造、及び外壁パネルの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の外壁パネル固定金具は、ウェブの板面を鉛直方向へ向けたH型鋼からなる梁材に、外壁パネルを固定する外壁パネル固定金具であって、鉛直方向へ延び、前記外壁パネルを固定される第1板部、及び前記第1板部の鉛直方向の両端縁から水平方向へ延出する一対の第2板部を有するC字型状の第1金具と、下側の第2板部を前記梁材の下フランジに固定する第2金具と、上側の第2板部を板厚方向へ貫通するとともに、先端が下側の第2板部と反対の方向へ突出する棒状の第3金具と、を備え、前記第3金具は、前記上側の第2板部に軸方向へ移動可能に固定されるとともに、前記梁材の上フランジの下端面を押圧することを特徴としている。
【0008】
本発明の第2の外壁パネル固定金具は、前記梁材が、下フランジに板厚方向へ貫通する貫通孔を形成されており、前記下側の第2板部が、板厚方向へ貫通する第1雌ねじ孔を形成されており、前記第2金具が、前記貫通孔に挿入されるとともに、前記第1雌ねじ孔に螺着するボルトであることを特徴としている。
【0009】
本発明の第3の外壁パネル固定金具は、前記上側の第2板部が、板厚方向へ貫通する第2雌ねじ孔を形成されており、前記第3金具が、前記第2雌ねじ孔に螺着して上側の前記第2板部を貫通する第1ボルトと、当該第1ボルトの軸部に螺着する第1ナットと、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の第4の外壁パネル固定金具は、前記外壁パネルが、板状の外壁仕上材と、当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の水平レール材と、を有し、前記第1金具が、前記第1板部の水平方向の端縁から前記一対の第2板部と反対の方向へ突出し、且つ、前記水平レール材のリップに引掛けられるL字型状の係止部を有することを特徴としている。
【0011】
本発明の第5の外壁パネル固定金具は、前記梁材の下部に配置される水平軸組材に水平方向へ移動可能に固定され、且つ、前記水平レール材のリップに嵌合する第4金具を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明の第1の外壁パネルの固定構造は、第1から第5のいずれかに記載の外壁パネル固定金具と、ウェブの板面を鉛直方向へ向けたH型鋼からなる梁材と、板状の外壁仕上材、及び当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の水平レール材を有する外壁パネルと、前記梁材の下部に配置される水平軸組材と、を備え、前記外壁パネルが、屋外側から前記第1板部にビス固定されることを特徴としている。
【0013】
本発明の第1の外壁パネルの固定方法は、第1から第5のいずれかに記載の外壁パネル固定金具を用いて、ウェブの板面を鉛直方向へ向けたH型鋼からなる梁材に外壁パネルを固定する外壁パネル固定方法であって、前記第1板部を屋外側へ向けるとともに、下側の前記第2板部を前記第2金具で前記梁材の下フランジに固定し、前記第3金具を前記梁材の上フランジの方向へ移動させて、前記第3金具で前記上フランジの下端面を押圧し、前記外壁パネルを屋外側から前記第1板部にビス固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の外壁パネル固定金具によると、第3金具は、上側の第2板部に軸方向へ移動可能に固定されるとともに、梁材の上フランジの下端面を押圧するとされる。したがって、第1板部を屋外側へ向けた状態で、下側の第2板部を第2金具で梁材の下フランジに固定させ、且つ、第3金具を梁材の上フランジの方向へ移動させて上フランジの下端面に押し当てると、第3金具を梁材の上下フランジ間に突張らせることができる。そのため、梁材の上フランジやウェブにボルト孔を形成することができなかったり、梁材の上に別部材が配置されていたりして、ボルト及びナットで上フランジやウェブを狭着できない場合であっても、第1金具を梁材に固定して外壁パネルを第1板部に固定することができる。
【0015】
本発明の第2の外壁パネル固定金具によると、第2金具は、梁材の貫通孔に挿入されるとともに、下側の第2板部に形成される第1雌ねじ孔に螺着するボルトとされる。したがって、下側の第2板部を下フランジの下端面に当接させ、第2金具を貫通孔に挿入するとともに、第1雌ねじ孔に螺着させれば、下側の第2板部の下に別部材が配置されていたとしても、他方の第2板部を確実に梁材に固定することができる。
【0016】
本発明の第3の外壁パネル固定金具によると、第3金具が、第2雌ねじ孔に螺着して上側の第2板部を貫通する第1ボルトと、第1ボルトの軸部に螺着する第1ナットと、を有するとされる。したがって、第1ボルトを上フランジの方向へ移動させるとともに、第1ナットを上フランジに当接するまで移動させれば、第1ナットによって上フランジの下端面を押圧することができ、第2金具を確実に梁材の上下フランジ間に突張らせることができる。
【0017】
本発明の第4の外壁パネル固定金具によると、第1金具は、第1板部の水平方向の端縁から一対の第2板部と反対の方向へ突出し、且つ、水平レール材のリップに引掛けられるL字型状の係止部を有するとされる。したがって、係止部を水平レール材のリップに引掛けることにより外壁パネルのぐらつきを防止することができる。
【0018】
本発明の第5の外壁パネル固定金具によると、梁材の下部に配置される水平軸組材に水平方向へ移動可能に固定され、且つ、水平レール材のリップに嵌合する第4金具を備えるとされる。したがって、第4金具を水平レール材のリップに嵌合することにより、係止部とともに外壁パネルのぐらつきを防止することができる。
【0019】
本発明の第1の外壁パネルの固定構造によると、外壁パネルは、屋外側から第1板部にビス固定されるので、外壁パネルの固定を全て屋外側から行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0020】
本発明の第1の外壁パネルの固定方法によると、第3金具を梁材の上フランジの方向へ移動させて、第3金具で上フランジの下端面を押圧するため、第3金具を梁材の上下フランジ間に突張らせることができる。そのため、上フランジやウェブにボルト孔を形成することができなかったり、梁材の上に別部材が配置されていたりして、上フランジやウェブをボルト及びナットで狭着できない場合であっても、第1金具を梁材に固定して外壁パネルを第1板部に固定することができる。また外壁パネルは、屋外側から第1板部にビス固定されるので、外壁パネルの固定を全て屋外側から行うことができ、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】外壁パネルの固定構造を示す断面図。
図2】外壁パネル固定金具を示す側面図。
図3】第1金具、第2金具、及び第3金具を示す斜視図。
図4】第4金具を示す斜視図。
図5】梁材を示す正面図。
図6】外壁パネルを梁材に固定した状態を示す正面図。
図7】外壁パネルを示す斜視図。
図8】下側の第2板部を梁材に固定する状況を示す断面図。
図9】外壁パネル固定金具を梁材に固定した状態を示す断面図。
図10】第4金具を水平軸組材に固定する状況を示す断面図。
図11】外壁パネルを外壁パネル固定金具に仮固定した状態を示す断面図。
図12】第1ボルトの先端を第3ボルトに押し当てた状態を示す断面図。
図13】水平軸組材に貫通孔が形成されていない場合を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の外壁パネル固定金具及び外壁パネルの固定構造の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願の外壁パネルの固定構造は、H型鋼からなる梁材のウェブに面して外壁パネルを設置する場合に用いられる構造であり、主に、外壁パネルの屋外面にシャッターが設置される場合に使用される。なお、本発明における「貫通孔」、「水平レール材のリップ」、「水平軸組材のリップ」は、本実施形態においては、それぞれ「第2貫通孔A5」、「第1リップB2a」、「第2リップC1a」が相当する。
【0023】
図1に示す外壁パネルの固定構造1は、H型鋼からなる梁材Aに、外壁パネルBを固定するための構造であって、梁材Aに外壁パネルBを固定する外壁パネル固定金具2と、ウェブA1の板面A1aを鉛直方向へ向けた梁材Aと、板状の外壁仕上材B1の裏面B1a側に屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の水平レール材B2を固定してなる外壁パネルBと、梁材Aの下部に配置されるリップ溝形鋼状の水平軸組材C1と、を備えている。
【0024】
図1及び図2に示すように、外壁パネル固定金具2は、鉛直方向へ延び、外壁パネルBを固定される第1板部31、及び第1板部31の鉛直方向の両端縁31aから水平方向へ延出する一対の第2板部32、33を有するC字型状の第1金具3と、下側の第2板部32を梁材Aの下フランジA1に固定する第2金具4と、上側の第2板部33を板厚方向へ貫通するとともに、先端5aが下側の第2板部32と反対の方向へ突出する棒状の第3金具5と、水平材Cに水平方向へ移動可能に固定され、且つ、水平レール材B2のリップである第1リップB2aに嵌合する第4金具6と、を備えている。
【0025】
図2及び図3に示すように、第1金具3は、細長な略矩形状の金板をC字型状に折曲して形成された部材である。第1板部31は、水平方向の端縁31bに一対の第2板部32、33と反対の方向へ突出するL字型状の係止部34が形成されており、また下端部が段状に折り曲げられている。一方、下側の第2板部32には、内周面にねじ山が形成された第1雌ねじ孔32aが形成されている。この第1雌ねじ孔32aは、下側の第2板部32を上端面から下端面へ向けて貫通し、バーリング加工を施した後に孔の内周面にねじ山を切ることによって形成される。上側の第2板部33は、下側の第2板部32と同様、内周面にねじ山が形成された第2雌ねじ孔33aが形成されており、この第2雌ねじ孔33aは、上側の第2板部33を下端面から上端面へ向けて貫通するとともに、バーリング加工を施すことによって形成される。
【0026】
第2金具4は、第1雌ねじ孔32aに螺着するボルトであり、下側の第2板部32を上端面から下端面へ向けて貫通するよう設置される。また第3金具5は、第2雌ねじ孔33aに螺着して上側の第2板部33を貫通する第1ボルト51と、当該第1ボルト51の軸部51aに螺着する第1ナット52と、を有している。第1ボルト51は、上側の第2板部33を下端面から上端面へ向けて貫通するよう設置されており、先端5aが下側の第2板部32と反対の方向へ突出している。このように第1金具3に設置される第2金具4及び第1ボルト51は、それぞれ回転させることによって、軸方向へ移動可能となっている。
【0027】
図2図4、及び図10に示す第4金具6は、水平軸組材C1のリップである第2リップC1aに係止する係止板61と、係止板61の下に配置され、水平レール材B2の第1リップB2aに嵌合する嵌合板62と、頭部63aが係止板61にかしめられるとともに、軸部63bが嵌合板62を貫通する第2ボルト63と、嵌合板62から突出した第2ボルト63の軸部63bに螺着する第2ナット64と、を有している。係止板61は、水平方向へ延びるやや細長な第1板片61aと、第1板片61aの短手方向の両端から上方へ突出する一対の第2板片61bとからなるC字型状の部材である。略矩形状の金板である第1板片61aは、図4に示すように、一方の対角線上に位置する2つの角部が斜めに切断された状態となっており、短手方向の距離L1が第2リップC1a間の幅W1以下であるとともに、長手方向の距離L2が第2リップC1a間の幅W1以上、且つ水平材C1の溝幅W2以下となっている。なお、外壁パネル固定金具2は、1枚の外壁パネルBに対して2個設置される。
【0028】
嵌合板62は、水平方向へ延び、長手方向の一端縁を三又状に切込まれて3つの突起620が形成された細長な切込み板片62aと、複数の突起620の先端からそれぞれ上方へ延出する3つの立上がり片62bと、切込み板片62aの短手方向の両端縁から下方へ延出する一対の延出片62cと、から構成される。図示するように、切込み板片62aは、板厚方向へ貫通する挿通孔62dが形成されており、この挿通孔62dに第2ボルト63の軸部63bを挿通することができる。また、3つの突起620は、両端の突起620が基端から先端までの長さを略同一に形成され、且つ、中央の突起620が、基端から先端までの長さを両端の突起620よりも第1リップB2aの板厚分だけ長く形成される。
【0029】
図1及び図5に示すように、H型鋼からなる梁材Aは、ウェブA1、下フランジA2、及び上フランジA3にそれぞれ板厚方向へ貫通する貫通孔A4、A5、A6が形成されている。ウェブA1に形成される第1貫通孔A4は、後述するシャッターEの配線用孔であり、シャッターボックスE1から延びる配線を建物内部へ引込むために形成される。下フランジA2に形成される第1貫通孔A5には、第2金具4を挿通することができ、また上フランジA3に形成される第3貫通孔A6には、第1ボルト51を挿通することができる。そのため、第2貫通孔A5及び第3貫通孔A6は、外壁パネル固定金具2が設置される箇所にそれぞれ形成される。
【0030】
図6に示す梁材Aに固定される外壁パネルBは、開口部D上部に設置される外壁材であり、また図1に示すように、シャッターボックスE1を固定する下地材として設置される。図7に示すように、外壁パネルBは、平板状の外壁仕上材B1と、当該外壁仕上材B1の裏面B1a側に固定されるリップ溝形鋼状の水平レール材B2と、を有している。外壁仕上材B1は、プレキャストコンクリートを均一な厚さに成型した板材であり、表面は化粧仕上げが施されている。一方水平レール材B2は、鉛直方向へ間隔を開けて2本設置されており、外壁仕上材B1の裏面B1a側に開口した状態で外壁仕上材B1に埋設される。なお外壁仕上材B1は、図1及び図6に示すように、2本の水平レール材B2の間に、板厚方向へ貫通する第4貫通孔B1bが形成されており、シャッターEの配線は、この第4貫通孔B1bを通じて梁材Aの第1貫通孔A4へ引込むことができる。
【0031】
外壁仕上材B1は、幅が960mm~980mm程度で形成されるとともに、高さが230mm~250mm程度で形成されており、図示するように、水平方向へ延びる長尺な部材となっている。また2本の水平レール材B2は、外壁仕上材B1の上下端からそれぞれの鉛直方向の中心までの距離が80mm~85mm程度以上となるよう配置される。
【0032】
図1及ぶ図6に示す開口部Dには、下階の天井高と略同一の高さを有する掃出し窓が設置される。掃出し窓のサッシ枠D1は、水平軸組材C1と、水平軸組材C1の下部に配置される第2水平軸組材C2と、水平軸組材C1及び第2水平軸組材C2の水平方向の両端縁に設置される一対の鉛直材C2と、からなる軸組材Cに支持固定される。図6に示すように、軸組材Cは梁材Aの下部に設置されており、水平軸組材C1は、第2リップC1aを下方へ向けた状態で梁材Aにボルト固定される。また水平軸組材C1は、図10に示すように、第2貫通孔A5と整合する位置に第5貫通孔C1bが形成されており、この第5貫通孔C1bに第2金具4の軸部41aを挿通することができる。なお水平軸組材C1と下フランジA2とは離間しており、水平材C1の上端面と下フランジA2の下端面との間には10mm程度の隙間が形成されている。
【0033】
図1及び図6に示すように、梁材Aの上方には、上階の外壁パネルB3を固定するリップ溝形鋼状の外壁用水平材C4が設置されている。この外壁用水平材C4は、リップを上へ向けた状態で水平方向の両端部を梁材Aにボルト固定されているが、下端面の外壁パネル固定金具2を設置する部分にはボルト孔が形成されていない。また、外壁用水平材C4の下端面と上フランジA3の上端面との間には10mm程度の隙間が形成されているが、隙間が僅かであるため、上フランジA3の第3貫通孔A6から第1ボルト51を突出させてナットを螺着させることはできない。
【0034】
次に、外壁パネルの固定構造1について説明する。まず図8に示すように、第1金具3の第1板部31を屋外側へ向けた状態で、下側の第2板部32を下フランジA2と水平軸組材C1との間の隙間に挿入して下フランジA1の下端面に当接させる。そして、下フランジA2の上方から第2金具4を第2貫通孔A5に挿入し、回転させながら図10に示すように、軸部41aを第1雌ねじ孔32aに螺着させ、さらに第5貫通孔C1bに挿通させる。そして、第2金具4の頭部41bが下フランジA2に当接するまで第2金具4を下方へ移動させ、下側の第2板部32を下フランジA2に固着させる。なお、万が一水平材C1に第5貫通孔C1bが形成されていない場合は、図13に示すように、第2金具4を第2貫通孔A5に挿入する前に、第2金具4の軸部41aに第3ナット42を螺着させておき、軸部41bが下側の第2板部32を貫通した後に第3ナット42を締付ければ、第2金具4のぐらつきを防止することができる。
【0035】
続いて、図8及び図9に示すように、第2雌ねじ孔33aに螺着する第3金具5の第1ボルト51を回転させて上フランジA3の方向へ移動させ、第1ボルト51の先端部を上フランジA3の第3貫通孔A6に挿入させる。そして、第1ナット52を回転させて上フランジA3の方向へ移動させるとともに上フランジA3に当接させ、第1ナット52を締付けて上フランジA3の下端面A3aを押圧する。このように、第1ボルト51を下フランジA2と上フランジA3との間に突張らせることによって、上側の第2板部23を上フランジA2に固定することができる。
【0036】
次に、図10に示すように、第4金具6を水平軸組材C1に固定する。まず、嵌合板62の立上がり片62bを屋外側へ向けた状態で、第1板片61aの長手方向を水平材C1の長手方向に合わせ、係止板61を水平軸組材C1の溝に挿入する。そして、係止板61を回転させて係止板61の長手方向と水平軸組材C1の長手方向とを直交させ、係止板61を第2リップC1aに係止させた後、第2ナット64を締付けて嵌合板62を第2リップC1aに当接させ、第4金具6を水平軸組材C1に固定する。なお、第4金具6は、第2ナット64を緩めることで任意の位置へ水平移動させることができる。
【0037】
続いて、図11に示すように、水平レール材B1を屋内側へ向けた状態で外壁パネルBを外壁パネル固定金具2に近づけ、上側の水平レール材B2の第1リップB2aを第1金具3の係止部34に引掛けるとともに、下側の水平レール材B2の第1リップB2aを第4金具6の両端の立上がり片62bと中央の立上がり片62bとの間に嵌め込む。そして、専用工具で外壁仕上材B1の屋外側の面に座ぐりF1を形成するとともに、ビスFを打ち込むための下孔F2を外壁下地材B1及び第1板部31に開け、ビスFを座ぐりF1から下孔F2に打ち込んで外壁パネルBの梁材Aへの固定を完了させる。最後に、図1に示すようにシャッターE及びシャッターボックスE1を外パネルBの屋外側の面に固定し、シャッター用配線を第4貫通孔B1b及び先述した梁材Aの第1貫通孔A4に引き込む。
【0038】
このように、本願の外壁パネルの固定構造1は、梁材Aの上に別部材が配置されていたり、梁材AのウェブA1にボルト孔を形成することができなかったりするために上フランジA3やウェブA1をボルト及びナットで狭着できない場合であっても、外壁パネルBを梁材Aに固定することができる。
【0039】
なお、本実施形態では第1ボルト51の先端部を上フランジA3の第3貫通孔A6に挿入する場合について説明したが、第1ボルト51は、上フランジA3よりも下方で突張らせることができる。例えば、上階にバルコニーが形成されている場合、バルコニーの床廻りにはスクリーンパネルが設置されるが、その際、図12に示すように、スクリーンパネルを支持固定するスクリーン用水平軸組材Gが、第3貫通孔A6を挿通する第3ボルトG1と第4ナットG2とによって梁材Aに固定されていることがある。このように第1ボルト51を第3貫通孔A6に挿入できない場合は、第1ボルト51の先端5aを第3ボルトG1に押し当てることにより、第1ボルト51を突張らせることが可能となる。また、上フランジA3に第3貫通孔A6が形成されていない場合であっても、第1ボルト51の先端5a及び第1ナット52を上フランジA3の下端面A3aに押し当てれば、第1ボルト51を突張らせることができる。
【0040】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る外壁パネル固定金具及び外壁パネルの固定構造は、H型鋼からなる梁材のウェブに面してコンクリート系外壁パネルを固定する場合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 外壁パネルの固定構造
2 外壁パネル固定金具
3 第1金具
31 第1板部
31a 第1板部の鉛直方向の両端縁
31b 第1板部の水平方向の端縁
32 下側の第2板部
32a 第1雌ねじ孔
33 上側の第2板部
33a 第2雌ねじ孔
34 係止部
4 第2金具
5 第3金具
51 第1ボルト
51a 第1ボルトの軸部
5a 第1ボルトの先端(先端)
52 第1ナット
6 第4金具
A 梁材
A1 ウェブ
A1a ウェブの板面
A2 下フランジ
A3 上フランジ
A3a 上フランジの下端面
A5 第2貫通孔(貫通孔)
B 外壁パネル
B1 外壁仕上げ材
B2 水平レール材
B2a 第1リップ(水平レール材のリップ)
C1 水平軸組材
C1a 第2リップ(水平軸組材のリップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13