(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106418
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】画像読取システム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20220712BHJP
H04N 1/12 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H04N1/387 200
H04N1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001388
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡野 俊史
【テーマコード(参考)】
5C072
5C076
【Fターム(参考)】
5C072NA01
5C072QA16
5C072RA02
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA11
5C072UA13
5C072UA17
5C072UA18
5C072VA05
5C072WA02
5C076AA02
5C076AA26
5C076BA03
5C076BA04
5C076BA06
(57)【要約】
【課題】影があっても適切に褪色補正処理を実行する。
【解決手段】原稿Sを搬送する搬送手段21と、搬送手段21によって搬送された原稿Sを光学的に読み取る読取手段70と、読取手段70によって読み取られた画像に褪色補正処理を実行する画像処理手段88とを備え、画像処理手段88は、褪色補正処理を実行する前に、画像の周縁部を除去する周縁除去処理を画像に実行することを特徴とする。また、周縁除去処理として、影消し処理を実行することが好ましい。また、画像処理手段88は、読取手段70によって読み取られた画像から原稿領域を切り出す領域切出処理を、影消し処理の実行前に実行することを特徴とする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された原稿を光学的に読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取られた画像に褪色補正処理を実行する画像処理手段と
を備え、
前記画像処理手段は、前記褪色補正処理を実行する前に、前記画像の周縁部を除去する周縁除去処理を前記画像に実行することを特徴とする画像読取システム。
【請求項2】
前記周縁除去処理として、影消し処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像読取システム。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記読取手段によって読み取られた画像から原稿領域を切り出す領域切出処理を、前記影消し処理の実行前に実行することを特徴とする請求項2に記載の画像読取システム。
【請求項4】
前記画像処理手段が実行可能な影消し処理が、前記読取手段によって読み取られた画像から影の濃淡を分析し、濃淡に基づいて影の位置を検出し、検出した位置に基づいて影を除去するものであることを特徴とする請求項2または3に記載の画像読取システム。
【請求項5】
前記画像処理手段が実行可能な影消し処理が、前記読取手段によって読み取られた画像から原稿周囲を予め定められた長さだけ切り出すことで影を除去するトリミング処理であることを特徴とする請求項2または3に記載の画像読取システム。
【請求項6】
前記画像処理手段による前記褪色補正処理および前記周縁除去処理を実行するかどうかを選択可能な選択手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の画像読取システム。
【請求項7】
前記選択手段は、前記褪色補正処理を実行することが選択されると、前記周縁除去処理を実行するように選択することを特徴とする請求項6に記載の画像読取システム。
【請求項8】
前記選択手段により前記褪色補正処理を実行することが選択されたときに、前記周縁除去処理を実行するように操作者に対して通知する通知手段を有することを特徴とする請求項6に記載の画像読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を搬送して画像を読み取る画像読取装置を含む画像読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル化された写真を手軽にクラウド上に保存し、日時や場所を選ばず参照できる写真クラウド保存サービスが人気を得ている。主な用途としてはスマートフォンに代表される携帯端末のカメラやデジタルカメラやビデオカメラで撮影された写真や動画をアップロードして、デバイスや場所を選ばずこれらの写真や動画を閲覧することである。
【0003】
この流れの中、過去に撮り貯めたプリント済みの写真も同様にデジタル化して写真クラウドに保存したいというニーズがある。大量にあるプリント済みの写真を1枚ずつデジタル化するのは操作者にとっては労力と時間を要することから、ADF(Auto Document Feeder)付きの両面同時読取のスキャナーでスキャンして効率よくデジタル化することが望まれている。
【0004】
ここで、プリント済みの写真には、褪色が生じていることがある。褪色とは、蛍光灯や太陽光などの光、もしくは空気に長時間さらされることによって、写真が色褪せる現象である。従来から、褪色が生じた写真を元の写真に近づける褪色補正という技術が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1に記載の技術では、画像のRGB各色のヒストグラムを算出し、さらに各色のヒストグラムにおける最大値と最小値が、それぞれ画素値の最大値(255)と最小値(0)になるように各画素の値を変換することで、褪色を補正している。
【0006】
一方、ADFを用いてデジタル化した写真では、原稿の周囲に生じた影が画像に写り込むことがある。
図1は原稿の周囲に生じた影と、その影が生じる仕組みを示したものであり、搬送方向の上流側に配置された光源から照射された光が下流側に配置された読取センサーに入射する構成を例にしている。
【0007】
図1(a)に示す、搬送されている原稿が読取センサーに到達していない、原稿を読み取る前の状態では、読取センサーは背景板を読み取ることになる。この時、背景板は光源から照射された光を反射しているため、画像データでは画素値の大きい、明るい領域になる。
【0008】
図1(b)に示す状態までADFによって原稿が搬送されると、光源から照射された光は原稿によって遮られるため、背景板には原稿の影が映る。この状態では読取センサーは原稿の影を読み取ることになるため、画像データでは画素値の小さい、暗い領域になる。
【0009】
ADFによって原稿がさらに搬送されて
図1(c)に示す状態になると、光源から照射された光は原稿によって反射されることになる。読取センサーはこの反射光を読み取ることになるため、画像データは原稿が写ったものになる。
【0010】
原稿の影は原稿領域の外に生じるものではあるが、画像から原稿領域を抽出する処理では、一般的には除去できない。例えば端部の歪みや、角の折れ、切り欠けなどが原稿にあると、
図2に示すように、原稿領域を抽出する処理を行っても画像内に影の一部が残ってしまう。
【0011】
影が画像内に残ってしまう問題を解決するために、画像から影を検出して除去する影消し処理が従来から行われている。影消し処理の処理方法には様々なものがあるが、例えば、画像内の画素の濃淡が影の特徴に一致しているかを判定して、一致しているときに当該画素を影とみなし、画素値を変換して影を除去するなどの方法がある。
【0012】
ここで、原稿の周囲に影が生じていると、褪色補正処理に問題が生じることがある。ここで、
図3を用いて、影によって生じる褪色補正処理の問題を説明する。
【0013】
図3(a)は、褪色前の元の状態の画像とそのヒストグラムを示している。ヒストグラムの左端が画素値0、右端が画素値255に対応している。元の褪色していない画像では、白から黒までの色が画像に含まれており、ヒストグラムは画素値の全体に広がったものになっている。
【0014】
図3(b)は、褪色した後の状態の画像とそのヒストグラムを示している。褪色によって色の広がりが失われ、ヒストグラムの幅が狭くなっている。
【0015】
図3(c)は、褪色補正処理を行った後の状態の画像とそのヒストグラムを示している。褪色補正によってヒストグラムの幅が広がり、褪色前の状態に近い画像とヒストグラムが得られている。
【0016】
上記の流れに対し、
図3(d)は、
図3(b)に原稿の影が付いた状態の画像とそのヒストグラムを示している。
図3(d)のヒストグラムでは
図3(b)と比べて、影に起因する左端付近のピークが追加されている。
【0017】
図3(e)は、
図3(d)の画像に対して褪色補正処理を行った後の状態の画像とそのヒストグラムを示している。ヒストグラムに影に起因するピークが含まれているために、ヒストグラムの幅を十分に広げることができなくなり、
図3(c)に比べて褪色が残った画像とヒストグラムになっている。
【0018】
この原稿の影によって生じる褪色補正の問題を解決するために、特許文献1では、ヒストグラムの最大値と最小値を算出する際に、所定の閾値より低い部分を無視する処理を行っている(
図4)。この方法では、原稿の影によって生じるピークよりも高い値に閾値を設定すれば、ヒストグラムの最大値と最小値を影に影響されることなく算出することができ、原稿の影があっても精度良く褪色を補正できる。この処理によれば、影の部分を含めて画素値の小さい部分はすべて画素値0に変換されている。
【0019】
また特許文献2では、ヒストグラムの最大値と最小値を算出する際に、ヒストグラムの上下端から所定の面積を除外することを行っている。この方法であっても、原稿の影によって生じるピークを除外できるように所定の面積を設定すれば、ヒストグラムの最大値と最小値を影に影響されることなく算出することができ、原稿の影があっても精度良く褪色を補正できる。この処理によっても、影の部分を含めて画素値の小さい部分はすべて画素値0に変換されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特許第4556813号公報
【特許文献2】特許第3693086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来の技術では、原稿の影があっても褪色を補正できるが、補正によって原稿の影が強調されてしまうため、適切な褪色補正が実行されているとは言えないという問題があった。
【0022】
褪色補正では、ヒストグラムの幅を広げるために、ある程度暗い画素は全て黒に変換される。このとき、影を構成する画素も黒に変換されることになるため、元々はグレーであった影が黒に変換されてしまう。その結果影が黒に強調されることなり、視認性が悪化する。
【0023】
また、補正によって原稿の影が強調されると、
図5に示されるように影の濃淡の情報が失われるため、影を検出する処理に悪影響を及ぼすという問題がある。すなわち褪色補正処理によって影を構成する画素が全て黒に変換されると、濃淡情報が失われるため影を検出できなくなり、影を除去できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記を鑑み、本発明に係る画像読取システムは、
原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された原稿を光学的に読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取られた画像に褪色補正処理を実行する画像処理手段と
を備え、
前記画像処理手段は、前記褪色補正処理を実行する前に、前記画像の周縁部を除去する周縁除去処理を前記画像に実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、原稿の影があっても適切に褪色を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図6】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置(画像読取装置)の構成を概略的に示す部分断面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る画像読取装置の制御部のブロック図。
【
図8】本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの排出トレイ2を展開した状態の正面図。
【
図9】本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの画像読取ユニット70の断面図。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る読取処理のフローチャート。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る影消し処理のフローチャート。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係る影の端判定処理のフローチャート。
【
図13】本発明の第1の実施形態に係る領域切出処理のフローチャート。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る上端検出処理のフローチャート。
【
図15】本発明の第1の実施形態に係る切出矩形の違いの説明図。
【
図16】本発明の第1の実施形態に係る褪色補正処理のフローチャート。
【
図17】本発明の第1の実施形態に係るヒストグラム作成処理のフローチャート。
【
図18】本発明の第1の実施形態に係るヒストグラム最大値算出処理のフローチャート。
【
図19】本発明の第2の実施形態に係る読取処理のフローチャート。
【
図20】本発明の第2の実施形態に係る読取設定ダイアログ。
【
図21】本発明の第2の実施形態に係る注意ダイアログ。
【
図22】本発明の第1の実施形態に係るトリミング処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を実施するための一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において本発明が使用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものである。
【0028】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る原稿搬送装置について説明する。
【0029】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る原稿搬送装置(画像読取装置)の構成を概略的に示す部分断面図である。
【0030】
<装置の構成>
画像読取装置Aは、載置台1に積載された一つ又は複数の搬送媒体Sを1つずつ装置内に経路RTにて搬送してその画像を読み取り、積載部材としての排出トレイ2に排出する装置である。読み取る搬送媒体Sは、例えば、写真、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。搬送媒体Sには、また、パスポートなどの冊子も含まれる。冊子を対象とする場合、ホルダを用いることができる。透明なホルダに見開き状態の冊子を収容して載置台1に載置することで、冊子がホルダと共に搬送され、その画像を読み取ることができる。
【0031】
<給紙>
経路RTに沿って搬送媒体Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は本実施形態の場合、送りローラ11と、送りローラ11に対向配置される分離ローラ12と、を備え、載置台1上の搬送媒体Sを搬送方向D1に一つずつ順次搬送する。送りローラ11には、モータ等の駆動部3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(経路RTに沿って搬送媒体Sを搬送させる正方向)に回転駆動される。伝達部5は例えば電磁クラッチであり、駆動部3からの送りローラ11への駆動力を断続する。
【0032】
<駆動部>
駆動部3と送りローラ11とを接続する伝達部5は、例えば、本実施形態では、通常時において駆動力が伝達される状態とし、搬送媒体Sを逆送または停止する場合には駆動力を遮断する。送りローラ11は伝達部5により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、このような伝達部5は、送りローラ11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
【0033】
<分離構造>
送りローラ11に対向配置される分離ローラ12は、搬送媒体Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、送りローラ11に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、分離ローラ12は揺動可能に設けると共に送りローラ11へ付勢されるように構成される。分離ローラ12は、トルクリミッタ12aを介して駆動部3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(送りローラ11の正方向とは逆方向))に回転駆動される。
【0034】
分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制されるため、送りローラ11と当接している際は送りローラ11に連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の搬送媒体Sが送りローラ11と分離ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、一つを残して2つ以上の搬送媒体Sが下流に搬送されないようにせき止められる。
【0035】
なお、本実施形態では分離ローラ12と送りローラ11とで分離機構を構成したが、このような分離機構は必ずしも設けなくてもよく、経路RTに搬送媒体Sを1つずつ順次給送する給送機構であればよい。また、分離機構を設ける場合においては、分離ローラ12のような構成の代わりに、搬送媒体Sに摩擦力を付与する分離パッドを送りローラ11に圧接させて、同様の分離作用を持たせるようにしてもよい。
【0036】
<搬送構造>
第1搬送部10の搬送方向下流側にある搬送機構としての第2搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを備え、第1搬送部10から搬送されてきた搬送媒体Sをその下流側へ搬送する。駆動ローラ21にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ22は駆動ローラ21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ21に連れ回る。この従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢された構成としてもよい。
【0037】
このような第2搬送部20よりも搬送方向下流側にある第3搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを備え、第2搬送部20から搬送されてきた搬送媒体Sを排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。
【0038】
駆動ローラ31にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ31に連れ回る。この従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ31に対して付勢された構成としてもよい。
【0039】
原稿を積載する排出トレイ2は、画像読取装置Aに対して回動可能なように、画像読取装置Aの下方に設けられた第1ヒンジ101を介して軸支されている。また、第1ヒンジ101側の第1排出トレイ2aとその先端側に接続された第1延長トレイ2b、第2延長トレイ2c、第3延長トレイ2dとから構成されている。第1延長トレイ2bは第1排出トレイ2aに対して摺動して収納可能に支持されており、第2延長トレイ2cは第1延長トレイ2bに対して摺動して収納可能に支持されており、第3延長トレイ2dは第2延長トレイ2cに対して摺動して収納可能に支持されている。
【0040】
<画像読取構造、制御>
ここで、本実施形態の画像読取装置Aでは、第2搬送部20と第3搬送部30との間に配置される画像読取ユニット70によって画像の読取を行うため、第2搬送部20及び第3搬送部30は搬送媒体Sを定速搬送する。搬送速度は常に第1搬送部10の搬送速度以上とすることで、先行搬送媒体Sに後続搬送媒体Sが追いついてしまう事態を確実に回避できる。例えば、本実施形態では、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度を、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度よりも速くなるように速度制御するようにした。
【0041】
なお、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度と、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度とを同一条件とした場合でも、駆動部3を制御して後続搬送媒体Sの給送開始タイミングを間欠的にずらすことにより先行搬送媒体Sと後続搬送媒体Sとの間に最低限の間隔を形成することも可能である。
【0042】
<重送検出>
第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される重送検出センサー40は、静電気等で紙などの搬送媒体S同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するための検出センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)の一例である。重送検出センサー40としては、種々のものが利用可能であるが本実施形態の場合には超音波センサーであり、超音波の発信部41とその受信部42とを備え、紙等の搬送媒体Sが重送されている場合と1つずつ搬送されている場合とで、搬送媒体Sを通過する超音波の減衰量が異なることを原理として重送を検出する。
【0043】
<レジストセンサ>
前述の重送検出センサー40よりも搬送方向下流側に配置される媒体検出センサー50は第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置された搬送路RT上流側の検出センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)としての一例であり、第1搬送部10により搬送される搬送媒体Sの位置、詳細には、媒体検出センサー50の検出位置に搬送媒体Sの端部が到達又は通過したか否かを検出する。媒体検出センサー50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサーであり、発光部51とその受光部52とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。
【0044】
本実施形態の場合、搬送媒体Sの先端が媒体検出センサー50で検出された時点で、搬送媒体Sが重送検出センサー40により重送を検出可能な位置に到達しているように、上記の媒体検出センサー50は重送検出センサー40の近傍においてその下流側に設けられている。なお、この媒体検出センサー50は、上記の光学センサーに限定されず、例えば、搬送媒体Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、経路RTに突出したレバー型のセンサーでもよい。また、搬送方向に直交する方向に複数個設けて媒体が搬送路に対して斜行していることを検知しても良い。
【0045】
媒体検出センサー50とは別の媒体検出センサー60が画像読取ユニット70よりも上流側に配置されている。第2搬送部20よりも下流側に配置された下流側の検出センサーとしての一例であり、第2搬送部20により搬送される搬送媒体Sの位置を検出する。媒体検出センサー60としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合、媒体検出センサー50と同様に光センサーであり、発光部61と受光部62とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。なお、本実施形態では、第2搬送部20の搬送方向上流側と下流側のそれぞれに媒体検出センサー50、60を配置したが、何れか一方だけでもよい。
【0046】
<CISの配置>
媒体検出センサー60よりも下流側にある画像読取ユニット70は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。画像読取ユニット70はコンタクトイメージセンサ(CIS)ユニットである。ここでは画像読取ユニット70はCISユニットとしたが、例えばイメージセンサとしてCCDを用いたユニットであっても良く、イメージセンサの種別を限定するものではない。本実施形態の場合、画像読取ユニット70(以下、CISと同義)は経路RTの両側に一つずつ配置されており(70a、70b)、搬送媒体Sの表裏面を読み取る。しかし、経路RTの片側にのみ一つ配置して、搬送媒体Sの片面のみを読み取る構成としてもよい。また、本実施形態では、画像読取ユニット70を経路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、経路RTの方向に間隔をあけて配置してもよい。
【0047】
<ブロック図の説明>
図7を参照して制御部80について説明する。
図7は画像読取装置Aの制御部80のブロック図である。
【0048】
制御部80はCPU81、記憶部82、通信部84、インターフェイス部(a)85aを備える。CPU81は記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより、画像読取装置Aの読取制御、媒体の搬送、操作者への報知等の種々の機能の制御を行う。操作部83は、例えば、スイッチ83cやタッチパネル83aや表示装置83b等で構成され、操作者への情報表示と、操作者からの操作の受け付けを行う。
図6には一例として装置正面に配置されたタッチパネル付液晶ディスプレイである操作部83を示している。
【0049】
ここで、制御部80は複数のCPUや記憶部、通信部、インターフェイス部を有しても良く、例えば1つのCPUにて装置Aの読取制御や媒体の搬送制御、別のCPUにて操作者への報知等を行うようにしても良い。つまり複数の制御系で機能を分割して制御を行っても良い。
【0050】
通信部84は、CPU81に接続された外部装置との情報通信を行うインターフェイスである。外部装置としてPC(パソコン)を想定した場合、通信部84としては、例えば、USBインターフェイスやSCSIインターフェイスが挙げられる。またLANに代表される有線通信のネットワークインターフェイスや無線LANやbluetooth(登録商標)に代表される無線通信のインターフェイスが挙げられる。なお通信部84は複数の通信インターフェイスを備えても良い。
【0051】
インターフェイス部(a)85aは、CPU81とアクチュエータ86やセンサー87とのデータの入出力を行うI/Oインターフェイスである。アクチュエータ86には、駆動部3、駆動部4、伝達部5等が含まれる。センサー87には、重送検出センサー40、媒体検出センサー50及び60等が含まれる。インターフェイス部(b)85bは例えば、操作部83の表示装置83bに接続される制御インターフェイスである。表示制御を行うインターフェイスとしては例えばSPIやUSBインターフェイス、eDP、HDMI(登録商標)などが挙げられる。
【0052】
<表示パネルの構成>
図8は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの排出トレイ2を展開した状態の正面図である。より正確には、画像読取装置Aの正面側に傾斜して設けられた正面パネル90に対して垂直な方向から見た図であり、装置を載置した状態における正面よりもやや上方から見た状態の図である。
【0053】
正面上部の正面パネル90には表示パネル93が設けられ、その内部には操作部83の一例としてのスイッチの一例である電源ボタン122、表示部94が設けられている。ここで表示部94はタッチパネル83a、表示装置83b等で構成される。
【0054】
表示装置83bは例えば液晶ディスプレイ等であり、装置の状態に応じた画面を表示可能で操作者に装置情報を提供することが可能である。表示された画面の一例としては画像読取装置Aの動作を開始するためのスタートキー、事前に画像読取装置Aに登録された読取動作(例えば読取解像度や読取った画像データの出力方法や出力先等)を指定するジョブの一覧等で構成される画面である。また装置の状態を示すアイコン等を併せて表示しても良い。
【0055】
<重送時の制御>
画像読取動作によって搬送媒体Sは搬送途中に重送検出センサー40により重送の有無が判定され、重送が無いと判定されると搬送が継続される。なお、重送があると判定された場合には、搬送を停止するか、第1搬送部10による後続搬送媒体Sの取り込みを停止して、重送状態にある搬送媒体Sをそのまま排出するようにしてもよい。また外部のパソコンや装置内部の表示装置83bに重送が発生したことを報知する表示を行っても良い。また、このとき合わせて復帰処理、例えば読取を継続する、もしくは重送した搬送媒体Sの読取データを破棄して重送した搬送媒体Sを含む画像読取データが取得されていない搬送媒体Sの読取から実行する等、を選択させても良い。
【0056】
<レジストセンサの出力に応じた読取開始及び読取画像の送信・保存>
制御部80は、媒体検出センサー60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた搬送媒体Sの、画像読取ユニット70による画像の読取を開始し、読み取った画像データを画像処理し、一次記憶して順次装置外部へ送信する。一次記憶された画像データは通信部84を介して、接続されている外部のパソコンまたはネットワーク機器に送信される。ここで、外部パソコンは受信した読取画像を表示した後に保存しても良く、また外部パソコンは受信した読取画像をあらかじめ決まった場所に直接保存しても良い。また、ネットワーク上のデバイス、例えばネットワークに直接接続された外部記憶装置やFTPサーバ等、のあらかじめ決まった場所に保存しても良い。なお画像読取ユニット70で読取った画像データに対する画像処理は制御部80で実施しても、外部のパソコンや外部の機器で実施しても良い。当然複数の機能を分割して複数の制御部80や外部パソコンや外部機器で実施しても良い。
【0057】
<排紙構造>
画像が読み取られた搬送媒体Sは第3搬送部30により排出トレイ2に排出されてその搬送媒体Sの画像読取処理が終了する。排出トレイ2は、原稿載置台の一例である。
【0058】
正面下部の下部パネル91には排出開口92が設けられており、第3搬送部30によって搬送された搬送媒体Sが排出される。排出トレイ2は、画像読取装置Aに対して回動可能なように、画像読取装置Aの下方に設けられたヒンジを介して軸支されており、第1排出トレイ2aによって本体前面を覆うように構成されている。
【0059】
<CISユニット>
図9は、本実施形態に係る画像読取装置Aの画像読取ユニット70の断面図である。本実施形態においては、画像読取ユニット70は搬送路RTの両側に対向させて配置しており、以下の説明ではそれぞれ画像読取ユニット70a、70bとする。画像読取ユニット70aと70bとは、搬送路RTを挟んで対象に配置された同構造を有するセンサユニットである。
【0060】
画像読取ユニット70aは、内部にコンタクトイメージセンサ(以下、CIS)71aと、色基準板72aが設けられている。
【0061】
下部ユニット104に配置された不図示のCIS摺動モータの駆動力を、画像読取ユニット70下部に設けられた伝達部材74および伝達部材連結部150を介して伝達することで、CIS71aおよび色基準板72aは、搬送方向に対し摺動可能に配置されている。CIS71aおよび色基準板72aを摺動させることによって、背景色の切り替えが可能である。
【0062】
色基準板72bが白色で、読取画像の背景色を白にする場合は、CIS摺動モータによってCIS71aを摺動させ、対向する色基準板72bの位置に読取位置を移動することにより白背景読取が可能となる。このとき、CIS71aと色基準板72aとが一体となって移動するので、CIS72aを白背景位置に配置するとCIS72bの読取位置と対向する位置に色基準板72aが配置され、画像読取ユニット70a、70bの両方で白背景の読取が可能となる。色基準板72a、72bが白色でない場合は、別途白背景部を設けCIS71a、71bを白背景部の位置に移動することにより白背景の読取が可能となる。
【0063】
読取画像の背景色を黒にする場合はCIS71aの読取位置を対向する黒背景部76bの位置に配置することにより黒背景の読取が可能となる。CIS71a内の発光素子の発光を黒背景部76bの斜面で拡散させ、CIS71a内の受光素子へ入光させないことで黒背景の読取を実現する。
【0064】
ここでは読取の背景色を切り替える構成を示したが、背景色の切り替えは必須ではなく、白色もしくは黒色、又は任意の色に固定されていても構わない。
【0065】
画像読取ユニット70bも画像読取ユニット70a同様の構造であるが、CIS71bはCIS摺動モータ73による駆動はされずに、ユニット内に固定されている。
【0066】
<PCからの開始指示受信による駆動>
画像読取装置Aの基本的な動作について説明する。制御部80は、例えば画像読取装置Aが接続された外部パソコンや制御機器から画像読取の開始指示を受信すると、第1搬送部10、第2搬送部20、第3搬送部30の駆動を開始する。載置台1に積載された搬送媒体Sはその最も下に位置する搬送媒体Sから1つずつ搬送される。ここで外部パソコンや制御機器との接続は制御部80に含まれる通信部84、例えばUSBインターフェイスやSCSIインターフェイス、LANや無線LANなどが想定される。
【0067】
<装置操作からの開始指示受信による駆動>
また、外部パソコンや制御機器からの読取開始の指示のかわりに画像読取装置Aの操作部83に設けられたスタートキー(不図示)もしくはタッチパネル83aからの入力等によって画像読取指示を受け取って画像読取動作を開始してもよい。
【0068】
<スキャン動作>
制御部80は前述のように外部のPCまたは操作部83からの開始指示を受けると画像のスキャン動作を開始する。開始指示には読取の解像度設定や、カラーやモノクロといった色分解能や色補正の情報等が含まれる。ここで搬送媒体Sが写真である場合、画像読取指示として写真読取モードであることを制御部80に指示可能になっている。搬送媒体Sが写真でない場合、その他の読取モードが選択され制御部80に指示がなされる。ここで、その他の読取モードは複数あっても良く、搬送媒体Sの種類に応じて読取モードを設定できるようにしても良い。読取モードを変更することで搬送媒体Sに応じた最適な画像処理を行う。なお、写真読取モードであることの指示は、操作者が操作部83や外部のPCから指定することによって行っても良いし、画像読取装置Aにおいて画像読取ユニット70や媒体検出センサー50や60をサイズ検知用センサーとして用い、原稿の大きさから写真読取モードで実行することを制御部80が自動的に判定してもよい。
【0069】
<レジストセンサの出力に応じた読取開始>
制御部80は、画像読取ユニット70によって第2搬送部20により搬送されてきた搬送媒体Sを読取る。ここで読取の開始は、センサー87に含まれる媒体検出センサー60の検出結果に基づくタイミングとなる。制御部80は設定された読取の解像度と搬送媒体Sの移動速度に応じて一定間隔で画像読取ユニット70から画像を読取る。
【0070】
<読取画像の画像処理>
画像読取ユニット70で読取られた画像は画像処理部88で種々の画像処理が施され通信部84を介して外部の制御機器に送信される。搬送原稿Sが写真の場合の詳細な処理の流れは後述する。
【0071】
ここで、前述のように画像読取ユニット70a、70bは第2搬送部20を挟んで配置されており、搬送媒体Sの両面を読取るようになっている。操作者は搬送媒体Sを載置台1に載置する際、搬送媒体Sの表面を載置台1に接するように、つまり操作者からは載置台1に搬送媒体Sが載置された時に裏面が見える向きに載置されるように指定されており、搬送媒体Sが搬送され、画像読取ユニット70aにて搬送媒体Sの表面が読み取られ、画像読取ユニット70bにて裏面が読み取られる構成となる。ここで搬送媒体Sが写真である場合は、表面が印画されている面となる。
【0072】
画像読取ユニット70で読取られた表面と裏面の画像は後述の画像処理が施され外部の制御機器へ画像データとして送信される。ここでは画像読取ユニット70aで読取られる面を表面としたが、搬送媒体Sを載置台1に載置する際の向きを反転させて、つまり搬送媒体Sが載置台1に載置された時に表面が見えるように載置するようにし指定され、画像読取ユニット70aで読取られる面を裏面とするように構成してもよい。
【0073】
<写真について>
本発明においては、褪色補正処理は、原稿の表裏を区別せず、両面に施すものとしている。しかし、原稿が写真である場合には、操作者が褪色補正処理の実行を指定している場合であっても、裏面には褪色補正を実行しないとしても良い。これは、以下の2つの理由による。
【0074】
理由の1つ目は、一般に写真は台紙の表面のみに画像が印画されており、表面・裏面共に印画されていることはないことである。写真の裏面に記載されているのは印画した台紙のブランド名や印画紙の名称を示すマーク等の、操作者にとって不要なデータだけであることが多く、褪色補正を施しても操作者にはメリットがないことが多くなる。
【0075】
理由の2つ目は、一般に写真は表面が見えるようにアルバム等に保管されるため、裏面は表面に比べて光や空気にさらされる機会が少なく、褪色も少ない傾向にあることである。褪色が少ない傾向にあるため、そもそも褪色補正を必要としないことが多くなる。
【0076】
<読取手順>
以下、本実施形態の画像読取装置Aによる読取手順を
図10のフローチャートを用いて説明する。
図10のフローチャートは、本実施形態の画像読取装置Aによる読取手順の一例を説明するフローチャートであり、この処理はCPU81が記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより実現されるものである。なお、本実施形態における他のフローチャートも、特段の説明がない限りは、CPU81が記憶部82に記憶されたプログラムを実行することによって実現されるものとする。また、以下に説明する画像処理は、少なくとも写真読取モードにおいて実行される。ただし、それ以外の読取モードにおいても同様に実行されるように構成してもよい。
【0077】
画像読取の開始指示を受信すると、ステップS1201において、制御部80は画像読取ユニット70の制御を開始し、背景板、すなわち色基準板72a、72bを読取り、記憶部82に保存する。
【0078】
続いてステップS1202において、制御部80は画像読取を行うために、開始指示において指示された解像度や色数情報に合わせてアクチュエータ86の制御を開始し、載置台1に載置された搬送媒体Sの最も下に位置する搬送媒体Sを1枚搬送し、画像読取ユニット70によって画像の読取を行い、排紙する。
【0079】
次に、ステップS1203で画像読取ユニット70aおよび70bで読取った画像を記憶部82に一時保存する。ここで用いられる記憶部82は大容量かつ低コストであるDRAMや、高速アクセス可能なSRAM等である。
【0080】
ここで、本発明における画素の座標の取り方を説明する。本発明においては、画像の左上端を座標の原点とする。また、画像読取ユニット70の主走査方向を左右、副走査方向を上下にして画像を配置した場合、画像の右方向を正のX方向、画像の下方向を正のY方向と定める。すなわち、左上端のX座標とY座標をともに0とする。また左上端から1画素右の画素のX座標を1、Y座標を0とし、左上端から1画素下の画素のX座標を0、Y座標を1とする。
【0081】
<領域切出処理>
次に、ステップS1204で記憶部82に保存された画像が取り出され、領域切出処理が加えられる。なお、領域切出処理は画像から原稿が写っている領域を切り出すものであればいかなるものでも良い。本実施形態では一例として、はじめに画像中の原稿が写っている領域の上下左右端を検出し、次に、検出された領域の内側の部分を切り出すという手法を行う。
【0082】
ここで
図13のフローチャートを用いて、本発明における領域切出処理を説明する。
【0083】
CPU81は、ステップS1501からステップD1504で記憶部82から取り出された画像から、原稿が写っている領域の4隅を検出する。各頂点の検出処理は、画像から原稿が写っている領域の各頂点を検出するものであればいかなるものでも良い。本発明では一例として、
図14のフローチャートを用いた頂点検出処理を用いる。
【0084】
以下、
図14のフローチャートを用いた頂点検出処理を説明する。ステップS1601でCPU81は、原稿領域の第1の頂点を格納するための変数YMINを記憶部82に用意し、その値に65535をセットする。なお、この値は一例であり、読み取る原稿の長さに相当する画素数よりも大きい値であれば何でもよい。
【0085】
ステップS1602でCPU81は、原稿領域の上端を判定する画素のX座標を格納するための変数Xを記憶部82に用意し、その値に0をセットする。
【0086】
ステップS1603でCPU81は、原稿領域の上端を判定する画素のY座標を格納するための変数Yを記憶部82に用意し、その値に0をセットする。
【0087】
ステップS1604でCPU81は、座標(X,Y)の画素の明るさが、記憶部82に保存された色基準板の明るさと等しいかを判定する。色基準板の明るさと等しいと判定した場合は、座標(X,Y)が原稿領域ではないものとして、処理はステップS1605に進む。一方、色基準板の明るさと等しくないと判定した場合は、座標(X,Y)が原稿領域であるものとして、処理はステップS1609に進む。
【0088】
ステップS1605でCPU81は、座標(X,Y+1)が画像内に含まれるかを判定する。画像に含まれると判定した場合は、処理はステップS1606に進む。ステップS1606でCPU81は変数Yに1加算し、さらにステップS1604に進んで判定を繰り返す。一方、画像に含まれないと判定した場合は、画像の下端まで探索が終了したものとして、処理はステップS1607に進む。
【0089】
ステップS1607でCPU81は、座標(X+1,Y)が画像に含まれるかを判定する。画像に含まれると判定した場合は、処理はステップS1608に進む。ステップS1608でCPU81は変数Xに1加算し、さらにステップS1603に進んで判定を繰り返す。一方、画像に含まれないと判定した場合は、画像全体の探索が終了したものとして、処理を終了する。
【0090】
ステップS1609でCPU81は、変数Yが変数YMINよりも小さいかを判定する。変数YMINよりも小さい場合は、よりY座標の小さい第1の頂点が検出されたものとして、ステップS1610で変数YMINの値を変数Yで置き換える。その後処理はステップS1607に進む。変数YMINよりも小さくない場合には、変数YMINの値を変更せずに、処理はステップS1607に進む。
【0091】
以上の手順により、原稿の第1の頂点が検出される。
図13に戻り、ステップS1502、S1503、S1504でCPU81は、第1の頂点検出処理と同様の手順を用いて、それぞれ第2の頂点、第3の頂点、第4の頂点を検出する。
【0092】
すなわち、第2の頂点の検出においては、
図14においてステップS1605とステップS1607とを入れ替え、ステップS1601、ステップS1609、ステップS1610における変数YMINに代えて、変数XMINを初期値65535として用いれば良い。
【0093】
また、第3の頂点の検出においては、
図14において変数YMINの代わりに変数YMAXを初期値0とし、ステップS1603における変数Yの初期値としては画像内における最大のY座標の値を用い、ステップS1604でNoとなる画素におけるY座標が最大となる位置を取得すれば良い。この場合、ステップS1605、S1606における(Y+1)を(Y-1)に置き換えて処理すれば良い。
【0094】
同様に、第4の頂点の検出においては、
図14において、第2の頂点の検出における変数XMINの代わりに変数XMAXを初期値0とし、ステップS1602における変数Xの初期値としては画像内における最大のX座標の値を用い、ステップS1604でNoとなる画素におけるX座標が最大となる位置を取得すればよい。この場合、ステップS1605、S1606における(X+1)を(X-1)に置き換えて処理すれば良い。
【0095】
ステップS1505でCPU81は、検出された原稿の4隅に基づき、原稿領域を矩形に切り出して、処理を終了する。
【0096】
なお、本発明における領域切り出し処理では、原稿が長方形ではなく一部の辺が斜めになっているときには、原稿の内接矩形が切り出される。なお、切り出す前に原稿の斜行を補正した上で切り出しても良い。
【0097】
ここで、
図15を用いて、内接矩形での切り出しと外接矩形での切り出しの違いを説明する。一般に工業的に生産される用紙では、加工段階での誤差があるため、正確な長方形にはならず、一部の辺がわずかながら斜めに裁断されることになる。白色の用紙ではこの斜めに裁断された部分は目立たないが、用紙のサイズが小さく、かつ原稿の縁まで色が付いている写真では、この斜めに裁断された部分が目立つことがある。
【0098】
図15(a)は、このように斜めに裁断された写真を、破線で示した外接矩形で切り出した時の画像を示している。斜めに切断された画像を外接矩形で切り出すと、斜めに裁断された部分に背景板が映り込むため、一部が欠けたような不自然な画像となってしまう。
【0099】
一方、
図15(b)は、斜めに裁断された画像を、破線で示した内接矩形で切り出した時の画像を示している。内接矩形で切り出した場合には、斜めに裁断された部分が画像に含まれないため、欠けのない自然な画像が得られる。
【0100】
<影消し処理>
次に、
図10に戻り、ステップS1205で、領域切出処理を行った画像に対して影消し処理が加えられる。影消し処理は、原稿の周囲に生じる影を画像から除去するものであればいかなるものでも良い。本発明では一例として、まず画像から影を検出し、次にその影を除去する手法を用いる。
【0101】
本発明における影検出処理では、影の長さが概ね決まっていることを利用する。原稿の影は、光源から照射された光が原稿に遮られることで生じるため、影の長さは搬送される原稿と光源の間の距離で概ね決定される。ADFを用いた画像読取装置では、光源と原稿の間の距離が、搬送路のハードウェア構成によって制限を受けるため、影の長さも概ね決まったものになる。
【0102】
また、原稿の影の濃度は、背景板からの乱反射など様々な要因の影響を受けるため、グラデーション状になる。すなわち、原稿端で影は最も濃くなり、そこから離れるほど単調に薄くなる。本発明においては、影の濃度を分析し、濃淡がグラデーション状になっていることを利用して、影を検出する。
【0103】
ここで、
図11のフローチャートを用いて、影消し処理を説明する。なお、本実施形態においては、
図1で示したように、搬送方向の上流側から原稿に対して光を照射する構成としており、影は画像の上の部分(Y座標の大きい側)にできることを想定して説明するが、これに限られない。
【0104】
ステップS1301でCPU81は、影を判定する画素のX座標を格納するための変数Xを記憶部82に用意し、その値に0をセットする。
【0105】
ステップS1302でCPU81は、影を判定する画素のY座標を格納するための変数Yを記憶部82に用意し、その値に0をセットする。
【0106】
ステップS1303でCPU81は、座標(X,Y)が影の端であるかを判定する。ここで、影の端かを判定する処理の一例を
図12のフローチャートを用いて説明する。
【0107】
本発明における影判定処理では、座標(X,Y)が影の端、すなわち原稿に最も近い位置の影であるかを判定することで影領域の判定を行う。すなわち、座標(X,Y)の明るさが最も暗く、座標(X,Y)よりも下(座標軸で言うと正側)の画素は原稿領域内のために明るく、かつ座標(X,Y)よりも上の座標は影のグラデーションのために明るくなる、ということを判定する。
【0108】
なお、この影判定方法は一例であり、本発明はこれに限るものではない。画像から影の位置を判定できるものであれば、どのような処理でも良い。
【0109】
ステップS1401でCPU81は、座標(X,Y)の明るさが所定の値よりも暗いかを判定する。なお、所定の値は、原稿の影が通常持つ明るさとして、あらかじめ定められた値とする。所定の値よりも暗い場合には、座標(X,Y)が影の端である可能性があるものとして処理はステップS1402に進み、さらに影の判定を続ける。所定の値よりも明るい場合には、処理はステップS1409に進み、座標(X,Y)が影の端ではないと判定して処理を終了する。
【0110】
ステップS1402でCPU81は、座標(X,Y+1)の明るさが、座標(X,Y)の明るさよりも明るいかを判定する。明るいと判定された場合には、座標(X,Y+1)が原稿領域にあり、座標(X,Y)が影の端である可能性があるものとして、処理はステップS1403に進み、さらに影の判定を続ける。暗いと判定された場合には、処理はステップS1409に進み、座標(X,Y)が影の端ではないと判定して処理を終了する。
【0111】
ステップS1403でCPU81は、画素の判定位置を示すための変数Lを記憶部82に用意し、その値に1をセットする。なお、以降の処理では、変数Lを用いて影がグラデーション状になっているかを判定する。
【0112】
ステップS1404でCPU81は、座標(X,Y-L)の明るさが、記憶部82に保存された色基準板の明るさに等しいかを判定する。色基準板の明るさに等しいと判定された場合には、影を終端まで探索できたものとして、処理はステップS1408に進み、座標(X,Y)が影の端であると判定して処理を終了する。色基準板の明るさに等しくないと判定された場合には、影の端が見つけられていないものとして、処理はステップS1405に進み、判定処理を継続する。
【0113】
ステップS1405でCPU81は、座標(X,Y-L-1)の明るさが、座標(X,Y-L)の明るさ以上かを判定する。座標(X,Y-L)の明るさ以上と判定された場合には、影がグラデーション状になっており、座標(X,Y)が影の端である可能性があるものとして、処理はステップS1406に進み、さらに影の判定を続ける。座標(X,Y-L)の明るさより低いと判定された場合には、処理はステップS1409に進み、座標(X,Y)が影の端ではないと判定して処理を終了する。
【0114】
ステップS1406でCPU81は、変数Lの値に1加算する。
【0115】
ステップS1407でCPU81は、変数Lの値が、あらかじめ定められた最大影長さ以上であるかを判定する。最大影長さ以上であった場合には、影としては長すぎるため、影ではなく原稿である可能性があるものとして、処理はステップS1409に進み、座標(X,Y)が影の端ではないと判定して処理を終了する。最大影長さより小さかった場合には、グラデーション状の確認が不十分であるものとし、処理はステップS1403に進んで影の判定を継続する。
【0116】
図11に戻り、ステップS1303でCPU81は、座標(X,Y)が影の端であると判定された場合は、処理はS1304に進み、影の端でないと判定された場合は、処理はS1305に進む。
【0117】
ステップS1304でCPU81は、座標(X,Y)を基準に影を削除する。具体的には、座標(X,Y)から座標(X,Y-最大影長さ)の範囲の画素の濃度を所定の値に変換する。所定の値は白、すなわち画素のRGB成分が全て255であっても良いが、あらかじめ取得しておいた色基準板の画素値に変換するのでも良い。
【0118】
一方、ステップS1305でCPU81は、変数Yの値に1加算する。
【0119】
ステップS1306でCPU81は、変数Yの値に1だけ加算した値が画像に含まれるか、すなわち(X,Y)の一つ下の座標が画像内に存在するかを判定する。画像内に存在すると判定した場合は、処理はステップS1303に進み、正のY方向に影の端の探索を進める。一方、画像内に存在しないと判定した場合は、処理はステップS1307に進む。
【0120】
ステップS1307でCPU81は、変数Xの値に1だけ加算する。
【0121】
ステップS1308でCPU81は、変数Xの値が画像に含まれるか、すなわち座標(X,Y)が画像内に存在するかを判定する。画像内に存在すると判定した場合は、処理はステップS1302に進み、正のX方向に影の端の探索を進める。一方、画像内に存在しないと判定した場合は、影の探索が終了したものとして、処理を終了する。
【0122】
本実施形態における影消し処理は上述した通りであり、原稿のY方向側にできる影を除去することができるが、さらに原稿のX方向側にできる影に対する影消し処理を同様に実行しても良い。
【0123】
<褪色補正処理>
図10に戻り、ステップS1206で、影消し処理を行った画像に対して褪色補正処理が加えられる。本発明における褪色補正処理は、画像のRGB各成分に対してヒストグラムを作成し、続いてヒストグラムの最大値と最小値を算出し、最後に算出された最大値と最小値がそれぞれ255と0になるように画素値を変換することで行う。この処理により、RGBのバランスが整い、褪色が補正された画像が得られる。
【0124】
なお、この褪色補正方法は一例であり、本発明はこれに限るものではない。画像から褪色の影響を除去、もしくは軽減できるものであれば、どのような処理でも良い。
【0125】
ここで
図16のフローチャートを用いて、褪色補正処理を説明する。
【0126】
ステップS1801でCPU81は、画像全体からRGB各成分のヒストグラムを作成する。ここでヒストグラム作成処理を
図17のフローチャートを用いて説明する。
【0127】
ステップS1901でCPU81は、記憶部82内にRGB各成分のヒストグラムデータを作成し、その値を初期化する。具体的には、RGBそれぞれについて256個の変数(計768個)を用意し、その全てに0をセットする。
【0128】
ステップS1902でCPU81は、ヒストグラムに加算する画素のX座標を格納するための変数Xを記憶部82に用意し、その値に0をセットする。
【0129】
ステップS1903でCPU81は、ヒストグラムに加算する画素のY座標を格納するための変数Xを記憶部82に用意し、その値に0をセットする。
【0130】
ステップS1904でCPU81は、座標(X,Y)の画素値のRGB各成分をヒストグラムに加算する。具体的には、座標(X,Y)の画素値のR成分をRXYとすると、記憶部82のR成分のヒストグラムのRXY+1番目のデータに1加算する。G,B成分に同様に、ヒストグラムデータの中の画素値に相当するデータに1加算する。
【0131】
ステップS1905でCPU81は、座標(X,Y+1)が画像に含まれるかを判定する。画像内に含まれると判定した場合は、処理はステップS1906に進む。ステップS1906でCPU81はYに1加算し、さらにステップS1904に進んでヒストグラムの作成を続ける。一方、画像内に含まれないと判定した場合は、画像の下端まで探索が終了したものとして、処理はステップS1907に進む。
【0132】
ステップS1907でCPU81は、座標(X+1,Y)が画像に含まれるかを判定する。画像に含まれると判定した場合は、処理はステップS1908に進む。ステップS1908でCPU81はXに1加算し、さらにステップS1903に進んでヒストグラムの作成を続ける。一方、画像に含まれないと判定した場合は、ヒストグラムの作成が終了したものとして、処理を終了する。
【0133】
ステップS1802でCPU81は、記憶部82に作成されたヒストグラムから褪色補正前の最大値を算出する。本発明において、後述する画素値変換処理で使用する「最大値」(褪色補正前の最大値)は、ヒストグラムの上端から所定の分布割合(面積)を除外した分布における上端位置とする。所定の分布割合を除外した分布における最大値を退色補正前の最大値とすることで、画像内のノイズや原稿読取時のゴミなどによらずに適切な最大値を取得できるようになる。
【0134】
なお、この最大値判定方法は一例であり、本発明はこれに限るものではない。後段の画素値変換処理でRGB各成分の最大値として使用される値を決定する方法であればいかなるものでも良い。例えば、ヒストグラムが0でない位置を最大値として判定するものでも良いし、ヒストグラムが所定の高さを上回る位置を最大値として判定するものでも良い。
【0135】
ここでヒストグラムの最大値算出処理を
図18のフローチャートを用いて説明する。なお、
図18のフローチャートではR成分のヒストグラムについての最大値算出方法を説明しているが、G成分、B成分についても同様の手順で最大値を算出する。
【0136】
ステップS2001でCPU81は、算出している面積を示す変数SUMを記憶部82に用意し、その値に0をセットする。
【0137】
ステップS2002でCPU81は、算出している位置を示す変数Vを記憶部82に用意し、その値に255をセットする。
【0138】
ステップS2003でCPU81は、R成分のヒストグラムのV番目の値をSUMに加算する。
【0139】
ステップS2004でCPU81は、SUMの値が所定の面積よりも大きいかを判定する。所定の面積よりも大きいと判定した場合は、処理はステップS2007に進み、Vをヒストグラムの最大値と判定して、処理を終了する。一方、所定の面積よりも大きくないと判定した場合は、処理はステップS2005に進む。なお、所定の面積は固定の値でも良く、また画像の全画素数に所定の割合をかけた値でも良い。
【0140】
ステップS2005でCPU81は、Vを1だけ減算する。
【0141】
ステップS2006でCPU81は、Vが0に等しいかを判定する。0に等しい場合は、処理はステップS2007に進み、Vをヒストグラムの最大値と判定して、処理を終了する。一方、0に等しくないと判定した場合は、処理はステップS2003に進み、ヒストグラムの最大値の算出を続ける。
【0142】
図16に戻り、ステップS1803でCPU81は、ヒストグラムにおける「最小値」を算出する。なお、ヒストグラムの最小値の算出は、ヒストグラムの最大値の算出と同様の方法で行い、ヒストグラムの下端から所定の分布割合(面積)を除外した分布における下端位置とする。
【0143】
次に、ステップS1804でCPU81は、算出されたヒストグラムの最大値と最小値に基づいて、画像の画素値を変更する。具体的には、画像の全ての画素に対して、次式を用いて変換前の画素のRGB各成分を、変換後の画素のRGB各成分に変換する。
変換後R成分=(変換前R成分-Rの最小値)/(Rの最大値-Rの最小値)×255
変換後G成分=(変換前G成分-Gの最小値)/(Gの最大値-Gの最小値)×255
変換後B成分=(変換前B成分-Bの最小値)/(Bの最大値-Bの最小値)×255
【0144】
上式により、算出された最大値と最小値がそれぞれ255と0になるように画素値が変換される。その結果、RGBのバランスが整い、褪色が補正された画像が得られる。なお、変換前の全画素のRGBの分布を考慮し、それぞれの変換後のRGB各成分に対して補正係数を掛けてもよい。
【0145】
図10に戻り、ステップS1207にて褪色補正処理を加えた最終画像を記憶部82に保存する。ここで保存された画像は読取手段とは別の処理にて画像読取装置Aの外部に通信部84を介して外部の制御機器やメモリデバイスやハードディスクドライブ等の記憶装置、または通信部84の一部であるLANの機能を用いてネットワーク上にあるクラウドコンピューティングサービスによって提供される保存領域に保存される。また、画像読取装置Aの記憶部82に保存しても良い。ここでは記憶部82は不揮発、揮発であるかは問わない。
【0146】
読取処理としてはステップS1208で載置台1に搬送媒体Sが残っている場合は再度ステップS1202に戻り画像読取を行う。逆に載置台1に搬送媒体Sが残っていない場合は処理を終了する。
【0147】
以上の手順により、原稿の影があっても精度良く褪色を補正でき、かつ視認性の高い画像を得ることができる。
【0148】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。第1実施形態との違いの1つは、影消し処理である。第1実施形態では、影の濃淡を基に影の位置を判定し、除去する影消し処理を行っていた。第2実施形態では、影消し処理の他の方法として、原稿端(原稿周囲)から所定の長さを除去する処理(トリミング処理)を用いて影を除去する。また褪色補正処理とトリミング処理を実行するか否かを、操作者が選択できるようにする。以下、第1実施形態との違いについてのみ説明するものとし、それ以外の構成は第1実施形態と同様とする。
【0149】
以下、本実施形態の画像読取装置Aによる読取手順を
図19のフローチャートを用いて説明する。
図19のフローチャートは、本実施形態の画像読取装置Aによる読取手順の一例を説明するフローチャートであり、この処理は後述するステップS2101を除き、CPU81が記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより実現されるものである。なお、本実施形態における他のフローチャートも、特段の説明がない限りは、CPU81が記憶部82に記憶されたプログラムを実行することによって実現されるものとする。
【0150】
ステップS2101にて、通信部84で画像読取装置に接続された外部装置(不図示)もしくは操作部83を用いて、操作者は読取設定を決定し、画像読取装置に対して画像読取の開始指示を送信する。本実施形態における画像読取の開始指示には、読取設定でトリミング処理の有効が選択されているか否かの情報、および褪色補正処理の有効が選択されているか否かの情報が含まれる。
【0151】
本実施形態において操作者は、
図20に示すダイアログを操作して、読取設定の決定と、画像読取の開始指示の送信を行う。なお、
図20に示すダイアログは、外部装置が備える表示部(不図示)などに表示され、外部装置が備えるユーザーインターフェース部(不図示)を用いて操作できるものとする。なお、
図20に示すダイアログは一例であり、褪色補正処理を有効にするか否か、およびトリミング処理を有効にするか否か、の設定の確認や変更ができるものであれば、どのようなものでも良い。
【0152】
本実施形態においては、褪色補正処理とトリミング処理は、有効および無効を独立して設定できるものとする。しかしこれは一例であり、例えば褪色補正処理を有効にしたときには、トリミング処理が強制的に有効になるものでも良い。また褪色補正処理を有効にしたときに、
図20に示すような注意を操作者に通知して、トリミング処理の有効化を促すものとしても良い。
【0153】
ステップS2102で画像読取の開始指示を受信した制御部80は、ステップS1201と同様に、画像読取ユニット70の制御を開始し、背景板、すなわち色基準板72a、72bを読取り、記憶部82に保存する。また、開始指示に含まれている、トリミング処理の有効が選択されているか否かの情報、および褪色補正処理の有効が選択されているか否かの情報を記憶部82に保存する。
【0154】
ステップS2103において制御部80は、ステップS1202と同様に、画像読取を行うために、開始指示において指示された解像度や色数情報に合わせてアクチュエータ86の制御を開始し、載置台1に載置された搬送媒体Sの最も下に位置する搬送媒体Sを1枚搬送し、画像読取ユニット70によって画像の読取を行い、排紙する。
【0155】
ステップS2104で、ステップS1203と同様に、画像読取ユニット70aおよび70bで読取った画像が記憶部82に一時保存される。
【0156】
ステップS2105で、ステップS1204と同様に、記憶部82に保存された画像が取り出され、領域切出処理が加えられる。
【0157】
ステップS2106で、記憶部82に保存されたトリミング処理の設定が有効であるか否かが判定される。有効である場合、処理はステップS2107に進み、トリミング処理が行われる。一方、有効でない場合、処理はステップS2108に進む
【0158】
ステップS2107で、領域切出処理を行った画像に対してトリミング処理が加えられる。本実施形態においては、トリミング処理は、
図22に示すように、画像の上下左右を所定の長さだけ切り出すことで行う。なお、このトリミング処理は一例であり、上下左右で切り出す量が異なっていても良いし、
図22のように、画像の縁よりもやや内側を矩形に切り出すものであっても良いし、操作者が切り出し量を指定できるものでも良い。また、影の長さを検知し、検知した影の長さを基に切り出し量を決定するものでも良い。
【0159】
ステップS2108で、記憶部82に保存された褪色補正処理の設定が有効であるか否かが判定される。有効である場合、処理はステップS2109に進み、褪色補正処理が行われる。一方、有効でない場合、処理はステップS2110に進む
【0160】
ステップS2109で、ステップS1206と同様に、画像に対して褪色補正処理が加えられる。
【0161】
ステップS2110で、ステップS1207と同様に、褪色補正処理を加えた最終画像が記憶部82に保存される。
【0162】
ステップS2111で、ステップS1208と同様に、載置台1に搬送媒体Sが残っている場合、処理は再度ステップS2103に戻り、画像読取が行われる。逆に載置台1に搬送媒体Sが残っていない場合、処理は終了される。
【0163】
以上説明したように、本実施形態においては、読取画像に対してトリミング処理による影消し処理を施したあとで、褪色補正処理を実行するものであり、この構成によれば、第1実施形態で説明した影の濃淡によって影を判定する影消し処理においては除去し切れない部分が残ってしまうような画像に対しても適切に褪色補正処理を適用することが可能となる。
【0164】
なお、上記実施形態にて説明した領域切出処理や影消し処理は、原稿画像の周縁部を除去する周縁除去処理の一例であり、原稿画像の周縁部を除去することで画像内の影部分の除去可能な画像処理であれば他の方法を用いてもよく、その場合でもその後の褪色補正処理を適切に実行することが可能である。
【0165】
また、第1実施形態と第2実施形態とで説明したそれぞれの影消し処理(以下、第1の影消し処理と第2の影消し処理)について、どちらの処理も実行可能に組み合わせて構成しても良い。さらに、上述したように、操作者が写真読取モードであることを指定可能になっていることが好ましく、例えば
図20やそれ以外の表示画面において写真読取モードを選択可能なメニューが表示されていれば良い。このとき、写真読取モードである場合には、第1の影消し処理を選択不可能に表示し、第2の影消し処理のみ選択可能に表示しても良い。さらに、褪色補正処理を実行することを選択した際には、
図21のように、周縁除去処理(第2の影消し処理)の実行を選択するように操作者に対して報知することが好ましい。この構成によれば、写真読取モードにおいて褪色補正処理を実行する際に、第2の影消し処理のみが選択されるように構成することができ、適切に褪色補正処理を実行することができる。
【0166】
以上各実施形態で説明した画像処理、すなわち、
図10におけるステップS1204からステップS1206や、
図19におけるステップS2105からステップS2109などの画像処理を、各実施形態においては制御部80(CPU81)が実行するものについて説明したが、これに限られない。すなわち、画像読取ユニット70によって読み取られた画像を、通信部84を介して接続される外部装置などに送信し、その外部装置にインストールされた画像処理ソフトウェア(アプリケーション)や画像読取装置Aのドライバーソフトウェアにおいて実行するシステムとして本発明を実現しても良い。いずれの形態も原稿の画像を読み取る画像読取システムを構成していると言える。
【符号の説明】
【0167】
A 画像読取装置
S 搬送媒体
11 送りローラ
12 分離ローラ
21、31 駆動ローラ
22、22 従動ローラ
70 画像読取ユニット
80 制御部
81 CPU
82 記憶部
83 操作部
84 通信部
85a、85b インターフェイス部
86 アクチュエータ
87 センサー
88 画像処理部
90 正面パネル
93 表示パネル
94 表示部