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特開2022-106437フィルムコンデンサおよび電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106437
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサおよび電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220712BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20220712BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20220712BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20220712BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20220712BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M3/00 Y
H01G2/02 101E
H01G4/228 Q
H01G4/228 S
H01G4/38 A
H01G4/32 305A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001431
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】会森 信
【テーマコード(参考)】
5E082
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5E082AA11
5E082AB04
5E082BB03
5E082CC06
5E082GG08
5E082HH28
5E082HH48
5H730AA04
5H730AS04
5H730ZZ04
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H730ZZ15
5H770CA01
5H770QA12
5H770QA22
(57)【要約】
【課題】低インダクタンス化を図ることが可能なフィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】複数のフィルムコンデンサ素子と、第1極性の第1バスバと、第2極性の第2バスバと、ケース40とを備えるフィルムコンデンサCであって、第1バスバは第1極入力端子22および第1極出力端子23とを備え、第2バスバは第2極入力端子32および第2極出力端子33とを備える。少なくとも二相の各相において第1極出力端子23の両側に第2極出力端子33が配置され、隣り合う異相の第2極出力端子33が共通化された共通端子となることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極を有する複数のフィルムコンデンサ素子と、
前記第1電極に接続される第1極性の第1バスバと、
前記第2電極に接続される第2極性の第2バスバと、
を備えるフィルムコンデンサであって、
前記第1バスバは、第1極主板と、第1極入力端子と、第1極出力端子を構成する、第1相用の第1極第1相端子および第2相用の第1極第2相端子と、
を備え、
前記第2バスバは、第2極主板と、第2極入力端子と、第2極出力端子を構成する、前記第1相用の第2極第1相端子および前記第2相用の第2極第2相端子と、
を備え、
前記第2極第1相端子は、前記第1極第1相端子を挟んで引き出された第1端子および第2端子を備え、
前記第2極第2相端子は、前記第1極第2相端子を挟んで引き出された第3端子および第4端子を備え、
前記第2端子と前記第3端子は、共通化された単一の第1共通端子である
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第1バスバの前記第1極出力端子は、第3相用の第1極第3相端子を備え、
前記第2バスバの前記第2極出力端子は、前記第3相用の第2極第3相端子を備え、
前記第2極第3相端子は、前記第1極第3相端子を挟んで引き出された第5端子および第6端子を備え、
前記第4端子と前記第5端子とは、共通化された単一の第2共通端子である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記第1バスバは、複数の前記第1極出力端子を備え、
前記第2バスバは、前記第1極出力端子と同数の前記第2極出力端子を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置であって、
前記直流電力を昇圧して昇圧直流電力を出力するDC/DCコンバータと、
前記昇圧直流電力を平滑して少なくとも二相用の直流電力を出力する請求項1~3のいずれかに記載のフィルムコンデンサと、
前記少なくとも二相用の直流電力に基づいて少なくとも二相の前記交流電力を生成するインバータと、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサおよび当該フィルムコンデンサを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車のモータに三相交流電力を供給する電力変換装置が知られている。電力変換装置は、DC/DCコンバータと、インバータと、フィルムコンデンサとを備える。DC/DCコンバータは、バッテリから供給された直流電力を昇圧して出力し、インバータは、DC/DCコンバータが出力した昇圧直流電力を三相交流電力に変換してモータに供給する。フィルムコンデンサは、DC/DCコンバータとインバータとの間に設けられ、平滑コンデンサとして機能する。
【0003】
図6(A)に示すように、上記フィルムコンデンサの出力端子は、陰極(N極)のU相端子、V相端子、W相端子と、陽極(P極)のU相端子、V相端子、W相端子とで構成され、同相の端子が隣り合い、かつ陰極の端子と陽極の端子とが交互に配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-251351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記フィルムコンデンサにおいて、出力端子を構成する各端子のインダクタンスは、各端子の幅wによって決まり、幅wが大きいほどインダクタンスは小さくなる。しかしながら、各端子が近接して配置されていると、各端子の幅wを十分に確保できないため、インダクタンスは大きくなるという問題がある。
【0006】
一方で、出力端子の端子間に十分な隙間があり、各端子の幅を大きくした場合、各端子に形成されている締結用の貫通穴TH間の距離(異極同相の貫通穴TH間の距離)が大きくなり、各相間のインダクタンスが大きくなる。例えば、図6(B)に示すように、各端子の幅をwからw’に大きくすると、異極同相の貫通穴TH間の距離がdからd’に大きくなるため、各相間のインダクタンスは大きくなるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、低インダクタンス化を図ることが可能なフィルムコンデンサおよび当該フィルムコンデンサを備える電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルムコンデンサは、
第1電極および第2電極を有する複数のフィルムコンデンサ素子と、
前記第1電極に接続される第1極性の第1バスバと、
前記第2電極に接続される第2極性の第2バスバと、
を備えるフィルムコンデンサであって、
前記第1バスバは、第1極主板と、第1極入力端子と、第1極出力端子を構成する、第1相用の第1極第1相端子および第2相用の第1極第2相端子と、
を備え、
前記第2バスバは、第2極主板と、第2極入力端子と、第2極出力端子を構成する、前記第1相用の第2極第1相端子および前記第2相用の第2極第2相端子と、
を備え、
前記第2極第1相端子は、前記第1極第1相端子を挟んで引き出された第1端子および第2端子を備え、
前記第2極第2相端子は、前記第1極第2相端子を挟んで引き出された第3端子および第4端子を備え、
前記第2端子と前記第3端子は、共通化された単一の第1共通端子であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第2極第1相端子が、第1極第1相端子を挟んで引き出された第1端子および第2端子を備えるため、第2極第1相端子の出力部(例えば、締結用の貫通穴)と第1極第1相端子の出力部(例えば、締結用の貫通穴)との距離を大きくすることなく、第2極第1相端子の幅を大きくすることができる。同様に、第2極第2相端子が、第1極第2相端子を挟んで引き出された第3端子および第4端子を備えるため、第2極第2相端子の出力部(例えば、締結用の貫通穴)と第1極第2相端子の出力部(例えば、締結用の貫通穴)との距離を大きくすることなく、第2極第2相端子の幅を大きくすることができる。その結果、低インダクタンス化を図ることができる。
【0010】
さらに、この構成によれば、第2端子と第3端子とが共通化された単一の第1共通端子であるため、端子幅をより大きくすることができ、さらなる低インダクタンス化を図ることができる。
【0011】
上記フィルムコンデンサにおいて、
前記第1バスバの前記第1極出力端子は、第3相用の第1極第3相端子を備え、
前記第2バスバの前記第2極出力端子は、前記第3相用の第2極第3相端子を備え、
前記第2極第3相端子は、前記第1極第3相端子を挟んで引き出された第5端子および第6端子を備え、
前記第4端子と前記第5端子とは、共通化された単一の第2共通端子であることを特徴とする。
【0012】
上記フィルムコンデンサにおいて、
前記第1バスバは、複数の前記第1極出力端子を備え、
前記第2バスバは、前記第1極出力端子と同数の前記第2極出力端子を備えるよう構成できる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力変換装置は、
直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置であって、
前記直流電力を昇圧して昇圧直流電力を出力するDC/DCコンバータと、
前記昇圧直流電力を平滑して少なくとも二相用の直流電力を出力する、本発明に係るフィルムコンデンサと、
前記少なくとも二相用の直流電力に基づいて少なくとも二相の前記交流電力を生成するインバータと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低インダクタンス化を図ることが可能なフィルムコンデンサおよび当該フィルムコンデンサを備える電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る電力変換装置のブロック図である。
図2】本発明に係るフィルムコンデンサの斜視図である。
図3】本発明に係るフィルムコンデンサの分解斜視図である。
図4】(A)はNバスバの出力端子を示す図である。(B)はPバスバの出力端子を示す図である。
図5】NバスバおよびのPバスバの出力端子に形成された貫通穴間の距離を示す図である。
図6】従来のフィルムコンデンサの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルムコンデンサおよび電力変換装置の実施形態について説明する。なお、図中の矢印で示す前後方向X、左右方向Y、上下方向Zは、互いに直交する直線方向である。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る電力変換装置1を示す。電力変換装置1は、DC/DCコンバータAと、インバータB1,B2と、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサCと、制御回路Dとを備える。
【0018】
電力変換装置1は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車に搭載され、バッテリ2(本発明の「直流電源」に相当)から供給された直流電力を交流電力に変換してモータ3,4(本発明の「負荷」に相当)に供給する。
【0019】
DC/DCコンバータAは、制御回路Dの制御下で、バッテリ2から入力された直流電力を昇圧し、昇圧した直流電力をフィルムコンデンサCに出力する。DC/DCコンバータAは、例えば、絶縁トランスと、1次側のスイッチング回路と、2次側の整流平滑回路とで構成できる。
【0020】
インバータB1は、制御回路Dの制御下で、フィルムコンデンサCから入力された三相用の直流電力を三相の交流電力に変換し、当該三相の交流電力をモータ3に出力する。同様に、インバータB2は、制御回路Dの制御下で、フィルムコンデンサCから入力された三相用の直流電力を三相の交流電力に変換し、当該三相の交流電力をモータ4に出力する。インバータB1,B2は、U相の交流電力を生成するU相スイッチ回路と、V相の交流電力を生成するV相スイッチ回路と、W相の交流電力を生成するW相スイッチ回路とを備える。各スイッチ回路は、例えば、直列接続されたスイッチング素子で構成できる。
【0021】
本実施形態では、インバータB1,B2は、フィルムコンデンサCの出力端子に対応した入力端子を備える。具体的には、インバータB1,B2の各相のスイッチ回路が、N入力端子、第1のP入力端子、第2のP入力端子を備える。例えば、第1のP入力端子および第2のP入力端子はスイッチ回路の一端に接続され、N入力端子はスイッチ回路の他端に接続される。
【0022】
制御回路Dは、上記のとおり、DC/DCコンバータAおよびインバータB1,B2を制御する。制御回路Dは、アナログ制御回路、マイクロコントローラ等を含むデジタル制御回路、または両者を組み合わせた回路で構成できる。
【0023】
フィルムコンデンサCは、DC/DCコンバータAとインバータB1,B2との間に設けられ、平滑コンデンサとして機能する。図2に、フィルムコンデンサCの斜視図を示し、図3に、フィルムコンデンサCの分解斜視図を示す。
【0024】
フィルムコンデンサCは、コンデンサ素子部10と、本発明の「第1極性の第1バスバ」に相当するNバスバ20と、本発明の「第2極性の第2バスバ」に相当するPバスバ30と、ケース40と、絶縁部50と、封止樹脂60とを備える。なお、図3では、封止樹脂60を省略している。
【0025】
コンデンサ素子部10は、平滑用のコンデンサとして機能する8個のフィルムコンデンサ素子11(本発明の「フィルムコンデンサ素子」に相当)を備える。
【0026】
フィルムコンデンサ素子11は、誘電体フィルムの表面に内部電極(陰極、陽極)としての金属膜が形成された一対の金属化フィルムを重ねて巻回し、その両巻回端に外部電極としてのメタリコン部を形成したものである。一方のメタリコン部(本発明の「第1電極」に相当)は、一方の金属化フィルムの内部電極(陰極)に接続され、他方のメタリコン部(本発明の「第2電極」に相当)は、他方の金属化フィルムの内部電極(陽極)に接続される。フィルムコンデンサ素子11は、第1電極が下側、第2電極が上側になるようにケース40内に配置される。
【0027】
Nバスバ20は、金属板を加工して形成された電極端子部品であり、陰極用のバスバである。Nバスバ20は、本発明の「第1極主板」に相当するN主板21と、本発明の「第1極入力端子」に相当するN入力端子22と、本発明の「第1極出力端子」に相当するN出力端子23とを備える。
【0028】
N主板21は、ケース40内に収納され、フィルムコンデンサ素子11の下側の第1電極に接続される。N入力端子22は、N主板21の前端から引き出されてケース40の前面に露出しており、DC/DCコンバータAの陰極用の出力端子に接続される。N出力端子23は、N主板21の左端および右端からケース40外に引き出されている。N出力端子23の詳細については、後述する。
【0029】
Pバスバ30は、金属板を加工して形成された電極端子部品であり、陽極用のバスバである。Pバスバ30は、本発明の「第2極主板」に相当するP主板31と、本発明の「第2極入力端子」に相当するP入力端子32と、本発明の「第2極出力端子」に相当するP出力端子33とを備える。
【0030】
P主板31は、ケース40内に収納され、フィルムコンデンサ素子11の上側の第2電極に接続される。P入力端子32は、P主板31の前端から引き出されてN入力端子22と隣り合うようにケース40の前面に露出しており、DC/DCコンバータAの陽極用の出力端子に接続される。P出力端子33は、P主板31の左端および右端からケース40外に引き出されている。P出力端子33の詳細については、後述する。
【0031】
ケース40は、絶縁性樹脂により形成された筐体であり、底部41と、周壁部42とを備える。底部41および周壁部42は、同一の絶縁性樹脂により一体的に形成される。
【0032】
底部41は、Nバスバ20のN主板21の下方に位置するように設けられ、周壁部42は、N主板21の側方(前方、後方、左方、右方)を囲むように設けられている。すなわち、底部41および周壁部42により、Nバスバ20のN主板21、コンデンサ素子部10、Pバスバ30のP主板31を収納するための収納空間が形成される。
【0033】
絶縁部50は、Nバスバ20とPバスバ30との短絡を防止するために設けられている。絶縁部50は、第1絶縁部材51と、第2絶縁部材52と、第3絶縁部材53とを備える。第1絶縁部材51は、N主板21の前端部とP主板31の前端部との間に配置される。第2絶縁部材52は、N主板21の左端部とP主板31の左端部との間に配置される。第3絶縁部材53は、N主板21の右端部とP主板31の右端部との間に配置される。
【0034】
封止樹脂60は、ケース40内の収納空間に収納されているコンデンサ素子部10を保護するための樹脂である。封止樹脂60は、例えば、エポキシ樹脂等のポッティング樹脂を、ディスペンサーによってケース40内に所定量だけ充填し、硬化させたものである。
【0035】
図4(A)に、Nバスバ20の左側のN出力端子23を示し、図4(B)に、Pバスバ30の左側のP出力端子33を示す。なお、Nバスバ20の右側のN出力端子23は、左側のN出力端子23と同様の構成であり、Pバスバ30の右側のP出力端子33は、左側のP出力端子33と同様の構成である。
【0036】
N出力端子23は、本発明の「第1極第1相端子」に相当するU相用のN出力端子23Uと、本発明の「第1極第2相端子」に相当するV相用のN出力端子23Vと、本発明の「第1極第3相端子」に相当するW相用のN出力端子23Wとを備える。N出力端子23U,23V,23Wは、それぞれ所定の幅w1,w2,w3を有する。本実施形態では、w1=w2=w3である。
【0037】
N出力端子23U,23V,23Wには、出力部として、インバータB1の各相におけるN入力端子との締結用の貫通穴TH(本実施形態では、丸穴)が形成されている。N出力端子23Uは、インバータB1のU相スイッチ回路のN入力端子に接続される。N出力端子23Vは、インバータB1のV相スイッチ回路のN入力端子に接続される。N出力端子23Wは、インバータB1のW相スイッチ回路のN入力端子に接続される。
【0038】
P出力端子33は、本発明の「第2極第1相端子(第1端子、第2端子)」に相当するU相用のP出力端子33U,33U’と、本発明の「第2極第2相端子(第3端子、第4端子)」に相当するV相用のP出力端子33V,33V’と、本発明の「第2極第3相端子(第5端子、第6端子)」に相当するW相用のP出力端子33W,33W’とを備える。ただし、P出力端子33U’とP出力端子33Vとは、共通化された単一の第1共通端子33UVであり、P出力端子33V’とP出力端子33Wとは、共通化された単一の第2共通端子33VWである。
【0039】
P出力端子33UおよびP出力端子33W’は、それぞれ所定の幅w4,w5を有する。本実施形態では、w4=w5であり、w4(=w5)はw1(=w2=w3)よりも小さい。
【0040】
第1共通端子33UVおよび第2共通端子33VWは、それぞれ所定の幅w6,w7を有する。本実施形態では、w6=w7である。w6は、P出力端子33Uの幅w4の2倍の値よりも大きい。w7は、P出力端子33W’の幅w5の2倍の値よりも大きい。
【0041】
P出力端子33U、第1共通端子33UV、第2共通端子33VW、およびP出力端子33W’には、出力部として、インバータB1の各相におけるP入力端子との締結用の貫通穴TH(本実施形態では、丸穴)が形成されている。第1共通端子33UVおよび第2共通端子33VWには、各2つの貫通穴THが形成されている。
【0042】
P出力端子33Uは、インバータB1のU相スイッチ回路の第1のP入力端子に接続される。第1共通端子33UVは、P出力端子33U側においてインバータB1のU相スイッチ回路の第2のP入力端子に接続され、第2共通端子33VW側においてインバータB1のV相スイッチ回路の第1のP入力端子に接続される。第2共通端子33VWは、第1共通端子33UV側においてインバータB1のV相スイッチ回路の第2のP入力端子に接続され、P出力端子33W’側においてインバータB1のW相スイッチ回路の第1のP入力端子に接続される。P出力端子33W’は、インバータB1のW相スイッチ回路の第2のP入力端子に接続される。
【0043】
図5に示すように、P出力端子33Uの貫通穴THとN出力端子23Uの貫通穴THとの間の距離をd1とし、N出力端子23Uの貫通穴THと第1共通端子33UVのU相用の貫通穴THとの間の距離をd1’とすると、d1=d1’となる。第1共通端子33UVのV相用の貫通穴THとN出力端子23Vの貫通穴THとの間の距離をd2とし、N出力端子23Vの貫通穴THと第2共通端子33VWのV相用の貫通穴THとの間の距離をd2’とすると、d2=d2’となる。第2共通端子33VWのW相用の貫通穴THとN出力端子23Wの貫通穴THとの間の距離をd3とし、N出力端子23Wの貫通穴THとP出力端子33W’の貫通穴THとの間の距離をd3’とすると、d3=d3’となる。
【0044】
換言すれば、d1=d1’およびd2=d2’となるように、第1共通端子33UVにU相用およびV相用の各貫通穴THを形成している。同様に、d2=d2’およびd3=d3’となるように、第2共通端子33VWにV相用およびW相用の各貫通穴THを形成している。
【0045】
本実施形態に係るフィルムコンデンサCは、各相においてN出力端子23(23U,23V,23W)の両側にP出力端子33(33U,33U’,33V,33V’,33W,33W’)が配置されているので、各相において異極性の出力部間(貫通穴TH間)の距離を大きくすることなく、P出力端子33の端子幅を大きくすることができる。その結果、低インダクタンス化を図ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るフィルムコンデンサCは、P出力端子33U’とP出力端子33Vとが共通化された単一の第1共通端子33UVであり、P出力端子33V’とP出力端子33Wとが共通化された単一の第2共通端子33VWであるため、P出力端子33の端子幅をより大きくすることができる。その結果、さらなる低インダクタンス化を図ることができる。
【0047】
また、第1共通端子33UVとすることで、P出力端子33U’とP出力端子33Vとが必然的に同一平面上に位置するため、P出力端子33U’とP出力端子33Vとを別々に設けた場合と比較して、端子の寸法出し(例えば、端子の高さ調整等)が容易になり、組立治具の複雑化を抑制できる。第2共通端子33VWについても、同様の効果が生じる。
【0048】
[変形例]
以上、本発明に係るフィルムコンデンサおよび電力変換装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0049】
本発明に係るフィルムコンデンサは、複数のフィルムコンデンサ素子と、第1極性の第1バスバと、第2極性の第2バスバとを備える。第1バスバは、第1極主板と、第1極入力端子と、少なくとも二相用の第1極出力端子とを備え、第2バスバは、第2極主板と、第2極入力端子と、少なくとも二相用の第2極出力端子とを備える。そして、少なくとも二相の各相において、第1極出力端子の両側に第2極出力端子が配置され、かつ隣り合う異相の第2極出力端子が共通化された共通端子となるのであれば、適宜構成を変更できる。
【0050】
本発明に係るフィルムコンデンサは、封止樹脂60のない、いわゆる樹脂レスフィルムコンデンサでもよい。また、本発明に係るフィルムコンデンサは、コンデンサ素子部10、Nバスバ20のN主板21、Pバスバ30のP主板31を外装樹脂で被覆した、いわゆるケースレスフィルムコンデンサでもよい。
【0051】
上記実施形態では、U,V,Wの三相に対応しているが、本発明に係るフィルムコンデンサは、二相に対応したものでもよく、四相以上に対応したものでもよい。
【0052】
上記実施形態では、各相においてN出力端子23(23U,23V,23W)の両側にP出力端子33(33U,33U’,33V,33V’,33W,33W’)が配置されているが、各相においてP出力端子33の両側にN出力端子23を配置してもよい。その場合、Pバスバ30の代わりに、Nバスバ20が第1共通端子および第2共通端子を備える構成となる。
【0053】
本発明に係る電力変換装置は、直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置であって、直流電力を昇圧して昇圧直流電力を出力するDC/DCコンバータと、昇圧直流電力を平滑して少なくとも二相用の直流電力を出力する本発明のフィルムコンデンサと、少なくとも二相用の直流電力に基づいて少なくとも二相の交流電力を生成するインバータとを備えるのであれば、適宜構成を変更できる。
【符号の説明】
【0054】
A DC/DCコンバータ
B1,B2 インバータ
C フィルムコンデンサ
D 制御回路
1 電力変換装置
2 バッテリ
3,4 モータ
10 コンデンサ素子部
11 フィルムコンデンサ素子
20 Nバスバ
21 N主板
22 N入力端子
23 N出力端子
30 Pバスバ
31 P主板
32 P入力端子
33 P出力端子
33UV 第1共通端子
33VW 第2共通端子
40 ケース
41 底部
42 周壁部
50 絶縁部
51 第1絶縁部材
52 第2絶縁部材
53 第3絶縁部材
60 封止樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6