(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106479
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】海底構造物及び該海底構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 15/10 20060101AFI20220712BHJP
E02B 3/14 20060101ALI20220712BHJP
E02B 3/02 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
E02D15/10
E02B3/14
E02B3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001500
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】金澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大樹
【テーマコード(参考)】
2D045
2D118
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA06
2D045CA11
2D118BA03
2D118BA18
2D118HA20
2D118HA28
2D118HA33
2D118HB04
(57)【要約】
【課題】ブロックを海上から落下させた際、目標位置に容易に各ブロックが積層され、その法勾配を立てるように積み上げることができるマウンドを構築してなる海底構造物を提供する。
【解決手段】海底構造物は、海底に多数のブロック2を積層してマウンド1を構築してなり、ブロック1は、縦長の三角柱状または台形柱状に形成されている。これにより、海底の目標位置に容易にマウンド1を構築することができ、各ブロック2をマウンド1の法勾配を立てるように積み上げることが可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に多数のブロックを積層してマウンドを構築してなる海底構造物であって、
前記ブロックは、縦長の三角柱状または台形柱状に形成されることを特徴とする海底構造物。
【請求項2】
前記ブロックは、その断面形状における底辺からの高さ寸法と、軸方向に延びる長さ寸法との比が、1:1.5~3.0に設定されることを特徴とする請求項1に記載の海底構造物。
【請求項3】
前記ブロックは、フライアッシュを含むコンクリートブロックで構成され、軸方向端部にスラグを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の海底構造物。
【請求項4】
前記ブロックの側面には溝部または突起部が形成され、当該溝部または突起部は前記ブロックの軸方向と直交する方向以外に延びていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の海底構造物。
【請求項5】
前記溝部または突起部は、螺旋状に延びていることを特徴とする請求項4に記載の海底構造物。
【請求項6】
前記溝部の断面形状の大きさ、または前記突起部の断面形状の大きさは、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって次第に変化するように構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の海底構造物。
【請求項7】
海底に多数のブロックを積層してマウンドを構築してなる海底構造物の施工方法であって、
海上から海底に向かってトレミー管を配置して、前記各ブロックを前記トレミー管内に投入して、該トレミー管に沿って着底させて、海底に積層することを特徴とする海底構造物の施工方法。
【請求項8】
前記ブロックは、縦長の三角柱状または台形柱状に形成されることを特徴とする請求項7に記載の海底構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底にブロックを積層してマウンドを構築してなる海底構造物、及び該海底構造物の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水産庁等が整備を推進しているマウンド型湧昇流漁場など、海底に山型のマウンドを構築する場合は、石材やブロック等を海上から海底に向けて投入して築造している。近年では、石材を基盤材(あんこ材)とし、その上をブロックで覆う形態が採用されている。湧昇流を発生させるためには、海底面からの高さが一定以上必要となる。そのため、限られた石材やブロックにて一定高さとするためには、法勾配を立てるように積み上げる(すなわち、法勾配1:nにおいてnを出来る限り小さくする)ことが経済的である。また、特に、マウンドを水深100m以上ある海底に構築する場合は、各ブロックが海中を落下する際に海水の抵抗や海流等の影響を受けるため、各ブロックを目標位置に積層させることに高度な施工技術が必要となっている。
【0003】
そこで、従来のブロックとしては、一般的に、一辺が約2mの立方体のコンクリートブロックが用いられている。また、このコンクリートブロックの中央に鉛直方向に沿って貫通孔が設けられているものがあり、材料の軽減や、重量の軽量化が図られている。しかしながら、このコンクリートブロックは、重心が中央にあるため、海底に積み上げる際に法面を転がり落ちやすい。そのため、このコンクリートブロックによる自立勾配は、検証実験によると、1:1.3程度であり、より少ない数量のブロックで所定の高さにまで積み上げるためには法勾配を立てることが求められる。
【0004】
また、特に、コンクリートブロックの中央に貫通孔が設けられているものは、当該コンクリートブロックが海中を落下する際、この貫通孔に水が通るため、ブロック運搬船からの投入角度によっては真下に落下することなく、目標位置から離れた位置に着底し、マウンドを構築するための積み上げに寄与しない(ブロックが無駄になる)場合が生じやすい。さらに、このコンクリートブロックは立方体であるので、真下に落下すれば、各面(六面)が受ける流体(海水)からの抗力が、ほぼ同様(貫通孔のある面は抗力はやや小さい)となる。そのため、海流等の流れによってブロックが傾き、上下左右にて水圧差が生じると回転しやすくなる。さらに、ブロックが回転することで、さらに水圧差が生じ(野球の球種のひとつであるカーブのように)、海中落下時に目標位置から離れて落下することとなる。
【0005】
このような問題を解決すべく提案された従来技術として、特許文献1には、船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、互いに離間した複数の前記ブロックの間を連結部材で連結するブロック連結工程と、前記連結部材で連結された前記複数のブロックを同時に海中に投入するブロック投入工程と、を備えたブロック投入方法、また、ブロックの略中央に形設された貫通孔に案内部材を挿通する案内部材挿通工程と、前記案内部材が挿通された前記ブロックを前記案内部材に沿って海中に投入するブロック投入工程と、を備えたブロック投入方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載のブロック投入方法では、ブロック連結工程にて、互いに離間した複数のブロックの間を連結部材で連結しているだけであって、必ずしも、各ブロックが海水の抵抗や海流等の影響により目標位置に落下するとは限らず、各ブロックが一塊となって、目標位置から離れた位置に落下することもあり得る。しかも、ブロック連結工程を備えているので、その作業が煩雑になる。そのために、作業員を多く必要として、安全性が低下し、工期が長期化し、その結果、施工費が高くなる虞がある。
【0008】
また、特許文献1に記載のブロック投入方法では、案内部材挿通工程において、各ブロックの貫通孔に案内部材を挿通した後、ブロック投入工程において、案内部材を海底の目標位置まで吊り下げ、各ブロックを案内部材に沿って落下させることが提案されているが、案内部材自体が海水の抵抗や海流等の影響を受けるために、各ブロックを目標位置まで案内することは困難であり、採用することは難しい。しかも、各ブロックの貫通孔に案内部材を挿通する作業も煩雑であり、施工費が高くなる虞がある。
さらに、特許文献1に記載のブロック投入方法では、多数のブロックを積層してなるマウンドの法勾配を、いかにして立てるように積み上げるかについて、その対策が講じられていない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ブロックを海上から落下させた際、目標位置に容易に各ブロックが積層され、その法勾配を立てるように積み上げることができるマウンドを構築してなる海底構造物及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1の海底構造物に係る発明は、海底に多数のブロックを積層してマウンドを構築してなる海底構造物であって、前記ブロックは、縦長の三角柱状または台形柱状に形成されることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、ブロックを海上から海底に向かって投下した際、ブロックの側面に作用する水の力が、その底面に作用する水の力より大きくなるので、その軸方向任意位置を中心とした回転が抑制され、各ブロックをほぼ直立姿勢で落下させることができ、ひいては各ブロックを容易に目標位置に積層してマウンドを構築することができる。また、ブロックは、断面三角形状または断面台形状に形成されているので、その横断面において、その重心が一辺に近接した位置となり、また、各角部が鋭角(断面三角形状のブロックでは少なくとも2箇所の角部が鋭角、断面台形状のブロックでは2箇所の角部が鋭角)であるので、各ブロックが目標位置に積層された際、各ブロックが互いに引っ掛かるために転動せずに、その法勾配を立てるように積み上げることが可能になる。なお、ブロックの形状として特定した台形柱状は、その横断面形状において、互いに平行な一対の辺が1組だけのものであり、その横断面形状において、互い平行な一対の辺が2組ある立方体や直方体は含まない。
【0011】
請求項2の海底構造物に係る発明は、請求項1の発明において、前記ブロックは、その断面形状における底辺からの高さ寸法と、軸方向に延びる長さ寸法との比が、1:1.5~3.0に設定されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、ブロックが海底に向かって落下する際の直立姿勢を助勢することができる。
【0012】
請求項3の海底構造物に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記ブロックは、フライアッシュを含むコンクリートブロックで構成され、軸方向端部にスラグを含むことを特徴とするものである。
ところで、スラグの密度は2.6~3.5g/cm3程度であり、フライアッシュの密度は1.9~2.3g/cm3程度である。そして、請求項3の発明では、軽量のフライアッシュを用いることでブロック全体を軽量化しつつ、スラグを、ブロックの落下姿勢において軸方向下端部に含むことで、軸方向に沿う重心を軸方向下端に近づけることができる。その結果、ブロックが海底に向かって落下する際の直立姿勢をさらに助勢することができる。また、フライアッシュ及びスラグを含むブロックを採用することで、これらフライアッシュ及びスラグを有効利用することができる。しかも、各ブロックは、スラグが含まれる軸方向端部から着底することになるが、スラグの含有により軸方向端部の強度が増すことで、着底時のブロックの破損を抑制することが可能になる。
【0013】
請求項4の海底構造物に係る発明は、請求項1~3いずれかの発明において、前記ブロックの側面には溝部または突起部が形成され、当該溝部または突起部は前記ブロックの軸方向と直交する方向以外に延びていることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、ブロックが海中を落下する際、ブロックにおけるその軸心周りの回転を促進して、その直進性を高めることができる。
【0014】
請求項5の海底構造物に係る発明は、請求項4の発明において、前記溝部または突起部は、螺旋状に延びていることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、ブロックが海中を落下する際、ブロックにおけるその軸心周りの回転をさらに促進して、その直進性をさらに高めることができる。
【0015】
請求項6の海底構造物に係る発明は、請求項4または5の発明において、前記溝部の断面形状の大きさ、または前記突起部の断面形状の大きさは、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって次第に変化するように構成されていることを特徴とするものである。
請求項6の発明では、ブロックが海中を落下する際、その直進性をさらに高めることができる。例えば、ブロックの溝部の深さを、ブロックの落下姿勢において軸方向上端から軸方向下端に向かって次第に大きくなるように構成する。突起部を設ける場合も、その高さをブロックの落下姿勢において軸方向上端から軸方向下端に向かって次第に大きくなるように構成する。その結果、ブロックが海中を落下する際、その直立姿勢が維持されつつ(ブロックの軸方向任意位置を中心とした回転を抑制)、その直進性をさらに高めることができる。
【0016】
請求項7の海底構造物の施工方法に係る発明は、海底に多数のブロックを積層してマウンドを構築してなる海底構造物の施工方法であって、海上から海底に向かってトレミー管を配置して、前記各ブロックを前記トレミー管内に投入して、該トレミー管に沿って着底させて、海底に積層することを特徴とするものである。
請求項7の発明では、トレミー管を使用することで、各ブロックへの、海水の抵抗や海流等の影響を最小限に抑えることができ、各ブロックを容易に目標位置に積層してなるマウンドを構築することができる。
【0017】
請求項8の海底構造物の施工方法に係る発明は、請求項7の発明において、前記ブロックは、縦長の三角柱状または台形柱状に形成されることを特徴とするものである。
請求項8の発明では、各ブロックにより、マウンドの法勾配を立てるように積み上げることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各ブロックを海上から海底に向かって落下させた際、各ブロックへの、海水の抵抗や海流等の影響を最小限に抑えつつ、目標位置に容易に各ブロックが積層されてなるマウンドを構築でき、各ブロックを、マウンドの法勾配を立てるように積み上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る海底構造物(マウンド)を示す概略側面図である。
【
図2】
図2(a)は、本実施形態に係る海底構造物に採用されるブロックの落下姿勢における側面図であり、(b)は横断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る海底構造物に採用されるブロックの側面に螺旋状の溝部が形成される形態で、そのブロックの落下姿勢における側面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す、ブロックの側面に形成された溝部の拡大図である。
【
図5】
図5(a)は、
図2に示すブロックの側面に紐状体を巻回した斜視図であり、(b)は下面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る海底構造物(マウンド)の施工方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図6に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係る海底構造物は、
図1に示すように、多数のブロック2を海上から海底に向かって投入して、該海底に多数のブロック2が積層されてなるマウンド1に相当するものである。ブロック2は、フライアッシュにセメント及び水等を加えて固化させたコンクリートブロックである。なお、フライアッシュを用いない通常のコンクリートでもよい。
図2に示すように、ブロック2は、縦長であって、三角柱状に形成されている。本実施形態では、ブロック2は、略正三角柱状に形成されている。その結果、ブロック2の横断面において、その重心が一辺側に寄った位置となる。
図2を参照して、ブロック2は、その断面形状における底辺(最長の辺)からの高さ寸法Bと、軸方向に延びる長さ寸法Aとの比が、1:1.5~3.0に設定される。ブロック2の軸方向他端部(下端部)には、スラグが含まれている(
図2(a)のグレーの範囲)。なお、ブロック2は、縦長であって、台形柱状に形成されてもよい。この台形柱状には立方体や直方体は含まない。
【0021】
スラグを混合する範囲の高さCは、ブロック2の全体長さAに対して1/2以下とする。好ましくは、スラグを混合する範囲の高さCを、ブロック2の全体長さAに対して1/3~1/5の範囲としている。なお、スラグの密度は2.6~3.5g/cm3程度であり、フライアッシュの密度は1.9~2.3g/cm3程度である。これにより、軽量のフライアッシュを用いることでブロック2全体を軽量化しつつ、ブロック2の軸方向に沿う重心を、ブロック2の落下姿勢における軸方向下端部に近接した位置にすることができる。
【0022】
なお、
図3に示すように、ブロック2の側面に溝部4または突起部を形成してもよい。具体的には、ブロック2の側面には、溝部4が螺旋状に延びている。
図4も参照して、溝部4は、その断面形状がコ字状に形成される。なお、溝部4の断面形状をU字状に形成してもよい。本実施形態では、
図3に示すように、溝部4は、左ねじ相当の螺旋状に延びている。なお、溝部4を、右ねじ相当の螺旋状に形成してもよい。さらに、左ねじ相当の螺旋状の溝部4と右ねじ相当のの螺旋状の溝部4とを両方形成してもよい。
図3及び
図4を参照して、溝部4の断面形状における大きさ(面積)は、軸方向一端部(上端部)から軸方向他端部(下端部)に向かって次第に変化、具体的には大きくなる。具体的には、溝部4は、その幅長Wが軸方向一端部から軸方向他端部(スラグ側)に向かって略同じであり、その深さHが軸方向一端部から軸方向他端部(スラグ側)に向かって次第に大きく形成される。なお、溝部4の深さHを軸方向一端部から軸方向他端部(スラグ側)に向かって略同じにして、その幅長Wを軸方向一端部から軸方向他端部(スラグ側)に向かって次第に大きく形成してもよい。
【0023】
なお、
図3に示す実施形態では、ブロック2の側面に溝部4が形成されているが、溝部4の代わりに、断面矩形状または断面三角形状等の突起部(図示略)を形成してもよい。突起部の断面形状における大きさ(面積)も、軸方向一端部(上端部)から軸方向他端部(下端部)に向かって次第に変化される。具体的には、突起部は、その高さを軸方向一端部から軸方向他端部に向かって次第に大きくするか、あるいは、その幅を軸方向一端部から軸方向他端部に向かって次第に小さく形成したほうがよい。また、本実施形態では、溝部4または突起部は、螺旋状に延びているが、ブロック2の軸方向と直交する方向以外の、例えば縦方向(ブロック2の軸方向)に延びるように形成してもよい。
【0024】
また、
図5に示すように、ブロック2の側面に紐状体10を螺旋状に巻回して構成してもよい。該紐状体10が上述した突起部の役目を果たすことになる。例えば、紐状体10として、3本に分岐している三つまたロープ等を採用する。ゴムバンドでも良い。そして、ブロック2の下面(上面もよい)に三つまたロープの始点部分を配置して、3本に分岐した各ロープをブロック2の3つの側面に沿って螺旋状になるように配置して構成する。また、紐状体10を巻回したブロック2を複数備えて、紐状体10を含む各ブロック2を、当該紐状体10により直列に連結するように構成してもよい。
【0025】
そして、上述したブロック2を海上から海底に向かって投入した際のブロック2の落下姿勢やマウンド1の外形等を、
図1を参照しながら説明する。
ブロック2は、縦長であって、その断面形状における底辺からの高さ寸法Bと、軸方向に延びる長さ寸法Aとの比が、1:1.5~3.0に設定されるので、ブロック2を海上から海底に向かって投下した際、ブロック2の側面に作用する水の力がその底面に作用する水の力より大きくなる。その結果、ブロック2の軸方向任意位置を中心とした回転(軸方向の上下が入れ替わる回転)が抑制されて、ほぼ直立姿勢にて落下するようになる。
【0026】
また、ブロック2の軸方向他端部にはスラグが含まれているので、ブロック2の軸方向に沿う重心を軸方向他端部に近づけることができる。その結果、ブロック2は、軸方向他端部が海底を指向したほぼ直立姿勢が助勢されて落下する。さらに、ブロック2において、
図3に示す実施形態を採用すると、ブロック2の側面に溝部4(または突起部)が螺旋状に延び、該溝部4は、ブロック2の落下姿勢(軸方向他端部が海底に向かって落下する姿勢)において、その大きさが軸方向上端部から軸方向下端部に向かって次第に大きくなるように形成されている。具体的には、溝部4は、その幅長Wが軸方向一端部から軸方向他端部(スラグ側)に向かって略同じであり、その深さHが軸方向一端部から軸方向他端部(スラグ側)に向かって次第に大きく形成される。
【0027】
その結果、ブロック2は、その軸心周りの回転が促進されて、落下する際の直進性がさらに高まる(
図3の矢印参照)。このように、上述したブロック2を海上から海底に向かって投入すると、ブロック2への、海水の抵抗や海流等からの影響が最小限に抑えられ、ほぼ直立姿勢にて目標位置に向かってほぼ直進しながら落下する。これにより、海底の目標位置に容易に各ブロック2を積層でき、マウンド1を構築することができる。
【0028】
続いて、
図1を参照して、多数のブロック2が海底に積層されてマウンド1が構築される際には、各ブロック2は、その横断面において、その重心が一辺に近接した位置となり、しかも、各角部が全て鋭角であるので、各ブロック2が互いに引っ掛かるために転動せず、各ブロック2をマウンド1の法勾配を立てるように積み上げることが可能になる。
【0029】
なお、法勾配の検証実験として、形状が相違した各ブロック2を、同じ条件にて水面から水底に投入した際に、水底に構築されたマウンド1の法勾配を比較検討した。その検証結果として、各ブロック2が立方体の場合には、その法勾配が1:1.34のマウンド1が構築された。各ブロック2が直方体の場合には、その法勾配が1:1.29のマウンド1が構築された。各ブロック2が台形柱状の場合には、その法勾配が1:1.02のマウンド1が構築された。各ブロック2が三角柱状の場合には、その法勾配が1:0.97のマウンド1が構築された。この検証結果により、各ブロック2が台形柱状及び三角柱状の場合には、各ブロック2をその法勾配を立てるように積み上げることが可能であることが解る。
【0030】
次に、
図6を参照して、上述したブロック2を多数海上から海底に投入して、海底に積層してマウンド1を構築する最良の施工方法として、トレミー管7を使用する。トレミー管7の内径は、ブロック2がほぼ直立姿勢にて落下できる程度の大きさに設定される。当該トレミー管7を、海上から水面下数m~約10mまでの範囲に配置する。続いて、上述した各ブロック2を、軸方向他端部(下端部)が海底に向かう姿勢にてトレミー管7内に投入する。すると、各ブロック2は、トレミー管7に沿って、ほぼ直立姿勢にて、軸心周りに回転しながら(
図3に示す実施形態を採用した場合)、ほぼ直進して海底の目標位置に落下する。そして、多数のブロック2によりマウンド1が構築される際には、各ブロック2が互いに引っ掛かるために転動しづらく、各ブロック2をマウンド1の法勾配を立てるように積み上げることができる。
【0031】
なお、マウンド1を構築する最良の施工方法としてトレミー管7を使用する際、マウンド1の法勾配の観点から上述したブロック2を採用したほうがよいが、トレミー管7にて、ブロック2への、海水の抵抗や海流等の影響を最小限に抑えることができれば、
図2に示すブロック2の代わりに、貫通孔を有する立方体のコンクリートブロックを採用してもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る海底構造物では、該海底構造物としてのマウンド1を構築するために積層されるブロック2が、縦長の三角柱状に形成されている。その結果、上述したように、ブロック2を海上から海底に向かって投入すると、ブロック2の軸方向の上下が入れ替わる回転(ブロック2の軸方向任意位置を中心とした回転)が抑制されて、ほぼ直立姿勢にて落下するようになる。これにより、ブロック2への、海水の抵抗や海流等の影響が最小限に抑えられ、各ブロック2を目標位置に落下させることができ、ひいては、海底の目標位置に容易にマウンド1を構築することができる。また、各ブロック2は、その横断面において、その重心が一辺に近接した位置であり、また各角部が全て鋭角であるので、各ブロック2が積層時に互いに引っ掛かるために転動しづらく、各ブロック2をマウンド1の法勾配を立てるように積み上げることが可能になる。これにより、限られた数量のブロック2にて、一定高さ以上のマウンド1を構築することができ、経済的に有利である。
【0033】
また、本実施形態に係る海底構造物(マウンド1)に採用したブロック2は、その断面形状における底辺からの高さ寸法Bと、軸方向に延びる長さ寸法Aとの比が、1:1.5~3.0に設定される。これにより、ブロック2が海底に向かって落下する際の直立姿勢を助勢することができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る海底構造物(マウンド1)に採用したブロック2は、フライアッシュを含むコンクリートブロックで構成され、軸方向他端部(下端部)にスラグを含むので、ブロック2が海底に向かって落下する際の直立姿勢をさらに助勢することができる。また、フライアッシュ及びスラグを有効利用することができる。しかも、各ブロック2は、スラグが含まれる軸方向他端部(下端部)から着底することになるが、スラグの含有により軸方向他端部の強度が増すので、着底時の破損を抑制することが可能になる。
【0035】
さらにまた、本実施形態に係る海底構造物(マウンド1)に採用したブロック2では、その側面に螺旋状の溝部4が形成されている。これにより、ブロック2が海中を落下する際、ブロック2は、その軸心周りの回転が促進されて、その直進性を高めることができる。
【0036】
さらにまた、本実施形態に係る海底構造物(マウンド1)の施工方法として、トレミー管7を使用しているので、各ブロック2への、海水の抵抗や海流等の影響が最小限に抑えられ、各ブロック2を容易に目標位置に落下させて積み上げることができる。
【0037】
なお、本実施形態に係る海底構造物(マウンド1)では、
図1に示すように、マウンド1全体を上述したブロック2を多数積層して構築しているが、石材を基盤材として多数積層し、それを覆うように上述したブロック2を多数積層してマウンド1を構築してもよい。また、上述したブロック2を基盤材として多数積層し、それを覆うようにして、貫通孔を有する立方体のコンクリートブロックを多数積層してマウンド1を構築してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 マウンド(海底構造物),2 ブロック,4 溝部,7 トレミー管