(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106523
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】配管用ライニング材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/34 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
B29C63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001577
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤圭一
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA39
4F211AB03
4F211AB16
4F211AD16
4F211AG08
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
(57)【要約】
【課題】 施工時に発泡せず、施工後は前記配管が破損した場合にもライニング材そのものは破損しにくいライニング材を提供する。
【解決手段】
水圧を用いて配管の内面をライニングする工法に用いる配管内面用ライニング材であって、該ライニング材が少なくとも(A)ウレタン変性エポキシ樹脂又は/及びゴム変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、(B)ポリアミンを含有する硬化剤、(C)繊維長5μm~6000μmの無機質繊維、からなる。特に地中に埋設されている既設配管にあっては、鋼管内面が錆びるなどして脆化しており、前記ライニングを施すことによって配管の寿命を延命することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧を用いて配管の内面をライニングする工法に用いる配管内面用ライニング材であって、該ライニング材が少なくとも(A)ウレタン変性エポキシ樹脂又は/及びゴム変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、(B)ポリアミンを含有する硬化剤、(C)繊維長5μm~6000μmの無機質繊維、からなることを特徴とする配管内面用ライニング材。
【請求項2】
前記主剤が1~2官能の反応性エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の配管内面用ライニング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス管、水道管等の内面に水圧を用いてライニングを行う工法に使用するライニング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地面に埋設されているガス配管、水道配管等の既設配管に対し、配管の内部を更生する目的から管内に樹脂を注入してライニングを行う工法がある(例えば、特許文献1参照。)。これらのうち、地面を掘削する必要がないことから、水圧でガス供内管にエポキシ樹脂を送り込み、その後吸引して内面にライニング膜を形成し、更生修理を行う工法が多く用いられており、a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂、b)高級アルコール系希釈剤、c)有機ベントナイト及び微粉末シリカからなる揺変剤、d)a)を硬化させるのに十分な量の硬化剤からなる低粘度、高チクソトロピーのライニング材が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。このほか、エポキシ樹脂に替えて2液のウレタン樹脂を用いて同様のライニングを行う工法もある。
【0003】
しかし、ライニング材としてエポキシ樹脂を用いた場合には、地震等の災害により配管が破壊されると、該エポキシ樹脂の塑性変形が十分でないために、配管とともに破壊されてしまいガス漏れや水漏れ等が生じるおそれがある。また、ライニング材としてウレタン樹脂を用いた場合には、施工に際してウレタン硬化剤であるイソシアネートが圧力媒体である水と反応して炭酸ガスを発生し、ライニング材が発泡してしまうおそれがある。
【0004】
これらの課題を解決するために本願の発明者らはウレタン変性エポキシ樹脂を含有するライニング材を発明した(特許文献3)。本願発明ではライニング材の破損をさらに抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-228435号公報
【特許文献2】特開平8-59962号公報
【特許文献3】特開2020-200409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、水圧を用いて既設配管の内部をライニングする工法において、施工時に発泡せず、施工後は前記配管が破損した場合にもライニング材そのものは破損しにくいライニング材を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水圧を用いて配管の内面をライニングする工法に用いる配管内面用ライニング材であって、該ライニング材が少なくとも(A)ウレタン変性エポキシ樹脂又は/及びゴム変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、(B)ポリアミンを含有する硬化剤、(C)繊維長5μm~6000μmの無機質繊維、からなることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配管内面用ライニング材は、主剤と硬化剤とを混合した直後の硬化前の状態で水と反応せず、硬化後の塗膜は柔軟性に優れるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の配管内面用ライニング材は、水圧を用いて配管の内面をライニングする工法に用いる配管内面用ライニング材であって、該ライニング材が少なくとも(A)ウレタン変性エポキシ樹脂又は/及びゴム変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、(B)ポリアミンを含有する硬化剤、(C)繊維長5μm~6000μmの無機質繊維、からなる。
【0010】
前記配管内面用ライニングとは、耐食、耐摩耗等の目的で水道配管、ガス配管等の配管の内面を被覆することをいい、ライニング材とはこのために用いる被覆材をいう。特に地中に埋設されている既設配管にあっては、鋼管内面が錆びるなどして脆化しており、前記ライニングを施すことによって配管の寿命を延命することができる。
【0011】
前記配管はガス配管、水道配管に限定されず流体を搬送する配管であれば任意に用いることができる。配管の材質も鋼製、プラスチック製等、限定せずに用いることができるが、特に鋼管に好適に用いられる。
【0012】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂は1分子中にウレタン結合とエポキシ基とを有するものを用いることが好ましい。前記ウレタン変性エポキシ樹脂は例えば、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる、イソシアネート基を有するウレタン結合含有化合物と、水酸基含有エポキシ化合物とを反応させて得ることができる。
【0013】
前記ポリヒドロキシ化合物は例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシカルボン酸とアルキレンオキシドの付加物、ポリブタジエンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。これらのうち、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。ポリヒドロキシ化合物としてポリエーテルポリオールを用いた場合には、鋼管との密着性及び、硬化体の柔軟性に優れる。
【0014】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2以上を混合して用いても良い。これらうち、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのいずれかを用いることがより好ましい。芳香族ポリイソシアネートを用いることにより得られる硬化体の強靭性に優れる。
【0015】
前記ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、例えば、60~120℃で1~15時間撹拌することにより製造することができる。
【0016】
前記ゴム変性エポキシ樹脂は1分子中にブタジエンゴム、ニトリルゴム等のゴム成分とエポキシ基とを含有するものを用いることが好ましい。
【0017】
前記ゴム成分は例えば、カルボキシル基含有液状ブタジエン・ニトリルゴムもしくは、アミン基含有液状フタジエン・ニトリルゴムの単独あるいは混合物をエポキシ樹脂と反応させて得ることができる。
【0018】
前記ポリアミンとしては例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン、m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0019】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂又は/及びゴム変性エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するポリアミンの使用量は、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対してポリアミンの活性水素当量が好ましくは0.7~1.2、より好ましくは0.8~1.1、最も好ましくは0.9~1.0である。
【0020】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂は市販のものを用いることができる。例えば、jER(三菱ケミカル株式会社)、EPICLION(DIC株式会社)、スミエポキシ(住友化学株式会社)、アデカレジン(株式会社ADEKA)等が挙げられる。
【0021】
前記ポリアミンは市販のものを用いることができる。例えば、エピキュア(三菱ケミカル株式会社)、アデカハードナー(株式会社ADEKA)、ラッカマイド(DIC株式会社)等が挙げられる。
【0022】
前記ライニング材の組成は例えば、以下のようなものである。
【0023】
ライニング材主剤の組成例:ウレタン変性エポキシ樹脂100質量部、1官能の反応性エポキシ樹脂としてのドデシルグリシジルエーテル20質量部、無機質繊維としての繊維長3000μmのガラス繊維2質量部、着色顔料としての酸化チタン10質量部。
【0024】
ライニング材硬化剤の組成例:ポリアミンとしてのジアミノジフェニルメタン50質量部。
【0025】
前記主剤及び硬化剤は揮発性化合物を含有しないことが好ましい。揮発性化合物を含有しないことにより、ライニング材の乾燥が不要になるため施工性に優れる。
【0026】
前記主剤には1~2官能の反応性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。1~2官能の反応性エポキシ樹脂とは分子構造中に1又は2のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である。1~2官能の反応性エポキシ樹脂を含有することによりライニング材の柔軟性に優れる。1官能の反応性エポキシ樹脂には例えば、ブチルグリシジルエーテル(炭化水素部分の炭素数4)、ヘキシルグリシジルエーテル(同炭素数6)、デシルグリシジルエーテル(同炭素数10)等の直鎖炭化水素形グリシジルエーテル、2-エチルヘキシル-グリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニル-グリシジルエーテル等が挙げられる。2官能の反応性エポキシ樹脂には例えば、ブチルジグリシジルエーテル(炭化水素部分の炭素数4)、ヘキシルジグリシジルエーテル(同炭素数6)、デシルジグリシジルエーテル(同炭素数10)等の直鎖炭化水素形ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ジグリシジルエーテル、エチレングリコール-ポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのうち、炭化水素部分の炭素数10~15の直鎖炭化水素形グリシジルエーテル及び/又は直鎖炭化水素形ジグリシジルエーテルを用いることが好ましく、炭素数11~14の直鎖炭化水素形グリシジルエーテルを用いることがより好ましい。市販品としてはアデカグリシロール(株式会社ADEKA)、エピオール(日油株式会社)等が挙げられる。
【0027】
前記主剤及び/又は硬化剤には主剤及び/又は硬化剤と反応しない非反応性樹脂を混合しても良い。非反応性樹脂としては例えばキシレン樹脂等が挙げられる。このように構成した場合、硬化体の柔軟性を最適に制御することができる。
【0028】
前記無機質繊維には例えばガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。前記無機質繊維を含有させることにより、ライニング材の強靭性に優れる。
【0029】
前記無機質繊維の繊維長は好ましくは5μm~6000μmであり、より好ましくは10μm~4000μmであり、最も好ましくは15μm~3000μmである。
【0030】
前記無機質繊維は主剤又は硬化剤のどちらか一方に含有させても良いし、両方に含有させても良い。
【0031】
前記主剤及び/又は硬化剤には粘性調整剤、増粘剤、消泡剤等の添加剤、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ等の体質顔料、カーボンブラック、フタロシアニン銅、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム等の着色顔料等、通常のライニング材に使用されるものを混合することができる。
【0032】
以上のように構成されたライニング材は例えば以下のように施工される。
【0033】
はじめに、本発明のライニング材の主剤と硬化剤とを所定の割合で混合し、配管としての地下に埋設されたガス配管に注入する。続いて、ホースを介して水圧ポンプを前記配管に接続し、前記水圧ポンプからの水圧により注入したライニング材を押圧移動させる。該ライニング材が所望の位置に到達した段階で水圧ポンプからの水の供給を停止する。その後、水圧を保ったまま、配管の地上露出部から水圧ポンプの接続を取り外し、ホースを介して配管に吸引装置を接続する。該吸引装置により配管内部を減圧し、吸引力により水及びライニング材を回収する。該ライニング材はその粘性により配管内面を被覆し、所定の時間が経過すると硬化体となる。同様の方法としては例えば、NEXTライニング工法(東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社)が挙げられる。
【0034】
以上のようにしてライニング施工された配管は耐食性に優れるとともに地震等により配管が破壊された場合でも、ライニング材そのものは柔軟性があり破壊されにくいため、ガス漏れや水漏れを生じにくくすることができる。
【0035】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の効果を説明する。
【0036】
試験は、水圧により内径30mm、長さ60cmの鋼管の内面を実施例及び比較例のライニング材で被覆し、室温で2週間放置して硬化させて試験体とした。なお、鋼管は保形性を確認するために一部に直径20mmの孔が設けてあり、ライニング材の被覆時は粘着テープで蓋をして被覆し、ライニング材の硬化後にテープを外した。
【0037】
(1)水と接触したときの発泡試験として、外観の変化がないものを〇、発泡はしていないものの何らかの不具合が生じたものを△、発泡したものを×とした。(2)保形性試験として、試験体の鋼管に設けた孔から30kPaの水圧をかけ、100時間経過後にラインニング材の変形を確認した。評価は配管内断面積の90%以上が開通しているものを◎、60%超90%未満が開通しているものを〇、60%超90%未満が閉塞されたものを△、90%以上が閉塞されてしまったものを×とした。(3)曲げ試験として、試験体を水平状態より30mmまで折り曲げて内面のライニング材硬化体の破断状況を確認した。評価は破断が見られないものを◎、鋼管内周の30%未満が破断しているものを〇、配管内周の30%超が破断したものを△、完全に破断してしまったものを×とした。
実施例及び比較例のライニング材の組成及び試験の結果を表1に示す。
【0038】