(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106538
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】移動経路候補の案内方法及び装置、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220712BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20220712BHJP
G08G 1/123 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/005
G08G1/123
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001616
(22)【出願日】2021-01-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://www.odakyu.jp/news/o5oaa1000001uhe5-att/o5oaa1000001uhec.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】594002439
【氏名又は名称】小田急電鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596130185
【氏名又は名称】株式会社 ヴァル研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】須田 崇彦
(72)【発明者】
【氏名】藤垣 洋平
(72)【発明者】
【氏名】篠原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】熊野 壮真
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129AA04
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5H181AA14
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5H181FF13
5H181FF23
5H181FF33
5H181MA44
(57)【要約】
【課題】マルチモーダル経路の経路候補をユーザ端末に案内する際に、ユーザの意に反した移動手段の利用ノードが含まれる経路候補の表示を抑制する。
【解決手段】情報提供装置10は、経路案内サーバ42と連携して、運行がスケジューリングされた第1移動手段としての公共交通移動体の利用ノードを含む第1経路候補を案内する。その際、運行がスケジューリングされていない第2の移動手段としての非交通移動体を選択肢としてユーザ端末30に案内する。情報提供装置10は、非交通移動体の利用ノードを含む第2経路候補については、ユーザ操作によりその利用が指定した場合に案内する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を有するユーザ端末又は前記ユーザ端末に通信接続された装置が実行する、前記ユーザ端末を所持するユーザが出発地から目的地まで移動する際に、運行がスケジューリングされた第1移動手段のほかに運行がスケジューリングされていない第2移動手段を利用可能な地域における移動経路候補の案内方法であって、
前記第1移動手段の利用ノードを含み且つ前記第2移動手段の利用ノードを含まない第1経路候補と前記第2移動手段の利用ノードを含む第2経路候補とを探索し、
前記第1経路候補を前記表示画面に表示した後、ユーザ操作を待って前記第2経路候補を前記表示画面に表示させることを特徴とする、
移動経路候補の案内方法。
【請求項2】
通信接続されたユーザ端末に、前記ユーザ端末を所持するユーザが出発地から目的地まで移動する際に運行がスケジューリングされた第1移動手段のほかに運行がスケジューリングされていない第2移動手段を利用可能な地域における移動経路候補を案内する装置であって、
前記第1移動手段を利用ノードに含み且つ前記第2移動手段を利用ノードに含まない第1経路候補と前記第2移動手段の利用ノードを含む第2経路候補とを探索する経路探索手段と、
前記第1経路候補を前記ユーザ端末の表示画面に表示させた後、ユーザ操作を待って前記第2経路候補を前記表示画面に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする、
移動経路候補の案内装置。
【請求項3】
表示画面を有するユーザ端末又は前記ユーザ端末と通信接続された情報提供装置を、
前記ユーザ端末を所持するユーザが出発地から目的地まで移動する際に運行がスケジューリングされた第1移動手段のほかに運行がスケジューリングされない第2移動手段を利用可能な地域における移動経路候補の案内装置として動作させるためのコンピュータプログラムであって、
前記案内装置を、
前記第1移動手段を利用ノードに含み且つ前記第2移動手段を利用ノードに含まない第1経路候補と前記第2移動手段の利用ノードを含む第2経路候補とを探索する経路探索手段、
前記第1経路候補を前記表示画面に表示させた後、ユーザ操作を待って前記第2経路候補を前記表示画面に表示させる制御手段、
として機能させることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項4】
前記経路探索手段は、前記出発地からの出発日時又は前記目的地への到着日時が指定されている場合、前記第1経路候補の探索後、前記出発日時以降又は前記到着日時以前に利用可能な前記第2移動手段の利用ノードを探索し、
前記制御手段は、前記第1経路候補を前記表示画面に表示させる際に、利用可能な前記第2移動手段の情報を前記表示画面に併せて表示させることを特徴とする、
請求項3に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記経路探索手段は、前記第1経路候補の探索後、ユーザ操作を待って前記第2経路候補を探索することを特徴とする、
請求項3に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記制御手段は、探索された前記第1経路候補を前記表示画面に表示させた後、前記第2経路候補を前記第1経路候補に付加する態様で表示することを特徴とする、
請求項3から5のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記第1経路候補に複数種類の前記第1移動手段が存在する場合、いずれかの種類の前記第1移動手段を除外するための情報を前記表示画面に表示させることを特徴とする、
請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記出発地と前記目的地とを含む地域の地図画像を取得する地図画像取得手段をさらに備えており、
前記制御手段は、前記地図画像を前記表示画面に表示させるとともに、ユーザにより選択されたいずれかの前記第1経路候補を前記地図画像において強調表示することを特徴とする、
請求項3から7のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1経路候補の詳細経路の情報を前記地図画像と同じ表示画面に表示することを特徴とする、
請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第1経路候補の詳細経路に含まれるいずれかの第1移動手段における遅延情報を取得した場合、前記詳細経路に遅延前後の日時情報を併記する、
請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが出発地から目的地へ移動する際に、運行がスケジューリングされた移動手段のほかに運行がスケジューリングされない移動手段の利用が可能な地域において有用となる移動経路候補の案内方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通機関のほかにタクシーやレンタカー等の複数の移動手段が混在するマルチモーダル経路の探索技術の例として、特許文献1に開示された情報提供方法がある。この情報提供方法では、例えばタクシーを利用する特定の経路候補におけるタクシーの利用距離が第1の閾値(例えば15km)以上である場合、運賃が現実的でないことから経路探索結果の表示対象から除外される。また、徒歩の利用距離が第2の閾値(例えば1.2km)以上である場合は、体力の消耗や所要時間等との兼ね合いより経路探索結果から除外される。
【0003】
また、公共交通機関を利用する特定の経路候補において、乗り換えの間隔が第3の閾値以上長い場合は、ユーザの利便性が著しく低下することから経路探索結果から除外される。このように、特許文献1に開示された情報提供方法では、例えば所要時間の短い順等の共通条件に従う前提の下で、タクシー等の特定の対象移動手段を利用する経路候補については、固有条件に沿って表示対象から除外され、あるいは低い優先順位で表示される。
【0004】
また、特許文献2には、レンタカー、カーシェアリング、サイクルシェアリング、ライドシェアリング、及びタクシーのような共用型の移動手段のうち、出発地又は出発地周辺からの利用、及び、目的地又は目的地周辺に到達するための利用の少なくとも一方に限定されるようにマルチモーダル経路探索を行う経路探索方法が開示されている。この経路探索方法では、レンタカー、カーシェアリング、サイクルシェアリングについては、対応する乗り物へのアクセスポイントからの利用とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-71108号公報
【特許文献2】特開2020-71107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された情報提供方法及び特許文献2に開示された経路探索方法では、ユーザが、経路候補に含める移動手段を事前に選択できるものの、選択された移動手段によってはノード間の移動所要時間に曖昧性があるにも関わらず、これらをすべて含めた経路探索を行う。そのため、例えば東京近郊、大阪近郊、名古屋近郊のように、移動手段の利用の選択肢が多い大都市圏内では探索するノード(経路の接続点)数が多くなり、経路探索候補が特定されるまでの時間が飛躍的に増加する。また、このような経路探索の手法では、経路検索候補が多岐に亘り、表示画面の小さい携帯端末などではユーザが希望する経路候補が含まれる表示画面まで到達するのに時間がかかる。そもそもユーザが希望する経路候補が得られていない場合もある。
【0007】
そのため、従来のマルチモーダル経路の探索技術は、例えば移動中のユーザが立ち止まって次の目的地に向かうための経路探索を瞬時に判断したい用途のように、ユーザの移動手段の利用意図に即した探索には必ずしも適しているとはいえないものであった。
【0008】
本発明は、ユーザの意に反した不要な移動手段を含む移動経路候補が案内されることがなく、経路探索にかかる手間や時間をユーザ自身の判断に委ねることができる移動経路候補の案内技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、表示画面を有するユーザ端末又は前記ユーザ端末に接続された装置が実行する、前記ユーザ端末を所持するユーザが出発地から目的地まで移動する際に、運行がスケジューリングされた第1移動手段のほかに運行がスケジューリングされていない第2移動手段を利用可能な地域における移動経路候補の案内方法であって、前記第1移動手段の利用ノードを含み且つ前記第2移動手段の利用ノードを含まない第1経路候補と前記第2移動手段の利用ノードを含む第2経路候補とを探索し、前記第1経路候補を前記表示画面に表示した後、ユーザ操作を待って前記第2経路候補を前記表示画面に表示させることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、表示画面を有するユーザ端末に、前記ユーザ端末を所持するユーザが出発地から目的地まで移動する際に運行がスケジューリングされた第1移動手段のほかに運行がスケジューリングされていない第2移動手段を利用可能な地域における移動経路候補を案内する装置であって、前記第1移動手段を利用ノードに含み且つ前記第2移動手段を利用ノードに含まない第1経路候補と前記第2移動手段の利用ノードを含む第2経路候補とを探索する経路探索手段と、前記第1経路候補を前記ユーザ端末の表示画面に表示させた後、ユーザ操作を待って前記第2経路候補を前記表示画面に表示させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、表示画面を有するユーザ端末又は前記ユーザ端末と接続された装置を、前記ユーザ端末を所持するユーザが出発地から目的地まで移動する際に運行がスケジューリングされた第1移動手段のほかに運行がスケジューリングされない第2移動手段を利用可能な地域における移動経路候補の案内装置として動作させるためのコンピュータプログラムであって、前記案内装置を、前記第1移動手段を利用ノードに含み且つ前記第2移動手段を利用ノードに含まない第1経路候補と前記第2移動手段の利用ノードを含む第2経路候補とを探索する経路探索手段、前記第1経路候補を前記表示画面に表示させた後、ユーザ操作を待って前記第2経路候補を前記表示画面に表示させる制御手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1経路候補をユーザ端末の表示画面に表示させ、第2経路候補については、ユーザ操作を待って表示画面に表示されるので、ユーザの意に反した不要な移動手段を利用する経路候補が案内されることがなく、経路探索に要する手間や時間をかけるかどうかをユーザ自身の判断に委ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のネットワークシステムの全体構成図。
【
図2】本実施形態の情報提供装置のハードウェア構成図。
【
図6】経路案内時における検索条件の設定処理の手順説明図。
【
図10】ユーザ端末の表示画面に表示される内容の例示図。
【
図11】経路案内処理を行う際の表示画面の例示図。
【
図13】第1経路探索による探索結果一覧画面の例示図。
【
図15】第2経路探索による探索結果一覧画面の例示図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態例を説明する。
図1は、本実施形態の情報提供装置10を含むネットワークシステムの全体構成図である。情報提供装置10は、公衆通信回線を使用したネットワークNW、例えばインターネットなどに接続される。情報提供装置10は、ユーザDB(DBはデータベースの略、以下同じ)11及び施設DB12を備えている。
【0015】
ネットワークNWには、基地局20が多数接続されている。各基地局20は、それぞれユーザ端末30であるスマートフォン、タブレット端末などの携帯端末とネットワークNWに接続されているウェブサイトとの中継を行う。
【0016】
各ユーザ端末30は、タッチパネル付のディスプレイ、全球測位衛星システムGNSS(Global Navigation Satellite System )のアンテナ及び受信機、カメラ、二次元バーコードリーダ、ストレージ、画像処理機能及び情報処理機能を備えており、情報提供装置10を通じて提示される各種情報を表示したり、ユーザの意図を表す情報や情報提供装置10の要求内容を表す所要の情報等を入力するためのインタフェース画面をディスプレイに表示する「モビリティ支援AP」がインストールされている。モビリティ支援APは、ユーザの目的地へ「行きたい」という感情、すなわちモビリティ(mobility)に対する行動支援を行うためのアプリケーションプログラムである。
【0017】
ユーザ端末30においてモビリティAPの起動・実行が行われると、ユーザ端末30が、基地局20を通じてネットワークNW上のウェブサイトの一つである情報提供装置10に自動接続される。なお、ユーザ端末30は、有線通信によってダイレクトにネットワークNWに接続することもできる。
【0018】
ネットワークNWには、情報提供装置10とAPI(Application Programming Interface)連携により連携する複数のウエブサイト、すなわち、所定サービスの提供事業者サーバが接続されている。情報提供装置10は、ユーザ端末30と協働し、ユーザDB11に登録され、あるいは蓄積されているユーザ固有の情報と各提供事業者サーバのAPIとを利用して、モビリティAPによる当該提供事業者サーバのサービス利用を可能にする。
【0019】
API連携するウェブサイトとして、本実施形態では、ソーシャルネットワーク(SNS)管理サーバ41、経路案内サーバ42、地図サーバ43、デマンド交通サーバ51、タクシーサーバ52、シェアリングサーバ53、宿泊等予約サーバ61、飲食等予約サーバ62、イベント等予約サーバ63、チケット等管理サーバ71、銀行サーバ72、クレジットサーバ73が、ネットワークNWを介して情報提供装置10に接続されているものとする。
【0020】
SNS管理サーバ41は、予め登録されているユーザのアドレスに関連付けられたSNSデータを、ユーザ毎に出力するためのAPIを提供する。経路案内サーバ42は、マルチモーダル経路の探索が可能な探索エンジンを備えており、アクセス元に対して経路案内APIを提供する。経路案内APIは、例えば運行予定日時情報(月日時分)等の運行がスケジューリングされている第1移動手段、例えば公共交通機関(鉄道、地下鉄、モノレール、バス、路面電車、航空機、フェリー等:以下「公共交通移動体」と呼ぶ場合がある)のほか、運行がスケジューリングされていない第2移動手段、例えばタクシー、カーシェアリング、バイクシェアリング、サイクルシェアリング、AI運行バス(オンデマンド型の相乗型バス)など(以下、「非公共交通移動体」と呼ぶ場合がある)を利用ノード(経路の接続点となる利用開始場所又は利用終了場所)に含めた経路候補の探索を実行する。経路案内APIは、また、定期券やフリーパス等を複合的に含めた経路候補の探索を実行することもできる。この場合の利用ノードは、主として利用料金に影響を与えることになる。
【0021】
ただし、非公共交通移動体のうち、タクシーについては所定距離範囲(例えば乗車位置又は降車位置から1マイル未満:事後変更可能)、カーシェアリング、バイクシェアリング、サイクルシェアリング、AI運行バスについては、直前のノードから利用開始場所までの距離及び利用終了場所から直後のノードまでの距離が徒歩圏内(例えば1.0km:事後変更可能)に限り利用ノードに含まれるように設定されていてもよい。
出発地と目的地は、公共交通移動体の駅や停留所だけではなく、駅や停留所の周辺に存在する施設あるいは当該駅や停留所を利用できる地域の名称又は略称とすることができる。
【0022】
地図サーバ43は、特定地域又はユーザがユーザ端末30を通じて指定した地域の地図データを提供する。地図データはユーザによる指定が無い場合は2次元の地理情報、線図及び文字、記号であるが、ユーザにより指定された場合は3次元で提供することができる。その際、様々なハードウェア及びアプリケーションプログラムの動作環境においても表現できるように、ベクター図で地図情報を提供する。ベクター図で地図情報を提供することにより、イメージ図で提供する場合に比べて、地図を表示する側(ユーザ端末30側)で、拡大/縮小時の地図を見やすく表現することができる。
【0023】
デマンド交通サーバ51は、ユーザの事前予約等に応じる形で運行経路や運航スケジュールに合わせて運行する輸送手段の提供サービスのAPIを提供する。例えば上記のAI運行バスがそのような輸送手段の一例である。タクシーサーバ52は、ユーザ端末30の位置又はユーザが指定した場所への配車可能なタクシーを手配するサービスのAPIを提供する。シェアリングサーバ53は、カーシェアリング、サイクルシェアリング、バイクシェアリングのサービスのAPIを提供する。これらのサービスのAPIは、それぞれの移動体の利用可否、利用可能時間などを事前に調べる検索画面や、利用予約を可能にするための手続画面などを提供する。
【0024】
宿泊等予約サーバ61は、宿泊予約又は休憩場所予約のためのAPIを提供する。飲食等予約サーバ62は、飲食予約のためのAPIを提供する。イベント等予約サーバ63は、地域又は施設で開催される各種イベントの案内と予約のためのAPIを提供する。
【0025】
チケット等管理サーバ71は、サービス提供の対価に対応するチケット、サービスの予約済であることを表す証明書、サービスに付随する各種特典、例えば利用料金からの割引額を表すクーポン、現金と等価の財的価値を表すキャッシュバック又は還元ポイント、利用者限定の招待券、所定の交通機関及び施設の利用を可能にするチケット等をその発行者、及び/又は発行先(ユーザ)毎に管理するためのAPIを提供する。
銀行サーバ72及びクレジットカードサーバ73は、サービス提供の対価を決済するためのAPIを提供する。
【0026】
これらのサーバ41~43,51~53、61~63、71~73には、当該APの実行条件として、ユーザ端末30を操作するユーザの権限情報、アカウント情報その他のユーザ固有の設定情報が設定されており、サービス提供側は、APIの連携前にユーザの承諾を要求し、ユーザ側(ユーザ端末30のモビリティAP)もサービスを使う際に、ユーザ情報が共有されることを許可する必要がある。どの情報が共有されるかなどは、サービスにより異なる。
【0027】
ユーザDB11には、情報提供装置10へのアクセスの権限情報のほか、上記のユーザ固有の設定情報、そのユーザの行動履歴(ユーザ端末30の位置情報及び日時情報の履歴)、そのユーザが興味のある分野に関する分野情報、そのユーザが過去に利用した施設の情報、そのユーザの今後の移動ないし行動の予定日時、今後の移動に際して利用予約済の移動手段、利用予約済であるが未利用の施設名、購入あるいは予約したチケットあるいは旅券(定期券、フリーパス(周遊券など)を含む)の情報、獲得したクーポンその他の特典に関する情報、参加を予約したイベントの日時及び場所などのスケジュールデータ、施設利用や移動手段利用の決済に用いる金融機関又はクレジットカードの情報、後述する複数のウェブサイトへのアクセス履歴などが、ユーザの識別情報と関連付けてユーザ毎に蓄積されている。
【0028】
ユーザDB11には、また、ユーザが、情報提供装置10を介して各サーバ41~43,51~53、61~63、その他のWebサイトにアクセスした際に、ユーザがユーザ端末30を通じて自ら入力した文字列(記号を含む)を蓄積したログファイルも関連付けられている。文字列は、後述する解析部105により、例えば、箱根等の地名、○○ホテル等の施設名、ロマンスカー等の列車名、小田急線等の路線名、・・・等に分類して蓄積され、重複するものについては入力回数が付加されている。文字列は、また、アルファベット順(ローマ字入力の場合)、日本語の並び順(日本語入力の場合)あるいは入力回数順にソートされる。
【0029】
施設DB12には、所定サービスを提供する施設の種別情報及び識別情報が当該施設を運営する事業者毎に格納されている。施設は、商品を扱う施設、役務を提供する施設、商品と役務の一方を「主」、他方を「従」として提供する施設、所定のイベントが開催される施設等であり、ユーザが行きたい目的地の一種である。施設の識別情報には、後述するAPI連携するウェブサーバ(提供事業者サーバ)のアドレス、及び、各施設において利用可能なチケット及び特典の情報を当該施設の識別情報と関連付けて蓄積されている。
【0030】
[情報提供装置の構成]
情報提供装置10の構成について説明する。
図2は、情報提供装置10のハードウエア構成図である。情報提供装置10は、制御バスB1を介して接続されたCPU110、RAM111、ROM112、GPU113を主要部品として含む制御コンピュータを備えている。CPU(Central Processing Unit)110は、本発明のコンピュータプログラムを実行することにより、ユーザ端末30に対して、様々な情報を提供する装置、例えば後述する移動経路候補の案内装置として動作する上で必要な機能を構築する。RAM(Random Access Memory)111は、CPU110の主メモリ、ワークエリア等の一時記憶領域として用いられる書換可能なメモリである。ROM(Read Only Memory)112は、各種デバイスドライバ及びパラメータデータなどが格納されている読出専用メモリである。GPU(Graphics Processing Unit)113は、地図や画像の処理など、負荷の高い画像系処理についてCPU110を補助するための処理手段である。
【0031】
制御バスB1には、メモリI/F(I/Fはインタフェースの略、以下同じ)114、入出力I/F116、通信I/F118も接続されている。メモリI/F114はユーザDB11及びハードディスクなどの外部記憶装置STへの各種情報の格納と格納された各種情報の読み出しを行うためのインタフェースである。外部記憶装置STには、本発明のコンピュータプログラムなどが格納されている。入出力I/F116は、ディスプレイDPへの情報表示並びにタッチパネル及びキーボードKBなどの入力デバイスからのデータ入力を行うためのインタフェースである。通信I/F118は、ネットワークNWとの通信を可能にするインタフェースである。
【0032】
次に、本発明のコンピュータプログラムにより情報提供装置10において実現される各種機能ブロックについて説明する。
図3は、情報提供装置10の機能構成図である。コンピュータプログラムは、情報提供装置10を、API連携部101、ユーザ管理部102、認証部103、情報取得部104、解析部105、編集部106及び主制御部107として機能させる。
【0033】
API連携部101は、API連携を実行する。例えば、上述したサービス提供事業者サーバのAPIのうち、該当するAPIを呼び出して当該サービスの利用に関する情報を取得し、当該サービス提供事業者サーバによるサービスの利用を可能にする。
【0034】
ユーザ管理部102は、ユーザ端末30を操作するユーザの個人情報及び各種権限情報の登録を行うとともに、情報提供装置10をアクセスしたユーザ端末30から得られるユーザ関連情報をユーザ毎に、ユーザDB11に蓄積する。ユーザ関連情報は、ユーザ端末30の位置及び日時の履歴、ユーザ端末30による提供事業者サーバの検索履歴、利用履歴、チケット又はクーポンを含む特典の獲得及び使用履歴などである。
【0035】
認証部103は、上記モビリティAPに対するユーザ操作を通じてアクセスしてきたユーザ端末30を所持するユーザが、ユーザDB11に登録されたユーザで、かつ、そのユーザ端末30が権限情報の登録がなされたものであるかどうかを認証する。認証部102は、後述するユーザ登録処理後、最初の登録があったときに上記権限情報の入力を求め、入力された権限情報と登録された権限情報との一致性がとれた場合、つまり認証に成功した場合、入力された権限情報をユーザテーブルに更新自在に記録しておき、以後、ユーザからの変更がなされない限り、モビリティAPと情報提供装置10との間に通信路が確立された時点で認証成功とすることができる。認証に成功しなかった場合は、その旨をモビリティAPに通知して再度のアクセスを促す。認証に成功した場合は、モビリティAPを用いたサービスの提供が可能となる。
【0036】
情報取得部104は、ある態様では、ユーザ端末30から、ユーザ情報、GNSSの位置情報及び日時情報を自動的に取得するユーザ端末情報取得手段として動作する。また、ある態様では、ユーザ端末30のソフトウエアキーボード等の入力手段を通じて入力された情報を取得する入力情報取得手段として動作する。また、ある態様では、いずれかのサービス提供事業者サーバ、例えば地図サーバ43から読み出した地図データその他の地理情報を取得するサーバ情報取得手段として動作する。また、ある態様では、装置内で作成されたリマインド情報又はレコメンド情報を取得するリマインド情報等取得手段として動作する。
【0037】
解析部105は、情報取得部102で取得した情報の内容を解析する。ある態様では、解析は、テキストデータの形態素解析及びフィルタリングを行った後、予め蓄積されている参照データに基づいて意味解析を行い、目的地、施設名、イベントなどを、情報提供装置10全体において特定しやすい語句に変換してRAM111に保存する。また、ある態様では、日時及び位置の情報に基づいて、近隣の施設又はそこで開催されているイベントなどを特定し、RAM111に保存する。また、ある態様では、複数のユーザによる情報の検索履歴、施設又はイベントの利用履歴、移動手段の利用履歴等に基づいて、頻度等に基づく順位付けを行い、順位の高い情報を提供しているサービス提供事業者サーバが提供するAPIなどを優先的に利用できるようにするためのレコメンド情報を作成する。また、ある態様では、有効期限が近いチケット又は特典ほど優先的に利用できるようにするためのリマインド情報又はレコメンド情報を作成する。
【0038】
編集部106は、ユーザ端末30のディスプレイに表示される画面のレイアウトをユーザDB11に登録されている当該ユーザ端末30の表示スペックに応じて編集する。その際、ユーザ端末30を所持するユーザを表すユーザシンボル、ユーザが利用可能な施設を表す施設シンボル、ユーザが現に取得し、有効期間の終期が最も近いチケット又は特典を利用可能な特定施設を表す特定施設シンボル、ユーザが参加可能なイベントを表すイベントシンボル、移動手段の特徴を表す移動手段シンボル、サービス事業者提供サーバに掲載されている施設等の詳細情報にアクセスするための二次元コード画像などを作成し、RAM111に保存する。
【0039】
主制御部107は、API連携部101、認証部102、ユーザ管理部103、情報取得部104、解析部105、編集部106の機能ブロックを統括的に制御することで、アクセスしてきたユーザ端末30からの要求に応答し、あるいは、ユーザ端末30を操作するユーザのモビリティに対応する表示対象情報を生成、編集して当該ユーザ端末30へレコメンドしたり、各種リマインドをする制御手段、あるいはそのためにユーザ端末30の表示画面の表示制御を行う表示制御手段として機能する。
【0040】
[運用形態例]
次に、上記のように構成される情報提供装置10の運用形態例を説明する。
[ユーザ登録処理]
情報提供装置10は、まず、ユーザ登録処理を行う。このときの情報提供装置10のユーザ管理部102が実行する処理工程例を示したのが
図4である。
図4を参照すると、ユーザ管理部102は、ユーザ端末30からのユーザプロファイルの入力を待つ(S101:N)。ユーザプロファイルが入力されると(S101:Y)、ユーザ管理部102は、そのユーザのユーザテーブルを作成し、ユーザDB11へ登録(格納)する(S102)。その後、情報提供装置10がAPI連携する他のウェブサイトを例示して、これらのウェブサイトへのユーザ登録があるかどうかをユーザ端末30へ問い合わせる(S103)。ユーザ登録が無い場合は、ユーザ登録処理を終了する(S104:N)。ユーザ登録がある場合(S104:Y)、そのウェブサイトへの登録情報の入力完了を待つ(S105:N)。他のウェブサイトへの登録情報が入力されると(S105:Y)、ユーザ管理部102は、これらの登録情報を当該ウェブサイトのアドレス情報(例えばURL)と関連付けてユーザテーブルへ追加登録する(S106)。
【0041】
このとき、登録した他のウェブサイトにおいて取得(有料の場合は購入)済のチケット、取得(有料の場合は購入)獲得済の特典等を保有するかどうかをユーザ端末30へ問い合わせる(S107)。保有する場合(S108:Y)、それらを識別するための情報の入力を待ち(S108:N)、入力された場合、ユーザ管理部102は、そのユーザ用の補助テーブルを作成し、保有するチケット、特典等を補助テーブルに記録した後、そのユーザのユーザテーブルと関連付けてユーザDB11へ登録する(S108:Y、S109)。これにより、ユーザ管理部102は、ユーザ登録の処理を終了させる。
【0042】
ユーザ登録が終了すると、ユーザは、ユーザ端末30を操作して情報提供装置10にアクセスして様々なサービスを享受することができる。サービスの享受は、上記のモビリティAPの表示画面及び操作により実現される。以下、ユーザがサービスを享受するために情報提供装置10が行う手順について説明する。
【0043】
[情報表示処理]
情報提供装置10は、モビリティAPがユーザ端末30において起動し、認証部103によるユーザ認証(2回目アクセスの場合は自動認証)が成功すると、主制御部107の制御のもとで情報取得部104で様々な情報を取得し、取得した情報を解析部105で解析し、解析結果に基づいて編集部106でユーザ端末30のディスプレイに応じた画面レイアウトを編集した後、これらの情報をユーザ端末30へ提示する。これらの機能ブロック104~107が実行する上記一連の処理工程例の概要を示したのが
図5である。
【0044】
図5を参照すると、情報取得部104は、認証に成功したユーザ端末30から日時及び位置情報を取得する(S201)。情報取得部104は、取得した位置情報を中心として所定の距離範囲の地図データを取得する(S202)。情報取得部104は、さらに、ユーザ端末30から所定距離範囲の施設のうち所定基準を満たす施設の情報(チケット、特典発行の有無を含む)、交通機関などの移動手段の情報をAPI連携により取得する(S203)とともに、ユーザが保有しているチケット、特典等の情報をユーザDB11より取得する(S204)。これらの取得情報は、とりあえず、所定の記録領域(RAM111)に一時的に記録される。
【0045】
対象となる施設を決定するときの所定基準は、例えば、そのユーザ又は他のユーザが過去に利用した結果、SNS管理サーバ41からAPI連携により読み出した口コミ情報又は評価情報が登録されている施設かどうか、ユーザの興味のあるジャンルとしてユーザ自身がSNS管理サーバ41か当該施設が関連するサーバに登録されている施設かどうか、ユーザがチケットを購入し、あるいは特典を獲得している施設かどうか、営業時間中の施設かどうかなどである。この基準は、適宜変更することができる。
【0046】
各種情報を取得すると、編集部106は、ユーザを表すユーザシンボル、表示対象となる施設を表す施設シンボルを作成し、作成したユーザシンボルと施設シンボルとを位置情報と関連付ける(S205)。編集部106は、さらに、取得した地図データに基づいて作成された地図画像を含む表示画面を編集する(S206)。編集された表示画面の例を
図10に示す。表示画面500のうち起動時に表示されるトップ画面は、地図画像501をベースに表示される中心位置には、ユーザシンボル511が当該位置の他の道路等との相対位置がわかるように強調表示される。また、施設シンボル512が重畳表示される。
【0047】
地図画像501は、デフォルトでは、取得した位置情報により特定される位置を起点とする所定距離範囲のベクター図であり、例えば指やスタイラスペンによる地図画像上でのタッチ操作によって、上下左右方向へのスライド、あるいは拡大又は縮小が可能である。地図画像501がベクター図なので、拡大又は縮小しても文字や記号の解像度が変わらない見やすい地図表示が可能となる。
【0048】
表示画面500には、上記地図画像501のほか、目的地入力領域502、補助表示領域503、用意されている複数の機能をダイレクトに呼び出すための複数の機能アイコン504が形成されている。機能アイコン504の一つは、ユーザが経路候補の探索を指示するための「経路」アイコン500aである。主制御部107は、編集部106で編集された表示画面500をユーザ端末30のディスプレイに表示させる(S207)。
【0049】
[移動経路候補の案内処理]
次に、ユーザ端末30のモビリティAPを通じて情報提供装置10が行う移動経路候補の案内処理について説明する。この場合、情報提供装置10は、例えばAPI連携部101を通じて連携可能な経路案内サーバ42、地図サーバ43、デマンド応答型輸送サーバ51、タクシーサーバ52、シェアリングサーバ53とそれぞれ連携する移動経路候補の案内装置として動作する。本例では、ユーザ端末30を所持するユーザが出発地から目的地まで移動する際に、運行がスケジューリングされた公共交通移動体及び運行がスケジューリングされていない非公共交通移動体のいずれをも利用できる地域におけるマルチモーダル経路の案内処理の例を説明する。
【0050】
まず、
図6の処理手順図を参照して検索条件の設定処理について説明する。主制御部107は、
図10の表示画面500に表示されている「経路」アイコン504aに対するユーザ操作を待つ(S301:N)。ユーザ操作は、以下の説明では、便宜上、指やスタイラスペンを用いたタッチ操作であるものとするが、物理的なキーボード操作、あるいは音声による操作であってもよい。
【0051】
「経路」アイコン504aのタッチ操作を検出すると(S301:Y)、主制御部107は、例えば
図11に示されるように、表示画面500の下方領域に「+新しい経路を検索・・・」の文字列が表示された検索ウィンドウ505を表示させ(S302)、その操作を待つ(S303:N)。検索ウィンドウ505のタッチ操作を検出すると(S303:Y)、主制御部107は、表示画面500を
図12に例示される検索条件設定画面500aに遷移させる(S304)。
【0052】
図12を参照すると、検索条件設定画面500aには、「現在地」521、「目的地」522、「出発時刻」523、「詳細設定」524の入力フィールドが表示されている。
「現在地」521は経路探索の出発地に相当する情報である。主制御部107は、「現在地」521の入力フィールドにユーザ端末30から取得した現在地の情報を、ユーザの操作を待つことなく、自動的に設定する。そのため、ユーザ端末30において「現在地」521の入力フィールドへの変更操作が検知されない場合(S305:N)、現在地の情報がそのまま経路探索の出発地として確定される(S306)。本例では、東京都の渋谷駅周辺の位置が現在地の位置として示されている。地図領域525には、ユーザ端末30が存在する位置、つまりユーザシンボル511及び当該位置を中心として所定距離範囲の地図画像が表示される。
【0053】
図12の「現在地」521の入力フィールドがタッチ操作された場合(S305:Y)、主制御部107は、検索条件設定画面500aの一部又は全部を文字列入力画面又は地図上の位置座標入力画面(図示省略)に切り替える(S307)。文字列又は位置座標の入力を待ち(S308:N)、文字列又は位置座標が入力されたときは(S308:Y)、入力された情報(文字列/位置座標)で特定される位置を出発地として確定する(S309)。
【0054】
図12の「目的地」522は経路探索の到着地に相当する情報である。主制御部107は、この「目的地」521の入力フィールドへのタッチ操作を待つ(S311:N)。タッチ操作されると(S311:Y)、主制御部107は、検索条件設定画面500aの一部又は全部を文字列入力又は地図上の位置座標入力画面(図示省略)に切り替える(S312)。文字列又は位置座標の入力を待ち(S313:N)、文字列又は位置座標が入力されたときは(S313:Y)、入力された情報(文字列/位置座標)で特定される位置を目的地として確定する(S314)。
図12の例では、東京都の梅ヶ丘が目的地として設定されている。
【0055】
図12の「出発時刻」523はユーザの移動開始予定時刻である。主制御部107は、「出発時刻」523の入力フィールドにユーザ端末30から取得した現在時刻あるいは情報提供装置10が有する時計機能より取得した現在時刻を、ユーザによる操作を待つことなく、自動的に設定する。そのため、ユーザ端末30において「出発時刻」523の入力フィールドへの変更のための操作が検知されない場合(S321:N)、現在時刻がそのまま出発時刻(移動開始時刻)として確定される(S322)。「出発時刻」523の入力フィールドが操作された場合(S321:Y)、主制御部107は、検索条件設定画面500aの一部又は全部を日時情報設定画面(図示省略)に切り替える(S323)。日時情報設定画面では、日時情報の入力と共に、出発時刻を目的地への到着時刻に変更することができる。
【0056】
出発時刻から到着時刻への変更がない場合(S324:N)、主制御部107は、入力された日時情報を出発時刻として確定する(S325)。到着時刻へ変更された場合(S324:Y)、主制御部107は、日時情報を目的地への到着時刻として確定する(S326)とともに、「出発時刻」523の表示を「到着時刻」に変更する(S327)。
なお、出発時刻が確定した後に到着時刻がタッチ操作により変更された場合、あるいは到着時刻が確定した後に出発時刻がタッチ操作により変更された場合、後からの入力内容が有効とされる。
【0057】
図12の「詳細設定」524は、ユーザが任意に設定可能な経路探索の詳細条件である。ここでは、自動設定ないしユーザが事前に設定しておく内容が殆どであるため、
図6には示されていないが、事後に設定し直す場合は、これまで説明した他の条件と同様の手順で新たな情報を入力することができる。
また、本実施形態では図示を省略してあるが、「詳細設定」524の下位層の入力フィールドとして、リアルタイム検索のオン/オフ設定、乗換設定、優先乗車設定、マルチモーダル経路の検索条件設定が関連付けられている。ユーザは、経路探索前にいつでも検索条件設定画面500aを通じて「詳細設定」の内容を設定し、ユーザDB11等に保存しておくことができる。保存した内容は、再び
図10の「経路」アイコン504aがタッチ操作されたときに、主制御部107が、自動的に該当の入力フィールドに設定する。
【0058】
「リアルタイム検索」は、例えば鉄道等の公共交通移動体に遅れが発生した場合にその遅れ時間を加味した検索結果を表示する機能である。その際、遅れる前の時刻も表示しておき、それが訂正される態様で表示することで、公共交通移動体がどの程度遅れ、その結果、目的地への到着時刻がどの程度変わるのかを予測することができる。
主制御部107は、ユーザによる操作を待たないデフォルト状態では、リアルタイム検索を自動的にオン設定する。「乗換設定」は、ユーザの過去の経路探索利用の傾向に基づいて予測した「おすすめ」、乗換があっても所要時間の短さを優先して経路探索を行う「早い」、乗換があっても運賃の低さを優先して経路探索を行う「安い」、乗換のある経路の優先順位を低くして経路探索を行う「らくらく」のいずれかであり、上記デフォルト状態では、「おすすめ」が設定される。「優先乗車設定」は、鉄道に乗車する場合の経路探索に際して「自由席優先」か「指定席優先」かを定めるものである。主制御部107は、デフォルト状態では「自由席優先」を設定する。
【0059】
「マルチモーダル経路の検索条件設定」は、マルチモーダル経路の検索を行う際に、鉄道、定期運航バスのような公共交通機関以外の複数の移動手段、例えばタクシー、AI運行バス、サイクルシェアリング、バイクシェアリング、カーシェアリングのうち、経路候補のノードに含まれる場合であってもそれを除外する移動手段を選択する。デフォルト状態では、用意されているすべての移動手段が経路候補のノードに含まれるように設定される。
【0060】
なお、出発地及び目的地の文字列入力は、ユーザ端末30に設けられたキーボード、あるいは、それぞれの入力フィールドへのタッチ操作によりユーザ端末30の表示画面500の所定部位に自動的に現れるソフトウェアキーボードのタッチ操作により可能となるが、他の手段によって文字列を入力してもよい。
【0061】
例えば、ユーザDB11に保存されている上記のログファイルを用いて解析部105で解析した文字列のうち、ユーザが関心を抱いていると推定され、ソートされている地名等の文字列を、先頭文字が入力される度に、例えば検索条件設定画面500aの下部領域にいくつか表示させ、ユーザがいずれかの文字列を選択したときに、当該文字列を出発地又は目的地として入力するようにしてもよい。あるいは、いくつかの文字列を関心度順に「検索文字」としてキーボードウィンドウとは別の入力フィールドに表示させ、いずれかの文字列の選択をユーザに委ねる構成であってもよい。
【0062】
図6に示す検索条件の設定処理は、「出発地」521の入力フィールドへの出発地の確定(S306,S309)、「目的地」522の入力フィールドへの目的地の確定(S314)、「出発時刻」523の入力フィールドへの出発時刻又は到着時刻の確定(S322,S325)を、例えばユーザが、経路探索開始の機能ボタン(図示省略)を操作(主制御部107への指示操作)することで完了する(S330)。
【0063】
図7は、経路探索処理の手順説明図である。この処理は、主制御部107は、API連携部101を通じて経路案内サーバ42等と連携しながら実行する。すなわち、検索条件の設定処理の完了(
図6のS330)を待つ(S401:N)。そして、検索条件の設定処理の完了を契機に(S401:Y)、第1経路探索工程を実行する(S402)。第1経路探索工程の詳細手順については、後述する。ユーザが第1経路探索工程による経路探索結果について終了指示を入力した場合(S403:Y)、経路探索処理を終了する。
ユーザが第1経路探索工程による経路探索結果に対する終了指示を入力しない場合(S403:N)、主制御部107は、第1経路探索工程による経路探索結果を受け継いだ状態で第2経路探索工程を実行する(S404)。第2経路探索工程の詳細手順については後述する。そして、第2経路探索工程による経路探索結果をユーザ端末30に提示して、経路探索処理を終了させる。
【0064】
図8は、第1経路探索工程における詳細手順説明図である。第1経路探索工程は、公共交通移動体だけを利用してユーザが移動可能な経路候補を探索する。本例では、経路案内サーバ42にアクセスして経路候補の探索処理を実行させる(S501)。この探索を「第1経路探索」と呼び、これにより特定される経路候補を「第1経路候補」と呼ぶ。第1経路探索は、公共交通移動体について公表されている運行情報、遅延情報、ノード間距離、運賃等を用いて行われる。公共交通移動体の利用態様には、鉄道のみ利用、バスのみ利用の場合があり、鉄道でも特急利用、新幹線利用があるため、主制御部107は、それぞれの利用態様に応じた複数の第1経路候補を経路案内サーバ42から取得(受領)する(S502)。そして、利用が予想される各公共交通移動体に対応する選択アイコンを作成し、あるいは予め作成・保存されている部分から読み出す。選択アイコンは、対応する公共交通移動体を利用するかしないかを選択するためのアイコンであり、選択可能な場合は表示態様を問わず表示し、選択不能の場合は非表示とする。
【0065】
その後、主制御部107は、複数の第1経路候補のノード間で利用可能な非公共交通移動体が存在するかどうかを調べる(S503)。この処理は、例えば主制御部107が、API連携部101を通じてデマンド応答型輸送サーバ51、タクシーサーバ52、シェアリングサーバ53にアクセスして当該移動体の利用の可否と可能な場合の時間帯や制約を調査することで実行する。ただし、この処理も経路案内サーバ42に実行させて、その問い合わせの結果等を取得するようにしてもよい。
【0066】
どの第1経路候補においても利用可能な非公共交通移動体が存在しない場合(S504:N)、処理を後述のS507に移す。いずれかの第1経路候補において利用可能な非公共交通移動体が存在する場合(S504:Y)、主制御部107は、各非公共交通移動体に対応する選択アイコンを作成し、これを第1経路候補及び公共交通移動体に対応する選択アイコンと共にユーザ端末30の探索結果一覧画面に表示させる(S505)。探索結果一覧画面の例を
図13に示す。
【0067】
図13を参照すると、探索結果一覧画面500bには、
図12の検索条件設定画面500aの入力フィールドがそのまま表示され、さらにその下部領域に選択アイコン531~535と、複数の第1経路候補、図示の例では2つの第1経路候補536,537の一覧が表示されている。最初の第1経路候補536については、遅延情報が入手できているため、その旨が表示されている。
【0068】
選択アイコン531は鉄道に対応し、選択アイコン532はバス(公共バス)に対応しており、それぞれ強調表示(本例では点灯表示)されている。強調表示は、対応する移動体(鉄道及びバス)が、表示中の第1経路候補536,537の利用ノードに含まれていることを意味する。一方、選択アイコン533はシェアサイクル、選択アイコン534はデマンド交通、選択アイコン535はタクシーであり、出発地と目的地との間の経路ではいずれも利用可能な非公共交通移動体であるが、例えば上述の通り利用ノードとして選択する際の条件(タクシーであれば1マイル未満等)に満たないために、その利用ノードが表示中の第1経路候補536,537には含まれていないことを意味する。
【0069】
表示されている第1経路候補536、537については、その表示領域をユーザがタッチ操作することで詳細経路画面に切り替えることができる。最初の第1経路候補536の詳細経路画面例を
図14に示す。
図14に例示される詳細経路画面500cでは、公表されている時刻表によれば19:01発の渋谷駅(1番線)発の京王井の頭線急行の列車が14分遅延して19:15発となることが示されており、それ故に、目的地まで短時間で移動するには、京王線下北沢駅の2番線ホームから4番線ホームまで移動して小田急線下北沢駅から小田急線に乗り換えて梅ヶ丘駅に向かい、さらに、バスを使用する経路候補が案内されている。
図14のような詳細経路画面500cは、第1経路候補毎に表示することができる。そのため、ユーザは、経路候補の概要を
図13の探索結果一覧画面500bで把握し、その詳細経路を知りたい第1経路候補についてだけ
図14に示す詳細経路画面500cで確認することができる。
【0070】
図13の探索結果一覧画面500bに戻る場合は、モビリティAPが提供する「戻る」ボタンをタッチ操作することになる。
【0071】
図8に戻り、選択アイコン531~535のうち、強調表示されていない非公共交通移動体533~535のいずれかが選択された場合(S506:Y)、主制御部107は、第2経路探索工程を実行する。一方、どの選択アイコン533~535も選択操作されず、
図13の探索結果一覧画面500bの表示画面又は
図14の詳細経路画面500cの情報で足りるとユーザが判断し、モビリティAPが提供する「終了指示」ボタンが操作された場合(S507:Y)、主制御部107は、経路案内処理を終了させる。
【0072】
図9は、第2経路探索工程の詳細手順説明図である。ここでは、
図13に示した機能アイコン533~535のうちタクシーに対応する選択アイコン535がユーザによって操作されたものとする。
図9を参照すると、主制御部107は、操作された選択アイコン535に対応するタクシーのアクセスポイント(タクシー乗り場)を利用ノードに含む経路候補を探索する。あるいは、既に探索された結果から抽出する(S601)。このような経路探索を「第2経路探索」と呼び、これにより特定される経路候補を第1経路候補と区別するために「第2経路候補」と呼ぶ。
【0073】
主制御部107は、第2経路候補の探索結果を第1経路候補の探索結果に付加する(S602)。第2経路探索による探索結果一覧画面を
図15に示す。
図15に示された探索結果一覧画面500dでは、現在地からタクシーにより目的地である梅ヶ丘まで移動する場合の第2経路候補538が、2つの第1経路候補536、537に付加されている。他の非公共交通移動体の選択アイコンが存在しないか選択されない場合(S603:N)、第2経路探索処理を終了する。他の選択アイコンが選択された場合(S603:Y)、S601以降の処理を繰り返す。
【0074】
図13の探索結果一覧画面500bあるいは
図15の探索結果一覧画面500dにおいて、いずれかの第1経路候補又は第2経路候補が選択されると、ユーザ端末30には、俯瞰画面が表示される。俯瞰画面例を
図16に示す。
図16の俯瞰画面500eには、出発地と目的地とを含む地図画像が表示され、ユーザシンボル511が表示される。俯瞰画面500eには、また、ユーザにより選択された経路候補が地図画像上にマッピング表示される。経路候補は、利用する移動体が鉄道とバスである場合は、それらの路線にとってマッピング表示される。また、利用する移動体がタクシーの場合は、道路上にマッピング表示される。また、俯瞰画面500eの下部領域には、探索結果一覧画面500b,500dあるいは詳細経路画面500cが縮小して表示される。これにより、ユーザは、現在地から目的地に向かう状況を容易にイメージすることができる。
【0075】
[実施形態による効果]
上記の通り、本実施形態では、主制御部107は、デフォルト状態では、「現在地」521、「出発時刻」523、「詳細設定」524のうちリアルタイム検索をオン、乗換設定を「おすすめ」、優先乗車設定を「自由席優先」、マルチモーダル経路の検索条件設定をすべての移動手段をノードに含めるようにする。そのため、ユーザは、目的地を入力すれば、現在地からの経路候補を直ちに知ることができる。また、本実施形態では、第1経路探索工程の後、必要に応じて第2経路探索工程を実行するので、ユーザの意に反した不要な交通移動体を含む経路候補が提示されることがなく、探索にかかる手間や時間をユーザ自身の判断に委ねることができる。
【0076】
[変形例]
本実施形態では、公共交通移動体だけを利用ノードに含む経路候補の探索工程を第1経路探索工程とし、非公共交通移動体をも利用ノードに含む経路候補の探索工程を第2経路探索工程とする例について説明したが、各経路探索工程は、それぞれ公共交通移動体同士、あるいは非公共交通移動体同士であってもよい。例えば、利用できる公共交通移動体がそれぞれ異なる種類、例えば鉄道、バス、フェリー等である場合、鉄道だけを利用ノードに含む経路候補の探索を第1経路探索工程とし、鉄道と公共バス、あるいは公共バスだけを利用ノードに含む経路候補の探索を第2経路探索工程としてもよい。非公共交通移動体についても同様である。
【0077】
つまり、異なる種類の移動体のうち、特定種類の移動体を第1移動手段、第1移動手段と異なる種類の移動体を第2移動手段とし、第1移動手段を利用ノードに含む経路候補を第1経路候補、第2移動手段を利用ノードに含む経路候補を第2経路候補として、経路案内をすることができる。
【0078】
本実施形態では、また、第1経路探索工程では指定されていない非公共交通移動体(例えば、強調表示されていないタクシーの選択アイコン535)を新たに指定した場合(例えば、当該選択アイコン535を選択する操作して強調表示に変更)に第2経路探索工程を実行する場合の例について説明したが、この例に限定されない。例えば、第1経路探索により特定され、強調表示されている選択アイコン(例えば鉄道の選択アイコン531とバスの選択アイコン532)を非強調表示に変更した場合に第2経路探索工程を実行するようにしてもよい。
【0079】
あるいは、出発地と目的地との間の移動経路において利用可能なすべての公共交通移動体及び非公共交通移動体を利用ノードに含む経路探索を経路案内サーバ42から取得しておき、選択アイコン531~535を強調表示した後、いずれかの選択アイコンの強調表示を非強調表示に変更した場合に、残った選択アイコンに対応する公共交通移動体又は非公共交通移動体を利用ノードに含む経路候補だけをユーザ端末30に提示するようにしてもよい。この場合、前者の経路候補が第1経路候補となり、後者の経路候補が第2経路候補となる。
【0080】
また、本実施形態では、
図4~
図9にその手順例を示す各種処理工程を、情報提供装置10側で実行する場合の例について説明したが、ユーザ端末30のモビリティAPで
図6~
図9に示した処理工程の一部又は全部を実行するようにしてもよい。この場合、モビリティAPが本発明のコンピュータプログラムとなる。