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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106543
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】オイル分離装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20220712BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20220712BHJP
   B01D 46/10 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F01M13/04 B
F01M13/04 E
F02F7/00 P
B01D46/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001624
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000252252
【氏名又は名称】和興フィルタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】日吉 望
(72)【発明者】
【氏名】千田 修
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
4D058
【Fターム(参考)】
3G015BD10
3G015BD12
3G015BD23
3G015BE02
3G015BE07
3G015BE11
3G015BE12
3G015BE13
3G015BE15
3G015BF05
3G015BF08
3G015CA05
3G015CA16
3G015DA07
3G015EA11
3G024AA72
3G024BA20
3G024BA23
3G024BA24
3G024DA17
3G024EA01
3G024FA07
3G024FA08
4D058JA60
4D058JB05
4D058JB32
4D058KA01
4D058KA11
4D058KA23
4D058SA15
(57)【要約】
【課題】板状の濾材によりブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを効率的に分離して捕集することができ、濾材を低コストで容易に交換することが可能なオイル分離装置を提供する。
【解決手段】オイル分離装置1は、カバー蓋102により覆われるエンジン内に設けられ、エレメント収容部40を有する。エレメント収容部40内の周壁縦面81と周壁底面82とにより受容空間71が形成され、受容空間71が装置内ガス流路の一部を形成する。エレメント5は、板状の濾材60と濾材60の外周部を覆うシールカバー50とを備え、受容空間71内に収容される。シールカバー50は、濾材60の外側面63を塞ぐとともにエレメント5と周壁底面82との間の隙間91を封止する。カバー蓋102を取り外して受容空間71を開放し、エレメント5を受容空間71から取り出して交換可能とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクケース内のブローバイガスを吸気系に流すときに、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離するオイル分離装置であって、
前記エンジンの上部に着脱可能に取り付けられた蓋部材により覆われるエンジン内空間に設けられ、
少なくとも一部のブローバイガスが通るガス流路と、前記ガス流路内に設けられて前記ガス流路を流れるブローバイガスを通過させてオイルを分離するエレメントとを備え、
前記エレメントは、所定の厚さの板状でブローバイガスを厚み方向の一方の面から反対側の面に通過させてミスト状のオイルを分離するように用いられる濾材と、前記濾材の外側面を覆うように前記濾材に装着されるシールカバーとを備え、
前記ガス流路の少なくとも一部が前記エレメントを収容する受容空間を形成する周壁面を有し、前記受容空間が前記ガス流路の少なくとも一部を形成し、前記周壁面により形成された前記受容空間内に前記エレメントを収容して、前記ガス流路を流れるブローバイガスを前記厚み方向の一方の面から反対側の面へ向かって流して前記濾材を通過させるようになっており、
前記シールカバーにより前記濾材の外側面を塞ぐとともに前記エレメントと前記周壁面との間の隙間を封止し、前記ガス流路を流れるブローバイガスを、前記濾材の内部を前記厚み方向の一方の面から反対側の面に通過させるように構成し、
前記蓋部材を取り外して前記受容空間を開放し、前記エレメントを前記受容空間から取り出して交換可能であることを特徴とするオイル分離装置。
【請求項2】
前記エンジンの上部に取り付けられた前記蓋部材が、前記受容空間内に収容されている前記エレメントを前記周壁面に押し付けて、前記シールカバーを前記周壁面に密着させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のオイル分離装置。
【請求項3】
前記シールカバーがゴム材料で形成されることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のオイル分離装置。
【請求項4】
前記濾材がグラスウールにより形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のオイル分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離するオイル分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や産業機械のエンジンにおいて、ブローバイガス還元システムを備えたものが知られている。ブローバイガス還元システムでは、ピストンリングとシリンダ壁の間隙からクランクケース内に漏れ出したブローバイガスを、シリンダヘッドカバー(ロッカーカバー)に形成した吸気系に繋がる流路を介して、吸気系において生じる負圧により吸い込んで吸気系に戻し、混合気とともに燃焼室に供給する。クランクケース内にはエンジンオイルが充満しているため、クランクケース内から吸い込んだブローバイガスにはミスト状のオイルが含まれている。そのため、ブローバイガス還元システムには、ブローバイガスからミスト状のオイルを分離して捕集するオイル分離装置を備えたものが知られている(例えば、下記特許文献1、2を参照)。
【0003】
このようなオイル分離装置では、ミスト状のオイルの分離捕集効率を高めるために濾材が用いられることがある。濾材は、その内部をブローバイガスが通過する際に、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを凝集して分離する機能を有する材料(例えば、不織布やグラスウール)で形成される。このような濾材としては、円筒状に形成されたものが広く用いられている。所定の厚さの板状(例えば、直方体状)に形成されたものもあるが、あまり用いられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐64155号公報
【特許文献2】特開2008‐121478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オイル分離装置において板状の濾材は、例えば、ブローバイガスを濾材の厚み方向の一方の面から反対側の面に通過させ、その際にミスト状のオイルを分離するように用いられる。ブローバイガスが濾材の内部を濾材の厚み方向の一方の面から反対側の面に通過することにより、効率良くミスト状のオイルを分離して捕集することができる。しかし、ブローバイガスが濾材の内部を通過せず濾材の外側面の脇を通過したり、ブローバイガスが濾材の外側面から濾材内に入ったり、濾材内に入ったブローバイガスが外側面から抜け出たりしてしまうと、オイルの分離効率が低下してしまうという課題がある。また、濾材は、経時的に汚損して機能が低下するため定期的に交換する必要がある。濾材を含めオイル分離装置全体を交換する構成のオイル分離装置が知られているが、交換費用が嵩んでしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、板状の濾材によりブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを効率的に分離して捕集することができ、濾材を低コストで交換することが可能なオイル分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るオイル分離装置は、エンジンのクランクケース内のブローバイガスを吸気系に流すときに、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離するオイル分離装置
であって、前記エンジンの上部に着脱可能に取り付けられた蓋部材(例えば、実施形態におけるカバー蓋102)により覆われるエンジン内空間に設けられ、少なくとも一部のブローバイガスが通るガス流路(例えば、実施形態における装置内ガス流路)と、前記ガス流路内に設けられて前記ガス流路を流れるブローバイガスを通過させてオイルを分離するエレメントとを備え、前記エレメントは、所定の厚さの板状でブローバイガスを厚み方向の一方の面から反対側の面に通過させてミスト状のオイルを分離するように用いられる濾材と、前記濾材の外側面を覆うように前記濾材に装着されるシールカバーとを備え、前記ガス流路の少なくとも一部が前記エレメントを収容する受容空間を形成する周壁面を有し、前記受容空間が前記ガス流路の少なくとも一部を形成し、前記周壁面により形成された前記受容空間内に前記エレメントを収容して、前記ガス流路を流れるブローバイガスを前記厚み方向の一方の面から反対側の面へ向かって流して前記濾材を通過させるようになっており、前記シールカバーにより前記濾材の外側面を塞ぐとともに前記エレメントと前記周壁面との間の隙間を封止し、前記ガス流路を流れるブローバイガスを、前記濾材の内部を前記厚み方向の一方の面から反対側の面に通過させるように構成し、前記蓋部材を取り外して前記受容空間を開放し、前記エレメントを前記受容空間から取り出して交換可能であるように構成される。
【0008】
本発明に係るオイル分離装置において、好ましくは、前記エンジンの上部に取り付けられた前記蓋部材が、前記受容空間内に収容されている前記エレメントを前記周壁面(例えば、実施形態における周壁底面82)に押し付けて、前記シールカバーを前記周壁面に密着させるように構成される。
【0009】
本発明に係るオイル分離装置において、好ましくは、前記シールカバーがゴム材料で形成される。また、前記濾材がグラスウールにより形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るオイル分離装置によれば、所定の厚さの板状の濾材と濾材の外側面を覆うシールカバーとによりエレメントが構成され、ガス流路の少なくとも一部がエレメントを収容する受容空間を形成する周壁面を有するとともに、その受容空間によりガス流路の少なくとも一部が形成され、周壁面により形成された受容空間内にエレメントが収容される。そして、シールカバーにより濾材の外側面が塞がれるとともにエレメントと周壁面との間の隙間が封止され、ガス流路を流れるブローバイガスが濾材の内部を厚み方向の一方の面から反対側の面に通過可能とされる。すなわち、本発明によれば、エレメントと周壁面との間の隙間及び濾材の外側面をシールカバーにより簡単に封止することができ、これにより、ブローバイガスが濾材の内部を通過せずに隙間を通過したり、ブローバイガスが濾材の外側面を通り抜けたりすることを防止できるので、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを、板状の濾材により効率良く分離して捕集することが可能となる。また、ガス流路、周壁面及び受容空間を一体に有するオイル分離装置を構成できるので、装置構成を簡易化することができる。また、エンジンの上部に着脱可能に取り付けられた蓋部材を取り外して受容空間を開放し、エレメントを受容空間から取り出して交換可能であるので、エレメントを交換することにより濾材の交換が容易に可能となる。また、濾材を交換するためにオイル分離装置ごと交換する構成のものに比較して交換費用を低減することができる。
【0011】
本発明に係るオイル分離装置によれば、エンジンの上部に取り付けられた蓋部材が、受容空間内に収容されているエレメントを周壁面に押し付けて、シールカバーを周壁面に密着させるように構成することで、エレメントと周壁面との間の隙間を確実に封止することができるので、ブローバイガスが隙間を通り抜けることを防止する効果を高めることが可能となる。
【0012】
本発明に係るオイル分離装置によれば、シールカバーをゴム材料で形成することで、他の材料でシールカバーを形成する場合に比較してシール性能を高めることが可能となる。また、ゴム材料で形成することによりシールカバーに伸縮性を持たせることができるので、シールカバーをエレメントに容易に装着することが可能となる。さらに、本発明に係るオイル分離装置によれば、濾材をグラスウールにより形成することで、不織布により濾材を形成したものに比較して、濾材におけるミスト状オイルの分離捕集効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るオイル分離装置が設置されるシリンダヘッドカバーの平面図である。
図2】上記シリンダヘッドカバーの正面図である。
図3】上記シリンダヘッドカバーの蓋部材を取り外した状態の平面図である。
図4】上記オイル分離装置の平面図である。
図5】上記オイル分離装置の縦断面図である。
図6】上記オイル分離装置のエレメントを取り出した状態の平面図である。
図7】上記オイル分離装置のエレメントを取り出した状態の縦断面図である。
図8】上記オイル分離装置のエレメント及びエレメント収容部の構成を示す概略図である。
図9】上記エレメントのシールカバーの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図、(C)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、上記図面を参照して本発明の一実施形態に係るオイル分離装置1について説明する。なお、図1図6には、前後左右上下の各方向を示す十字の矢印を示している。以下の説明において方向について言及するときの方向は、これらの矢印の向きに対応する。また、図5では、ブローバイガスの流れを1点鎖線の矢印で例示している。
【0015】
図1図3に示すように、オイル分離装置1は、エンジンの上部、具体的には、エンジンの一部を構成するシリンダヘッドカバー100の内部空間(エンジン内空間)に設置される。シリンダヘッドカバー100は、矩形筒状のカバー本体101と無底箱状のカバー蓋102とを有して構成され、例えば、クランクケース(図示略)の上部にシリンダヘッド(図示略)を介して取り付けられる。カバー本体101の上面部101aには矩形状のカバー開口103(図3を参照)が形成されており、オイル分離装置1はカバー開口103に臨むように設置されている。具体的には図3に示すようにカバー本体101には、平面視においてカバー開口103の縁部からカバー開口103内に延出する6個の装置取付部104が設けられており、オイル分離装置1はこれら装置取付部104に取付ボルト105を介して取り付けられている。カバー蓋102はカバー開口103を開閉できるように、カバー本体101の上面部101aに取付ボルト(図示略)を介して着脱可能に取り付けられている。また、カバー蓋102の上壁部102aには、シリンダヘッドカバー100の内外を連通する円形のガス流出開口106(図1及び図2を参照)が設けられており、このガス流出開口106には、ブローバイガスを吸気系(例えば、図示しないエアクリーナの出口側)に戻すための吸気通路(図示略)が接続されるようになっている。
【0016】
図4図6に示すようにオイル分離装置1は、装置筐体3と、装置筐体3に対し交換可能に設置されるエレメント5とを有して構成されている。装置筐体3は、下方に開口した箱状の上部筐体10と、上方に開口した箱状の下部筐体20とを備え、上部筐体10と下部筐体20は、図5に示すように上下に組み合わされて振動溶着等により互いに接合されている。
【0017】
上部筐体10は、図7に示すように、上壁部11と側壁部12とを有して構成されており、上壁部11の上面側にはエレメント収容部40が設けられている。エレメント収容部40は、平面視矩形枠状(図4を参照)に形成された収容縦壁部41と、上壁部11の一部により形成された収容底壁部42とを有して構成されている。収容底壁部42は、平面視矩形枠状(図6を参照)に形成されており、その上面にエレメント5が載置されるようになっている。エレメント収容部40は上方に大きく開口しており、この開口部がガス流入口43となっている(図7を参照)。エレメント収容部40の下方には、エレメント5を通過したブローバイガスを装置筐体3内に導くためのガス導入凹部14が設けられている。ガス導入凹部14は、上壁部11の一部により形成された凹部下壁部14a及び凹部側壁部14bを有して構成されている。凹部下壁部14aには円形のガス導入口15(図6を参照)が形成されており、凹部下壁部14aの下面には、下方に突出し前後方向または左右方向に延びる複数の垂れ壁18が設けられている。また、上壁部11の左部には、円形の開口部16が形成されており、この開口部16には円筒状のガスケット31が取り付けられている。このガスケット31の内側領域はガス流出口17として構成されている。
【0018】
下部筐体20は、図7に示すように、下方に膨出するように形成された右下膨出部21及び左下膨出部22を有し、また図4に示すように、6個の取付片23を有して構成される。図7に示すように、右下膨出部21は、当該右下膨出部21の前後左右の各側面を構成するように下方に突出して延びた右下側壁部21aと、当該右下膨出部21の底面を構成する底壁部21bとを有し、底壁部21bには逆止弁32Aが設けられている。この逆止弁32Aは、右下膨出部21の内側に形成されるオイル貯留室OR1に、ブローバイガスから分離したオイルが所定量以上貯留されるとオイルの自重により開くように構成されている。逆止弁32Aが開くとオイル貯留室OR1内のオイルが外部に排出され、クランクケース内のオイルタンク(図示略)に戻るように構成されている。
【0019】
同様に、左下膨出部22は、当該左下膨出部22の前後左右の各側面を構成するように下方に突出して延びた左下側壁部22aと、当該左下膨出部22の底面を構成する底壁部22bとを有し、底壁部22bには逆止弁32Bが設けられている。この逆止弁32Bは、左下膨出部22の内側に形成されるオイル貯留室OR2に、ブローバイガスから分離したオイルが所定量以上貯留されるとオイルの自重により開くように構成されており、逆止弁32Bが開くとオイル貯留室OR2内のオイルが外部に排出され、クランクケース内のオイルタンクに戻るように構成されている。
【0020】
図4に示すように、取付片23は、ボルト挿通孔23aを有し、装置筐体3(下部筐体20)の外縁部の6箇所にそれぞれ設けられている。装置筐体3(オイル分離装置1)は、取付片23のボルト挿通孔23aに挿通される取付ボルト105(図3を参照)を介して、シリンダヘッドカバー100内の装置取付部104(図3を参照)に取り付けられるようになっている。オイル分離装置1(装置筐体3)がヘッドカバー100内に取り付けられた状態において、ガスケット31がカバー蓋102のガス流出開口106(図1を参照)と接続され、ガス流出口17が不図示の吸気通路と連通される。ガス流出口17が吸気通路と連通されることによって装置筐体3内が負圧となり、これによりオイル分離装置1には、エレメント収容部40のガス流入口43からガス導入口15を経てガス流出口17へとブローバイガスが流れるガス流路(「装置内ガス流路」と称する)が形成される。
【0021】
一方、エレメント5は、図8に示すように、天然ゴムや合成ゴム等のゴム材料(例えば、耐油性に優れたニトリルゴム等)により形成されたシールカバー50と、例えばグラスウールにより形成された濾材60とを備えて構成される。濾材60は、直方体状に形成され、上面61、下面62及び前後左右の4個の外側面63を有している。また、上面61、下面62及び4個の外側面63は、それぞれ長方形状に形成されている。この濾材60
は、ブローバイガスを厚み方向の一方の面(例えば、上面61)から反対側の面(例えば、下面62)に通過させて、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離して捕集するように構成されている。
【0022】
シールカバー50は、図9に示すように、平面視矩形枠状に形成された上面縁カバー部51と、平面視矩形枠状に形成されて上面縁カバー部51と対向するように配置された下面縁カバー部52と、上面縁カバー部51と下面縁カバー部52との間に設けられて両カバー部51,52の外縁端部どうしを上下方向に繋ぐ無端帯状の側面カバー部53とが互いに一体に形成されている。上面縁カバー部51の内縁側の矩形状の開口領域はシールカバー50の上面開口54として構成されており、下面縁カバー部52の内縁側の矩形状の開口領域は、シールカバー50の下面開口56として構成されている。上面縁カバー部51の内縁端部の四隅には、上面縁カバー部51の内縁側の角部から外縁側の角部へ向かって延びる切欠部55がそれぞれ形成されている。また、下面縁カバー部52の下面には、下面開口56を囲むように環状に設けられて下方に突出する凸条シール部57が下面縁カバー部52(シールカバー50)と一体に形成されている。なお、下面開口56を二重、三重と囲むように凸条シール部57を複数列設けてもよい。
【0023】
シールカバー50は、濾材60の外周部を覆うように濾材60に装着される。具体的には、シールカバー50の側面カバー部53が濾材60の外側面63全域を覆い、シールカバー50の上面縁カバー部51が濾材60の上面61の外縁部を覆い、シールカバー50の下面縁カバー部52が濾材60の下面62の外縁部を覆うようにシールカバー50が装着される。シールカバー50は、装着前の状態で濾材60と略同じか少し小さめに形成されており、弾性変形させて濾材60に装着される。シールカバー50の上面縁カバー部51に切欠部55が形成されていることにより、シールカバー50を変形させ易くなっており、そのためシールカバー50は濾材60に容易に装着することができる。シールカバー50が濾材60に装着されることによりエレメント5が構成され、そのエレメント5がエレメント収容部40に収容される。
【0024】
エレメント収容部40は、先述したように、収容縦壁部41と収容底壁部42とを有している(図8を参照)。これら収容縦壁部41及び収容底壁部42の内側に受容空間71が形成され、その受容空間71内にエレメント5が収容されるようになっている。以下、収容縦壁部41の内側面(受容空間71と対向する側面)のことを周壁縦面81と称し、収容底壁部42の上面のことを周壁底面82と称する。また、周壁縦面81と周壁底面82とのことを総称して周壁面80という。なお、エレメント収容部40では、周壁面80(周壁縦面81及び周壁底面82)により受容空間71が形成されており、エレメント5は受容空間71内に収容設置されることにより装置内ガス流路内に配置される。換言すると、装置内ガス流路の一部が周壁面80を有しており、この周壁面80が受容空間71を形成するとともに、受容空間71が装置内ガス流路の一部を形成している。すなわち、周壁面80及び受容空間71は、装置内ガス流路の一部と一体に形成されており、そのため、エレメント収容部40を構成簡易に形成することが可能となっている。
【0025】
エレメント5は、シールカバー50の下面縁カバー部52が周壁底面82上に載置された状態で、受容空間71(エレメント収容部40)内に収容設置される。このとき、下面縁カバー部52の下面に設けられた凸条シール部57が周壁底面82と接触し、エレメント5(下面縁カバー部52の下面)と周壁底面82との間に形成される隙間91(図8を参照)を封止するようになっている。また、受容空間71内に収容されたエレメント5は、カバー蓋102によって下方に向けて押圧されて周壁底面82に押し付けられるようになっている。具体的には図8に示すように、カバー蓋102のエンジン内側の下面には、受容空間71内に収容されたエレメント5と対向する部分に複数の凸片107が設けられている。そして、受容空間71内にエレメント5が収容された状態でカバー蓋102がカ
バー本体101に取り付けられると(図2を参照)、各凸片107の下端面がエレメント5の上面(詳細には、シールカバー50の上面縁カバー部51の上面)に当接し、エレメント5(シールカバー50及び濾材60)を各凸片107と収容底壁部42との間に挟持するように、エレメント5を下方に向けて押圧するようになっている。図4では、各凸片107が押圧する、上面縁カバー部51上の位置を2点鎖線Pで例示している。
【0026】
受容空間71内に収容されたエレメント5は、カバー蓋102(各凸片107)によって周壁底面82に押し付けられることによって、受容空間71(エレメント収容部40)内に安定的に保持される。そのため、エンジン振動等の影響によってエレメント収容部40から飛び出たりエレメント収容部40内で位置ずれたりすることが防止される。また、カバー蓋102による押圧によってエレメント5では、シールカバー50の下面縁カバー部52の下面に設けられた凸条シール部57が周壁底面82に押し付けられて弾性変形し、周壁底面82に密着するようになっている。また、この凸条シール部57の弾性変形により、下面縁カバー部52の下面と周壁底面82とが面どうしで密着する。そのため、エレメント5と周壁底面82との間の隙間91(図8を参照)をシールカバー50(凸条シール部57及び下面縁カバー部52の下面)によって確実に封止することができ、この隙間91をブローバイガスが通過することを防止できるようになっている。なお、エレメント収容部40の下方には、先述したように、エレメント5を通過したブローバイガスを装置筐体3内に導くためのガス導入凹部14が設けられている(図8を参照)。このガス導入凹部14(凹部下壁部14a及び凹部側壁部14b)の内側(エレメント収容部40に収容されたエレメント5の下方)には、受容空間71と繋がる空間(「ガス導入空間72」と称する)が形成される。
【0027】
以上のように構成されたオイル分離装置1がカバー本体101に取り付けられてカバー蓋102が閉じられ、筐体側ガス流出口17が吸気通路と連通されて装置筐体3内が負圧となることにより、クランクケース内からのブローバイガスがガス流入口43からエレメント収容部40内に流入する。流入したブローバイガスは、エレメント5のシールカバー50の上面開口54を通り、さらにエレメント5の濾材60の内部を濾材60の上面61から下面62にかけて通過する(図5を参照)。通過する際に、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルが濾材60により分離されて捕集される。また、ブローバイガスに含まれるカーボンや金属粉等の一部も濾材60により分離されて捕集される。エレメント5では、濾材60の外側面63がシールカバー50により塞がれており、また、エレメント5と周壁底面82との間の隙間91が凸条シール部57によって封止されている。したがって、エレメント収容部40内に流入したブローバイガスが、濾材60内を通過せずに隙間91を通過したり、濾材60の外側面63を通り抜けたりすることが防止されるので、ブローバイガスを濾材60の上面61から下面62にかけて濾材60内を確実に通過させることができる。そのため、濾材60によるミスト状オイルの分離捕集効率を高めることが可能となっている。
【0028】
濾材60の内部を通過したブローバイガスは、図5に示すように、エレメント5のシールカバー50の下面開口56を通ってガス導入空間72に流入し、さらに、ガス導入口15から装置筐体3内に流入し、オイル貯留室OR1,OR2上を通過する。通過する際に、例えば、ブローバイガスが垂れ壁18に衝突し、その際にブローバイガスに含まれるミスト状のオイルが分離される場合もある。このとき分離されたオイルの一部は、オイル貯留室OR1,OR2内に貯留される。オイル貯留室OR1,OR2に貯留されたオイルが所定量以上となるとオイルの自重により逆止弁32A,32Bが開き、オイル貯留室OR1,OR2内のオイルがクランクケース内のオイルタンクに戻される。そして、ミスト状のオイルが取り除かれたブローバイガスは、ガス流出口17から出て吸気系へと送られる。
【0029】
濾材60を交換する場合は、エレメント5ごと交換する。具体的には例えば、まず、シリンダヘッドカバー100のカバー蓋102をカバー本体101から取り外して受容空間71を開放しエレメント5を露出させる(図3を参照)。次いで、エレメント5を受容空間71から取り出し、新しいエレメント5を受容空間71内に設置する。設置後、シリンダヘッドカバー100のカバー蓋102をカバー本体101に取り付けて、エレメント5(濾材60)の交換が完了する。このように、オイル分離装置1では、エレメント5を受容空間71から取り出して交換することにより濾材60を交換することができる。そのため、濾材60の交換のためにオイル分離装置1全体を交換する場合に比べ、交換作業が容易であり交換に要するコストも低減することが可能である。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の態様に限定されるものではなく適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、濾材60が直方体状(平面視四角形の板状)に形成されているが、平面視円形や平面視三角形、平面視五角形等の板状に形成された濾材を用いてもよい。また、上記実施形態では、濾材60がグラスファイバにより形成されているが、不織布等の他の材料により濾材を形成してもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、シールカバー50の下面に設けた凸条シール部57が周壁底面82と接触し、エレメント5と周壁底面82との間の隙間91を封止するようになっているが、凸条シール部57を設けない態様としてもよい。例えば、凸条シール部57を設けないことで、シールカバー50の下面と周壁底面82とが面どうしで直接接触して隙間91を封止するように構成してもよい。また、上記実施形態では、エレメント収容部40がエレメント5よりも一回り大きく形成されており、そのため、エレメント収容部40内にエレメント5が収容された状態では、エレメント5と周壁縦面81との間に隙間が形成されるようになっているが、このような態様に限定されるものではない。例えば、エレメント収容部40をエレメント5と同等の大きさに形成し、エレメント収容部40内にエレメント5が収容された状態において、シールカバー50の側面カバー部53が周壁縦面81と接触して、エレメント5と周壁縦面81との間の隙間を封止するように構成してもよい。その場合、側面カバー部53の外面に凸条シール部57と同様の凸条シール部を設けてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、エレメント収容部40内に収容されたエレメント5を、シリンダヘッドカバー100のカバー蓋102が周壁底面82に押し付けるように構成されているが、このような態様に限定されるものではない。例えば、オイル分離装置1(エレメント収容部40)に、エレメント5を周壁底面82に押し付ける機能を有する、カバー蓋102とは別の部材(蓋状の部材でなくてもよい)を設けてもよい。また、上記実施形態では、シールカバー50がゴム材料で形成されているが、塩化ビニル等の樹脂材料でシールカバー50を形成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 オイル分離装置
3 装置筐体
5 エレメント
10 上部筐体
15 ガス導入口
17 ガス流出口
20 下部筐体
40 エレメント収容部
41 収容縦壁部
42 収容底壁部
43 ガス流入口
50 シールカバー
51 上面縁カバー部
52 下面縁カバー部
53 側面カバー部
54 上面開口
55 切欠部
56 下面開口
60 濾材
71 受容空間
80 周壁面
81 周壁縦面
82 周壁底面
91 隙間
100 シリンダヘッドカバー
101 カバー本体
102 カバー蓋(蓋部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9